(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記保持工程において、複数の前記熱電変換部材の一端面を同一平面上に配置するとともに、他端面側を露出させることを特徴とする請求項2に記載の熱電変換素子の製造方法。
前記保持工程において、複数の前記熱電変換部材が嵌挿され且つ底面が同一平面上に配置された開口を備える保持部により、複数の前記熱電変換部材を保持することを特徴とする請求項3に記載の熱電変換素子の製造方法。
前記保持工程において、複数の前記熱電変換部材が嵌挿される貫通孔を含む嵌挿部と、前記嵌挿部に嵌挿されるとともに複数の前記熱電変換部材に当接して複数の前記熱電変換部材の一端面が同一平面上に位置するように位置決めする位置決め部とを備える保持部により、複数の前記熱電変換部材を保持することを特徴とする請求項3に記載の熱電変換素子の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、p型半導体又はn型半導体からなる熱電変換材料に電極を接合する場合に、熱電変換材料の寸法バラツキによって熱電変換材料と電極との間に接合強度等の接合バラツキを生じる。そのため、電極と熱電変換素子間の接合界面が容易に剥離して接合されていない部分ができたり、剥離しないまでも接合不良となって接合界面での熱的抵抗や電気的抵抗にバラツキを生じたりする原因となることがある。
【0007】
すなわち、熱電変換材料に電極を接合する際には、上下から加圧して電流を供給することになるが、熱電変換材料の寸法バラツキ(高さバラツキ)が存在することによって電極と熱電変換材料とが接合されていない状態が生じると、このような非接合部分における界面抵抗が大きくなり、当該非接合部分が発熱して部分的に温度が上がることになる。このような部分的な温度上昇は、熱電変換素子の熱電特性に影響を与えるおそれがある。また、電極と熱電変換材料の間に隙間ができると、プレスの際に荷重が集中される部分が生じ、荷重バランスが低下することになる。
【0008】
上述した熱電変換材料の寸法バラツキを少なくするために、熱電変換材料に追加の加工を加える方法がある。具体的には複数の熱電変換材料の一方端面を基準に配置し、複数の他方端面に対して同時に研削工程又は研磨工程を施すことで、個々の熱電変換素子の寸法バラツキを無くす(少なくする)ことができる。しかしながら、このような追加加工を行うと、熱電変換素子のコストが増加する問題が生じる。
【0009】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、熱電変換材料への追加加工を必要としないで、熱電変換材料の寸法バラツキに起因する熱電特性の低下及びプレス時の荷重バランスの低下を防止することができる熱電変換素子の製造方法、及び優れた熱電特性を備える熱電変換素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するべく、本発明の熱電変換素子の製造方法は、少なくとも1つの熱電変換部材の少なくとも一端
面及びその近傍の側面を露出させつつ前記熱電変換部材を保持する保持工程と、前記熱電変換部材の露出した
一端面及びその近傍の側面を金属粉末によって被覆する被覆工程と、前記金属粉末を焼結させて前記熱電変換部材の
一端面及びその近傍の側面に電極を形成する電極形成工程と、を有することを特徴とする。
【0011】
上記製造方法は、前記保持工程において、複数の前記熱電変換部材を並置させ、前記電極形成工程において、隣接する前記熱電変換部材の端部を前記電極によって電気的に接続してもよい。また、この場合に、前記保持工程において、複数の前記熱電変換部材の一端面を同一平面上に配置するとともに、他端面側を露出させてもよい。更に、当該他端面側を露出させる場合に、前記保持工程において、複数の前記熱電変換部材が嵌挿され且つ底面が同一平面上に配置された開口を備える保持部により、複数の前記熱電変換部材を保持してもよく、又は複数の前記熱電変換部材が嵌挿される貫通孔を含む嵌挿部と、前記嵌挿部に嵌挿されるとともに複数の前記熱電変換部材に当接して複数の前記熱電変換部材の一端面が同一平面上に位置するように位置決めする位置決め部とを備える保持部により、複数の前記熱電変換部材を保持してもよい。
【0012】
上記製造方法は、前記保持工程において、前記熱電変換部材の両
端面及びその近傍の側面を露出させつつ前記熱電変換部材を保持してもよい。この場合に、前記電極形成工程において、複数の前記熱電変換部材の両端のそれぞれに前記電極を独立して形成し、複数の前記熱電変換部材の保持を解除するとともに複数の前記熱電変換部材を並設し、隣接する前記熱電変換部材の電極を電気的に接続する接続工程を備えていてもよい。
【0013】
上記の目的を達成するべく、本発明の熱電変換素子は、並設された複数の熱電変換部材と、前記複数の熱電変換部材の両端部のそれぞれに接合された電極と、を有し、前記熱電変換部材の両端部に接合した前記電極の少なくとも一方は、前記熱電変換部材の
端面及びその近傍の側面を被覆するように設けられた金属粉末を焼結して形成されていることを特徴とする。
【0014】
上記熱電変換素子において、前記電極は、隣接する前記熱電変換部材の端部同士を電気的に接続してもよい。この場合、前記複数の熱電変換部材の一方の端面は、同一平面上に配置されるとともに、他方の端面側に接合された前記電極は、前記金属粉末を焼結して形成されていてもよい。更に、この場合に、前記熱電変換部材の両端部に接合した前記電極の双方は、前記熱電変換部材の
端面及びその近傍の側面を被覆するように設けられた前記金属粉末を焼結して形成されていてもよく、隣接する前記熱電変換部材の両端部に接合した前記電極同士を電気的に接続する接続部を有していてもよい。
【0015】
隣接する前記熱電変換部材の両端部に接合した前記電極同士を電気的に接続する接続部を有する場合、前記電極の形成面の表面形状は、湾曲していてもよい。
【発明の効果】
【0016】
以上のことから、本発明によれば、熱電変換材料の寸法バラツキに起因する熱電特性の低下及びプレス時の荷重バランスの低下を、熱電変換材料への追加加工を必要とせずに防止することができる熱電変換素子の製造方法、及び優れた熱電特性を備える熱電変換素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について、実施例に基づき詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。また、実施例の説明に用いる図面は、いずれも本発明による熱電変換素子及びその構成部材を模式的に示すものであって、理解を深めるべく部分的な強調、拡大、縮小、又は省略などを行っており、熱電変換素子及びその構成部材の縮尺や形状等を正確に表すものとはなっていない場合がある。更に、実施例で用いる様々な数値及び数量は、いずれも一例を示すものであり、必要に応じて様々に変更することが可能である。
【0019】
<実施例1>
(熱電変換素子の構造)
以下において、
図1を参照しつつ、本発明の実施例1に係る熱電変換素子の構造について説明する。
図1は、実施例1に係る熱電変換素子の概略を示す断面図である。なお、
図1は、熱電変換素子を構成する熱電変換部材の延在方向に沿った断面図である。
【0020】
図1に示すように、実施例1に係る熱電変換素子1は、P型半導体材料からなる第1熱電変換部材2、N型半導体材料からなる第2熱電変換部材3、並びに第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3の両端に接合した電極4a、4bから構成されている。本実施例において、第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3の外形は同一であり、直径が2mm、長さが5mmから10mmである。また、第1熱電変換部材2と第2熱電変換部材3とは交互に並設されている。そして、隣接する第1熱電変換部材2と第2熱電変換部材3とは、小片化された電極4a、4bによって電気的に接続されている。すなわち、熱電変換素子1は、第1熱電変換部材2と第2熱電変換部材3とが直列接続された構成を備えている。
【0021】
また、
図1に示すように、第1熱電変換部材2の第1端部2a側、及び第2熱電変換部材3の第1端部3a側に設けられた電極4aは、第1端部2a、3aを覆っている。一方、第1熱電変換部材2の第2端部2b側、及び第2熱電変換部材3の第2端部3b側に設けられた電極4bは、第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3の端面(すなわち、第2端部2b、3bの表面)に当接して設けられている。本実施例において、電極4aは金属粉末を焼結させることによって形成されており、電極4bは平板状の銅板である。ここで、第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3の第2端部2b、3b側の端面は、同一平面上に配置されている。すなわち、第1熱電変換部材2と電極4bとの界面、及び第2熱電変換部材3と電極4bとの界面は、同一の基準端面(
図1において破線で示す)を形成している。換言すれば、第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3は、当該基準端面において一端がそろえられている。
【0022】
なお、電極4bは銅板に限定されることなく、電極4aと同様に、金属粉末を焼結することによって形成されてもよい。このような場合、電極4bも電極4aと同様に、第1端部2a、3aを覆っていてもよい。
【0023】
(熱電変換素子の製造方法)
次に、
図2乃至
図6を参照しつつ、本実施例に係る熱電変換素子1の製造方法を説明する。
図2乃至
図4、及び
図6は、
図1と同様にして示した熱電変換素子1の製造工程中の概略断面図であり、
図5は熱電変換素子1の製造工程中における電極4aの概略平面図である。
【0024】
図2乃至
図4から分かるように、本実施例においては、熱電変換素子1を製造するために、製造装置10を使用する。製造装置10は、第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3を保持する保持部(ダイス)11、及び電極焼結用パンチ12を備えている。
図2に示すように、保持部11には、第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3が嵌挿されるための複数の開口11aが形成されている。ここで、開口11aの底面は同一平面上に位置している。換言すれば、開口11aの深さは全て同一である。また、保持部11は、開口11aの形成面側に凹部11bが形成されている。保持部11及び電極焼結用パンチ12は、導電性を備える材料(例えば、黒鉛)から構成されている。
【0025】
先ず、
図2に示すように、製造装置10を構成する保持部11の開口11aに準備した第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3を嵌挿し、保持部11によって第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3を保持する保持工程を行う。本実施例においては、第1熱電変換部材2の第2端部2b及び第2熱電変換部材3の第2端部3bが開口11aの底面と接触する向きに、第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3を交互に嵌挿し、第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3を並置する。ここで、開口11aの深さは、第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3の規格長の最小値よりも小さくなるように設定されている。これにより第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3を開口11aに嵌挿すると、第1熱電変換部材2の第1端部2a及び第2熱電変換部材3の第1端部3aは、開口11aから露出(突出)し、凹部11b内に位置することになる。また、開口11aの底面が同一平面上に位置するように設定されているため、第1熱電変換部材2の第2端部2b及び第2熱電変換部材3の第2端部3bは同一平面上に位置することになり、第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3の端部がそろった状態となる。一方、
図2に示すように、第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3の長さにバラツキがあると、第1端部2a、3aの位置がばらつくことになる。
【0026】
次に、
図3に示すように、露出した第1端部2a、3aを被覆するように、開口11aの凹部11b内に金属粉末13(例えば、ニッケル及び銅の粉末)を投入する被覆工程を行う。ここで、金属粉末13の投入量は、全ての第1端部2a、3aが覆われるように調整される。なお、金属粉末13の材料は、第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3の材料(すなわち、半導体材料)に応じて適宜変更することができる。
【0027】
次に、
図4に示すように、金属粉末13を焼結させて電極4aを形成する電極形成工程を行う。具体的には、電極焼結用パンチ12を開口11aに嵌装させ、金属粉末13を加圧(押圧)するとともに、電極焼結用パンチ12及び保持部11に電流を供給して、製造装置10内を加熱する。換言すれば、金属粉末13に対して加圧処理及び加熱処理を施すことになる。例えば、第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3の材料の融点温度が比較的に高い場合には、製造装置10内の温度が約900℃となるようにしてもよく、第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3の材料の融点温度が比較的に低い場合には、製造装置10内の温度が約600℃〜700℃となるようにしてもよい。なお、電極焼結用パンチ12及び保持部11に電流を供給することなく、他の方法によって金属粉末13を加熱して焼結させてもよい。
【0028】
また、電極焼結用パンチ12の金属粉末13に対して接触する面には凹凸が形成されており、当該凹凸により電極4aのパターニングが施されることになる。すなわち、金属粉末13を加圧することにより、第1端部2a、3a及び凹部11bの形状に対応した金属粉末13の全体形状を、当該凹凸によって所望のパターン形状に変更している。具体的には、
図5に示すように、電極4aは部分的に切断され(すなわち貫通孔が形成され)、小片状の複数の本体部14、複数の本体部14の一端から他端にまで延在する主連結部15、及び本体部14と主連結部15とを接続する副連結部16から構成されることになる。すなわち、
図4における断面においては、第1熱電変換部材2同士及び第2熱電変換部材3同士が電気的に接続されることがないように、互いに隣接する1つの第1熱電変換部材2と1つの第2熱電変換部材3とを本体部14(電極4a)を介して接続されている。
【0029】
次に、
図6に示すように、第1熱電変換部材2の第2端部2b及び第2熱電変換部材3の第2端部3bに電極4bを形成する工程を行う。具体的には、電極4aによって接続された状態の第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3を保持部11から取り出し、
図6に示すような平坦な支持台17上に載置する。第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3の上記取り出しには、例えばピンセットを用いて電極4a(より具体的には主連結部15)をつまむことにより行われる。また、第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3を載置する際、電極4aを支持台17に当接させる。その後、第2端部2b、3bに平板状の銅板を接合し、電極4bを形成する。例えば、溶接等の技術を利用して、第2端部3bに銅板を接合してもよい。ここで、電極4bは既に小片化されており、互いに隣接する1つの第1熱電変換部材2と1つの第2熱電変換部材3と電気的に接続されるものの、電極4bによっては第1熱電変換部材2同士及び第2熱電変換部材3同士が電気的に接続されていない。なお、第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3の支持方法は、上述した方法に限定されることなく、第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3を倒して載置してもよい。このような場合にも、第1端部2a、3aが一直線上にそろうように載置することになる。
【0030】
そして、電極4bの形成後に、副連結部16を切断して電極4aを小片化して(すなわち、本体部14のみから電極4aを構成させ)、電極4aによって第1熱電変換部材2同士及び第2熱電変換部材3同士が電気的に接続されないように、互いに隣接する1つの第1熱電変換部材2と1つの第2熱電変換部材3と電気的に接続する。以上の工程を経て、熱電変換素子1の製造が完了する。
【0031】
(本実施例の効果)
本実施例に係る熱電変換素子1の製造方法においては、第1熱電変換部材2の第1端部2a及び第2熱電変換部材3の第1端部3aを露出させつつ第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3を保持し、当該第1端部2a、3aを金属粉末13によって被覆し、当該金属粉末13を焼結して電極4aを形成している。このように、当該第1端部2a、3aが電極4aによって覆われているため、第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3の寸法のバラツキが存在していたとしても、製造される熱電変換素子1においては、当該バラツキが吸収されることになる。すなわち、本実施例に係る熱電変換素子1の製造方法においては、熱電変換材料への追加加工を必要とせずに、熱電変換材料の寸法バラツキに起因する熱電特性の低下及びプレス時の荷重バランスの低下を防止し、製造コストの低減を実現することができる。また、電極4aと第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3とを強固に接合することができる。すなわち、電極4aと第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3との接合強度を大幅に向上することができる。
【0032】
本実施例に係る熱電変換素子1の製造方法においては、保持工程において複数の第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3を並置させ、電極形成工程において隣接する第1熱電変換部材2の第1端部2a及び第2熱電変換部材3の第1端部3aを電極4aによって電気的に接続している。これにより、熱電変換材料への追加加工を必要とせずに、熱電変換材料の寸法バラツキに起因する熱電特性の低下及びプレス時の荷重バランスの低下を防止しつつ、熱電変換素子1の小型化を実現することができる。更に、電極4aと第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3との接合強度を大幅に向上することもできる。
【0033】
本実施例に係る熱電変換素子1の製造方法においては、保持工程において複数の第1熱電変換部材2の第2端部2b及び第2熱電変換部材3の第2端部3bを同一平面上に配置するとともに、第1熱電変換部材2の第1端部2a及び第2熱電変換部材3の第1端部3aを露出させている。これにより、熱電変換材料への追加加工を必要とせずに、熱電変換材料の寸法バラツキに起因する熱電特性の低下及びプレス時の荷重バランスの低下を防止しつつ、第2端部2b、3bと第2端部2b、3b側に配置される電極4bとを良好に(すなわち、非接触部分が存在しない状態で)当接させ、電極4bを第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3に対して強固に接合することができる。すなわち、製造コストの低減を実現しつつ、電極4bと第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3との接合強度を大幅に向上することができる。
【0034】
本実施例に係る熱電変換素子1の製造方法においては、保持工程において複数の第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3が嵌挿され且つ底面が同一平面上に配置された開口11aを備える保持部11により、複数の第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3を保持している。このような保持部11を用いて保持することにより、簡易な構成及び工程によって第1熱電変換部材2の第2端部2b及び第2熱電変換部材3の第2端部3bを同一平面上に確実にそろえることができる。
【0035】
本実施例に係る熱電変換素子1は、並設された複数の第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3と、第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3の両端部のそれぞれに接合された電極4a、4bと、を有し、第1熱電変換部材2の第1端部2a及び第2熱電変換部材3の第1端部3aに接合した電極4aは、第1端部2a、3aを被覆するように設けられた金属粉末13を焼結して形成されている。このような電極4aの構成により、第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3の寸法のバラツキが存在していたとしても、熱電変換素子1としては当該バラツキが吸収されることになる。従って、本実施例に係る熱電変換素子1は、熱電変換材料への追加加工を必要とせずに、熱電変換材料の寸法バラツキに起因する熱電特性の低下及びプレス時の荷重バランスの低下を防止され、コストが低減されている。また、本実施例に係る熱電変換素子1においては、電極4aと第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3とが強固に接合されている。すなわち、電極4aと第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3との接合強度が大幅に向上されている。
【0036】
本実施例に係る熱電変換素子1は、第1熱電変換部材2の第2端部2b及び第2熱電変換部材3の第2端部3bは、同一平面上に配置される。このような構造により、熱電変換材料への追加加工を必要とせずに、熱電変換材料の寸法バラツキに起因する熱電特性の低下及びプレス時の荷重バランスの低下が防止されつつ、第2端部2b、3bと第2端部2b、3b側に配置される電極4bとが良好に(すなわち、非接触部分が存在しない状態で)当接し、電極4bと第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3とが強固に接合されている。すなわち、本実施例に係る熱電変換素子1は、コストの低減が実現されつつも、電極4bと第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3との接合強度が大幅に向上されている。
【0037】
以上のことから、本実施例によれば、第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3の寸法バラツキに起因する熱電特性の低下及びプレス時の荷重バランスの低下を防止することができる熱電変換素子1の製造方法、及び優れた熱電特性を備える熱電変換素子1を提供することができる。
【0038】
<実施例2>
上述した実施例1においては、製造装置10の保持部11の底面に第1熱電変換部材2の第2端部2b、及び第2熱電変換部材3の第2端部3bを当接させ、これにより第2端部2b、3bを同一平面上にそろえていたが、
図7に示すような方法によって第2端部2b、3bを同一平面上にそろえてもよい。
図7は、
図1と同様にして示した熱電変換素子1の製造工程中の概略断面図である。なお、第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3を製造装置によって保持する工程以外は、上述した実施例1と同様のため、保持工程以外の説明は省略する。
【0039】
図7に示すように、実施例2における製造装置20の保持部21は、第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3が嵌挿される貫通孔22を備える嵌挿部23と、貫通孔22に嵌挿されて第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3に当接して位置決めをなす位置決め部24とから構成されている。また、位置決め部24は、貫通孔22に嵌挿される複数のピンパンチ25、ピンパンチ25を保持する台座26から構成されている。更に、複数のピンパンチ25の長さは同一であり、且つ台座26のピンパンチ25の保持面は平坦であるため、台座26によって保持されていないピンパンチの25の一端は、同一平面上にそろって位置している。ここで、ピンパンチ25は加工を容易に行うことができる鉄、銅等金属材料から構成され、台座は黒鉛から構成されている。
【0040】
第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3が貫通孔22に嵌挿されると、第2端部2b、3bがピンパンチ25に当接し、第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3の端部がそろった状態となる。換言すれば、ピンパンチ25に第2端部2b、3bを当接して位置決めすることにより、第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3の基準端面の形成が行われている。
【0041】
なお、電極4aの形成工程においては、電極焼結用パンチ12及びピンパンチ25を介して加圧が行われることになる。
【0042】
本実施例の製造方法においては、上述したような保持部21を備える製造装置20を使用して第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3を保持しているため、上述した実施例1の効果に加えて、第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3の寸法に柔軟に対応して熱電変換素子1を製造することができる。
【0043】
また、本実施例の製造方法においては、上述したような保持部21を備える製造装置20を使用して第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3を保持しているため、電極4aが形成された後に、ピンパンチ25を押し込み方向へ移動させる(すなわち、ピンパンチ25を第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3に向けて押圧する)ことで、電極4aが形成された状態の第1熱電変換部材2及び第2熱電変換部材3を容易に取り出すことが可能になる。
【0044】
<実施例3>
本発明の熱電変換素子は、上述した実施例1及び実施例2に係る熱電変換素子1に限定されることなく、熱電変換部材の両端に位置する全ての電極が熱電変換部材の端部を被覆するように形成されてもよい。すなわち、すべての電極が金属粉末から形成されていてもよい。以下において、このような構造を備える熱電変換素子101を実施例3として、
図8乃至
図14を参照しつつ、その構造及び製造方法を説明する。
【0045】
(熱電変換素子の構造)
まず、
図8を参照しつつ、本発明の実施例3に係る熱電変換素子101の構造について説明する。
図8は、実施例3に係る熱電変換素子の概略を示す断面図である。なお、
図8は、熱電変換素子101を構成する熱電変換部材の延在方向に沿った断面図である。
【0046】
図8に示すように、実施例3に係る熱電変換素子101は、P型半導体材料からなる第1熱電変換部材102、N型半導体材料からなる第2熱電変換部材103、並びに第1熱電変換部材102及び第2熱電変換部材103の両端に設けられた電極104a、104bから構成されている。本実施例においても、第1熱電変換部材102及び第2熱電変換部材103の外形は同一であり、直径が2mm、長さが5mmから10mmである。また、第1熱電変換部材102と第2熱電変換部材103とは交互に並置されている。そして、隣接する第1熱電変換部材102と第2熱電変換部材103とは、小片化された電極104a、104bによって電気的に接続されている。すなわち、熱電変換素子101は、実施例1の熱電変換素子1と同様に、第1熱電変換部材2と第2熱電変換部材3とが直列接続された構成を備えている。
【0047】
また、
図8に示すように、第1熱電変換部材102及び第2熱電変換部材103の両端に設けられた電極104a、104bは、各端部(第1端部102a、103a、及び第2端部102b、103b)を覆っている。本実施例において、電極104a、104bは金属粉末を焼結させることによって形成されている。なお、本実施例の熱電変換素子101においては、実施例1のような基準端面が形成されておらず、各端部の位置はそろっていなくもよい。
【0048】
(熱電変換素子の製造方法)
次に、
図9乃至
図14を参照しつつ、本実施例に係る熱電変換素子101の製造方法を説明する。
図9は、
図8と同様にして示した熱電変換素子101の製造工程中の概略断面図であり、
図10乃至
図14は
図9の線IX-IXに沿って示す断面であって、熱電変換素子101の製造工程中の概略断面図である。
【0049】
図9乃至
図14から分かるように、本実施例においては、熱電変換素子101を製造するために、製造装置110を使用する。製造装置110は、第1熱電変換部材102及び第2熱電変換部材103を保持する第1保持部(ダイス)111及び第2保持部(ダイス)112、複数の電極焼結用パンチ113、並びに電極焼結用パンチを支持する2つの台座114を備えている。また、第1保持部111及び第2保持部112には、第1熱電変換部材102及び第2熱電変換部材103を保持する際に、第1熱電変換部材102及び第2熱電変換部材103の両端を露出するための貫通孔111a、112aが形成されている。更に、第1保持部111には、第1熱電変換部材102及び第2熱電変換部材103が載置されるための凹部111bが形成され、第2保持部112には、凹部111bに嵌合する凸部112bが形成さえている。ここで、第2保持部112の凸部112bが第1保持部111の凹部111bに嵌装されると、対向する貫通孔111aと貫通孔112aとは連通することになる。本実施例においては、第1保持部111、第2保持部112、電極焼結用パンチ113、及び台座114は、導電性を備える材料(例えば、黒鉛)から構成されている。
【0050】
先ず、
図9及び
図10に示すように、製造装置110を構成する第1保持部111の凹部111b内に準備した第1熱電変換部材102及び第2熱電変換部材103を載置する。当該載置の際に、第1熱電変換部材102の第1端部102a及び第2端部102b、並びに第2熱電変換部材103の第1端部103a及び第2端部103bが貫通孔111aの形成部分において露出するようにする。
【0051】
次に、
図11に示すように、第1保持部111の貫通孔111aに電極焼結用パンチ113を嵌挿する。この際、電極焼結用パンチ113が第1熱電変換部材102及び第2熱電変換部材103に接触しないように、電極焼結用パンチ113の位置を調整する。
【0052】
次に、
図12に示すように、第2保持部112を第1保持部111に嵌合させる。具体的には、第2保持部112の凸部112bを第1保持部111の凹部111bに嵌装させ、第1保持部111と第2保持部112とによって第1熱電変換部材102及び第2熱電変換部材103を挟み込む。この際、貫通孔111aと貫通孔112aとが連通し、第1熱電変換部材102及び第2熱電変換部材103の両端は、貫通孔111a、112aの形成部分において露出した状態となる。
【0053】
以上の工程を経て、第1熱電変換部材102及び第2熱電変換部材103の保持工程が完了する。なお、電極焼結用パンチ113を嵌挿する工程と、第2保持部112を第1保持部111に嵌合させる工程とを入れ替えてもよい。
【0054】
次に、
図13に示すように、露出した第1熱電変換部材102及び第2熱電変換部材103の両端を被覆するように、貫通孔111a、112a内に金属粉末115(例えば、ニッケル及び銅の粉末)を投入する被覆工程を行う。ここで、金属粉末115の投入量は、貫通孔112aからはみ出さない程度に適宜行われる。
【0055】
次に、
図14に示すように、金属粉末115を焼結させて電極104a、104bを同時に形成する電極形成工程を行う。具体的には、第2保持部112の貫通孔112aにも電極焼結用パンチ113を嵌挿させ、金属粉末115を第1保持部111、第2保持部112、及び電極焼結用パンチ113によって取り囲む。その後、電極焼結用パンチ113によって金属粉末115を加圧(押圧)するとともに、電極焼結用パンチ113に電流を供給して、製造装置110内を加熱する。換言すれば、金属粉末115に対して加圧処理及び加熱処理を施すことになる。加熱温度は、実施例1と同様である。
【0056】
本実施例においては、第1保持部111及び第2保持部112による第1熱電変換部材102及び第2熱電変換部材103を保持した状態において、連通した1つの貫通孔111a、112aにより、互いに隣接する1つの第1熱電変換部材102と1つの第2熱電変換部材103との端部同士が露出されている。このため、当該貫通孔111a、112aに電極104a、104bを形成することにより、互いに隣接する1つの第1熱電変換部材102と1つの第2熱電変換部材103とが電気的に接続されることになる。
【0057】
次に、金属粉末115を焼結後、完成した熱電変換素子101を製造装置110から取り出す。第1熱電変換部材102及び第2熱電変換部材103の取り出しには、実施例1と同様に、例えばピンセットを用いて電極104a、104bをつまむことにより行われる。
【0058】
以上の工程を経て、熱電変換素子101の製造が完了する。
【0059】
(本実施例の効果)
本実施例の熱電変換素子101の製造方法においては、第1熱電変換部材102及び第2熱電変換部材103の両端部分を露出させつつ第1熱電変換部材102及び第2熱電変換部材103を保持し、金属粉末115を焼結することによって第1熱電変換部材102及び第2熱電変換部材103の両端部分に電極104a、104bを同時に形成している。このような製造工程を用いることにより、上述した実施例1及び実施例2と比較して、第1熱電変換部材102及び第2熱電変換部材103と電極104bとをより強固且つ確実に接合することができる。また、電極104a、104bを同時に形成することができ、製造工程及び製造コストの削減を一層図ることができる。
【0060】
更に、第1熱電変換部材102及び第2熱電変換部材103の端部の位置合わせが不要となり、製造工程及び製造コストの削減をより一層図ることができる。
【0061】
<実施例4>
上述した実施例3においては、金属粉末115の焼結時である電極104a、104bの形成の際に、電極104a、104bは、互いに隣接する1つの第1熱電変換部材102と1つの第2熱電変換部材103と電気的に接続されているが、金属粉末115の焼結時には、第1熱電変換部材102及び第2熱電変換部材103のそれぞれに、独立した電極を形成してもよい。以下において、
図15乃至
図17を参照しつつ、このような製造工程を含む製造方法を説明する。ここで、
図15乃至
図17は、
図9と同様にして示した熱電変換素子の製造工程中の概略断面図である。なお、実施例3と同様の工程については、その説明を省略するものとする。
【0062】
先ず、
図15に示すように、製造装置を構成する第1保持部121の凹部121b内に準備した第1熱電変換部材102及び第2熱電変換部材103を載置する。当該載置の際に、第1熱電変換部材2の第1端部102a及び第2端部102b、並びに第2熱電変換部材103の第1端部103a及び第2端部103bが貫通孔121aの形成部分において露出するようにする。ここで、貫通孔121aは、第1熱電変換部材102及び第2熱電変換部材103の載置位置の両端に配設されている。すなわち、凹部121bのそれぞれの両端部分に貫通孔121aが形成されている。
【0063】
その後、上述した実施例3と同様に、電極焼結用パンチの嵌挿、及び第2保持部の嵌合を行い、第1熱電変換部材102及び第2熱電変換部材103の保持工程を行う。この際、第2保持部の貫通孔は、第1保持部121の貫通孔121aに対応している。すなわち、第2保持部の貫通孔は、第1保持部121の凹部121bに嵌挿される凸部の両端に配設されている。そして、第1保持部121の貫通孔121aと第2保持部の貫通孔とは、実施例3と同様に、連通することになる。
【0064】
続いて、上述した実施例3と同様に、金属粉末の投入及び焼成を行い、第1熱電変換部材102及び第2熱電変換部材103の両端部に独立した(すなわち、隣接する第1熱電変換部材102及び第2熱電変換部材103を電気的に接続しない)電極124a、124bを形成する。更に、
図16に示すように、保持部による保持を解除し、第1熱電変換部材102及び第2熱電変換部材103を交互に並設する。その後、
図17に示すように、隣接する第1熱電変換部材102及び第2熱電変換部材103の電極124a、124b同士を電気的に接続するように、接続電極である接続部125を形成する。すなわち、隣接する第1熱電変換部材102及び第2熱電変換部材103の電極124a、124bを電気的に接続する接続工程を行う。接続部125は、例えば、スポット溶接によって形成されてもよい。
【0065】
以上の工程を経て、本実施例に係る熱電変換素子130が形成される。
【0066】
また、
図18に示すように、第1熱電変換部材102及び第2熱電変換部材103を交互に並設する際に、第1熱電変換部材102及び第2熱電変換部材103を接続する電極が曲面電極となるように、複数の電極124aを結ぶ軌跡及び複数の電極124bを結ぶ軌跡が曲線(
図18における破線)となるようにしてもよい。すなわち、電極124a、124bの形成面の表面形状を湾曲させてもよい。
【0067】
本実施例の熱電変換素子130の製造方法においては、電極124a、124bが形成された第1熱電変換部材102及び第2熱電変換部材103を電気的に独立して製造し、その後においてスポット溶接等により、隣接する第1熱電変換部材102及び第2熱電変換部材103の電極124a、124bを電気的に接続している。このような製造工程を用いることにより、電極124a、124b同士を確実に接続し、隣接する第1熱電変換部材102及び第2熱電変換部材103を電気的に接続することができる。また、このような製造工程を用いることにより、製造される熱電変換素子130の形状を自在に変形することができる。