(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
搬送物が搭載される荷台の底面に上部が支持され下方に向けて延設される支持部材と、その支持部材の下部に基端側が支持される支軸と、その支軸の径方向外側に配設される筒状の外筒と、その外筒の内周面と前記支軸の外周面との間に介設され前記支軸に対して前記外筒を回動可能に支持する軸受と、両側に車輪が固設される車軸を回動可能に支持し前記外筒に固定される軸箱とを備える運搬車両の走行装置において、
前記支軸の先端から前記支軸の外周面に亘って形成され、前記軸受に供給されるグリスの通路となる給脂路と、
その給脂路に一端側が連通し前記支軸の軸方向外側に他端側が延設される給脂管と、
その給脂管の他端に接続されるグリスニップルとを備えていることを特徴とする運搬車両の走行装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、走行装置は荷台の下に配設されており軸受は車輪の間に配置されているので、荷台や車輪に妨げられて、軸受への給脂作業時の作業性が悪いという問題があった。
【0005】
本発明は上述した問題を解決するためになされたものであり、給脂作業時の作業性を向上できる運搬車両の走行装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために請求項1記載の運搬車両の走行装置は、搬送物が搭載される荷台の底面に上部が支持され下方に向けて延設される支持部材と、その支持部材の下部に基端側が支持される支軸と、その支軸の径方向外側に配設される筒状の外筒と、その外筒の内周面と前記支軸の外周面との間に介設され前記支軸に対して前記外筒を回動可能に支持する軸受と、両側に車輪が固設される車軸を回動可能に支持し前記外筒に固定される軸箱とを備えるものにおいて、前記支軸の先端から前記支軸の外周面に亘って形成され、前記軸受に供給されるグリスの通路となる給脂路と、その給脂路に一端側が連通し前記支軸の軸方向外側に他端側が延設される給脂管と、その給脂管の他端に接続されるグリスニップルとを備えている。
【0007】
請求項2記載の運搬車両の走行装置は、請求項1記載のものにおいて、前記外筒の軸方向先端に設けられ、前記支軸の先端との間にグリスの保持空間を形成する有底筒状のカバー部と、そのカバー部の底部に貫通形成されると共に前記支軸の軸線上に配置された前記給脂管が挿通される孔部と、前記グリスニップル又は前記給脂管と前記カバー部との間に装着されてグリスの漏洩を防ぐシール部材とを備えている。
【0008】
請求項3記載の運搬車両の走行装置は、請求項2記載のものにおいて、前記カバー部は、前記孔部の周囲から軸方向外側に突設される円筒状の筒状突起部を備え、前記シール部材は、ゴム状弾性体から一体に構成されるシールブーツにより形成され、そのシールブーツは、前記グリスニップル又は前記給脂管の外周を圧接する円環状の小径シール部と、前記筒状突起部の外周または内周を圧接する円環状の大径シール部と、その大径シール部と前記小径シール部とを連結する膜状のシール本体部とを備えている。
【0009】
請求項4記載の運搬車両の走行装置は、請求項3記載のものにおいて、前記筒状突起部は、前記カバー部より硬度が大きく設定されている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の運搬車両の走行装置によれば、両側に車輪が固設された車軸を揺動可能に支軸が支持し、支軸の先端から支軸の外周面に亘って、軸受に供給されるグリスの通路となる給脂路が形成される。給脂管は、給脂路に一端側が連通し支軸の軸方向外側に他端側が延設される。給脂管の他端にグリスニップルが接続されるので、グリスニップルを、支軸の先端から軸方向外側に離れた位置に設けることができる。その結果、車輪や荷台に給脂作業を妨げられ難くできるので、給脂作業時の作業性を向上できる効果がある。
【0011】
請求項2記載の運搬車両の走行装置によれば、外筒の軸方向先端に設けられた有底筒状のカバー部と支軸の先端との間にグリスの保持空間が形成される。カバー部の底部に貫通形成された孔部に、支軸の軸線上に配置された給脂管が挿通される。グリスニップル又は給脂管とカバー部との間にグリスの漏洩を防ぐシール部材が装着されるので、請求項1の効果に加え、支軸の先端とカバー部との間にグリスが充填されることにより、支軸の先端側からの異物の侵入を防止できる効果がある。
【0012】
請求項3記載の運搬車両の走行装置によれば、カバー部は、孔部の周囲から軸方向外側に円筒状の筒状突起部が突設される。ゴム状弾性体から一体に構成されるシールブーツによりシール部材が形成され、グリスニップル又は給脂管の外周がシールブーツの円環状の小径シール部に圧接され、円環状の大径シール部により筒状突起部の外周または内周が圧接される。膜状のシール本体部により小径シール部および大径シール部が連結されるので、製作誤差や組立誤差等に起因するグリスニップル又は給脂管と筒状突起部との芯ずれを、シール本体部の弾性変形により吸収できる。その結果、請求項2の効果に加え、製作誤差や組立誤差等に左右されることなく、カバー部と支軸の先端との間に形成されるグリスの保持空間の密閉性を確保できる効果がある。
【0013】
請求項4記載の運搬車両の走行装置によれば、大径シール部が圧接される筒状突起部はカバー部より硬度が大きく設定されている。その結果、請求項3の効果に加え、カバー部より筒状突起部の硬度が小さく設定される場合と比較して、大径シール部と擦れて筒状突起部が摩損することを防止できる効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、
図1及び
図2を参照して、本発明の第1実施の形態における運搬車両1の走行装置10について説明する。まず、
図1を参照して、運搬車両1について説明する。
図1は第1実施の形態における走行装置10を備える運搬車両1の側面図である。
【0016】
図1に示すように、運搬車両1は、荷台2と、荷台2の前後にそれぞれ連結される運転室3,4と、荷台2の長手方向および幅方向に配列される複数の走行装置10とを備えて構成される。運転室3,4は、走行方向を指示する走行レバー等の運転用機器を備える運転席(図示せず)が内部に設けられる。運転室3,4に乗り込んだ運転者により運転用機器(図示せず)が操作され、各走行装置10は任意の方向に操舵される。本実施の形態では、走行装置10は、荷台2の幅方向(紙面垂直方向)に2組、荷台2の長手方向に8組、合計16個が荷台2の底面に配列されている。
【0017】
次に
図2を参照して、走行装置10について説明する。走行装置10は、モータ(駆動装置)が配置される駆動用の走行装置と、ブレーキ(制動装置)が配置される制動用の走行装置とが別個に設けられている。
図2(a)及び
図2(b)は制動用の走行装置を図示する。駆動用の走行装置は、給脂のための機構およびイコライザとしての機構が制動用の走行装置と同様に構成されているので、図示を省略する。
図2(a)は走行装置10の側面図であり、
図2(b)は走行装置10の正面図である。
図2(b)では、車輪20の一部を切断して図示する。
【0018】
図2(a)に示すように、走行装置10は、荷台2の底面に上端が支持され鉛直軸を中心にして回動可能に構成されるアーム11と、アーム11の下端に基端が支持され水平軸を中心にして上下方向に揺動可能に構成されるスイングアーム12とを備えている。スイングアーム12及びアーム11に緩衝装置13(油圧シリンダ)が連結され、スイングアーム12の上下方向の揺動(変位)が吸収される。軸状に形成された支軸14がスイングアーム12の先端からスイングアーム12の長手方向に沿って突設され、支軸14の径方向外側に筒状の外筒15が配設される。外筒15の軸方向先端がカバー部16で覆われ、カバー部16の底部にグリスニップル17が突設される。外筒15の上部に、車軸19を回動可能に支持する軸箱18が固設される。
【0019】
図2(b)に示すように、車軸19は両端に車輪20が固設される。車輪20間に配置された制動装置21により摩擦材押付機構22が作動され、摩擦材押付機構22により車輪20と連動する回転体(図示せず)と摩擦材(図示せず)とが押し付けられて車輪20が制動される。車軸19の両側に配置された車輪20の接地荷重を均等化するため、支軸14(
図2(a)参照)に対して外筒15が回動可能に支持される。支軸14に対して軸箱18を揺動可能にすることで、2つの車輪20の接地荷重を均等化できる。
【0020】
次に
図3を参照して、イコライザの構造について説明する。
図3は
図2(b)のIII−III線における走行装置10の軸方向断面図である。走行装置10は、スイングアーム12(
図2(a)参照)の先端に基端側(
図3左側)が固定された支軸14と、支軸14の径方向外側に配置される筒状の外筒15と、外筒15の内周面15aと支軸14の外周面14bとの間に介設される軸受31,32と、外筒15の軸方向先端に設けられる有底筒状のカバー部16とを備えている。
【0021】
支軸14は、車軸19及び車輪20を支持するための軸状の部材であり、先端14aから支軸14の軸方向中程まで軸線O上に軸方向路14cが穿設され、外周面14bから軸方向路14cの後端側(
図3左側)に連通する径方向路14dが穿設される。軸方向路14c及び径方向路14dは軸受31,32にグリスを供給するための通路(給脂路)である。支軸14の径方向外側に外筒15が配置され、外筒15の内周面15aと支軸14の外周面14bとの間に所定の空間30(間隔)が形成される。空間30はグリスを貯留するための空間である。
【0022】
支軸14と外筒15との間に形成された空間30の一端側に軸受31が、他端側に軸受32が配置される。軸受31,32は、支軸14に対して外筒15を回動自在に支持するための円環状の部材である。本実施の形態では軸受31,32(ブッシュ)はすべり軸受であり、軸方向に所定の間隔をあけて軸方向基端側(
図3左側)及び軸方向先端側(
図3右側)に配置される。径方向路14dは、軸受31及び軸受32に干渉しない外周面14b上に開口する。
【0023】
なお、支軸14の内部に軸方向路14c及び径方向路14d(給脂路)が設けられるので、支軸14の外周面14bの軸方向中程にグリスを供給できる。支軸14の外周面14bに供給されたグリスは、支軸14の外周面14b及び外筒15の内周面15aの間の空間30を通って、軸受31,32に向かって移動する。
【0024】
ここで、
図4(a)を参照して軸受31について説明する。
図4(a)は
図3のIVa−IVa線における走行装置10(軸受31)の断面図である。なお、軸受31の径方向外側に配置される外筒15の図示は省略する。
図4(a)に示すように軸受31は、支軸14の外周面14bと接する内周面に複数(本実施の形態では4本)の油溝31aが形成される。油溝31aは、支軸14の軸方向基端側および軸方向先端側にグリスを供給するための通路である。油溝31aは、断面円弧状に凹設され、軸線Oと平行に軸受31の軸方向一端から軸方向他端に亘って直線状に形成される。なお、軸受32も軸受31と同様に、直線状の油溝が内周面に複数本(本実施の形態では4本)形成されている(図示せず)。
【0025】
図3に戻って説明する。外筒15の内周面15aには、断面矩形状の係止溝15b,15cが周方向に亘って凹設される。係止溝15b,15cは、軸受31,32の軸方向移動を防止するための部位であり、軸受31,32の径方向外側にそれぞれ張り出す鍔部31b,32bが係入される。支軸14の基端側には円環状に形成された環状体33が外嵌され、外筒15の基端部には環状体33に対応する位置にオイルシール34が装着される。
【0026】
環状体33は、オイルシール34のリップ部が密着する部材である。オイルシール34は、金属製の外周リングとゴム状弾性体とが一体形成されており、外筒15の基端側内周端部に外周リングが接着される。オイルシール34は、環状体33にリップ部(ゴム状弾性体)が密着し、グリスを密封すると共に異物の侵入を防止する。
【0027】
支軸14の先端14aに押え部材35が配置(ボルトで締結固定)され、外筒15の軸方向先端にカバー部16が配置(ボルトで締結固定)される。押え部材35は、円盤状に形成される部材であり、外縁が、支軸14の先端14aの外縁より大きく設定される。これは押え部材35により軸受32が軸方向に移動するのを制限して支軸14から脱落するのを防止すると共に、堰を設けて支軸14の外周面14bにグリスを保持するためである。なお、押え部材35は、外縁が、外筒15の内周面15aと僅かに間隔をあけて配置される。押え部材35と外筒15とが擦れ合うことを防ぐためである。
【0028】
押え部材35は、厚さ方向に貫通する貫通孔35aが中央に形成される。貫通孔35aは、支軸14の先端14aに開口する軸方向路14cに接続されるニップル36が内部に配置される部位である。ニップル36は、軸方向路14cの内周に螺刻されたテーパ雌ねじに、ニップル36の外周面に形成されたテーパ雄ねじが螺着されることにより、支軸14の先端14aの軸線O上に配置される。
【0029】
カバー部16は、外筒15の軸方向先端に配置される有底筒状の部材であり、カバー部16が外筒15に配置されることで、押え部材35との間にグリスの保持空間42が形成される。カバー部16は、底部の中央に孔部16aが貫通形成される。孔部16aは、ニップル36に接続された給脂管37が挿通される部位である。
【0030】
給脂管37は、一端がニップル36に接続される管状の部材であり、他端側が孔部16aの外側にまで延設される。給脂管37は、他端にグリスニップル17が接続され、支軸14の軸線O上に配置される。グリスニップル17は、逆止弁が内蔵されており、グリスガン等を接続して圧力をかけることによってグリスが給脂管37に注入される。グリスニップル17は先端にキャップ17aが被装される。異物の侵入を防ぐためである。
【0031】
ニップル36は、給脂管37の内周に螺刻されたテーパ雌ねじに、ニップル36の外周面に形成されたテーパ雄ねじが螺着されることにより給脂管37の一端に挿着される。これにより給脂管37は、ニップル36を介して支軸14に片持ち支持される。また、接続部分にテーパねじを用いることで、給脂管37と軸方向路14cとの間が密閉される。さらに、給脂管37は、ニップル36に接続された一端が、押え部材35に形成された貫通孔35aの内部に配置される。給脂管37の外径は貫通孔35aの内径よりわずかに小さく設定されるので、給脂管37の一端側が径方向にガタつくのを防止できる。
【0032】
筒状突起部38は、孔部16aの周囲からカバー部16の軸方向外側に突設される円筒状の部位であり、軸線Oと同心状に配置されると共に、給脂管37との間にシールブーツ50(後述する)が配置される。本実施の形態では、筒状突起部38は、カバー部16とは別部材とされ、孔部16aに嵌挿される。筒状突起部38は保持空間42内に雄ねじ部38aが延設され、保持空間42内に配置されたナット39が雄ねじ部38aに螺合される。これにより、カバー部16に筒状突起部38が固設される。
【0033】
給脂管37は支軸14の軸線O上に配置され、筒状突起部38は軸線Oと同心状に配置される。そのため、支軸14に対して外筒15及びカバー部16が軸線Oを中心に回動(揺動)した場合の芯ずれを生じ難くできる。仮に、製作誤差(カバー部16に対する孔部16aの位置ずれ)や組立誤差(外筒15に対するカバー部16の組立誤差)によって筒状突起部38に芯ずれが生じたとしても、給脂管37と筒状突起部38との間にシールブーツ50が設けられるので、シールブーツ50により芯ずれを吸収してグリスの漏洩を防止できる。
【0034】
グリスニップル17が接続された給脂管37の外周端部にカラー40が嵌着される。カラー40は、給脂管37に装着されるシールブーツ50の軸方向移動を制限するための部材である。シールブーツ50は、給脂管37と筒状突起部38(カバー部16)との間に装着され、保持空間42に充填されたグリスの漏洩を防ぐと共に異物の侵入を防ぐためのシール部材である。
【0035】
次に
図4(b)を参照して、シールブーツ50について説明する。
図4(b)は走行装置10の拡大断面図である。但し、
図4(b)はシールブーツ50回りを部分的に拡大して図示すると共に、軸線Oを中心にした一方の断面を図示する。
図4(b)に示すように、シールブーツ50はゴム状弾性体から一体に構成される部材であり、円環状に形成された小径シール部51と、小径シール部51より径が大きく形成された円環状の大径シール部52と、大径シール部52と小径シール部51とを連結する膜状のシール本体部53とを備えている。
【0036】
小径シール部51は、弾性変形して給脂管37の外周を径方向内側に向かって圧接するための部位であり、給脂管37に対して締め代が設けられると共に、給脂管37に外嵌されたカラー40により軸方向外側(
図4(b)右側)への移動が制限される。大径シール部52は、弾性変形して筒状突起部38の外周面を径方向内側に向かって圧接するための部位であり、筒状突起部38の周方向に亘って外周面に凹設された溝部38bに対して締め代が設けられると共に、溝部38bにより軸方向の移動が制限される。
【0037】
シール本体部53は、小径シール部51及び大径シール部52を弾性的に連結して、グリスの漏洩を防ぐと共に異物の侵入を防ぐための部位である。本実施の形態では、軸線Oを通る断面において、径方向外側に凸の円弧状に形成される円弧部53aが大径シール部52寄りに設けられる。円弧部53aの弾性変形によって、筒状突起部38の芯ずれに起因する小径シール部51と大径シール部52との相対変位を許容することができる。
【0038】
なお、筒状突起部38は、雄ねじ部38aの外周に螺合したナット39によりカバー部16に対して軸方向外側(
図4(b)右側)への移動が制限される。また、径方向外側に向かって張り出すように筒状突起部38の外周面に鍔状に突設された鍔部38cによりカバー部16に対して軸方向内側(
図4(b)左側)への移動が制限される。ここで、筒状突起部38及び給脂管37(本実施の形態ではステンレス製)は、カバー部16(本実施の形態では鋳鉄製)と材質を異ならせることにより、カバー部16より硬度が大きく設定される。
【0039】
シールブーツ50は、筒状突起部38の溝部38bに大径シール部52を嵌めた後、給脂管37を小径シール部51に嵌挿し、次いでカラー40を給脂管37に嵌着することにより給脂管37の先端側に配置される。小径シール部51が軸線Oに沿って軸方向外側に位置するので、給脂管37及び筒状突起部38へのシールブーツ50の取付作業を容易にできる。
【0040】
以上のように構成される走行装置10の軸受31,32にグリスを給脂する給脂作業を行う場合には、走行装置10(
図1参照)を操舵して、各走行装置10のグリスニップル17を荷台2の外側方向に向ける。次いで、各走行装置10の緩衝装置13(
図2(a)参照)を収縮させて、荷台2を下降させ、グリスニップル17を斜め上方に向ける。これはグリスニップル17を視認し易くするためである。先端に被装されたキャップ17aを脱着した後、グリスニップル17にグリスガン等を接続して圧力をかけると、グリスニップル17から給脂管37にグリスが注入され、ニップル36、軸方向路14c、径方向路14dを通って空間30にグリスが充填される。グリスニップル17に圧力をかけ続けると、軸受31,32に形成された油溝31aを通ってグリスは支軸14の軸方向に拡げられる。さらにグリスニップル17に圧力をかけ続けることで、グリスは、外筒15と押え部材35との隙間から保持空間42内に流入し、保持空間42に充填される。保持空間42にグリスが充填されてグリスが注入されなくなったら、グリスニップル17からグリスガン等を取り外す。
【0041】
本実施の形態によれば、給脂管37は、ニップル36に一端側が連通し支軸14の軸方向外側に他端側が延設される。給脂管37の他端にグリスニップル17が接続されるので、支軸14の先端から軸方向外側に離れた位置にグリスニップル17を設けることができる。その結果、グリスガン等をグリスニップル17に接続する給脂作業を、車輪20(
図2(b))や荷台2に妨げられ難くできるので、給脂作業時の作業性を向上できる。
【0042】
また、外筒15の軸方向先端に設けられた有底筒状のカバー部16と支軸14の先端14aとの間にグリスの保持空間42が形成される。カバー部16の底部に貫通形成された孔部16aに、支軸14の軸線O上に配置された給脂管37が挿通される。給脂管37とカバー部16との間にグリスの漏洩を防ぐシールブーツ50(シール部材)が装着されるので、保持空間42の密閉性を確保できる。支軸14の先端14aとカバー部16との間(保持空間42)にグリスが充填されることにより、支軸14の先端側からの異物の侵入を防止すると共に錆の発生を防止できる。
【0043】
支軸14やカバー部16の製作誤差や組立誤差(外筒15にカバー部16をボルトで締結固定するときの位置ずれ)等に起因して給脂管37及び筒状突起部38に芯ずれが生じている場合には、支軸14に対して軸線Oを中心に外筒15が回動(揺動)すると、給脂管37と筒状突起部38との隙間の大きさが変化する。しかし、給脂管37と筒状突起部38との間にシールブーツ50が介設されているので、シール本体部53(円弧部53a)が弾性変形することにより、芯ずれに伴う隙間を生じ難くでき、給脂管37及び筒状突起部38の芯ずれのばらつきを吸収できる。その結果、組立誤差等に左右されることなく、カバー部16と支軸14の先端14aとの間に形成されるグリスの保持空間42の密閉性を確保できる。
【0044】
支軸14に対して外筒15が回動(揺動)すると、シールブーツ50に軸線Oを中心とするねじり力が働く。その結果、シールブーツ50の小径シール部51又は大径シール部52の一方は給脂管37又は筒状突起部38に締め付け固定され、小径シール部51又は大径シール部52の他方は給脂管37又は筒状突起部38の外周を摺動する。給脂管37及び筒状突起部38の硬度はカバー部16の硬度より大きく設定されているので、筒状突起部38がカバー部16と一体形成されて筒状突起部38とカバー部16との硬度が同一に設定される場合と比較して、大径シール部52の摺動によって筒状突起部38が摩損することを防止できる。
【0045】
次に
図5を参照して、第2実施の形態、第3実施の形態および第4実施の形態について説明する。第1実施の形態では、グリスニップル17が直管状に形成される場合について説明した。これに対し第2実施の形態では、グリスニップル67が約65°に屈曲された曲がり管を有する場合について説明し、第3実施の形態では、グリスニップル77が略直角に屈曲された曲がり管を有する場合について説明する。また、第4実施の形態では、略直角に屈曲された管継手81が給脂管37に接続され、管継手81及びホース82を介してグリスニップル84が給脂管37に接続される場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、第1実施の形態と同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図5(a)は第2実施の形態における走行装置60の部分側面図であり、
図5(b)は第3実施の形態における走行装置70の部分側面図であり、
図5(c)は第4実施の形態における走行装置80の部分側面図である。
【0046】
図5(a)に示す第2実施の形態における走行装置60は、グリスニップル67が約65°に屈曲された曲がり管を有している。軸線Oを通る鉛直面上に曲がり管が位置し、グリスニップル67の先端が上方を向いて配置される。これにより、給脂作業時にグリスニップル67にグリスガン等を接続し易くできるので、給脂作業時の作業性をさらに向上できる。
【0047】
図5(b)に示す第3実施の形態における走行装置70は、グリスニップル77が略直角に屈曲された曲がり管を有している。軸線Oを通る鉛直面上に曲がり管が位置し、グリスニップル77の先端が上方を向いて配置される。フレキシブルホース等のグリス供給用の延長管(図示せず)をグリスニップル77の先端に接続した場合に、延長管を支軸14の軸直角方向に延設させることができ、延長管が支軸14の軸方向に張り出すことを防止できる。
【0048】
図5(c)に示す第4実施の形態における走行装置80は、給脂管37の先端に、略直角に屈曲された管継手81の一端が接続される。管継手81の他端に柔軟なホース82が接続され、ホース82の先端が継手83の一端に接続される。継手83は、制動装置21(
図2(a)参照)に設けられたホース固定部材85に固定されている。継手83の他端にグリスニップル84が接続される。グリスニップル84は、約65°に屈曲された曲がり管を有しているので、先端が上向きとなる。第4実施の形態によれば、ホース82を用いることによってグリスニップル84を制動装置21の高さに配置できるので、給脂作業をより楽にできる。
【0049】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、上記実施の形態で挙げた数値(例えば荷台2に配列される走行装置10の数)は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
【0050】
上記各実施の形態では、支軸14の内部に給脂路(軸方向路14c及び径方向路14d)が形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、支軸14の先端14a及び外周面14bに溝を形成して、その溝をグリスの供給路(給脂路)とすることは当然可能である。
【0051】
上記各実施の形態では、外筒15とカバー部16とが別部材によって形成され、外筒15にカバー部16を配置する場合について説明した。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、外筒15とカバー部16とを一体形成する(一部材とする)ことは当然可能である。外筒15とカバー部16とを一体形成することにより、部品点数を削減できると共に、外筒15に対するカバー部16の組立誤差をなくすことができる。
【0052】
上記各実施の形態では、カバー部16と筒状突起部38とが別部材によって形成され、カバー部16に筒状突起部38を配置する場合について説明した。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、カバー部16と筒状突起部38とを一体形成する(一部材とする)ことは当然可能である。カバー部16と筒状突起部38とを一体形成することにより、部品点数を削減できる。
【0053】
上記各実施の形態では、給脂管37と筒状突起部38との間にシールブーツ50を介設する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、オイルシール(支軸14及び外筒15の軸方向基端部に配置されるオイルシール34のようなシール部材)を、シールブーツ50に代えて、給脂管37と筒状突起部38との間に配置することは当然可能である。
【0054】
上記各実施の形態では、シールブーツ50の大径シール部52が筒状突起部38の外周面を締め付ける場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、シールブーツ50の大径シール部で、筒状突起部38の内周面を径方向外側に向けて圧接することは当然可能である。この場合には、大径シール部およびシール本体部に金属リングを一体形成して、大径シール部の剛性を向上させることが望ましい。
【0055】
上記各実施の形態では、シールブーツ50の小径シール部51が給脂管37の外周面を締め付ける場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、シールブーツ50のシール本体部53の軸方向長さを大きくすると共に小径シール部51の内径を小さくして、小径シール部51でグリスニップル17の外周面を締め付けるようにすることは当然可能である。
【0056】
上記各実施の形態では、給脂管37及び筒状突起部38をカバー部16と異なる材質で形成して、給脂管37及び筒状突起部38の硬度をカバー部16より大きく設定する場合について説明した。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、表面処理によって給脂管37及び筒状突起部38の表面(シールブーツ50等のシール部材が密接する面)の硬度を上げることは当然可能である。
【0057】
上記各実施の形態では、荷台2の長手方向両側に運転室3,4が配設される運搬車両1に用いられる走行装置10,60,70,80について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の運搬車両に走行装置10,60,70,80を用いることは当然可能である。他の運搬車両としては、例えば荷台2の長手方向の一方に運転室3が配設される運搬車両、荷台2に運転室3が着脱可能に構成されるユニットキャリア式の運搬車両などが挙げられる。また、無人運転が可能な運搬車両(運転室3,4を要しないもの)に適用することは当然可能である。なお、上記各実施の形態では説明を省略したが、走行装置10,60,70,80の駆動方式は、油圧モータ、電動モータ(電動機)等、適宜設定することが可能である。
【0058】
上記各実施の形態では、緩衝装置13が油圧シリンダを備える場合について説明したが、これに限られるものではなく、他の機構を採用することは当然可能である。他の機構としては、例えばコイルばね、空気ばね等が挙げられる。
【0059】
上記各実施の形態では説明を省略したが、筒状突起部38と給脂管37との間に異物の侵入を防ぐためのシール材を充填することは可能である。シール材としては、例えば、液状ガスケットによって略円筒状に形成されるものが挙げられる。
【0060】
上記第4実施の形態では、制動装置21(
図2(a)参照)が配置される制動用の走行装置80のイコライザの構造を説明したので、制動装置21に設けられたホース固定部材85に継手83を固定し、その継手83の他端にグリスニップル84を接続した。モータ(駆動装置)が配置される駆動用の走行装置については説明を省略したが、この場合には、モータ(駆動装置)を固定するブラケット(ホース固定部、図示せず)に継手を固定し、その継手にグリスニップルを接続することができる。なお、制動装置や駆動装置に設けられたブラケットにホース固定部材を設けるものに限定するものではない。例えば、支軸14や、荷台2に対し鉛直軸を中心にして支軸14と一体に回動するスイングアーム12等の部材にブラケットを設け、そのブラケットにホース固定部材を設けることは当然可能である。