特許第6240517号(P6240517)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240517
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】アンテナ装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/40 20060101AFI20171120BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   H01Q1/40
   H01Q1/22 D
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-11859(P2014-11859)
(22)【出願日】2014年1月24日
(65)【公開番号】特開2015-139209(P2015-139209A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2016年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】山口 佑一郎
(72)【発明者】
【氏名】千葉 洋
(72)【発明者】
【氏名】西脇 賢治
【審査官】 橘 均憲
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04733245(US,A)
【文献】 特開2013−219757(JP,A)
【文献】 特開平02−048802(JP,A)
【文献】 特開平09−051225(JP,A)
【文献】 実開平06−081114(JP,U)
【文献】 特開平09−098006(JP,A)
【文献】 実公昭54−017114(JP,Y1)
【文献】 特開平07−131224(JP,A)
【文献】 特開平07−131223(JP,A)
【文献】 米国特許第03613098(US,A)
【文献】 米国特許第04132995(US,A)
【文献】 実開平06−038308(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q1/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板面にアンテナ配置凹部を有する樹脂製かつ板状の第1部材と、
前記アンテナ配置凹部に配置された平面アンテナと、
前記アンテナ配置凹部に嵌合され、前記平面アンテナを前記第1部材との間に挟み込む樹脂製かつ板状の第2部材と、
前記アンテナ配置凹部に嵌合された前記第2部材を覆うとともに前記アンテナ配置凹部を封止する樹脂製の第3部材とを備え
前記第1部材は、前記アンテナ配置凹部の底部に相当する薄板部と、前記アンテナ配置凹部の周りの厚板部とを有し、
前記アンテナ配置凹部に配置された前記平面アンテナから前記厚板部の表面までの第1の距離は、前記平面アンテナから前記第1部材の前記アンテナ配置凹部が形成されている面とは反対側の面までの第2の距離よりも長くなっていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記第2部材は、前記平面アンテナとの対向面に、前記平面アンテナに接続されているケーブルを配置するケーブル配置溝を有し、前記ケーブル配置溝に前記ケーブルが配置されていることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第1部材は、前記アンテナ配置凹部の底部に相当する薄板部と、前記アンテナ配置凹部の周りの厚板部とを有し、前記厚板部の表面にケーブル配置溝を有し、前記ケーブル配置溝に前記平面アンテナに接続されているケーブルが配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第1部材の前記ケーブル配置溝は湾曲していることを特徴とする請求項3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記第1部材は、前記アンテナ配置凹部の底部に相当する薄板部と、前記アンテナ配置凹部の周りの厚板部とを有し、前記厚板部には、前記アンテナ配置凹部から前記第1部材の側端面に貫通するケーブル通過孔が形成され、前記平面アンテナに接続されているケーブルが前記ケーブル通過孔から前記第1部材の外部に引き出され、
前記ケーブル通過孔内には、前記ケーブル通過孔の孔壁と前記ケーブルとの間をシールするシール部材が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記第3部材が自動車のピラーの金属部材の外面側に配置され、前記第1部材の外面が自動車の前記ピラーの外面になっていることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
平面アンテナと、前記平面アンテナを収容可能なアンテナ配置凹部を有する樹脂製かつ板状の第1部材と、前記アンテナ配置凹部に嵌合可能な樹脂製かつ板状の第2部材とを準備する第1の工程と、
前記第1部材のアンテナ配置凹部に前記平面アンテナを配置する第2の工程と、
前記アンテナ配置凹部に、前記平面アンテナの上から前記第2部材を嵌合させて、前記平面アンテナを前記第1部材と前記第2部材との間に挟み込む第3の工程と、
前記第3の工程にて組み付けられた前記第1部材、前記平面アンテナおよび前記第2部材を金型内に配置し、射出成形により、前記アンテナ配置凹部に嵌合された前記第2部材を覆うとともに前記アンテナ配置凹部を封止する樹脂製の第3部材を形成する第4の工程とを備え
前記第4の工程において、前記第3部材を射出成形する際の溶融樹脂の注入ゲートの位置は、前記平面アンテナのケーブルの半田付部の位置に対して、前記ケーブルの引き出し方向とは反対方向の位置に設定することを特徴とするアンテナ装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車に搭載されるアンテナ装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車には、ラジオ、テレビ、GPSおよび各種通信端末装置など、多くの送受信装置が搭載されおり、さらに、これら送受信装置によって使用されるアンテナ装置が搭載されている。この種のアンテナ装置は、車内に設置される場合を除いて、防水機能が要求される。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されているアンテナ装置は、薄板形状のアンテナエレメントの両面を防水フィルムにて覆った構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−50886号公報(2010年3月4日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のアンテナ装置では、薄板形状のアンテナエレメントの両面を単に防水フィルムにて覆った構造であるため、アンテナエレメントが例えばフレキシブルフィルムに設けられている場合、自動車等における設置場所によっては、形状が変形しやすく、所望の特性を維持し難くなるという問題点を招来する。
【0006】
また、アンテナの変形を防止するために、例えば、剛性を有する厚手の板部材にアンテナパターンを形成して、その上から樹脂モールド等で防水加工し、それを樹脂製の車載部品に組み込もうとすると、車載部品の厚みが増大してしまう。一方、例えばMID(Molded Interconnect Devices)などを使用し、樹脂製の車載部品に直接アンテナパターンを形成する方法もあるが、その場合は高価になるという問題点を有している。
【0007】
したがって、本発明は、防水機能を備えるとともに、アンテナの変形を防止して所望の特性を維持でき、かつ汎用のアンテナを使用して安価な構成とすることができるアンテナ装置およびその製造方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明のアンテナ装置は、板面にアンテナ配置凹部を有する樹脂製かつ板状の第1部材と、前記アンテナ配置凹部に配置された平面アンテナと、前記アンテナ配置凹部に嵌合され、前記平面アンテナを前記第1部材との間に挟み込む樹脂製かつ板状の第2部材と、前記アンテナ配置凹部に嵌合された前記第2部材を覆うとともに前記アンテナ配置凹部を封止する樹脂製の第3部材とを備えていることを特徴としている。
【0009】
上記の構成によれば、第1部材のアンテナ配置凹部に配置された平面アンテナは、平面アンテナの上からアンテナ配置凹部に嵌合された第2部材によって第1部材との間に挟み込まれて固定され、さらに平面アンテナが配置されたアンテナ配置凹部は第3部材により封止されている。
【0010】
これにより、アンテナ装置は、防水機能を備えるとともに、アンテナの変形を防止して所望の特性を維持でき、かつ汎用のアンテナを使用して安価な構成とすることができる。
【0011】
上記のアンテナ装置において、前記第2部材は、前記平面アンテナとの対向面に、前記平面アンテナに接続されているケーブルを配置するケーブル配置溝を有し、前記ケーブル配置溝に前記ケーブルが配置されている構成としてもよい。
【0012】
上記の構成によれば、ケーブルは、第2部材のケーブル配置溝により固定されているので、ケーブルの移動によるアンテナ特性の劣化が防止され、安定したアンテナ特性を得ることができる。
【0013】
上記のアンテナ装置において、前記第1部材は、前記アンテナ配置凹部の底部に相当する薄板部と、前記アンテナ配置凹部の周りの厚板部とを有し、前記厚板部の表面にケーブル配置溝を有し、前記ケーブル配置溝に前記平面アンテナに接続されているケーブルが配置されている構成としてもよい。
【0014】
上記の構成によれば、ケーブルは、第1部材における厚板部のケーブル配置溝により固定されているので、ケーブルの移動によるアンテナ特性の劣化が防止され、安定したアンテナ特性を得ることができる。
【0015】
上記のアンテナ装置において、前記厚板部の前記ケーブル配置溝は湾曲している構成としてもよい。
【0016】
上記の構成によれば、第1部材における厚板部のケーブル配置溝は湾曲しているので、ケーブルに外部への引張り力が加わった場合に、その引張り力がケーブルと平面アンテナとの接続部(例えば半田付部)にまで及び難くなっている。したがって、外部への引張り力により、平面アンテナとの接続部からのケーブルの抜けを防止することができる。
【0017】
上記のアンテナ装置において、前記第1部材は、前記アンテナ配置凹部の底部に相当する薄板部と、前記アンテナ配置凹部の周りの厚板部とを有し、前記厚板部には、前記アンテナ配置凹部から前記第1部材の側端面に貫通するケーブル通過孔が形成され、前記平面アンテナに接続されているケーブルが前記ケーブル通過孔から前記第1部材の外部に引き出され、前記ケーブル通過孔内には、前記ケーブル通過孔の孔壁と前記ケーブルとの間をシールするシール部材が設けられている構成としてもよい。
【0018】
上記の構成によれば、ケーブルは、第1部材における厚板部のケーブル通過孔により固定されているので、ケーブルの移動によるアンテナ特性の劣化が防止され、安定したアンテナ特性を得ることができる。
【0019】
また、ケーブル通過孔内に設けられたシール部材によって、ケーブル通過孔の孔壁とケーブルとの間がシールされることにより、アンテナ配置凹部内への浸水が防止され、アンテナ装置の防水性を確保することができる。
【0020】
上記のアンテナ装置において、前記第1部材は、前記アンテナ配置凹部の底部に相当する薄板部と、前記アンテナ配置凹部の周りの厚板部とを有し、前記アンテナ配置凹部に配置された前記平面アンテナから前記厚板部の表面までの第1の距離は、前記平面アンテナから前記第1部材の前記アンテナ配置凹部が形成されている面とは反対側の面までの第2の距離よりも長くなっている構成としてもよい。
【0021】
上記の構成によれば、アンテナ配置凹部に配置された平面アンテナから厚板部の表面までの第1の距離は、平面アンテナから第1部材のアンテナ配置凹部が形成されている面とは反対側の面までの第2の距離よりも長くなっている。したがって、アンテナ装置を例えば自動車の金属部材(例えばピラー)上に設置する場合において、第1部材の外面が外方を向くように配置すれば、金属部材から平面アンテナを離すことができ、放射特性の劣化を防止することができる。また、平面アンテナから第1部材のアンテナ配置凹部が形成されている面とは反対側の面までの薄い板厚(相対的に短い第2の距離)によって、平面アンテナからの電磁波の放射を効率よく行うことができる。
【0022】
また、アンテナ配置凹部に嵌合される第2部材は、第2の距離よりも長い第1の距離に相当する厚さを有することができるので、例えば射出成形によって第3の部材を形成する場合に、溶融した樹脂の熱が平面アンテナに伝わり難くなり、平面アンテナを保護することができる。
【0023】
上記のアンテナ装置は、前記第3部材が自動車のピラーの金属部材の外面側に配置され、前記第1部材の外面が自動車の前記ピラーの外面になっている構成としてもよい。
【0024】
上記の構成によれば、第1部材、第2部材および第3部材を自動車のピラーの外装部品として形成し、防水機能を備え、所望の特性を維持でき、安価な構成のアンテナ装置を好適に自動車に搭載することができる。
【0025】
本発明のアンテナ装置の製造方法は、平面アンテナと、前記平面アンテナを収容可能なアンテナ配置凹部を有する樹脂製かつ板状の第1部材と、前記アンテナ配置凹部に嵌合可能な樹脂製かつ板状の第2部材とを準備する第1の工程と、前記第1部材のアンテナ配置凹部に前記平面アンテナを配置する第2の工程と、前記アンテナ配置凹部に、前記平面アンテナの上から前記第2部材を嵌合させて、前記平面アンテナを前記第1部材と前記第2部材との間に挟み込む第3の工程と、前記第3の工程にて組み付けられた前記第1部材、前記平面アンテナおよび前記第2部材を金型内に配置し、射出成形により、前記アンテナ配置凹部に嵌合された前記第2部材を覆うとともに前記アンテナ配置凹部を封止する樹脂製の第3部材を形成する第4の工程とを備えていることを特徴としている。
【0026】
上記の構成によれば、第1部材のアンテナ配置凹部に配置された平面アンテナは、平面アンテナの上からアンテナ配置凹部に嵌合された第2部材によって第1部材との間に挟み込まれて固定され、さらに射出成形によって、平面アンテナが配置されたアンテナ配置凹部が第3部材により封止される。
【0027】
これにより、アンテナ装置は、防水機能を備えるとともに、アンテナの変形を防止して所望の特性を維持でき、かつ汎用のアンテナを使用して安価な構成とすることができる。
【0028】
また、第4の工程において射出成形により第3部材を形成する際、平面アンテナは、第1部材と第2部材に挟み込まれて固定されているため、金型内に注入された溶融樹脂の流れによって位置ズレすることがなく、また金型内に注入された高温の溶融樹脂の熱は、第2の部材を介在させて平面アンテナに伝わるため、溶融樹脂の熱から平面アンテナを保護することができる。
【0029】
上記のアンテナ装置の製造方法は、前記第4の工程において、前記第3部材を射出成形する際の溶融樹脂の注入ゲートの位置が、前記平面アンテナのケーブルの半田付部の位置に対して、前記ケーブルの引き出し方向とは反対方向の位置に設定する構成としてもよい。
【0030】
上記の構成によれば、高温の溶融樹脂が注入される位置が、ケーブルおよび半田付部の位置から離れ、金型内に注入された高温の溶融樹脂の熱からケーブルおよび半田付部を保護することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の構成によれば、アンテナ装置は、防水機能を備えるとともに、アンテナの変形を防止して所望の特性を維持でき、かつ汎用のアンテナを使用して安価な構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施の形態のアンテナ装置を示す分解斜視図である。
図2図1に示したアンテナ装置をBピラーに搭載した自動車を示す斜視図である。
図3】本発明の実施の形態のアンテナ装置を示す斜視図である。
図4図3におけるA−A線矢視断面であってアンテナ装置の各部の厚みの一例を示したものである。
図5図1に示した外面部板部材に対して平面アンテナおよび中間部板部材を固定する構造の他の例を示すアンテナ装置の要部の縦断面図である。
図6図1に示した厚板部のケーブル配置溝に代えて、ケーブル通過孔が形成されている外面部板部材の要部の斜視図である。
図7図6に示したケーブル通過孔における防水構造、および同軸ケーブルの抜け止め構造を示す外面部板部材の要部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施の形態を図面に基づいて以下に説明する。
【0034】
(アンテナ装置1の構成の概要)
図1は本発明の実施の形態のアンテナ装置1を示す分解斜視図である。図2は、図1に示したアンテナ装置1をBピラーに搭載した自動車2を示す斜視図である。図3は、本発明の実施の形態のアンテナ装置1を示す斜視図である。
【0035】
本実施の形態において、アンテナ装置1は図1に示した構成を有し、図2に示す自動車2のBピラー3に搭載されている。
【0036】
図1に示すように、アンテナ装置1は、外面部板部材(第1部材)11、平面アンテナ12、中間部板部材(第2部材)13および内面部板部材(第3部材)14を備えている。これら各部材は、Bピラー3の形状に適合するように形成され、湾曲している。
【0037】
また、アンテナ装置1は、自動車2のBピラー3のBピラーカバー(樹脂製の車載部品)として機能し、Bピラー3において、車体(金属部分)の外周面に沿わせて取り付けられる。
【0038】
(外面部板部材11)
外面部板部材11は、Bピラー3の外面を構成するものであり、平面アンテナ12の形状に対応した略長方形のアンテナ配置凹部21を内面(板面)に有している。したがって、外面部板部材11は、アンテナ配置凹部21の底壁に相当する薄板部22と、アンテナ配置凹部21の周壁に相当し、長方形の枠形状となっている厚板部23とを有している。
【0039】
アンテナ配置凹部21の深さは、アンテナ配置凹部21に平面アンテナ12および中間部板部材13を配置した場合、中間部板部材13の内面(図1では上面)の高さが厚板部23の内面(図1では上面)の高さと一致するように設定されている。
【0040】
厚板部23のアンテナ配置凹部21を囲む内壁面には、厚板部23を切り欠いた形状の嵌合凹部23aが形成されている。嵌合凹部23aは、アンテナ配置凹部21を囲む4つの内壁面のうち、外面部板部材11の長手方向に延びた、対向する2つの内壁面にそれぞれ2個所形成されている。
【0041】
また、長方形の枠形状を有する厚板部23の、外面部板部材11の幅方向に延びる2つの枠部分の一方には、ケーブル配置溝23bが形成されている。ケーブル配置溝23bは、枠部分を横切るように、アンテナ配置凹部21から外面部板部材11の長手方向の端面に達している。また、ケーブル配置溝23bは、外面部板部材11の幅方向に湾曲(例えばS字形に湾曲)している。なお、ケーブル配置溝23bが形成されている枠部分は、外面部板部材11をBピラー3に取り付けた場合、外面部板部材11の下部となる。
【0042】
(平面アンテナ12)
平面アンテナ12は、例えば、長方形のFPC(Flexible Printed Circuits)にアンテナパターンが形成されたものである。なお、平面アンテナ12の形状は、長方形に限定されず、アンテナ装置1の配置形態に応じて適宜設定することができる。
【0043】
平面アンテナ12には同軸ケーブル15が接続されている。同軸ケーブル15は、半田付部16において平面アンテナ12と半田付けされ、平面アンテナ12の長手方向に引き出されている。なお、同軸ケーブル15としては、高い耐熱性を有するPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やFEP(テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体)などのテフロン(登録商標)系の樹脂にて被覆されたものを使用することが好ましい。
【0044】
(中間部板部材13)
中間部板部材13は、外面部板部材11のアンテナ配置凹部21に対応した形状を有し、側面の4個所に、外面部板部材11の嵌合凹部23aに嵌合される嵌合凸部13aを有している。また、平面アンテナ12との対向面には、同軸ケーブル15および半田付部16が配置されるケーブル配置溝13bを有している。
【0045】
(内面部板部材14)
内面部板部材14は、縦横の寸法が外面部板部材11の縦横の寸法とほぼ同一である。内面部板部材14の内面(図1では上面)には、射出成形によって内面部板部材14を形成した場合のゲートの位置に対応したゲート痕14aが生じている。ゲート痕14aは、平面アンテナ12の半田付部16に対応する位置に対して、同軸ケーブル15の引き出し方向とは反対方向の位置に存在している。
【0046】
(各部材の組み付け状態)
上記の各部材を組み付けてアンテナ装置1を完成した状態は、図3に示すものとなる。図3の状態では、図1に示したように、外面部板部材11のアンテナ配置凹部21に平面アンテナ12が配置されている。同軸ケーブル15は外面部板部材11のケーブル配置溝23bに配置されている。平面アンテナ12の上には中間部板部材13が配置されている。中間部板部材13の嵌合凸部13aは、外面部板部材11の嵌合凹部23aに嵌合されている。中間部板部材13のケーブル配置溝13bには、同軸ケーブル15が配置されている。ケーブル配置溝13bおよび外面部板部材11の厚板部23の上には内面部板部材14が設けられている。内面部板部材14は、アンテナ配置凹部21を封止し、アンテナ装置1すなわち平面アンテナ12の防水性を確保している。
【0047】
(アンテナ装置1の各部材の厚みの一例)
次に、アンテナ装置1の各部材の厚みの一例について示す。アンテナ装置1の各部材の厚みは、例えば図4のように設定することができる。図4図3におけるA−A線矢視断面であってアンテナ装置1の各部の厚みの一例を示したものである。
【0048】
図4に示すように、アンテナ装置1では、アンテナ配置凹部21の底壁部に相当する外面部板部材11の薄板部22の厚みを薄くすることにより、平面アンテナ12は、アンテナ装置1における厚み方向の中央位置よりも、アンテナ装置1の外面寄り位置に配置されている。すなわち、アンテナ配置凹部21に配置された平面アンテナ12から厚板部23の表面までの第1の距離は、平面アンテナ12から外面部板部材11のアンテナ配置凹部21が形成されている面とは反対側の面までの第2の距離よりも長くなっている。
【0049】
これにより、アンテナ装置1を自動車2のBピラー3に取付け、金属部分(車体)に内面部板部材13を沿わせて配置したときに、アンテナ配置凹部21に配置された平面アンテナ12は、金属部分から離れるように設定されている。
【0050】
なお、図4に示すアンテナ装置1では、アンテナ装置1の厚みLは、外面部板部材11の厚板部23の厚みLと内面部板部材14の厚みLの和であり、外面部板部材11の厚板部23の厚みLは、外面部板部材11の薄板部の厚みLと平面アンテナ12の厚みLと中間板部材13の厚みLの和であり、アンテナ配置凹部21の深さは、平面アンテナ12の厚みLと中間板部材13の厚みLの和となるように各部材の厚みが設定されている。また、アンテナ配置凹部21の深さは、アンテナ配置凹部21に平面アンテナ12を配置したときに、平面アンテナ12から厚板部23の表面までの第1の距離(中間板部材13の厚みLと同等)が、平面アンテナ12から外面部板部材11のアンテナ配置凹部21が形成されている面とは反対側の面までの第2の距離(薄板部の厚みLに相当)よりも長くなるように設定されている。
【0051】
(アンテナ装置1の各部材の樹脂材料の一例)
次に、アンテナ装置1の各部材の形成に使用される樹脂の一例について説明する。平面アンテナ12および同軸ケーブル15を除く、アンテナ装置1の上記の各部材の樹脂材料には、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、ABSあるいはポリカーボネートを使用することができる。その他、例えば、ポリブチレンテレフタレートPBT)等のポリエステル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン等のポリオレフィン、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン(PSU)、ポリケトン(PK)、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、フェノキシ樹脂、フッ素系樹脂、これら系統の熱可塑エラストマー等、これらの共重合体、変性体などの熱可塑性樹脂成分が、単独または2種類以上ブレンドされた樹脂を使用することができる。なお、各部材には、同一の樹脂、あるいは互いに異なる樹脂を適宜使用することができる。
【0052】
(アンテナ装置1の製造方法)
上記の構成において、アンテナ装置1の製造方法について、以下に説明する。
図1に示したアンテナ装置1の各部材のうち、内面部板部材14を除く外面部板部材11、平面アンテナ12(同軸ケーブル15を含む)および中間部板部材13はあらかじめ形成されたものを用意する(第1の工程)。
【0053】
これら外面部板部材11、平面アンテナ12および中間部板部材13は、前述のように、外面部板部材11のアンテナ配置凹部21に平面アンテナ12を配置した後(第2の工程)、その上から中間部板部材13を配置した状態とする(第3の工程)。同軸ケーブル15は、中間部板部材13のケーブル配置溝13b、および外面部板部材11のケーブル配置溝23bに配置した状態とする。
【0054】
次に、上記のように組み付けた外面部板部材11、平面アンテナ12および中間部板部材13を、内面部板部材14を形成するように準備した射出成形型のキャビティ内に配置する。その後、射出成形を行って、外面部板部材11の厚板部23および中間部板部材13の内面(図1では上面)に内面部板部材14を形成する(第4の工程)。これにより、外面部板部材11の厚板部23および中間部板部材13の内面(図1では上面)すなわちアンテナ配置凹部21が内面部板部材14によって封止される。
【0055】
(アンテナ装置1の利点)
上記のように、アンテナ装置1は、外面部板部材11のアンテナ配置凹部21に配置され平面アンテナ12が中間部板部材13によって固定され、外面部板部材11の厚板部23および中間部板部材13の内面すなわちアンテナ配置凹部21が内面部板部材14によって封止されている。
【0056】
これにより、アンテナ装置1は、汎用品を使用した安価な構成としながら防水性を確保でき、かつコンパクトな構成となっている。したがって、自動車2の外装品(車載部品)に好適に備えることができる。
【0057】
すなわち、アンテナ装置1では、外面部板部材11のアンテナ配置凹部21に配置され平面アンテナ12が中間部板部材13によって固定されるので、安価な汎用の平面アンテナ12を使用していても、平面アンテナ12が変形することなく、所望の特性を維持することができる。
【0058】
また、アンテナ装置1では、外面部板部材11の厚板部23および中間部板部材13の内面、すなわちアンテナ配置凹部21が内面部板部材14によって封止されるので、アンテナ配置凹部21内に配置されている汎用の平面アンテナ12の防水性を確保することができる。
【0059】
また、アンテナ装置1では、汎用の平面アンテナ12(例えばアンテナパターンを形成したFPC)を使用して薄型に形成できるので、安価かつコンパクトな構成とすることができる。
【0060】
すなわち、アンテナ装置1では、高い剛性を有する厚手の平面アンテナ12を使用しなくても、平面アンテナ12を外面部板部材11と中間部板部材13とで挟み込んで固定しているため、アンテナパターンの変形を防止できる。なお、薄型のアンテナ装置1を形成するためには、薄手の平面アンテナ12を使用することが好ましい。薄手の平面アンテナ12としては、アンテナパターンが形成されたFPCに限定されるものではなく、薄型のPCB(Printed Circuit Board)であっても良い。
【0061】
また、アンテナ装置1では、アンテナ配置凹部21を封止する内面部板部材14によって平面アンテナ12の防水性が確保されている。
【0062】
このため、アンテナ装置1を、例えば、自動車2のBピラー3における金属部分に取り付けられるBピラーカバー(樹脂製の車載部品)として用いることができ、その場合、アンテナ機能を有する薄型のBピラーカバーを実現できる。
【0063】
なお、アンテナ装置1では、例えばMIDなど、樹脂製の車載部品に直接アンテナパターンを形成する方法を用いず、汎用の平面アンテナ12を使用した構成であるため、安価な構成とすることができる。
【0064】
このように、アンテナ装置1では、汎用の平面アンテナ12を使用しているので安価である。また、外面部板部材11、中間部板部材13および内面部板部材14によって車載部品を構成することができるので、車載部品の厚みの増大を防止し、かつ所望の防水性を確保することができる。
【0065】
また、同軸ケーブル15は、中間部板部材13のケーブル配置溝13b、および外面部板部材11のケーブル配置溝23bにより固定されている。したがって、アンテナ装置1は、同軸ケーブル15の移動によるアンテナ特性の劣化が防止され、安定したアンテナ特性を得ることができる。
【0066】
また、外面部板部材11のケーブル配置溝23bは例えばS字形に湾曲しているので、同軸ケーブル15に外部への引張り力が加わった場合に、その引張り力が半田付部16にまで及び難くなっている。したがって、外部への引張り力による半田付部16からの同軸ケーブル15の抜けが防止されている。
【0067】
また、図4に示すように、平面アンテナ12の位置に対するアンテナ装置1の外面側には、外面部板部材11の薄板部22が存在し、内面側には、中間部板部材13および内面部板部材14が存在する。すなわち、平面アンテナ12は、アンテナ装置1において、内面よりも外面に近い位置に配置され、かつBピラー3の金属部材から離されている。
【0068】
したがって、アンテナ装置1は、外面部板部材11の薄板部22の樹脂層による電磁波の減衰が生じ難くなっている。また、金属部材に接近して配置されることによる放射特性の劣化が生じ難くなっている。これにより、良好な放射特性を維持することができる。
【0069】
また、アンテナ装置1は、平面アンテナ12の外面側が薄くなっているのに対して、内面側が厚くなっているので、全体として所望の強度を備えることができる。
【0070】
また、平面アンテナ12の外面部板部材11側とは反対側の面には中間部板部材13が配置され、同軸ケーブル15および半田付部16が中間部板部材13に覆われている。したがって、射出成形により、外面部板部材11の厚板部23および中間部板部材13の内面に内面部板部材14を形成する場合に、溶融している樹脂の熱が同軸ケーブル15および半田付部16に伝わり難くなっている。これにより、内面部板部材14を射出成形する場合に、樹脂の熱により同軸ケーブル15の被覆樹脂が劣化する事態、および半田付部16が溶融する事態が防止されている。
【0071】
また、ゲートから金型のキャビティ内に射出される溶融樹脂は、ゲート部分の温度が最も高くなる。そこで、内面部板部材14を射出成形する際のゲートの位置は、外面部板部材11の内面における平面アンテナ12の半田付部16に対応する位置に対して、同軸ケーブル15の引き出し方向とは反対方向の位置に設定することが好ましい。
【0072】
これにより、内面部板部材14を射出成形する場合の樹脂の熱は、同軸ケーブル15および半田付部16にさらに伝わり難くなっており、樹脂の熱により同軸ケーブル15の被覆樹脂が劣化する事態、および半田付部16が溶融する事態がさらに確実に防止されている。なお、射出成形により内面部板部材14を形成した場合、図3に示すように、内面部板部材14において、金型のゲートに対応する位置にゲート痕14aが生じている。
【0073】
また、外面部板部材11のアンテナ配置凹部21において、平面アンテナ12の上に配置された中間部板部材13は、外面部板部材11の嵌合凹部23に嵌合凸部13aが嵌合され、外面部板部材11との間において平面アンテナ12を挟み込んでいる。これにより、中間部板部材13の配置後に、外面部板部材11に対して中間部板部材13および平面アンテナ12が移動することがない。したがって、組み付けられた外面部板部材11、平面アンテナ12および中間部板部材13が射出成形金型のキャビティに配置される際あるいは配置された後に、平面アンテナ12が本来の位置から移動してしまい、その状態にて内面部板部材14により封止されてしまう事態を防止することができる。
【0074】
なお、外面部板部材11の嵌合凹部23aと中間部板部材13の嵌合凸部13aのとの関係は逆であってもよい。すなわち、外面部板部材11に嵌合凸部が形成され、中間部板部材13に嵌合凹部が形成されていてもよい。
【0075】
また、外面部板部材11に対して平面アンテナ12および中間部板部材13を固定する構造は、外面部板部材11の嵌合凹部23aと中間部板部材13の嵌合凸部13aとの嵌合構造に代えて、図5に示すものであってもよい。図5は、外面部板部材11に対して平面アンテナ12および中間部板部材13を固定する構造の他の例を示すアンテナ装置1の要部の縦断面図である。
【0076】
図5に示す構造では、中間部板部材13における平面アンテナ12との対向面に嵌合凸部13cが形成され、嵌合凸部13cは、平面アンテナ12の貫通孔を貫通し、外面部板部材11の薄板部22の上面に形成された嵌合凹部22aに嵌合される。
【0077】
なお、中間部板部材13の嵌合凸部13cと外面部板部材11の嵌合凹部22aとの関係は逆であってもよい。すなわち、中間部板部材13に嵌合凹部が形成され、外面部板部材11に嵌合凸部が形成されていてもよい。
【0078】
また、図6および図7に示すように、外面部板部材11の厚板部23には、ケーブル配置溝23bに代えて、ケーブル通過孔23cが形成されていてもよい。図6は、厚板部23にケーブル配置溝23bに代えてケーブル通過孔23cが形成されている外面部板部材11の要部の斜視図である。図7は、図6に示したケーブル通過孔23cにおける防水構造、およびシール部材17の抜け止め構造を示す外面部板部材11の要部の縦断面図である。
【0079】
図6に示すように、ケーブル通過孔23cは、厚板部23を外面部板部材11の長手方向に貫通しており、同軸ケーブル15を通して、外面部板部材11の外部に引き出すことができる。
【0080】
図7に示すように、ケーブル通過孔23cには、同軸ケーブル15と外面部板部材11の厚板部23との間をシールする、例えばゴム製のシール部材17が設けられている。これにより、アンテナ配置凹部21内すなわち平面アンテナ12の防水性が確保される。
【0081】
また、ケーブル通過孔23cの位置における外面部板部材11の厚板部23の外面には、シール部材17の抜止め部材18が設けられている。抜止め部材18は厚板部23の外面に接着され、かつ同軸ケーブル15の外周面に固定されている。
【0082】
これにより、アンテナ配置凹部21内の温度が上昇してアンテナ配置凹部21の圧力が高まった場合であっても、ケーブル通過孔23cからシール部材17が外部へ抜け出し、防水機能が低下する事態を防止することができる。なお、抜止め部材18は、外面部板部材11の厚板部23の外面ではなく、厚板部23の内面に設けられていてもよい。
【0083】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、車載用の成形品に組み込まれるアンテナ装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1 アンテナ装置
2 自動車
3 Bピラー
11 外面部板部材(第1部材)
12 平面アンテナ
13 中間部板部材(第2部材)
14 内面部板部材(第3部材)
14a ゲート痕
15 同軸ケーブル
16 半田付部
17 シール部材
18 抜止め部材
21 アンテナ配置凹部
22 薄板部
22a 嵌合凹部
23 厚板部
23a 嵌合凹部
23b ケーブル配置溝
23c ケーブル通過孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7