特許第6240364号(P6240364)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロンザ・リミテッドの特許一覧

特許6240364均一系触媒作用によりフルオロ、クロロおよびフルオロクロロアルキル化化合物を調製するための方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240364
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】均一系触媒作用によりフルオロ、クロロおよびフルオロクロロアルキル化化合物を調製するための方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 41/30 20060101AFI20171120BHJP
   C07C 43/225 20060101ALI20171120BHJP
   C07C 22/08 20060101ALI20171120BHJP
   C07C 17/32 20060101ALI20171120BHJP
   C07C 49/84 20060101ALI20171120BHJP
   C07C 45/68 20060101ALI20171120BHJP
   C07C 17/275 20060101ALI20171120BHJP
   C07C 69/65 20060101ALI20171120BHJP
   C07C 67/343 20060101ALI20171120BHJP
   C07D 209/10 20060101ALI20171120BHJP
   C07D 207/33 20060101ALI20171120BHJP
   C07D 207/333 20060101ALI20171120BHJP
   C07D 333/12 20060101ALI20171120BHJP
   C07D 295/073 20060101ALI20171120BHJP
   C07D 473/04 20060101ALI20171120BHJP
   C07D 473/12 20060101ALI20171120BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20171120BHJP
【FI】
   C07C41/30
   C07C43/225 B
   C07C22/08
   C07C17/32
   C07C49/84 D
   C07C45/68
   C07C17/275
   C07C69/65
   C07C67/343
   C07D209/10
   C07D207/33
   C07D207/333
   C07D333/12
   C07D295/073
   C07D473/04
   C07D473/12
   !C07B61/00 300
【請求項の数】13
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2017-523346(P2017-523346)
(86)(22)【出願日】2015年11月5日
(65)【公表番号】特表2017-533916(P2017-533916A)
(43)【公表日】2017年11月16日
(86)【国際出願番号】EP2015075763
(87)【国際公開番号】WO2016071425
(87)【国際公開日】20160512
【審査請求日】2017年6月27日
(31)【優先権主張番号】62/076,618
(32)【優先日】2014年11月7日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14192280.7
(32)【優先日】2014年11月7日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】15181003.3
(32)【優先日】2015年8月13日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】15181019.9
(32)【優先日】2015年8月14日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502336151
【氏名又は名称】ロンザ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】テシュラー,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】サラゴサ・デールバルト,フロレンシオ
(72)【発明者】
【氏名】エリンガー,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ベラー,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ノイマン,ヘルフリート
(72)【発明者】
【氏名】ホー,リン
(72)【発明者】
【氏名】ナッテ,キショール
【審査官】 水野 浩之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−105960(JP,A)
【文献】 特表2003−522743(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/029942(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/161851(WO,A1)
【文献】 LOY, Rebecca N. , et al.,Organic Letters,2011年,Vol. 13, No. 10,pp. 2548-2551
【文献】 LIANG, Theresa, et al.,Angewandte Cemie Internatinal Edition,2013年,Vol. 52, No. 32,pp. 8214-8264
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07B
CAplus/CASREACT/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
BuPAdの存在下、および
TEMPOの存在下、および
化合物BASの存在下にて、
触媒CATを使用した均一系触媒作用により、化合物COMPSUBSTを化合物FCLALKYLHALIDEと反応させることで、フルオロ、クロロまたはフルオロクロロアルキル化化合物を調製するための方法であって、
BASは、CsCO、CsHCO、NEtおよびこれらの混合物からなる群から選択され;
FCLALKYLHALIDEは、下記の式(III):
R3−X (III)
の化合物であり;
XはCl、BrまたはIであり;
R3は、C1−20アルキル、またはアルキル鎖中の水素のうち少なくとも1個がFもしくはClにより置換されたC1−20アルキルであり;
CATは、Pd(OAc)、Pd(TFA)、およびこれらの混合物からなる群から選択され;
COMPSUBSTは、化合物COMPSUBST−I、エテン、シクロヘキセン、エチン、およびポリスチレンからなる群から選択され;
エテンおよびシクロヘキセンは、非置換であるか、またはC1−10アルキル、C3−8シクロアルキル、C1−4アルコキシ、N(R10)R11、CN、NO、NO、F、Cl、Br、I、CF、(CH−C(O)Y1、S(O)R50、CH=C(H)R28、C≡C−R24、ベンジル、フェニル、ナフチルおよびモルホリンからなる群から選択される1、2もしくは3個の置換基により置換され;
エチンは、非置換であるか、またはC1−10アルキル、C3−8シクロアルキル、C1−4アルコキシ、N(R10)R11、CN、NO、NO、F、Cl、Br、I、CF、(CH−C(O)Y1、S(O)R50、CH=C(H)R28、C≡C−R24、ベンジル、フェニルおよびナフチルからなる群から選択される1個の置換基により置換され、
COMPSUBST−Iは、環RINGAを含有し;
RINGAは、不飽和環または芳香環の、5員または6員の炭素環または複素環であり、
RINGAが複素環である場合、RINGAは、互いに独立してN、OおよびSからなる群から選択される1、2または3個の同一のまたは異なる環内ヘテロ原子を有し、
RINGAが5員環である場合、RINGAは、非置換であるか、または1、2、3もしくは4個の同一のもしくは異なる置換基により置換され、
RINGAが6員環である場合、RINGAは、非置換であるか、または1、2、3、4もしくは5個の同一のもしくは異なる置換基により置換され、
RINGAの置換基はいずれも、RINGAの他のいずれの置換基からも独立して、C1−10アルキル、C3−8シクロアルキル、C1−4アルコキシ、OH、N(R10)R11、CN、NH−OH、NO、NO、F、Cl、Br、I、CF、(CH−C(O)Y1、S(O)R50、CH=C(H)R28、C≡C−R24、ベンジル、フェニルおよびナフチルからなる群から選択され;
RINGAは、環RINGBにより縮合されてもよく、RINGBは5員または6員の炭素環または複素環であり、
RINGBは複素環である場合、互いに独立してN、OおよびSからなる群から選択される1、2または3個の同一のまたは異なる環内ヘテロ原子を含有し;
RINGBは、非置換であるか、または互いに独立してC1−10アルキル、C3−8シクロアルキル、C1−4アルコキシ、OH、N(R17)R18、CN、NH−OH、NO、NO、F、Cl、Br、I、CF、(CH−C(O)Y2、S(O)R51、CH=C(H)R38、C≡C−R34、ベンジル、フェニルおよびナフチルからなる群から選択される同一のもしくは異なる置換基により、RINGBが5員環である場合は1、2もしくは3個の置換基で、RINGBが6員環である場合は1、2、3もしくは4個の置換基で置換され;
RINGAまたはRINGBの置換基であるC1−10アルキルはいずれも、非置換であるか、またはハロゲン、OH、O−C(O)−C1−5アルキル、O−C1−10アルキル、S−C1−10アルキル、S(O)−C1−10アルキル、S(O)−C1−10アルキル、O−C1−6アルキレン−O−C1−6アルキル、C3−8シクロアルキル、および1,2,4−トリアゾリルからなる群から選択された1、2、3、4もしくは5個の同一のもしくは異なる置換基により置換され;
RINGAまたはRINGBの置換基であるベンジル、フェニルおよびナフチルはいずれも、互いに独立して、非置換であるか、またはハロゲン、C1−4アルコキシ、NOおよびCNからなる群から選択される1、2、3、4もしくは5個の同一のもしくは異なる置換基により置換され;
およびnは、同一でありまたは異なり、互いに独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10であり;
Y1およびY2は、同一でありまたは異なり、互いに独立して、H、OH、C(R14)(R15)R16、C1−6アルキル、O−C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、O−フェニル、O−C1−6アルキレン−O−C1−6アルキルおよびN(R19)R20からなる群から選択され;
R14、R15およびR16は、同一でありまたは異なり、互いに独立して、H、F、ClおよびBrからなる群から選択され;
R10、R11、R17、R18、R19およびR20は、同一でありまたは異なり、互いに独立して、HまたはC1−6アルキルであるか、またはR10とR11、R17とR18、もしくはR19とR20は、一緒になってテトラメチレンまたはペンタメチレン鎖を表し;
R50およびR51は、同一でありまたは異なり、互いに独立して、OH、C1−6アルキルおよびC1−6アルコキシからなる群から選択され;
R24、R34、R28およびR38は、同一でありまたは異なり、互いに独立して、H、C1−10アルキル、C(R25)(R26)−O−R27からなる群から選択され;
R25、R26およびR27は、同一でありまたは異なり、互いに独立して、HおよびC1−10アルキルからなる群から選択される、
方法。
【請求項2】
COMPSUBSTは、化合物COMPSUBST−I、エテン、シクロヘキセン、エチン、およびポリスチレンからなる群から選択され;
エテンおよびシクロヘキセンは、非置換であるか、またはC1−10アルキル、C3−6シクロアルキル、C1−4アルコキシ、N(R10)R11、CN、F、Cl、Br、I、CF、(CH−C(O)Y1、S(O)R50、ベンジル、フェニル、ナフチルおよびモルホリンからなる群から選択される1もしくは2個の置換基により置換され;
エチンは、非置換であるか、またはC1−10アルキル、C3−6シクロアルキル、C1−4アルコキシ、N(R10)R11、CN、F、Cl、Br、I、CF、(CH−C(O)Y1、S(O)R50、ベンジル、フェニルおよびナフチルからなる群から選択される1個の置換基により置換され;
COMPSUBST−Iは、
【化1】
からなる群から選択され;
COMPSUBST−Iは、非置換であるか、または互いに独立して、C1−10アルキル、C3−8シクロアルキル、C1−4アルコキシ、OH、C(H)=O、N(R10)R11、CN、NH−OH、NO、NO、F、Cl、Br、I、CF、(CH−C(O)Y1、S(O)R50、CH=C(H)R28、C≡C−R24、ベンジル、フェニルおよびナフチルからなる群から選択される、同一のもしくは異なる置換基により、
COMPSUBST−Iが5個の環内原子を持つ単環式化合物である場合、1、2、3もしくは4個の置換基で、
COMPSUBST−Iが6個の環内原子を持つ単環式化合物である場合、1、2、3、4もしくは5個の置換基で、
COMPSUBST−Iが、5員環と6員環がオルト縮合した二環式化合物である場合、1、2、3、4、5もしくは6個の置換基で、
COMPSUBST−Iが、2個の6員環がオルト縮合した二環式化合物である場合、1、2、3、4、5、6もしくは7個の置換基で
置換され;
COMPSUBST−Iの置換基であるC1−10アルキルは、非置換であるか、またはハロゲン、OH、O−C(O)−C1−5アルキル、O−C1−10アルキル、S−C1−10アルキル、S(O)−C1−10アルキル、S(O)−C1−10アルキル、O−C1−6アルキレン−O−C1−6アルキル、C3−8シクロアルキルおよび1,2,4−トリアゾリルからなる群から選択される1、2、3、4もしくは5個の同一のもしくは異なる置換基により置換され;
COMPSUBST−Iの置換基であるベンジル、フェニルおよびナフチルは、互いに独立して、非置換であるか、またはハロゲン、C1−4アルコキシ、NOおよびCNからなる群から選択される1、2、3、4もしくは5個の同一のもしくは異なる置換基により置換される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
およびnは、同一でありまたは異なり、互いに独立して、0、1、2、3または4である、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
COMPSUBSTは、ベンゼン、ピラゾール、
【化2】
、式(VI)の化合物、エテン、シクロヘキセン、エチンおよびポリスチレンからなる群から選択され;
YはC1−6アルキルであり;
エテンおよびシクロヘキセンは、非置換であるか、またはC1−10アルキル、C1−4アルコキシ、N(R10)R11、CN、F、Cl、Br、I、CF、(CH−C(O)Y1、ベンジル、フェニルおよびモルホリンからなる群から選択される1もしくは2個の置換基によって置換され;
エチンは、非置換であるか、またはC1−10アルキル、C1−4アルコキシ、N(R10)R11、CN、F、Cl、Br、I、CF、(CH−C(O)Y1、ベンジルおよびフェニルからなる群から選択される1個の置換基により置換され;
式(VI)の化合物が、
【化3】
[式中、
R44は、C1−10アルキル、C1−4アルコキシ、OH、N(R10)R11、CN、NO、NO、F、Cl、Br、I、CF、(CH−C(O)Y1、S(O)R50からなる群から選択される。]である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
XはBrまたはIである、
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
XはBrである、
請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
化合物FCLALKYLHALIDEは、ペルフルオロアルキルハライド、FHC−ClまたはFHC−Brである、
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
XはCl、BrもしくはIであり、および
R3はペルフルオロC1−20アルキルであるか、または
FCLALKYLHALIDEは、FHC−ClもしくはFHC−Brである、
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
FCLALKYLHALIDEは、F2110−I、F17−I、F13−I、F−I、FC−I、FC−Br、FC−Cl、FHC−Cl、およびFHC−Brからなる群から選択される、
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
反応が、化合物COMPSALTの存在下にて行われ;
COMPSALTは、NaI、KI、CsIおよびN(R30)(R31)(R32)R33Iからなる群から選択され;
R30、R31、R32およびR33は、同一でありまたは異なり、互いに独立して、HおよびC1−10アルキルからなる群から選択される、
請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
R30、R31、R32およびR33は、同一でありまたは異なり、互いに独立して、HおよびC2−6アルキルからなる群から選択される、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
COMPSALTは、NaIおよび(n−Bu)NIからなる群から選択される、
請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
CATはPd(OAc)である、
請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジ(1−アダマンチル)−n−ブチルホスフィンの存在下および2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシルの存在下にてフルオロ、クロロおよびフルオロクロロアルキルハライドを用いる、均一系Pdで触媒されたフルオロ、クロロおよびフルオロクロロアルキル化によって、フルオロ、クロロおよびフルオロクロロアルキル化化合物を調製するための方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
有機フッ素化学は、医療、農業、および材料の科学ならびに分野において重要な役割を果たしている。フルオロアルキル基は高安定性および親油性のような強力な効果を有し、加えて、長鎖のフルオロアルキル基は高耐水性、耐油性および低摩擦性を有する。
【0003】
Loy,R.N.ら、Organic Letters 2011、13、2548−2551頁は、GC収率が26%である、CF−IとベンゼンとのPd触媒カップリングを開示している。
表1の項目10によれば、C13Iのカップリングは81%の収率を実現する。
しかし、ヨージドの代わりにブロミドを用いてこの実験を繰り返すと、収率は1%未満になる。本明細書の比較例11を参照されたい。
【0004】
高収率を実現するが、配向基または電子豊富な芳香族化合物の助力を必要としない、直接的C−Hトリフルオロメチル化により、フルオロ、クロロおよびフルオロクロロアルキル化化合物を調製するための均一系触媒法が必要とされていた。当該方法は多種多様な基材に適用可能でなければならず、多種多様な官能基に適合しなければならない。さらに、当該方法は、アルキル化剤としてのヨージドのみに限定されるべきではなく、その他のハライドでも作用しなければならない。また、当該方法は、ペルフルオロ化アルキルヨージドだけでなく、フルオロ化、クロル化およびフルオロクロル化アルキルハライド、特にフルオロ化アルキルハライドでも作用しなければならない。
【0005】
期せずして、ジ(1−アダマンチル)−n−ブチルホスフィンおよび2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシルが可溶性Pd系触媒と一緒になって存在することは、これらの要求を満たしている。ジアルキル化生成物は観察されていない。
【0006】
本明細書では、特に記載のない限り、以下の意味で用いられる。
Ac アセテート;
アルキル 直鎖または分枝鎖アルキル;
BuPAd CAS321921−71−5、ジ(1−アダマンチル)−n−ブチルホスフィン;
DMSO ジメチルスルホキシド;
eq、equiv 当量;
ハライド F−、Cl−、Br−またはI−、好ましくはCl−、Br−およびI−、より好ましくはBr−およびI−;
ハロゲン F、Cl、BrまたはI;好ましくはF、ClまたはBr;より好ましくはFまたはCl;
「直鎖」と「n−」は、アルカンのそれぞれの異性体に関して同義で用いられる。
MTBE メチルtert−ブチルエーテル;
RT 室温。周囲温度という語句と同義で用いられる。
TEA トリエチルアミン;
TEMPO CAS2564−83−2、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル;
TFA トリフルオロアセテート
「wt%」、「重量%」および「重量−%」は、同義で用いられ、重量を基準とした百分率を意味する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Loy,R.N.ら、Organic Letters 2011、13、2548−2551頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明の主題は、
BuPAdの存在下、および
TEMPOの存在下、および
化合物BASの存在下にて、
触媒CATを使用した均一系触媒作用により、化合物COMPSUBSTを化合物FCLALKYLHALIDEと反応させることで、フルオロ、クロロまたはフルオロクロロアルキル化化合物を調製するための方法であって、
BASは、CsCO、CsHCO、NEtおよびこれらの混合物からなる群から選択され;
FCLALKYLHALIDEは、下記の式(III):
R3−X (III)
の化合物であり;
XはCl、BrまたはIであり;
R3は、C1−20アルキル、またはアルキル鎖中の水素のうち少なくとも1個がFもしくはClにより置換されたC1−20アルキルであり;
CATは、Pd(OAc)、Pd(TFA)、およびこれらの混合物からなる群から選択され;
COMPSUBSTは、化合物COMPSUBST−I、エテン、シクロヘキセン、エチン、およびポリスチレンからなる群から選択され;
エテンおよびシクロヘキセンは、非置換であるか、またはC1−10アルキル、C3−8シクロアルキル、C1−4アルコキシ、N(R10)R11、CN、NO、NO、F、Cl、Br、I、CF、(CH−C(O)Y1、S(O)R50、CH=C(H)R28、C≡C−R24、ベンジル、フェニル、ナフチルおよびモルホリンからなる群から選択される1、2または3個の置換基により置換され;
エチンは、非置換であるか、またはC1−10アルキル、C3−8シクロアルキル、C1−4アルコキシ、N(R10)R11、CN、NO、NO、F、Cl、Br、I、CF、(CH−C(O)Y1、S(O)R50、CH=C(H)R28、C≡C−R24、ベンジル、フェニルおよびナフチルからなる群から選択される1個の置換基により置換され;
COMPSUBST−Iは、環RINGAを含有し;
RINGAは、5員または6員の炭素環または複素環であり、
RINGAが複素環である場合、RINGAは、互いに独立してN、OおよびSからなる群から選択される1、2または3個の同一のまたは異なる環内ヘテロ原子を有し、
RINGAが5員環である場合、RINGAは、非置換であるか、または1、2、3もしくは4個の同一のもしくは異なる置換基により置換され、
RINGAが6員環である場合、RINGAは、非置換であるか、または1、2、3、4もしくは5個の同一のもしくは異なる置換基により置換され、
RINGAの置換基はいずれも、RINGAの他のいずれの置換基から独立して、C1−10アルキル、C3−8シクロアルキル、C1−4アルコキシ、OH、N(R10)R11、CN、NH−OH、NO、NO、F、Cl、Br、I、CF、(CH−C(O)Y1、S(O)R50、CH=C(H)R28、C≡C−R24、ベンジル、フェニルおよびナフチルからなる群から選択され;
RINGAは、環RINGBにより縮合されてもよく、RINGBは5員または6員の炭素環または複素環であり、
RINGBは複素環である場合、互いに独立してN、OおよびSからなる群から選択される1、2または3個の同一のまたは異なる環内ヘテロ原子を含有し;
RINGBは、非置換であるか、または互いに独立してC1−10アルキル、C3−8シクロアルキル、C1−4アルコキシ、OH、N(R17)R18、CN、NH−OH、NO、NO、F、Cl、Br、I、CF、(CH−C(O)Y2、S(O)R51、CH=C(H)R38、C≡C−R34、ベンジル、フェニルおよびナフチルからなる群から選択される同一のもしくは異なる置換基により、RINGBが5員環である場合は1、2もしくは3個の置換基で、RINGBが6員環である場合は1、2、3もしくは4個の置換基で置換され;
RINGAまたはRINGBの置換基であるC1−10アルキルはいずれも、非置換であるか、またはハロゲン、OH、O−C(O)−C1−5アルキル、O−C1−10アルキル、S−C1−10アルキル、S(O)−C1−10アルキル、S(O)−C1−10アルキル、O−C1−6アルキレン−O−C1−6アルキル、C3−8シクロアルキル、および1,2,4−トリアゾリルからなる群から選択された1、2、3、4もしくは5個の同一のもしくは異なる置換基により置換され;
RINGAまたはRINGBの置換基であるベンジル、フェニルおよびナフチルはいずれも、互いに独立して、非置換であるか、またはハロゲン、C1−4アルコキシ、NOおよびCNからなる群から選択される1、2、3、4もしくは5個の同一のもしくは異なる置換基により置換され;
およびnは、同一でありまたは異なり、互いに独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10であり;
Y1およびY2は、同一でありまたは異なり、互いに独立して、H、OH、C(R14)(R15)R16、C1−6アルキル、O−C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、O−フェニル、O−C1−6アルキレン−O−C1−6アルキルおよびN(R19)R20からなる群から選択され;
R14、R15およびR16は、同一でありまたは異なり、互いに独立して、H、F、ClおよびBrからなる群から選択され;
R10、R11、R17、R18、R19およびR20は、同一でありまたは異なり、互いに独立して、HまたはC1−6アルキルであるか、またはR10とR11、R17とR18、もしくはR19とR20は、一緒になってテトラメチレンまたはペンタメチレン鎖を表し;
R50およびR51は、同一でありまたは異なり、互いに独立して、OH、C1−6アルキルおよびC1−6アルコキシからなる群から選択され;
R24、R34、R28およびR38は、同一でありまたは異なり、互いに独立して、H、C1−10アルキル、C(R25)(R26)−O−R27からなる群から選択され;
R25、R26およびR27は、同一でありまたは異なり、互いに独立して、HおよびC1−10アルキルからなる群から選択される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
好ましくは、RINGAは不飽和環または芳香環である。
【0010】
より好ましくは、RINGAは、炭素環式不飽和環、炭素環式芳香環、複素環式不飽和環または複素環式芳香環である。
【0011】
好ましくは、COMPSUBSTは、化合物COMPSUBST−I、エテン、シクロヘキセン、エチンおよびポリスチレンからなる群から選択され;
エテンおよびシクロヘキセンは、非置換であるか、またはC1−10アルキル、C3−6シクロアルキル、C1−4アルコキシ、N(R10)R11、CN、F、Cl、Br、I、CF、(CH−C(O)Y1、S(O)R50、ベンジル、フェニル、ナフチルおよびモルホリンからなる群から選択される1または2個の置換基により置換され;
エチンは、非置換であるか、またはC1−10アルキル、C3−6シクロアルキル、C1−4アルコキシ、N(R10)R11、CN、F、Cl、Br、I、CF、(CH−C(O)Y1、S(O)R50、ベンジル、フェニルおよびナフチルからなる群から選択される1個の置換基により置換され;
COMPSUBST−Iは、
【0012】
【化1】
からなる群から選択され;
COMPSUBST−Iは、非置換であるか、または互いに独立して、C1−10アルキル、C3−8シクロアルキル、C1−4アルコキシ、OH、C(H)=O、N(R10)R11、CN、NH−OH、NO、NO、F、Cl、Br、I、CF、(CH−C(O)Y1、S(O)R50、CH=C(H)R28、C≡C−R24、ベンジル、フェニルおよびナフチルからなる群から選択される、同一のもしくは異なる置換基により、
COMPSUBST−Iが、5個の環内原子を持つ単環式化合物である場合、1、2、3もしくは4個の置換基で、
COMPSUBST−Iが、6個の環内原子を持つ単環式化合物である場合、1、2、3、4もしくは5個の置換基で、
COMPSUBST−Iが、5員環と6員環がオルト縮合した二環式化合物である場合、1、2、3、4、5もしくは6個の置換基で、
COMPSUBST−Iが、2個の6員環がオルト縮合した二環式化合物である場合、1、2、3、4、5、6もしくは7個の置換基で
置換され;
COMPSUBST−Iの置換基であるC1−10アルキルは、非置換であるか、またはハロゲン、OH、O−C(O)C1−5アルキル、O−C1−10アルキル、S−C1−10アルキル、S(O)−C1−10アルキル、S(O)−C1−10アルキル、O−C1−6アルキレン−O−C1−6アルキル、C3−8シクロアルキルおよび1,2,4−トリアゾリルからなる群から選択される1、2、3、4もしくは5個の同一のもしくは異なる置換基により置換され;
COMPSUBST−Iの置換基であるベンジル、フェニルおよびナフチルは、互いに独立して、非置換であるか、またはハロゲン、C1−4アルコキシ、NOおよびCNからなる群から選択される1、2、3、4もしくは5個の同一のもしくは異なる置換基により置換され;
R10、R11、m、n、Y1、Y2、R28、R50およびR24は、上述した通り定義され、それらの全ての実施形態も含む。
【0013】
好ましくは、mおよびnは、同一でありまたは異なり、互いに独立して、0、1、2、3または4であり;
より好ましくは、mおよびnは、0または4である。
【0014】
別の実施形態において、Y1およびY2は、同一でありまたは異なり、互いに独立して、H、OH、C(R14)(R15)R16、C2−6アルキル、O−C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、O−フェニル、O−C1−6アルキレン−O−C1−6アルキルおよびN(R19)R20からなる群から選択される。
【0015】
好ましくは、Y1およびY2は、同一でありまたは異なり、互いに独立して、H、OH、C1−2アルキル、およびO−C1−2アルキルからなる群から選択される。
【0016】
より好ましくは、COMPSUBST−Iは、非置換であるか、または互いに独立して、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、OH、C(H)=O、N(R10)R11、CN、F、Cl、Br、CF、(CH−C(O)Y1、およびS(O)R50からなる群から選択される、同一のもしくは異なる置換基により、
COMPSUBST−Iが5個の環内原子を持つ単環式化合物である場合、1、2もしくは3個の置換基で、
COMPSUBST−Iが6個の環内原子を持つ単環式化合物である場合、1、2、3、4もしくは5個の置換基で、
COMPSUBST−Iが、5員環と6員環がオルト縮合した二環式化合物である場合、1、2、3、4もしくは5個の置換基で、
COMPSUBST−Iが、2個の6員環がオルト縮合した二環式化合物である場合、1、2、3もしくは4個の置換基で
置換され;
COMPSUBST−Iの置換基であるC1−4アルキルは、非置換であるか、またはハロゲンからなる群から選択される、1、2もしくは3個の同一のもしくは異なる置換基により置換され;
R10、R11、Y1およびR50は、上述した通り定義され、それらの全ての実施形態も含む。
【0017】
特に、COMPSUBSTは、ベンゼン、ピラゾール、
【0018】
【化2】
、式(VI)の化合物、エテン、シクロヘキセン、エチンおよびポリスチレンからなる群から選択され;
YはC1−6アルキルであり;
エテンおよびシクロヘキセンは、非置換であるか、またはC1−10アルキル、C1−4アルコキシ、N(R10)R11、CN、F、Cl、Br、I、CF、(CH−C(O)Y1、ベンジル、フェニルおよびモルホリンからなる群から選択される1もしくは2個の置換基によって置換され;
エチンは、非置換であるか、またはC1−10アルキル、C1−4アルコキシ、N(R10)R11、CN、F、Cl、Br、I、CF、(CH−C(O)Y1、ベンジルおよびフェニルからなる群から選択される1個の置換基により置換され;
式(VI)の化合物は、
【0019】
【化3】
[式中、
R44は、C1−10アルキル、C1−4アルコキシ、OH、N(R10)R11、CN、NO、NO、F、Cl、Br、I、CF、(CH−C(O)Y1、S(O)R50からなる群から選択される。]であり;
R10、R11、m、Y1およびR50は、上述した通り定義され、それらの全ての実施形態も含む。
【0020】
置換エテンの実施形態は、プロペン、エテン−1,1−ジイルジベンゼンおよび3,3−ジメチルブタ−1−エンである。
置換シクロヘキセンの実施形態は、4−(シクロヘキサ−1−エン−1−イル)モルホリンである。
置換エチンの実施形態は、1−オクチンである。
【0021】
好ましくは、Yはメチルまたはエチルである。
COMPSUBSTの実施形態は、
【0022】
【化4】
である。
Yはメチルまたはエチルであり、好ましくはエチルである。
【0023】
フルオロ、クロロまたはフルオロクロロアルキル化化合物は、化合物ALKYLCOMPSUBSTと称される。
【0024】
フルオロ、クロロおよびフルオロクロロアルキルハライドは、化合物FCLALKYLHALIDEである。
【0025】
好ましくは、FCLALKYLHALIDEは、下記の式(III):
R3−X (III)
の化合物であり;
XはCl、BrまたはIであり;
R3は、C1−20アルキル、またはアルキル鎖中の水素のうち少なくとも1個がFまたはClにより置換されたC1−20アルキルであり;
より好ましくは、
R3は、C1−15アルキル、またはアルキル鎖において水素のうち少なくとも1個がFもしくはClにより置換されたC1−15アルキルであり;
さらにより好ましくは、
R3は、C1−10アルキル、またはアルキル鎖において水素のうち少なくとも1個がFもしくはClにより置換されたC1−10アルキルである。
【0026】
好ましくは、
XはBrまたはIであり;
より好ましくは、
XはIであり;
より好ましい別の実施形態において、
XはBrであり;
さらにその全ての実施形態においてR3を含む。
【0027】
特別の実施形態において、化合物FCLALKYLHALIDEは、ペルフルオロアルキルハライド、FHC−ClまたはFHC−Brであり、好ましくは、FCLALKYLHALIDEは、ペルフルオロアルキル化ブロミドもしくはヨージド、FHC−ClまたはFHC−Brであり;
好ましくは、
XはCl、BrもしくはIであり、および
R3はペルフルオロC1−20アルキルであるか;または
FCLALKYLHALIDEは、FHC−ClもしくはFHC−Brであり;
より好ましくは、
XはBrもしくはIであり、および
R3はペルフルオロC1−20アルキルであるか;または
FCLALKYLHALIDEは、FHC−ClもしくはFHC−Brであり;
さらにより好ましくは、
XはBrもしくはIであり、および
R3はペルフルオロC1−15アルキルであるか;または
FCLALKYLHALIDEは、FHC−ClもしくはFHC−Brである。
【0028】
特に、FCLALKYLHALIDEは、F2110−I、F17−I、F13−I、F−I、FC−I、FC−Br、FC−Cl、FHC−Cl、およびFHC−Brからなる群から選択され;
より具体的には、FCLALKYLHALIDEは、n−F2110−I、n−F17−I、n−F13−I、n−F−I、FC−I、FC−Br、FC−Cl、FHC−Cl、およびFHC−Brからなる群から選択される。
【0029】
一実施形態において、反応は、化合物COMPSALTの存在下にて行われ;
COMPSALTは、NaI、KI、CsIおよびN(R30)(R31)(R32)R33Iからなる群から選択され;
R30、R31、R32およびR33は、同一でありまたは異なり、互いに独立して、HおよびC1−10アルキルからなる群から選択され;
好ましくは、R30、R31、R32およびR33は、同一でありまたは異なり、互いに独立して、HおよびC2−6アルキルからなる群から選択され;
より好ましくは、COMPSALTは、NaIおよび(n−Bu)NIからなる群から選択される。
【0030】
反応は好ましくは化合物COMPSALTの存在下にて行われ、XはClまたはBrであり、好ましくはXはClである。
【0031】
好ましくは、CATはPd(OAc)である。
【0032】
好ましくは0.1−20mol%、より好ましくは1−15mol%、さらにより好ましくは2.5−12.5mol%のCATが反応に用いられ、mol%はCOMPSUBSTのモル量を基準とする。
【0033】
好ましくは1−20モル当量、より好ましくは1−15モル当量、さらにより好ましくは1−10モル当量のFCLALKYLHALIDEが反応に用いられ、モル当量はCOMPSUBSTのモル量を基準とする。
【0034】
気体状のFCLALKYLHALIDEの場合、FCLALKYLHALIDEは、周囲温度にて、好ましくは1−10bar、より好ましくは1−5barの気圧に対応する量で反応に用いられた。
【0035】
好ましくは1−40mol%、より好ましくは5−30mol%、さらにより好ましくは5−25%のBuPAdが反応に用いられ、mol%はCOMPSUBSTのモル量を基準とする。
【0036】
好ましくは0.1−10モル当量、より好ましくは0.5−5モル当量、さらにより好ましくは0.75−2.5モル当量のTEMPOが反応に用いられ、モル当量はCOMPSUBSTのモル量を基準とする。
【0037】
好ましくは、BASはCsCOである。
【0038】
好ましくは0.1−10モル当量、より好ましくは0.5−5モル当量、さらにより好ましくは0.75−2.5モル当量のBASが反応に用いられ、モル当量はCOMPSUBSTのモル量を基準とする。
【0039】
当該反応の反応温度は、好ましくは20−200℃、より好ましくは50−200℃、さらにより好ましくは50−150℃、特に100−150℃、より具体的には110−145℃である。
【0040】
当該反応の反応時間は、好ましくは1時間−60時間、より好ましくは10時間−50時間、さらにより好ましくは15時間−50時間である。
【0041】
好ましくは、反応は、不活性雰囲気下にて行われる。不活性雰囲気は、好ましくは、アルゴン、別の貴ガス、低沸点アルカン、窒素およびこれらの混合物からなる群から選択される不活性ガスの使用により得られる。
低沸点アルカンは、好ましくは、C1−3アルカン、すなわち、メタン、エタンまたはプロパンである。
【0042】
反応は、密閉系内にて行われてもよく、密閉系内の選択温度により生じる圧力、および/またはCOMPSUBSTが気体状である場合はCOMPSUBSTにより印加される圧力により生じる圧力にて行われてもよい。不活性ガスに圧力を印加することも可能である。周囲気圧にて反応を実施することも可能である。
【0043】
反応は溶媒SOL中で行われてもよく、SOLは、好ましくはアルカン、塩素化アルカン、ケトン、エーテル、エステル、脂肪族ニトリル、脂肪族アミド、スルホキシド、およびこれらの混合物からなる群から選択され;
好ましくは、SOLは、C5−8アルカン、塩素化C5−8アルカン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、MTBE、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、エチルアセテート、ブチルアセテート、バレロニトリル、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
より好ましくは、SOLは、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、バレロニトリル、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、およびその混合物からなる群から選択される。
さらにより好ましくは、SOLは、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジメチルスルホキシド、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0044】
COMPSUBSTを、基材および溶媒として、同時に使用することも可能である。
【0045】
別の方法として、反応を溶媒の不存在下にて実施することもできる。別の実施形態において、COMPSUBSTは、SOLとして使用される。
【0046】
SOLの量は、好ましくはCOMPSUBSTの重量の0.1−100倍、より好ましくは1−50倍、さらにより好ましくは1−25倍である。
【0047】
反応後、ALKYLCOMPSUBSTは、当業者にとって公知である、揮発性成分の蒸発、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、結晶化、クロマトグラフィーおよびこれらの任意の組み合わせのような標準的方法により単離され得る。
【0048】
COMPSUBST、BAS、CAT、BuPAd、TEMPOならびにFCLALKYLHALIDE、すなわちフルオロ、クロロおよびフルオロクロロアルキルハライドは、市販されており、公知の手順に従って調製され得る。
【実施例】
【0049】
収率:
収率は、反応後の反応混合物における予想されたALKYLCOMPSUBSTのモル収率として%で示されており、特に記載のない限り、COMPSUBSTのモル量を基準とし、1,4−ジフルオロベンゼンを内標準として19FNMRにより定量されたものである。
単離収率は、単離生成物の重量から得られたものであり、COMPSUBSTの重量を基準とし、単離収率は表1の括弧内に示されている。
【0050】
異性体の比率およびアルキル化の位置は、
NMR分光法により決定した。
【0051】
[実施例1]
オーブン内で乾燥させ撹拌子を入れた4mLバイアル瓶に、Pd(OAc)(10mol%)、BuPAd(20mol%)、TEMPO(1.0当量)、CsCO(2.0当量)、1,4−ジメトキシベンゼン(0.2mmol、1当量)を充填した。次に、アセトン(0.5mL)をアルゴン流下でバイアル瓶に注入した。バイアル瓶を合金プレート内に置き、アルゴン雰囲気化でこれをParr Instruments社製4560シリーズ300mLオートクレーブ内に移した。3−5barのCFBrの圧力、続いて15barのNの圧力を周囲温度にて調整した。反応混合物を130℃にて40時間撹拌した。反応が終了した後、オートクレーブを室温まで冷却し、圧力を解除した。
【0052】
反応混合物を水およびエチルアセテートにより抽出した(各回3mLにより5回)。有機層をブラインにより洗浄し、NaSOで脱水し、蒸発させて粗生成物を得た。収率は81%だった。
【0053】
シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製を行った(溶離液:ヘプタン:EtOAc=60:40(v/v))。単離収率は69%だった。
【0054】
詳細も表1に示す。
【0055】
[実施例2]
Pd(OAc)に代えてPd(TFA)をCATとして用いたことを唯一の相違点として、実施例1を繰り返した。収率は78%だった。
【0056】
[実施例3]
10mol%の代わりに5mol%のみのPd(OAc)を用いたこと、および20mol%の代わりに10mol%のみのBuPAdを用いたことを相違点として、実施例1を繰り返した。収率は42%だった。
【0057】
[実施例4]
40時間の代わりに反応混合物を130℃にて30時間撹拌したことを唯一の相違点として、実施例1を繰り返した。収率は70%だった。
【0058】
[実施例5−21]
表1に挙げた化合物をCOMPSUBSTとして用いたことを相違点として、実施例1を繰り返した。
【0059】
【表1】
【0060】
[実施例22]
オーブン内で乾燥させ撹拌子を入れた4mLバイアル瓶に、Pd(OAc)(10mol%)、BuPAd(20mol%)、TEMPO(1.0当量)、CsCO(2.0当量)、ベンゼン(0.6mmol、1当量)およびペルフルオロヘキシルブロミド(3.2当量)を充填した。次に、アセトン(2.5mL)をアルゴン流下でバイアル瓶に注入した。バイアル瓶を合金プレート内に置き、アルゴン雰囲気下でこれをParr Instruments社製4560シリーズ300mLオートクレーブ内に移した。Nの15barの圧力を周囲温度にて調整した。反応混合物を130℃にて40時間撹拌した。反応が終了した後、オートクレーブを室温まで冷却し、圧力を解除した。
【0061】
反応混合物を水およびエチルアセテートにより抽出した(各回3mLにより5回)。有機層をブラインにより洗浄し、NaSOで脱水し、蒸発させて粗生成物を得た。19F−NMRにより反応混合物を分析した結果、(ペルフルオロヘキシル)ベンゼンの収率は21%だった。(ペルフルオロヘキシル)ベンゼンの識別性を、GC−MSによって確認した。
【0062】
実験を繰り返して、収率28%および転化率35%を得た。
【0063】
[実施例23]
オーブン内で乾燥させ撹拌子を入れた4mLバイアル瓶に、Pd(OAc)(10mol%)、BuPAd(20mol%)、TEMPO(1.0当量)、CsCO(2.0当量)、1,4−ジメトキシベンゼン(0.2mmol、1当量)およびペルフルオロヘキシルブロミド(3.2当量)を充填した。次に、アセトン(1mL)をアルゴン流下でバイアル瓶に注入した。バイアル瓶を合金プレート内に置き、アルゴン雰囲気下でこれをParr Instruments社製4560シリーズ300mLオートクレーブ内に移した。Nの15barの圧力を周囲温度にて調整した。反応混合物を130℃にて40時間撹拌した。反応が終了した後、オートクレーブを室温まで冷却し、圧力を解除した。
【0064】
反応混合物を水およびエチルアセテートにより抽出した(各回3mLにより5回)。有機層をブラインにより洗浄し、NaSOで脱水し、蒸発させて粗生成物を得た。反応混合物をGC−MSにより分析した結果、1,4−ジメトキシ−2−(ペルフルオロヘキシル)ベンゼンの収率は42%だった。
【0065】
[実施例24]
オーブン内で乾燥させ撹拌子を入れた4mLバイアル瓶に、Pd(OAc)(10mol%)、BuPAd(20mol%)、TEMPO(1.0当量)、CsCO(2.0当量)、エテン−1,1−ジイルジベンゼン(0.5mmol、1当量)を充填した。次に、アセトン(2mL)をアルゴン流下でバイアル瓶に注入した。バイアル瓶を合金プレート内に置き、アルゴン雰囲気下でこれをParr Instruments社製4560シリーズ300mLオートクレーブ内に移した。3−5barのCFBrの圧力、続いて15barのNの圧力を周囲温度にて調整した。反応混合物を130℃にて40時間撹拌した。反応が終了した後、オートクレーブを室温まで冷却し、圧力を解除した。
【0066】
反応混合物を濾過し、フィルター残渣をエチルアセテートおよびアセトンで洗浄した。混ぜ合わせた濾液をロータリーエバポレーターにより濃縮した。シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘプタン:EtOAc=90:10(v/v))により残渣を精製した。単離収率は58%だった。
【0067】
得られた生成物のHNMR分析は、(3,3,3−トリフルオロプロパ−1−エン−1,1−ジイル)ジベンゼンと(3,3,3−トリフルオロプロパン−1,1−ジイル)ジベンゼンとの2:1混合物を示した。(3,3,3−トリフルオロプロパ−1−エン−1,1−ジイル)ジベンゼンおよび(3,3,3−トリフルオロプロパン−1,1−ジイル)ジベンゼンの識別性を、GC−MSにより確認した。
【0068】
[実施例25−26]および[比較例1−10]
標準手順:
オーブン内で乾燥させ撹拌子を入れた4mLバイアル瓶に、Pd(OAc)(10mol%)、BuPAd(20mol%)、添加剤(1.0当量)、塩基(2.0当量)および1、4−ジメトキシベンゼン(0.2mmol、1当量)を充填した。次に、溶媒(0.5mL)をアルゴン流下でバイアル瓶に注入した。バイアル瓶を合金プレート内に置き、アルゴン雰囲気下でこれをParr Instruments社製4560シリーズ300mLオートクレーブ内に移した。3−5barのCFBrの圧力、続いて15barのNの圧力を周囲温度にて調整した。反応混合物を130℃にて40時間撹拌した。反応が終了した後、オートクレーブを室温まで冷却し、圧力を解除した。
【0069】
反応混合物を水およびエチルアセテートにより抽出した(各回3mLにより5回)。有機層をブラインにより洗浄し、NaSOで脱水し、蒸発させて粗生成物を得た。生成物の収率を19F−NMR分光法により定量した。
【0070】
比較例4において、Pd(OAc)の代わりにPd(TFA)をCATとして用いた。
【0071】
試験したパラメーターを表2に示す。
【0072】
【表2】
【0073】
[実施例27]
【0074】
【化5】
【0075】
オーブン内で乾燥させ撹拌子を入れた4mLバイアル瓶に、Pd(OAc)(10mol%)、BuPAd(20mol%)、TEMPO(1当量)、CsCO(2.0 当量)およびエチルアクリレート(0.5mmol、1当量)を充填した。次に、アセトン(0.5mL)をアルゴン流下でバイアル瓶に順次注入した。バイアル瓶を合金プレート内に置き、アルゴン雰囲気下でこれをParr Instruments社製4560シリーズ300mLオートクレーブ内に移した。3−5barのCFBrの圧力、続いて15barのNの圧力を周囲温度にて調整した。反応混合物を130℃にて40時間撹拌した。反応が終了した後、オートクレーブを室温まで冷却し、圧力を解除した。
【0076】
得られた反応混合物を冷却し、オートクレーブから圧力を解除し、固形分を濾過した。濾過した反応混合物を、内標準1,4−ジフルオロベンゼンを用いて19F−NMRにより分析すると、収率26%のエチル−4,4,4−トリフルオロブタ−2−エノエートを示した(δ19F−NMR:−65.68ppm(d,J=9.5Hz))。GC−MS分析は168g/molにて分子量ピークを示し、モノトリフルオロメチル化が確認された。
【0077】
[比較例11]
【0078】
【化6】
【0079】
Loy、R.N.ら、Organic Letters 2011、13、2548−2551頁の表1項目10を、論文の補足情報(Supporting Information)の詳細な手順に従って繰り返した。補足情報は、S5頁の表S4の項目9に関連してS3頁の「最適化手順(Optimization procedure)」に記載されている。
ホスフィンはBINAPだった。
[Pd]はPddba3だった。
塩基はCsCOだった。
アルキルハロゲニドは、ペルフルオロヘキシルヨージドの代わりに、ペルフルオロヘキシルブロミドだった。
【0080】
スクリューキャップ1のドラムバイアルに対して、塩基(0.4mmol、2当量)、[Pd](0.02mmol、10mol%)およびホスフィン(0.04−0.08mmol、20−40mol%)を添加した。ベンゼン(1mL)およびペルフルオロヘキシルブロミド(43μL、0.2mmol、1当量)を添加し、得られた混合物をテフロン(登録商標)加工キャップにより密閉し、アルミニウム反応ブロックの中で激しく撹拌しながら80℃にて15時間加熱した。反応混合物を23℃に冷却し、GC内標準としてクロロベンゼン(20μL)を添加した。粗反応混合物から1つのアリコート(約100μL)を取り出し、セライトプラグを通して、EtOAc(2mL)により溶出した。次に、この試料をGCにより分析し、クロロベンゼン内標準に対する検量との比較により収率を定量した。
結果:
1%未満の収率が測定された。
【0081】
[実施例28]
【0082】
【化7】
【0083】
乾燥させた50mLオートクレーブに、4−(シクロヘキサ−1−エン−1−イル)モルホリン(0.2mmol)、Pd(OAc)(10mol%)、BuPAd(20mol%)、TEMPO(1.0)、CsCO(2.0当量)を充填した。次に、アセトン(2mL)をオートクレーブに注入し、オートクレーブをアルゴンで3回洗い流した。CFBrの6barの圧力、続いて15barのNの圧力を周囲温度にて調整した。反応混合物を130℃にて40時間加熱した。オートクレーブを加熱システム内に配置し、130℃にて40時間加熱した。反応の完了後、オートクレーブを室温まで冷却し、圧力を解除した。20μLの1,2−ジフルオロベンゼン(内標準)を反応混合物に添加し、試料を19FNMRに供した。収率を19FNMRにより測定した。NMRデータは、文献N.V.Kirijら、Journal of Fluorine Chemistry、2000年、106、217−221頁に従う。