特許第6240317号(P6240317)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6240317医療用容器に結合するためのアダプタとブリスタとを備えるアセンブリ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240317
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】医療用容器に結合するためのアダプタとブリスタとを備えるアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/20 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
   A61J1/20
【請求項の数】15
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-516605(P2016-516605)
(86)(22)【出願日】2014年9月22日
(65)【公表番号】特表2016-531608(P2016-531608A)
(43)【公表日】2016年10月13日
(86)【国際出願番号】EP2014070149
(87)【国際公開番号】WO2015040220
(87)【国際公開日】20150326
【審査請求日】2016年10月12日
(31)【優先権主張番号】13306294.3
(32)【優先日】2013年9月23日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】310021434
【氏名又は名称】ベクトン ディキンソン フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フランク カレル
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック ペロー
【審査官】 胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/115729(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/115728(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/088970(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/007760(WO,A1)
【文献】 特開平08−071122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセンブリであって、
・隔壁(8)によって閉じられたネック(7)を有する医療用容器(4)に結合するためのアダプタ(2)であって、前記隔壁(8)は、前記医療用容器(4)の外側に向けられた外表面(9)を有し、前記アダプタ(2)は、
− 前記アダプタ(2)を前記医療用容器(4)に固定するための把持部材(20)であって、前記把持部材(20)は、前記医療用容器(4)の前記ネック(7)に取り付けられることができる、把持部材(20)、および
− 前記アダプタ(2)が前記医療用容器(4)上に配置されたとき、前記アダプタ(2)の非作動状態において、前記隔壁(8)の前記外表面(9)と圧力で接触しないように意図され、前記アダプタ(2)の作動状態において、前記隔壁(8)の前記外表面(9)と圧力で接触するように意図される、穿刺可能なエラストマー片(30)
を備えるアダプタ(2)と、
・前記アダプタ(2)の最初の使用の前に、前記アダプタ(2)が前記非作動状態にあって、前記アダプタ(2)を受け入れるハウジングを形成するシェル(100)および除去可能な閉鎖膜(102)を備えるブリスタ(3)と
を備え、
前記アセンブリ(1)は、
・前記アダプタ(2)に配設された第1の保持手段(26)、および前記シェル(100)に配設された第2の保持手段(111)を備える保持システムであって、前記第1の保持手段(26)は、前記保持システムのロックされた位置において、前記アダプタ(2)が前記作動状態にない限り、前記第2の保持手段(111)と協働して、前記シェル(100)が前記アダプタ(2)から分離されるのを防止するように設計された、保持システムと、
・前記アダプタ(2)が前記作動状態にあるとき、前記保持システムをロック解除された位置に配置するように設計されたロック解除手段(53、54)であって、前記ロック解除された位置において、前記第1の保持手段(26)が前記第2の保持手段(111)と協働せず、それにより、前記シェル(100)の除去を可能にする、ロック解除手段(53、54)と
をさらに備えることを特徴とするアセンブリ。
【請求項2】
前記第1の保持手段(26)および前記第2の保持手段(111)の一方は、切欠きを備え、前記第1の保持手段(26)および前記第2の保持手段(111)の他方は、突出部材を備え、前記切欠きは、前記突出部材に向けて開かれ、前記突出部材は、前記切欠きに向けて突出することを特徴とする請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記ロック解除手段は、壁(54)を備え、壁(54)は、前記アダプタ(2)がその非作動位置からその作動位置に変わると、前記保持システムの部分(26)と接触し、前記部分(26)を移動または破断させて、前記保持システムを前記ロック解除された位置に配置するように設計されたことを特徴とする請求項1または2に記載のアセンブリ。
【請求項4】
前記アダプタ(2)は、前記穿刺可能なエラストマー片(30)を備える圧縮部材(40)をさらに備え、前記圧縮部材(40)は、前記アダプタ(2)が前記医療用容器(4)上に配置されたときに、前記穿刺可能なエラストマー片(30)が前記隔壁(8)の前記外表面(9)と圧力で接触しない非作動状態から、前記アダプタ(2)が前記医療用容器(4)上に配置されたときに、前記穿刺可能なエラストマー片(30)が前記隔壁(8)の前記外表面(9)と圧力で接触する作動状態に向けて、前記把持部材(20)に対して可動であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項5】
前記第1の保持手段(26)は、前記把持部材(20)に配設され、前記ロック解除手段(53、54)は、前記圧縮部材(40)に配設されることを特徴とする請求項4に記載のアセンブリ。
【請求項6】
前記把持部材(20)は、本体(21)を備え、前記第1の保持手段(26)は、前記把持部材(20)に配設され、少なくとも1つの突出部材を備え、前記少なくとも1つの突出部材は、前記ロックされた位置において、前記本体(21)から前記シェル(100)に向けて突出し、それが前記本体(21)から実質的に突き出ない前記ロック解除された位置に向けて、破断または変形されることができることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項7】
前記突出部材は、少なくとも1つの破断可能または可撓性タブ(26)を備え、前記少なくとも1つの破断可能または可撓性タブ(26)は、前記ロックされた位置において前記本体(21)から外方にかつ遠位に突出し、実質的に前記本体(21)に当接して破断または偏向されることができることを特徴とする請求項6に記載のアセンブリ。
【請求項8】
前記把持部材(20)は、U字型本体(21)の開口を介して前記医療用容器(4)の前記ネック(7)に係合されるように意図された前記U字型本体(21)を有する側方クリッピング部材であり、前記U字型本体(21)の湾曲された部分は、前記ネック(7)を部分的に取り囲み、前記第1の保持手段(26)は、実質的に前記U字型本体(21)の自由端の少なくとも一方において前記把持部材(20)に配設されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項9】
前記把持部材(20)は、第1のガイド手段(51)を備え、前記第1のガイド手段(51)は、前記圧縮部材(40)に配設された第2のガイド手段(52)と協働して、遠位方向の長手方向平行移動に従って、前記非作動状態から前記作動状態に向けて前記把持部材(20)に対する前記圧縮部材(40)の移動をガイドすることを可能にするように設計されたことを特徴とする請求項4乃至8のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項10】
前記第2のガイド手段(52)の部分は、前記ロック解除手段(54)を形成することを特徴とする請求項9に記載のアセンブリ。
【請求項11】
前記第1のガイド手段は、実質的に長手方向の脚(51)を備え、前記第2のガイド手段は、前記脚(51)を受け入れかつ開放遠位端を有する実質的に長手方向のハウジング(52)を備え、前記第1の保持手段に関連する可撓性タブ(26)は、前記脚(51)の遠位端から延び、前記長手方向ハウジング(52)の前記開放遠位端から出て来ることを特徴とする請求項9または10に記載のアセンブリ。
【請求項12】
前記圧縮部材(40)は、第1の回転阻止手段(71)を備え、前記第1の回転阻止手段(71)は、前記シェル(100)の内側面に配設された第2の回転阻止手段(109、110)と協働して、長手方向軸の周りの前記シェル(100)に対する前記圧縮部材(40)の回転を防止するように設計されたことを特徴とする請求項4乃至11のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項13】
前記第1の回転阻止手段(71)は、前記長手方向ハウジング(52)に隣接して前記圧縮部材(40)に位置付けられ、前記第2の保持手段(111)は、前記第2の回転阻止手段(109、110)に隣接して前記シェル(100)に位置付けられることを特徴とする請求項11または12に記載のアセンブリ。
【請求項14】
前記第1の回転阻止手段は、実質的に長手方向のスロット(71)を備え、前記第2の回転阻止手段は、前記第2の保持手段に関連する切欠き(111)を有する実質的に長手方向のリブ(109)を備えることを特徴とする請求項13に記載のアセンブリ。
【請求項15】
隔壁(8)によって閉じられたネック(7)を有する医療用容器(4)をさらに備え、前記隔壁(8)は、前記医療用容器(4)の外側に向けられた外表面(9)を有することを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用容器に対するアダプタと、アダプタの最初の使用の前にアダプタを収容するブリスタとを備えるアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
医療用容器は、ボトル、アンプル、バイアル、または医療用途に適した任意の他の容器であり得る。簡単にするために、本発明は、医療用容器として標準的なバイアルを用いて説明される。
【0003】
より具体的には、本発明は、ワクチンなどの医薬製品を収容するバイアルに適用可能であり、アダプタは、医療用容器に含まれる製品の一部で充填される注射器具(injection device)による複数回の無菌の針穿刺を可能とする。
【0004】
本出願では、部品または装置と共に使用されることを意図される注射器具に関連して、部品または装置の遠位端は、使用者の手から最も遠い端を意味するものとして理解されなければならず、近位端は、使用者の手に最も近い端を意味するものとして理解されなければならない。したがって、本出願では、遠位方向は、注射器具に関連して、注射方向として理解されねばならず、近位方向は、反対の方向、すなわち、医療用容器から注射器具への製品の移動の方向と理解されなければならない。
【0005】
健康を改善する方法の一つは、多くの疾患に対して集団全体を免疫化することである。現在まで、注射投与は、ワクチンを投与する最も一般的な方法である。
【0006】
サプライチェーンの観点から、最も効率的なワクチンパッケージは、複数回投与量バイアル、すなわち、1回分の投与量が1人の患者に対して意図される10,100または1000回分の投与量までのワクチンを含み得るバイアルのような、複数回投与量容器である。これらのバイアルは通常、隔壁によって閉じられる。ワクチン注射の準備の際、使用者は、空のシリンジの針でバイアルの隔壁を穿刺し、次いで、彼はワクチンの1回分の投与量でシリンジを充填し、患者へのワクチンの注射へと進む。
【0007】
したがって、複数回投与量バイアルは、バイアルの隔壁が、多くの回数、すなわち、バイアルに存在する投与量の数だけ、連続的に穿刺されることを伴う。安全な注射を保証するために、バイアルの隔壁と内部の両方の無菌状態が、バイアルが使用される全期間で維持されるべきである。
【0008】
とにかく、都会および病院施設から遠い遠隔地のように、良好な衛生条件を維持することが困難である場所において、複数回投与量バイアルは、周囲空気において厳格な衛生条件なしに取り扱われ操作され得る。そのような場合、バイアルに貯蔵された医薬製品は、バイアルから投与量が取り出されるたびに吸い込まれる周囲空気によって、または、隔壁もしくはバイアルの外表面から来る汚染物質によって、または、使用された空のシリンジの針を用いた連続的穿刺によって導入される汚染物質によって、汚染される可能性がある。
【0009】
また、冷蔵庫などの冷却装置に電力供給するためのエネルギーの供給が限られているまたは潜在的に存在しない地域において、複数回投与量バイアルは、氷パックとの単純な接触によって低温状態に維持され得る。時間が経過するにつれて、氷の一部が溶融して水に戻り、複数回投与量バイアルの隔壁が、細菌および菌類の好ましい培地となり得るそのような水と接触することがある。
【0010】
汚染された医薬製品またはワクチンを患者に注射するのを回避するために、現在の医療規制は、遠隔医療プログラムで使用されたバイアルは、バイアルに医薬製品が残っていても、一定期間たとえば28日間の後には廃棄することを推奨している。したがって、たとえば10回分投与量バイアルなどの複数回投与量バイアルが開かれ、3人の患者のみにワクチン接種するために3回分の投与量のみが使用されることが起きることがあり、ワクチンまたは薬物の無菌性を保証するために、バイアルの残りの内容物は、バイアルの開封後の十分に短い時間内に投与されることが意図されていないので無駄にされる。
【0011】
したがって、ワクチン接種運動は、地域によっては困難となる可能性があり、ワクチンのかなりの割合が、それらの対象にそれらが到達する時間までに無駄にされ得る。これは、ワクチン接種運動を担当する医療機関に受け入れられないコストがかかる。また、ワクチン接種運動またはパンデミックの場合に、都会および病院施設から遠い遠隔地など、良好な衛生状態を維持することが困難である場所において、数百人の患者が、非常に短い時間でワクチン接種される必要があることが起こり得る。
【0012】
したがって、複数回投与量バイアルの何回かの連続的穿刺を可能にし、そうした穿刺が無菌状態で実施されることを保証するデバイスを提供することが提案されている。特に、隔壁は、複数回投与量バイアルの使用期限中に汚染物質から保護されなければならず、複数回投与量バイアルが無菌状態で貯蔵または操作されない場合でも、薬物の浪費を回避するために、汚染された空気がバイアル内部に吸い込まれるべきではない。
【0013】
このタイプの知られているデバイスは、医療用容器と結合するためのアダプタであり、アダプタは、アダプタを医療用容器に固定するための把持部材と、穿刺可能なエラストマー片とを備える。
【0014】
アダプタが非作動状態にあるとき、穿刺可能なエラストマー片は、隔壁の外表面から離間されており、それにより、アダプタに対する医療用容器の容易な取り付けを可能にする。
【0015】
アダプタが作動状態にあるとき、穿刺可能なエラストマー片は、隔壁の外表面と圧力で接触し、それにより、外的要素による汚染からの隔壁の効率的保護を保証し、潜在的に汚染された外気がバイアルの内部ひいては医薬製品に到達するのを防止する。
【0016】
たとえば、アダプタは、把持部材、および穿刺可能なエラストマー片を含む圧縮部材を備え、圧縮部材は、非作動状態から作動状態に向けて把持部材に対して可動である。
【0017】
その最初の使用の前に、そのようなアダプタは、シェルおよび除去可能な閉鎖膜を備えるブリスタに受け入れられ、非作動状態で格納される。
【0018】
ブリスタを開いた後、使用者が、医療用容器に含まれる薬物の投与量で空のシリンジを充填することを決めると、彼は、把持部材を用いて医療用容器上にアダプタを単純に配置する。アダプタが医療用容器上に配置されると、圧縮部材が作動状態に向けて移動されなければならず、作動状態において、穿刺可能なエラストマー片が、医療用容器の隔壁の外表面と接触し、たとえば密着する。結果として、医療用容器に針を導入することは、針が最初の箇所でアダプタのエラストマー片を穿刺し通過することを伴う。このステップの間、針は、機械的に、エラストマー片を形成する材料と擦れ、針がエラストマー片を貫通するとき、潜在的な細菌または汚染物質が針から一掃されるので、それは自然に洗浄される。また、針がアダプタのエラストマー片から突き出ると、それは、医療用容器の隔壁に直接入り、したがって、外的要素によって汚染されることがない。実際、アダプタが医療用容器上に固定されているときに穿刺可能なエラストマー片が隔壁の外面と接触するので、投与量が取り出されるときに作られる真空によりバイアルに周囲空気が吸い込まれない。
【0019】
使用者は、医療用容器に含まれるすべての投与量が取り出されるまで、新しい空の注射器具によって次の投与量を取り出すことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
そうしたアダプタが隔壁の効果的保護として機能するために、穿刺可能なエラストマー片が隔壁の外表面と密着することを保証する必要がある。
【0021】
しかしながら、実際には、使用者がブリスタの閉鎖膜を開いて医療用容器上にアダプタを配置するとき、アダプタがブリスタから滑り出て、地面や不潔な手または家具などの汚染された表面に触れ、その汚染にもかかわらず医療用容器上に配置されることが起き得る。
【0022】
さらに、使用者がいつも適切にアダプタの取り付けプロセスを行うとは限らないように思われる。したがって、時には、使用者は、作動位置にアダプタを配置することができない、たとえば、圧縮部材を作動位置に向けて完全に移動することができないことがあり、その結果、穿刺可能なエラストマー片が隔壁と圧力で接触せず、したがって、衛生要件を完全に満たす保護を提供しない。
【0023】
最終的に、医療従事者が、たとえば、給水が乏しい遠隔地域で、アダプタおよび医療用容器を汚れた手で取り扱い、したがって、アダプタを医療用容器上に固定するステップ中に、アダプタ、穿刺可能なエラストマー片、または医療用容器の表面汚染を引き起こすことが起き得る。
【0024】
したがって、そのようなアダプタの誤用を防止するシステムを提供して、使用者の手とシステムの間の接触を限定し、医療用容器ができるだけ良い衛生状態でいつも取り扱われることを保証することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0025】
そのために、本発明は、
・隔壁によって閉じられたネックを有する医療用容器に結合するためのアダプタであって、前記隔壁は、医療用容器の外側に向けられた外表面を有し、アダプタは、
− アダプタを医療用容器に固定するための把持部材であって、前記把持部材は、前記医療用容器のネックに取り付けられることができる、把持部材、および
− 前記アダプタが前記医療用容器上に配置されたとき、アダプタの非作動状態において、隔壁の外表面と圧力で接触しないように意図され、アダプタの作動状態において、隔壁の外表面と圧力で接触するように意図される、穿刺可能なエラストマー片
を備えるアダプタと、
・アダプタの最初の使用の前に、アダプタが非作動状態にあって、アダプタを受け入れるハウジングを形成するシェルおよび除去可能な閉鎖膜を備えるブリスタと
を備えるアセンブリに関する。
【0026】
本発明によれば、アセンブリは、
・アダプタに配設された第1の保持手段、およびシェルに配設された第2の保持手段を備える保持システムであって、第1の保持手段は、保持システムのロックされた位置において、アダプタが作動状態にない限り、第2の保持手段と協働して、シェルがアダプタから分離されるのを防止するように設計された、保持システムと、
・アダプタが作動状態にあるとき、保持システムをロック解除された位置に配置するように設計されたロック解除手段であって、ロック解除された位置において、第1の保持手段が第2の保持手段と協働せず、それにより、シェルの除去を可能にする、ロック解除手段と
をさらに備える。
【0027】
したがって、最初の使用の前に、アダプタはブリスタに収容され保護され、アダプタは非作動状態にある。使用者がアダプタを使用したいとき、彼は、閉鎖膜を除去する。
【0028】
医療用容器に含まれる薬物の投与量で空のシリンジを充填するために、アダプタは、ブリスタのシェルから除去されなければならない。しかしながら、本発明により、より詳細には保持システムのため、これは、アダプタが作動状態になるまで可能ではない。結果として、本発明は、使用者の手からもたらされる汚染を制限しながら、アダプタが、ブリスタから滑り出ることができず、シリンジが充填され得る前に適切に位置されることを保証できるようにする。
【0029】
実際に、閉鎖膜を除去した後、使用者は、まだシェル内に位置付けられているアダプタを、医療用容器上に配置しなければならない。非作動状態において、穿刺可能なエラストマー片は、隔壁の外表面と圧力で接触せず、把持部材を医療用容器上に配置することは、限られた力のみを必要とする。言い換えれば、「圧力で接触せず」は、離間されるまたは緩み接触していることを意味する。
【0030】
そして、使用者は、医療用容器に向けて、すなわち遠位方向へシェルを押すことによって、アダプタを作動状態に配置する。保持システムは、アダプタが非作動位置にあるときにロックされた位置、すなわち完全にロックされた位置にあり、アダプタが非作動位置と作動位置との間の中間位置にあるときにロックされた位置にあるので、アダプタが作動状態にない限り、シェルは除去されることができない。アダプタが作動位置にあるときのみ、シェルが除去されることができ、ロック解除手段は、ロック解除された位置に保持システムを配置している。
【0031】
その作動状態になると、使用者がアダプタすなわちシェルに対する彼の最初の遠位圧力を解放した後でも、アダプタは、穿刺可能なエラストマー片に対して圧力をかける。これは、隔壁の外表面と穿刺可能なエラストマー片の相補的な表面とが互いに気密接触すること、ならびに、隔壁の外表面と穿刺可能なエラストマー片の相補的な表面との間に周囲空気または汚染物が捕捉されないことを保証する。針の遠位先端は、それが穿刺可能なエラストマー片および隔壁を連続して横切るときに、穿刺可能なエラストマー片および隔壁以外の要素と接触することがない。さらに、隔壁と穿刺可能なエラストマー片との間の境界面は今やシールされており、針が穿刺可能なエラストマー片および医療用容器隔壁から除去されるときに、周囲空気が医療用容器に吸い込まれることができない。
【0032】
使用者は、アダプタが作動状態にある前にシェルを除去しアダプタを直接取り扱うことを可能にされない。それどころか、本発明は、手または不潔な表面との直接的接触を回避しながら、使用者が作動状態にアダプタを配置することに成功することを保証する。それはまた、医療用容器に含まれる薬物の1回の投与量で空のシリンジが充填されるときにアダプタが作動状態にあることを保証するための解決法を提供する。実際、シリンジを充填することは、シェルがまだアダプタ上では可能とならず、シェルは、アダプタが作動状態にある場合にのみ除去されることができる。
【0033】
本出願では、「穿刺可能」とは、アダプタの隔壁またはエラストマー片が、たとえば、薬物またはワクチンのような医薬製品を投与するために、シリンジ、自動注入装置、または再構成デバイスのような注射器具の針によって、穿刺され通過され得ることを意味する。
【0034】
本発明のアダプタの把持部材は、一時的または永続的な方法のいずれかで、アダプタを医療用容器の周囲に、特に、医療用容器のネックの周りに固定することができる任意の部材であり得る。
【0035】
本発明のアダプタの穿刺可能なエラストマー片は、前記アダプタが前記医療用容器上に固定されるときに隔壁の外表面と接触することが意図された少なくとも部分を有し、言い換えれば、エラストマー片は、前記アダプタが前記医療用容器上に固定されるときに、その部分が隔壁の外表面と接触する、特に密接することを可能にする、設計、形状、およびアダプタ上の場所を有する。
【0036】
本発明の実施形態において、第1の保持手段および第2の保持手段の一方は、切欠きを備え、第1の保持手段および第2の保持手段の他方は、突出部材を備え、切欠きは、突出部材に向けて開かれ、突出部材は、切欠きに向けて突出する。
【0037】
そのような突出部材は、ロックされた位置からロック解除位置へ、移動することができる、および/または変形もしくは破断されることができる。
【0038】
たとえば、第1の保持手段は、アダプタから、たとえば、把持部材からシェルに向けて突出する突出部材を備え、第2の保持手段は、アダプタに向けて、たとえば、把持部材に向けて開いている切欠きを備える。
【0039】
本発明の実施形態において、ロック解除手段は、壁を備え、壁は、アダプタがその非作動位置からその作動位置に変わると、保持システムの部分と接触し、前記部分を移動または破断させて、保持システムをロック解除された位置に配置する。したがって、シェルからのアダプタのロック解除は、アダプタの作動化と同じ移動で実現される。追加の行為が使用者に必要とされず、したがって、アセンブリは、特定の訓練なしに任意の医療スタッフによって使用することが容易である。
【0040】
より詳細には、アダプタは、把持部材および圧縮部材を備え、圧縮部材は、(圧縮部材のおよびアダプタの)非作動状態から(圧縮部材のおよびアダプタの)作動状態へ、把持部材に対して可動であり、ロック解除手段は、壁を備え、壁は、圧縮部材がその作動位置に向けて移動されると、保持システムの部分と接触し、前記部分を移動させて、保持システムをロック解除された位置に配置するように設計されている。たとえば、前記壁は、突出部材としての第1の保持手段と接触し、それらを解除された位置に向けて移動させる。
【0041】
アダプタは、把持部材および穿刺可能なエラストマー片を含む単一部分から形成されてよく、前記部分は、たとえば、医療用容器ネックにアダプタをスナップ嵌めするアダプタの遠位移動によって医療用容器に取り付けられるように設計される。そのような実施形態では、第1の保持手段を、ロック解除された位置に向けて移動させる、または破断させるように、医療用容器に向けて遠位に移動することができるリングを備えることができる。
【0042】
別の実施形態では、把持部材に加えて、アダプタは、前記穿刺可能なエラストマー片を備える圧縮部材を備え、圧縮部材は、前記アダプタが前記医療用容器上に配置されたときに、穿刺可能なエラストマー片が隔壁の外表面と圧力で接触しないように意図される、非作動状態から、前記アダプタが前記医療用容器上に配置されたときに、穿刺可能なエラストマー片が隔壁の外表面と圧力で接触するように意図される、作動状態に向けて、把持部材に対して可動である。
【0043】
そして、使用者は、医療用容器に向けて、すなわち遠位方向へシェルを押すことによって、圧縮部材を作動状態に向けて移動することができる。圧縮部材が作動状態にない限り、保持システムがロックされた位置にあるので、シェルは除去されることができない。圧縮部材が作動位置にあるときのみ、シェルが除去されることができ、ロック解除手段は、ロック解除された位置に保持システムを配置している。
【0044】
実施形態において、第1の保持手段は把持部材に配設され、ロック解除手段は圧縮部材に配設される。
【0045】
実施形態において、把持部材は、本体を備え、第1の保持手段は、把持部材に配設され、少なくとも1つの突出部材を備え、少なくとも1つの突出部材は、ロックされた位置において、前記本体からシェルに向けて突出し、それが本体から実質的に突き出ないロック解除された位置に向けて、破断または変形されることができる。好ましくは、本体と第1の保持手段とは、単一部片として作られることができる。
【0046】
突出部材は、少なくとも1つの破断可能または可撓性タブを備え、少なくとも1つの破断可能または可撓性タブは、ロックされた位置において本体から外方にかつ遠位に突出し、実質的に本体に当接して破断または偏向されることができる。
【0047】
実施形態において、把持部材は、U字型本体の開口を介して医療用容器のネックに係合されるように意図されたU字型本体を有する側方クリッピング部材であり、U字型本体の湾曲された部分は、ネックを部分的に取り囲み、第1の保持手段は、実質的にU字型本体の自由端の少なくとも一方において把持部材に配設される。
【0048】
実施形態において、把持部材は、第1のガイド手段を備え、第1のガイド手段は、圧縮部材に配設された第2のガイド手段と協働して、遠位方向の長手方向平行移動に従って、非作動状態から作動状態に向けて把持部材に対する圧縮部材の移動をガイドすることを可能にするように設計されている。
【0049】
たとえば、第2のガイド手段の部分は、ロック解除手段を形成することができる。
【0050】
第1のガイド手段は、実質的に長手方向の脚を備えることができ、第2のガイド手段は、前記脚を受け入れかつ開放遠位端を有する実質的に長手方向のハウジングを備えることができ、第1の保持手段に関連する可撓性タブは、脚の遠位端から延び、長手方向ハウジングの開放遠位端から出て来る。
【0051】
結果として、圧縮部材が作動位置に向けて移動すると、可撓性タブは、前述されたように、長手方向ハウジングの遠位端と接触し、それにより、ロック解除手段に関連する壁を形成し、保持システムをロック解除された位置に配置させる。実際に、長手方向ハウジングの前記遠位端は、可撓性タブの偏向を引き起こすことができる。
【0052】
実際に、圧縮部材は、把持部材の周りに把持部材と同軸で配設されることができる。したがって、長手方向ハウジングは、把持部材から半径方向に外方に突き出る脚を受け入れるように半径方向に内方に開口することができる。作動位置は、把持部材が圧縮部材の内側に実質的に位置付けられる位置とすることができ、そこでは、把持部材は、それから遠位にも近位にも実質的に延びない。この位置では、アダプタが、医療用容器のネックに永続的な方法でロックされ得る。
【0053】
実施形態において、圧縮部材は、第1の回転阻止手段を備え、第1の回転阻止手段は、シェルの内側面に配設された第2の回転阻止手段と協働して、長手方向軸の周りのシェルに対する圧縮部材の回転を防止するように設計されている。これらの回転阻止手段は、医療用容器に対するアダプタの簡潔なアセンブリに有用である。
【0054】
第1の回転阻止手段は、長手方向ハウジングに隣接して圧縮部材に位置付けられることができ、第2の保持手段は、第2の回転阻止手段に隣接してシェルに位置付けられることができる。
【0055】
第1の回転阻止手段は、実質的に長手方向のスロットを備えることができ、第2の回転阻止手段は、第2の保持手段に関連する切欠きを有する実質的に長手方向のリブを備えることができる。
【0056】
さらに、把持部材および圧縮部材は、把持部材に対して非作動または作動位置に圧縮部材を維持するように協働することができる手段を備えることができる。前記手段は、圧縮部材が作動位置に向けて移動することができるように配設される。好ましくは、前記手段は、作動位置のときに圧縮部材を阻止し、非作動位置に向けて戻るように移動するようにさらに配設されることができる。前記手段は、好ましくは、第1の保持手段およびロック解除手段とは別である。たとえば、前記手段は、1またはいくつかの凹部に係合するように意図された1またはいくつかのペグを備えることができる。
【0057】
アセンブリは、隔壁によって閉じられたネックを有する医療用容器を備えることができ、前記隔壁は、医療用容器の外側に向けられた外表面を有する。
【0058】
本発明はまた、アセンブリであって、
・隔壁によって閉じられたネックを有する医療用容器に結合するためのアダプタであって、隔壁は、医療用容器の外側に向けられた外表面を有し、アダプタは、
− アダプタを医療用容器に固定するための把持部材であって、把持部材は、医療用容器のネックに取り付けられるように適合される、把持部材、および
− アダプタが医療用容器上に配置されたとき、アダプタの非作動状態において、隔壁の外表面と圧力で接触せず、アダプタの作動状態において、隔壁の外表面と圧力で接触する、穿刺可能なエラストマー片
を備えるアダプタと、
・アダプタの最初の使用の前に、アダプタが非作動状態にあって、アダプタを受け入れるためのハウジングを形成するシェルおよび除去可能な閉鎖膜を備えるブリスタと
を備え、
アセンブリは、
・アダプタに配設された第1の保持部、およびシェルに配設された第2の保持部を備える保持システムであって、第1の保持部は、保持システムのロックされた位置において、アダプタが作動状態にない限り、第2の保持部と協働して、シェルがアダプタから分離されるのを防止するように適合された、保持システムと、
・アダプタが作動状態にあるとき、保持システムをロック解除された位置に移行するように適合されたロック解除部材であって、ロック解除された位置において、第1の保持部分が第2の保持部分と協働せず、それにより、シェルの除去を可能にする、ロック解除部材と
をさらに備えるアセンブリに関する。
【0059】
第1の保持部および第2の保持部の一方は、切欠きを備え、第1の保持部および第2の保持部の他方は、突出部材を備え、切欠きは、突出部材に向けて開かれ、突出部材は、切欠きに向けて突出する。
【0060】
ロック解除部材は、壁を備え、壁は、アダプタがその非作動位置からその作動位置に変わると、保持システムの部分と接触し、部分を移動または破断させて、保持システムをロック解除された位置に配置する。
【0061】
アダプタは、穿刺可能なエラストマー片を備える圧縮部材をさらに備えることができ、圧縮部材は、アダプタが医療用容器上に配置されたときに、穿刺可能なエラストマー片が隔壁の外表面と圧力で接触しない、非作動状態から、アダプタが医療用容器上に配置されたときに、穿刺可能なエラストマー片が隔壁の外表面と圧力で接触する、作動状態に向けて、把持部材に対して可動である。
【0062】
第1の保持部は把持部材に配設されてよく、ロック解除部材は圧縮部材に配設されてよい。
【0063】
把持部材は、本体を備えることができ、第1の保持部は、把持部材に配設されてよく、少なくとも1つの突出部材を備えることができ、少なくとも1つの突出部材は、ロックされた位置において、本体からシェルに向けて突出し、少なくとも1つの突出部材が本体から実質的に突き出ないように、ロック解除された位置に向けて破断または変形されることができる。突出部材は、少なくとも1つの破断可能または可撓性タブを備え、少なくとも1つの破断可能または可撓性タブは、ロックされた位置において本体から外方にかつ遠位に突出し、実質的に本体に当接して破断または偏向されることができる。
【0064】
把持部材は、U字型本体の開口を介して医療用容器のネックに係合されるように適合されたU字型本体を有する側方クリッピング部材であってよく、U字型本体の湾曲された部分は、ネックを部分的に取り囲み、第1の保持部は、実質的にU字型本体の少なくとも一方の自由端において把持部材に配設されてよい。
【0065】
把持部材は、第1のガイド部を備え、第1のガイド部は、圧縮部材に配設された第2のガイド部と協働して、遠位方向の長手方向平行移動に従って、非作動状態から作動状態に向けて把持部材に対する圧縮部材の移動をガイドするように設計されている。第2のガイド部の部分は、ロック解除手段を形成することができる。第1のガイド部は、実質的に長手方向の脚を備えることができ、第2のガイド部は、脚を受け入れかつ開放遠位端を有する実質的に長手方向のハウジングを備えることができ、可撓性タブは、脚の遠位端から延び、長手方向ハウジングの開放遠位端から出て来る。
【0066】
圧縮部材は、第1の回転阻止部を備えることができ、第1の回転阻止部は、シェルの内側面に配設された第2の回転阻止部と協働して、長手方向軸の周りのシェルに対する圧縮部材の回転を防止するように適合されている。第1の回転阻止部は、長手方向ハウジングに隣接して圧縮部材に位置付けられてよく、第2の保持部は、第2の回転阻止部に隣接してシェルに位置付けられてよい。第1の回転阻止部は、実質的に長手方向のスロットを備えることができ、第2の回転阻止部は、第2の保持部と協働するための切欠きを有する実質的に長手方向のリブを備えることができる。
【0067】
アセンブリは、隔壁によって閉じられたネックを有する医療用容器を備えることができ、隔壁は、医療用容器の外側に向けられた外表面を有する。
【0068】
これらおよび他の特徴および利点は、本発明によるアセンブリの実施形態を非限定的例として表す本明細書に添付された図面を参照する以下の説明を読むと明らかになろう。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態の以下の詳細な説明は、添付された図面と併せて読むと、より良く理解されるが、本発明は開示される特定の実施形態に限定されないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1】ブリスタに収容されたアダプタを示す、本発明によるアセンブリの側面図であって、ブリスタは、透明片として示されるシェルと、部分的に除去された閉鎖膜とを備える、側面図である。
図2図1のアダプタが固定されることができる医療用容器の斜視図である。
図3】容器の詳細な側面図である。
図4】容器の長手方向断面図である。
図5図1のアセンブリの分解斜視図である。
図6】アダプタに関連する把持部材を前面斜視図で示す図である。
図7】アダプタに関連する把持部材を上面図で示す図である。
図8】アダプタに関連する把持部材を後面斜視図で示す図である。
図9】アダプタに関連する把持部材を前面図で示す図である。
図10】アダプタに関連する圧縮部材を前面斜視図で示す図である。
図11】アダプタに関連する圧縮部材を底面図で示す図である。
図12】把持部材が圧縮部材内に組み立てられ、後者が非作動状態である、図10に類似する図である。
図13図1のブリスタのシェルを上面斜視図で示す図である。
図14図1のブリスタのシェルを底面斜視図で示す図である。
図15図1のブリスタのシェルを図14の平面P15における断面で示す図である。
図16図15の詳細図である。
図17】医療用容器に対する図1のアセンブリの据え付けを示す図である。
図18】医療用容器に対する図1のアセンブリの据え付けを示す図である。
図19】圧縮部材が非作動状態である、図7の平面P1における医療用容器上に固定された図1のアセンブリの断面図である。
図20】圧縮部材が非作動状態である、図7の平面P2における図1のアセンブリの断面図である。
図21】圧縮部材が非作動状態と作動状態との中間位置にある、図19に類似する図である。
図22】圧縮部材が非作動状態と作動状態との中間位置にある、図20に類似する図である。
図23】圧縮部材が作動状態である、図19に類似する図である。
図24】圧縮部材が作動状態である、図20に類似する図である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
図1に示されるように、本発明は、アダプタ2およびブリスタ3を基本的に備えるアセンブリ1に関する。
【0072】
アダプタ2は、図2から図4に示されるバイアルとしての医療用容器4に取り付けられるように設計されている。医療用容器4は、医薬製品を含むように意図され、典型的には、薬物またはワクチンを含むバイアルとすることができる。医療用容器4は、一般に、長手方向軸Aを有する管状バレル5を備え、管状バレル5は、第1の端部6で閉じられており、反対側端部で開けられたネック7を有する。
【0073】
医療用容器4の開口を閉じるために、隔壁8がネック7に挿入される。隔壁8は、通常、気体および液体を浸透させない材料で作られ、それは医療用容器4の内容物を密封する。隔壁8はまた、医療用容器内に含まれる製品で充填されることが意図された注射器具の針によって穿刺可能であり、隔壁8はその外表面9を介して針に接触可能である。ここで、用語「外表面」は、医療用容器の外側に向けられた表面を意味する。
【0074】
通常、隔壁8は、カラー10を用いて医療用容器4のネック7に固定して取り付けられ、カラー10は、ネック7の周縁部11に固定され、隔壁8の外表面9の中央部へのアクセスを維持する中央開口12を有する。
【0075】
図1において、
− 使用時に医療用容器軸Aと一致する長手方向D1であって、それを基準に用語「軸方向」、「近位」、「遠位」、「上部」および「底部」が使用される、長手方向D1と、
− D1と直交する側方方向D2と、
− D1およびD2に直交する横断(transversal)方向D3と
が示されている。
【0076】
用語「横断」は、長手方向D1に直交する平面または方向を指す。
【0077】
用語「半径方向」は、円筒部分の直径に応じた方向を指し、用語「内側」は、用語「外側」と比較して軸により近い要素を指す。
【0078】
図1および図5に示されるように、ブリスタ3は、半硬質プラスチック材料で作られることができ、遠位アパーチャ101を有する、シェル100を備える。ブリスタ3は、アダプタ2の最初の使用の前に、すなわち格納状態において、アパーチャ101を閉じる閉鎖膜102をさらに備える。図1に概略的に示されるように、閉鎖膜102は、使用者によって除去されることができる。シェル100および閉鎖膜102は、アダプタ2の最初の使用の前にアダプタ2を受け入れるハウジングを形成する。
【0079】
アダプタ2は、アダプタ2を医療用容器4に固定するための把持部材20を備え、把持部材20は、医療用容器4のネックに取り付けられることができる。アダプタ2は、穿刺可能なエラストマー片30を備える圧縮部材40をさらに備える。
【0080】
アダプタ2は、アダプタ2が医療用容器4に結合されると、医療用容器4の隔壁8へのアクセスを防止するまたは可能にするように意図された、カバー60をさらに備えることができる。たとえば、カバー60は、それが隔壁8をカバーする第1の位置と、隔壁8がアクセス可能である第2の位置との間で、把持部材20および圧縮部材40に対して長手方向軸の周りを回転され得る。
【0081】
ここで、図6から図9を参照して把持部材20が詳細に説明される。
【0082】
図6から図9の実施形態では、把持部材20は、側方クリッピング部材であり、バイアル4(図19参照)のカラー10を取り囲むのに適切な(D1に沿った)高さを示す部分的に管状壁22を有するU字型本体21を備え、2つの自由端22aがUの枝の端部に対応している。把持部材20は、U字型本体21の開口24を介して医療用容器4のネック7に係合されるように意図され、U字型本体21の湾曲された部分は、ネック7を部分的に取り囲む。
【0083】
用語「前」または「前方」は、方向D2を基準に、開口24の側に位置付けられまたは開口24に向けられた要素に関して使用され、用語「後」は、U字型本体21の湾曲された部分の側に位置付けられた要素に関して使用される。
【0084】
各自由端22aの近くに、管状壁22は、その外表面に、傾斜された近位面23aおよび実質的に横断する遠位面23bを有するペグ23が設けられている。その円形部分において、部分的に管状の壁22は、その外表面に、傾斜された近位面25aおよび実質的に横断する遠位面25bを有する後方ペグ25(図8参照)がさらに設けられる。ペグ23、25の遠位面23b、25bは、実質的に1つの同じ横断平面に位置付けられる。
【0085】
その円形部分において、部分的に管状の壁22は、内表面に、前方突出部29がさらに設けられる。各自由端22aは、半径方向リム27を形成する遠位前部突出部がさらに設けられる。図9に示されるように、前方突出部29および半径方向リム27の近位面は、実質的に1つの同じ横断平面に位置付けられ、医療用容器4のネック7の周縁部11の遠位面に対する支持体を形成する(たとえば、図19参照)。
【0086】
U字型本体21は、その近位端において、中央孔28を形成するここでは不連続な内側環状リム21aがさらに設けられる。
【0087】
把持部材20はまた、連結部材65を備え、連結部材65は、管状壁22から半径方向に外方に突き出て、カバー60の部分と協働して、カバー60がその第1の位置と第2の位置との間で回転することを可能にするように設計されている。この連結部材65は詳細に説明されない。
【0088】
把持部材20は、第1のガイド手段をさらに備え、示された実施形態では、第1のガイド手段は、管状壁22の各自由端22aに近いU字型本体21から突出する実質的に長手方向の脚51を備える。各脚51は、図7に示されるように、管状壁22から前方にかつ外方に突出する。
【0089】
各脚51の遠位端は、可撓性タブ26を延ばしている。各可撓性タブ26は、図6から図9および図20に示されるように、ロックされた位置において、U字型本体21から外方にかつ遠位に突出する。さらに、可撓性タブ26は、後で説明されるように(図24参照)、実質的に本体21に当接して偏向されることができ、たとえば、対応する脚51と実質的に整合される。図示された実施形態では、脚51の遠位端は、半径方向リム27の遠位面から遠位方向に位置付けられる。
【0090】
可撓性タブ26は、把持部材20に配設された第1の保持手段に関連する、またはそれを構成する。
【0091】
別の実施形態(図示せず)では、把持部材は、軸方向把持部材であり、管状本体を備える。
【0092】
ここで、図10および図11を参照して圧縮部材40が詳細に説明される。
【0093】
圧縮部材40は、横断壁41aによってその近位端で閉じられる管状壁42で形成されたキャップ41を備える。キャップ41は、図12に示されるように、把持部材20をその中に受け入れるサイズおよび形状にされている。横断壁41aは、エラストマー片30(たとえば、図17参照)を受け入れるための中央孔43が設けられている。
【0094】
示された実施形態では、穿刺可能なエラストマー片30は、環状外側ビード31、近位空洞32、および実質的に平坦な遠位横断面33が設けられた全体的に円筒の形状を有する。図17に示されるように、たとえば、穿刺可能なエラストマー片30は、摩擦および/またはスナップ嵌め手段を用いてキャップ41の横断壁41aの中央孔43内に受け入れられるような寸法および形状にされる。示されない実施形態では、穿刺可能なエラストマー片30は、立方体形状などの横断壁の中央孔43の形状と相補的な任意の適切な形状を有することができる。
【0095】
穿刺可能なエラストマー片30は、圧力下で屈曲することができる気体および液体を浸透させない材料で作られる。たとえば、エラストマー片は、1から8mm、好ましくは2から4mmの範囲の厚さを有する。エラストマー片は、DIN53505に従って測定された、10から100の範囲のショアA硬度、好ましくは40から70の範囲のショアA硬度を示し得る。
【0096】
本発明のアダプタの穿刺可能なエラストマー片30の適切な材料は、天然ゴム、アクリレート−ブタジエンゴム、シス−ポリブタジエン、クロロまたはブロモブチルゴム、塩素化ポリエチレンエラストマー、ポリアルキレンオキシドポリマー、エチレン酢酸ビニル、フルオロシリコーンゴム、ヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレンターポリマー、ブチルゴム、ポリイソブテン、合成ポリイソプレンゴム、シリコーンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、テトラフルオロエチレンプロピレンコポリマー、熱可塑性コポリエステル、熱可塑性エラストマーなど、またはそれらの組み合わせを含む。
【0097】
好ましくは、エラストマー片が自己再生シールであり、針がエラストマー片から除去されると、それは、たとえば0.5秒未満で、自動的かつ迅速に、針の穿刺によって生成された孔を封止する。この自動閉鎖ステップは、多数回、特に、複数回投与量容器4に最初に存在する製品の多数回の投与量を取り出すために必要な回数で行われ得る。この自動の遮断は、エラストマー片と隔壁との間の境界面と同様に、医療用容器内に空気および/または汚染物質が入るのを制限または防止し、したがって、無菌状態の維持を可能にする。さらに、本発明のアダプタの穿刺可能なエラストマー片の存在は、針が隔壁から除去された後にそれがまだ穿刺可能なエラストマー片内に存在するので、医療用容器の隔壁が再シールする時間を与える。したがって、1または複数の投与量の製品の取り出しの後に医療用容器が負圧下で維持される場合でも、医療用容器内にまたはエラストマー片と隔壁との間の境界面に、空気も汚染物質も導入されることがない。加えて、医療用容器の隔壁はそれ自体が自己再生シールであり得る。
【0098】
本発明のアダプタの自己再生シールする穿刺可能なエラストマー片のための適切な材料は、合成ポリイソプレン、天然ゴム、シリコーンゴム、熱可塑性エラストマーなど、またはそれらの組み合わせを含む。
【0099】
実施形態において、穿刺可能なエラストマー片は、銀イオンまたは銅イオンなどの殺菌剤を含む材料をさらに含むことができる。たとえば、銀塩または銅塩は、穿刺可能なエラストマー片に含まれる材料に存在するポリマーマトリックスに共有結合され得る。あるいは、銀塩または銅塩は、穿刺可能なエラストマー片に含まれる材料に存在するポリマーの製造中に投入物として導入され得る。たとえば、ポリマーマトリックスは、シリコーンゴム、ブチルゴム、および/またはハロゲンブチルゴムから選択され得る。実施形態において、穿刺可能なエラストマー片は、銀イオンを含むシリコーンゴムを含む材料からなり、そのような製品は、Momentive Performance Materials社から商標「Statsil(登録商標)」または「Addisil(登録商標)」で市販されている。実施形態において、穿刺可能なエラストマー片は、銀イオンを含むシリコーンゴムのような、銀イオンを含む材料で構成され得る。他の実施形態では、穿刺可能なエラストマー片は、銅イオンを含む材料で構成され得る。
【0100】
銀イオンや銅イオンのような殺菌剤を含む材料を含む、本発明のアダプタの穿刺可能なエラストマー片は、殺菌性および疎水性を示す。したがって、細菌の増殖が、穿刺可能なエラストマー片の表面において直接防止される。水分形成も防止され、それにより、細菌の成長をさらに低減する。結果として、針が、銀イオンや銅イオンなどの殺菌剤を含む材料を含む本発明のアダプタの穿刺可能なエラストマー片を穿刺するとき、製品の投与量を医療用容器から取り出すために医療用容器に入ることに関して、医療用容器内容物の汚染のリスクが低減される。
【0101】
他の実施形態または組み合わせとして、穿刺可能なエラストマー片は、クロルヘキシジンジアセタートなどの殺菌剤を含むコーティングを備えることができる。たとえば、穿刺可能なエラストマー片は、クロルヘキシジンジアセタートを含むコーティングで被覆されたブチルゴムまたはハロゲンブチルゴムを含むことができる。そのようなコーティングは、UV架橋結合によって得られてよい。そのようなコーティングの殺菌作用は、数分以内に生じることができ、したがって、そのようなコーティングは、穿刺可能なエラストマー片内のその挿入中に、汚染された針を洗浄することができる。
【0102】
たとえば、クロルヘキシジンジアセタートの溶液が、UV架橋にかけられる前に穿刺可能なエラストマー片に加えられてよい。そのようなコーティングは、それらが高い速動性(数分以内)を有し、したがって、穿刺可能なエラストマー片内への針の挿入中にそれを洗浄できるので、非常に興味深い。
【0103】
実施形態において、穿刺可能なエラストマー片30の遠位表面は、隔壁8の外表面全体に対して相補的である。したがって、針によるアダプタの穿刺可能なエラストマー片の穿刺場所がいずれであっても、使用者は、針の遠位先端が、穿刺可能なエラストマー片を貫通した後に隔壁を直接穿刺することを保証される。したがって、遠位先端は、周囲空気、または隔壁の外表面と穿刺可能なエラストマー片の表面との間に捕捉される他の要素と接触しない。特に、そのような実施形態では、隔壁の外表面と穿刺可能なエラストマー片の相補的な表面とは、それらの表面全体で一緒に密接するように互いに合致し、閉じられた境界面になる。
【0104】
管状壁42は、本明細書では圧縮部材40の「前面部分(front part)」と呼ばれるその周縁の部分に、開口44が設けられ、開口44は、把持部材20と圧縮部材40とが一緒に組み立てられて図12のアダプタを形成するときに、把持部材20の自由端22aに面しそれを受け入れることが意図されている。
【0105】
開口44の各側部で、管状壁42は、第1の凹部45aと、第1の凹部45aから近位方向に離間された第2の凹部45bとが設けられる。さらに、後方凹部46が管状壁42の後方部に配設され、後方凹部46および第2の凹部45bは、実質的に1つの同じ横断平面に位置付けられる。
【0106】
追加の孔66が、把持部材20の連結部材65と協働することができるカバー60の部分を受け入れるために横断壁41aに配設されて、カバー60がその第1の位置と第2の位置との間で回転することを可能にする。
【0107】
圧縮部材40は、第2のガイド手段をさらに備え、示された実施形態では、第2のガイド手段は、開口44の各側部で実質的に長手方向のハウジング52を備える。図11に示されるように、各ハウジング52は、L字型断面を有し管状壁42から内方に突き出る壁53によって形成される。したがって、各ハウジング52は、内方へ開かれ、開放遠位端も有する。さらに、ハウジング52の遠位面54は、圧縮部材40の管状壁42の遠位面に対して近位方向にずらされる。
【0108】
圧縮部材40は、第1の回転阻止手段をさらに備える。示された実施形態では、第1の回転阻止手段は、開口44の各側部に配設され、かつ外方へ開く、実質的に長手方向のスロット71を備える。たとえば、各スロット71は、長手方向ハウジング52に隣接して圧縮部材40上に、たとえば、ハウジング52の外面上に位置付けられる。
【0109】
図12は、アダプタ2の最初の使用の前の圧縮部材40に取り付けられた把持部材20を示す。
【0110】
管状壁22および42は、実質的に同軸であり、把持部材の管状壁22は、圧縮部材40の管状壁42から内方に位置付けられる。加えて、把持部材20の各脚51は、圧縮部材40の対応するハウジング52に受け入れられ、可撓性タブ26は、脚51の遠位端から延び、長手方向ハウジング52の開放遠位端から出て来る。さらに、ペグ23がそれぞれ第1の凹部45aに係合される。
【0111】
次いで、圧縮部材40は、図18および図19に示されるように、アダプタ2が医療用容器4上に固定されたとき、穿刺可能なエラストマー片30が隔壁8の外表面9と圧力で接触しないように意図される、非作動状態にある。
【0112】
圧縮部材40は、この非作動状態から、図23に示されるように、アダプタ2が医療用容器4上に固定されたとき、穿刺可能なエラストマー片30が隔壁8の外表面9と圧力で接触するように意図される、作動状態に向けて、把持部材20に対して可動である。
【0113】
非作動状態から作動状態への圧縮部材40の移動は、把持部材20に対して遠位方向の長手方向平行移動である。この移動は、第1のガイド手段と第2のガイド手段との間の協働によってガイドされ、脚51は、ハウジング52の内部を摺動するように配設される。作動状態では、ペグ23および後方ペグ25はそれぞれ、第2の凹部45bおよび後方凹部46に係合される。
【0114】
ペグおよび凹部は、把持部材20に対して非作動または作動位置に圧縮部材40を維持するように協働することができる手段を形成する。
【0115】
ここで、図13から図16を参照してブリスタ3のシェル100が詳細に説明される。
【0116】
シェル100は、アダプタ2を収容するための受容部103を備え、それは、上面壁104および4つの側壁105a、105b、105c、105dを有する実質的に平行六面体の形状を有することができる。上面壁104は、実質的に平坦とされ、底壁107を有する凹部106が設けられることができる。
【0117】
シェル100は、挿入部108をさらに備え、挿入部108は、1つの側壁105dから受容部103の側方延長部を形成し、医療用容器4上へのアダプタ2の取り付けプロセスの第1のステップで、医療用容器4の上部分を受け入れるように設計される。挿入部108は、実質的に平行六面体の形状を有することができる。挿入部108の内部空間と受容部103の内部空間とは、側壁105dに配設された開口を介して連結される。
【0118】
少なくとも1つの側壁、および好ましくは2つの対向する側壁105a、105dは、それらの内面に、実質的に長手方向のリブ109を備え、実質的に長手方向のリブ109は、2つの実質的に長手方向の溝110の間にさらに位置付けられ得る。長手方向リブ109および/または溝110は、圧縮部材40に配設された第1の回転阻止手段と協働するように設計された第2の回転阻止手段を形成する。より精密には、各リブ109がスロット71に係合されて、長手方向軸の周りのシェル100に対する圧縮部材40の回転を防止する。シェル100に対するアダプタ2の回転を阻止することによって、回転阻止手段は、医療用容器4上のアダプタ2のアセンブリの容易さのために特に有用である。
【0119】
各リブ109には、切欠き111がさらに設けられ、切欠き111は、内方に開かれ、第2の保持手段に関連するまたはそれを構成する。アダプタに配設された第1の保持手段、すなわち、把持部材20の可撓性タブ26と、シェル100に配設された第2の保持手段、すなわち、切欠き111とは、保持システムを形成する。それらは、後で説明されるように、圧縮部材40が非作動状態にあるとき、それが作動状態でない限り、協働するように設計されている。
【0120】
切欠き111は、図16に示されるように、アダプタ2を保持することができる停止部を作成するように、実質的に横断的にまたはわずかな傾斜を有して配設された、傾斜された近位縁部112および遠位縁部113を有することができる。
【0121】
ここで、図2から図4の医療用容器4に連結するアセンブリ1の使用が、図17から図24を参照して説明される。
【0122】
アダプタ2は、図1および図12に示されるように、圧縮部材40の非作動状態で、把持部材20、穿刺可能なエラストマー片30、および圧縮部材40が一緒に組み立てられ、受容部103においてブリスタ3にパックされた状態で、使用者に提供される。この位置では、エラストマー片30を有する中央孔43が、把持部材20の中央孔28に面する。リブ109は、スロット71に係合され、シェル100の凹部106の底部107が、カバー60の上面に近い。
【0123】
さらに、把持部材20の本体21からシェル100に向けて外方へ突出する可撓性タブ26は、アダプタ2に向けて開かれた切欠き111にそれらが係合されるロックされた位置にあり、それにより、ブリスタ3のシェル100がアダプタ2から分離されるのを防止する(図20参照)。
【0124】
使用者が、医療用容器4に含まれる製品の投与量の引き出しに進む準備ができると、彼は、ブリスタ3を開くために閉鎖膜102を除去する。先に説明された保持システムのため、より正確には、可撓性タブ26と切欠き111との間の協働により、シェル100は、医療用容器4のネック7にアダプタ2が固定されるまで、圧縮部材40が作動状態にない限り、アダプタ2上に留まる。アダプタ2は、ブリスタ100から滑り出て、汚染された表面に接触することはない。さらに、使用者はブリスタ3のシェル100を取り扱うだけなので、使用者手とアダプタ2との間の直接接触の機会が限定される。
【0125】
圧縮部材40が作動状態になった後のみ、エラストマー片30を注射器具の針によって穿刺するために、使用者がシェル100を除去することが可能になる。
【0126】
図17を参照すると、矢印S1によって示される第1のステップ中に、使用者は、シェル100の挿入部108に医療用容器4の上部分を係合し、次いで、矢印S2で示される第2のステップ中に、医療用容器4のネック7上にアダプタ2を横方向に取り付けるために、シェル100の受容部13に向けてD2に沿って医療用容器4を移動させる。
【0127】
図18および図19に示されるように、医療用容器4がアダプタ2に適切に取り付けられると、カラー3を取り囲む前方突出部29および半径方向リム27、ならびに内側環状リム21aによって、アダプタ2がネック7上に配置される。この位置では、穿刺可能なエラストマー片30は、隔壁8の外表面9と圧力で接触しない。アダプタ2、および圧縮部材40は、次いで非作動状態になる。たとえば、図示された実施形態では、穿刺可能なエラストマー片30が隔壁8から離間される。さらに、把持部材20の横方向取り付けが、医療用容器ネック7上へのアダプタ2の正確な位置合わせを可能にする。医療用容器4に対するアダプタ2の連結は、使用者によって容易であり、片手でも容易に行われることができる。
【0128】
次いで、図19に示されるように、アダプタ2、およびこの実施形態では圧縮部材40が、非作動状態になると、ペグ23が第1の凹部45aに係合され、それにより、圧縮部材40は非作動状態に維持される。
【0129】
さらに、前に説明されたように、保持システム(すなわち、完全にロックされた位置で図20に示されるように切欠き111に係合された可撓性タブ26)に起因して、シェル100は、取り付けプロセスのこのステップで、医療用容器4に取り付けられたアダプタ2から除去できない。これにより、アダプタ2がブリスタ3から除去されずに医療用容器4に独立して取り付けられていることが保証され、したがって、使用者の手と隔壁8、アダプタ2または穿刺可能なエラストマー片30との間の接触が制限される。
【0130】
図18の矢印S3によって示される取り付けプロセスの第3のステップ中に、シェル100が、たとえば、上面壁104に使用者によって加えられた遠位圧力によって、医療用容器4に向けて遠位に移動される。シェル100の凹部106の底部107がカバー60の上面に隣接するので、カバー60は圧縮部材40の横断壁41に隣接し、この結果、圧縮部材40は、把持部材20に対して遠位に移動される。
【0131】
言い換えれば、医療用容器4が近位に移動され、それにより、医療用容器4が把持部材20の内側環状リム21aを近位に押すので、把持部材20も圧縮部材40に対して近位に移動される。
【0132】
アセンブリ1の適切な使用のため、および、穿刺可能なエラストマー片30と医療用容器4の隔壁8との間の気密境界面を保証するために、この第3のステップは、圧縮部材40が作動状態になるまで行われなければならない。
【0133】
この移動の最初に、把持部材20は、圧縮部材40に対して近位に移動されていて、したがって、図21および図22に示されるように、後者はもはや非作動状態でない。この中間位置では、ペグ23が凹部45aから出て来ており、これは、傾斜された近位面23aによって促進される。
【0134】
この移動中、脚51がハウジング52において近位に摺動し、把持部材20が圧縮部材40に対して近位に移動するので、各ハウジング52の遠位面54は、対応する可撓性タブ26と接触し、把持部材20の本体21に対して偏位する。
【0135】
しかしながら、アセンブリ1は、圧縮部材40が作動状態にない限り、可撓性タブ26が、それらのロックされた位置と比べてそれらが偏位していても、依然として切欠き11と協働して、シェル100がアダプタ2から分離されるのを防止するように設計されている。破断可能タブと比べて、可撓性タブ26は、ロックされた位置で非常に効果的なロックを提供し、そこでは、医療用容器4が把持部材上に配置されてない限り、シェル100をアダプタ2から分離するのが難しい。
【0136】
これは、アダプタ2がシェル100に依然として収容されている限り、アダプタ2がその作動状態にあるとき、医療用容器4に含まれる薬物でシリンジが充填されることができないことを保証する。実際、図21に示されるように、アダプタ2のこの位置でシリンジを充填することを可能にすることは望ましくなく、その理由は、そのとき穿刺可能なエラストマー片30が隔壁8と接触せず、したがって衛生要件が満たされないからである。
【0137】
図23および図24に示されるように、圧縮部材40が作動状態にあるとき、ペグ23、25が凹部45b、46に係合され、それが、圧縮部材40を作動状態に維持する。次いで、穿刺可能なエラストマー片30が隔壁8と圧力で接触し、次いで、外気を医療用容器内部に吸い込む、またはシリンジ針によって隔壁を通して汚染物質を導入することによって医薬製品を汚染することを回避しながら、シリンジを充填することが行われ得る。
【0138】
この作動状態において、可撓性タブ26は、ロック解除された位置に向けて第1の保持手段、すなわち可撓性タブ26を移動、破断、または変形することができるロック解除手段として機能する対応するハウジング52の遠位面54によって、大きく偏位している。このロック解除された位置において、図24に示されるように、たとえば本体21から実質的に突き出ない、可撓性タブ26は、切欠き111とそれ以上協働しない。したがって、使用者は、アダプタ2または隔壁8の外表面9と直接接触するのを回避しながら、アダプタ2からシェル100を除去することができる。さらに、可撓性タブ26が圧縮部材40によって現在隠されているので、アダプタ2の除去の際の可撓性タブ26と切欠き111との間の望ましくない協働のいかなるリスクも回避される。破断可能タブと比べると、可撓性タブ26は、ロックされた位置からロック解除された位置への円滑な移行を可能にし、ブリスタ3からのアダプタ2の分離は、圧縮部材40の作動化に比べて追加的な労力なしに行われる。
【0139】
本発明は、当然、例として上記に説明された実施形態に限定されず、説明された手段のすべての技術的等価形態および代替形態ならびにそれらの組み合わせを包含する。
【0140】
たとえば、説明された実施形態では、ロック解除手段は、圧縮部材に配設され、第2のガイド手段の部分によって形成される。しかしながら、他の実施形態(図示せず)では、圧縮部材および把持部材は単一の部分から形成され得る。これらの実施形態では、把持部材は、実質的に管状の本体を含む軸方向クリップ部材であり得る。
図1
図2
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図5
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