特許第6240315号(P6240315)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6240315メディア・ストリーム間におけるタイムライン情報の相関付け
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240315
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】メディア・ストリーム間におけるタイムライン情報の相関付け
(51)【国際特許分類】
   H04N 21/43 20110101AFI20171120BHJP
   H04N 21/242 20110101ALI20171120BHJP
【FI】
   H04N21/43
   H04N21/242
【請求項の数】15
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2016-515369(P2016-515369)
(86)(22)【出願日】2014年9月5日
(65)【公表番号】特表2016-537834(P2016-537834A)
(43)【公表日】2016年12月1日
(86)【国際出願番号】EP2014068925
(87)【国際公開番号】WO2015039888
(87)【国際公開日】20150326
【審査請求日】2016年5月18日
(31)【優先権主張番号】13185405.1
(32)【優先日】2013年9月20日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504292093
【氏名又は名称】コニンクリーケ・ケイピーエヌ・ナムローゼ・フェンノートシャップ
(73)【特許権者】
【識別番号】508351406
【氏名又は名称】ネダーランゼ・オルガニサティ・フォーア・トゥーゲパスト−ナトゥールヴェテンシャッペリーク・オンデルゾエク・ティーエヌオー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100173565
【弁理士】
【氏名又は名称】末松 亮太
(72)【発明者】
【氏名】ファン・デフェンター,マティス・オスカー
(72)【発明者】
【氏名】ストッキイング,ハンズ・マールテン
(72)【発明者】
【氏名】ファン・ブランデンブルク,レイ
【審査官】 川中 龍太
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−528859(JP,A)
【文献】 特表2012−520648(JP,A)
【文献】 特表2011−501931(JP,A)
【文献】 特開2007−208345(JP,A)
【文献】 特開2003−259314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/14 − 7/173
H04N 7/20 − 7/56
H04N 21/00 − 21/858
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1メディア・ストリームと第2メディア・ストリームの間においてタイムライン情報を相関付けることを可能にするシステムであって、前記第1メディア・ストリームおよび前記第2メディア・ストリームの双方が、共通の再生タイムラインに関連付けられると共に、異なるタイムライン情報を含み、当該システムが、
−少なくとも2つのストリーム・モニタであって、該ストリーム・モニタの各々が、
i)前記メディア・ストリームの1つ以上のメディア・サンプルの永続的識別を入手し、前記永続的識別が、前記メディア・ストリームの処理に対してロバストであるデータであり、前記メディア・ストリームを使用して再現可能に入手することができ、
ii)前記永続的識別に関連付けられたタイムスタンプ値を、前記メディア・ストリームに含まれるタイムライン情報から判定し、
iii)前記タイムスタンプ値と、前記1つ以上のメディア・サンプルの前記永続的識別とを識別情報として提供する
ことによって、メディア・ストリームについての前記識別情報を提供するように構成され、
前記第1メディア・ストリームについての第1識別情報を提供する第1ストリーム・モニタと、前記第2メディア・ストリームについての第2識別情報を提供する第2ストリーム・モニタとを含む、前記少なくとも2つのストリーム・モニタと、
−前記第1メディア・ストリームの第1永続的識別を前記第2メディア・ストリームの第2永続的識別と照合し、これによって前記第1メディア・ストリームの第1タイムスタンプ値を前記第2メディア・ストリームの第2タイムスタンプ値と照合することによって、前記第1識別情報を前記第2識別情報と組み合わせて、前記第1メディア・ストリームのタイムライン情報を前記第2メディア・ストリームのタイムライン情報に相関付けることを可能にする相関サブシステムと
を含む、システム。
【請求項2】
請求項1記載のシステムにおいて、前記第2メディア・ストリームが、前記第1メディア・ストリームの修正バージョンであり、前記修正バージョンが、前記第1メディア・ストリームのタイムライン情報とは異なるタイムライン情報を含む、システム。
【請求項3】
請求項2記載のシステムにおいて、前記第1メディア・ストリームがメディア配給ネットワークを通じて配給され、前記メディア配給ネットワークが、前記第1メディア・ストリームの修正バージョンを生成するストリーム・モディファイアを含み、前記第1ストリーム・モニタが、前記ストリーム・モディファイアのアップストリームにおいて前記メディア配給ネットワークに含まれ、前記第2ストリーム・モニタが、前記ストリーム・モディファイアのダウンストリームにおいて前記メディア配給ネットワークに含まれる、システム。
【請求項4】
請求項1記載のシステムにおいて、前記相関サブシステムが、前記第1永続的識別および前記第2永続的識別を前記共通再生タイムラインにリンクする第3識別情報に基づいて、前記第1永続的識別を前記第2永続的識別と照合するように構成される、システム。
【請求項5】
請求項4記載のシステムにおいて、前記第1メディア・ストリームおよび前記第2メディア・ストリームが、共通タイムライン情報を含むメディア・ストリームの複合体の一部であり、当該システムが、更に、前記メディア・ストリームの複合体についての前記第3識別情報を提供する第3ストリーム・モニタを含む、システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のシステムにおいて、前記第2メディア・ストリームが、メディア配給ネットワークを通じて配給され、前記メディア配給ネットワークが、更に、前記第2メディア・ストリームに関して同期アクションを実行する同期サブシステムを含み、前記相関サブシステムが、前記第1メディア・ストリームのタイムライン情報に基づいて前記同期サブシステムが前記同期アクションを実行することを可能にするためのタイミング情報を提供するように構成される、システム。
【請求項7】
請求項6記載のシステムにおいて、前記同期アクションが、
−複数の受信機上において前記第1メディア・ストリームおよび/または前記第2メディア・ストリームの同期再生を可能にするために、メディア・ストリームがバッファするか、または先にスキップするアクション、
−受信機上において前記第1メディア・ストリームの前記第2メディア・ストリームとの同期再生を可能にするために、メディア・ストリームがバッファするかまたは先にスキップするアクション、および
−受信機上におけるメディア・ストリームの再生と同期する、前記受信機上におけるアプリケーションのトリガ、
から成る一群の内の1つである、システム。
【請求項8】
請求項6または7記載のシステムにおいて、前記同期サブシステムが、同期サーバと、複数の同期クライアントとを含み、前記複数の同期クライアントが、前記第2メディア・ストリームを配給するように構成された前記メディア配給ネットワークのセグメントに含まれ、前記第2ストリーム・モニタが、前記複数の同期クライアント間において前記セグメントに含まれる、システム。
【請求項9】
請求項8記載のシステムにおいて、前記相関サブシステムが、前記第2ストリーム・モニタによる前記第2メディア・ストリームの監視に基づいて、前記第2メディア・ストリームに関して前記同期クライアントが前記同期アクションを実行することを可能にするために、前記セグメントにおける前記複数の同期クライアントに前記タイミング情報を提供するように構成される、システム。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載のシステムにおいて、前記永続的識別が、指紋、透かし、およびマーカ、または前記1つ以上のメディア・サンプルから成る一群の内の1つである、システム。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項記載のシステムを含むメディア配給ネットワーク。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項記載のシステムにおいて使用されるストリーム・モニタおよび/または相関サブシステム。
【請求項13】
請求項8または9記載のシステムと共に使用するための同期クライアントであって、当該同期クライアントが含まれる前記セグメントを、前記相関サブシステムに対して識別するように構成される、同期クライアント。
【請求項14】
第1メディア・ストリームと第2メディア・ストリームの間においてタイムライン情報を相関付けることを可能にする方法であって、前記第1メディア・ストリームおよび前記第2メディア・ストリームの双方が、共通の再生タイムラインに関連付けられると共に、異なるタイムライン情報を含み、前記相関付けが、少なくとも2つのストリーム・モニタから得られる識別情報に基づき、前記ストリーム・モニタの各々が、
i)前記メディア・ストリームの1つ以上のメディア・サンプルの永続的識別を入手し、前記永続的識別が、前記メディア・ストリームの処理に対してロバストであるデータであり、前記メディア・ストリームを使用して再現可能に入手することができ、
ii)前記永続的識別に関連付けられたタイムスタンプ値を、前記メディア・ストリームに含まれるタイムライン情報から判定し、
iii)前記タイムスタンプ値と、前記1つ以上のメディア・サンプルの前記永続的識別とを前記識別情報として提供する
ことによって、メディア・ストリームについての識別情報を提供するように構成され、
当該方法が、
−前記少なくとも2つのストリーム・モニタの内第1ストリーム・モニタから、前記第1メディア・ストリームについての第1識別情報を入手するステップと、
−前記少なくとも2つのストリーム・モニタの内第2ストリーム・モニタから、前記第2メディア・ストリームについての第2識別情報を入手するステップと、
−前記第1メディア・ストリームの第1永続的識別を前記第2メディア・ストリームの第2永続的識別と照合し、これによって前記第1メディア・ストリームの第1タイムスタンプ値を前記第2メディア・ストリームの第2タイムスタンプ値と照合することによって、前記第1識別情報を前記第2識別情報と組み合わせて、前記第1メディア・ストリームのタイムライン情報を前記第2メディア・ストリームのタイムライン情報に相関付けることを可能にするステップと
を含む、方法。
【請求項15】
請求項14記載の方法をプロセッサ・システムに実行させるための命令を含む、コンピュータ・プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1メディア・ストリームと第2メディア・ストリームとの間においてタイムライン情報を相関付けるシステムおよび方法に関する。更に、本発明は、前述のシステムを含むメディア配給ネットワーク、前述のシステムにおいて使用されるストリーム・モニタまたは相関サブシステム、ならびにプロセッサ・システムに前述の方法を実行させる命令を含むコンピュータ・プログラム製品に関する。更に、本発明は同期クライアントにも関する。
【従来技術】
【0002】
ビデオ・コンテンツおよびオーディオ・コンテンツのようなメディア・コンテンツは、一般にはディジタル形態でユーザに配信される。メディア・コンテンツが時間的側面(temporal aspect)を有し、特に、メディア・コンテンツが時の経過においてどのように再生されなければならないか指示するタイムラインに関連付けられている場合、このようなディジタル形態は通例メディア・ストリームと呼ばれる。メディア・ストリームは、メディア配給ネットワークを通じてユーザの受信機に配信することができる。具体的には、メディア・ストリームを受信機にストリーミングすることができ、メディア・ストリーム全体を受信し終える前に、受信機がメディア・ストリームの再生を開始することを可能にする。しかしながら、メディア・ストリームは、例えば、ファイル形態で受信機に配信されることによって、非ストリーミング様式でユーザの受信機に配信されることもある。
【0003】
メディア・ストリームの例には、カメラで記録したストリームまたはコンピュータによってレンダリングしたストリームというようなビデオ・ストリーム、マイクロフォンで記録したストリームというようなオーディオ・ストリーム、字幕ストリームまたはソーシャル・メディア・ストリームというような定時テキスト・ストリーム(timed text streams)、受信機において広告画像を示すまたはアクションを実行する定時イベント・ストリーム、ならびに異なる形式のメディア・ストリームを含むマルチメディア・ストリームが含まれる。
【0004】
異なるメディア・ストリームは、これらのメディア・ストリーム間に時間的関係があり得ることから、共通の再生タイムラインに関連付けられるとよい。具体的には、メディア・ストリームは、同期して再生されることが意図される場合がある。これに該当するのは、メディア・ストリームが同じイベントの異なる記録に関係し、例えば、第1メディア・ストリームがビデオ・ストリームであり、第2メディア・ストリームがオーディオ・ストリームである場合、または第1メディア・ストリームが第1カメラ・アングルからのイベントの記録を表すビデオ・ストリームであり、第2メディア・ストリームもビデオ・ストリームであるが異なるカメラ・アングルからの記録を表す場合もある。
【0005】
したがって、異なるメディア・ストリームの同期再生を可能にすることが求められることがある。加えて、例えば、異なる受信機間にわたって同期して同一の、同様の、または異なるメディア・ストリームの再生を可能にすることが求められることもある。以下に、このようなメディア同期が採用されるとよい既知の例を挙げる。
【0006】
・ソーシャルTVでは、多数のユーザの多数のTVまたは他のデバイスにわたる同一または同様のメディア・ストリームの同期が望まれる。同一または同様のメディア・ストリームは、同じストリームの技術的変形(variations)を含むこともあるが、これらは、同じイベントの異なるカメラ・アングルからの記録というような、同じイベントであるが異なるコンテンツを構成するストリームを含むこともある。
【0007】
・ハイブリッドTVでは、潜在的に多数の経路を経て1つのTVに到達する多数のメディア・ストリームの同期が望まれる。このような多数の経路には、例えば、ディジタル・ビデオ・ブロードキャスト(DVB)、インターネット・プロトコル(IP)マルチキャスト、およびIPユニキャストが含まれることがある。
【0008】
・コンパニオン・スクリーン(companion screen)では、TVとコンパニオン・スクリーン、例えば、タブレット・デバイスとの間において同じまたは異なるメディアを同期させることが望まれる。尚、「コンパニオン・スクリーン」という用語は、第2スクリーンという別名もあることを注記しておく。
【0009】
以上の例は主にテレビジョンに言及したが、同様の例は他の形式のデバイスまたは受信機にも存在することを注記しておく。更に、以上の例では、前述のメディア・ストリームの一部または全部が、リアル・タイムまたは擬似リアル・タイム・メディア・ストリームであってもよい。加えてまたは代わりに、前述のメディア・ストリームの一部または全部が、例えば、メディア配給ネットワークによってキャッシュされてもよく、あるいは、例えば、個人ビデオ・レコーダ(PVR)によって記録されてもよく、あるいはいわゆるキャッチアップTVまたはユーザ・トリック・モード・メディア・ストリーム(user trick-mode media streams)を構成するのでもよい。
【0010】
ブロードキャスタ(broadcaster)は、同期サービスを提供するために、メディア同期を採用することもあり、この場合、ユーザは多数の経路を経たメディア・ストリームを組み合わせること、および/または種々のブロードキャスタによって提供される組み合わせで多数のデバイス上でメディア・ストリームを組み合わせることができる。このような同期は、全てのメディア・ストリームが集まるブロードキャスタのスタジオ・システムにおいて行うことができる。また、付加価値サービス・プロバイダが、付加価値同期サービスを提供するために、メディア同期を採用することもできる。付加価値メディア・ストリームの例には、他のメディア・ストリーム、例えば、ブロードキャストされたビデオ・ストリームの論評、字幕、放送解説放送(audio description)、または手話解釈を提供するメディア・ストリームが含まれる。
【0011】
メディア同期に伴う問題の1つは、異なるメディア・ストリームがブロードキャスタまたは第三者において同期されることがあり得るが、エンド・ユーザに配給される間に、その共時性(synchronicity)を失うおそれがあることである。例えば、メディア・ストリームが異なる経路を経て配信されることが考えられる。これらの経路は、距離の相違(送信速度)、多重化およびルーティング(バッファ)、キャッシュおよび記録配信、信号処理(例えば、ミキシング、トランスコード処理)等のために、異なる遅延を有する。同様に、付加価値サービス・プロバイダの場合、付加価値メディア・ストリームはサービス・プロバイダから配信されるが、元のブロードキャスト・ストリームは、ブロードキャスタから、即ち、異なる経路を経て配信されるであろう。
【0012】
"Multimedia group and inter-stream synchronization techniques: A comparative study"(マルチメディア・グループおよびストリーム間同期技法:比較研究)by F. Boronat et al., Elsevier Information Systems, 34, 2009, pp. 108-131という論文が、既知の宛先間同期技法、即ち、異なる端末間における同期についての総合的全体像を示す。
【0013】
引用された宛先間同期技法の殆どは、メディア・ストリーム内に含まれるタイムライン情報を利用する。ここで、「タイムライン情報」という用語は、受信機が再生タイムラインにしたがってメディア・ストリームのメディア・サンプルを再生することを可能にするメタデータのことを言う。例えば、メディア・ストリームがリアル・タイム・トランスポート・プロトコル(RTP)によって配信される場合、即ち、RTPメディア・ストリームを構成する場合、RTPタイムスタンプのようなタイムライン情報を使用することができる。タイムライン情報の他の例には、いわゆるプログラム・クロック基準(PCR)、プレゼンテーション・タイムスタンプ(PTS)、およびデコード・タイム・スタンプ(DTS)が含まれる。このようなタイムライン情報を異なる受信機間にわたって比較することによって、しかるべきストリーム調節値を計算することができる。このような受信機にわたる比較を可能にするために、受信機において同期実経過時間を使用することができ、または代わりに、遅延が殆どないおよび/または遅延が分かっている高品質シグナリング接続を使用することができる。例えば、メディア・ストリームの再生時刻の遅延は、受信機においてメディア・ストリームをバッファすることによって行うことができる。
【0014】
メディア・ストリームがそれらの元のタイムライン情報をメディア配給ネットワークにおいて失うおそれがあることが認められている。このようなメディア配給ネットワークは、通例、ケーブルテレビの事業者、電気通信事業者、およびインターネット・サービス・プロバイダによって所有され、これらの事業者は、通例、ブロードキャスタや付加価値サービス・プロバイダとは異なる。このようなメディア配給ネットワークでは、メディア・ストリームをネットワーク上での配給に適合させるために、メディア・ストリームがヘッド・エンドにおいて修正される場合がある。このようなネットワークは、例えば、DVB系(DVB−T、DVB−C,DVB−H)、IP系(RTP/RTCP、IPマルチキャスト、IPユニキャスト)が考えられる。異なるコデック(MPEG2、H.264、HEVC)、トランスポート技術(ブロードキャスト、ストリーミング、プログレッシブ・ダウンロード、適応ストリーミング)等が、メディア・ストリームの最終的な配信において使用される場合がある。これらのプロセスの1つ以上の間に、メディア・ストリームからその元のメタデータがはぎ取られるおそれがある。その結果、元のタイムライン情報が修正メディア・ストリームには含まれないおそれがある。代わりに、新たなメタデータが含まれるが、これらは新たなタイムライン情報を含むこともある。
【0015】
このようなメディア・ストリームの修正例には、下記のことが含まれる。
【0016】
・(再)多重化。MPEG TS(トランスポート・ストリーム)用のマルチプレクサはその殆どが、多重化の間に新たなPCR/PTS/DTS値を生成する。しかしながら、通例では、PCR/PTS/DTSの絶対値だけが変化させられる一方、メディア・ストリームにわたるそれらの関係は維持される。したがって、オーディオ−ビデオの音声同期(lip sync)は保存することができる。
【0017】
・トランスコード処理および再エンコード処理。ここでは、着信および発信メディア・サンプル間における全ての関係が失われるおそれがある。例えば、ビデオ・ストリームの場合、このビデオ・ストリームのフレームは、異なる形式になる、例えば、I−フレームからB−フレームになる場合がある。加えて、トランスコード処理および再エンコード処理中にフレーム・レートが変化した場合、着信および発信フレーム間における1対1の関係が失われるおそれがある。更に、メディア・ストリームのコンテナ全体が、例えば、いわゆるTSからISOBFFに変化させられる場合もあり、これによってタイムライン情報の形式も変化する。
【0018】
・技術的または業務上の理由。メディア配給ネットワークが、タイムライン情報を通すことを拒否する場合もある。例えば、DVB同期補助データ・パケット識別子(SAD−PID: DVB Synchronized Auxiliary Data Packet Identifier)が、トランスポート・ストリーム(TS)からデフォルトではぎ取られることもあり得る。これは、例えば、前述した業務上の理由のために、故意に行われる場合もあり、または単に現行のネットワークによってパラメータがサポートされていない場合もあり、つまり技術的な理由を構成する。
【0019】
メディア・ストリームが修正され、これによってそれらの元のタイムライン情報を失うことに加えて、同期して再生されることが意図されるが、既に初めから、例えば、メディア・ストリームの生成において、異なるメディア・ストリーム間では、共通のタイムライン情報が提供されず、このようなタイムライン情報は本質的に異なることもあり得る。ここでも、メディア同期に対する必要性があると考えられる。
【0020】
WO2010106075A1は、少なくとも第1および第2(メディア)ストリームの宛先間メディア同期のための方法およびシステムについて記載し、第2ストリームは、第1ストリームを入力ストリームとして使用するストリーム修正ユニットの出力ストリームである。この方法は、第1同期地点に到達した第1ストリームにおけるパケットの第1到達時刻情報、および第2同期地点に到達した第2ストリームにおけるパケットの第2到達時刻情報を提供するステップと、前記入力ストリームと前記出力ストリームとの間における共時性関係についての同期相関情報を提供するステップと、第1および第2到達時刻情報、ならびに同期相関情報に基づいて、遅延情報を計算するステップとを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
WO2010106075A1は、修正および未修正メディア・ストリーム間、または異なって修正された2つのストリーム間における宛先間メディア同期を可能にするが、前記メディア同期の少なくとも1つの態様に対して更に改良するシステムまたは方法を提供できれば有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の第1の態様は、第1メディア・ストリームと第2メディア・ストリームとの間におけるタイムライン情報を相関付けることを可能にするシステムを提供する。第1メディア・ストリームおよび第2メディア・ストリームの双方は、共通再生タイムラインに関連付けられる。このシステムは、
−少なくとも2つのストリーム・モニタであって、前記ストリーム・モニタの各々が、
i)メディア・ストリームの1つ以上のメディア・サンプルの永続的識別を入手し、この永続的識別が、メディア・ストリームを使用して再現可能に入手することができるデータであり、
ii)永続的識別に関連付けられたタイムスタンプ値を、メディア・ストリームに含まれるタイムライン情報から判定し、
iii)タイムスタンプ値と、1つ以上のメディア・サンプルの永続的識別を識別情報として提供することによって、
メディア・ストリームについての識別情報を提供するように構成され、
第1メディア・ストリームについての第1識別情報を提供する第1ストリーム・モニタと、第2メディア・ストリームについての第2識別情報を提供する第2ストリーム・モニタとを含む、少なくとも2つのストリーム・モニタと、
−第1メディア・ストリームの第1永続的識別を第2メディア・ストリームの第2永続的識別と照合し、これによって第1メディア・ストリームの第1タイムスタンプ値を第2メディア・ストリームの第2タイムスタンプ値と照合することによって、第1識別情報を第2識別情報と組み合わせて、第1メディア・ストリームのタイムライン情報を第2メディア・ストリームのタイムライン情報に相関付けることを可能にする相関サブシステムと、
を含む。
【0023】
実施形態は、従属請求項において定められる。
【0024】
以上の手段は、少なくとも2つのストリーム・モニタを含むシステムを提供する。2つのストリーム・モニタの各々は、異なるメディア・ストリーム、即ち、第1メディア・ストリームおよび第2メディア・ストリームについての識別情報を提供する。識別情報を提供するために、各ストリーム・モニタは、それぞれのメディア・ストリームの1つ以上のメディア・サンプルの永続的識別を入手する。ここで、「永続的識別」という用語は、メディア・ストリームを使用して再現可能に入手することができるデータを指す。永続的識別の例には、指紋、透かし、およびマーカが含まれ、これらはメディア・ストリームに永続的な形で含まれる。尚、このような識別は、例えば、メディア配給ネットワークを通じて、メディア・ストリームの配給中にメディア・ストリームに行われ得る種々の処理に対してこれらがロバストであるとよいということから、永続的であるのでもよいことは認められよう。更に、各ストリーム・モニタは、1つ以上のメディア・サンプルの永続的識別に関連付けられた、つまり前記メディア・サンプル(1つまたは複数)自体に関連付けられたタイムスタンプ値も判定する。タイムスタンプ値は、プレゼンテーション・タイムスタンプまたはRTPタイムスタンプのような、それぞれのメディア・ストリームに含まれ得るタイムライン情報から判定される。
【0025】
したがって、第1ストリーム・モニタは、第1メディア・ストリームの1つ以上のメディア・サンプルの少なくとも第1永続的識別、および第1メディア・ストリームの第1タイムライン情報から得られる関連第1タイムスタンプ値を供給し、一方第2ストリーム・モニタは、第2メディア・ストリームの1つ以上のメディア・サンプルの少なくとも第2永続的識別、および第2メディア・ストリームの第2タイムライン情報から得られる関連第2タイムスタンプ値を提供する。
【0026】
更に、続いて第1ストリーム・モニタから得られる第1識別情報および第2ストリーム・モニタから得られる第2識別情報を入手し、続いてこれらを組み合わせる相関サブシステムが設けられる。したがって、相関サブシステムには、少なくとも第1永続的識別およびその関連第1タイムスタンプ値、ならびに第2永続的識別およびその関連第2タイムスタンプ値が供給される。双方のメディア・ストリームは共通再生タイムラインと関連付けられているので、双方のメディア・ストリームを同期させて再生する、またそうでなければ処理する必要がある場合がある。しかしながら、双方のメディア・ストリームは、例えば、ストリームにおける同じ位置、即ち、コンテンツの同じ部分に対して異なるタイムスタンプ値を有することにより、異なるタイムライン情報を含むことができる。
【0027】
以上の手段は、第1メディア・ストリームと第2メディア・ストリームとの間においてこのような異なるタイムライン情報を相関付けることを可能にする。ここで、「相関付け」という用語は、本システムが、第1メディア・ストリームのタイムライン情報を第2メディア・ストリームのタイムライン情報に関係付けることを可能にすることを指す。したがって、第1メディア・ストリームのタイムライン情報からのタイムスタンプまたは他のタイミング・データを、第2メディア・ストリームのタイムライン情報からのタイミング・データに関係付けることができ、更にその逆にすることもできる。これが可能なのは、組み合わせられた第1識別情報および第2識別情報が、第1メディア・ストリームの第1永続的識別を第2メディア・ストリームの第2永続的識別と照合することを可能にするからである。ここで、「照合」という用語は、第1永続的識別が第2永続的識別と関係付けられることを言う。このような照合は、例えば、それらの特性の類似性に基づいて直接的であってもよく、または、例えば、共通再生タイムライン上におけるこれらの相対的位置に基づいて間接的であってもよい。具体的には、照合は、双方の永続的識別が時間的に、例えば、共通再生タイムラインに関して関係付けられてもよいことから、時間的な照合であってもよい。例えば、双方の永続的識別が同じ指紋を含む場合、これは、双方の永続的識別が共通再生タイムライン上における同じ再生時間に関係することを示すことができる。
【0028】
第1永続的識別が第2永続的識別と照合された内在的な結果として、それぞれの関連タイムスタンプ値が互いに照合されたことになる。したがって、前記照合が少なくとも第1タイムスタンプ値を第2タイムスタンプ値と相関付けることを可能にすることから、第1メディア・ストリームのタイムライン情報を第2メディア・ストリームのタイムライン情報に相関付けることができ、前記相関付けは、通例、双方のメディア・ストリーム間におけるタイムライン情報全体の相関付けを可能にするために、一般化が可能である。したがって、それぞれのメディア・ストリームの永続的識別を1回または限定された回数だけ照合した後、直接、即ち、永続的識別を更に使用することなく、双方のメディア・ストリームのタイムライン情報を相関付けることができる。
【0029】
本発明者は、以下のことを認識している。メディア・ストリームの1つ以上のメディア・サンプルの永続的識別を入手することは、メディア・ストリームに含まれるタイムライン情報からタイムスタンプ値を判定することに比較して、比較的計算的に複雑である可能性が高い。同様に、永続的識別は、タイムスタンプ値よりも、送信するために多くの帯域幅を必要とするおそれがある。したがって、メディア同期が適用されようとする全てのデバイスに、このような永続的識別を供給することを要求するのは欠点であるかもしれない。しかしながら、本発明者は、このようなデバイスの集合体が、同じタイムライン情報を含む第1メディア・ストリームの同じバージョンにアクセスできればよいことがわかった。例えば、デバイスの一群がメディア配給ネットワークの同じセグメント内に配置されるのでもよい。ここで、セグメントという用語は、メディア・ストリームが配給されるメディア配給ネットワークの一部を指し、第1境界においてメディア・ストリームの入力を含み、第2境界においてメディア・ストリームの少なくとも1つの出力または終点を含み、メディア・ストリームは入力および出力において本質的に同一である。したがって、メディア・ストリームのタイムライン情報は、セグメントにわたる配給の間維持される。
【0030】
タイムライン情報のみに基づく第1セグメントにおける第1群のデバイスと第2セグメントにおける第2群のデバイスとの間のメディア同期は、先に述べた理由のため信頼性に欠ける可能性があるが、本発明は、例えば、第1セグメントに配置され第1メディア・ストリームについての第1識別情報を提供する第1ストリーム・モニタ、および例えば、第2セグメントに配置され第2メディア・ストリームについての第2識別情報を提供する第2ストリーム・モニタを設けることによって、このようなメディア同期を可能にする。したがって、第1セグメントおよび/または第2セグメント内にある全てのデバイスが、このような永続的識別を入手し供給することは必要ではない。むしろ、第1識別情報を第2識別情報と組み合わせた後、前記デバイスがそれぞれのメディア・ストリームのタイムライン情報を提供し、次いで相関サブシステムによって他方のメディア・ストリームのタイムライン情報と相関付けできることに基づいて、双方のセグメント間、即ち、双方のセグメントにおけるデバイス上で、続いてメディア同期を行うことができる。
【0031】
したがって、本発明は、1つのデバイス上においてストリーム間同期または音声同期を行うため、あるいはコンパニオン・スクリーン同期、または宛先間同期というような、デバイス間においてストリーム間およびデバイス間同期を行うために、以前に関係付けられていないタイムスタンプを有するメディア・ストリームの同期を可能にすることができる。具体的には、本発明は、タイムライン情報はこのようなメディア・ストリーム間では直接的に関係付けることができない可能性があるという事実による、このようなメディア同期に通例付随する信頼性欠如を生ずることなく、それぞれのメディア・ストリームのタイムライン情報に基づいて、第1メディア・ストリームと第2メディア・ストリームとの間においてメディア同期を可能にすることができる。更に他の利点を挙げるとすれば、このようなメディア同期が適用されようとするデバイスが永続的識別を供給しなくてもよいことである。むしろ、このようなデバイスは、メディア・ストリームの現在のメディア・サンプルに関連付けられたタイムスタンプというような、メディア・ストリームのタイムライン情報を提供すれば十分である。したがって、デバイスの一群にわたってメディア同期を実行するために必要な帯域幅および/または計算的複雑さが低減する。
【0032】
実施形態では、第2メディア・ストリームが、第1メディア・ストリームの修正バージョンであり、前記修正バージョンが、第1メディア・ストリームのタイムライン情報とは異なるタイムライン情報を含むのでもよい。本システムは、第1メディア・ストリームとこの第1メディア・ストリームの修正バージョンとの間においてタイムライン情報を相関付けることを可能にするために使用されてもよい。このような修正は、メディア・ストリームの配給の間に頻繁に起こる可能性がある。したがって、本システムは、(未修正)第1メディア・ストリームのタイムライン情報に基づいて、第1メディア・ストリームの修正バージョンのメディア同期を可能にすることもできる。何故なら、第1メディア・ストリームの未修正バージョンおよび修正バージョン双方からの再現可能な永続的識別を使用するからであり、即ち、このような修正に対して影響を受けないからである。
【0033】
実施形態では、第1メディア・ストリームがメディア配給ネットワークを通じて配給されてもよく、このメディア配給ネットワークが、第1メディア・ストリームの修正バージョンを生成するストリーム・モディファイアを含み、第1ストリーム・モニタが、ストリーム・モディファイアのアップストリームにおいてメディア配給ネットワークに含まれてもよく、第2ストリーム・モニタが、ストリーム・モディファイアのダウンストリームにおいてメディア配給ネットワークに含まれてもよい。(再)マルチプレクサ、トランスコーダ、および再エンコーダのようなストリーム・モディファイアが、第1メディア・ストリームのタイムライン情報を修正または置換させてもよく、両方の場合に新たなタイムライン情報が形成される。メディア配給ネットワークに沿って設置されることによって、ストリーム・モディファイアは、事実上、メディア配給ネットワークのアップストリーム・セグメント、即ち、第1メディア・ストリームが配給されるときに通るセグメントと、メディア配給ネットワークのダウンストリーム・セグメント、即ち、第1メディア・ストリームの修正バージョンが配給されるときに通るセグメントとを形成する。アップストリーム・セグメントに第1ストリーム・モニタを設け、ダウンストリーム・セグメントに第2ストリーム・モニタを設けることによって、第1メディア・ストリームからのタイムライン情報を第1メディア・ストリームの修正バージョンからのタイムライン情報と相関付けることができることから、双方のセグメント間におけるメディア同期が可能になる。したがって、第1メディア・ストリームの修正バージョンのメディア同期は、(未修正)第1メディア・ストリームのタイムライン情報に基づいて可能となる。この実施形態の利点を挙げるとすれば、メディア・ストリーム発信、例えば、ブロードキャスタにおけるメディア・ストリームのタイムライン情報に関して定義されることが頻繁にある、受信機におけるアプリケーションのトリガというような同期アクションを、このようなメディア・ストリームの修正バージョンにも同様に適用できることである。
【0034】
実施形態では、相関サブシステムは、第1永続的識別および第2永続的識別を共通再生タイムラインにリンクする第3識別情報に基づいて、第1永続的識別を第2永続的識別と照合するように構成されるのでもよい。したがって、相関サブシステムは、共通の再生タイムラインを通じて、第1永続的識別を第2永続的識別と関係付けることができる。例えば、相関サブシステムは、第3識別情報を使用して、第1永続的識別を共通再生タイムライン上の第1再生時間と照合し、第2永続的識別を共通再生タイムライン上の第2再生時間と照合することができる。この目的のために、第3識別情報は、例えば、複数の永続的識別、および共通再生タイムライン上における、関連する複数の再生時間を含むとよい。前記照合の内在的な結果として、それぞれの関連するタイムスタンプ値も、共通再生タイムライン上におけるそれぞれの再生時間と照合されたことになる。したがって、第1再生時間が第2再生時間と異なる場合、相関サブシステムは、第1タイムライン情報を第2タイムライン情報に相関付けるときに、この差を考慮に入れることができる。この実施形態の利点を挙げるとすれば、第1メディア・ストリームおよび第2メディア・ストリームが異なる形式のメディア・ストリームであるか、または双方の永続的識別が、コンテンツに関して、同一または同様のメディア・ストリームの異なる再生時間において得られた場合にあり得るように、双方の永続的識別が互いに異なっても、第1永続的識別を第2永続的識別と照合できることである。
【0035】
実施形態では、第1メディア・ストリームおよび第2メディア・ストリームが、共通タイムライン情報を含むメディア・ストリームの複合体の一部であってもよく、本システムが、更に、メディア・ストリームの複合体についての前記第3識別情報を提供する第3ストリーム・モニタを含んでもよい。ここで、「メディア・ストリームの複合体」という用語は、共通再生タイムラインと意図的に関連付けられることにより、このようなメディア・ストリームの複合体を形成するメディア・ストリームを指す。尚、メディア・ストリームの複合体は、複合メディア・ストリームの形態で配給されてもよいが、そうされなくてもよいことを注記しておく。ここでは、「複合メディア・ストリーム」という用語は、2つ以上のメディア・ストリームで構成された、即ち、複合されたメディア・ストリームを指す。メディア・ストリームの複合体は、配給の間、メディア・ストリームの少なくとも1つがタイムライン情報を含み、このタイムライン情報がメディア・ストリームの複合体の共通再生タイムラインを確立する役割を果たすことができることから、共通タイムライン情報を含むことができる。例えば、第3ストリーム・モニタは、メディア配給ネットワークにおいてメディア・ストリームの複合体の発信地の近くに設けられてもよく、メディア・ストリームの各々に対する複数の永続的識別と共通再生タイムライン上における関連する複数の再生時間とを含む識別情報を本システムに提供することができる。前記第3識別情報を提供する第3ストリーム・モニタを設けることによって、本システムは、第1永続的識別および第2永続的識別を共通再生タイムラインにリンクすることができる。
【0036】
実施形態では、第2メディア・ストリームが、メディア配給ネットワークを通じて配給されてもよく、メディア配給ネットワークが、更に、第2メディア・ストリームに関して同期アクションを実行する同期サブシステムを含んでもよく、相関サブシステムが、第1メディア・ストリームのタイムライン情報に基づいて同期サブシステムが同期アクションを実行することを可能にするためのタイミング情報を提供するように構成されてもよい。ここで、同期サブシステムは、特許請求するメディア配給ネットワークおよび/または本システムの一部であってもよいが、その必要はないことから、「サブシステム」である。相関サブシステムは、同期サブシステムのエンティティと相互作用して、第1メディア・ストリームのタイムライン情報に基づいて、同期アクションを第2メディア・ストリームに関して実行することを可能にするのでもよい。尚、このような相互作用は、クエリ−応答型相互作用のような、種々の形態を取ることができることは認められよう。クエリ−応答型相互作用では、同期サブシステムのエンティティが、第2メディア・ストリームのタイムライン情報からのタイムスタンプを含むクエリを供給し、相関サブシステムが、タイミング情報の形態の応答を供給する。この応答は、共通再生タイムライン上において同じ再生時間に関係する第1メディア・ストリームのタイムライン情報からのタイムスタンプを含む。ここで、タイミング情報は、したがって、相関サブシステムの出力を構成するのでもよい。タイミング情報は、相関サブシステムによって、第1メディア・ストリームと第2メディア・ストリームとの間においてタイムライン情報を相関付けることによって、入手可能である。このようなクエリ−応答型相互作用のフォーマットは、例えば、アプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)によって指定されてもよい。事実上、相関サブシステムは、同期サブシステムのエンティティに変換サービスを提供することができ、この変換サービスは、タイムスタンプおよび第2メディア・ストリームのタイムライン情報からの他のタイミング・データを、第1メディア・ストリームのタイムライン情報に変換することを含む。
【0037】
実施形態では、同期アクションが、
−複数の受信機上において第1メディア・ストリームおよび/または第2メディア・ストリームの同期再生を可能にするために、メディア・ストリームがバッファするか、または先にスキップするアクション、
−受信機上において第1メディア・ストリームの第2メディア・ストリームとの同期再生を可能にするために、メディア・ストリームがバッファするかまたは先にスキップするアクション、および
−受信機上におけるメディア・ストリームの再生と同期する、受信機上におけるアプリケーションのトリガ、
から成る一群の内の1つであってもよい。
【0038】
メディア・ストリームがバッファするまたは先にスキップすることに関する同期アクションは、多数のユーザの多数の受信機にわたる同一または同様のメディア・ストリームの同期が望まれる前述のソーシャルTVのシナリオ、異なるメディア・ストリームの1つの受信機に対する同期が望まれるハイブリッドTVのシナリオ、およびTV受像機とコンパニオン・スクリーンとの間において同一のまたは異なるメディア・ストリームを同期させることが望まれるコンパニオン・スクリーンのシナリオにおいてメディア同期を実行するために、望まれるであろう。尚、メディア・ストリームのバッファ処理は、受信機自体において、即ち、内部同期クライアントを使用して実行されるのでもよいが、そうされなくてもよいことを注記しておく。例えば、メディア・ストリームのバッファ処理または前方へのスキップは、受信機のアップストリームにおいて、メディア配給ネットワークに含まれる同期クライアントによって実行されてもよい。アプリケーションのトリガに関する同期アクションは、クイズの問題、広告等の同期表示(synchronized presentation)を実行するため、またはアプリケーションを起動して他の形式のアクションを実行させるために望まれるであろう。
【0039】
実施形態では、同期サブシステムが、同期サーバと、複数の同期クライアントとを含んでもよく、複数の同期クライアントが、第2メディア・ストリームを配給するように構成されたメディア配給ネットワークのセグメントに含まれてもよく、第2ストリーム・モニタが、複数の同期クライアント間においてセグメントに含まれてもよい。ここで、「同期サーバ」という用語は、同期サブシステムにおいて、クライアント−サーバ・モデルにしたがって、即ち、分散型でメディア同期を実行するために同期クライアントと協働するエンティティを指す。具体的には、複数の同期クライアントの各々はエンド・ユーザの受信機に含まれてもよく、一方同期サーバは、複数の受信機にわたるメディア同期を調整することを可能にするために、前記受信機の外部に設けられてもよい。同期サーバは、WO2010106075A1に、具体的には[0073]段落以降に記載されているメディア同期アプリケーション・サーバ(MSAS)と同様の機能を同期クライアントに提供するために、本発明による相関サブシステムを含んでもよい。この実施形態の利点を挙げるとすると、第2メディア・ストリームがセグメントにわたって配給されるので、セグメント内部では、セグメントにわたるタイミング情報を第1メディア・ストリームのタイミング情報と相関付けることを可能にするためには、1つまたは限定数のストリーム・モニタだけがあればよいことである。限定数のストリーム・モニタは、バックアップの理由のためでもよい。したがって、各受信機がストリーム・モニタを含まなくてもよい。むしろ、1つの受信機だけがストリーム・モニタを含めばよく、または1つのストリーム・モニタだけが、セグメントにおいて別個の、即ち、単体のエンティティとして含まれればよい。あるいは、セグメントが複数のストリーム・モニタを含んでもよいが、これらのストリーム・モニタの内1つだけを作動させればよい。
【0040】
実施形態では、相関サブシステムが、第2ストリーム・モニタによる第2メディア・ストリームの監視に基づいて、第2メディア・ストリームに関して前記同期クライアントが同期アクションを実行することを可能にするために、セグメントにおける複数の同期クライアントにタイミング情報を提供するように構成されてもよい。したがって、1つのみまたは限定数のストリーム・モニタによる第2メディア・ストリームの監視に基づいて、複数の同期クライアントにわたってメディア同期を採用することもできる。例えば、メディア同期は、複数の受信機にわたって採用されてもよい。各受信機は、同期クライアントの1つを含み、メディア配給ネットワークの同じセグメントに、例えば、同じヘッド・エンドのダウンストリームに配置され、これらの受信機の内1つまたは限定数のみが識別情報を提供すればよく、つまり比較的高い計算の複雑さおよび/または高い帯域幅をサポートすればよい。
【0041】
実施形態では、永続的識別が、指紋、透かし、およびマーカ、または1つ以上のメディア・サンプルから成る一群の内の1つであってもよい。指紋および透かしは、メディア・ストリームの1つ以上のメディア・サンプルの永続的識別を提供するというそれらの能力が良く知られている。これは、各々が、メディア・ストリームの配給中にメディア・ストリームから再現可能に入手することができるデータを生成するからである。また、永続的にメディア・ストリームに含まれるマーカも、このようなデータが前記配給の間にメディア・ストリームから再現可能に得られることを可能にする。
【0042】
実施形態では、メディア配給ネットワークが、ストリーム・モディファイアのダウンストリームにヘッド・エンドを含んでもよく、第2ストリーム・モニタがヘッド・エンドにまたはそのダウンストリームに含まれてもよい。ここで、「ヘッド・エンド」という用語は、それぞれのエンド・ユーザの複数の受信機のような、複数のデバイスのために配給地点として機能する、メディア配給ネットワークにおける機能エンティティを指す。ヘッド・エンドにおいてまたはそのダウンストリームにおいて第2ストリーム・モニタを設けることによって、ヘッド・エンドを介して配給されている第1メディア・ストリームの修正バージョンのタイムライン情報を、(未修正)第1メディア・ストリームのタイムライン情報と相関付けることができる。したがって、ヘッド・エンドを介して第1メディア・ストリームの修正バージョンを入手する全てのデバイスに対して、メディア同期を可能にすることができる。具体的には、ヘッド・エンドのダウンストリーム側のメディア配給ネットワークをセグメントと見なす場合、前記セグメント内に配置された1つまたは限定数のストリーム・モニタのみに基づいて、セグメント内部にある全てのデバイスに対してメディア同期を可能にすることができ、これによってセグメント外部のデバイスとの同期、即ち、他のセグメントにおいて、または(未修正)第1ストリームと以前は時間に関してのみ関係付けられていたストリームとの同期を可能にする。
【0043】
本発明の他の態様では、メディア配給ネットワークが本システムを含んでもよい。
【0044】
本発明の他の態様では、ストリーム・モニタおよび/または相関サブシステムが、本システムにおいて使用されるように設けられてもよい。
【0045】
本発明の他の態様では、本システムと共に使用するための同期クライアントを提供することができる。同期クライアントは、同期クライアントが含まれるセグメントを、相関サブシステムに対して識別するように構成されてもよい。相関サブシステムは、異なるセグメントに含まれるストリーム・モニタから受信された異なる識別情報に基づいて、メディア配給ネットワークの異なるセグメントにおける使用のために、タイミング情報を提供するように構成されてもよい。同期クライアントが含まれるセグメントを識別することによって、例えば、手動で設定されたパラメータ、電子プログラム・ガイド(EPG)からのパラメータ、受信されたストリームからのパラメータ等を報告することによって、相関システムがしかるべきタイミング情報を同期クライアントに提供することを可能にする。即ち、このタイミング情報は、同期クライアントと同じセグメントに含まれるストリーム・モニタの識別情報に基づく。
【0046】
本発明の他の態様では、 第1メディア・ストリームと第2メディア・ストリームの間においてタイムライン情報を相関付けることを可能にする方法を提供する。第1メディア・ストリームおよび第2メディア・ストリームの双方が、共通の再生タイムラインに関連付けられており、前記相関付けが、少なくとも2つのストリーム・モニタから得られる識別情報に基づき、前記ストリーム・モニタの各々が、
i)メディア・ストリームの1つ以上のメディア・サンプルの永続的識別を入手し、永続的識別が、メディア・ストリームを使用して再現可能に入手することができるデータであり、
ii)永続的識別に関連付けられたタイムスタンプ値を、メディア・ストリームに含まれるタイムライン情報から判定し、
iii)タイムスタンプ値と、1つ以上のメディア・サンプルの永続的識別を識別情報として提供することによって、
メディア・ストリームについての識別情報を提供するように構成される。
【0047】
この方法は、
−少なくとも2つのストリーム・モニタの内第1ストリーム・モニタから、第1メディア・ストリームについての第1識別情報を入手するステップと、
−少なくとも2つのストリーム・モニタの内第2ストリーム・モニタから、第2メディア・ストリームについての第2識別情報を入手するステップと、
−第1メディア・ストリームの第1永続的識別を第2メディア・ストリームの第2永続的識別と照合し、これによって第1メディア・ストリームの第1タイムスタンプ値を第2メディア・ストリームの第2タイムスタンプ値と照合することによって、第1識別情報を第2識別情報と組み合わせて、第1メディア・ストリームのタイムライン情報を第2メディア・ストリームのタイムライン情報に相関付けることを可能にするステップとを含む。
【0048】
本発明の他の態様では、先の方法をプロセッサ・システムに実行させるための命令を含むコンピュータ・プログラム製品を提供することができる。
【0049】
尚、以上で述べた本発明の実施形態、実施態様、および/または態様の内2つ以上を、有用と考えられる任意の方法で組み合わされてもよいことは、当業者によって認められよう。
【0050】
説明した本システムの変更および変形に対応する、前述の方法および/またはコンピュータ・プログラム製品の変更および変形は、この記載に基づいて、当業者によって実行することができる。
【0051】
本発明は、独立請求項において定められる。有利であるが任意である実施形態は、従属請求項において定められる。
【0052】
本発明のこれらおよびその他の態様は、以下で説明する実施形態から明白となり、これらの実施形態を参照することにより解明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1図1は、多数のメディア同期の使用事例を示す。
図2図2は、本発明によるストリーム・モディファイアおよびストリームの修正バージョンと(未修正)ストリームとの間においてタイムライン情報を相関付けるシステムを含むメディア配給ネットワークを示す。
図3図3は、セグメント化メディア配給ネットワークを示す。
図4図4は、このようなセグメント化メディア配給ネットワークのコンテキストの中における、本発明によるシステムを示す。
図5図5は、メディア・ストリームにファイルに基づいてアクセスすることができる受信機のコンテキストの中における、本発明によるシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
尚、異なる図において同じ参照番号を有する項目は、同じ構造的特徴および同じ機能を有する、あるいは同じ信号であることは注記してしかるべきである。このような項目の機能および/または構造が既に説明されている場合、詳細な説明においてその説明を繰り返すことは不要である。
【0055】
図1は、メディア配給ネットワーク101を示し、このネットワークにおいて、複数のメディア・ストリーム020〜024が種々のユーザ機器(UE)181〜185に配信される。ここでは、ユーザ機器という用語は、1つ以上のメディア・ストリームを受信し、そして通例では再生も行うように構成されたエンド・ユーザのデバイスを指す。このようなデバイスは、受信機、端末、またはエンド端末(end-terminal)とも呼ぶ。図1は、メディア同期の種々の使用事例を総合的に示す。メディア・ストリームA020およびメディア・ストリームB022は、メディア・ストリームA発信元110およびメディア・ストリームB発信元112からそれぞれ発信し、2つの異なるカメラ・ビューを供給する。一方、メディア・ストリームC発信元114は、付加価値サービス・プロバイダからのものとすることができ、例えば、コメンテータ・オーディオ・ストリームの形態でメディア・ストリームC024を供給する。例えば、コメンテータがメディア・ストリームB022を見て、メディア・ストリームC024を使用して彼または彼女のコメントを提示しているのでもよい。
【0056】
メディア配給ネットワーク101は、トランスコーダ120およびマルチプレクサ122の形態としたストリーム・モディファイア120、122を含むことが示されている。これらを省略してミキサとも呼ぶ。トランスコーダ120は、メディア・ストリームB022をトランスコードすることによって、メディア・ストリームのトランスコード・バージョンB040を供給することが示され、一方マルチプレクサ122は、メディア・ストリームB022をメディア・ストリームC024と多重化することによって、混合メディア・ストリーム042を形成する(establish)ことが示されている。以上のメディア・ストリーム020〜042は、以下の使用事例を例示するために、種々のユーザ機器に配信されることが示されている。
【0057】
ハイブリッドTVの使用事例:
1.UE1 181はハイブリッドTVであってもよく、主ブロードキャスト・メディア・ストリームをDVBストリームとしてメディア・ストリーム発信元1から受信し、付随メディア・ストリームをMPEG−DASHストリームとしてメディア・ストリーム発信元2から受信する。
【0058】
2.また、UE1 181は、主ブロードキャスト・メディア・ストリームをDVBストリームとしてメディア・ストリーム発信元1から受信し、付随メディア・ストリームをRTP/IPストリームとしてメディア・ストリーム発信元2から受信するハイブリッドTVであってもよい。
【0059】
3.また、UE1 181は、主ブロードキャスト・メディア・ストリームをインターネット・プロトコルTV(IPTV)マルチキャスト・ストリームとしてメディア・ストリーム発信元1から受信し、付随メディア・ストリームをRTP/IPストリームとしてメディア・ストリーム発信元2から受信するハイブリッドTVであってもよい。
【0060】
ソーシャルTVの使用事例:
1.UE2 182およびUE3 183は、ソーシャルTVに使用される2台のTVであってもよい。UE2は、メディア・ストリーム発信元2からメディア・ストリームを受信することができ、一方UE3は同じメディア・ストリームのトランスコード・バージョンを受信することができる。
【0061】
2.UE2 182およびUE4 184は、ソーシャルTVに使用される2台のTVであってもよい。UE4は、メディア・ストリーム発信元2および3からのメディア・ストリームを組み合わせた混合メディア・ストリームを受信することができる。
【0062】
コンパニオン・スクリーンの使用事例:
1.UE2 182はTVであってもよく、そしてUE3 183はタブレット・デバイスであってもよい。1つのメディア・ストリームがTV上で再生され、このメディア・ストリームのトランスコード・バージョンがタブレット・デバイス上で再生されるのでもよい。
【0063】
2.UE2 182はTVであってもよく、そしてUE5 185がタブレット・デバイスであってもよい。1つのメディア・ストリームがTV上で再生され、異なるメディア・ストリームがタブレット・デバイス上で再生されるのでもよい。
【0064】
本発明は、これらのメディア・ストリームの2つ以上の間においてメディア同期を可能にするために、以上で説明した使用事例に適用することができる。本発明について、図2図7を参照して更に説明する。
【0065】
図2は、本発明による第1実施形態を示す。ここでは、メディア配給ネットワーク102が示されており、タイムスタンプTSの形態でタイムライン情報を含むメディア・ストリームA020を供給するメディア・ストリーム発信元A110を含む。メディア・ストリームA020は、UE1 181に配信され、更にトランスコーダ120の形態のストリーム・モディファイア120に配信されることが示されている。トランスコーダ120は、メディア・ストリームA020をトランスコードして、短いメディア・ストリームB40において、メディア・ストリームAのトランスコード・バージョンを生成することが示されている。メディア・ストリームB40は、タイムスタンプTSの形態で新たなタイムライン情報を含む。したがって、メディア・ストリームAおよびメディア・ストリームBは、双方共共通の再生タイムラインに関連付けられているが、異なるタイムライン情報を含む。メディア・ストリームB040は、UE182に配信されることが示されている。
【0066】
図2は、更に、メディア・ストリームAとメディア・ストリームBとの間においてタイムライン情報を相関付けるシステムも示す。このシステムは、2つのストリーム・モニタ(SM)、即ち、ストリーム・モニタA201およびストリーム・モニタB202を含む。本発明によれば、前記ストリーム・モニタの各々は、メディア・ストリームについての識別情報を提供するように構成することができ、i)メディア・ストリームの1つ以上のメディア・サンプルの永続的識別を入手し、この永続的識別が、メディア・ストリームを使用して再現可能に入手することができるデータであり、ii)メディア・ストリーム内に含まれるタイムライン情報から永続的識別に関連付けられたタイムスタンプ値を判定し、iii)1つ以上のメディア・サンプルのタイムスタンプ値および永続的識別を、識別情報として提供する。
【0067】
具体的には、図2は、メディア・ストリームA020についての識別情報A080を提供するメディア・モニタA201、およびメディア・ストリームB040についての識別情報B082を提供するストリーム・モニタBを示す。
【0068】
図2は、更に、相関サブシステム300も示す。相関サブシステム300は、先に述べたシステムの一部であり、メディア・ストリームAとメディア・ストリームBとの間においてタイムライン情報を相関付けることを可能にする。相関サブシステム300は、識別情報A080をストリーム・モニタA201から、そして識別情報B082をストリーム・モニタB202から受信することが示されている。本発明によれば、相関サブシステムは、識別情報Aを識別情報Bと組み合わせて、メディア・ストリームAのタイムライン情報を、メディア・ストリームBのタイムライン情報に相関付けることを可能にするように構成することができる。この目的のために、相関サブシステム300は、メディア・ストリームAの永続的識別をメディア・ストリームBの永続的識別と照合し、これによって、第1メディア・ストリームのタイムスタンプ値、例えば、タイムスタンプTSの1つを、第2メディア・ストリームのタイムスタンプ値、例えば、タイムスタンプTSの1つと照合することができる。
【0069】
以下に、本システムの動作の更に詳細な例を示す。この例では、ストリーム・モニタAおよびストリーム・モニタBが、これらそれぞれの識別情報の一部として、以下のタイムスタンプ値を供給すると仮定する。
【0070】
−ストリーム・モニタAは、1:43:32,200.のタイムスタンプ値Aを供給することができる。これは、正規のクロック・フォーマットであり、正規のクロックと同様に増加することができる。
【0071】
−ストリーム・モニタBは、3,600,000のタイムスタンプ値Bを供給することができる。これは、RTPタイムスタンプであり、これに対するクロック・レートは分からない場合もある。
【0072】
次いで、相関サブシステム300は、関連付けられた永続的識別を時間的に照合することによって、双方のタイムスタンプ値を相関付けることができる。例えば、相関サブシステム300は、永続的識別AおよびBが、再生時間において4秒の差を有し、メディア・ストリームAが先行すると判定することができる。この目的のために、相関サブシステム300は、複数の永続的識別、および共通再生タイムライン上において関連する複数の再生時間を含む追加の識別情報を使用することができる。このような追加の識別情報は、ストリーム・モニタAまたはBの一方から、あるいはこのような識別情報を所定の形態で含むデータベースから得られたのでもよい。あるいは、相関サブシステム300が、このような追加の識別情報なく、永続的識別AおよびBを時間的に照合するのでもよい。例えば、永続的識別AおよびBが同一または同様である場合、相関サブシステム300は、双方が同一または同様の再生時間に関係すると判定することができる。また、永続的識別AおよびB自体が、これらがどのように時間的に一致するか示すこともできる。
【0073】
3,600,000のタイムスタンプ値Bに対するクロック・レートは未知であるが、メディア・ストリームAのタイムライン情報を、それでもなお、メディア・ストリームBのタイムライン情報に相関付けることができる。即ち、4秒の差をタイムスタンプ値Aから減算して、1:43:28.200.のタイムスタンプ値を求めることによって相関付けることができる。したがって、メディア・ストリームAに対する1:43:28.200.のタイムスタンプ値は、メディア・ストリームBに対する3,600,000のタイムスタンプ値と対応すると判定することができる。
【0074】
しかしながら、ある場合には、タイムスタンプに関連付けられたクロック・レートというような追加情報が必要とされることもある。以下の例では、ストリーム・モニタAおよびストリーム・モニタBが以下のタイムスタンプ値をそれらそれぞれの識別情報の一部として供給すると仮定する。
【0075】
−ストリーム・モニタAは、512,000のタイムスタンプ値Aを供給することができる。
【0076】
−ストリーム・モニタBは、1,312,000のタイムスタンプ値Bを供給することができる。
【0077】
この場合も、永続的識別AおよびBは、再生時間に4秒の差があり、メディア・ストリームAが先行すると仮定する。以上のタイムスタンプ値AおよびBを相関付けるために、それぞれに使用されたクロック・レートが必要とされるであろう。これは、例えば、ストリーム・モニタA201および/またはB202によって判定される、使用されたA/Vプロファイルから導き出すことができ、あるいはUEによって相関サブシステム300に伝達されてもよい。この特定例では、双方のストリームがオーディオを搬送するRTPストリームである。したがって、相関サブシステムは、メディア・ストリームAのクロック・レートは16,000であり、メディア・ストリームBのクロック・レートは8,000であると判定することができる。
【0078】
この追加情報は、タイムスタンプ値AおよびBを相関付けることを可能にする。メディア・ストリームAは4秒だけ先行するので、2つのタイムスタンプを相関付けるためには、4秒をタイムスタンプ値Aから減算すればよい(または、4秒をタイムスタンプ値Bに加算してもよい)。メディア・ストリームAのタイムライン情報において、4秒に16,000を乗算した値は64,000に等しいので、512,000−64,000=448,000のタイムスタンプ値Aが、1,312,000のタイムスタンプ値Bに対応すると判定される。
【0079】
これに関して、タイムライン情報が一定の粒度を有するとよい、即ち、収容されるタイムスタンプまたは他のタイミング・データが合法値および違法値を有するとよいことを注記しておく。また、この情報は、相関サブシステム300によって、例えば、タイムライン情報の粒度、したがってタイムスタンプを考慮して、計算されたタイムスタンプ値を最も近い合法値に丸めるために使用されてもよい。
【0080】
図2は、相関サブシステム300の出力、即ち、タイミング情報090を示す。これは、定時イベントをブロードキャストと同期させるとき、具体的には、受信機、即ち、EU2 182上においてメディア・ストリーム再生と同期させて、受信機上でアプリケーションをトリガするときに使用される。このような同期は、同期アクションの一例である。相関サブシステム300の出力に基づいて実行することができる同期アクションの他の例には、複数の受信機上において1つ以上のストリーム(one or media stream)の同期再生(playback)を可能にするために、メディア・ストリームがバッファすることまたは先にスキップすること、あるいは(1つの)受信機上において2つ以上のメディア・ストリームの同期再生を可能にするために、メディア・ストリームがバッファすることまたは先にスキップすることが含まれる。
【0081】
1つ以上のブロードキャストされるメディア・ストリームと定時イベントとの同期は、それ自体周知である。このような同期は、例えば、自宅にいるユーザが、ブロードキャストにおける回答者と同時に質問を見ることを可能にすることによって一緒に参加することができ、回答者を一緒に参加させる(play)クイズ・ショーを可能にする。このようなイベントは、ブロードキャスタがこれらのイベントを、例えば、メタデータの形態で、メディア・コンテンツを搬送するコンテナに挿入することによって、受信機に指示することができ、これによってイベントを直接メディア・ストリームにリンクする。しかしながら、このようなメタデータが種々のメディア配給ネットワークを通過できない場合がある。また、クイズ・ショーにおいて一緒に出される質問(play-along question)が、タブレット・デバイスのような二次デバイス上に示されることもあり、この場合、この二次デバイスにTVのような主ディスプレイ・デバイスとの同期が必要となる。
【0082】
図2は、イベント・サーバ350を示す。イベント・サーバ350は、イベント情報322をUE1 182およびUE2 182に提供することによって、タイムスタンプTSA,1、即ち、メディア・ストリームAにおける特定のタイムスタンプにおけるある種のイベントAを指示するように構成される。このイベントは、テレビジョン・ゲーム・ショーにおいて尋ねられるクイズの質問に対応するのでもよく、または投票を提出するための時間が終了したことを示すのでもよい。UE1 181は、このイベントに対して適した時点において直接動作することができる。これは、イベント・サーバ350によって示されるタイムスタンプTSA,1がメディア・ストリームAにおけるこれらに対応するからである。ここで、「〜に対応する」という用語は、受信されたメディア・ストリームのタイムライン情報に関して、即ち、他のタイムスタンプTSとして、表現されたタイムスタンプTSA,1を指す。したがって、UE1 181は、直接的にそして正しい時点で、即ち、メディア・ストリームAのメディア・ストリーム再生と同期して、UE1上において、例えば、クイズの質問を図式的に提示するアプリケーションを起動することができる。しかしながら、UE2 182はイベント情報322を直接使用することはできない。とは言え、UE2 182がイベント情報322を使用することを可能にするために、相関サブシステム300は、相関情報090をUE2 182に提供することが示されている。これによって、UE2 182がタイムスタンプTSA,1をタイムスタンプTSB,1に変換することが可能になる。タイムスタンプTSB,1は、メディア・ストリームBに含まれるタイムライン情報のタイムスタンプTSに対応する。
【0083】
尚、相関サブシステム300が相関情報090をUE2 182に提供することを示したが、このような情報はイベント・サーバ350にも提供してもよいことは認められよう。したがって、それぞれのメディア・ストリームのタイムライン情報のタイムスタンプに対応する受信機の各々に、イベント・サーバ350がイベント情報322を、即ち、UE1 182にはタイムスタンプTSA,1の形態で、そしてUE2 182にはタイムスタンプTSB,1の形態で、提供することを可能にするのでもよい。
【0084】
本発明は、セグメント化メディア配給ネットワークにおいてメディア同期を可能にするために使用できるという利点がある。ここでは、セグメント化メディア配給ネットワークという用語は、各々が1つ以上のメディア・ストリームを配給する数個のセグメントを含むメディア配給ネットワークを指す。
【0085】
図3は、そのようなセグメント化メディア配給ネットワーク103の例を示す。メディア配給ネットワーク103は、メディア・ストリーム発信元110〜114と、トランスコーダ120およびマルチプレクサ122の形態であるストリーム・モディファイア120、122とを含むことが示されている。図1のメディア配給ネットワークに関する相違は、図3では、メディア・ストリームがメディア配給ネットワーク103のヘッド・エンド141〜145に配信されることが示され、ヘッド・エンドの各々が、それぞれのエンド・ユーザの複数の受信機というような、複数のデバイスのための配給地点として機能することである。したがって、ヘッド・エンドは、メディア配給ネットワーク103の多数のセグメント161〜165を形成し、その各々が異なる複数のデバイスを含む。図3は、このようなメディア配給ネットワーク103においてよく見られる構成を示し、ストリーム・モディファイア120、122は、ヘッド・エンド内やダウンストリーム側ではなく、ヘッド・エンド141〜145のアップストリーム側において、メディア配給ネットワーク103に含まれてもよい。
【0086】
本発明は、それぞれのセグメントにおけるメディア・ストリームのタイムライン情報がセグメントの実質的に全体にわたって同じであるという仮定に基づいて、特に、このような変更を受信機自体において除外するときに、このようなセグメント化メディア配給ネットワークに適用することができる。
【0087】
図4は、これの結果を示し、図4は、このようなセグメント化メディア配給ネットワーク104のコンテキストの中における本発明によるシステムを示す。ここでは、3つのメディア・ストリーム発信元110〜114と、4つのヘッド・エンド141〜144が示されている。ヘッド・エンド141〜144の各々は、1組の受信機を配備し(serve)、各受信機は同期クライアントSCを含む。明確化の理由のために、図4は、受信機自体を示さず、代わりに、セグメントの各々において同期クライアント400のみを示す。更に、図4における各セグメントは3つの同期クライアントだけを含み、したがって3台の受信機だけの使用を示すが、実際には、このようなセグメントはそれよりもかなり多い数の受信機および付随する同期クライアントを含むこともあることは認められよう。図4は、更に、セグメントの各々に、即ち、ヘッド・エンド141〜144の各々のダウンストリーム側に配置されたストリーム・モディファイア201〜204も示す。
【0088】
図4のコンテキストの中における本システムの動作について、以下のように説明する。各メディア・ストリームは、永続的識別ユニットを通ることができ、このユニットは、それぞれのメディア・ストリームの1つ以上のメディア・サンプルの永続的識別を入手する。永続的識別ユニットは、図4では、指紋、透かし、および/またはマーカ(FWM)ユニット210〜214として示されている。図4に示すように、異なるFWMユニット210〜214が互いに通信し、マスタ・ウォール・クロック(master wall clock)を有することができ、これによって、永続的識別を時間的に関係付けることが可能になる。加えてまたは代わりに、FWMユニット210〜214の地点(point)においてメディア・ストリーム間に正確な同期を確立するために、ブロードキャスタまたは付加価値サービス・プロバイダによる手動編集制御(manual editorial control)があってもよい。FWMユニットは、永続的識別(1つまたは複数)を入手するために指紋を採用することもできる。この場合、FWMユニットはメディア・ストリームを受動的に監視することができる。また、FWMユニットは透かしまたはマーキングを採用することもできる。これらの場合、FWMユニットはこれらの(透かし)マークをそれぞれのメディア・ストリーム内に能動的に入れることができる。その結果、FWMユニット210〜214は、同時に再生すべき異なるセグメントからのメディア・サンプルを相関付ける複数の永続的識別を供給することができる。このような情報は、図4において破線の矢印で示すように、相関サブシステム300に識別情報の形態で提供されてもよい。このような識別情報は、更に、メディア・ストリームのタイムライン情報の関連タイムスタンプ、即ち、コンテンツ・タイムスタンプも含むことができる。事実上、各FWMユニット210〜214は、永続的識別およびメディア・ストリームのメディア・サンプルの関連タイムスタンプを供給することから、ストリーム・モニタを構成することもできる。
【0089】
ヘッド・エンド141〜144によって形成された各セグメントにおいて、ストリーム・モニタ201〜204が置かれ、セグメントの各々において配信されるメディア・ストリームから永続的識別を入手する。この永続的識別の形式を、FWMユニット210〜214のそれと照合すればよい。次いで、各ストリーム・モニタ201〜204は、識別情報を相関サブシステム300に提供する。この識別情報は、1つ以上の永続的識別と、メディア・ストリームのタイムライン情報からの関連タイムスタンプとを含む。次いで、相関サブシステム300は、セグメントの各々においてメディア・ストリームのタイムライン情報を相関付けることを可能にするために、この識別情報を組み合わせることができる。即ち、1つのセグメントにおけるメディア・ストリームの永続的識別を、他のセグメントにおける第2メディア・ストリームの永続的識別と時間的に照合することによって、関連タイムスタンプ値を時間的に照合する。このようにして、相関サブシステム300は、異なるセグメント間においてメディア・ストリームのタイムスタンプがどのように相関するか判定することが可能になるとよい。
【0090】
尚、図4には示されないが、ヘッド・エンド141〜144が同じメディア・ストリームの異なる修正バージョンおよび/または未修正バージョンを受信した場合、1つのセグメントからの永続的識別を他のセグメントからの永続的識別と直接時間的に照合することができるので、FWMユニットを不要にすることもできる。
【0091】
図4は、同期サーバ、即ち、メディア同期アプリケーション・サーバ(MSAS)に含まれる相関サブシステム300を示す。MSAS300および同期クライアント400は、これらがメディア・ストリームに関して同期アクションを実行することを可能にすることから、同期サブシステムを形成する。図4のMSAS300は、FWMユニット210〜214および同期モニタ201〜204から識別情報を受信することが示されている。MSAM300は、この情報を組み合わせて、1つ以上の同期クライアント400のためにタイミング情報を生成することができる。例えば、タイミング情報は、受信機が受信しているメディア・ストリームからのタイムライン情報に関して表現されたタイムスタンプを含むことができ、これによって1つ以上の同期クライアント400が、受信されたメディア・ストリームに関して同期アクションを実行することが可能になる。
【0092】
図4に示すように、そして本発明によれば、それぞれのセグメント各々における同期クライアント400の数と比較して、1つまたは限定数のストリーム・モニタ201〜204だけを設ければ十分な場合もある。MSAS300が多数のセグメントにサービスを提供する場合、MSAS300が、それぞれの同期クライアント400がどのセグメントに属するのか判定することが必要になることもある。ここで、セグメントは、ストリーム・モニタに関してMSAS300内部で定義されてもよいことを注記しておく。したがって、ストリーム・モニタがセグメントに関連付けられる必要はなく、代わりに、同期クライアントがストリーム・モニタと関連付けられ、これによってセグメントを形成すればよい。このような情報は、各同期クライアント400によって暗示的または明示的に提供されてもよい。例えば、同期クライアントは、手動で設定されたパラメータ、電子プログラム・ガイド(EPG)からのパラメータ、受信されたストリームからのパラメータ等について報告することもできる。後者の一例には、RTPストリームからの同期ソース、SSRCパラメータを挙げることができる。あるいは、MSAS300が、ネットワーク・アドレス、ルーティング情報等に基づいて、セグメントを検出することもできる。
【0093】
以上、1つ以上のメディア・ストリームがストリーミングされるというコンテキストの中において、本発明について説明した。しかしながら、このようなメディア・ストリームは、ストリーミング以外の様式で、例えば、ファイルからアクセスされることによって、受信機によってアクセスすることもできる。
【0094】
図5は、メディア・ストリームに対してファイルに基づくアクセスを行うことができる受信機のコンテキストの中における本発明によるシステムを示す。この実施形態は、記録されたメディア・ストリームを種々の方法で入手することができる以下の使用事例に基づく。例えば、個人用ビデオ・レコーダ(PVR)によって、それら自体の位置で(ユーザ−PRV)またはネットワークにおける記録機能を使用して(ネットワーク−PVR)ムービーを記録するのでもよい。また、同じムービーが、例えば、ビデオ・オン・デマンド(VoD)インターネット・サービスによってダウンロードされても、あるいはDVDまたはブルー・レイを購入することによって入手されるのでもよい。
【0095】
このようにソースが異なる記録のタイムライン情報は異なる場合があるが、これらの記録のメディア・ストリームを同期させて再生することを可能にすることが必要になる場合や、または一般にタイムライン情報をこのようなメディア・ストリーム間で相関付けることが必要になる場合がある。図5は、各々2つの受信機を有する2つのクラスタ、即ち、第1および第2受信機191,192を含む第1クラスタ171と、第3および第4受信機193,194を含む第2クラスタ172を示すことによって、このような使用事例を示す。第1クラスタ171における受信機191,192は、各々、第1ファイルにアクセスすることができ、第2クラスタ172における受信機193,194は、各々、第2ファイルにアクセスすることができる。即ち、これらの受信機の各々のローカル・ストレージ内にそれぞれのファイルを格納することによって、アクセスすることができる。第1ファイルおよび第2ファイルは、例えば、同じムービーの異なる記録を含んでもよく、したがって、各々が異なるメディア・ストリームを供給する。したがって、それぞれのファイルに含まれるメディア・ストリームは、異なるタイムライン情報を含むであろう。
【0096】
図5の例では、第1受信機191および第3受信機193は、各々、ストリーム・モニタSM1,SM3を含み、各ストリーム・モニタが、ファイルのメディア・ストリームについて識別情報を提供するように構成され、i)メディア・ストリームの1つ以上のメディア・サンプルの永続的識別を入手し、ii)メディア・ストリームに含まれるタイムライン情報からの永続的識別に関連付けられたタイムスタンプ値を判定し、iii)このタイムスタンプ値、および1つ以上のメディア・サンプルの永続的識別を識別情報として提供する。
【0097】
具体的には、図5は、識別情報をMSAS300に提供するストリーム・モニタSM1およびストリーム・モニタSM3を示す。第1ファイルのメディア・ストリームからの第1永続的識別を第2ファイルのメディア・ストリームからの第2永続的識別と照合するために、MSAS300は、複数の永続的識別と共通再生タイムライン上において関連する複数の再生時間とを含む識別情報にアクセスすることができる。識別情報は、データベース310上に含まれてもよく、そして、例えば、1つ以上のムービー、ビデオ・プログラム等の全ての指紋を含むことができることから、これが基準識別情報を構成してもよい。したがって、MSAS300は、第1永続的識別を第2メディア・ストリームの第2永続的識別と時間的に照合することによって、第1ファイルのメディア・ストリームの第1タイムスタンプ値を第2ファイルのメディア・ストリームの第2タイムスタンプ値と照合することができる。
【0098】
受信機にわたる宛先間メディア同期を得るために、受信機の各々における同期クライアントはこの時点において、ファイルのメディア・ストリームのタイムスタンプに基づいて、それらのメディア受信および/または再生タイミングについて報告し、応答して、タイミング情報をMSAS300から受信することができ、それぞれのメディア・ストリームに関して同期アクションを実行することを可能にする。
【0099】
図3および図4のセグメントと同様、MSAS300は、受信機またはその同期クライアントがどのクラスタに属するか判定する必要がある場合がある。クラスタはMSAS300内部でストリーミング・モニタ201、203に関して定義されてもよいので、図5の例では、ストリーム・モニタSM1を含む第1クラスタ171またはストリーム・モニタSM2を含む第2クラスタ172のどちらにそれぞれの受信機が配置されているかMSAS300に識別させる情報を提供する必要があるとすれば、第2受信機192および第4受信機194だけであろう。このような情報は、各受信機の同期クライアント402,404によって、例えば、TVプログラムを記録するとき、記録されるTVプログラム、記録をプログラミングするために使用されるEPG、レコーダの形式、TV供給業者、記録されている事前ショー・タイミング設定(recorded pre-show timing setting)等のような詳細を供給することによって、提供されればよい。ファイルがVoDプロバイダからダウンロードされる場合、このプロバイダも、ダウンロードされるコンテンツ項目の識別と一緒に示されればよい。ファイルがDVDまたはブルー・レイ・ディスクから入手される場合、ディスク上にある他の識別子と共に、コンテンツ項目を使用すればよい。他の情報には、コンテンツの正確な長さ、使用されるコデック、入手可能なEPG情報等が含まれる。
【0100】
尚、図5の例は、IPTVプロバイダのドメインにおけるように、IPTV環境にも適用できる利点があり、限定された数の異なる形式の受信機、即ち、セット・トップ・ボックスだけがあればよいことは認められよう。したがって、識別情報を提供するためには、少数の受信機だけがあればよい。例えば、ストリーム・モニタを構成する(comprise)ためには、異なる形式の各受信機が1台だけあれば済み、このような情報はその後同じ形式の他の全ての受信機のためにタイミング情報を提供するために使用される。
【0101】
本発明による方法は、第1メディア・ストリームと第2メディア・ストリームとの間においてタイムライン情報を相関付けることを可能にし、第1メディア・ストリームおよび第2メディア・ストリームは双方共、共通の再生タイムラインに関連付けられる。前記相関付けは、少なくとも2つのストリーム・モニタから得られる識別情報に基づき、前記ストリーム・モニタの各々は、
i)メディア・ストリームの1つ以上のメディア・サンプルの永続的識別を入手し、永続的識別はメディア・ストリームを使用して再現可能に入手することができるデータであり、
ii)メディア・ストリームに含まれるタイムライン情報から、永続的識別に関連付けられたタイムスタンプ値を判定し、
iii)タイムスタンプ値、および1つ以上のメディア・サンプルの永続的識別を識別情報として提供する、
ことによって、メディア・ストリームについての識別情報を提供するように構成される。
【0102】
この方法は、「第1メディア・ストリームについての識別情報を入手する」と称される第1ステップにおいて、第1メディア・ストリームについての第1識別情報を、少なくとも2つのストリーム・モニタの内第1ストリーム・モニタから入手することを含むのでもよい。更に、この方法は、「第2メディア・ストリームについての識別情報を入手する」と称される第2ステップにおいて、第2メディア・ストリームについての第2識別情報を、少なくとも2つのストリーム・モニタの内第2ストリーム・モニタから入手することを含むのでもよい。更に、この方法は、「識別情報を組み合わせて、双方のメディア・ストリーム間においてタイムライン情報を相関付けることを可能にする」と称される第3ステップにおいて、第1メディア・ストリームの第1永続的識別を第2メディア・ストリームの第2永続的識別と照合し、したがって、第1メディア・ストリームの第1タイムスタンプ値を第2メディア・ストリームの第2タイムスタンプ値と照合することによって、第1識別情報を第2識別情報と組み合わせて、第1メディア・ストリームのタイムライン情報を、第2メディア・ストリームのタイムライン情報に相関付けることを可能にすることを含むのでもよい。
【0103】
尚、第1ステップおよび第2ステップは、任意の適した順序で、および同時に実行されてもよいことを注記しておく。更に、第1ステップおよび第2ステップのいずれかまたは双方を繰り返し実行することにより、第1永続的識別を複数の永続的識別と照合し、これによって第2の、即ち、一致する、永続的識別を識別することによって、またはこの逆によって、第3ステップの間に、照合を実行することを可能にしてもよい。この方法のステップは、メディア配給ネットワークに含まれる1つ以上のエンティティによって実行されてもよく、このエンティティはメディア配給ネットワークの終点を形成することができる受信機を含む。更に、コンピュータ・プログラム製品が、プロセッサ・システムにこの方法を実行させる命令を含むのでもよい。また、このコンピュータ・プログラム製品は、異なるプロセッサ・システムに共同でこの方法を実行させるために異なる命令が供給されてもよいことから、分散型(distributed)であってもよい。
【0104】
尚、一般に、ストリーム・モニタによって得られる永続的識別は、指紋、透かし、またはマーカ、あるいは前記永続的識別の組み合わせで構成されてもよいが、これらの例に限定されるのではないことを注記しておく。
【0105】
これに関して、「指紋」という用語は、コンピュータ科学の分野からそれ自体周知であり、比較的少量のデータ、即ち、指紋を使用して、比較的大量のデータの識別情報(identity)を一意に識別する、即ち、確立する(establish)ことを試みる技法を指す。例えば、大量のデータのハッシュ、またはその(小さな)範囲のハッシュでさえも、使用されてもよい。ストリーム・モニタは、ビデオ指紋および/またはオーディ指紋というような、このような既知の技法を利用するのでもよい。指紋は、特定のメディア・サンプル、例えば、ビデオ・フレーム、オーディオ・サンプル、時間−テキスト−サンプル等に基づくのでもよく、あるいは(短い)範囲のメディア・サンプル、例えば、数秒のオーディオまたはある数の連続ビデオ・フレームに基づくのでもよい。したがって、任意の指紋を他の任意の指紋と時間的に照合することが望まれる場合には、指紋が規則的に繰り返されなければならない場合もある。あるいは、複数の指紋を互いに直接比較して、これらが一致するか否か、したがって同じ再生時間に関係するか否か判定してもよい。「透かし」という用語は、同様にコンピュータ科学の分野からそれ自体周知である技法を指す。また、透かしも規則的に繰り返されなければならない場合もある。「マーカ」という用語は、コデックにおけるディジタル・マーカ、MPEG−TSにおけるマーカ、RTPまたはRTCPにおけるマーカ等というように、永続的にメディア・ストリーム内に含まれるマーカを指す。
【0106】
一般に、ストリーム・モニタは、メディア配給ネットワーク内における別個のエンティティであってもよい。具体的には、ストリーム・モニタは、ヘッド・エンドのような、セグメントの起点(origin)内またはその付近に配置されてもよい。また、ストリーム・モニタは同期クライアントと同じ場所に配置されてもよい。また、ストリーム・モニタは、複数の同期クライアントにおいてソフトウェア・コンポーネントとして実装されてもよいが、セグメント毎に1回または限定された回数だけ等で作動されればよい。また、同期クライアントが同じセグメント、例えば、IPTVセグメントにおいて多数のストリームを受信することができる場合、異なるクライアントが各々異なるストリームのために、例えば、異なるTVチャネルのために監視機能を実行するのでもよい。
【0107】
ストリーム・モニタは、識別情報をMSASにおける相関サブシステムに報告することもできる。また、ストリーム・モニタは、識別情報を同期クライアント内に含まれる相関サブシステムに報告することもできる。ストリーム・モニタは、識別情報を相関サブシステムに規則的な間隔で提供するのでもよい。識別情報は、それよりも前の識別情報から外挿補間されてもよい。また、識別情報は、タイムスタンプにおける不連続点、または他のタイミング・データにおいてのみ、例えば、新たなプログラムが開始される毎に、または現在のプログラムが介在物(interstitial)によって割り込まれたときに、提供されるのでもよい。
【0108】
一般に、相関サブシステムは、メディア配給ネットワーク内における別個のエンティティであってもよい。相関サブシステムは、識別情報を、それよりも前に入手した識別情報からの以前のまたは以降のメディア・サンプルに外挿補間することができる。相関サブシステムは、ハイブリッドTVの使用事例では、識別情報を同期クライアントに中継することもできる。また、相関サブシステムは、ソーシャルTVおよびコンパニオン・スクリーンの使用事例では、識別情報を使用して、同期クライアントのためにタイミング情報を生成することもできる。相関サブシステムは、多数の相互接続する、恐らくは階層的に構成されたMSASを有する分散型システムとして具体化されてもよい。相関サブシステムが手動構成設定に基づいて同期クライアントをセグメントに割り当てることを可能にするのでもよい。また、相関サブシステムが、シグナリング・ソリューション(signaling solution)に基づいて、同期クライアントをセグメントに割り当てることを可能にするのでもよい。
【0109】
更に、本願における例は、いわゆる同期マエストロ方式(synchronization maestro scheme)(SMS、クライアント−サーバ・モデル)に従うことも注記しておく。しかしながら、本発明は、先に挙げた論文 "Multimedia group and inter-stream synchronization techniques: A comparative study"(マルチメディア・グループおよびストリーム間同期技法:比較研究)by F. Boronat et al., Elsevier Information Systems, 34, 2009, pp. 108-131において論じられているように、分散型制御方式(DSC)またはマスター・スレーブ方式というような、他の同期方式にも適用可能である。
【0110】
一般に、同期は常に全体的に精度が高い必要はないことを注記しておく。例えば、ソーシャルTVの使用事例では、数百msの再生タイミング差、そして1または2秒までの再生タイミング差があっても、ユーザに気付かれない場合もある。しかしながら、様々なメディア・ストリームのローカル同期の場合、ハイブリッド・ブロードキャスト・ブロードバンドTV(HbbTV)というような1つのデバイス上であっても、またはTVおよびコンパニオン・スクリーン上であっても、一層精度が高い同期が求められる可能性がある。これらの使用事例においてでさえも、約120msまでは音声同期の誤差は検出できずにいる(100msビデオの最前部 (on front) から先行する約30msオーディオまでの間)。したがって、本発明のコンテキストの中では、「メディア同期」という用語は、満足できるエンド・ユーザ体験を達成する同期の程度を指すのでもよいことは認められよう。
【0111】
更に、このような全体的に精度が高い同期は、再生タイミングに対してのみ実行できればよい、即ち、メディアがユーザに提示される実際の時間を伝え、この時間に影響を及ぼすことができればよい。しかしながら、このタイミングは常に入手可能ではない。タイミングを報告すべき、またはタイミングに影響を及ぼすべき他の時点がある。即ち、受信デバイスにおけるコンテンツ・チェーンにおいてアドレス可能な任意の時点が挙げられよう。これは、コンテンツが受信されたとき(パケット受信時点)、パケットが処理されたとき、パケットがデコードされたとき等からとすることができる。この文書において同期を目的としてタイミングが論じられる場合、これらのタイミングはそのいずれもが該当する。
【0112】
尚、本発明は、HbbTV−TF−メディアおよびDVB−TM−COSにおいてメディア同期を実現するために使用できるという利点があることは認められよう。ここでは、メディア配給ネットワーク全域における遅延は、以下のように管理することができる。ブロードキャスタは、ネットワーク・セグメント毎のストリーム・モニタをチャネル毎に設け、ネットワーク・セグメント毎の可変バッファをチャネル毎に設けることによって、メディア配給ネットワークのセグメント間の遅延を粗く等化することができる。更に、精細な同期をTVおよびコンパニオン・スクリーンにおいて/間で設けることができる。ブロードキャスタは、元のメディア・ストリームの指紋または透かしに基づいて、配信されたコンテンツのタイムラインを元のコンテンツのタイムラインと相関付けることができ、ストリーム・モニタは、ネットワーク・セグメント毎に配信されたメディア・ストリームの指紋または透かしについて報告する。
【0113】
尚、以上で述べた実施形態は、本発明を限定するのではなく例示するのであり、当業者は多くの代替実施形態を設計できることは注記してしかるべきである。
【0114】
特許請求の範囲において、括弧間に入れられた参照符号はいずれも、請求項を限定するように解釈しないこととする。「含む」(comprise)という用語およびその人称変化の使用は、請求項に述べられるエレメントまたはステップ以外のものの存在を除外するのではない。あるエレメントに先立つ冠詞「a」または「an」は、複数のこのようなエレメントの存在を除外するのではない。本発明は、様々な全く異なるエレメントを含むハードウェアによって、そして相応しくプログラミングされたコンピュータによって実現することができる。様々な手段を列挙するデバイスの請求項では、これらの手段の内いくつかが、ハードウェアの全く同一の品目によって具体化されてもよい。ある種の手段(measure)が相互に異なる従属請求項において述べられるという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用できないことを示すのではない。
図1
図2
図3
図4
図5