(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240529
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】鉄道車両の屋根上構造
(51)【国際特許分類】
B61D 17/12 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
B61D17/12
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-30374(P2014-30374)
(22)【出願日】2014年2月20日
(65)【公開番号】特開2015-155228(P2015-155228A)
(43)【公開日】2015年8月27日
【審査請求日】2016年11月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100083839
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 泰男
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 実
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 実俊
(72)【発明者】
【氏名】森山 淳
(72)【発明者】
【氏名】土井 賢一
(72)【発明者】
【氏名】堀岡 健司
(72)【発明者】
【氏名】栗原 芳勝
【審査官】
前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第06164210(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 17/00
B64D 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根上に長手方向に沿って歩み板を備える鉄道車両の屋根上構造において、
前記歩み板は、前記屋根から水平方向に延設する踏面と、前記踏面の端部から垂下する側部とを備え、
前記側部から前記踏面に向かって通気可能な通気手段を備え、
前記歩み板は、前記踏面と前記側部とを備えた櫛部を所定の間隔で前記長手方向に沿って配列し、隣り合う櫛部間に前記通気手段が形成され、隣り合う前記踏面は互いに不連続に配置されることを特徴とする鉄道車両の屋根上構造。
【請求項2】
屋根上に長手方向に沿って歩み板を備える鉄道車両の屋根上構造において、
前記歩み板は、前記屋根から水平方向に延設する踏面と、前記踏面の端部から垂下する側部とを備え、
前記側部から前記踏面に向かって通気可能な通気手段を備え、
前記通気手段は、前記水平方向に沿って前記歩み板に形成した溝であることを特徴とする鉄道車両の屋根上構造。
【請求項3】
請求項2に記載の鉄道車両の屋根上構造において、
前記踏面及び前記側部は、通気可能な板材によって構成され、
前記歩み板内部を中空に形成することで前記通気手段を構成することを特徴とする鉄道車両の屋根上構造。
【請求項4】
請求項3に記載の鉄道車両の屋根上構造において、
前記板材は、格子状のグレーティングであることを特徴とする鉄道車両の屋根上構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の屋根上構造に係り、特に、鉄道車両の転覆限界風速の低下を招かない屋根上の歩み板の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両の屋根上構造の多くは、
図5に示すように、屋根に設置された空調機器120等の保守作業を安全に行うために、屋根上に作業者が歩行可能な歩み板110が屋根の肩部から突出するように設けられている。
【0003】
空調機器120等が屋根上に設置される理由は、空調機器120を屋根上に設置することで、鉄道車両100の客室内の上部の空間を大きくとることができることによる。
【0004】
この歩み板の構造は種々の構造が知られているが、例えば特許文献1に記載されているように、空調ダクトとしての機能を兼ね備えた歩み板などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−207459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の歩み板の構造によると、
図6に示すように鉄道車両100の走行中に側方から風を受けると、歩み板110によって、横からの風が上流側で剥離してしまい、鉄道車両100に作用する横向きの力が大きく作用することとなる。
【0007】
ここで、鉄道車両100は、横から強風を受けると転覆する可能性があり、転覆に至る限界の風速は高いほど安全であるところ、従来の鉄道車両100は、歩み板110の上述した作用によって歩み板110のない鉄道車両に比べて弱い風であっても鉄道車両100が転覆限界風速に最も影響のある外力となる横風を大きく受けることとなり、転覆しやすくなるといった問題があった。
【0008】
また、歩み板110は、上述したように屋根上の機器の保守点検を安全に実施するために不可欠な構成であり、これを取り除くことはできないという問題も有していた。
【0009】
さらに、歩み板110の近傍で上述した通気の剥離を生じさせないように、空力を向上させるカバーを設置することも考えられるが、カバーを設置すると、保守点検時に当該カバーを着脱する必要が生じるため、保守点検時の作業が煩雑となって、作業負担が増加するという問題もある。
【0010】
そこで、本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、歩み板を取り除くことがないと共に、保守点検時の作業負担を増加させることなく、鉄道車両に加わる横力を低減することができる歩み板を備えた鉄道車両の屋根上構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る鉄道車両の屋根上構造は、屋根上に長手方向に沿って歩み板を備える鉄道車両の屋根上構造において、前記歩み板は、前記屋根から水平方向に延設する踏面と、前記踏面の端部から垂下する側部とを備え、前記側部から前記踏面に向かって通気可能な通気手段を備え、前記歩み板は、前記踏面と前記側部とを備えた櫛部を
所定の間隔で前記長手方向に沿って配列し、隣り合う櫛部間に前記通気手段が形成され、隣り合う前記踏面は互いに不連続に配置されることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る鉄道車両の屋根上構造
は、屋根上に長手方向に沿って歩み板を備える鉄道車両の屋根上構造において、前記歩み板は、前記屋根から水平方向に延設する踏面と、前記踏面の端部から垂下する側部とを備え、前記側部から前記踏面に向かって通気可能な通気手段を備え、前記通気手段は、前記水平方向に沿って前記歩み板に形成した溝である
ことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る鉄道車両の屋根上構造において、前記踏面及び前記側部は、通気可能な板材によって構成され、前記歩み板内部を中空に形成することで前記通気手段を構成すると好適である。
【0015】
また、本発明に係る鉄道車両の屋根上構造において、前記板材は、格子状のグレーティングであると好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る鉄道車両の屋根上構造は、歩み板が側部から踏面に向かって通気可能な通気手段を備えているので、鉄道車両が側方から風を受けた場合であっても、通気手段を風が通過することで、上流側での剥離を防止し、鉄道車両に作用する横向きの力を低減させることができる。したがって、本発明によれば、鉄道車両の転覆限界風速を高めることができるので、鉄道車両の転覆の安全性を高めることができる。
また、鉄道車両の真横から自然風が吹いている場合に、鉄道車両が走行する際には、鉄道車両に対して斜め前方からの風が吹くことになる。このため、進行方向からの風に対しても風が通過する構造がより良いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る鉄道車両の斜視図。
【
図2】本発明の第2の実施形態に係る鉄道車両の斜視図。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る鉄道車両の正面図。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係る鉄道車両に用いられる板材の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0019】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る鉄道車両の斜視図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る鉄道車両1の屋根上構造は、屋根2上に空調機器20が設置されている。また、屋根2の水平方向の両端に位置する肩部には、歩み板10が肩部から突出するように形成されている。
【0021】
歩み板10は、鉄道車両1の長手方向に沿って延設されており、屋根2から水平方向に延設する踏面11と、踏面11の端部からから垂下して鉄道車両1に連結する側部12とを備えている。
【0022】
また、踏面11と側部12は、断面略三角形状の櫛部14を構成しており、歩み板10は、この櫛部14を複数所定の間隔で長手方向に配列して櫛歯状に構成されている。
【0023】
このように櫛部14を所定の間隔で配列することで、隣り合う櫛部14,14間に隙間13が形成されるので、該隙間13を通気手段として構成することが可能となる。具体的には、
図1に示すように、隙間13を通気Fが通過することで、鉄道車両1に加わる横風を上流側に剥離させることなく流すことが可能となる。これにより、横風によって鉄道車両1に作用する横力を低減させることが可能となり、鉄道車両1の転覆限界風力を高めることができ、鉄道車両1の安全性を高めることが可能となる。
【0024】
なお、隙間13を構成する櫛部14,14間の間隔は、適宜設定することができるが、作業者が踏面11を歩行することを考慮すれば、作業の安全性及び歩行の妨げとならないように例えば歩み板10上を歩行する際に、その歩行の妨げとならない大きさに形成することが好ましい。
【0025】
[第2の実施形態]
以上説明した第1の実施形態に係る鉄道車両1の屋根上構造は、歩み板10を櫛歯状に形成して通気手段を構成した場合について説明を行った。次に説明する第2の実施形態の鉄道車両3は、第1の実施形態とは異なる形態を有する歩み板10aの実施例について説明を行うものである。なお、上述した第1の実施形態の場合と同一又は類似する部材については、同一符号を付して説明を省略する。
【0026】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る鉄道車両の斜視図であり、
図3は、本発明の第2の実施形態に係る鉄道車両の正面図であり、
図4は、本発明の第2の実施形態に係る鉄道車両に用いられる板材の斜視図である。
【0027】
図2に示すように、本実施形態に係る鉄道車両3の屋根上構造は、歩み板10aの踏面11a及び側部12aを其々通気可能な板材によって構成している。
【0028】
具体的には、
図3に示すように、屋根2から水平方向に沿って延びる踏面11aと、踏面11aの端部から垂下して鉄道車両3と連結する側部12aとが、それぞれ板材によって構成されることで、歩み板10aの内部を中空に形成している。
【0029】
また、
図4に示すように、踏面11a及び側部12aは格子状のグレーティングによって構成されていると好適である。このように踏面11a及び側部12aを構成する板材に格子状のグレーティングを適用することで、本実施形態に係る鉄道車両3が横風を受けた場合、側部12aを通過した通気Fは歩み板10aの内部を通過して、踏面11aから抜けるように流れるので、通気Fを上流側へ剥離することなく流すことができる。これにより、横風によって鉄道車両3に作用する横力を低減させることが可能となり、鉄道車両3の転覆限界風速を高めることができ、鉄道車両1の安全性を高めることが可能となる。
【0030】
以上説明した第1の実施形態に係る鉄道車両1の屋根上構造は、櫛部14,14を所定の間隔で配列して歩み板10を櫛歯状に形成することで、通気手段を隙間13として構成した場合について説明を行ったが、隙間13の形成方法はこれに限られず、例えば、従来の歩み板に所定の間隔で水平方向に沿って複数の溝を形成しても構わない。また、溝の深さは、屋根に達する程度に深く形成しても構わないし、例えば、歩み板の剛性を考慮して適宜深さを設定しても構わない。
【0031】
また、上述した第2の実施形態に係る鉄道車両3の屋根上構造は、通気可能な板材として格子状のグレーティングを用いた場合について説明を行ったが、板材の形状は格子状のグレーティングに限られず、例えば、複数の貫通孔が穿孔されたパンチングメタルや網状の板材あるいは多孔質材を用いても構わない。
【0032】
さらに、側部12aを板材を用いて構成した場合について説明を行ったが、側部12aは、踏面11aに加わる荷重を負荷することができればどのような形態であっても構わない。例えば、踏面11aに加わる荷重を負荷することができるように、所定の間隔で支持柱を配置して側部を構成しても構わない。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0033】
1,3 鉄道車両,
2 屋根,
10,10a,110 歩み板,
11,11a,111 踏面,
12,12a,112 側部,
13 隙間(通気手段),
14 櫛部,
20 空調機器,
F 通気。