(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240434
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】薄型容器
(51)【国際特許分類】
B65D 43/22 20060101AFI20171120BHJP
A45D 33/00 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
B65D43/22 100
A45D33/00 610A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-168257(P2013-168257)
(22)【出願日】2013年8月13日
(65)【公開番号】特開2015-36305(P2015-36305A)
(43)【公開日】2015年2月23日
【審査請求日】2016年7月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000158781
【氏名又は名称】紀伊産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】小松 冨士夫
(72)【発明者】
【氏名】大塚 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 隆
【審査官】
宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−217112(JP,A)
【文献】
特開平03−000654(JP,A)
【文献】
特開2011−055889(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0045628(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0014434(US,A1)
【文献】
実公昭48−020244(JP,Y1)
【文献】
実開平02−122611(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 35/44−35/54
B65D 39/00−55/16
A45D 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋と容器本体からなり、前記蓋を閉じた時に前記容器本体に前記蓋を固定させる係合機構を有する薄型容器であって、
前記係合機構は、前記蓋に設けたフックの凸部と、前記容器本体に設けた係合部の凹部とが互いに係合する機構であり、
前記フックは、前記蓋の下面から下方に垂直に伸びる複数の壁から構成され、薄肉の前記蓋と一体に射出成形されており、
前記壁は、下端に水平方向に突出した前記凸部が形成された1個の第1壁と、前記第1壁の側面に対して垂直に接続され、同一形状で互いに平行に配置されている少なくとも3個の第2壁であることを特徴とする薄型容器。
【請求項2】
前記第1壁の厚みが1mm以下であり、前記第2壁の厚みが0.6mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の薄型容器。
【請求項3】
前記第1壁に段差が設けられており、前記第1壁は、前記段差から前記凸部が形成される下端までの壁厚よりも、前記段差から前記蓋と接合される上端までの壁厚の方が、薄くなるように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の薄型容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンパクト等の薄型容器に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料容器の1つであるコンパクトは、蓋と容器本体からなり、前記蓋を閉じた状態で前記容器本体に固定するためのフックが前記蓋に一体成形されている(特許文献1,2参照)。コンパクトは、バッグなどに入れて持ち運ぶことが多いことから、携帯し易い薄型容器とすることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4514866号公報
【特許文献2】特開2005−046547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンパクトを薄型容器とするためには、蓋を薄肉にする必要がある。しかし、蓋を薄肉にすると、蓋と一体成形されているフックが肉厚(中実形状)であるために、蓋を射出成形した時、肉厚部分に樹脂が溜まり、冷却速度のバラツキが大きくなることから、フックを設けた箇所の表面に樹脂収縮によるヒケと呼ばれる凹みが生じるという問題があった。射出成形時に射出圧を上げて蓋を成形すると、ヒケは改善されるが、蓋に反りが生じる。反りを改善するために射出圧を下げるとヒケを改善することができなくなり、射出成形時の成形条件の改善では、ヒケの問題を解決することができない。
【0005】
本発明は、このような薄肉の蓋にヒケを生じ難くした薄型容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の薄型容器は、蓋と容器本体からなり、前記蓋を閉じた時に前記容器本体に前記蓋を固定させる係合機構を有する薄型容器であって、前記係合機構は、前記蓋に設けたフックと、前記容器本体に設けた係合部とが互いに係合する機構であり、前記フックは、前記蓋の下面から下方に垂直に伸びる複数の壁から構成され、前記壁は、下端に水平方向に突出した凸部が形成された1個の第1壁と、前記第1壁の側面に対して垂直に接続され、同一形状で互いに平行に配置されている少なくとも3個の第2壁であり、前記第1壁の前記凸部が前記係合部の凹部と係合することを特徴とする。
【0007】
そして、前記第1壁の厚みを1mm以下とし、前記第2壁の厚みを0.6mm以下とすることが好ましい。
【0008】
さらに、前記第1壁に段差が設けられており、前記第1壁は、前記段差から前記凸部が形成される下端までの壁厚よりも、前記段差から前記蓋と接合される上端までの壁厚の方が、薄くなるように形成されることも可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の薄型容器は、蓋と容器本体からなり、前記蓋を閉じた時に前記容器本体に前記蓋を固定させる係合機構を有する薄型容器であって、前記係合機構は、前記蓋に設けたフックと、前記容器本体に設けた係合部とが互いに係合する機構であり、前記フックは、前記蓋の下面から下方に垂直に伸びる複数の壁から構成され、前記壁は、下端に水平方向に突出した凸部が形成された1個の第1壁と、前記第1壁の側面に対して垂直に接続され、同一形状で互いに平行に配置されている少なくとも3個の第2壁であり、前記第1壁の前記凸部が前記係合部の凹部と係合することにより、フックと蓋との接合箇所の面積が少なくなるので、射出成形時に発生する樹脂収縮によってフックが蓋に与える影響が少なくなり、射出成形した後の樹脂収縮によるヒケと呼ばれる凹みを従来よりも大幅に減少させることが可能となる。
【0010】
そして、前記第1壁の厚みを1mm以下とし、前記第2壁の厚みを0.6mm以下とすること、また、前記第1壁に段差が設けられており、前記第1壁は、前記段差から前記凸部が形成される下端までの壁厚よりも、前記段差から前記蓋と接合される上端までの壁厚の方が、薄くなるように形成されていることにより、フックと蓋との接合箇所の面積をより少なくすることができるので、凹み(ヒケ)をさらに減少させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の薄型容器1について図を用いて以下に詳細に説明する。
図1が本発明の薄型容器1の断面図であり、
図2が前記薄型容器1の蓋2の斜視図、
図3が前記蓋2に設けたフック4の拡大図である。
【0013】
本発明の薄型容器1は、化粧料等を収容する収容部7を有する容器本体3および前記容器本体3の前記収容部7を閉じるための蓋2からなる。前記蓋2および前記容器本体3は、それぞれ金型内に樹脂を注入して成形する射出成形によって成形された後、前記蓋2と前記容器本体3はヒンジ8を用いて互い係合されており、前記蓋2がヒンジ8を中心に、
図1(b)に矢印で示すように回動することで前記薄型容器1は開閉される。
【0014】
前記薄型容器1は、前記蓋2を閉じた時に前記蓋2を前記容器本体3に固定するための係合機構を有する。前記係合機構は、前記蓋2の下面に設けたフック4と、前記容器本体3に設けた係合部6とを互いに係合可能にする機構である。
【0015】
前記フック4は、
図3に示すように、前記蓋2と前記フック4が一体成形されており、前記蓋2の下面から下方に垂直に伸びる複数の壁から構成されている。前記フック4を構成する壁は前記蓋2から下方に垂直に延伸しており、下端に水平方向に突出した略台形の凸部13が形成された1個の第1壁11と、前記第1壁11の側面に対して垂直に接合され、同一形状で互いに平行に、そして等間隔で配置されている4個の第2壁12から構成される。前記第2壁12をここでは4個としているが、少なくとも3個あれば、フックの強度と、射出成形時の樹脂の流れを分散できる点から好ましく、さらに4個以上とすることも可能である。
【0016】
前記フック4では、前記第1壁11の壁厚を1mm以下とし、前記第2壁12の壁厚を0.6mm以下とすることが好ましい。これは、前記蓋2と前記フック4とが接合される箇所の面積を少なくするためであり、壁厚は、壁の数、形状、大きさ等によって、フック4の強度を確保できる範囲内で適宜変更可能である。前記第2壁12の壁厚は、数を増やすとより薄くすることが可能である。このような壁厚を限定することにより、従来のフックと比較すると、前記フック4の前記蓋2との接合箇所の面積は大幅に減少する。これにより、射出成形時に冷却速度のバラツキが改善されることで、ヒケの発生を大幅に減少させることが可能になる。
【0017】
図3に示すように、前記第1壁11は途中に段差16を設けて壁厚を途中で変化させており、前記第1壁11は、前記段差16から前記凸部13が形成される下端までの壁厚よりも、前記段差16から前記蓋2と接合される上端までの壁厚の方が、薄くなるように形成されている。この場合、前記第1壁11は、前記段差16から前記下端までの壁厚は1mm以下の0.93mmとし、前記段差16から前記上端までの壁厚は0.53mmとしている。前記凸部13と前記段差16とは、前記蓋2において、前記第1壁11の側面に対して、前記ヒンジ8側に設けられている。
【0018】
このように、前記第1壁11を、前記段差16から前記上端までの壁厚を薄くすることにより、前記容器本体3の係合部6と係合する箇所の強度を確保しながら、前記第1壁11が前記蓋2と接合する箇所の面積をより少なくできるので、前記蓋2に生じるヒケをより減少させることが可能となる。
【0019】
前記第2壁12は、
図3に示すように、前記蓋2の側面と同じ高さから、前記第1壁11の下端に向かって高くなる形状であり、前記第1壁11の段差16よりも上側の壁厚の薄い部分では、
図3(b)に示すように、前記第2壁12の端部が前記第1壁11の側面から突出するように形成されている。前記第2壁12の壁厚は、前記蓋2と接合される箇所で0.6mmとし、下方に向かって徐々に壁厚が減少する形状としており、下端部では0.37mmとしている。前記第2壁12の形状は、フック4の全体の形状に合わせて変更可能であり、また、隣接する第2壁12同士の間隔も適宜変更可能であり、等間隔ではなく、異なる間隔とすることも可能である。
【0020】
本発明における前記フック4は、上述の様に、複数の壁(1個の記第1壁11と4個の前記第2壁12)からなる構造としているが、各壁の壁厚および前記第2壁12の数は、上述の条件内であれば、前記フック4の強度が確保できる範囲内で適宜変更することができる。
【0021】
前記係合部6は、
図1に示すように、垂直な壁の側面に凹部15を設けたものであり、前記凹部15に前記フック4の第1壁11の凸部13が係合することで、前記フック4と前記係合部6の係合が行われる。前記係合部6の形状は特に限定するものではなく、前記フック4の凸部13が係合できる形状であればよい。
【0022】
前記蓋2をヒンジ8を中心に回動させて前記容器本体3の上面と接触させると、
図1(a)に示すように、前記フック4が前記係合部6と係合し、前記蓋2は前記容器本体3に固定され、前記薄型容器1は閉じられた状態となる。そして、前記蓋2に前記容器本体3から離れる方向に回動するように力を加えて、前記フック4と前記係合部6との係合を解除すると、前記蓋2は前記容器本体3から離れて、
図1(b)に示すように、前記薄型容器1は開いた状態となる。
【0023】
前記容器本体3には、1つの収容部7を設けているが、その数および形状は、収容する物に応じて適宜変更可能であり、例えば、化粧料を収容する化粧料収容部と、化粧用具を収容する化粧用具収容部の2つの収容部を設けることも可能である。
【0024】
前記蓋2には、
図2に示すように、前記フック4の左右から、前記蓋2の側面へと続くリブ14が設けられており、前記リブ14は蓋2の側面と一体となり、前記フック4と対向する位置に設けられているヒンジ部8へと繋がっている。前記リブ14に囲まれた箇所には鏡等を設けることができる。
【0025】
前記フック4は、複数の壁から構成されていることから、従来の1つの肉厚(中実部材)からなるフック等と比べると、前記フック4と前記蓋2との接合箇所は、各壁の根元だけとなり、接合箇所の面積が大幅に少なくなっている。これにより、前記蓋2を射出成形した後の樹脂収縮によって、蓋2の表面の前記フック4が設けられた位置に生じていた凹み(ヒケ)を大幅に減少させることができ、肉眼では確認できない程度の凹み(ヒケ)とすることができ、前記蓋2の表面をより綺麗に仕上げることが可能となる。
【0026】
このように、前記フック4を用いることにより、前記蓋2の表面に生じる凹み(ヒケ)を減少させることができるので、蓋2の厚みをより薄くすることも可能となり、前記薄型容器1をより薄い形態とすることが可能となる。
【0027】
前記薄型容器1のフック4の形状は、図に示すものに限定するものではなく、その形状に合わせて適宜、第1壁11および第2壁12の形状を変更することで対応可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 薄型容器
2 蓋
3 容器本体
4 フック
6 係合部
7 収容部
8 ヒンジ
11 第1壁
12 第2壁
13 凸部
14 リブ
15 凹部
16 段差