【実施例】
【0010】
図1は、本発明の第1の実施例に係るVCSELの概略平面図とそのA−A線断面図である。本実施例に係るVCSEL10は、
図1(A)に示すように、基板上にモノリシックに形成された第1の柱状構造20、結合部30、および第2の柱状構造40を含んで構成される。第1の柱状構造20および第2の柱状構造40はX方向に配され、第1の柱状構造20は、結合部30によって第2の柱状構造40に結合される。第1の柱状構造20は、駆動用メサとして機能しそこに第1の共振器を含み、第2の柱状構造40は、制御用メサとして機能しそこに第2の共振器を含む。結合部30は、第1の柱状構造20および第2の柱状構造40と共通の半導体層を含み、第1の柱状構造20と第2の柱状構造40とを少なくとも光学的に結合する。好ましい態様では、結合部30は、第1の柱状構造20で発せられた光の一部を第2の柱状構造40へ伝播させ、かつ第2の柱状構造40で反射された光を第1の柱状構造20へフィードバックさせる機能を有する。
【0011】
図1(A)には、第1および第2の柱状構造20、40が結合部30を中心にほぼX方向に対称に形成され、かつ両者の平面形状は矩形状であるが、これは一例であり、第1および第2の柱状構造20、40は、必ずしも対称である必要はないし、矩形状に限定されるものではない。第1および第2の柱状構造は、それぞれ円柱構造や平面形状が楕円の柱状構造であってもよいし、第1および第2の柱状構造は、非対称形状であってもよい。さらに、第1および第2の柱状構造は、それぞれが異なる形状であって、かつ大きさが異なるものであってもよい。なお、以下の説明において、便宜上、第1の柱状構造20を駆動用メサと称し、第2の柱状構造40を制御用メサと称する。
【0012】
VCSEL10の積層構造は、
図1(B)に示すように、典型的な980nmのInGaAs/GaAs3重量子井戸構造と同じで、n型のGaAs基板100上に、Al組成の異なるAlGaAs層を交互に重ねたn型の下部分布ブラッグ反射鏡102(Distributed Bragg Reflector:以下、DBRという)、下部DBR102上に形成された上部および下部スペーサ層に挟まれた量子井戸層を含む活性領域104、活性領域104上に形成されたAl組成の異なるAlGaAs層を交互に重ねたp型の上部DBR108を積層して構成される。n型の下部DBR102は、高屈折率層と低屈折率層の積層として、例えば、Al
0.92Ga
0.08As層とAl
0.16Ga
0.84As層とのペアを複数積層する。各層の厚さは、λ/4n
r(但し、λは発振波長、n
rは媒質の屈折率)であり、これらを交互に40周期で積層する。n型不純物であるシリコンをドーピングした後のキャリア濃度は、例えば、3×10
18cm
-3である。
【0013】
活性領域104の下部スペーサ層は、アンドープのAl
0.3Ga
0.7As層であり、量子井戸活性層は、アンドープIn
0.2Ga
0.8As量子井戸層およびアンドープのGaAs障壁層であり、上部スペーサ層は、アンドープのAl
0.3Ga
0.7As層である。
【0014】
p型の上部DBR108は、高屈折率層と低屈折率層の積層として、例えば、Al
0.92Ga
0.08As層とAl
0.16Ga
0.84As層とのペアを複数積層する。各層の厚さは、λ/4n
rであり、これらを交互に25周期積層する。p型不純物であるカーボンをドーピングした後のキャリア濃度は、例えば、3×10
18cm
-3である。上部DBR108の最下層もしくはその内部には、p型のAl
0.98Ga
0.02As層(またはAlAs層)からなる電流狭窄層106が形成される。また、上部DBR108の最上層に、p型GaAsからなる不純物濃度が高いコンタクト層(例えば、1×10
19cm
-3)を形成するようにしてもよい。
【0015】
電流狭窄層106は、下部DBR102や上部DBR108よりもAl組成が高く、メサの酸化工程において酸化が早く進む。
図1(A)に示すようなメサを酸化すると、駆動用メサ20、結合部30および制御用メサ40の側壁から内部に向けて選択的に酸化された酸化領域106A(図中、ハッチングで示す)が形成され、電流狭窄構造が形成される。酸化が内部に向けてほぼ一定速度で進行することで、非酸化領域106Bの平面形状は、概ねメサ20、40の平面形状を反映した形状となり、その周囲が酸化領域106Aによって囲まれる。
図1(A)の破線106Cは、酸化領域106Aと非酸化領域106Bの境界を模式的に表している。電流狭窄層106を構成するAl
0.98Ga
0.02As層(またはAlAs層)の屈折率は、約3.0であるが、それが酸化されると屈折率が約1.7程度に小さくなる。これにより、酸化領域106Aによって囲まれた非酸化領域106Bは、その内部に横方向の光を閉じ込める。また、酸化領域106Aは、電気的抵抗が高くなるため、酸化領域106Aは実質的に非導電領域として機能し、電極から注入されたキャリアは、導電領域として機能する非酸化領域106B内に閉じ込められる。このように、電流狭窄構造によって、非酸化領域106B内に電流と光の閉じ込めが行われる。
【0016】
本実施例のVCSEL10は、駆動用メサ20と制御用メサ40との間に結合部30を含む。結合部30は、駆動用メサ20と制御用メサ40の下部DBR102、活性領域104および上部DBR108の半導体層同士を結合するとともに、駆動用メサ20と制御用メサ40の酸化領域106Aおよび非酸化領域106Bを結合するための酸化領域106Aおよび非酸化領域106Bとを含む。これにより、駆動用メサ20と制御用メサ40とは光学的に結合される。また、結合部30は、駆動用メサ20で発生された光の一部を制御用メサ40へ伝播させ、かつ制御用メサ40で反射された光を駆動用メサ20へ帰還させる機能を備えるため、結合部30の等価屈折率が、駆動用メサ20および制御用メサ40の非酸化領域106Bの等価屈折率よりも小さくなるように設計される。本明細書で用いられる等価屈折率とは、基板に対して垂直方向に積層している、屈折率の異なる半導体多層膜の実効的な屈折率(多層膜の屈折率を単層の屈折率とみなす)を、等価屈折率法によって求められたものを指す。
【0017】
本実施例の結合部30は、
図1(A)に示す例では、Y方向が狭くなるように対向する側面が内部に向けて傾斜したくびれた形状32に加工されている。くびれた形状32の側面から電流狭窄層106が酸化されることで、結合部30の非酸化領域106BのY方向の幅Wが、駆動用メサ20および制御用メサ40の非酸化領域106BのY方向の幅よりも狭くされる。こうして、結合部30の等価屈折率が、駆動用メサ20および制御用メサ40の等価屈折率よりも小さくなるように制御される。なお、結合部30の形状や大きさは任意であり、結合部30の形状や大きさを適宜選択することで、結合部30の非酸化領域106BのY方向の幅を、駆動用メサ20および制御用メサ40の非酸化領域106BのY方向の幅よりも事実上狭くし、所望の等価屈折率を得ることができればよい。なお、結合部30の非酸化領域106BのY方向の幅がゼロ、つまり、駆動用メサ20および制御用メサ40の非酸化領域106B同士が接続されていない構成であってもよい。また、結合部30の非酸化領域106BのY方向の幅Wは、後述するように、駆動用メサ20と制御用メサ40との結合量または結合効率を決定する因子となる。
【0018】
上部DBR108上には、駆動用メサ20と制御用メサ40の各共振器に独立に結合された金属製のp側電極110、120が形成される。p側電極110、120は、例えば、AuまたはAu/Zn/Auなどを積層した金属から構成される。p側電極110は、駆動用メサ20の2辺に沿うように「くの字」状に形成され、そこで上部DBR108に電気的に接続される。好ましい態様では、p側電極110は、非酸化領域106Bと重複しない位置に形成され、言い換えれば、p側電極110は、酸化領域106Aと非酸化領域106Bとの境界106Cを越えない領域に形成される。同様に、p側電極120は、制御用メサ40の2辺に沿うように「くの字」状に形成され、そこで上部DBR108に電気的に接続される。p側電極120もまた、酸化領域106Aと非酸化領域106Bとの境界106Cを越えない領域に形成される。また、基板100の裏面には、駆動用メサ20と制御用メサ40に共通のn側電極130が形成される。
【0019】
p側電極110は、駆動用メサ20を駆動するための駆動用電極であり(以下、p側電極110を駆動用電極と称する)、もう一方のp側電極120は、制御用メサ40の光帰還を制御するための制御用電極である(以下、p側電極120を制御用電極と称する)。
図1の例では、駆動用電極110と制御用電極120がそれぞれのメサ20、40の両端に形成されているが、これに限定されず、例えば、従来のVCSELよりも高速化が可能であれば、両端以外に形成されても良い。
【0020】
本実施例のVCSEL10は、上記したように、駆動用電極110が形成された駆動用メサ20と、制御用電極120が形成された制御用メサ40とがくびれ状の結合部30を介して結合した、結合共振器構造を有している。本実施例では、同一形状の矩形状の結合共振器を示すが、異なる大きさの矩形状の結合共振器でも構わないし、矩形以外の、例えば円状の結合共振器であっても良い。駆動用メサ20および制御用メサ40に形成されるそれぞれの非酸化領域106Bの1辺の長さL1は、例えば8.5μmであり、結合共振器に形成される非酸化領域106Bの長軸の長さL2は、例えば28μmである。これらの非酸化領域の長さL1、L2は、設計によって前述の値よりも小さくすることも大きくすることも可能である。仮に、駆動用メサ20から基本横モードの光を出射させる場合には、長さL1をさらに小さくするようにしてもよい。
【0021】
こうして、2つの垂直共振器構造をもつ駆動用メサ20と制御用メサ40が基板上に形成され、駆動用電極110とn側電極130との間に順方向バイアスの駆動信号を印加することで、駆動用メサ20の上部DBR108の表面から基板と垂直方向にレーザ光が出射される。駆動信号は、レーザ光を連続的に発光させるような定常的な信号であってもよいし、レーザ光を変調させるようなパルス状の信号であってもよい。また、本実施例では、制御用メサ40の制御用電極120には、必ずしも駆動信号を印加する必要はないが、ある態様では、制御用電極120にレーザ発振が可能なしきい値以上の順方向バイアスの駆動信号が印加され、VCSEL10の高速変調がより改善される。制御用電極120に駆動信号を印加することで、制御用メサ40を伝播する光が増幅され、かつ光の位相が制御され、これにより制御用メサ40から光帰還される光の位相を逆相に制御することができる。光帰還を逆相にすることで、後述するように、駆動用メサ20の変調周波数をさらに高速化することができる。
【0022】
ここで、順方向バイアスとは、半導体レーザ内のp型半導体層には正の電圧を、n型半導体層には負の電圧を印加するものであり、逆方向バイアスとは、半導体レーザ内のp型半導体層には負の電圧を、n型半導体層には正の電圧を印加するものである。但し、負の電圧は、接地電位(GND)を含む。
【0023】
図2は、VCSELの等価屈折率と光閉じ込め分布の関係を示している。同図において、階段状の線が等価屈折率を示し、曲線は、光閉じ込め分布を表している。低等価屈折率NLの領域D0は、駆動用メサ20の酸化領域106Aに対応し、高等価屈折率NHの領域D1は、領域D0と同じ駆動用メサ20の非酸化領域106Bに対応し、低等価屈折率NLの領域D2は、結合部30による共振器結合部に対応し、高等価屈折率NHの領域D3は、制御用メサ40の非酸化領域106Bに対応し、低等価屈折率NLの領域D4は、制御用メサ40の酸化領域106Aに対応する。
【0024】
駆動用メサ20の共振器で発生された光Linの大部分は、非酸化領域106Bである領域D1に閉じ込められる。しかし、高低の等価屈折率となる領域D0、D1、D2、D3、D4が連続的に形成されることで、2つの共振器の結合部30の領域D2は、光Linを領域D1に完全に閉じ込めるのではなく、その裾野の一部の光を制御用メサ40へ導く。駆動用メサ20において垂直共振されるレーザ光であっても、レーザ光には、垂直方向から若干の傾斜角を持つものが含まれる。このため、裾野の一部の光は、低等価屈折率の領域D2を介して高等価屈折率の領域D3へ導波される。制御用メサ40に導かれた光Loは、制御用メサ40に閉じ込められた状態で、垂直共振器内を傾斜角の方向で共振されながら水平方向に伝播されるため、光の伝播時間は、直線的に水平方向へ伝播する光と比べて遅くなる。このような垂直共振器内を傾斜角の方向で共振されながら水平方向へ伝搬される光をスローライトという。
【0025】
スローライトは、制御用メサ40の非酸化領域106B内を水平方向に伝播した後、端部に設けられた光反射部で反射される。本実施例では、光反射部は等価屈折率変化を利用するものであり、すなわち、制御用メサ40の酸化領域106Aと非酸化領域106Bとの境界106Cによって光が反射される。制御用メサ40で反射された光は、結合部30を介して、再びもとの駆動用メサ20の共振器へフィードバック(光帰還)される。なお、光反射部は、必ずしも等価屈折率変化の利用に限らず、制御用メサ40の端部に別箇の光反射部材を取り付けることも可能である。
【0026】
スローライトは、下部DBR102と上部DBR108の間で反射されながら進行するため、水平方向の距離D3が小さくとも、実際に光が走行する距離(光路長)は、その距離D3の数百倍に相当する。従って、光反射部で反射されてスローライト部内を往復する光の伝播時間Tは、あたかも光の速度が遅延されたのと同じような効果を有する。好ましい態様では、光反射部に入射される光とそこで反射される光の位相が逆相関係にあるように光路長または距離D3が調整され、より好ましくは180度の逆相である。
【0027】
図3は、従来構造のVCSELと本実施例のVCSELの周波数特性計算結果を示している。横軸に周波数(GHz)、縦軸に変調感度(dB)を示している。信号強度の低下が−3dBまで許容されると仮定した場合、制御用メサが結合されていない従来構造のVCSELでは、約25GHzの周波数であるのに対し、本実施例のVCSELでは、約70GHzである。従って、従来構造のVCSELに比較して、本実施例のVCSEL10は、3dB周波数を大幅に改善していることがわかる。
図3のグラフは、逆相で光帰還を行った場合の計算を示しているが、同相で光帰還を行った場合と逆相で光帰還を行った場合の別のシミュレーションを比較すると、同相よりも逆相の方が3dB周波数の改善において好ましい結果が得られている。さらに、制御用電極120からの電流注入による利得の制御によっても3dB周波数の帯域改善をすることが可能であるが、制御用電極120からの電流注入がない場合でも、帯域改善効果を得ることができる。
【0028】
図4は、駆動用メサと制御用メサの2つの共振器の結合量によるVCSELの帯域変化を示している。結合量は、主に、駆動用メサ20と制御用メサ40との距離、結合部30の酸化制御に依存し、結合部30の非酸化領域106Bの幅Wが大きいと結合量(結合効率)が小さくなる傾向がある。図中、結合のない、すなわち従来のVCSELの帯域は、一番左の曲線で示されており、3dB帯域は10GHz弱である。曲線a、b、c、dの順に結合量が増加すると(すなわち、結合部30の幅Wが狭くなると)、変調感度の帯域が高周波側に延びていることが確認できる。この結合量は、幅Wの関数であるため、結合部30の酸化を制御することによって結合量を制御することができ、すなわち、結合部30の形状、大きさ等を選択することによって、所望の結合量を得ることができる。
【0029】
図5は、駆動用メサと制御用メサの2つのメサの結合部における非酸化領域の幅Wと、結合効率(結合量)、散乱損失の関係を示している。結合部30の幅Wが大きくなるほど、散乱損失(図中、破線)は増加し、結合効率(図中、実線)が低下する。結合部30の幅Wは、上記したように、2つのメサ20、40間の距離や結合部30の酸化狭窄量によって制御することが可能であるため、実験やシミュレーションにより所望の高周波特性が得られるよう、結合部30を適切に設計することでVCSEL10の帯域改善が可能となる。
【0030】
図6は、光帰還の遅延時間による結合量と3dB帯域の関係を示している。結合量がプラスの領域は同相で光帰還を行った場合、マイナスの領域は逆相で光帰還を行った場合である。光帰還のない従来構造のVCSELでは、3dB変調帯域が遅延時間によらず一定(約11GHzの破線)である。一方、本実施例のVCSELのように、制御用メサ40を結合させて光帰還を行ったときの遅延時間と3dB変調帯域の関係が示されている。ここでは、一例として、光帰還の遅延時間を1ps、2ps、2.4ps、3ps、5ps、10psとしたのとき3dB変調帯域が示されている。遅延時間は、制御用メサ40を走行するスローライトの光路長で決定され、すなわち、スローライトが伝播する、
図2で示した制御用メサ40の非酸化領域106Bの領域D3の長さで制御することが可能である。特に、逆相結合の場合、すべての遅延時間において3dB帯域が向上されている。例えば、逆相で3ピコ秒程度の遅延を発生させると、3dB帯域を従来構造のVCSELの約3倍に改善することができる。
【0031】
このように、3dB変調帯域を向上させるには、光帰還が逆相となることが望ましく、180度の逆相が最も望ましい。光帰還を逆相にするための第1の方法は、上記したように制御用メサ40の領域D3の長さを制御することで最適な光路長を選択する。第2の方法は、制御用メサ40の制御用電極120から最適な電流を注入することで光の位相を制御する。勿論、第1の方法と第2の方法との組み合わせによって光帰還される光の逆相を制御することも可能である。
【0032】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。
図7は、第2の実施例に係るVCSELの概略平面図とそのA−A線断面図を示している。
図1に示す第1の実施例のVCSEL10と異なる点は、第2の実施例に係るVCSEL10Aは、駆動用メサ20と制御用メサ40との間の結合部30を電気的に絶縁する絶縁構造を有する点である。図中、
図1に示すVCSELと同一構成については同一参照番号を付し、その説明を省略する。
【0033】
図7に示すように、VCSEL10Aの結合部30には、電気的抵抗の高い絶縁領域200が形成される。好ましい態様では、公知のフォトリソ工程により上部DBR108上に結合部30を露出させるようなマスクパターンを形成し、マスクパターンを介してプロトン等のイオン注入を行い、結合部30に絶縁領域200を形成する。好ましい態様では、イオン注入のエネルギーを制御することで、結合部30内のp型上部DBR108の深さ全体が絶縁される。但し、絶縁領域200は、活性領域104よりも出射面側の少なくとも一部が絶縁されて入れば良い。好ましい態様では、結合部30のY方向の全体に絶縁領域200が形成されるが、Y方向の一部が絶縁されるようにしてもよい、また、絶縁領域200のX方向の幅は任意である。
【0034】
本実施例では、結合部30に絶縁領域200を形成することで、駆動用電極110ないし制御用電極120から結合部30にキャリアを注入させない構造にし、利得の低下が抑制することができる。さらに、散乱損失を増加させることも可能になり、逆相での光帰還制御の精度を改善することができる。また、本実施例は、制御用電極120からの電流注入のない場合でも、ある程度の3dB変調帯域の改善が可能である。なお、絶縁領域200は、イオン注入により形成されたが、これ以外にも、例えば、上部DBR108の一部または全部に溝を形成し、絶縁領域200と同等の機能を与えるようにしてもよい。
【0035】
次に、本発明の第3の実施例について説明する。
図8は、第3の実施例に係るVCSEL10Bの概略平面図とそのA−A線断面図である。第1の実施例および第2の実施例に係るVCSELでは、制御用メサ40からも発光するのに対し、第3の実施例に係るVCSEL10Bは、制御用メサ40からの発光を抑制した構造である。図中、
図7に示すVCSELと同一構成については同一参照番号を付し、その説明を省略する。
【0036】
制御用メサ40からの発光が生じ、駆動用メサ20と制御用メサ40の2箇所から発光すると、出射光の光モード制御が困難となる。そこで、本実施例のVCSEL10Bでは、
図8に示すように、制御用メサ40の非酸化領域106Bを覆うように、上部DBR108上に制御用電極122を形成する(
図8(A)では、制御用電極122を分かり易くするためハッチングで表示)。
図8に示す例は、第2の実施例のときのように結合部30が例えばイオン注入を行うことで絶縁化されているが、第1の実施例のときのように結合部30は特に絶縁化されていなくても良い。
【0037】
本実施例では、発光領域が駆動用メサ20の1箇所に限定されるため、駆動用メサ20と制御用メサ40の2箇所から発光する場合に比べ出射光の光モード制御が容易となり、例えば、光ファイバなどの光導波部との結合効率改善につながる。
【0038】
なお、制御用メサ40からの発光を制御する手段としては、制御用電極自身で制御用メサ40の非酸化領域106Bを覆う構造以外に、例えば、発振波長に対して遮光性のある材料を付加したり、あるいは誘電体多層膜反射鏡等を付加する構造にしても良い。
【0039】
図9は、本実施例の光伝送装置の一構成例を示す断面図である。光伝送装置400は、VCSEL10/10A/10Bが形成された電子部品410を搭載する金属ステム420を含み、ステム420が中空キャップ430で覆われ、キャップ430の中央にボールレンズ440が固定されている。ステム420にはさらに円筒状の筐体450が取り付けられ、筐体450の端部にフェルール460を介して光ファイバ470が固定される。電子部品410から変調されたレーザ光は、ボールレンズ440によって集光され、その光は、光ファイバ470に入射され、送信される。なお、ボールレンズ以外にも両凸レンズや平凸レンズ等の他のレンズを用いることができる。
【0040】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。上記実施例では、AlGaAsの化合物半導体を用いたVCSELを例示したが、これ以外のIII−V族化合物半導体層を用いたVCSELであってもよい。