(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240431
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】延伸性チューインガム及びチューインガム用延伸性付与剤
(51)【国際特許分類】
A23G 4/00 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
A23G3/30
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-164502(P2013-164502)
(22)【出願日】2013年8月7日
(65)【公開番号】特開2014-64559(P2014-64559A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2016年5月30日
(31)【優先権主張番号】特願2012-194486(P2012-194486)
(32)【優先日】2012年9月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】393029974
【氏名又は名称】クラシエフーズ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西村 かおり
(72)【発明者】
【氏名】松井 利博
(72)【発明者】
【氏名】吉田 龍矢
【審査官】
中村 勇介
(56)【参考文献】
【文献】
特表2003−520609(JP,A)
【文献】
特表2008−515409(JP,A)
【文献】
特開平11−262374(JP,A)
【文献】
特開平01−039947(JP,A)
【文献】
特表2010−527634(JP,A)
【文献】
特開昭59−059148(JP,A)
【文献】
特開昭49−042855(JP,A)
【文献】
特表2008−515407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 1/00− 9/30
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手による混捏を経て細い紐状に延伸可能な物性を有する延伸性チューインガムであって、ガムベースと、糖類と、プロピレングリコールジアセテートとを含有することを特徴とする延伸性チューインガム。
【請求項2】
プロピレングリコールジアセテートを、延伸性チューインガム全体重量中0.2〜1.0重量%含有する請求項1記載の延伸性チューインガム。
【請求項3】
更に、トレハロースの糖質誘導体を含有する水飴、酸糖化水飴、及び酵素糖化水飴のうち1種又は2種以上を含有する請求項1又は2記載の延伸性チューインガム。
【請求項4】
更に、ゼラチンを含有する請求項1乃至3の何れか1項に記載の延伸性チューインガム。
【請求項5】
手による混捏を経て細い紐状に延伸可能な物性を付与するチューインガム用延伸性付与剤であって、プロピレングリコールジアセテートからなるチューインガム用延伸性付与剤。
【請求項6】
手による混捏を経て、長さ0.3m以上で直径10mm以下の細い紐状に延伸可能な延伸用チューインガムであって、ガムベースと、糖類と、プロピレングリコールジアセテート及び/又はトリアセチンとを含有することを特徴とする延伸用チューインガム。
【請求項7】
プロピレングリコールジアセテート及び/又はトリアセチンを、延伸用チューインガム全体重量中0.2〜1.0重量%含有する請求項6記載の延伸用チューインガム。
【請求項8】
更に、トレハロースの糖質誘導体を含有する水飴、酸糖化水飴、及び酵素糖化水飴のうち1種又は2種以上を含有する請求項6又は7記載の延伸用チューインガム。
【請求項9】
更に、ゼラチンを含有する請求項6乃至8の何れか1項に記載の延伸用チューインガム。
【請求項10】
手による混捏を経て、長さ0.3m以上で直径10mm以下の細い紐状に延伸可能な物性をチューインガムに付与するための延伸物性付与剤であって、プロピレングリコールジアセテート及び/又はトリアセチンからなる延伸物性付与剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手による混捏を経て細い紐状に延伸可能な物性を有する延伸性チューインガム及びチューインガム用延伸性付与剤に関し、更に詳しくは、手で混捏するなどの作業後に、両手で引っ張るだけで長さを0.3m以上の細い紐状もしくは糸状に繰り返し引き伸ばすことができ、更には、混捏もしくは延伸する時にべたついたり可塑性が低下しないことから作業性に優れる延伸性チューインガム及びチューインガム用延伸性付与剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、子供の興味を引く遊戯性のある可塑性菓子として、粘土状の物性を有する変形自在な粘土状ソフトキャンディが知られている(例えば、特許文献1)。該ソフトキャンディは、通常のソフトキャンディ原料に、乳化性澱粉を加えることにより、適度な粘稠性のある粘土状の物性を付与したものである。また、該乳化性澱粉は油脂含有食品を乳化、安定化させる乳化特性も有するため、該粘土状ソフトキャンディの付着性も改善するものである。
しかしながら、該粘土状ソフトキャンディが成形自在な物性を有するとしても、該ソフトキャンディの両端を持って引き伸ばすことは困難で、長さを0.3m以上とするような延伸性を有するものではなかった。
【0003】
他に、粘土のように自由に指先で変形させることができる指圧変形性を有するソフトキャンディが知られている(例えば、特許文献2)。該ソフトキャンディは、気泡を充分に含有したソフトキャンディを高温下に長時間放置してその成分中の砂糖を非晶質から結晶質化させることで、指で押すと粘土のように自由に変形する物性を付与するものである。
しかしながら、該ソフトキャンディが指圧変形性を有するとしても、該ソフトキャンディの両端を持って引き伸ばすことは困難で、長さを0.3m以上とするような延伸性を有するものではなかった。また、手指で加圧し、さらに混捏しているうちに、手がべたついたり、該ソフトキャンディが硬くなる点に改良の余地があった。
【0004】
一方、手で軽く圧力を加えるだけで簡単に立体形状に菓子を成型することができるような組み合わせ菓子として、還元水飴と軟化剤を含有するチューインガムが知られている(例えば、特許文献3)。該チューインガムには立体モールドを用いて押圧成型する際に軽い押圧力で成型するために、ソルビトール、プロピレングリコール、グリセリン等のチューインガム軟化剤が用いられている。また、チューインガム軟化剤の他に高可塑性香料を用いても同効果が得られるものである。
しかしながら、該チューインガムの可塑性は、立体モールドという型に入れたときの成型性を考慮したものであり、喫食者が直接、該チューインガムの両端を持ち、0.3m以上の長さまで引き伸ばすような延伸性を有するものではなかった。また立体モールドを工夫することによって該チューインガムとの離型性を良好にしたものであるため、直接該チューインガムに触って、手指で加圧し、さらに混捏する時に生じるべたつきや可塑性の低下までは考慮されておらず、改良の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−098683号公報
【特許文献2】特開平01−174333号公報
【特許文献3】特許第3051578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、手による混捏を経て細い紐状に延伸可能な物性を有する延伸性チューインガム及びチューインガム用延伸性付与剤に関し、更に詳しくは、手で混捏するなどの作業後に、両手で引っ張るだけで長さを0.3m以上の細い紐状もしくは糸状に繰り返し引き伸ばすことができ、更には、混捏もしくは延伸する時にべたついたり可塑性が低下しないことから作業性に優れる延伸性チューインガム及びチューインガム用延伸性付与剤を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、手による混捏を経て細い紐状に延伸可能な物性を有する延伸性チューインガムであって、ガムベースと、糖類と、プロピレングリコールジアセテート及び/又はトリアセチンとを含有することを特徴とする延伸性チューインガムにより上記目的を達成する。
【0008】
好ましくは、プロピレングリコールジアセテート及び/又はトリアセチンを、延伸性チューインガム全体重量中0.2〜1.0重量%含有する。更に好ましくは、更に、トレハロースの糖質誘導体を含有する水飴、酸糖化水飴、及び酵素糖化水飴のうち1種又は2種以上を含有する。また更に、ゼラチンを含有することが好ましい。
【0009】
また、本発明は、手による混捏を経て細い紐状に延伸可能な物性を付与するチューインガム用延伸性付与剤であって、プロピレングリコールジアセテート及び/又はトリアセチンからなるチューインガム用延伸性付与剤により上記目的を達成する。
【0010】
すなわち、本発明者らは、遊戯性のある可塑性菓子として、従来の粘土状の物性のような可塑性だけでは、手指で転がして太い紐状、棒状には伸ばせるものの、細い紐状もしくは糸状までには成形できないため、幼児の弱い力でも簡単に細い紐状もしくは糸状に成形することはできないかと考えた。そこで幼児でも成形できる方法として、粘土状のチューインガムを、手による混捏を経て、両端を軽く引っ張るだけで、細い紐状に引き伸ばすことが可能となる延伸性を有する新規な延伸性チューインガムについて鋭意検討を行った。まず、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコールのようなチューインガム軟化剤について検討したところ、粘土のように捏ねることが可能な柔らかい物性とはなるが、細い紐状となる延伸性を付与することはできなかった。このことから、ガムベース中のポリマーによる網目構造内に親和性を持つ化合物が、該網目構造内に入り込み、ポリマー同士の分子間力を弱くすることができればガムベースの剛直な物性が延伸性のある物性に変化するのではないかと考察した。そこでガムベースに対し親和性を示す可能性のある化合物として、プロピレングリコールジアセテートやトリアセチンについて検討したところ、驚くべきことに、手で転がしたり混捏するなどの作業後に、両手で引っ張るだけで長さを0.3m以上の細い紐状もしくは糸状に、繰り返し引き伸ばすことができる延伸性を付与できることを見出した。
【0011】
次に、引き伸ばす前の、手で混捏するときの作業性について更に注目し検討したところ、混捏しているうちにだんだんべたついたり、粘土のような可塑性が低下し硬くなることから、好ましくは、該チューインガムにトレハロースの糖質誘導体を含有する水飴、酸糖化水飴、及び酵素糖化水飴のうち1種又は2種以上や、ゼラチンを含有すると、上記問題点も解決できることを見出し、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0012】
本発明の延伸性チューインガムは、手による混捏が可能となる粘土のような可塑性と、両手で引っ張るという簡単な操作だけで、長さを0.3m以上の細い紐状もしくは糸状に、繰り返し引き伸ばすことができる延伸性を有するため、幼児の弱い力でも扱うことのできる、従来にない新規な遊戯性を有する可塑性菓子である。
好ましくは、トレハロースの糖質誘導体を含有する水飴、酸糖化水飴、及び酵素糖化水飴のうち1種又は2種以上を含有することで、本発明の延伸性チューインガムの、手による混捏が可能となる粘土のような可塑性を良好にするとともに、手による混捏等の作業中べたついたり可塑性が低下しないことから作業性にも優れ、長時間繰り返し遊ぶことができる。
更に好ましくは、ゼラチンを含有することで、手による混捏等の作業中に可塑性が低下しないことから長時間繰り返し遊ぶことができる。
また、本発明の延伸性チューインガムはそのままでも、混捏や延伸を繰り返したのちもチューインガムとして喫食を楽しむことができる。
また、本発明のチューインガム用延伸性付与剤は、チューインガムに添加するだけで該チューインガムに可塑性と延伸性を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を詳しく説明する。
本発明の延伸性チューインガムは、手による混捏を経て細い紐状に延伸可能な物性を有し、ガムベースと、糖類と、プロピレングリコールジアセテート及び/又はトリアセチンとを含有する。すなわち、本発明の延伸性チューインガムは、手による混捏が可能となる粘土のような「可塑性」と、両手で引っ張るだけで長さを0.3m以上の細い紐状に、繰り返し引き伸ばすことができる「延伸性」の2つの物性を有する。なお、ここで「細い紐状」とは、糸状も含む意味で用いられ、好ましくは直径10mm以下のものを言う。
【0014】
上記ガムベースは、従来から用いられているものであればよく、例えば、樹脂、弾性体、ワックス類、無機質等が適宜選択して使用される。樹脂としては、例えば、チクル、ジェルトン、ソルバ等の天然樹脂、酢酸ビニル樹脂やエステルガム等の合成樹脂が挙げられる。弾性体はゴム様物質とも言われ、例えば、ポリイソブチレン(イソブチレン重合体)、ポリブテン、ブチルゴム、ポリイソプレン、天然ゴム等が挙げられる。ワックス類(炭化水素、ロウ)としては、例えば、ライスワックス、キャンデリラワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバロウ等が挙げられる。無機質としては、炭酸カルシウムやタルク等が挙げられる。ガムベースは、これらの中から適宜選択し単独もしくは複数組み合わせて用いればよい。また、ガムベース含有量は、一般的に用いられている量でよく、延伸性チューインガム全体重量中15〜35重量%が好ましい。含有量が15重量%未満となると延伸性が低下する傾向があり、35重量%よりも多いとチューインガムとしての風味や食感が低下する傾向にある。
【0015】
上記糖類は、例えば、グルコースなどの単糖類、スクロース、マルトース、トレハロース等の二糖類、マルトトリオース、パノース等の三糖類、マルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等のオリゴ糖及びこれらの還元物、水飴(トレハロースの糖質誘導体を含有する水飴、酸糖化水飴、酵素糖化水飴、還元水飴等)、キシリトール、マンニトール、エリスリトール、マルチトール等の糖アルコール等が挙げられ、単独でも複数組み合わせてもよい。
【0016】
次に、本発明の延伸性チューインガムは、プロピレングリコールジアセテート及び/又はトリアセチンを含有することが、可塑性かつ延伸性を得る点で重要である。プロピレングリコールジアセテートとトリアセチンは、単独もしくは両者を併用してもよい。好ましくは、プロピレングリコールジアセテートを必須とすることが、より良好な可塑性かつ延伸性を付与できる点、手による混捏等の作業中のべたつき防止の点で好適である。なお
、チューインガム軟化剤として一般的に用いられるグリセリン、ソルビトール、プロピレングリコールは、可塑性を付与することはできても、延伸性は得られない。すなわち、本発明において、プロピレングリコールジアセテート及びトリアセチンは、可塑性と延伸性の両物性を付与する「延伸成分」である。プロピレングリコールジアセテートは下記の化学式(1)、トリアセチンは下記の化学式(2)で表される化合物である。
【0019】
また、プロピレングリコールジアセテート及び/又はトリアセチンを含有すれば、可塑性かつ長さが0.3m以上の延伸性が認められるが、好ましくは、延伸性チューインガム全体重量中0.2〜1.0重量%含有することが、長さが0.5m以上の良好な延伸性を付与できる点で好適である。含有量が0.2重量%未満の場合、付与される可塑性や延伸性が低下する傾向があり、1.0重量%より多くなると、延伸したチューインガムが切れやすくなり、長さ0.5m以上の良好な延伸性を繰り返し付与することが困難となり、べたつく傾向がある。なお、上記含有量は、プロピレングリコールジアセテート又はトリアセチンを単独で用いる場合は単独の含有量を、両者を併用する場合は両者の合計含有量を意味する。
【0020】
また、更に、トレハロースの糖質誘導体を含有する水飴、酸糖化水飴、及び酵素糖化水飴のうち1種又は2種以上は、手による混捏等の作業中べたついたり可塑性が低下することを抑制できる点で好適に用いられ、単独もしくは複数併用して用いればよい。より好ましくは、トレハロースの糖質誘導体を含有する水飴を必須とすることが、作業中べたついたり可塑性が低下することを抑制できるとともに、延伸性チューインガムの、手による混捏が可能となる粘土のような可塑性を良好にする点で好適である。
【0021】
上記トレハロースの糖質誘導体とは、分子内にトレハロース構造を有するグルコース
重合度3以上の非還元性オリゴ糖で、具体的には、グルコシルトレハロース、マルトシルトレハロース、マルトトリオシルトレハロースなどの、末端にトレハロース構造を有するオリゴ糖である。上記トレハロースの糖質誘導体を含有する水飴は、該トレハロースの糖質誘導体を50%以上含有し、固形分が75%以上の液糖である。市販品としては、例えば、固形分が75%で、グルコース重合度4のマルトシルトレハロース等のトレハロースの糖質誘導体を合計で重量58%含み、他にグルコース、マルトース、マルトトリオース、マルトテラオースなどを含むシラップ(登録商標「ハローデックス」、株式会社林原製)等が挙げられる。
【0022】
上記酸糖化水飴は、澱粉を酸で部分加水分解後、脱色、脱塩したもので、グルコース、マルトースのほか各種グルコース重合体を含む固形分70%以上の液糖であり、例えば、グルコース重合度4以上の糖質を主体とする酸糖化水飴(「サンシラップR70」、日本コーンスターチ株式会社製)等が挙げられる。
【0023】
上記酵素糖化水飴は、澱粉を酸液化または耐熱性α−アミラーゼを添加して105℃で液化したのち、60〜70℃でβ−アミラーゼで糖化し、脱色、脱塩後濃縮して製造されるもので、マルトースを主成分とし、少量のグルコースのほか各種グルコース重合物を含む。例えば、加藤化学株式会社製の「マルトエースMTA−70」が挙げられる。
【0024】
また、好ましくは、トレハロースの糖質誘導体を含有する水飴、酸糖化水飴、及び酵素糖化水飴のうち1種又は2種以上は、延伸性チューインガム全体重量中0.5〜2.5重量%含有することが、手による混捏中の作業性の点で好適である。トレハロースの糖質誘導体を含有する水飴、酸糖化水飴、及び酵素糖化水飴のうち1種又は2種以上が、0.5重量%未満の場合、混捏中にべたついてくる、可塑性が低下し硬くなる傾向があり、2.5重量%よりも多いと、可塑性は良好であるが、混捏中からべたつく傾向にある。なお、上記含有量は、トレハロースの糖質誘導体を含有する水飴、酸糖化水飴、酵素糖化水飴を単独で用いる場合は単独の含有量を、複数併用する場合はその合計含有量を意味する。
【0025】
また、本発明の延伸性チューインガムには、上記原料の他に、本願の目的を損なわない範囲であれば、適宜選択した副原料を用いてもよい。例えば、ゼラチン、軟化成分、酸味料(クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等)、乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等)、安定剤、非糖質甘味料(スクラロース、アセスルファムカリウム等)、着色料、香料、ビタミン類、ミネラル、果汁、乾燥果肉、乳酸菌、食物繊維等の微量機能成分等が挙げられ、これらは必要に応じて適宜選択して用いればよい。
【0026】
上記副原料の中でもゼラチンは、手で混捏する等の作業中に可塑性が低下せずに良好な延伸性を付与でき、繰り返し長時間遊ぶことができる点で好適である。ゼラチン含有量は、好ましくは、固形分換算で、延伸性チューインガム全体重量中0.2〜1.0重量%であると、作業中に可塑性が低下しない点、チューインガムとしての食感を維持できる点で望ましい。
【0027】
また、本発明の延伸性チューインガムは、延伸成分であるプロピレングリコールジアセテート及び/又はトリアセチンを含有するだけでも可塑性を付与できるが、さらに好ましくは、安定した可塑性を得る点で、さらに軟化成分を用いることができる。軟化成分としては、例えば、チューインガム軟化剤であるグリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール等が挙げられる。
【0028】
他に、着色料として、本発明の延伸性チューインガムの個体別に異なる着色料を用いると、異なる色の延伸性チューインガムを2個以上混捏する場合、各個体の色が混合することで色の変化を楽しめる点で好ましい。
【0029】
次に、本発明の延伸性チューインガムは、例えば、次のようにして製造される。まず、ガムベース、糖類、プロピレングリコールジアセテート及び/又はトリアセチン、及び必要に応じて副原料を準備し、ニーダー等を用いて各原料を混合分散させた後、エクストルーダー等の公知の押し出し成形機を用いてロープ状にチューインガムに押出した後、成形、切断することにより製造される。ここで製造された本発明の延伸性チューインガムは、水分含有量が延伸性チューインガム全体重量中1〜5重量%となり、従来のチューインガム水分含有量と同等でありながら、優れた可塑性かつ延伸性を有するものである。
【0030】
なお、上記のようにして製造された本発明の延伸性チューインガムの形態としては、例えば、板状、ブロック状、粒状のものに糖衣コーティングを施したもの、ブロック状の本発明の延伸性チューインガムのセンターに粉末や液体を含有したもの等が挙げられる。また製品化に際しては適宜延伸性チューインガムを包装すればよい。
【0031】
このようにして得られた本発明の延伸性チューインガムは、手による混捏が可能となる粘土のような可塑性と、両手で引っ張るという簡単な操作だけで、長さを0.3m以上、好ましくは0.5m以上、直径10mm以下、更に好ましくは1〜6mmの細い紐状に、繰り返し引き伸ばすことができる延伸性を有する。更に、手による混捏等の作業中でもべたついたり可塑性が低下しないことから作業性に優れ、長時間繰り返し遊ぶことができる。また、延伸性という独特の物性を有しながらも、チューインガムとしての喫食を楽しむことができる。
【0032】
また、本発明のチューインガム用延伸性付与剤は、上述のプロピレングリコールジアセテート及び/又はトリアセチンからなるものであり、従来のチューインガムに添加するだけで該チューインガムに「可塑性」と「延伸性」を付与することができる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いて具体的に説明する。
<実施例1〜19、比較例1〜4>
表1に示す各原料をニーダーを用いて混合分散させた後、エクストルーダーにてロープ状にチューインガムに押出した後、成形、切断することにより、ブロック状のチューインガム(大きさ19mm×23mm×14mm、重量7.0g/個)を得た。
【0034】
このようにして得られた実施例品および比較例品のチューインガム1個について、専門パネラー5名が、手による1分間の混捏後、手でチューインガムの両端をもって空中で引き伸ばし、そのときの、混捏するために必要な可塑性の有無、引き伸ばすために必要な延伸性の有無及び混捏中のべたつきと可塑性低下を評価した。その結果を表1に合わせて示す。なお、可塑性の有無は手による混捏が可能であるか否かを、延伸性の有無は延伸できるか否かとともに延伸する長さについて評価した。
【0035】
【表1】
【0036】
評価の結果、プロピレングリコールジアセテート及び/又はトリアセチンを含有する実施例は全て、可塑性及び延伸性を示した。特に、実施例1、4、8、16、17は、長さ約1.0m、直径約4mmの細い紐状に、実施例5、9〜15、18、19は、長さ1.5m以上、直径1〜2mmの細い糸状に、繰り返し引き伸ばすことができる、大変良好な延伸性を示した。また、実施例4、5、11、12、14、15、17〜19は、粘土のように手による混捏が可能な可塑性や大変良好な延伸性があり、さらに混捏中の作業性も良好なため、総合的に大変良好な遊戯性を有する可塑性チューインガムであった。
【0037】
これに対し、プロピレングリコールジアセテート及び/又はトリアセチンを含まない、或いは、プロピレングリコールジアセテート及び/又はトリアセチンの代わりにチューインガム軟化剤を含有する比較例は、本発明の目的とする延伸性を得ることはできなかった。