(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
送信周波数において無線周波数の送信信号を送信するように構成され、対応する2つ以上の受信した無線周波数信号を同時にダウンコンバートするために、対応する局部発信器周波数において、局部発信器信号を同時に生成するように動作する2つ以上の局部発信器を有する無線送受信機における方法であって、
前記局部発信器周波数と前記送信周波数に基づいて、1つ以上の自己干渉周波数を識別する工程と、
前記識別された自己干渉周波数に基づいて、前記送信信号のベースバンド表現を重みづけし、周波数シフトすることにより、ベースバンドキャンセル信号を生成する工程と、
干渉が低減されたベースバンド信号を得るために、前記ベースバンドキャンセル信号とダウンコンバートされた受信信号とを結合する工程と、
を有することを特徴とする方法。
前記1つ以上の自己干渉周波数を識別する工程は、前記送信周波数の所定の範囲内に入るスプリアス周波数を識別する工程を有することを特徴とする請求項2に記載の方法。
前記ベースバンド処理回路は、前記局部発信器周波数に基づいて、前記1組のスプリアス周波数を計算することにより、前記1組のスプリアス周波数を決定するように構成されることを特徴とする請求項10に記載の無線送受信機。
前記ベースバンド処理回路は、前記送信周波数の所定の範囲に入るスプリアス周波数を自己干渉周波数として識別するように構成されることを特徴とする請求項10に記載の無線送受信機。
前記ベースバンド処理回路は、前記無線送受信機に記憶されたキャリブレーションテーブルから前記複素重みと前記遅延とを読み出すようにさらに構成されることを特徴とする請求項14に記載の無線送受信機。
ベースバンドに受信信号が欠けていることが知られている場合に、ある時間間隔で前記ベースバンドにおいてスプリアス信号を測定し、前記キャリブレーションテーブルにおいて測定された複素振幅を記憶させることにより、複数の非線形の組み合わせのそれぞれに対する前記複素重みを設定するようにさらに構成されることを特徴とする請求項16に記載の無線送受信機。
前記無線デバイスは、携帯電話機、無線機能付きタブレットコンピュータ、基地局、および無線中継機のうちのいずれか1つであることを特徴とする請求項18に記載の無線デバイス。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に示す説明において、本発明の特定の実施形態の詳細が、説明を目的として限定的でなく示される。当業者であれば、他の実施形態がこれらの詳細とは別に用いられ得ることを理解するだろう。さらに、いくつかの例において、周知の方法、ノード、インタフェース、回路、およびデバイスの詳細な説明は、不必要な詳細で本説明をわかりにくくしないように、省略される。当業者であれば、説明される機能は、1つまたは複数のノードの実装され得ることを理解するだろう。説明される機能のいくつか、または全ては、アナログ、並びに/または、特殊の機能を実行するために相互接続された個別の論理ゲート、ASIC、PLAなどのようなハードウェア回路を用いて実装され得る。同様に、該機能のいくつか、または全ては、1つ以上のデジタルマイクロプロセッサまたは汎用のコンピュータを伴い、ソフトウェアプログラムとデータを用いて実装され得る。ここで、エアインタフェースを用いて通信を行うノードが記載される。これらのノードは、適切な無線通信回路も有することが理解されるだろう。さらに、プロセッサに、ここに記載される手法を実行させるためのコンピュータの命令の適切なセットを含む半導体メモリ、磁気ディスク、または光ディスクのような、持続性のメモリを含むあらゆる形式のコンピュータ読み取り可能なメモリ内に、当該手法は全体に具体化されるものと追加的に考えられ得る。
【0012】
本発明のハードウェアの実装は、限定なく、デジタル信号処理(DSP)ハードウェア、縮小命令セットプロセッサ、特殊用途向け集積回路(ASIC)並びに/またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)に限定されないものを含むハードウェア(例えば、デジタルまたはアナログ)回路、および、そのような機能を実行可能な(適切な)状態機械(state machines)を含む、または包囲する。
【0013】
コンピュータの実装の観点では、コンピュータは、一般的には、1つ以上のプロセッサまたは1つ以上のコントローラを含み、コンピュータ、プロセッサ、およびコントローラは、区別せずに用いられ得る。コンピュータ、プロセッサ、またはコントローラにより提供された場合、機能は、単一の個別のコンピュータ、プロセッサ、またはコントローラ、または、単一の共有されたコンピュータ、プロセッサ、またはコントローラ、または、複数の個別のコンピュータ、プロセッサ、またはコントローラであり、そのうちのいくつかが共有または分散され得るものにより、提供される。さらに、「プロセッサ」または「コントローラ」の用語は、上記に例示したハードウェアなど、そのような機能を実行する、並びに/またはソフトウェアを実行することが可能な他のハードウェアを参照してもよい。
【0014】
図1は、無線ユニット100を示す。無線ユニット100は、いくつかの例では全てが同じチップ上に配置され得る、2つの送信器120と2つの受信器130を有する送受信システム110を有する。送信器の出力と受信器の入力は、RFフロントエンドユニット140に接続される。RFフロントエンドユニット140は、セルラハンドセット等に対する無線モデムにおいて典型的に含まれる、デュプレックスフィルタと、送信/受信スイッチ、アンテナチューナなどを含み得る。
【0015】
以下に説明する例において、一般的に、送信器1(TX1)に対するアップコンバージョン周波数は、送信器2(TX2)に対するアップコンバージョン周波数と異なるものと仮定する。さらに、受信器1(RX1)に対するダウンコンバージョン周波数は、受信器2(RX2)に対するダウンコンバージョン周波数と異なるものと仮定する。そのような構成、すなわち、2つ以上の受信器が異なるチャネルであるが同じ3GPPダウンリンク(DL)において信号を受信するために使用され、1つの送信器が同じ3GPPアップリンク(UL)バンドの対応するチャネルの一つ内で信号を送信するために使用される構成が現れ得るシナリオの一つの例は、LTEバンド内キャリアアグリゲーションをサポートするセルラハンドセットにおけるものである。任意で、2つ以上の送信器が、異なるチャネルであるが同じバンド内で信号を送信するために用いられてもよい。
【0016】
各送信器と各受信器に関し、局部発信器(LO)パス150が存在する。例示的なLOパスの詳細を
図2に示す。ここで、図示されるLOパスは、典型的には位相ロックループ(PLL)回路210の形態の無線周波数(RF)シンセサイザと、バッファ224、ワイヤ226、および、可能性として分周器222を含む分配回路220と、最後に、分配回路220により供給されるLO信号により駆動されるミキサ230を含む。
【0017】
PLL回路210は、良好な位相−ノイズ性能を達成するために、典型的にはLCベースの発信器である、制御された発信器(CO)215を含む。COにおいて使用されるコイルまたは誘電性素子(L)は、近傍における他の誘電回路とのカップリングを生じやすい。分配回路220における長いワイヤも、カップリングに寄与する。分周器222やバッファ224のような他のブロックも、カップリングに寄与し得るが、典型的には程度は小さい。
【0018】
バッファ224とミキサ230のようなアクティブなブロックは、それらを駆動するLO信号に関して高度に非線形である。これは、バッファ224とミキサ230のようなアクティブなブロックは、LO信号の非線形の相互変調積を生成することを意味する。LO信号が単一な基本周波数と関連する高調波のみを含む限り、これらの非線形のブロックは、可能性として追加的な高調波以外に、新しい周波数成分を生成しない。しかしながら、一つのLOパスからのLO信号が別のLO信号とカップリングする場合、およびその逆の場合も同様に、非常に好ましくない新しい周波数成分が生じ得る。これらの新しい成分は、例えば、二次の相互変調積(すなわち、LO周波数並びに/またはそれらの高調波の差と和における積)、三次の相互変調積等の相互変調積(例えば、他のLO周波数より低い1つのLO周波数の2倍における)を含み得る。
【0019】
PLLにより生成された周波数が、例えば、ミキサに入力されるLO信号より2または4高いファクタであるように、LOパスにおける分周器を使用することが多い。これは、LO成分の直角位相の生成を容易にするため、25%デューティーサイクルパッシブミキサ動作を可能にするため、または、高調波リジェクション多層ミキサを使用するため、といった、いくつかの理由のいずれかのために行われ得る。しかしながら、このアプローチは、LOのスプリアス成分への多様な寄与を解析する場合に多くの周波数を考慮しなければならないことを意味する。言い換えると、PLLにおけるCOにより生成された周波数のみを考慮するのでは十分ではない。
【0020】
図3は、2つのLOパス150A、150Bを示す。LOパス150Aは、基本周波数f
1を生成するCO215を有する。LOパス150Bは、基本周波数f
2を生成するCO215を有する。分配回路220が分周器222を含む場合、f
1A、f
1B等の1つ以上の周波数は、LOパス150Aにおいて生成され得る。相応に、周波数f
2A、f
2B等は、LOパス150Bにおいて生成され得る。いくつかのケースでは、各分周器222は、対応するミキサ230にしっかりと統合される。それにより、ミキサ230への分周器の出力信号の分配のために、長いワイヤは必要とされない。この場合、考慮すべき支配的な周波数成分は、PLL単独により生成されたものに限定され得る。しかしながら、他のケースでは、分周器並びに/またはCOにより生成された周波数は、多様な非線形の相互変調積を生成するために、バッファ224、ミキサ230等において互いに作用する可能性がある。以下に示す詳細な例のいくつかにおいて示すように、これらの非線形積のいくつかは、送信信号に関連した周波数において現れる場合がある。当該送信信号のスプリアス変換は、受信信号と干渉し得る。
【0021】
上述の議論は、問題の一般的な説明を提供することを目的としているが、以下の例は、バンド内キャリアアグリゲーションをサポートする送受信機において現れ得る、1つの特定で主要な問題を示す。
図4は、送信周波数f
TX1上で送信を行い、中心周波数f
RX1とf
RX2でキャリアを受信する送受信機に関与する第1の例を示す。
【0022】
図4(a)は、スペクトラムが示されており、ここで、2つの信号S
RX1とS
RX2は、同時に受信され、各受信器とLO信号であるLO1とLO2を用いてダウンコンバートされる。この例では、ダイレクトコンバージョンが想定され、LO信号は、各受信キャリア周波数f
RX1とf
RX2におけるものとなる。これに加えて、各受信器は、周波数f
TX1において、強力なTX漏出(leakage)信号S
TX1の影響を受ける。LOカップリングにより、各LO信号は、
図4(b)と
図4(c)に示されるように、所望の周波数成分だけでなく、他のLO信号の少量の残留部を含む。これらのLO信号が、LOバッファやミキサの入力それ自身のような、非線形のブロックを通過する場合、スプリアス周波数成分が生成される。1つ例を
図4(d)に示す。
図4(d)は、周波数f
S1=2*f
RX1−f
RX2に位置する三次の積が示されている。カップリングと非線形積の生成の結果として、受信信号上で最終的に作用するLO信号は、両方のLO周波数における成分を含み、さらに1つ以上の非線形積も含む、複合(composite)信号である。これらの複合LO信号は、
図4(d)と
図4(e)に表され、LO1’、LO2’のLO信号としてラベルされている。
【0023】
図4(f)と
図4(g)は、それぞれ、f
RX1とf
RX2に同調された受信器におけるダウンコンバージョンの結果を示す。重ねて、この例の目的のために、受信器は、ダイレクトコンバージョン受信器と仮定され、すなわち、LO周波数は、キャリア周波数と同じである。
図4(f)に見られるように、信号S
RX1はゼロ周波数のベースバンドに適切に変換される。しかしながら、送信信号S
TX1と同じ形状を有する、干渉する送信器の漏出成分も、ゼロに非常に近い周波数にダウンコンバートされる。それにより、漏出成分は、ダウンコンバートされた受信信号と部分的に重なる。これは、送信信号S
TX1の帯域幅内に入る周波数におけるLO1’のf
S1成分の混合による結果である。第2の受信信号S
RX2のレプリカも、LO2からダイレクトにカップリングされるLO1’の成分を介して、ゼロのベースバンドにダウンコンバートされる。しかしながら、S
RX2のこのレプリカの振幅は、図示される例において、所望の受信信号よりも弱い。また、干渉する送信器の信号成分としての問題ほど大きくない。
【0024】
図4(g)は、f
RX2に同調された第2の受信器におけるダウンコンバージョンの結果を示す。このケースでは、S
RX1のレプリカだけが、受信信号と干渉する。これは、受信信号の相対的な振幅、および、同一チャネル信号を分解するための受信器の能力に依存し、問題であるかもしれないし、問題でないかもしれない。
【0025】
図5は、第2の例を示し、送信周波数f
TX1上で送信を行い、中心周波数f
RX1とf
RX2を中心としてキャリアを受信する送受信機に再び関与する。しかしながら、このケースでは、生成されるオリジナルのLO信号であるLO1とLO2は、それぞれ、ダウンコンバージョン周波数の2倍の周波数、すなわち、2*f
RX1、2*f
RX2を有する。これらのLO信号は、ダウンコンバージョンのための正しい周波数を生成するために分周器に入力される。
【0026】
受信信号に加えて、
図5に示す例示的なシナリオにおける各受信器は、強力なTX漏出信号S
TX1の影響を受ける。分周器の前のLOカップリングに起因して、
図5(b)と
図5(c)に示すように、各LO信号は所望の周波数成分だけでなく、他のLO信号の少量の残留部を含む。分周器の後、LO信号は、LO信号並びに/または高調波の非線形積から生じる追加的な周波数成分を含む。特に、
図5(d)は、周波数f
S1=f
RX1−2*(f
RX2−f
RX1)におけるスプリアス積を示す。また、
図5(c)は、周波数f
S2=f
RX2+2*(f
RX2−f
RX1)におけるスプリアス積を示す。重ねて、カップリングと非線形積の生成の結果として、最終的に受信信号上で作用するLO信号は、両方のLO周波数における成分を含み、また、1つ以上の非線形積をも含む複合信号である。これらの複合LO信号は、
図5(d)と
図5(e)に示され、LO1’とLO2’のLO信号としてラベルされている。
【0027】
図5(f)と
図5(g)は、それぞれ、f
RX1とf
RX2に同調されたダウンコンバージョン受信器におけるダウンコンバージョンの結果を示す。
図5(f)に見られるように、信号S
RX1は、ゼロ周波数のベースバンドに適切に変換される。しかしながら、送信信号S
TX1と同じ形状を有する、干渉する送信器の漏出成分も、ゼロに非常に近い周波数に再びダウンコンバートされる。それにより、漏出成分は、ダウンコンバートされた受信信号と部分的に重なる。これは、送信信号S
TX1の帯域幅内に入る周波数におけるLO1’のf
S1成分の混合による結果である。同様に、
図5(g)は、f
RX2に同調された第2の受信器におけるダウンコンバージョンの結果を示す。この受信器において、ダウンコンバートされた、競合する送信器の漏出は存在しない。
【0028】
一般的に、LOパス間のカップリングは、チップ上の空間分離手段、ブロックとワイヤの適切な分離、わずかな程度のカップリングを有するCO誘電ジオメトリ(inductor geometries)の使用等により低減され得る。しかしながら、これらのアプローチの全ては、設計並びに/または全てのケースに適用可能でない送受信機の性能に、制約を課すことができる。以下に詳述する手法は、デジタル領域における漏出したTX信号のキャンセルに基づくものであり、これらの制約を回避するために使用することができる。
【0029】
すなわち、これらの手法のいくつかの実施形態は、LOカップリングとLO信号上での非線形の動作から生じることが期待されるLOスプリアス信号を計算することから始まる。あらゆるTX信号の周波数とともに、TX信号が同一チャネル干渉を引き起こすか否かを判定することが可能となる。そうである場合、受信信号上でのスプリアス信号の影響を実質的に低減させるために、TX信号のベースバンド表現は、周波数において適切にシフトされ、重みづけされ、受信信号から減算される。いくつかの実施形態では、TX信号のベースバンド表現はまた、それが送受信機の構成成分(例えばSAWフィルタ)を通過するときにスプリアス信号により受ける遅延の影響を受け、それゆえに、周波数シフトされ、重みづけされたTX信号は、受信信号における干渉成分と適切に時間整合がとられる。
【0030】
スプリアスLO信号の影響を低減させるためのこれらの手法は、一般的には2つのパートを含む。第1のパートでは、当該手法は、どの送信器キャリアが、受信信号に干渉しキャンセルする必要のある「攻撃者(aggressors)」であるかを識別するために使用される。第2のパートでは、これらの攻撃者の送信器キャリアは、ベースバンドにおいて、受信した「被害者(victim)」キャリアからキャンセルされる。
【0031】
潜在的な攻撃者キャリアを識別する第1のパートの例示的なアプローチは、
図6に表示される擬似的なコードにより説明される。
【0032】
当該擬似的なコードにおいてわかるように、プロセスは、LO発振器信号の積として、または、あらゆるLO分周器の出力信号の積として生じ得る、予想されるスプリアス周波数を計算することから開始する。例えば、f
LO1とf
LO2の2つのLO周波数が与えられた場合、これらの積は、a*f
LO1±b*f
LO2の形の組み合わせを含む。ここでaとbは整数である。この式は、3つ以上のLO発振器信号または分周器の出力信号に適合するように単純に(別の項を用いて)拡張できることが容易に理解されるだろう。送信周波数バンド内またはその近傍に入る可能性のない組み合わせは、考慮する必要はない。
【0033】
LO発振器信号(または分周器の出力信号)の非線形積は、その後、あらゆるTX信号周波数と比較される。送信信号の変調されたベースバンド帯域幅と関心のある受信器信号は両方考慮されるべきである。TXベースバンド帯域幅とRXベースバンド帯域幅との和と等しい、TX RF信号の帯域幅とRX RF信号の帯域幅の和の1/2より小さい差で、スプリアスLO積の周波数がTX信号の中心周波数と異なる場合、スプリアスLO積は、ダウンコンバージョン後に受信器において同一チャネル応答を生成することができる。もし、望まない送信器の応答と被害者の受信キャリアの周波数範囲との重なりがあるのであれば、各潜在的な被害者の受信キャリア信号と、スプリアス周波数と送信キャリアの全ての組み合わせは、チェックされるべきである。さらに、候補の攻撃者として考慮することができるように、送信器信号のパワーレベルが閾値レベルより大きいかをチェックすべきである。送信器に対して低いパワーレベルは、最悪のケースのLOスプリアスレベルが与えられたとしても、被害者の受信キャリアに対してあまり重大な同一チャネル干渉を生成しない。送信器のパワーレベルが閾値より大きい場合、対応する送信器キャリアは被害者の受信キャリアからキャンセルするものとしてマークされる。
【0034】
当該手法の第2のパートは、実際のキャンセルである。これは、キャンセルのためにマークされた攻撃者の送信器信号のベースバンド信号表現に適用させるために、必要なゲイン、遅延、周波数シフトを決定することを含む。なお、ここで参照される「ゲイン」は、一般的には、振幅と位相を有する複素(complex)ゲインである。必要な周波数シフトは、スプリアス信号周波数とTX信号の周波数との比較から直接に生じる−ベースバンドにおいて表現されるように、キャンセル手順のポイントは、TX信号のレプリカをシフトすることである−ゆえに、それは、周波数において、LO信号のスプリアス積により受信器のバンドにダウンコンバートされるTX信号イメージと合致する。必要な複素ゲインとあらゆる遅延は、受信器の設計とLO周波数に依存する。そして、それらは温度に依存して変化し得る。従って、ベースバンドTX信号の周波数シフトされたレプリカに適用し、キャンセル信号を生成するために好適なゲインと遅延とを決定するために、キャリブレーション手順を使用することができる。このキャリブレーション手順は、後の送受信機の動作の間に使用される多様な構成のための値を生成するために、製造の過程で実行され得る。その代りに、または追加的に、そのフィールドのパラメータを調整する補助的な(background)キャリブレーション手順が使用され得る。
【0035】
キャンセルの原理は、1つの攻撃者の送信器と1つの被害者の受信器に対して、
図7に示される。
図7は、TXデジタルベースバンドプロセッサ710とRXデジタルベースバンドプロセッサ720を含むベースバンドプロセッサ700を示す。例えば、同相直交位相(in−phase and quadrature−phase、IQ)生成器715からのIQ信号の形式でのTX信号のデジタルベースバンド表現が、受信機のデジタルベースバンドプロセッサ720に入力される。この送信器IQデータは、受信器に影響を与えるスプリアス応答に合わせるために周波数においてまずシフトされる。その後に、送信器IQデータの振幅と位相を調整するために複素ゲインAを適用することが続く。遅延τは、送受信機においてスプリアス応答が経験した遅延を合わせるために、その後足し合わせられる。加算ユニットで結合された場合に、当該同一チャネル干渉をキャンセルまたは低減するために、周波数シフト、複素ゲインA、および遅延τの全体により、受信信号における同一チャネル干渉と本質的に同じであるが逆位相の信号が生成される。キャンセル信号の振幅と干渉信号の振幅とが等しく、キャンセル信号の位相と干渉信号の位相が逆である場合、時間遅延され、振幅と位相が調整されたTX IQデータであるであるTXベースバンドキャンセル信号を受信信号から減算することにより、同一チャネル干渉を直接キャンセルまたは低減することも可能となる。この場合、TX IQ生成器715と周波数ダウンコンバーターは省略される。
【0036】
送信信号キャリア周波数と、受信器LO信号の計算されたスプリアス周波数成分から、周波数シフトfrは周知であるが、
図7に示す例示的な構成において、複素ゲインAと遅延τは、推定ブロック725により提供される。受信信号のベースバンド表現と送信信号のベースバンド表現との間の相関手法を用いることにより、Aとτの両方を決定することができる。そのような手法は、文献において周知であり、ここでは扱わない。代わりに、パラメータは送受信機の構成に基づいて、例えば、送信信号と受信信号のキャリア周波数と、送信信号と受信信号のパワーレベルに関連して、事前に構成され、または使用されてもよい。
【0037】
所定の値が、複素重み量Aと遅延τに対して使用され得るが、それらは、多くの場合において、定期的または継続的に評価する必要がある範囲で不正確となり得る。これは、特に、複素重みAについて当てはまる。
図7に示す構成において、推定ブロック(EB)725は、この目的にかなう。
【0038】
TX信号の周波数シフトされたベースバンド表現は、受信(ベースバンド)信号であるものとして、相関の目的のために、EBに入力される。Aとτの推定は、相関手法を用いた音響のエリアに起因する、確立した相関手法を用いてなされる。これらの手法のいくつかは、Knapp, C.; Carter, G. Clifford, “The generalized correlation method for estimation of time delay,” Acoustics, Speech and Signal Processing, IEEE Transactions on, vol.24, no.4, pp.320,327, Aug 1976と同様に、Taijun Liu; Yan Ye; Xingbin Zeng; Ghannouchi, F.M., “Accurate Time-Delay Estimation and Alignment for RF Power Amplifier/Transmitter Characterization,” Circuits and Systems for Communications, 2008. ICCSC 2008. 4th International Conference on, vol., no., pp. 70,74, 26-28 May 2008においても記載されている。
【0039】
キャンセルされるスプリアスTXの漏出は、所望の信号と同等またはそれより低いレベルを有するという事実が与えられた場合、所望の精度のレベルを達成するために、少なくともある一定の時間に渡って相関が必要となる。スプリアス応答とTX遅延は、送受信機における異なるメカニズムに起因するので、それらは個別に扱うことが理にかなう。例えば、時間における位置合わせはゲイン推定の精度を向上させるため、遅延τは、複素ゲインAより前に推定することができる。さらに、遅延は、時間と周波数においてあまり変化しない。ここで、スプリアスTXレベルは、温度ドリフトにかなり敏感である。一方、複素ゲインAの推定も、相関手法を用いて実行され得る。例えば、例示的な手法は、Braithwaite, R.N.; Carichner, S., “Adaptive Echo Cancellation for an On-Frequency RF Repeater using a Weighted Power Spectrum,” Wireless Technologies, 2007 European Conference on, vol., no., pp.82,85, 8-10 Oct 2007、および、Grant, S.J.; Cavers, J.K.; Goud, P.A., “A DSP controlled adaptive feedforward amplifier linearizer, ” Universal Personal Communications, 1996. Record., 1996 5th International Conference on, vol. 2, no., pp.788,792 vol,2, 29 Sep-2 Oct 1996、および、Michel C. Jeruchim, Philip Balaban, K. Sam Shanmugan, Simulation of Communication Systems: Modeling, Methodology and Techniques, Springer; 2nd edition (October 31 2000), ISBN-978-0306462672. Section 11.1に詳細が記載されている。
【0040】
要約すると、推定ブロックの動作は以下のようになり得る。
‐周波数変換されたベースバンド送信信号s
txfと受信信号s
rxの送信信号成分を推定する。
‐当該送信成分に関連して、s
txfとs
rxを時間的に整合するためにτを調整する。
‐キャンセル(減算)の後の受信信号の残余送信信号を最小にするように、遅延させたs
txfにおいて適用させる複素ゲインAを推定する。
【0041】
図8は、上述の手法によるスプリアス信号をキャンセルする一般化した方法を示すプロセスフロー図である。
図8に示される動作は、送信周波数において無線周波数の送信信号を送信するように構成され、2つ以上の対応する受信した無線周波数信号を同時にダウンコンバートするために、対応する局部発信器周波数において局部発信器信号を同時に生成するように動作する2つ以上の局部発信器を有する無線送受信機による実装が好ましい。そのような無線送受信機は、携帯電話や他のポータブルまたはエンドユーザ無線デバイスの一部であり、または、例えば、無線基地局、中継ノード等の一部であり得る。図示されたプロセスは、単一の受信機チェーンと単一の攻撃者の送信器チェーンに対する、単一のキャンセル手順のみを含む。必要に応じて、無線送受信機における追加的な受信機並びに/または攻撃者送信器チェーンに対して、対応する手順が同時に実行され得ることが理解できるだろう。
【0042】
ブロック810に示すように、図示されたプロセスは、1つ以上のスプリアス局部発信器積のそれぞれに対応する所定の複素重みおよび遅延を設定することから開始する。これらの所定の値は、例えば、受信信号のベースバンド表現と送信信号のベースバンド表現との間の相関手法の使用を介して取得され得る。上述したように、無線送受信機において補助的なキャリブレーションプロセスの一部として、これは動的に行われ得る。代わりにまたは追加的に、これは、例えば、製造時において、事前キャリブレーション手順として行われ得る。そのため、ブロック810は、点線のアウトラインで示されており、全ての実施形態において登場する必要はないという意味において、または、図示された手順の残りが実行される全ての例において、「選択的」であることを示す。
【0043】
ブロック820において示すように、図示されたプロセスは、識別するステップを含む。ここで、LO発振器信号周波数とTX信号周波数に基づいて、自己干渉周波数が識別される。この段階において、LO発振器信号とTX信号との非線形積を混合することにより生成された干渉信号は、キャンセルするためにマークされる。この識別するステップは、例えば、局部発信器信号の非線形積に対応する1組のスプリアス周波数を決定すること、スプリアス周波数のそれぞれを送信周波数と比較すること、および、送信周波数の所定の範囲内に入るスプリアス周波数を自己干渉周波数として識別することを含む。所定の範囲は、例えば、送信ベースバンド帯域幅と受信ベースバンド帯域幅の和であり得る。例えば、所定の閾値を超える推定された振幅を有するスプリアス周波数のみが識別されるように、スプリアス周波数に対して推定された振幅も考慮され得る。
【0044】
ブロック830において示されるように、ベースバンドキャンセル信号はその後生成される。これは、TX信号のベースバンド表現を周波数シフトし、重みづけすることによって行われる。このポイントで、遅延も適用され得る。なお、キャンセル信号は、対応する干渉信号をキャンセルするために、2つ以上の、周波数シフトされ、重みづけされた、TX信号の表現を含み得る。最終的に、ブロック840で示されるように、ベースバンドキャンセル信号は、ダウンコンバートされたRX信号と結合される。重みづけ、周波数シフト、および遅延の精度に依存して、干渉信号が低減され、受信信号の品質が向上する。
【0045】
いくつかの実施形態では、ベースバンドキャンセル信号を生成することは、識別されたスプリアス周波数のそれぞれに対して、スプリアス周波数と送信周波数との間の差に基づいた周波数シフトを用いて、周波数シフトされたベースバンド送信信号を得るために、無線周波数の送信信号のデジタルベースバンド信号表現を周波数シフトすること、および、識別されたスプリアス周波数に対応する同位相または逆位相のキャンセル信号を得るために、周波数シフトされたベースバンド送信信号に対して、識別されたスプリアス周波数に対応する複素重みと、事前に決定された遅延を適用することを含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、各スプリアス周波数に対するキャンセル信号は、逆位相のキャンセル信号であり、ベースバンドキャンセル信号をダウンコンバートされた受信信号と結合することは、ダウンコンバートされた受信信号に逆位相のキャンセル信号のそれぞれを加えることを含む。もちろん、他の実施形態におけるキャンセル信号は、ダウンコンバートされた受信信号から減算された、同位相のキャンセル信号であり得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、複素重みと遅延は、無線送受信機に記憶されたキャリブレーションテーブルから読みだされる。いくつかの実施形態では、キャリブレーションテーブルは、製造時において作成され得る。他の実施形態では、キャリブレーションテーブルは、そのフィールドにおいて、動的に作成並びに/または更新され得る。例えば、いくつかの実施形態では、
図8のブロック810に示される動作は、例えば相関手法を用いて、ベースバンドにおける干渉信号成分を測定することにより、複数の非線形積のそれぞれに対して複素重みを設定することを含み得る。
【0048】
図9は、
図7に機能的に図示されたベースバンドプロセッサ700の例示的な実装を示す。
図7と
図9に示したベースバンドプロセッサ700は、例えば、
図1に示した送受信システム110の一部であり、または、同様の送受信システムに動作可能に接続され得る。ベースバンドプロセッサ700は、データ記憶メモリ1555とプログラム記憶メモリ1560を構成するメモリデバイス1550と接続された1つ以上のプロセッサ1540を含む。
図9においてCPU1540として識別されたプロセッサ1540は、いくつかの実施形態において、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサであり得る。より一般的には、処理回路1510は、プロセッサ/ファームウェアの組み合わせ、または特定のデジタルハードウェア、またはそれらの組み合わせを含み得る。メモリ1550は、ROM(Read Only Memory)、ランダムアクセスメモリ、キャッシュメモリ、フラッシュメモリデバイス、光学記憶デバイス等を含み得る。ベースバンドプロセッサ700を含む無線送受信機は、複数の無線アクセスネットワークをサポートし得ることから、処理回路1510は、いくつかの実施形態では、1つもしくは複数の無線アクセス技術に特化した、分離した処理リソースを含み得る。重ねて、モバイル機器に対するベースバンド処理回路の設計に関連した多様な詳細やエンジニアリングトレードオフはよく知られており、これらは発明を完全に理解するために必要ではないため、追加的な詳細はここには示さない。
【0049】
ベースバンド処理回路700の典型的な機能は、送信信号の変調および符号化、および受信信号の復調および復号化を含む。本発明のいくつかの実施形態では、処理回路700は、プログラム記憶メモリ1560に格納された好適なプログラムコードを用いて、無線送受信機における自己干渉の影響を低減するために上記に説明した手法のうちの一つを実行するように適合される。もちろん、これらの手法の全てのステップは、単一のマイクロプロセッサまたは単一のモジュールにおいて実行される必要がないことは理解されるだろう。
【0050】
これら、または他の変形や拡張を考慮すれば、当業者は、前述の説明と付随する図面は、無線送受信機における自己干渉を低減するためにここに教示したシステムと装置の限定しない例を表すことを理解するだろう。例えば、本発明は、前述の説明と付随する図面により限定されない。それに代えて、本発明は、以下の請求の範囲とそれらの法的等価物にのみ限定される。