特許第6240466号(P6240466)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イエフペ エネルジ ヌヴェルの特許一覧

特許6240466総数が22以下の床を有する直列した2基の吸着器により構成される、疑似向流によるパラキシレンの製造方法および装置
<>
  • 特許6240466-総数が22以下の床を有する直列した2基の吸着器により構成される、疑似向流によるパラキシレンの製造方法および装置 図000002
  • 特許6240466-総数が22以下の床を有する直列した2基の吸着器により構成される、疑似向流によるパラキシレンの製造方法および装置 図000003
  • 特許6240466-総数が22以下の床を有する直列した2基の吸着器により構成される、疑似向流によるパラキシレンの製造方法および装置 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240466
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】総数が22以下の床を有する直列した2基の吸着器により構成される、疑似向流によるパラキシレンの製造方法および装置
(51)【国際特許分類】
   C07C 7/12 20060101AFI20171120BHJP
   C07C 15/08 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   C07C7/12
   C07C15/08
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-223301(P2013-223301)
(22)【出願日】2013年10月28日
(65)【公開番号】特開2014-84323(P2014-84323A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2016年10月24日
(31)【優先権主張番号】1202869
(32)【優先日】2012年10月26日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】フィリベール ルフレーヴ
(72)【発明者】
【氏名】ダミアン ラインクーゲル ル コック
【審査官】 杉江 渉
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−535178(JP,A)
【文献】 特開2011−161439(JP,A)
【文献】 特開平06−039206(JP,A)
【文献】 特開平05−201886(JP,A)
【文献】 特表2001−507007(JP,A)
【文献】 特開2013−001709(JP,A)
【文献】 特開2013−049052(JP,A)
【文献】 特表2005−511773(JP,A)
【文献】 特開昭58−024308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 7/00
C07C 15/00
B01D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2基の吸着器を使用した疑似向流(SCC)によるキシレンの分離方法であって、総数Ntが15以上22以下の床を有しており、供給原料(F)を導入するラインと、溶離剤(eluent)すなわち脱着剤(D)を導入するラインと、エキストラクト(E)を抜き出すラインと、ラフィネート(R)を抜き出すラインとを有しており、以下のように定義される4つのクロマトグラフィー帯域:
・帯域1:脱着剤(D)の注入とエキストラクト(E)の除去との間に含まれる、パラキシレン脱着帯域;
・帯域2:エキストラクト(E)の除去と、分別されるべき供給原料(F)の注入との間に含まれる、パラキシレン異性体脱着帯域;
・帯域3:供給原料(F)の注入とラフィネート(R)の抜出しとの間に含まれる、パラキシレン吸着帯域;
・帯域4:ラフィネート(R)の抜出しと脱着剤(D)の注入との間に位置する帯域;
に分割されており
記2基の吸着器は、直列で機能する、即ち、第1の吸着器の最後の床が、再循環ポンプを含むラインを通じて第2の吸着器の最初の床に接続され、前記第2の吸着器の最後の床が、前述の再循環ポンプとは異なる再循環ポンプを含むラインを通じて、前記第1の吸着器の最初の床に接続されるものであり、また、前記方法は、以下の操作条件:
・温度が100〜250℃であり;
・圧力が、本方法の温度におけるキシレンの沸点圧と、30×10Pa(1バール=10Pa)との間の範囲内であり;
・供給原料に対する脱着剤の流量比が0.7〜2.5であり;
・吸着器の種々の床中の平均流量と、前記吸着器に注入される供給原料の流量との間の比として定義される再循環比が、2.5〜12であり;
・吸着器による循環時間が、14〜30分の範囲内であり;
・空の反応器に対する液体流れの平均線速度が、0.7〜1.4cm/sの範囲内であり;
・液相の含水量が、70〜140重量ppmの範囲内である;
において操作され
前記方法において用いられる装置は、それぞれ12個の床を有する直列した2基の吸着器から構成される装置が改造されたものであって、少なくとも1つの吸着器のヘッドプレートおよび/またはボトムプレートを、頂部および/または底部において除去された吸着剤の床の数に対応する高さだけ変位させられるものである、
該方法。
【請求項2】
前記2基の吸着器にわたって分配される床の総数Ntが、18以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の吸着器の床の数N1と、前記第2の吸着器の床の数N2とが等しい、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の吸着器の床の数N1が12である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
それぞれ12個の床を有する2基の吸着器から構成される既存の装置を使用した疑似向流(SCC)によるキシレンの分離方法であって、前記装置は、最終的に総数Ntが15以上22以下の床を有するものとなるよう改造され、また、前記装置は、供給原料(F)を導入するラインと、溶離剤(eluent)すなわち脱着剤(D)を導入するラインと、エキストラクト(E)を抜き出すラインと、ラフィネート(R)を抜き出すラインとを有しており、以下のように定義される4つのクロマトグラフィー帯域:
・帯域1:脱着剤(D)の注入とエキストラクト(E)の除去との間に含まれる、パラキシレン脱着帯域;
・帯域2:エキストラクト(E)の除去と、分別されるべき供給原料(F)の注入との間に含まれる、パラキシレン異性体脱着帯域;
・帯域3:供給原料(F)の注入とラフィネート(R)の抜出しとの間に含まれる、パラキシレン吸着帯域;
・帯域4:ラフィネート(R)の抜出しと脱着剤(D)の注入との間に位置する帯域;
に分割されており
記2基の吸着器は、直列で機能する、即ち、第1の吸着器の最後の床が、再循環ポンプを含むラインを通じて第2の吸着器の最初の床に接続され、前記第2の吸着器の最後の床が、前述の再循環ポンプとは異なる再循環ポンプを含むラインを通じて、前記第1の吸着器の最初の床に接続されるものであり、前記総数Ntの床は、前記総数Ntの床の間に床を介在させ得るだけの空隙がないという点で、コンパクトなアセンブリ(compact assembly)を構成しており、前記方法において、閉栓された入口および出口が、全てヘッドプレートよりも上方に設置されており、また、前記方法は、以下の操作条件:
・温度が100〜250℃であり;
・圧力が、本方法の温度におけるキシレンの沸点圧と、30×10Pa(1バール=10Pa)との間の範囲内であり;
・供給原料に対する脱着剤の流量比が0.7〜2.5であり;
・吸着器の種々の床中の平均流量と、前記吸着器に注入される供給原料の流量との間の比として定義される再循環比が、2.5〜12であり;
・吸着器による循環周期が、14〜30分の範囲内であり;
・空の反応器に対する液体流れの平均線速度が、0.7〜1.4cm/sの範囲内であり;
・液相の含水量が、70〜140重量ppmの範囲内に維持される;
において操作され
前記方法において用いられる装置は、それぞれ12個の床を有する直列した2基の吸着器から構成される装置が改造されたものであって、少なくとも1つの吸着器のヘッドプレートおよび/またはボトムプレートを、頂部および/または底部において除去された吸着剤の床の数に対応する高さだけ変位させられるものである、
該方法。
【請求項6】
それぞれ12個の床を有する直列した2基の吸着器から構成される疑似移動床パラキシレン製造方法を、請求項5に記載の方法においてリモデリングする方法であって、以下の工程:
・少なくとも1つの吸着器のヘッドプレートおよび/またはボトムプレートを、頂部および/または底部において除去された吸着剤の床の数に対応する高さだけ変位させること;
・除去された床に対応する中間ネットワークおよび中間プレートを除去すること;
・除去されたネットワークに対応する入口装置および/または出口装置を閉栓すること;
・前記ヘッドプレートに供給するように、ヘッドオクトパスマニホールド(head octopus manifold)を改造すること;
を含んでなることを特徴とする、該方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラキシレンを他の芳香族C8異性体から分離する分野に関する。このような分離を行うために、疑似移動床分離方法または疑似向流分離という名称で、あるいはVARICOL(登録商標)方法として知られた、一連の方法および関連する装置を使用する。以下において、SCC(疑似向流(simulated counter-current)の略語)分離方法という一般用語を用いるものとする。
【背景技術】
【0002】
SCC分離は、当該技術分野において周知である。一般的に、疑似向流モードで機能するパラキシレン分離方法は、少なくとも4つ、場合によって5つまたは6つの帯域を含んでおり、各帯域は一定数の連続した(successive)床によって構成され、各帯域は、供給口と抜出し口との間に含まれるその位置によって区画される。典型的には、パラキシレン製造のためのSCC装置(unit)に、分別されるべき少なくとも1つの供給原料F(パラキシレンおよび他の芳香族C8異性体を含む)と、溶離剤と称されることもある脱着剤D(一般にはパラジエチルベンゼンまたはトルエン)とが供給され、前記装置から、パラキシレンの異性体を含む少なくとも1つのラフィネートRおよび脱着剤と、パラキシレンを含有するエキストラクトEおよび脱着剤とが抜き出される。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されているように、分配回路を洗浄するために、別の注入口または抜出し口を追加してもよい。このような補足的な洗浄流れの追加は、SCCの機能の原理を何ら変更するものではない。理解を容易にするために、本発明の方法の説明には、これらの補足的な注入口および抜出し口を加えないものとする。
【0004】
供給口および抜出し口は、経時的に変更され、1つの床に相当する値(value)分だけ同一方向にシフトされる。特許文献2に記載されているように、いくつかの注入口または抜出し口が、同時式または非同時式にシフトされてもよい。この第2の機能モードによる方法は、VARICOL(登録商標)方法として知られている。
【0005】
一般に、SCC装置内は、以下の4つの異なるクロマトグラフィー帯域に区画される:
・帯域1:脱着剤Dの注入とエキストラクトEの除去との間に含まれる、パラキシレン脱着帯域;
・帯域2:エキストラクトEの除去と、分別されるべき供給原料Fの注入との間に含まれる、パラキシレン異性体脱着帯域;
・帯域3:供給原料Eの注入とラフィネートRの抜出しとの間に含まれる、パラキシレン吸着帯域;
・帯域4:ラフィネートRの抜出しと脱着剤Dの注入との間に位置する帯域。
【0006】
非特許文献1に記載されているように、SCCによるパラキシレンンの分離方法は、一般に24個の床によって構成され、これらの床は、それぞれ12個の床を含んだ2基の吸着器に分配される。2基の吸着器は直列に接続されている。したがって、SCCサイクルは24の工程を含み、これらの工程を通じて、各流れ(D、E、F、R)が24個の床それぞれの下流に向けて注入され、または抜き出される。
【0007】
それぞれ12個の床を有する2基の吸着器についての「直列に接続(connection in series)」という用語は、以下の3つの特徴を意味する:
・第1の吸着器の最下床は、少なくとも1つの再循環ポンプと、場合により流量計、圧力センサ等の他の装置とを含んだラインを通じて、第2の吸着器の最上床に接続される;
・第2の吸着器の最下床は、少なくとも1つの再循環ポンプと、場合により流量計、圧力センサ等の他の装置とを含んだラインを通じて、第1の吸着器の最上床に接続される;
・2基の吸着器からなるアセンブリ(assembly)は、1つの供給原料導入口、1つの溶離剤(脱着剤)導入口、1つのラフィネート抜出し口、および1つのエキストラクト抜出し口を有する。
【0008】
ごく一般的には、吸着器は円筒形のカラムであり、そのカラムの中で、複数の吸着剤床が上下に重なって配置され、かつ中間プレートとして知られる分配プレートによって分離されている。関係するカラムの寸法が大きい場合(例えば直径3〜15メートル)、流体を多段式カラムの外側から該カラムの様々なプレートへ導くために、様々な程度に枝分かれしたネットワークがしばしば用いられる。
【0009】
そのような分配ネットワークは相当嵩張るものであり、また、そのようなネットワークは、カラムの全体積を最小化する目的で、通常、吸着剤床自体の中に配置される。
【0010】
最上部の吸着剤床の上方に、通常は半球形である空間(volume)が設けられている。
【0011】
以下、この空間をヘッドドーム(head dome)と称する。ヘッドプレートとして知られる分配プレートは、最上部の吸着剤床をヘッドドームの空間から分離する。様々な程度に枝分かれしたラインを使った特別な分配ネットワークを使用して、流体が、他の吸着器に源を発する再循環ラインから、対象となる吸着器のヘッドプレートへと導かれる。
【0012】
ヘッドオクトパスマニホールド(head octopus manifold)と呼んでいる、この分配ネットワークは、ヘッドドームの空間内に設けられている。
【0013】
通常は半球形である空間(volume)が、吸着剤の最下床の下方に設けられている。
【0014】
以下、この空間をボトムドームスペース(bottom dome space)と称する。ボトムプレートとして知られる分配プレートが、吸着剤の最下床をボトムドームスペースから分離している。
【0015】
様々な程度に枝分かれしたラインを使った特別な分配ネットワークを使用して、流体が、対象となる吸着器のボトムプレートから、他の吸着器へ供給する再循環ラインへと導かれる。ボトムオクトパスマニホールド(bottom octopus manifold)と呼んでいる、この分配ネットワークは、ボトムドームスペース内に設けられている。
【0016】
さらに、キシレンを分離するための新規な吸着剤の開発を目的とする研究を用いれば、非常に有意な性能の改善を予想することができる。これらの新規な吸着剤の性能の改善による恩恵を受けるための最も単純な手段は、パラキシレンの一定した純度および収率の生産性を高める目的で、SCC装置における流量を増大することである。
【0017】
内部循環の増大は、SCC方法における圧力降下の増大を引き起こす。しかしながら、圧力降下は、1つまたは複数の再循環ポンプのサイジング、吸着器の壁の厚さ、分配プレートの支持装置のサイズなどに重要な役割を果たす。
【0018】
隙間速度(interstitial velocity)の増加もまた、吸着剤の粒子の力学的挙動に関して非常に重要な役割を果たしており、吸着剤の粒子は、それらが劣化した場合には、SCC装置を操作する上で制限要因となり得る。
【0019】
したがって、従来の装置の生産性を高めることは、必然的に制限される。
【0020】
SCCによるパラキシレン製造方法によって生産性が制限されることは、従来技術(特に、特許文献3および特許文献4)から公知であり、この方法を改良するため、以下の解決策が提案されている:
・特許文献5および特許文献4には、いくつかの吸着工程を用いる方法が示されている。その第1の工程は、商業的に使用可能となるには不十分な純度(99重量%未満)を有するパラキシレンに富む流れを生じさせることを目的としている。第2の工程は、非常に高い純度のパラキシレンを得るために使用することができる。特に、特許文献4の図5には、供給原料の前処理のための吸着器を追加することによって、従来の24床SCC装置の課題が解決されることが示されている;
・特許文献6、特許文献7、および特許文献3には、結晶化と組み合せたSSC吸着工程を用いる方法が示されている。その第1の工程は、SSCにより、商業的に使用可能となるには不十分な純度(一般に90重量%程度)を有するパラキシレンに富む流れを生じさせることを目的としている。第2の工程は、非常に高い純度のパラキシレンを結晶化によって得るために使用することができる。特に、特許文献3の図5には、2基の並列な吸着器を用いた吸着方法を改良すること、およびエキストラクトの後処理のための結晶化工程を追加することにより、従来の24床SSC装置(2基の12床吸着器からなる)の課題が解決されることが示されている。
【0021】
従来技術において推奨された、24床の疑似移動床を用いるパラキシレン製造装置の生産性が制限されるという課題を解決するための解決策は全て、供給原料を前処理するための吸着器および/または結晶化によるエキストラクトの後処理を使用する分離工程を追加することからなるので、相当に大きなコストの増大を生じさせる。
【0022】
これらの解決策はまた、製造されるパラキシレンの量および複合体に導入される供給原料の量を著しく増大させることによって生産性が向上するに過ぎず、このことは常に可能なわけではない、という不利益がある。それらはまた、体系的に相当な投資を必要とするという不利益を有する。
【0023】
別の可能性は、製造されるパラキシレンの量を維持しながら、吸着器内の吸着剤の量を減らすことである。吸着器内の吸着剤の量を減らすための1つの可能性は、SCC装置の各床を部分的に充填することである。これにより、各吸着剤床の表面と、その上の分配プレートとの間の空間が増大する。この解決策は、吸着剤の量を数パーセント減らす場合には満足な結果をもたらすが、各床から除去されるシーブの量が10%を超える場合は適切ではない。実際、プレートと吸着剤床との間に含まれる「空隙(void)」帯域は、その場合、大きすぎて、再循環を引き起こし、このことが流れのプラグ流の特性に有害な影響を及ぼし、製造されるパラキシレンの純度および収率の低下をもたらす結果となる。
【0024】
本発明の方法は、より少ない体積の固体吸着剤を使用して同量の高い純度の(即ち、99.7%を超える)パラキシレンを製造するために、2基の吸着器からなるパラキシレン製造装置の生産性を各吸着器内の床の数を減らすことによって制限することで、この問題を解決することを提案するものである。
【0025】
実際、驚くべきことに、SCCによるパラキシレン製造のための吸着器当たりの従来の床の数である12個よりも少ない数の床を有する2基の吸着器の使用が、適切な操作条件(構成、切り替え周期、流量、吸着剤の含水量、温度、および溶媒の量)において、固体吸着剤で満たされた12個の床をそれぞれ有する2基の従来の吸着器を用いた装置によって製造される量と同一の量の、商業的な純度の(即ち、99.7重量%を超える)パラキシレンの製造を可能にすることが示された。
【0026】
また、本発明の方法または装置を得るために、それぞれ12個の床を有する2基の吸着器によって構成される装置に対してなされるべき改造は、比較的軽微なものであって、大量の投資を必要としないことも示された。
【0027】
したがって、本発明は、特に、それぞれ12個の床を有する2基の吸着器によって構成された装置について、より少ない数の床を有する装置への改造が必要とされる場合に適しており、それによって装置内の固体吸着剤の量が最小化され得ることを意味している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】米国特許第7208651号明細書
【特許文献2】米国特許第6136198号明細書
【特許文献3】米国特許第7649124号明細書
【特許文献4】米国特許第7635795号明細書
【特許文献5】仏国特許発明第2743068号明細書
【特許文献6】仏国特許発明第2693186号明細書
【特許文献7】仏国特許発明第2757507号明細書
【非特許文献】
【0029】
【非特許文献1】「Ind Eng Chem Res」2010年、第49巻、第3316−3327頁、Limら著
【発明の概要】
【0030】
本発明は、直列で操作する2基の吸着器によって構成される、実質的にパラキシレンおよびその芳香族C8異性体を含んだ供給原料Fからパラキシレンを分離する方法に関する。
【0031】
本発明の方法は、総数が22以下の床を有し、直列に接続された2基の吸着器によって構成される。各吸着器は、12個以下の床を有する。本発明の方法の第1の吸着器が実際に12個の床を有する場合、第2の吸着器内の床は10個以下である。
【0032】
2基の吸着器を保持する(要するに、合計数の床を含んだ単一の吸着器を有する代わりに)という事実は、各吸着器の頂部における圧力を制限するような方法で2基の吸着器にそれを分配することにより、吸着器ごとの圧力の変動を制限するという利点をもつ。吸着器の底部の最小圧力は、装置の全ての箇所において液相を維持するために、装置の温度における大半の揮発性化合物の最大泡圧(bubble pressure)に少なくとも等しくなければならない。
【0033】
より明確には、本発明は、産業上の開始状況に応じて、以下の2つの異なるケースをカバーする:
・ケース1:本発明の方法が、新たな装置を用いて実施される;
・ケース2:それぞれが12個の床を有する2基の吸着器によって構成されるパラキシレン分離装置(時に24床装置として知られる装置)が既に存在しており、この装置が、床の数を減らすことによって、本発明の装置を得るために改造される。
【0034】
新たな装置の場合、本発明は、2基の吸着器を用いた疑似向流(SCC)によるキシレンの分離方法として定義することができる。該方法は、総数Ntが22以下、好ましくは18以下の床を有しており、前記方法は、供給原料(F)を導入するラインと、溶離剤(eluent)(D)を導入するラインと、エキストラクト(E)を抜き出すラインと、ラフィネート(R)を抜き出すラインとを有しており、また、以下のように定義される4つのクロマトグラフィー帯域:
・帯域1:脱着剤Dの注入(供給位置)とエキストラクトEの除去(抜出し位置)との間に含まれる、パラキシレン脱着帯域;
・帯域2:エキストラクトEの除去(抜出し位置)と、分別されるべき供給原料Fの注入(供給位置)との間に含まれる、パラキシレン異性体脱着帯域;
・帯域3:供給原料の注入(供給位置)とラフィネートRの抜出し(抜出し位置)との間に含まれる、パラキシレン吸着帯域;
・帯域4:ラフィネートの抜出し(抜出し位置)と脱着剤の注入(供給位置)との間に位置する帯域;
に分割されており、
また、2基の吸着器は、直列で機能する、即ち、第1の吸着器の最後の床が、再循環ポンプを含むラインを通じて第2の吸着器の最初の床に接続され、第2の吸着器の最後の床が、前述の再循環ポンプとは異なる再循環ポンプを含むラインを通じて第1の吸着器の最初の床に接続されるものである。
【0035】
本発明の方法の第1の変形例によれば、第1の吸着器の床の数N1と、第2の吸着器の床の数N2とは、同一である。
【0036】
最も一般的な場合、第1の吸着器の床の数と、第2の吸着器の床の数とは、異なっている。
【0037】
本発明の方法の第2の変形例において、第1の吸着器の床の数N1は、12に等しい。
【0038】
既存の装置を改造する場合、本発明は、それぞれ12個の床を有する2基の吸着器によって構成される既存の装置を用いた、疑似向流(SCC)によるキシレンの分離方法として定義することができる。該装置は、最終的に総数Ntが22以下の床を有するものとなるように改造され、前記装置は、供給原料(F)を導入するラインと、溶離剤(D)を導入するラインと、エキストラクト(E)を抜き出すラインと、ラフィネート(R)を抜き出すラインとを有しており、以下のように定義される4つのクロマトグラフィー帯域:
・帯域1:脱着剤Dの注入(供給位置)とエキストラクトEの除去(抜出し位置)との間に含まれる、パラキシレン脱着帯域;
・帯域2:エキストラクトEの除去(抜出し位置)と、分別されるべき供給原料Fの注入(供給位置)との間に含まれる、パラキシレン異性体脱着帯域;
・帯域3:供給原料の注入(供給位置)とラフィネートRの抜出し(抜出し位置)との間に含まれる、パラキシレン吸着帯域;
・帯域4:ラフィネートの抜出し(抜出し位置)と脱着剤の注入(供給位置)との間に位置する帯域;
に分割されており、
また、2基の吸着器は、直列で機能する、即ち、第1の吸着器の最後の床が、再循環ポンプを含むラインを通じて第2の吸着器の最初の床に接続され、第2の吸着器の最後の床が、前述の再循環ポンプとは異なる再循環ポンプを含むラインを通じて、第1の吸着器の最初の床に接続されており、各吸着器の床は、各吸着器の床どうしの間に床を介在させ得るだけの空隙がないという点で、コンパクトなアセンブリを構成する。
【0039】
複数の床は、最上部から最下部へ向かって番号が付けられ、第1の床が最上部の床である。
【0040】
さらに詳細には、所与の吸着器の吸着剤床のセットが、コンパクトなアセンブリを形成すると考えてよく、このことは、除去された床が、リモデリングされた装置における吸着器の端に位置していた床であることを意味する。
【0041】
本発明の方法の第1の変形例によれば、既存の装置をリモデリングする構成において、塞がれた入口および出口が、全てヘッドプレートよりも上方に設けられる。
【0042】
本発明の方法の第2の変形例では、既存の装置をリモデリングする構成において、塞がれた入口および出口が、全てヘッドプレートよりも下方に設けられる。
【0043】
本発明はまた、それぞれ12個の床を有する2基の吸着器を備えた既存の装置を、総数が22以下の床を有しかつ直列に接続された2基の吸着器を備えた装置にリモデリングするための以下の工程:
・少なくとも1つの吸着器のヘッドプレートおよび/またはボトムプレートを、最上部および/または最下部において除去された吸着剤の床の数に対応する高さだけ変位すること;
・除去された床に対応する中間ネットワークおよび中間プレートを除去すること;
・除去されたネットワークに対応する入口装置/出口装置を塞ぐこと;
・ヘッドプレートおよびボトムプレートの位置が変更された場合には、ヘッドプレートおよび/またはボトムプレートからの捕集プレートにそれぞれ供給するため、ヘッドオクトパスマニホールドおよび/またはボトムオクトパスマニホールドを改造すること、
を含んでなる方法に関するものである。
【0044】
上記において「位置が変更された場合」という語が規定される理由は、本発明の状況においては、2基の吸着器のうち一方のみがその床の数を減らされ、他方は当初の12個の床のまま残る場合もあるからである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】直列に接続され、それぞれが12個の床を有する2基の吸着器を備えた従来技術の方法を示す図である。
図2】それぞれが8個の床を有する2基の吸着器、即ち、合計16個の床(L1〜L16)によって構成される、特定のケースの本発明の装置を示す図である。2基の吸着器は直列に接続されているが、この装置は単一の16工程のサイクルで操作される。
図3】一方が8個の床を有し、他方が7個の床を有する2基の吸着器、即ち、合計15個の床(L1〜L15)によって構成される、特定のケースの本発明の装置を示す図である。2基の吸着器は直列に接続されているが、この装置は単一の15工程のサイクルで操作される。
【発明を実施するための形態】
【0046】
(発明の詳細な説明)
本明細書の以下の部分においては、不明確さを避けるため、第1の状況(新たな装置)と、第2の状況(リモデリングされた装置)のうちいずれにあるのかを明記するものとする。
【0047】
考慮しているケースについて何ら明記されていない場合、提示された情報は、両方のケースに有効である。
【0048】
本発明による装置の2基の吸着器は、それぞれ、吸着器の種々の床内での流体の分配および/または床からの流体の抽出のためのチャンバーを備えたプレートPiによって分離されている複数の床と、流体を順次分配および抽出するためのプログラムされた手段とを有する。
【0049】
前記した流体を順次分配および抽出するためのプログラムされた手段は、典型的には以下の2つの主要なタイプの技術のうちの1つである:
・各プレートについて、流体の供給または抜出しのための複数のプログラムされた開閉弁であって、これらの弁は、典型的には対応するプレートのすぐ近くに位置し、また、各プレートPiについて、それぞれ、2つの流体Fおよび流体Dの供給と、2つの流体および流体Rの抜出しのための、少なくとも4つのプログラムされた二方開閉弁を含んでなる;
・または、全てのプレートにわたる流体の供給または抜出しのための1つの回転多方弁。
【0050】
本発明の方法の吸着工程は、純度99.7重量%以上のパラキシレンを得るために、注入および抜出しネットワークを洗浄する装置を必要とする。
【0051】
本発明の方法において用いられるネットワーク洗浄装置については、以下の2つのケースに区別することができる:
・第1の装置は、所与のプレートの注入/抜出しネットワークを、脱着剤または比較的純粋なパラキシレンで洗い流す(flushing)ことからなる。この目的のため、例えば、(帯域1に関連したネットワークが洗い流されるようにするため)1つの流れが帯域1から抜き出され、また、(帯域2に関連したネットワークが洗い流されるようにするため)前記流れが帯域2に再注入される。エキストラクトまたは蒸留後のパラキシレンの小さい流れを、エキストラクト抜出し口に最も近い帯域2のプレートに注入することも可能である。注入および抜出しによる洗浄については、他の可能性もあり得る。そのような装置は、特に、米国特許第3201491号明細書、米国特許第5750820号明細書、米国特許第5912395号明細書、米国特許第6149874号明細書、および国際公開第2006/096394号パンフレットに記載されている。好ましくは、この洗浄装置は、全プレートにわたる流体の供給または抜出しが、1つの回転多方弁を使用して実施される場合に用いられる。
・第2の装置は、主要な流れの大部分を吸着器の内部に流し、また、その流れの僅かな部分(典型的には主要な流れの1〜20%)を、連続したプレート間の外部バイパスラインを通じて外側に流すことからなる。上部プレートから来た流れによる、1つのプレートにおける注入/抜出しネットワークの、この洗い流し(flushing)は、一般に連続的に行われ、注入/抜出しネットワークのラインおよび帯域が、もはや「働かない(dead)」のではなく、絶え間なく洗い流されるようにする。そのような装置は、特に、仏国特許発明第2935100号明細書、仏国特許発明第2935101号明細書、および仏国特許発明第2944215号明細書に記載されている。好ましくは、この洗浄装置は、全プレートにわたる流体の供給または抜出しが、複数のプログラムされた開閉弁によって行われる場合に用いられる。
【0052】
本発明の方法の1つの特徴によれば、吸着工程において使用される吸着剤は、バリウムで交換された、またはバリウムおよびカリウムで交換された、フォージャサイト型ゼオライトを含んでいてもよい。
【0053】
好ましくは、吸着剤は、バリウムイオン単独、またはバリウムイオンおよびカリウムイオンによって少なくとも90%が交換されたXゼオライトの小結晶(即ち、直径2μm以下)を含んでなる凝集ゼオライト吸収剤固体であり、カリウムによって占められた交換可能部位は、バリウムイオンおよびカリウムイオンによって占められた交換可能部位の1/3までに相当する(補体(complement)は、一般に、バリウムおよびカリウム以外のアルカリまたはアルカリ土類イオンよりなる)。小結晶はまた、小さい割合、即ち、15重量%未満の不活性バインダを含んでいる。
【0054】
900℃で測定される強熱減量は、4.0〜7.7重量%の範囲内、好ましくは4.7〜6.7重量%の範囲内である。
【0055】
さらに好ましくは、吸着剤は、非常に小さい割合、即ち、5重量%未満の不活性バインダを有しており、該吸着剤は「バインダレス(binderless)」と称されている。
【0056】
好ましい吸着剤はパラジエチルベンゼンであるが、混合物としてのトルエン、パラジフルオロベンゼン、ジエチルベンゼンといった他の吸着剤も適切である。好ましくは、蒸留による回収が容易でありかつ吸着剤に対し高い親和性があるという理由から、パラジエチルベンゼンが推奨される。
【0057】
本発明の方法の別の特徴によれば、吸着工程の操作条件は、以下の通りである:
・温度は、100〜250℃、好ましくは120〜180℃である;
・圧力は、本方法の温度におけるキシレンの沸点圧と、30×10Pa(1バール=10Pa)との間である;
・供給原料に対する脱着剤の流量比は、0.7〜2.5である;
・再循環比は、2.5〜12、好ましくは3.5〜6の範囲内である。再循環比は、種々の吸着剤床中を流れる平均流量と、この吸着器内に注入される供給原料の流量との間の比として定義される;
・吸着器による循環時間は、14〜30分、好ましくは18〜23分の範囲内である;
・空の反応器に対する(液体流れの)平均線速度は、0.7〜1.4cm/s、好ましくは0.85〜1.1cm/sの範囲内である;
・液相における含水量は、70〜140重量ppm、好ましくは80〜120重量ppmの範囲内に維持される。
【0058】
本発明の方法の構成(帯域当たりの床の平均数)は、固定数の床(種々の注入口または抜出し口のシフトが同時に起こる)を備えているか、または可変数の床を備えていてもよい。後者の場合、1サイクルにおける平均値の積分ではない帯域当たりの床の数が得られるように、2つの注入口および2つの抜出し口のシフトは同時には起こらない。
【0059】
装置の構成は、帯域j(jは1〜4の範囲内)の床の平均数である「Nzj」を、装置全体の床の総数(2基の吸着器中)である「N total」に対し、以下のように規定することによって、定義することができる:
Nz1=(N total×5/24)×(1±0.2);
Nz2=(N total×9/24)×(1±0.2);
Nz3=(N total×7/24)×(1±0.2);
Nz4=(N total×3/24)×(1±0.2);
【0060】
本発明の方法を用いて、90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上のパラキシレン収率を得ることができる。
【0061】
本発明の方法により達成される生産性は、好ましくは吸着剤床のm当たり1時間当たりに製造される80〜200kgの範囲内のパラキシレンであり、より好ましくは吸着剤床のm当たり1時間当たりに製造される90〜180kgの範囲内のパラキシレンであり、さらに好ましくは吸着剤床のm当たり1時間当たりに製造される90〜160kgの範囲内のパラキシレンである。
【0062】
既存の装置のリモデリングの場合、本発明はまた、12個の床を有する2基の吸着器を含んだ24個の床による高純度疑似移動床パラキシレン製造方法を、本発明の方法に変形するための方法に関する。
【0063】
この方法は、生産性を向上させるために、装置の生産能力を変更することなく、吸着剤の全体積を減らすことにより、既存の設備を改造すること(リモデリングとしても知られる)からなる。
【0064】
本発明の方法は、吸着器の頂部(head)または底部(bottom)に位置する吸着剤床を除去することからなる。これを達成するため、少なくとも1つの吸着器のヘッドプレートおよび/またはボトムプレートが、頂部および/または底部から除去された吸着剤床の数に相当する高さだけ変位させられる。除去される床に対応する中間ネットワークおよび中間プレートもまた除去される。除去されたネットワークに対応する入口装置/出口装置は閉栓される。ヘッドプレートおよびボトムプレートの位置が変更された場合、ヘッドプレートおよび/またはボトムプレートの捕集プレートにそれぞれ供給するために、ヘッドオクトパスマニホールドおよび/またはボトムオクトパスマニホールドが改造される。
【0065】
数が減らされた床を有する本発明のリモデリングされた方法を管理できるようにするために、供給原料および脱着剤の注入流量と、エキストラクトおよびラフィネートの抜出し流量とを制御および調整するシステムが適合される。
・既存の24床方法の全プレートにわたる流体の供給または抜出しが、複数のプログラムされた開閉弁によって行われている場合、除去されなかった供給および抜出しネットワークに対し、何ら補足的な改造を行う必要はない。
・既存の24床方法の全プレートにわたる流体の供給または抜出しが、1つの回転多方弁を使用することによって行われている場合、この後者は:
a)複数のプログラムされた開閉弁を通じて、本方法のプレートのセットにわたり、流体を供給または抜き出すための装置、
b)または、床の数が減らされた方法に適合した、新たな回転多方弁、
によって置き換えられるであろう。
【実施例】
【0066】
本発明は、第1の例が従来技術の装置に対応し、その次の2例が本発明の装置に対応する、以下の1つの比較例および2つの実施例から、より適切に理解されるであろう。
【0067】
比較例1(従来技術による方法)
長さ1.1mおよび内径1.05mの24個の床により構成され、1つの供給原料注入口、1つの脱着剤注入口、1つのエキストラクト抜出し口、および1つのラフィネート抜出し口を備えた、SCC装置を対象とした。
【0068】
使用した吸着剤はBaXタイプゼオライトの固体(zeolitic BaX type solid)、脱着剤はパラジエチルベンゼンであった。温度は175℃、圧力は15バールであった。
【0069】
含水量は95重量ppmであった。
【0070】
供給原料の組成は、パラキシレン21.6%、オルトキシレン20.8%、メタキシレン47.9%、およびエチルベンゼン9.7%であった。
【0071】
SCC装置は、それぞれ12個の床を有する2基の吸着器で構成されていた。これらの床は、分配プレートによって分離されていた。注入ネットワークおよび抜出しネットワークは、各分配プレートに関連させられた。使用した洗浄装置は、国際公開第2010/020715号パンフレットに記載されたバイパス流体流量調節装置(modulated bypass fluid flow rate device)であった。
【0072】
各帯域における同期性は100%であった。
【0073】
種々の注入口および抜出し口のシフトは、同時式であった。床は、4つのクロマトグラフィー帯域に、5/9/7/3の構成で分配した。
【0074】
供給原料および脱着剤の注入流量(基準温度を40℃に想定することにより規定される)は、以下の通りであった:
・供給原料については、0.637m.min−1
・脱着剤については、0.805m.min−1
【0075】
加えて、帯域4の流量は1.963m.min−1、エキストラクト抜出し流量は0.414m.min−1であった。切り替え周期は68.0秒であった。
【0076】
シミュレーションにより、パラキシレンの純度99.86%、パラキシレンの収率98.4%、生産性75.5kgPX.h−1.m−3という数値を得た。
【0077】
実施例1(それぞれ12個の床を有する2基の吸着器による既存の装置をリモデリングすることにより得られた本発明による方法)
比較例1に記載の従来技術の装置から始まり、それぞれ8個の床を有する2基の吸着器によって構成される本発明の装置となるよう、リモデリングを行なった。
【0078】
この方法は、それぞれ12個の床を有する2基の吸着器によって構成された24床方法からリモデリングされた。各吸着器において、2つの頂部の床および2つの底部の床を除去した。各床は、長さ1.1mおよび内径1.05mであった。
【0079】
除去された床に対応する中間ネットワークおよび中間プレートを除去した。
【0080】
除去されたネットワークに対応する入口装置/出口装置を閉栓した。
【0081】
ヘッドプレートおよびボトムプレートの位置が変更された場合、ヘッドプレートおよび/またはボトムプレートからの捕集プレートにそれぞれ供給するために、ヘッドオクトパスマニホールドおよび/またはボトムオクトパスマニホールドを改造した。
【0082】
使用した吸着剤はBaXタイプゼオライトの固体、脱着剤はパラジエチルベンゼンであった。温度は175℃、圧力は15バールであった。
【0083】
供給原料の組成は、パラキシレン21.6%、オルトキシレン20.8%、メタキシレン47.9%、およびエチルベンゼン9.7%であった。
【0084】
各吸着器は、分配プレートによって分離された8個の床で構成された。
【0085】
注入ネットワークおよび抜出しネットワークは、各分配プレートに関連させられた。使用した洗浄装置は、国際公開第2010/020715号パンフレットに記載されたバイパス流体流量調節装置であった。各帯域における同期性は100%であった。
【0086】
種々の注入口および抜出し口のシフトは、同時式であった。床は、4つのクロマトグラフィー帯域に、3/6/5/2の構成で分配した。
【0087】
供給原料および脱着剤の注入流量(基準温度を40℃に想定することにより規定される)は、以下の通りであった:
・供給原料については、0.637m.min−1
・脱着剤については、0.805m.min−1
【0088】
加えて、帯域4の流量は、1.959m.min−1であり、エキストラクト抜出し流量は、0.414m.min−1であった。切り替え周期は102.0秒であった。
【0089】
シミュレーションにより、パラキシレンの純度99.83%、パラキシレンの収率98.1%、生産性112.9kgPX.h−1.m−3という数値を得た。
【0090】
実施例2(本発明の方法のための新たな装置)
一方が8個の床を有し、他方が7個の床を有する2基の吸着器によって構成された装置を対象とした。各床は、長さ1.1mおよび内径1.05mであった。
【0091】
使用した吸着剤はBaXタイプゼオライトの固体、脱着剤はパラジエチルベンゼンであった。温度は175℃、圧力は15バールであった。
【0092】
供給原料の組成は、パラキシレン21.6%、オルトキシレン20.8%、メタキシレン47.9%、およびエチルベンゼン9.7%であった。
【0093】
各吸着器は、分配プレートによって分離された床で構成された。
【0094】
注入ネットワークおよび抜出しネットワークは、各分配プレートに関連させられた。
【0095】
使用した洗浄装置は、国際公開第2010/020715号パンフレットに記載されたバイパス流体流量調節装置であった。各帯域における同期性は100%であった。
【0096】
種々の注入口および抜出し口のシフトは、同時式であった。
【0097】
床は、4つのクロマトグラフィー帯域に、3/6/4/2の構成で分配した。
【0098】
供給原料および脱着剤の注入流量(基準温度を40℃に想定することにより規定される)は、以下の通りであった:
・供給原料については、0.637m.min−1
・脱着剤については、0.805m.min−1
【0099】
加えて、帯域4の流量は、1.959m.min−1であり、エキストラクト抜出し流量は、0.414m.min−1であった。切り替え周期は108.8秒であった。
【0100】
シミュレーションにより、パラキシレンの純度99.81%、パラキシレンの収率97.8%、生産性120.4kgPX.h−1.m−3という数値を得た。
【0101】
これらの実施例は、本発明の方法の利点について良好な実例を示しており、従来技術による方法と比較して、必要な吸着性固体の量を低減しながら、同じ流量のパラキシレン製造を維持するために使用することができる。この結果は、新たな装置によって得られ、また既存の装置のリモデリングによっても得られる。
図1
図2
図3