特許第6240571号(P6240571)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6240571湿式スクラバノズルシステム及びプロセスガスを浄化するために使用する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240571
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】湿式スクラバノズルシステム及びプロセスガスを浄化するために使用する方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/34 20060101AFI20171120BHJP
   B01D 47/06 20060101ALI20171120BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20171120BHJP
   B01D 53/18 20060101ALI20171120BHJP
   B05B 1/04 20060101ALI20171120BHJP
   B05B 1/14 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   B01D53/34
   B01D47/06 Z
   B01D53/14
   B01D53/18ZAB
   B05B1/04
   B05B1/14 Z
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-147650(P2014-147650)
(22)【出願日】2014年7月18日
(65)【公開番号】特開2015-20169(P2015-20169A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2014年7月18日
【審判番号】不服2016-1441(P2016-1441/J1)
【審判請求日】2016年2月1日
(31)【優先権主張番号】13/945,425
(32)【優先日】2013年7月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(72)【発明者】
【氏名】デニス ジェイムズ ラスロ
【合議体】
【審判長】 新居田 知生
【審判官】 永田 史泰
【審判官】 中澤 登
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−502971(JP,A)
【文献】 特開2013−111527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D53/34-53/73
B01D53/74-53/85
B01D53/92
B01D53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿式スクラバタワーと、少なくとも第1のスプレーレベルシステムと第2のスプレーレベルシステムとを備えるプロセスガス浄化用の湿式スクラバであって、
1のスプレーレベルシステムに、前記第1のスプレーレベルシステムに設けられたノズルによる噴霧のために吸着液が供給され
2のスプレーレベルシステムは、前記湿式スクラバタワー内で前記第1のスプレーレベルシステムの鉛直方向上方に配置されていて、前記第2のスプレーレベルシステムに、前記第2のスプレーレベルシステムに設けられたノズルによる噴霧のために吸着液が供給され
各スプレーレベルシステムは、複数の流体接続したノズルを有する管部分と該管部分から垂直に延在する複数の管延長部であって各々流体接続したノズルを有する管延長部を備えていて、前記湿式スクラバタワー内への各スプレーレベルシステムの吸着液注入口は、各スプレーレベルシステムの管部分が互いに10〜20°の水平角度をなすように互いに水平10°〜20°ずていて、0.3メートル〜0.5メートルの鉛直方向高さ内に配置されており、前記ノズルが、前記湿式スクラバタワーの水平方向断面全体にわたって均等に分配されており、
記ノズルの各々は、前記湿式スクラバタワーを通過する環境汚染物を含むプロセスガスから環境汚染物を除去して浄化されたプロセスガスを生成するために、前記湿式スクラバタワーの内部においてスプレークラウド状の吸着液を噴霧する、スプレー角度が150°〜180°である広角スプレーノズルである、
ことを特徴とする、プロセスガスを浄化する湿式スクラバ。
【請求項2】
前記プロセスガスは、5m/s〜15m/sの速度で前記湿式スクラバタワーを通過する、請求項1記載の湿式スクラバ。
【請求項3】
前記吸着液は、石灰石スラリ又はアルカリ性ナトリウム化合物溶液である、請求項1又は2記載の湿式スクラバ。
【請求項4】
前記吸着液は、アンモニア化合物溶液又はアミン溶液である、請求項1又は2記載の湿式スクラバ。
【請求項5】
前記環境汚染物は、二酸化硫黄である、請求項1から4までのいずれか1項記載の湿式スクラバ。
【請求項6】
前記環境汚染物は、酸性ガスである、請求項1から4までのいずれか1項記載の湿式スクラバ。
【請求項7】
湿式スクラバを用いて環境汚染物を含むプロセスガスを浄化する方法であって、
少なくとも第1及び第2のスプレーレベルシステムであって、各スプレーレベルシステムが、複数の流体接続したノズルを有する管部分と該管部分から垂直に延在する複数の管延長部であって各々流体接続したノズルを有する管延長部を備え、前記ノズルの各々が150°〜180°のスプレー角度をもたらす広角スプレーノズルである、少なくとも第1及び第2のスプレーレベルシステムを、0.3メートル〜0.5メートルの鉛直方向高さの範囲内で配置し、
各スプレーレベルシステムの管部分が互いに10〜20°の水平角度をなすように前記湿式スクラバタワー内への各スプレーレベルシステムの吸着液注入口互いに水平10°〜20°らして配置し前記ノズルを、前記湿式スクラバタワーの水平方向断面全体にわたって均等に分配させ、
前記複数の広角スプレーノズルによるスプレークラウド状の吸着液噴霧のために前記吸着液注入口を通して前記少なくとも第1及び第2のスプレーレベルシステムに吸着液を供給し、
前記吸着液に接触し、環境汚染物を除去して浄化されたプロセスガスを生成するために前記湿式スクラバタワーを通してプロセスガスの鉛直方向上向きの流れを通過させる、
ことを特徴とする、湿式スクラバを用いて環境汚染物を含むプロセスガスを浄化する方法。
【請求項8】
前記プロセスガスは、5m/s〜15m/sの速度で鉛直方向上向きに湿式スクラバタワーを通流する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記吸着液は、石灰石スラリ、アルカリ性ナトリウム化合物溶液、アンモニア化合物溶液又はアミン溶液である、請求項7又は8記載の方法。
【請求項10】
前記環境汚染物は、二酸化硫黄、二酸化炭素又は酸性ガスである、請求項7から9までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルシステム及びプロセスガス浄化ノズルシステムを用いる方法に関する。ノズルシステムは、湿式スクラバの湿式スクラバタワーに使用される。湿式スクラバの湿式スクラバタワー内に配置されて、ノズルシステムは、少なくとも、複数のノズルを具備する第1のスプレーレベルシステムであって、ズルによる噴霧のために吸着液が供給される第1のスプレーレベルシステムと、複数のノズルを具備する第2のスプレーレベルシステムであって、湿式スクラバタワーの内で第1のスプレーレベルシステムの鉛直方向上方に配置されていて、ノズルによる噴霧のために吸着液が同様に供給される第2のスプレーレベルシステムとを備える。
【0002】
本発明は、更に、プロセスガス浄化使用される湿式スクラバ、及びプロセスガス浄化に同湿式スクラバを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
石炭、油、泥炭、廃棄物等の燃料を発電所のような燃焼プラントにおいて燃焼させることにより、他の成分の中でも二酸化硫黄SO2のような硫黄酸化物SOxや二酸化炭素CO2を含む高温プロセスガスが発生る。二酸化硫黄は、環境汚染物である。従って、大気中にプロセスガスが放出される前にプロセスガスに含まれる二酸化硫黄の少なくとも一部を除去する必要がある。更に、環境への二酸化炭素ガスの影響に対する関心が高まるにつれ、大気中に放出される前にプロセスガスから二酸化炭素を除去することも重要になっている。
【0004】
従来慣用の湿式スクラバスプレータワーは、典型的には2メートル〜3メートルの間隔で配置された幾つかのスプレーレベルシステムを有し、スプレーレベルシステムは、1方向又は時には2方向に約90°〜約120°の噴霧円錐角を提供する噴霧ノズルを具備する。
【0005】
国際公開第2012/076947号パンフレットに、接触プレートの使用により改善されたある種の慣用の湿式スクラバが開示されている。湿式スクラバ使方法では、第2のスプレーレベルシステムのノズルにより噴霧される吸着液を、第1のスプレーレベルシステムの少なくとも1つのノズルの近くから逸らせる。第1のスプレーレベルシステム自体は、第2のスプレーレベルシステムの鉛直方向下方に配置されている。第2のスプレーレベルシステムは、第1のスプレーレベルシステムの少なくとも1つのノズルの鉛直方向上方に配置された逸らせ接触プレートを備える。逸らせ接触プレートにより逸らされた吸着液は、第1のスプレーレベルシステムの少なくとも1つのノズルにより噴霧される吸着液により直前に接触されたプロセスガスに接触する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2012/076947号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、上述の先行技術による湿式スクラバ及び湿式スクラバ使方法に比してより効率的でより低コストの、プロセスガスを浄化する湿式スクラバ及び湿式スクラバ使方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、独立請求項に記載の湿式スクラバ及び湿式スクラバを使用してプロセスガスを浄化する方法により解決される。
【発明の効果】
【0009】
湿式スクラバは、ズルシステムが内部に配置された湿式スクラバタワーを備える。ノズルシステムは、少なくとも、湿式スクラバタワー内部に配置された複数のノズルを具備する第1のスプレーレベルシステムであって、複数のノズルによる噴霧のために吸着液が供給される第1のスプレーレベルシステムと、湿式スクラバタワーの内で第1のスプレーレベルシステムの鉛直方向上方に配置された複数のノズルを具備する第2のスプレーレベルシステムであって、第2のスプレーレベルシステム複数のノズルによる噴霧のために吸着液が供給される第2のスプレーレベルシステムとを備える。ノズルシステムは、2個〜6個の鉛直方向に「スタックされた」スプレーレベルシステムを備えてよいが、多くの場合、規制基準を平均的に満たす又は超えるようにプロセスガスを効率的に浄化するために、2個〜3個又は4個の鉛直方向にスタックされたスプレーレベルシステムを備えてよい。
【0010】
ノズルシステムに適したノズルは、フラットな比較的幅広い、約150°〜約180°のスプレー角度を提供する。所望されるフラットな比較的幅広いスプレー角度、例えば広フラット扇形スプレー又は広中空スプレーを提供することができる、市販のノズルとしては、米国60187イリノイ州ウィートン所在のSprayng Systems社、米国01301マサチューセッツ州グリーンフィールド所在のBete Fog Nozzle社、及び米国60174イリノイ州セイントチャールズ所在のLechler社製のものがある。所望されるフラットな比較的幅広いスプレー角度を提供するノズルの使用は、湿式スクラバタワー内部でスプレーレベルシステムの比較的接近した「スタック」を可能にする。従って、同量の液体を供給しながら、スプレー域、つまり最下位のスプレーレベルシステムから最上位のスプレーレベルシステムまでの鉛直方向の測定領域は大幅に低減される。利点は、低減されたスプレー域内での全方向の吸着液の極めて高密度のスプレーにあり、従って、最小限に抑えられた機器サイズ、エネルギ消費及び圧力低下を伴う完全なガス/吸着液接触が可能である。
【0011】
湿式スクラバタワー内で、例えば2個〜約6個の各スプレーレベルシステムは、各スプレーレベルシステムの鉛直方向で直ぐ上及び/又は下に配置されたスプレーレベルシステムから約0.3〜0.5メートルの距離で配置されている。フラットなスプレーを供給するノズルは、例えば低減された圧力低下のような追加的な利点を提供する壁取付けも可能にする。各スプレーレベルシステムは、注入口を具備し、この注入口は、注入口に吸着液を供給するために吸着液供給部に流体接続されている。各注入口は、湿式スクラバタワーへの導入地点を有し、この位置は、各スプレーレベルシステムの鉛直方向で直ぐ上及び/又は下に配置されたスプレーレベルシステムの注入口の湿式スクラバタワーへの導入地点から水平に約10°〜20°ずれている。湿式スクラバ自体は、約6メートル〜10メートルの湿式スクラバタワースプレー域鉛直方向高さを要する同数のスプレーレベルを具備する先行技術のシステムにして、約1メートル以下の湿式スクラバタワースプレー域鉛直方向高さを要する少なくとも2つのスプレーレベルシステムを具備する湿式スクラバを有する。システムの、ずらされた吸着液注入口及びフラットな比較的広角のスプレーノズルは、湿式スクラバタワー内部でのスプレーレベルシステム及びノズルのよりコンパクトな配置を可能にする。このよりコンパクトな配置は、スプレー域内の全方向の高密度の吸着液スプレーを提供する。この高密度のスプレーは、吸着液及びプロセスガスのいわゆる「クラウド」と称することができる強い液体/ガスの混合を生じさせる。吸着液及びプロセスガスのこのクラウドは、湿式スクラバタワー内で、吸着液による、二酸化硫黄及び他の酸性ガスのようなプロセスガス汚染物の極めて効率的な吸着をもたらす。このより高密度のスプレーは、同様にプロセスガス層形成及び吸着回避を排除し、従って、更にプロセスガス浄化効率を高める。
【0012】
湿式スクラバ使方法は、複数のフラットな比較的広角のスプレーノズルをそれぞれ具備する少なくとも第1及び第2のスプレーレベルシステムを、約0.3メートル〜約0.5メートルの湿式スクラバタワー鉛直方向高さの範囲内に配置し、少なくとも第1及び第2のスプレーレベルシステムの各々の吸着液注入口を、丸い又は円形の湿式スクラバタワーへの導入地点が互いに約10°〜約20°をなすように水平方向に離して配置し、複数のフラットな比較的広角のスプレーノズルによる吸着液噴霧のために吸着液注入口を通して少なくとも第1及び第2のスプレーレベルシステムに吸着液を供給し、プロセスガスと吸着液とを接触させて浄化されたプロセスガスを生成するために5m/s〜15m/sの速度で湿式スクラバタワーを通してプロセスガスの鉛直方向上向きの流れを通過させる、ことを含む。
【0013】
5m/sを下回るプロセスガス速度では、あまり効率的ではない吸着液とプロセスガスとの混合が生じる傾向にあるので、吸着液接触のために湿式スクラバタワーを通るプロセスガス流れの5m/s〜15m/sの速度が好適である。同様に、15m/sを上回るプロセスガス速度では、湿式スクラバタワー内のプロセスガス圧力低下が許容されない高いレベルに増加する傾向にある。高い圧力低下レベルは、プロセスガスを通流させて湿式スクラバタワーから外へ出すために、大量のエネルギ及び関連する高いコストが要求されるので、許容されない。又、15m/sを上回るプロセスガス速度では、大量の吸着液がプロセスガス内で連行され、湿式スクラバタワーミスト分離器における液体負荷を増大させ、潜在的に湿式スクラバタワーから失われる吸着液が不所望に増加する。
【0014】
概して、本明細書には、湿式スクラバタワーと、少なくとも第1のスプレーレベルシステムと第2のスプレーレベルシステムとを備えるプロセスガス浄化用湿式スクラバであって、第1のスプレーレベルシステムに、第1のスプレーシステムに設けられたノズルによる噴霧のために吸着液が供給され、第2のスプレーレベルシステムは、湿式スクラバタワー内で第1のスプレーレベルシステムの鉛直方向上方に配置されていて、第2のスプレーレベルシステムに、第2のスプレーレベルシステムに設けられたノズルによる噴霧のために吸着液が供給され、各スプレーレベルシステム注入口は、互いに水平にずれていて、コンパクトな鉛直方向高さ内に配置されており、各ノズルは、湿式スクラバタワーを通過する環境汚染物を含むプロセスガスから環境汚染物を除去して浄化されたプロセスガスを生成するために、湿式スクラバタワーの内部において吸着液を噴霧するフラットな広角スプレーノズルである、プロセスガスを浄化する湿式スクラバが記載されている。湿式スクラバは、約0.3メートル〜0.5メートルのコンパクトな鉛直方向高さを有し、その際、プロセスガスは、約5m/s〜15m/sの速度で湿式スクラバを通過させられる。湿式スクラバ内で噴霧される吸着液は、石灰石スラリ、アルカリ性ナトリウム化合物溶液又は択一的にアンモニア化合物溶液又はアミン溶液である。ノズルは、二酸化硫黄又は酸性ガスのような環境汚染物を除去するために、約150°〜180°のノズルスプレー角度で吸着液を噴霧する。
【0015】
湿式スクラバを用いて環境汚染物を含むプロセスガスを浄化する方法は、複数のフラットな広角スプレーノズルをそれぞれ具備する少なくとも第1及び第2のスプレーレベルシステムを湿式スクラバタワーの内部にコンパクトに配置し、少なくとも第1及び第2のスプレーレベルシステムの各々の吸着液注入口を互いに水平にずらして配置し、複数のフラットな広角スプレーノズルによる吸着液噴霧のために吸着液注入口を通して少なくとも第1及び第2のスプレーレベルシステムに吸着液を供給し、吸着液に接触し、環境汚染物を除去して浄化されたプロセスガスを生成するために湿式スクラバタワーを通してプロセスガスの鉛直方向上向きの流れを通過させる、ことを含む。記載の方法のために、少なくとも第1及び第2のスプレーレベルシステムは、約0.3メートル〜約0.5メートルの鉛直方向高さの範囲内にコンパクトに配置されており、その際、互いに水平に約10°〜約20°吸着液注入口がずらされている。方法のノズルは、約150°〜180°のスプレー角度を提供するフラットな広角スプレーノズルである。湿式スクラバタワーを通して鉛直方向上向きに流れるプロセスガスは、石灰石スラリ、アルカリ性ナトリウム化合物溶液、アンモニア化合物溶液又はアミン溶液である吸着液に接触して環境汚染物、例えば二酸化硫黄、二酸化炭素又は酸性ガスを除去するために約5m/s〜15m/sの速度で流れる。
【0016】
本発明の更なる対象及び特徴は、以下の発明を実施するための形態及び特許請求の範囲から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1の態様による湿式スクラバの一部を破断して示す概略斜視図である。
図2図1のII−II線に沿ったミスト分離器の直ぐ下方において図1の湿式スクラバのスプレーレベルシステムを上からみた概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に本発明の実施の形態を、図示の態様を用いて詳しく説明する。
【0019】
図1には、湿式スクラバ10が示されている。湿式スクラバ10は、石炭、油、泥炭、廃棄物等のような燃料を燃焼させるために作動するボイラ12内で発生させられた煙道ガスFとしてのプロセスガスに含まれる二酸化硫黄含有物及び同等の環境汚染物の少なくとも一部を除去するために働く。プロセスガス及び煙道ガスFは、同義であるとみなされ、当該明細書全般にわたって置き換え可能である。
【0020】
湿式スクラバ10は、鉛直方向に開放する円形又は丸い湿式スクラバタワー14を備える。湿式スクラバタワー14は、内部16と、流体接続されたボイラ12からの煙道ガスFの流れのための、湿式スクラバタワー14の基部20に配置されたプロセスガス注入口18とを備える。ボイラ12からの煙道ガスFは、浄化のために、湿式スクラバタワー14の、流体接続された内部16に流入し、浄化された煙道ガスCFとして、湿式スクラバタワー14の上部24に配置されたプロセスガス出口22から流出する。浄化された煙道ガスCFは、二酸化硫黄含有物及び同等の環境汚染物の少なくとも一部が除去された煙道ガスである。鉛直方向上向きの矢印として図1に示されているように、煙道ガスFは、湿式スクラバタワー14の内部16において実質的に鉛直方向上向きに移動し、浄化された煙道ガスCFとして湿式スクラバタワー14から外へ出される。
【0021】
湿式スクラバタワー14の基部20の底28に吸着液タンク26が配置されている。吸着液タンク26は、流体接続された酸化処理装置26aを具備する。未使用の石灰石、CaCO3又はアルカリ性ナトリウム化合物溶液のような吸着が、石灰石又はアルカリ性ナトリウム化合物溶液貯蔵域32及び供給管路34に流体接続された、流体接続された吸着供給装置30から吸着液タンク26に供給される。吸着液タンク26は、択一的に、湿式スクラバタワー14の外側に位置決めしてよく、石灰石又はアルカリ性ナトリウム化合物溶液の供給物が、択一的に、乾燥粉末、スラリ又はその両方として、他の位置で湿式スクラバ10に進入してよいことが判る。
【0022】
湿式スクラバ10は、更に、第1の循環ポンプ36を備える。第1の循環ポンプ36は、流体接続された吸着液循環管路38に、時には石灰石スラリ又はアルカリ性ナトリウム化合物溶液と称される吸着液を循環させる。吸着液は、第1の循環ポンプ36により、吸着液タンク26から、流体接続された循環管路38を通して、基部20の隣の、湿式スクラバタワー14の中間部42において水平方向に内部16を横切って配置された第1のスプレーレベルシステム40に流体接続された、湿式スクラバタワー14への流入部40bの位置で吸着液注入口40aに向けてポンピングされる。湿式スクラバ10は、更に、第2の循環ポンプ44を備える。第2の循環ポンプ44は、流体接続された吸着液循環管路46に、吸着液を、流体接続された吸着液タンク26から循環させる。吸着液は、第2の循環ポンプ44により、流体接続された循環管路46を通して、鉛直方向で第1のスプレーレベルシステム40の上方約0.3m〜0.5mで、湿式スクラバタワー14の中間部42において水平方向に内部16を横切って配置された第2のスプレーレベルシステム48に流体接続された、湿式スクラバタワー14への流入部40bの位置で吸着液注入口40aに向けてポンピングされる。湿式スクラバ10は、更に、第3の循環ポンプ50を備える。第3の循環ポンプ50は、流体接続された吸着液循環管路52に、吸着液を、流体接続された吸着液タンク26から循環させる。吸着液は、第3の循環ポンプ50により、流体接続された循環管路52を通して、第2のスプレーレベルシステム48の上方で、湿式スクラバタワー14の中間部42において水平方向に内部16を横切って配置された第3のスプレーレベルシステム54に流体接続された、湿式スクラバタワー14への流入部40bの位置で吸着液注入口40aに向けてポンピングされる。湿式スクラバ10は、更に、第4の循環ポンプ50aを備える。第4の循環ポンプ50aは、流体接続された吸着液循環管路52aに、吸着液を、流体接続された吸着液タンク26から循環させる。吸着液は、第4の循環ポンプ50aにより、流体接続された循環管路52aを通して、第3のスプレーレベルシステム54の上方で、湿式スクラバタワー14の中間部42において水平方向に内部16を横切って配置された第4のスプレーレベルシステム54aに流体接続された、湿式スクラバタワー14への流入部40bの位置で吸着液注入口40aに向けてポンピングされる。図1に示された距離CCは、1つのスプレーレベルシステム、例えば第1のスプレーレベルシステム40の流入部40bの位置の鉛直方向の中間点から、別のスプレーレベルシステム、例えば第4のスプレーレベルシステム54aの流入部40bの位置の鉛直方向の中間点までの測定により決定される。距離CCは、好適には、距離CCの範囲内でスプレーレベルシステムあたり約0.3m〜約0.5mである。態様では、二酸化硫黄除去効率の低下の原因となる、隣り合うスプレーレベルシステムの間の所望されない吸着液スプレー干渉なく、各スプレーレベルシステムに装着された、複数のフラットな比較的広角のスプレーノズル56の使用により、距離CCは、大幅に低減されている。より大きな距離CCは、あまり好適ではない。なぜならば、より大きな距離CCは、要求される湿式スクラバタワー14の鉛直方向の全高を増加させ、従って投資及び運転コストを増加させるからである。湿式スクラバ10が、湿式スクラバタワー14の内部16に配置された、4つよりも多い又は少ないスプレーレベルシステム、例えば2個〜10個のスプレーレベルシステムを有してよいことが判る。
【0023】
第1のスプレーレベルシステム40は、ポンプ36により噴霧ノズル56に供給される吸着液を微細に分散するために流体接続された多数の噴霧ノズル56を具備する管部分58を含む。吸着液は、ノズル56により微細に分散され、吸着液と湿式スクラバタワー14の内部16を上向きに通流する煙道ガスとの間の効果的な接触が達成される。全ての又は幾つかのノズル56は、例えば、米国60187イリノイ州ウィートン所在のSprayng Systems社、米国01301マサチューセッツ州グリーンフィールド所在のBete Fog Nozzle社、及び米国60174イリノイ州セイントチャールズ所在のLechler社で製造される、所望されるフラットな比較的幅広いスプレー角度、例えば幅が広げられたフラットファン状スプレー又は幅が広げられた中空スプレーを提供することができる、市販のノズルであってよい。このタイプの、フラットな約150°〜約180°の比較的幅広い角度の噴霧ノズルは、約0.5barの、水を使用して測定される噴霧圧力で、17000リットル/時又は280リットル/分に相当する約17m3/時の液体流量のために作動する。
【0024】
第2のスプレーレベルシステム48は、第1のスプレーレベルシステム40とは同一ではないにしても同等であり、多数の流体接続された噴霧ノズル56を具備する管部分60を備える。第3のスプレーレベルシステム54は、多数の噴霧ノズル56を具備する管部分62を備える。第4のスプレーレベルシステム54aは、多数の噴霧ノズル56を具備する管部分62aを備える。
【0025】
ミスト分離器64が、湿式スクラバタワー14内で、第4のスプレーレベルシステム54a又は最上位のスプレーレベルシステムの上方に配置されている。上部66においてプロセスガス出口68に近接する、水平方向に内部16を横切って配置されたミスト分離器64は、浄化された煙道ガスCFにより連行された吸着液飛沫の少なくとも一部を除去する。従って、吸着液飛沫は、浄化された煙道ガスが上方へ湿式スクラバタワー14の内部16を通流する際に、プロセスガス出口68を介して湿式スクラバ10から出される前に、浄化された煙道ガスCFから除去される。
【0026】
湿式スクラバ10において、煙道ガスにおける二酸化硫黄SO2及び同等の酸性ガスは、吸着液における石灰石CaCO3又は択一的にアルカリ性ナトリウム化合物溶液と反応して、亜硫酸カルシウムCaSO3が生成される。亜硫酸カルシウムCaSO3は、その後酸化させられて石膏CaSO4が生成される。亜硫酸カルシウムの酸化は、好適には、源管路26cを介して空気又は酸素源26bに流体接続された酸化処理装置26aを用いた吸着液による空気又は酸化ガスのバブリングにより行われる。従って、吸着液は、石灰石に加えて、少量の亜硫酸カルシウムと、主成分として石膏とを含む。このプロセスを介して生成された石膏は、湿式スクラバ10から、流体接続された排出管路70を介して、流体接続された石膏脱水ユニット72に向けて除去される。脱水された石膏は、えばウォールボードの商業的生産に使用してよい。
【0027】
二酸化硫黄SO2に加えて、湿式スクラバ10は、少なくとも部分的に、煙道ガスから他の汚染物も除去する。そのような他の汚染物の例は、三酸化硫黄SO3、塩化水素酸HCl、フッ化水素酸HF及び他の酸性のプロセス汚染物を含む。更に、湿式スクラバ10は、少なくとも部分的に、煙道ガスから、例えば塵埃粒子及び水銀等のような別種の汚染物を除去してもよい。
【0028】
図2は、湿式スクラバタワー14の内部16の範囲内でスプレーレベルシステムを図1のII−II線において上からみた概略図である。各スプレーレベルシステムは、相俟って「グリッド」を形成し、スプレーレベル管部分40,48,54,54aから延在する多数の流体接続された垂直の管延長部74を具備する同一の主要設計を有する。噴霧ノズル56は、管延長部74及び選択的に管部分40,48,54,54aにも流体接続されているので、複数のノズル56は、湿式スクラバタワー14の内部16の水平方向断面全体にわたって極めて均等に分配されている。
【0029】
典型的には、各スプレーレベルシステム40,48,54,54aにおけるノズル56の数は、約4〜約500の範囲にある。1つの態様によれば、ノズル56に供給される実質的に全ての吸着液は、内部16において全方向に、すなわち、湿式スクラバタワー14を通る煙道ガスの流れに噴霧される。ノズル56自体は、ノズル56に供給される吸着液を噴霧し、吸着液のスプレークラウドSCを発生させる。このスプレークラウドSCにおいて、煙道ガスFと吸着液ALとの強い混合が生じる。典型的には、湿式スクラバタワー14を通る鉛直方向の煙道ガス速度は、約5m/s〜15m/s、多くの場合6m/s〜10m/sであってよい。しかし、スプレークラウドSCにおける吸着液ALは、煙道ガスFから極めてゆっくりと消散、解消又は排出される。ゆっくりとした吸着液ALの消散の結果、湿式スクラバタワー14の内に乱流のバブリング層が生じる。スプレークラウドSCにおける吸着液ALと煙道ガスFとの強い混合の結果、増加された二酸化硫黄吸着レベルが生じ、これにより煙道ガスFからの二酸化硫黄の効率的な除去が生じる。吸着液ALは、最終的に、スプレークラウドSCからの排出前にスプレークラウドSCにおいて比較的長い平均滞留時間を有した後で、スプレークラウドSCから排出される。
【0030】
湿式スクラバタワー14の内で、ノズル56は、ノズル56に供給される吸着液の少なくとも半分が水平に、煙道ガス流れ方向に対して垂直に噴霧されるように、配置されている。実際には、全ての吸着液は、全方向への噴霧の代わりに、概して水平に、煙道ガス流れ方向に対して垂直に噴霧してよい。各スプレーレベルシステムからの概して水平方向又は択一的に全方向のスプレークラウドSCへの吸着液の噴霧は、距離CCで表される内部16スプレー域全体を、吸着液ALに接触する煙道ガスFに形成されるスプレークラウドSCが覆うように配向されている。ノズル56から噴霧される吸着液ALは、先行技術の湿式スクラバ及び上述の方法よりもより効率的かつ低コストでプロセスガスを浄化する。
【0031】
添付の特許請求の範囲内で上述の態様の多数の変化態様が可能であることが判る。
【0032】
湿式スクラバ10使方法では、それぞれフラットな比較的幅広い複数のスプレーアングルノズル56を具備する少なくとも第1及び第2のスプレーレベルシステム40,48を、湿式スクラバタワー14の内部16において約0.3メートル〜約0.5メートルの範囲内で鉛直方向高さ距離CCにコンパクトに配置し、少なくとも第1及び第2のスプレーレベルシステム40,48の各々の吸着液注入口40aを、湿式スクラバタワー14への流入部40bの位置が互いに水平方向に離れて少なくとも約10°〜約20°ずれた状態で配置し、複数のフラットな比較的広角のスプレーノズル56による吸着液噴霧のために、吸着液注入口40aを通して少なくとも第1及び第2のレベルシステム40,48に吸着液ALを供給し、プロセスガスFと吸着液ALとの接触のために5m/s〜15m/sの速度で湿式スクラバタワー14を通してプロセスガスFの鉛直方向上方の流れを通過させる。プロセスガスFと吸着液ALとの接触により、二酸化硫黄及び同等の環境汚染物除去が提供され、これにより、浄化されたプロセスガスCFが生成される。
【0033】
プロセスガスから二酸化硫黄を除去する方法及び湿式スクラバが上述されている。説明された方法及び湿式スクラバを、プロセスガスから他の汚染物を除去するために利用してもよいことが判る。例えば、方法及び湿式スクラバは、プロセスガスから二酸化炭素を除去するために利用することができる。このような場合には、プロセスガスからの二酸化炭素の除去は、大抵、二酸化硫黄除去のために作動する湿式スクラバと同一又は同等のタイプの湿式スクラバにおいて行ってよいが、この湿式スクラバは、二酸化硫黄が除去される湿式スクラバの、プロセスガス流れの方向に関して下流側に配置されている。更に、石灰石は多くの場合二酸化硫黄除去湿式スクラバにおける吸着液の一部であってよいが、二酸化炭素除去湿式スクラバは、別種の吸着液、例えばアンモニア化合物溶液又はアミン溶液を含む吸着溶液を使用してよい。
【0034】
要するに、プロセスガスFを浄化する湿式スクラバタワー14は、第1のスプレーレベルシステム40と第2のスプレーレベルシステム48とを備える。第2のスプレーレベルシステム48は、例えば湿式スクラバタワー14の内部16において第1のスプレーレベルシステム40の鉛直方向上方0.3m〜0.5mの範囲内にコンパクトに配置されており、各スプレーレベルシステム40,48は、フラットな比較的幅広いスプレー角度で、水平方向に、湿式スクラバタワー14を通る煙道ガスFの流れに対して垂直に、又は湿式スクラバタワー14の内において全方向に吸着液ALを噴霧するために作動するノズル56を備える。噴霧された吸着液ALは、プロセスガスFと吸着液ALとの混合のためにプロセスガスFに接触し、これにより、二酸化硫黄が除去されて、浄化された煙道ガスが生成される。
【0035】
本発明を幾つかの好適な態様に関して説明したが、当業者により、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更が成されてよく、その要素の代わりに均等物をてよいことが理解される。更に、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、本発明の思想に対して特別な状況又は材料を適応させるために、多くの変更が成されてよい。従って、本発明は、本発明を実施するために考えられる最良の態様として開示された特別な態様に限定されず、本発明は、添付の特許請求の範囲の範囲に属するあらゆる態様を含むことが意図されている。更に、第1、第2等の用語の使用は、いかなる順序や重要性を表すものでなく、むしろ、第1、第2などの用語は、1つの構成要素を別の構成要素から区別するために用いられるものである。
【符号の説明】
【0036】
10 湿式スクラバ、 12 ボイラ、 14 湿式スクラバタワー、 16 内部、 18 プロセスガス注入口、 20 基部、 22 プロセスガス出口、 24 上部、 26 吸着液タンク、 26a 酸化処理装置、 28 底、 30 吸着供給装置、 32 石灰石又はアルカリ性ナトリウム化合物溶液貯蔵域、 34 供給管路、 36 第1の循環ポンプ、 38 吸着液循環管路、 40 第1のスプレーレベルシステム、 40a 吸着液注入口、 40b 流入部、 42 中間部、 44 第2の循環ポンプ、 46 吸着液循環管路、 48 第2のスプレーレベルシステム、 50 第3の循環ポンプ、 50a 第4の循環ポンプ、 52 吸着液循環管路、 52a 吸着液循環管路、 54 第3のスプレーレベルシステム、 54a 第4のスプレーレベルシステム、 56 スプレーアングルノズル、 58 噴霧ノズル、 58 管部分、 64 ミスト分離器、 66 上部、 68 プロセスガス出口、 70 排水管路、 72 石膏脱水ユニット、 74 管延長部
図1
図2