(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る一実施の形態について
図1ないし
図8に基いて説明する。
本実施の形態に係る変速駆動装置20を備えた内燃機関1は、自動二輪車2にクランク軸24が車両の前後方向に沿う、いわゆる縦置きに搭載された水平対向6気筒の水冷4ストロークの内燃機関である。
本明細書中において、前後左右の向きは車両における直進方向を前方とする通常の基準に従うものとする。
【0019】
図1は、本発明に係る内燃機関1の変速駆動装置20を搭載した自動二輪車2の左側面図である。
図1において、吸排気系、燃料系等は省略されて図示されている。
【0020】
図1に示されるように、自動二輪車2の車体フレーム3は、車体前部のヘッドパイプ4から後方やや斜め下方に延出した後に屈曲部5aを介して端部が下方へ延出される左右一対のメインフレーム5と、メインフレーム5の屈曲部5aから後方やや斜め上方へと延出するシートレール6と、シートレール6の後部とメインフレーム5の屈曲部5aの下部とを接続するバックステー7とを備えている。
【0021】
ヘッドパイプ4には、ヘッドパイプ4から下方へ伸びるフロントフォーク8が左右に搖動可能に支承されている。フロントフォーク8の下端には前輪9が軸支され、フロントフォーク8の上端には操向ハンドル10が一体に結合されている。
また、メインフレーム5の屈曲部5aの下部には、後方へ延出するスイングアーム11の前端部がピボット軸12により上下搖動可能に枢支され、スイングアーム11の後端部には、後輪13が軸支されている。
【0022】
メインフレーム5の屈曲部5aとスイングアーム11との間には、図示されないクッションユニットが連結され、シートレール6の上部には乗車用シート14が取付けられている。
【0023】
メインフレーム5の下方には、後輪13を駆動させる内燃機関1が配置され、内燃機関1は、複数の取付けブラケット15に懸架されることで自動二輪車2に搭載されている。
【0024】
図2は、
図1のII矢視による内燃機関1の正面図であり、
図3は、
図1の内燃機関の左側面図である。
図2に示されるように、内燃機関1は、左クランクケース21aと、右クランクケース21bとからなるクランクケース21と、クランクケース21の左右端にそれぞれ結合されるシリンダヘッド22と、各シリンダヘッド22に重ねられるシリンダヘッドカバー23とを備えている。
【0025】
クランクケース21の上部に位置して、クランク軸24が、自動二輪車2の前後方向に軸線を指向させて、左クランクケース21aと右クランクケース21bとの間に回転可能に軸支されている。
両クランクケース21a,21b内のピストン(不図示)は、コンロッド(不図示)を介してクランク軸24に連結されており、燃焼室(不図示)内の燃焼によるピストンの摺動に連動してクランク軸24が回転駆動されるようになっている。
【0026】
クランクケース21の上部前面には、クランク軸24を中心に、クランクケース21の前面上部を覆うフロントカバー25が取付けられている。また、クランクケース21の下部であって、左クランクケース21aと右クランクケース21bとで画成された空間は、後述する変速機30が収納される変速機室29となっている。
【0027】
図2および
図3に示されるように、クランクケース21の後方にはリアカバー18が取付けられ、リアカバー18の下部中央後方にはクラッチカバー19が取付けられている。クランクケースの下部前方には、変速機室29の前方を覆うようにミッションホルダ26が取付けられている。また、ミッションホルダ26の前面には、ミッションホルダ26の中央から下部にかけて変速機30の変速段を操作する操作機構70を保持するためのチェンジ系ホルダ27が取付けられている。さらに、チェンジ系ホルダ27の前面左端部には、操作機構70への動力供給のための入力機構50を保持する減速機ホルダ28が取付けられており、チェンジ系ホルダ27の後面左端部には、入力機構50の動力源であるシフトモータ51が備えられている。
【0028】
ミッションホルダ26の後面には、ギア変速機構40、メイン軸31、カウンタ軸32、シフトフォーク軸76、シフトドラム74が小組されてカセットユニットとして一体に構成されている。そのカセットユニットを、左クランクケース21aと右クランクケース21bとで構成された変速機室29に挿入し、ミッションホルダ26が、変速機室29の前方を塞ぐようにクランクケース21の下部前面に取付けられることでクランクケース21とミッションホルダ26とが変速機ケース17の役割を果たすようになっている。なお、カセットユニットは、減速機ホルダ28とシフトモータ51までユニット化(サブアセンブリ)された状態でクランクケース21に取付けてもよい。
【0029】
図3、
図4および
図6に示されるように、変速機室29に挿入されたメイン軸31、カウンタ軸32、シフトフォーク軸76、シフトドラム74は、クランク軸24と平行になるように配設されている。
図2に示されるように、メイン軸31は、クランク軸24の下方に配置され、カウンタ軸32は、メイン軸31の右方に配置されている。シフトドラム74は、変速機室29の下部中央に配置され、シフトドラム74の左右方向であってメイン軸31とカウンタ軸32の下方には2本のシフトフォーク軸76が配置されている。
【0030】
図4は、変速機30の
図2のIV−IV線断面図である。
図4に示されるように、変速機30は、メイン軸31と、カウンタ軸32と、ギア変速機構40と、クラッチ機構41とを備えている。クラッチ機構41は、油圧式の第一油圧クラッチ41aと第二油圧クラッチ41bとを有するいわゆるデュアルクラッチ(ツインクラッチ)として構成されている。
【0031】
メイン軸31の一方の端部はボールベアリング33を介してミッションホルダ26に回転可能に支持され、メイン軸31の他方の端部はリアカバー18に取付けられたボールベアリング35を貫通するように配され、メイン軸31の中央部はボールベアリング35を介してリアカバー18に回転可能に支持されている。
カウンタ軸32の一方の端部は、ボールベアリング34を介してミッションホルダ26に回転可能に支持され、カウンタ軸32の他方の端部はリアカバー18に取付けられたボールベアリング36を貫通するように配され、カウンタ軸32の他方の端部はボールベアリング36を介してリアカバー18に回転可能に支持されている。
【0032】
メイン軸31には、M1からM7の7個の駆動変速ギアMがメイン軸31の一方の端部から中央部に亘って設けられ、カウンタ軸32には駆動変速ギアMに対応して、これらと常時噛合うC1からC7までの被動変速ギアCが設けられている。また、メイン軸31とカウンタ軸32には、相互に向い合う位置にリバース用スプロケットMS,CSが設けられ、チェーン39が架設されている。これら駆動変速ギアMと、被動変速ギアCと、リバース用スプロケットSとにより、ギア変速機構40が構成されている。
【0033】
3速駆動変速ギアM3は、メイン軸31上を摺動可能なシフタギアであり、隣接する5速駆動変速ギアまたは7速駆動変速ギアM7に選択的に係脱され、6速駆動変速ギアM6は、メイン軸31上を摺動可能なシフタギアであり、隣接する4速駆動変速ギアM4またはリバース用スプロケットMSに選択的に係脱される。
また、4速被動変速ギアC4は、カウンタ軸32上を摺動可能なシフタギアであり、隣接する2速被動変速ギアC2または6速被動変速ギアC6に選択的に係脱され、3速被動変速ギアC3は、カウンタ軸32上を摺動可能なシフタギアであり、隣接する1速被動変速ギアC1または5速被動変速ギアC5に選択的に係脱される。
上記シフタギアのそれぞれには、フォーク係合溝40aが設けられており、このフォーク係合溝40aに係合するシフトフォーク77によって、シフタギアの軸方向への摺動が可能となる。
なお、本ギア変速機構40には、すべてのギア列が無効となって動力が伝達されないニュートラル位置とリバース用スプロケットSによるリバース位置が設けられている。
【0034】
リアカバー18を貫通したメイン軸31には、第一油圧クラッチ41aおよび第二油圧クラッチ41bで構成されるクラッチ機構41がスプライン嵌合され、メイン軸31の他方の端部は、クラッチカバー19に回転自在に支承されている。
【0035】
クランク軸24の動力は、減速機構38であるプライマリ駆動ギア38aおよびプライマリ従動ギア38bを介して、第一油圧クラッチ41aおよび第二油圧クラッチ41bで構成されるクラッチ機構41へ伝達され、第一油圧クラッチ41aと第二油圧クラッチ41bが油圧回路により選択的に接続されることにより、クランク軸24からメイン軸31へと動力が伝達されるようになっている。
【0036】
リアカバー18を貫通したカウンタ軸32の他方の端部には、セカンダリ駆動ギア37がスプライン嵌合されている。クランク軸24からメイン軸31へ伝達された動力は、ギア変速機構40により選択的に確立された変速段にてセカンダリ駆動ギア37に伝達され、セカンダリ従動ギア16a、ドライブ軸16を介して後輪13(
図1参照)へと伝達されるようになっている。
【0037】
図5は減速機ホルダ28を取外した状態の内燃機関1のミッションホルダ26およびチェンジ系ホルダ27を図示した正面図であり、
図6は、
図5の内燃機関1の変速駆動装置のVI−VI線断面図である。
図5および
図6を参照して、変速機30のシフタギアを移動させることで変速を行わせる変速駆動装置20について、以下説明する。
変速駆動装置20は、変速機ケース17の外側に配設される入力機構50とシフトスピンドル60と操作機構70とを備え、変速に必要な動力が入力機構50のシフトモータ51からシフトスピンドル60へ入力され、シフトスピンドル60の回動に連動して操作機構70のマスターアーム71が作用して間欠的にシフトドラム74を回動させ、シフトフォーク77が変速機30のシフタギアを移動させて変速段の切替を行うものである。
【0038】
入力機構50は、シフトモータ51とシフトモータ51に連結される減速ギア機構52とから構成されている。
図3および
図6に示されるように、シフトモータ51は、その回転軸がクランク軸24と平行になるように前後方向を指向させ、車両前面視でチェンジ系ホルダ27の左端部後面に配設されている。
図6に示されるように、シフトモータ51には、モータ軸51aが前方に突出して設けられており、チェンジ系ホルダ27の左端部後面に形成された開口部27bにモータ軸51aが挿通され、後方からボルト51cによりチェンジ系ホルダ27へ固定される。
モータ軸51aの先端部51bは、チェンジ系ホルダ27と減速機ホルダ28との間に形成され後述する減速ギア機構52が収納される減速機室53の内部へ突出されるようになっており、シフトモータ51の回転動力を減速ギア機構52へ伝達するための駆動ギア52aが一体的に形成されている。
【0039】
図5および
図6に示されるように、減速ギア機構52が収納される減速機室53は、シフトモータ51の前方右側に位置して配置されている。減速機室53に収納される減速ギア機構52は、シフトモータ51のモータ軸51aに一体に形成されている駆動ギア52aと、第一ギア52Aと、第二ギア52Bと、セクターギアである被動ギア52fとからなっており、その回転軸の方向がシフトモータの回転軸と平行になるように配設されている。
【0040】
第一ギア52Aと第二ギア52Bはボールベアリング54a,54b,54c,54dを介して減速機室53を構成するチェンジ系ホルダ27と減速機ホルダ28とに回動自在に支承されている。被動ギア52fは、後述するシフトスピンドル60に相対回転不能に嵌合され、被動ギア52fとシフトスピンドル60との回動中心は一致するよう支持されている。第一ギア52Aは、大径の第一アイドルギア52bと小径の第二アイドルギア52cとからなっており、第二ギア52Bはセクターギアである大径の第三アイドルギア52dと小径の第四アイドルギア52eとからなっている。駆動ギア52aと第一アイドルギア52b、第二アイドルギア52cと第三アイドルギア52d、第四アイドルギア52eと被動ギア52fは、常時噛合っており、シフトモータ51の回転駆動力が駆動ギア52aから被動ギア52fへと減速されて伝達されるようになっている。
【0041】
このように減速ギア機構52は、チェンジ系ホルダ27と減速機ホルダ28との間に形成された減速機室53内に全て配置されており、
図5に示されるように減速機ホルダ28を取外すだけで減速ギア機構52が露出し、減速ギア機構52のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0042】
シフトスピンドル60は、ばね鋼製であって、
図5および
図6に示されるように、車両前面視で減速ギア機構52の右斜め下方に、シフトモータ51の回転軸と軸方向が平行になるように前後方向に指向して配設されている。
【0043】
図7は、
図6の変速駆動装置20の内、シフトスピンドル60を中心に一部拡大した要部拡大図である。
図6および
図7に示されるように、シフトスピンドル60は、中空の円筒状に形成され、軸方向において中央やや前寄りにはシフトスピンドル60の外周面60aが外方へ膨出した拡径部60bが一体に形成されている。
【0044】
図7に示されるように、シフトスピンドルの両端部の内、減速ギア機構52の被動ギア52fが嵌合されているシフトスピンドル60の一方の端部である入力側端部60cは、ボールベアリング61を介して減速機ホルダ28に回動自在に支承されている。シフトスピンドルの両端部の内、後述する操作機構70と連結されるシフトスピンドル60の他方の端部である出力側端部60dは、ニードルベアリング62を介して、変速機ケース17を構成するミッションホルダ26の前面に形成された変速機側支承部26aに回動自在に支承されている。また、シフトスピンドル60の拡径部60bは、チェンジ系ホルダ27に設けられたオイルシール63に挿通され、オイルシール63を介してチェンジ系ホルダ27に回動自在に支承されている。
【0045】
シフトスピンドル60の内部には、シフトスピンドル60と別体のセンサ軸65が、シフトスピンドル60と同一の回動中心軸となるように前後方向に指向して配設されている。シフトスピンドル60の内部である内周面60fの内、出力側端部60dの内周面は、小径に形成された小径部60gとなっている。
【0046】
センサ軸65は、シフトスピンドル60よりもやや長尺な円柱状に形成され、シフトスピンドル60の内周面60fとは間隙を有して離間されるようにシフトスピンドル60の内部に装入されている。センサ軸65の一方の端部である後端部65bはシフトスピンドル60の出力側端部60dの内周面に形成された小径部60gに相対回転不能に圧入され、センサ軸65とシフトスピンドル60との回動中心軸は一致するようになっている。
センサ軸65の外周面65cは、シフトスピンドル60の内周面60fの内、小径部60gとのみ接触し、中央部や入力側端部60cの内周面60fとは間隙を有して離間されるようになっており、センサ軸65の他方の端部である前端部65aの回動角とシフトスピンドル60の出力側端部60dの回動角とは、シフトスピンドル60のねじれに影響を受けることなく一致するようになっている。
【0047】
センサ軸65の前端部65aは、シフトスピンドル60の入力側端部60cから突出するとともに、シフトスピンドル60の入力側端部60cが支承されている減速機ホルダ28に形成された開口部28bを貫通し、シフトスピンドルの回動角を検出する回動角センサ64に接続されている。
【0048】
図5ないし
図7に示されるように、回動角センサ64は、シフトスピンドル60の前方に位置し、減速機ホルダ28の前面に配設されている。
図6および
図7に示されるように、回動角センサ64は、減速機ホルダ28の開口部28bの周囲に形成されたセンサ取付凹部28aに嵌合され、センサ取付用ボルト64aにて減速機ホルダ28の前面に固定され、センサ軸65の前端部65aの回動角を検出することで、シフトスピンドル60の出力側端部60dの回動角が検出されるようになっている。本実施の形態では、回動角センサ64には接触式のポテンショメーターを用いているが、非接触式のポテンショメーターを用いることもできる。
【0049】
本実施の形態では、回動角センサ64は、シフトスピンドル60の入力側端部60cの前方であって、変速機ケース17の外側である減速機ホルダ28の前面に取付けられているため、回動角センサ64をシフトスピンドル60の出力側端部60dの後方である変速機室29内に取付けられた場合に生じる燃焼室や変速機室29からの熱の影響を受けることがなく、回動角センサ64の検出精度を高精度に保つことが可能となり、精度の良い変速操作を行うことができる。また、回動角センサ64が減速機ホルダ28の前面に取付けられることで、センサ用ハーネスの配線や回動角センサ64の交換を容易にすることができる。
【0050】
図6および
図7に示されるように、シフトスピンドル60の出力側端部60d寄りには、操作機構70のマスターアーム71へシフトスピンドル60の回動を伝達する延長カラー部材66が、シフトスピンドル60と同一の回動中心軸となるように前後方向に指向してシフトスピンドル60の外周面60aと間隙を持って外嵌されている。
【0051】
延長カラー部材66は、円筒状に形成され、軸方向において、シフトスピンドル60の接続部60eから中央部近傍までの長さとなっている。延長カラー部材66の後端部66bは、シフトスピンドル60の出力側端部60dよりも入力側端部60c寄りに設けられた接続部60eと、相対回転不能にセレーション嵌合され、延長カラー部材66の前端部66aは、マスターアーム71と連結されている。すなわち、延長カラー部材66は、シフトスピンドル60の接続部60eから後述するマスターアーム71へ向けてシフトスピンドル60の外周面60aと間隙を持って延出されていることとなる。
【0052】
延長カラー部材66とミッションホルダ26の変速機側支承部26aとの間には、ワッシャ67が介装されている。
ワッシャ67には、シフトスピンドル60の出力側端部60dが挿通され、シフトスピンドル60の回動時に延長カラー部材66の後端面66cと変速機側支承部26aとが擦れて摩耗することを防止し、シフトスピンドル60の回動時の摩擦抵抗を減じることで、シフトスピンドル60の回動を安定させることができる。また、マスターアーム71の回動時、延長カラー部材66の入力側端部である後端面66cと変速機側支承部26aとの間には、リターンスプリング72からの軸方向のスラスト力が作用し、摩擦が強くなる傾向にあるが、この部位にワッシャ67を介装させることで、延長カラー部材66やシフトスピンドル60の回動を滑らかにし、精度の良い変速操作が可能となる。
【0053】
次に、シフトスピンドル60の回動に連動してシフトドラム74を間欠的に回動させる操作機構70について以下に説明する。
図6に示されるように、操作機構70は、延長カラー部材66を介してシフトスピンドル60と一体に回動されるマスターアーム71と、マスターアーム71を操作前の位置に戻すように付勢するリターンスプリング72と、マスターアーム71の回動量を規制するストッパ部材73と、マスターアーム71の回動に連動してシフトドラム74を間欠的に回動させるポールラチェット機構78とを備えており、操作機構70は、シフトスピンドル60と入力機構50とともに変速機ケース17を構成するミッションホルダ26の前方、すなわち変速機ケース17の外側に配置されている。
【0054】
図8は、操作機構70とシフトスピンドル60を一部簡略化して示した要部拡大図である。
図6ないし
図8に示されるように、マスターアーム71は、シフトスピンドル60の軸方向において、シフトスピンドル60の出力側端部60dと入力側端部60cとの中央に位置し、シフトスピンドル60と、シフトスピンドル60の右方に配設されたポールラチェット機構78とを接続するように配設されている。
【0055】
図8に示されるようにマスターアーム71は、略三角形状の板状に形成され、一つの角部に円孔71aが形成され、他の一の角部に略台形の規制孔71bが形成され、残りの角部に角丸長方形の駆動孔71cが形成されている。
規制孔71bの端部の内、円孔71a側の端部71dは、
図7に示されるように、マスターアーム71の前面側に屈曲して係止部71eが形成されている。
【0056】
図7に示されるように、マスターアーム71の円孔71aは延長カラー部材66の外径と同径に形成され、マスターアーム71の円孔71aには、シフトスピンドル60と延長カラー部材66の前端部66aとが挿通されている。延長カラー部材66の前端部66aは、マスターアーム71の円孔71aの内周面71fに一体に溶接されており、マスターアーム71は、シフトスピンドル60の回動中心軸を中心にシフトスピンドル60の回動に連動して一体に回動されるようになっている。
【0057】
図8に示されるように、マスターアーム71の規制孔71bには、ストッパ部材であるストッパピン73がシフトスピンドル60に軸方向が平行になるように前後方向に指向して挿通されている。
ストッパピン73は、規制孔71bよりも小さな円柱状に形成されてミッションホルダ26に圧入固定されており、シフトスピンドル60の回動に連動してマスターアーム71が回動されたときに、規制孔71bの内周がストッパピン73に当接することでマスターアーム71の回動量が規制されるようになっている。
【0058】
図6および
図7に示されるように、シフトスピンドル60の軸方向において、延長カラー部材66とシフトスピンドル60の拡径部60bとの間には、マスターアーム71が操作前の位置に戻る方向に付勢するリターンスプリング72が設けられている。リターンスプリング72は、コイル部72aと、コイル部72aから延出する二本の端部72b,72bとからなっている。
コイル部72aには、コイル部72aの内径よりも小径に形成されたシフトスピンドル60がコイル部72aを貫通して配置されている。
また、
図8に示されるように、二本の端部72b,72bは、マスターアーム71の前面に沿って規制孔71bへと延出され、リターンスプリング72の両端部72b,72bは、マスターアーム71の係止部71eと、ストッパピン73を間に挟むように、マスターアームの外縁まで延ばされている。
【0059】
図7および
図8に示されるように、シフトスピンドル60の軸方向において、延長カラー部材66とシフトスピンドル60の拡径部60bとの間には、後述するリターンスプリング72が外装されるスプリングガイドカラー68が前後方向に指向して設けられている。スプリングガイドカラー68は、円筒状に形成され、スプリングガイドカラー68の内径は、シフトスピンドル60の外径と略等しく設定されており、スプリングガイドカラー68は、シフトスピンドル60とリターンスプリング72のコイル部72aとの間に、シフトスピンドル60と相対回転可能に介装されている。
【0060】
シフトスピンドル60とリターンスプリング72のコイル部72aとの間にスプリングガイドカラー68が介装されているため、シフトスピンドル60の径方向のずれが抑制され、シフトスピンドル60を細くすることができる。また、シフトスピンドル60の外径に合わせてコイル部72aの内径を小さくする必要がなく、端部72bの径が細くなりリターンスプリング72の付勢力が変化することがない。
【0061】
図9は、
図8の状態からマスターアーム71が一方向へ回動した状態の正面図である。
図8に示されるように、シフトスピンドル60の径方向において、シフトスピンドル60と係止部71eとストッパピン73とが同一線上にあるとき、マスターアーム71は中立位置にある。そして、入力機構50からの駆動力の入力によりシフトスピンドル60が回動され、マスターアーム71がいずれかの方向へ回動されると、
図9に示されるように、リターンスプリング72の一方の端部72bがストッパピン73に押えられ、他方の端部72bがマスターアーム71の係止部71eによりリターンスプリング72のバネ力に抗して押し開かれるので、マスターアーム71には、リターンスプリング72から操作前の中立位置に戻そうとする付勢力が与えられる。
【0062】
入力機構50からの駆動力の入力を停止し、シフトスピンドル60を介してマスターアーム71に作用した力が無くなると、リターンスプリング72によりマスターアーム71はシフトスピンドル60とともに操作前の中立位置に戻される。
【0063】
上述したように、マスターアーム71の回動量は、マスターアーム71の規制孔71bがストッパピン73に当接することで制限されており、変速スピードを上げると、マスターアーム71が勢いよくストッパピン73に衝突することで衝撃が発生することになる。このマスターアーム71に生じた衝撃は、延長カラー部材66を通ってシフトスピンドル60の接続部60e、シフトスピンドル60の入力側端部60c、減速ギア機構52の被動ギア52fへと順に伝達されるので、マスターアーム71が、シフトスピンドル60の軸方向において、入力機構50に近い位置に配設されていても、シフトスピンドル60自体の軸長を延長することなく、衝撃の伝達経路を同軸上で延長カラー部材66の長さ分長くすることができ、衝撃を減衰させることが可能となる。また、マスターアーム71から入力機構50へ伝達される衝撃を、延長カラー部材66とシフトスピンドル60とのねじれ変形で抑制することができる。
【0064】
図6に示されるように、変速機30を変速させるシフトドラム74は、変速機室29の内部であって、ミッションホルダ26の後面に配置され、シフトドラム74の前端部74aから、シフトドラム軸74dが、前方に突出して設けられている。
【0065】
図6および
図8に示されるように、シフトドラム軸74dの軸方向中央部には、シフトドラム74を間欠的に回動させるポールラチェット機構78が設けられている。
【0066】
ポールラチェット機構78は、マスターアーム71の駆動孔71cに摺動自在に嵌合される従動突起79aが形成されたシフト入力部材79と、シフトドラム74と一体に回動する回動部材80と、回動部材80に内蔵され回動部材80の内周に係合するように付勢される一対のポール81と、を備えるものであり、マスターアーム71の回動により、駆動孔71c内を摺動する従動突起79aに案内されてシフト入力部材79が一方向に回動されると、ポールラチェット機構78の一方のポール81の先端が起立して回動部材80に係止され、シフト入力部材79の回動に連動して回動部材80が回動され、シフトドラム74を間欠的に回動させ、変速機30の変速段が確定されるようになっている。
【0067】
図6に示されるように、シフトドラム74には、外周面74bに係合溝74cが形成されており、前端部74aがボールベアリング75を介してミッションホルダ26に回動自在に支承されている。シフトドラム74の後端部(不図示)は、シフトドラム74がカセットユニットとして変速機室29に挿入されると、ニードルベアリング(不図示)を介してリアカバー18に回動自在に支承される。
【0068】
シフトドラム74の左右には、シフトフォーク軸76が、シフトドラム74と平行となるように、前後方向に指向して配設されている。シフトフォーク軸76は、一端部がミッションホルダ26に支持されている。シフトフォーク軸76の他端部は、シフトフォーク軸87がカセットユニットとして変速機室29に挿入されると、リアカバー18に支持されるようになっている。
【0069】
シフトフォーク軸76には、変速機30のシフタギアを移動させる4個のシフトフォーク77が(2個は不図示)、軸方向に摺動自在に支承されている。シフトフォーク77の基部77aは、シフトドラム74の係合溝74cに係合され、シフトフォーク77の先端部77bは、変速機30のシフタギアのフォーク係合溝40aに係合されている(
図4参照)。シフトフォーク77は、シフトドラム74の回動により係合溝74cに案内されて、シフトフォーク軸76の軸方向に摺動し、変速機30のシフタギアを摺動させることで、変速段が選択的に確立可能となっている。
【0070】
図6に示されるように、シフトドラム軸74dの先端部74eは、チェンジ系ホルダ27に形成された開口部27dを貫通し、シフトドラム74の変速位置を検出するシフトポジションセンサ82に接続されている。
シフトポジションセンサ82は、シフトドラム74の前方に位置し、チェンジ系ホルダ27の前面に配設されており、チェンジ系ホルダの開口部27dの周囲に形成されたセンサ取付凹部27cに嵌合し、センサ取付用ボルト82aにてチェンジ系ホルダ27の前面に固定されており、シフトポジションセンサ82は、シフトドラム74の変速位置を検出するようになっている。
【0071】
シフトドラム74の前方であって、シフトポジションセンサ82の周囲には、シフトドラム74のニュートラル位置とリバース位置を検出しECUへ信号を送るためのNR検出装置83が設けられている。
NR検出装置83は、シフトドラム軸74dと一体に回動するポジションプレート84と、ポジションプレート84の回動に伴ってシフトドラム74がニュートラル位置となったことを検出するニュートラルスイッチ85と、ポジションプレート84の回動に伴ってシフトドラム74がリバース位置となったことを検出するリバースポジションスイッチ86とを備えている。
ポジションプレート84は、シフトドラム軸74dの軸方向において、シフト入力部材79とチェンジ系ホルダ27との間に、シフトドラム軸74dにシフトドラム軸74dと相対回転不能に軸支されている。ポジションプレート84は、円盤状に形成され、ポジションプレート84の外周縁には、前方へ突出したフランジ部84aが一体形成され、ポジションプレート84のフランジ部84aよりも径方向内側には、ピン84bが圧入されている。
【0072】
図6に示されるように、ニュートラルスイッチ85とリバースポジションスイッチ86には、摺動可能な移動子85a,86aが設けられており、移動子85a,86aがポジションプレート84のピン84bやフランジ部84aにより押込まれることで、変速機30のニュートラル位置とリバース位置とが検出されるようになっている。
【0073】
図5および
図6に示されるように、ニュートラルスイッチ85は、チェンジ系ホルダ27の前面の内、ポジションプレート84のピン84bの周回軌道上であってシフトドラム軸74dの左斜め下に配置され、リバースポジションスイッチ86は、チェンジ系ホルダ27の前面の内、ポジションプレート84のフランジ部84aの周回軌道上であってシフトドラム軸74dの左方に配置されている。
【0074】
以上に述べた本発明の一実施の形態については、以下の効果を奏する。
マスターアーム71がシフトスピンドル60の軸方向において、シフトスピンドル60の入力側端部60cと出力側端部60dとの間に位置するように配置され、マスターアーム71とシフトスピンドル60の出力側端部60dとが、シフトスピンドル60の外周面60aと間隙を持った延長カラー部材66により連結されている。この場合、シフトスピンドル60の軸長内で、入力機構50とマスターアーム71間の実質的な軸長を延長カラー部材66の長さの分長くすることとなり、入力機構50とマスターアーム71間のねじれを延長カラー部材66の長さの分大きくすることができ、入力機構50と操作機構70とが変速機ケース17外方で同じ側に配されるような場合であっても、入力機構50へ伝達されるマスターアームからの衝撃を延長カラー部材66とシフトスピンドル60のねじれ変形で吸収し、抑制することが可能となり、高速で精度の良い変速操作を行うことができる。
【0075】
マスターアーム71からの衝撃は、延長カラー部材66を通ってシフトスピンドル60の接続部60e、シフトスピンドル60の入力側端部60c、減速ギア機構52の被動ギア52fへと順に伝達されることとなり、シフトスピンドル60の軸長を延長することなく、衝撃の伝達経路を同軸上で長くすることができ、シフトスピンドル60の長さが短いレイアウトにおいても入力機構50へ伝達されるマスターアーム71からの衝撃を減衰させることが可能となり、高速で精度の良い変速操作を行うことができる。
【0076】
シフトスピンドル60とリターンスプリング72のコイル部72aとの間に、スプリングガイドカラー68を介在させることで、リターンスプリング72の大きさを変えずにシフトスピンドル60の径を小さくすることができるとともに、シフトスピンドル60の径方向へのずれを防ぐことができ、さらに精度の良い変速操作を行うことが可能となる。
【0077】
シフトスピンドル60の縮径に合わせてリターンスプリング72を小さくする必要がなく、リターンスプリング72の付勢力を一定に保つことができるとともに、シフトスピンドル60の小径化に伴いシフトスピンドル60のねじり剛性が低下し、シフトスピンドル60をねじれ易くさせることが可能となり、入力機構50へ伝達される衝撃を吸収し、高速で精度の良い変速操作を行うことができる。
【0078】
延長カラー部材66の後端面66cと変速機側支承部26aとの間には、ワッシャ67が介装されているため、延長カラー部材66の後端面66cと変速機側支承部26aとが擦れ、摩耗や回動動作のずれが発生することを抑制することができる。特に、シフトスピンドル60の回動時、延長カラー部材66の後端面66cと変速機側支承部26aとの間には、リターンスプリング72からの軸方向のスラスト力が作用し、摩擦も強くなるが、この部位にワッシャ67を介装させることで、延長カラー部材66やシフトスピンドル60の回動を滑らかにし、さらに精度良く変速操作を行うことができる。
【0079】
シフトスピンドル60にはばね鋼が用いられており、シフトスピンドル60自体の弾性率を向上させることで、シフトスピンドル60をねじれ易くさせ、入力機構50へと伝達される衝撃を吸収し、高速で精度の良い変速操作を行うことができる。
【0080】
シフトスピンドル60が中空の円筒状に形成されたことでシフトスピンドル60のねじり剛性が低下し、シフトスピンドル60をねじれ易くさせることが可能となり、入力機構50へ伝達される衝撃を吸収することができ、高速で精度の良い変速操作を行うことができる。
【0081】
シフトスピンドル60の内部には、センサ軸65が、シフトスピンドル60の内周面60fとは間隙を有して離間されるように装入され該センサ軸65の一方の端部である後端部65bは、シフトスピンドル60の出力側端部60dの内周面60fと連結され、回動角センサ64は、センサ軸65の他方の端部である前端部65aにセンサ軸65の回動角を検出するように接続されているので、センサ軸65と一体に固定されているシフトスピンドル60の出力側端部60dの回動角を回動角センサ64で検出することができ、回動角センサ64の検出精度を正確なものとすることが可能となり、精度良く変速操作を行うことができる。
【0082】
回動角センサ64が変速機ケース17の外側であって、減速機ホルダ28の前面に取付けられたため、回動角センサ64をシフトスピンドル60の出力側端部60dの後方である変速機室29内に取付けられた場合に生じる燃焼室や変速機室29からの熱の影響を受けることもなく、回動角センサ64の検出精度を高精度に保つことが可能となり、精度の良い変速操作を行うことができる。また、回動角センサ64が減速機ホルダ28の前面に取付けられることで、センサ用ハーネスの配線や回動角センサ64の交換を容易にすることができる。
【0083】
本実施の形態のように、入力機構50とシフトスピンドル60と操作機構70とが変速機ケース17を構成するミッションホルダ26の前方同一側に配置された場合、すなわちこれらが変速機ケース17の外側に配置された場合であっても、回動角センサ64が変速機ケース17の外側であって、減速機ホルダ28の前面に取付けることが可能なため、回動角センサ64をシフトスピンドル60の出力側端部60dの後方である変速機室29内に取付けられた場合に生じる熱の影響を受けることがなく、回動角センサ64の検出精度を高精度に保つことが可能となり、精度の良い変速操作を行うことができる。
【0084】
以上、本実施の形態について図面を参照して説明したが、実施形態は上記の説明内容に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能である。