特許第6240531号(P6240531)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6240531-圧電振動子の製造方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240531
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】圧電振動子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H03H 3/02 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
   H03H3/02 C
【請求項の数】2
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2014-33215(P2014-33215)
(22)【出願日】2014年2月24日
(65)【公開番号】特開2015-159437(P2015-159437A)
(43)【公開日】2015年9月3日
【審査請求日】2016年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡田 隆雄
【審査官】 ▲高▼須 甲斐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−194630(JP,A)
【文献】 特開2008−206000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、圧電ウエハ上に所望の形状のマスク層を形成するマスク層パターニング工程と、前記マスク層を形成した前記圧電ウエハをエッチングして、複数の圧電振動片が連結して備わる圧電振動片基板を形成する圧電振動片基板形成工程と、前記圧電振動片基板に連結する複数の前記圧電振動片上に電極を形成する電極形成工程とを有し、前記圧電振動片基板に形成した隣接する前記圧電振動片を同時発振させる特性測定工程、または、周波数調整工程のいずれかを含む圧電振動子の製造方法であって、前記圧電基板形成工程では、圧電振動片の外形を有する前記圧電振動片と、前記圧電振動片を支持するためのフレームと、前記圧電振動片の基部と前記フレームとを連結する連結部が形成された前記圧電ウエハを形成し、前記電極形成工程では、前記圧電ウエハの少なくとも一方の主面に対してフォトリソグラフィで用いる光源を傾斜させ、前記光源からの照射光を前記圧電振動片、前記フレーム、前記連結部の主面及び、少なくとも前記連結部と連結可能な前記圧電振動片の基部の側面と対向する前記フレームの側面にあたるように照射することを特徴とする圧電振動子の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の圧電振動子が、音叉型水晶振動子、または、厚み滑り水晶振動子であることを特徴とする圧電振動子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話などの発振回路に用いられる圧電振動子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電振動子は、水晶などの圧電材料からなり、発振周波数に応じて、矩形の厚みすべり水晶振動子や、複数の振動腕を備え屈曲振動する音叉型水晶振動子などが用いられている。図1は、音叉型水晶振動子の概略図である。音叉型水晶振動子1は、2つの振動腕2と音叉基部3とからなり、振動腕2の表裏面、及び側面には励振電極4が形成され、音叉基部3にはマウントパッド5が形成され、励振電極4に電圧を印加することで電界が発生し、屈曲振動をする。圧電振動子の電極パターンを形成する手法として、フォトリソグラフィを用いた手法が知られている。
【0003】
圧電材料からなるウエハに形成された圧電振動子は、連結部分を介して、ウエハのフレームと連結し、フレームには、圧電振動子の特性測定や周波数調整を行うための測定用パッドが形成されている。
【0004】
水晶などの圧電材料をウエットエッチングする際、結晶面毎にエッチングレートが異なり異方性エッチングとなるため、振動腕の付け根部分に形成される叉部には傾斜面が生じ、特許文献1に記載されているように、叉部に対して照射光を垂直に照射する方向に近づくように光源を傾斜させて露光を行う手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−339729公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、ウエハ状態において圧電振動子の特性測定や周波数調整を行う場合には素子のマウントパッドを使用してプロービングを行なっていたが、素子の小型化が進むにつれてプローブピッチの狭小化、プローブ位置の高精度化が必要となり、マウントパッドでのプロービングが困難になってきている。そのため、小型圧電振動子ではパッドを大きくできる様にウエハのフレームに測定用パッドを形成することが必要であるが、フレーム側面の金属膜が正確にパターニングされないと、フレーム側面の金属膜を介して隣接素子と電極が導通することにより複数個同時発振させる場合に周波数干渉が起こり、正確な発振周波数が測定できないという問題が生じる。
【0007】
本発明は、生産工程の工程数を増やすことなく、ウエハ状態での測定において隣接素子の影響を受けない圧電振動子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
少なくとも、圧電ウエハ上に所望の形状のマスク層を形成するマスク層パターニング工程と、マスク層を形成した圧電ウエハをエッチングして、複数の圧電振動片が連結して備わる圧電振動片基板を形成する圧電振動片基板形成工程と、圧電振動片基板に連結する複数の圧電振動片上に電極を形成する電極形成工程とを有し、圧電振動片基板に形成した隣接する圧電振動片を同時発振させる特性測定工程、または、周波数調整工程のいずれかを含む圧電振動子の製造方法であって、圧電基板形成工程では、圧電振動片の外形を有する圧電振動片と、圧電振動片を支持するためのフレームと、圧電振動片の基部とフレームとを連結する連結部が形成された圧電ウエハを形成し、電極形成工程では、圧電ウエハの少なくとも一方の主面に対してフォトリソグラフィで用いる光源を傾斜させ、光源からの照射光を圧電振動片、フレーム、連結部の主面及び、少なくとも連結部と連結可能な圧電振動片の基部の側面と対向するフレームの側面にあたるように照射する圧電振動子の製造方法とする。
【0009】
圧電振動子が、音叉型水晶振動子、または、厚み滑り水晶振動子である圧電振動子の製造方法とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法によれば、生産工程の工程数を増やすことなく、ウエハ状態での測定において隣接素子の影響を受けない圧電振動子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】音叉型水晶振動子の概略図
図2】圧電振動片基板の上面図
図3】本発明における露光プロセスを説明する概略図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態を、音叉型水晶振動子を例に、図を用いて説明する。
【0013】
まず、マスク層パターニング工程では、圧電ウエハの表裏に例えばAu/Crからなる耐蝕膜を成膜後、フォトレジストを塗布する。次に音叉型水晶振動子の形状に対応したフォトマスクを利用して露光・現像する。その後、Au膜、Cr膜をエッチングすることにより、音叉型水晶振動子の外形形状に対応したマスク層を形成する。
【0014】
次に、圧電振動片基板形成工程では、マスク層を形成した圧電ウエハをフッ酸・フッ化アンモニウム・バッファードフッ酸等のエッチャントによりエッチングした後、不要となったフォトレジスト、耐蝕膜を剥離することにより、図2に示す様に複数の圧電振動片が連結して備わる圧電振動片基板を形成する。音叉型水晶振動子1は圧電振動片基板9のフレーム6に連結部7を介して連結されている。
【0015】
次に、電極形成工程では、複数の音叉型水晶振動子1が連結された状態の圧電振動片基板9に、例えばAu/Crからなる金属膜を成膜した後、前記金属膜上にフォトレジストを塗布し、その後、図3に示すように、音叉型水晶振動子1上に配線するための電極パターン、及び測定用パッドに対応したフォトマスク(不図示)を介して、光源10を傾斜させ、照射光がウエハに対して斜めに当たる様にして露光し、現像を行うことによりフォトレジストパターンを形成する。次に、前記フォトレジストパターンをマスクとして、露出している金属膜をエッチング除去し、残存するフォトレジストを剥離することにより、音叉型水晶振動子1に励振電極4やマウントパッド5などの電極パターンとフレーム6に測定用パッド8とを形成する。この様にフレーム6の側面に光源10を傾斜させ照射光を当てることで、測定用パッド8は隣接素子の測定用パッド8と確実に電気的に分離できる。
【0016】
以上の工程により製造された圧電振動片基板では、特性測定工程、または、周波数調整工程において、隣接する圧電振動片を同時発振させる際に周波数干渉等、隣接素子の影響を受けずに正確な発振周波数を測定することができる。
【0017】
本実施例では、音叉型水晶振動子を例にしたが、これに限定されるものではなく、厚み滑り振動子をウエハにフォトリソグラフィを用いて形成する場合においても、同様に適用できる。
【符号の説明】
【0018】
1音叉型水晶振動子
2振動腕
3音叉基部
4励振電極
5マウントパッド
6フレーム
7連結部
8測定用パッド
9圧電振動片基板
10光源
図1
図2
図3