(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240310
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】リニアモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 41/03 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
H02K41/03 A
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-509650(P2016-509650)
(86)(22)【出願日】2014年3月24日
(86)【国際出願番号】JP2014058122
(87)【国際公開番号】WO2015145550
(87)【国際公開日】20151001
【審査請求日】2017年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】富士機械製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098420
【弁理士】
【氏名又は名称】加古 宗男
(72)【発明者】
【氏名】白川 佳宏
(72)【発明者】
【氏名】永田 良
(72)【発明者】
【氏名】飼沼 諒
【審査官】
池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−219882(JP,A)
【文献】
特開2003−070226(JP,A)
【文献】
特開平09−074733(JP,A)
【文献】
特開昭64−074262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 41/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の磁石を交互に異極となるように直線状に配列した固定子と、前記固定子の磁石の配列に沿って移動する可動子とを備え、前記可動子は、前記固定子側に突出する複数のティースと、前記複数のティースにそれぞれ巻回されたコイルとを有するリニアモータにおいて、
前記可動子の両端のコイルの巻数を内側のコイルの巻数よりも増加させることにより、端効果による推力リップルを低減したリニアモータであって、
前記両端のコイルは、巻数増加分が該コイルの外周の一部分に位置するように巻回され、
前記両端のコイルの隣接する内側のコイルは、巻数減少分が前記両端のコイルの巻数増加分に対応位置するように巻回され、前記両端のコイルの巻数増加分が前記内側のコイルの巻数減少分の凹状スペースに嵌まり込むように構成されていることを特徴とするリニアモータ。
【請求項2】
要求される推力に応じて1コイル当たりの基準巻数が設定され、
前記可動子の全コイルの巻数を合計した値が前記基準巻数に全コイル数を乗算した値と等しくなるように両端のコイルの前記基準巻数からの巻数増加分と内側のコイルの前記基準巻数からの巻数減少分が設定されていることを特徴とする請求項1に記載のリニアモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端効果による推力リップルを低減したリニアモータに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
特許文献1〜3に記載されているように、リニアモータでは、端効果により推力リップルが生じることが知られている。ここで、端効果とは、リニアモータ特有の現象で、可動子が直線状に延びる有限長であることから、可動子の端部のパーミアンスが中央部と比較して大きく異なり、磁束分布の不均一や乱れが生じて、推力の特性が悪化することである。この端効果はスロット数(ティース数)が少なく、可動子の長さが短いほど、その影響を大きく受けてしまう。従って、リニアモータが小型になるほど、この端効果による推力リップルが大きくなる。
【0003】
このような端効果を低減する技術としては、特許文献1(特開2004−364374号公報)に記載されているように、可動子の両端に補助ティースを設けたり、特許文献2(特開2009−171638号公報)に記載されているように、可動子のコアを複数のブロックに分割して、各ブロック間に所定寸法の隙間を設けたり、特許文献3(特開2003−299342号公報)に記載されているように、可動子の両端のティースの一部を切り落としたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−364374号公報
【特許文献2】特開2009−171638号公報
【特許文献3】特開2003−299342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1の端効果低減技術では、可動子の両端に補助ティースを設けるため、可動子が大型化してリニアモータが大型化する欠点がある。また、上記特許文献2の端効果低減技術では、可動子のコアを複数のブロックに分割して、各ブロック間に所定寸法の隙間を設けるため、上記特許文献1と同様に、可動子が大型化してリニアモータが大型化する欠点がある。また、上記特許文献3の端効果低減技術では、可動子の両端のティースの形状が内側のティースの形状と異なるため、コア作製のための金型を複数用意しなければならず、製造コストが高くなる欠点がある。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、可動子の大型化やコストアップを回避しながら端効果による推力リップルを低減できるリニアモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、複数の磁石を交互に異極となるように直線状に配列した固定子と、前記固定子の磁石の配列に沿って移動する可動子とを備え、前記可動子は、前記固定子側に突出する複数のティースと、前記複数のティースにそれぞれ巻回されたコイルとを有するリニアモータにおいて、前記可動子の両端のコイルの巻数を内側のコイルの巻数よりも増加させることにより、端効果による推力リップルを低減したことを
第1の特徴とし、更に、前記両端のコイルは、巻数増加分が該コイルの外周の一部分に位置するように巻回され、前記両端のコイルの隣接する内側のコイルは、巻数減少分が前記両端のコイルの巻数増加分に対応する部位に凹状スペースを形成するように巻回され、前記両端のコイルの巻数増加分が前記内側のコイルの巻数減少分の凹状スペースに嵌まり込むように構成されていることを第2の特徴とする。
【0008】
本発明では、可動子の両端のコイルの巻数を内側のコイルの巻数よりも増加させているため、両端のコイルの電流当たりの起磁力を増加させて、可動子の両端の磁束密度を増加させて両端と内側の磁束密度を均一化することが可能となり、端効果による推力リップルを低減することができる。この場合、可動子の両端のコイルの巻数を内側のコイルの巻数よりも増加させるだけであるため、可動子のコアやティースの形状は変更する必要がなく、可動子の大型化やコストアップを回避しながら端効果による推力リップルを低減することができる。
【0009】
この場合、前記両端のコイルは、巻数増加分が該コイルの外周の一部分に位置するように巻回され、前記両端のコイルの隣接する内側のコイルは、巻数減少分が前記両端のコイルの巻数増加分に対応する部位に凹状スペースを形成するように巻回され、前記両端のコイルの巻数増加分が前記内側のコイルの巻数減少分の凹状スペースに嵌まり込むように構成
されているため、両端のコイルの外周と内側のコイルの外周に巻数増減分の凹凸ができても、巻数増減分の凹凸を嵌まり込ませることにより、ティース間に2つのコイルをスペース効率良く収容することができて、ティースの間隔(スロット)を広げる必要がない。
【0010】
また、本発明は、要求される推力に応じて1コイル当たりの基準巻数(平均巻数)を設定し、前記可動子の全コイルの巻数を合計した値が基準巻数に全コイル数を乗算した値と等しくなるように両端のコイルの基準巻数からの巻数増加分と内側のコイルの基準巻数からの巻数減少分を設定するようにすれば良い。このようにすれば、リニアモータの推力を要求される推力に一致させながら端効果による推力リップルを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は本発明の一実施例のリニアモータの主要部の構成を示す縦断面図である。
【
図2】
図2は内側のコイルに対する両端のコイルの巻数増加割合と推力リップルとの関係を磁場解析にて計算したの解析結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を具体化した一実施例を説明する。
まず、
図1に基づいて本実施例のリニアモータの構成を説明する。
【0013】
直線状(リニア)に延びる固定子11は、コア12上に複数の永久磁石13を交互に異極となるように直線状に等ピッチで配列して構成されている。この固定子11の永久磁石13の配列に沿って移動する可動子14は、固定子11側に突出する複数のティース15a,15bを有する電機子コア16と、各ティース15a,15bにそれぞれ巻回されたコイル17a,17bとから構成されている。各ティース15a,15bは、形状が同一で、同一間隔で直線状に配置されている。
【0014】
本実施例では、可動子14の両端のコイル17aの巻数Na を内側のコイル17bの巻数Nb よりも増加させることにより、端効果による推力リップルを低減するようにしている。具体的には、要求される推力に応じて1コイル当たりの基準巻数(平均巻数)を設定し、可動子14の全コイル17a,17bの巻数を合計した値ΣNa+ΣNbが基準巻数に全コイル数を乗算した値と等しくなるように両端のコイル17aの基準巻数からの巻数増加分と内側のコイル17bの基準巻数からの巻数減少分を設定するようにしている。
ΣNa+ΣNb=基準巻数×全コイル数
【0015】
更に、本実施例では、両端のコイル17aは、巻き始め位置の調整により巻数増加分が該コイル17aの外周の片側部分に位置するように巻回され、両端のコイル17aの隣接する内側のコイル17bは、巻き始め位置の調整により巻数減少分が両端のコイル17aの巻数増加分に対応する部位に凹状スペースを形成するように巻回され、両端のコイル17aの巻数増加分が内側のコイル17bの巻数減少分の凹状スペースに嵌まり込むように構成されている。これにより、両端のコイル17aの外周と内側のコイル17bの外周に巻数増減分の凹凸ができても、巻数増減分の凹凸を嵌まり込ませることにより、ティース15a,15b間に2つのコイル17a,17bをスペース効率良く収容することができて、ティース15a,15bの間隔(スロット)を広げる必要がなく、可動子14の大型化を回避できる。
【0016】
以上のように構成した本実施例のリニアモータでは、可動子14の両端のコイル17aの巻数Na を内側のコイル17bの巻数Nb よりも増加させているため、両端のコイル17aの電流当たりの起磁力を増加させて、可動子14の両端の磁束密度を増加させて両端と内側の磁束密度を均一化することが可能となり、端効果による推力リップルを低減することができる。
【0017】
本発明者は、推力リップル低減効果を確認するため、1スロットのコイル巻数が300ターンの3相3スロットのリニアモータを使用して、内側のコイル17bに対する両端のコイル17aの巻数増加割合と推力リップルとの関係を磁場解析にて計算したので、その解析結果のグラフを
図2に示す。
図2に示すように、内側のコイル17bに対する両端のコイル17aの巻数増加割合が0[%]の場合(従来のリニアモータに相当)は、推力リップルが30[%]を越えるが、両端のコイル17aの巻数増加割合を増加させるに従って推力リップルが減少する。この推力リップルの減少は、両端のコイル17aの巻数増加割合が約25[%]を越えるまで続き、約25[%]を越えると、推力リップルがほぼ一定になるか又は僅かに増加する傾向がある。また、両端のコイル17aの巻数増加割合があまりにも大きくなり過ぎると、モータ特性に悪影響を及ぼす可能性があるため、推力リップルがほぼ最小となる巻数増加割合のうちの最小の巻数増加割合(
図2の実験例では25[%]付近)に設定することが望ましい。
【0018】
本実施例では、端効果による推力リップルを低減する手段として、可動子14の両端のコイル17aの巻数Na を内側のコイル17bの巻数Nb よりも増加させるだけであるため、可動子14の電機子コア16やティース15a,15bの形状は変更する必要がなく、可動子14の大型化やコストアップを回避しながら端効果による推力リップルを低減することができる。
【0019】
しかも、本実施例では、要求される推力に応じて1コイル当たりの基準巻数(平均巻数)を設定し、可動子14の全コイル17a,17bの巻数を合計した値ΣNa+ΣNbが基準巻数に全コイル数を乗算した値と等しくなるように両端のコイル17aの基準巻数からの巻数増加分と内側のコイル17bの基準巻数からの巻数減少分を設定するようにしているため、リニアモータの推力を要求される推力に一致させながら端効果による推力リップルを低減することができる。
【0020】
尚、本発明は、3相3スロットのリニアモータに限定されず、スロット数(ティース数)や相数やコアレスを含むコア形状を適宜変更しても良い等、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0021】
11…固定子、12…コア、13…永久磁石、14…可動子、15a…両端のティース、15b…内側のティース、16…電機子コア、17a…両端のコイル、17b…内側のコイル