【実施例1】
【0015】
[冷蔵庫1の全体構成]
図1は本実施例の冷蔵庫1の斜視図、
図2は
図1のA−A線断面図、
図3は冷凍サイクルの構成を示す図である。
【0016】
冷蔵庫1は、冷蔵、冷凍する食品等の貯蔵物を収容する冷蔵庫本体1Aと、冷蔵庫本体1Aの前面開口部1B(
図2参照)を開閉する複数の扉(2a,2b,3a,3b,4a,5a)を備えている。
【0017】
冷蔵庫本体1Aは、内部に上から冷蔵室2と、上段冷凍室3、下段冷凍室4、野菜室5とを有している。これらの部屋が開口される前面開口部1Bには、それぞれ扉が設けられている。
【0018】
冷蔵室右扉2aと冷蔵室左扉2bは、冷蔵室2を開閉する扉であり、観音開き式の左右二枚の扉より構成されている。製氷室扉3aと上段冷凍室扉3bは、上段冷凍室3を開閉する扉であり、下段冷凍室扉4aは下段冷凍室4を開閉する引き出し式の扉、最下段の野菜室扉5aは野菜室5を開閉する扉であり、引き出し式の扉である。なお、引き出し式の扉は、貯蔵物が収容される収容ケースとともに引き出される扉である。
【0019】
図2に示す冷却器室9内には、冷却器9aが設置されている。冷却器9aを含む冷凍サイクルの詳細構成は、
図3に示すとおりである。まず、圧縮機30から吐出された高温高圧の冷媒が、機械室凝縮器30a、放熱パイプ(筐体鋼板凝縮器)32a、結露防止パイプ30bを通過しながら、外気に接している側面鋼板11a,11bを介した熱交換で、冷却されて液化が促進される。側面鋼板11a,11bは互いに対向している。
【0020】
液化した冷媒は、キャピラリチューブ30cを通り減圧され、冷却器9aにより庫内を冷却する。冷却器9aを通過した冷媒はガス化し、圧縮機30に戻る。
【0021】
ここで、冷蔵庫1に於いては、凝縮器として、冷媒が通流する放熱パイプ41を冷蔵庫本体1Aの外郭を構成する側面鋼板11及び背面板12の内側,天井板10に取り付け凝縮器の代わりをさせて放熱している。
【0022】
冷媒の種類は特に制限されないが、例えばイソブタン(R600a)が用いられる。イソブタンは廃棄した場合にオゾン層を破壊しない、温暖化係数が低いなどの利点がある。
【0023】
冷凍サイクルの冷却器9aで冷却された冷気は、庫内冷気循環ファン9bにより、冷蔵室2、上段冷凍室3、下段冷凍室4、野菜室5等に強制循環させる。そして、冷蔵室2、野菜室5を冷気に対してダンパーサーモで開閉し、上段冷凍室3を、温度調節器(サーモスタット)等をもって、それぞれ設定温度に冷却している。
【0024】
冷蔵庫1の庫内温度は、冷蔵庫本体1Aの上部後方に設けられた制御基板によって制御されている。
【0025】
[機械室29]
図4は、機械室29の内部構成を説明する図である。機械室29の位置は特に制限されないが、本実施例では冷蔵庫1の下側後方に設けている。機械室29は、冷蔵庫1の対向する側面を形成する側面鋼板11a,11bにそれぞれ設けた吸込穴29s,排出穴29hを介して、機械室29の内外の空気を交換できる。その他には、例えば、冷蔵庫1の上側後方に機械室29を配しても良い。
機械室29には、圧縮機30とファン41を配している。
【0026】
[ファン41]
図5(a)はファン41の分解斜視図、
図5(b)は上面視によるファン41の一部拡大図である。ファン41は、内側ファンケーシング41bと外側ファンケーシング41dを有する。内側ファンケーシング41bは、羽41a及び羽41aの径方向外側に位置し、羽41aを囲む外壁41bbを有する。外側ファンケーシング41dは、外壁41bbより径方向外側に位置し、外壁41bbを囲む内壁41dbを有する。内壁41dbは、外壁41bbよりやや径方向に大きい。このため、外壁41bbと内壁41dbとは羽41aの径方向で対向し、内側ファンケーシング41bは、内壁41dbで囲まれた領域に設置することができる。
【0027】
内側ファンケーシング41b及び外側ファンケーシング41dは、それぞれ正面視(前後方向視)で略長方形状であり、側面視(左右方向視)及び上面視(上下方向視)で、正面視よりもアスペクト比が大きい(長辺と短辺との長さの差が大きい)略長方形状である。但し、内側ファンケーシング41b及び外側ファンケーシング41dの各方向から観察したときの形状は略長方形状に限られず、例えば略円形状、略三角形状、五角形以上の略多角形状にすることができる。
【0028】
外側ファンケーシング41dは、後述する取付部41gを用いてファン41を設置する機械室29に取付けられる部材である。外側ファンケーシング41dの外寸は、機械室29の空間寸法に略等しい。すなわち、外側ファンケーシング41dの長方形状の外周形状は、機械室29を側面鋼板11に平行な平面による断面の内周形状に略等しい。
【0029】
[スペーサ41c]
図6はスペーサ41cの正面図、
図7はスペーサ41cを取付けた内側ファンケース41bの正面図、
図8はスペーサ41cを取付けた角部41ba近傍の拡大図である。スペーサ41cは、所定の長さ及び所定の厚みを持つ。
スペーサ41cは、内側ファンケーシング41bの外壁41bbに取付けられる。本実施例では外壁41bbの内、頂点(角部41ba)の近傍にそれぞれ取付けられており、より具体的には、角部41baを囲む又は含む領域に取付けられている。スペーサ41cの所定の長さは、外壁41bbの二辺に亘って取付けることができる長さであり、これにより、二か所の接触箇所を形成することができるため、工程を簡略化できる。もちろん、複数のスペーサ41cを用いて角部41baを囲む又は含むように配置しても良い。角部41baの近傍に配置し、略長方形状を形成する外壁41bbの辺の中点側を避けているため、取付時にスペーサ41cが羽41aに接触する領域に位置することを抑制できる。なお、角部41baを囲むようにスペーサ41cを設ける方が、角部41baを含んでスペーサ41cを設けるよりも取付が容易であるため好ましい。また、スペーサ41cは外壁41bbと内壁41dbとの間に空間を形成できれば形状に制限はなく、例えば、突起形状や正方形状にして外壁41bbに設けることもできる。
【0030】
本実施例の内側ファンケーシング41bは略長方形状のため、角部41baは四つ存在する。ここで、スペーサ41cは、外壁41bbの各点が内壁41dbとの間に空間(不図示)を形成するように設けられていれば特に制限されない。例えば、外壁41bbの各辺に一つ又は二つ以上設けると好ましい。
【0031】
内側ファンケーシング41bと外側ファンケーシング41dを組付けると、
図5中の斜線部(スペーサ41cの一部であり、8箇所存在する。)が内壁41dbに当接する。スペーサ41cは所定の厚みを持つため、外壁41bbと内壁41dbの間には空間(不図示)が形成される。このため、内側ファンケーシング41bと外側ファンケーシング41dとの接触面積を小さくすることができ、羽41aの回転によって生じる振動や騒音が外側ファンケーシング41dを介して機械室29や冷蔵庫1に伝搬することを抑制できる。なお、スペーサ41cは、片面に粘着性を有していると取付が容易になり、好ましい。また、スペーサ41cの材質は弾性体が望ましく、例えばゴムなどの樹脂材により形成することができる。スペーサ41cを弾性体にすることで、スペーサ41c自体が振動を吸収できるため、より振動や騒音の発生を抑制することができる。
【0032】
なお、本実施例では、
図7中、左下の角部41ba近傍には、羽41aの配線(不図示)が通る配線口41bcが設けられている。このため、左下の角部41ba近傍のスペーサ41cは二つであり、配線口41bcの少なくとも一部を避けて貼付されている。
【0033】
このように内側ファンケーシング41bはスペーサ41cを介して外側ファンケーシング41dと小さい面積で接触しているため、ファン41の振動が外側ファンケーシング41dに伝搬することを抑制できる。
【0034】
内側ファンケーシング41bは、外壁41bbに設けたスペーサ41cと内壁41dbとによる摩擦抵抗で外壁41bbから離間しないように設置されている。このため、内側ファンケーシング41bは、内側ファンケーシング41bの径方向外側に位置する外側ファンケーシング41dには固定されておらず、前後方向に移動可能である。また、内側ファンケーシング41bは外側ファンケーシング41dより小さいため、例えばスペーサ41cが弾性体であるときは、左右方向及び上下方向にも移動可能である。
【0035】
また、内側ファンケーシング41bは前後方向、好ましくは左右方向及び上下方向に移動可能であるため、羽41aの振動によるエネルギーが内側ファンケーシング41bの運動やスペーサ41cの変形によって消費される。このため、ファン41の振動を抑制できる。
【0036】
[鉤41da及び突起41dc]
内側ファンケーシング41bは前後方向に移動可能であるため、外側ファンケーシング41dから脱離しないようにすることが望まれる。これは、外側ファンケーシング41dと内側ファンケーシング41bとの寸法差の調整や、取付時のスペーサ41cの厚みや弾性変形の程度を調整することでも実現し得る。しかし本実施例では、脱離の抑制をより効果的に行うため、例えば
図5に示すように、外側ファンケーシング41dは、係止部として鉤41da及び突起41dcを有している。
【0037】
鉤41daは、根元側から先端側にかけて折り返す曲がりを有する形状である。根元側は、外側ファンケーシング41dの後方向に突出しており、曲がりによって先端側が前方向を向くように形成されている。先端が内側ファンケーシング41bに当接することで、内側ファンケーシング41bが外側ファンケーシング41dの後方向に脱離することを抑制している。
【0038】
突起41dcは、外側ファンケーシング41dの前方向先端に設けられており、径方向内側に突出している。突起41dcの先端が内側ファンケーシング41bに当接することで、内側ファンケーシング41bが外側ファンケーシング41dの前方向に脱離することを抑制している。
【0039】
鉤41daは、内側ファンケーシング41bに当接して係止すればよいが、
図5(b)に示すように、弾性体のスペーサ41cに鉤41daが接触するように設けると、さらに振動の伝搬を抑制できて好ましい。このとき、スペーサ41cは弾性体であるため、鉤41daがやや喰い込み、より効果的に係止できる。鉤41daにより、小さな接触面積で内側ファンケーシング41bと外側ファンケーシング41dとを繋ぐことができ、振動の伝搬を抑制しつつ脱離を抑制できる。
【0040】
なお、鉤41daは根元側を基点にして回動できる。鉤41daの自然位置は、先端が内側ファンケーシング41bを向く位置であり、回動させると自然位置に戻ろうとする復元力が働く。つまり、内側ファンケーシング41bの取付時には、
図5(b)中、反時計回り(左後方)に力を加えて回動させることができ、取付を容易に行うことができる。そして取付後に鉤41daに加えていた力を解除すると、鉤41daは、
図5中、時計回り(右前方)に回動して内側ファンケーシング41bを係止する。鉤41daの先端は、自然位置で内側ファンケーシング41bに当接する位置又は内側ファンケーシング41bに対して前方への力を付加する位置でも良い。
【0041】
また、外側ファンケーシング41dの軸方向視では、鉤41daに対向する位置に突起41dcが設けられている。
図5(b)に示すように、内側ファンケーシング41bは、鉤41daによって後方向への脱離が抑制され、突起41dcによって前方向への脱離を抑制されている。
【0042】
なお、突起41dcは、外壁41bbの軸方向側に接触するように位置していればよいが、スペーサ41cに接触するように設けると好ましい。
【0043】
また、係止部の組合せに特に制限はなく、例えば、前側及び後側の両方に鉤41daを設けても良い。
【0044】
[制振部41e及び取付部41g]
図9(a)はファン41の側面図、
図9(b)はファン41の正面図である。
図9(a)及び
図9(b)の上下方向位置は対応している。
【0045】
外側ファンケーシング41dは、制振部41e(ファン41の上流側に位置する上流側制振部41e1、ファン41の下流側に位置する下流側制振部41e2、脚部側制振部41e3)、取付部41g(挿通孔41g1、脚部41g2)を有している。
【0046】
制振部41eは、外側ファンケーシング41dの一部を折り返して曲げた形状であり、例えばU字状、S字状、V字状、W字状や、これらを複数組み合わせた形状にすることができる。制振部41eは、取付部41gより内壁41db又は外壁41bbに近い位置に設けられている。制振部41eは、ファン41から外側ファンケーシング41dに伝搬した振動に伴い変形することで、制振部41eを介してファン41の反対側に位置する取付部41gに振動が伝搬することを抑制できる。また、制振部41eは外側ファンケーシング部41dと一体に形成されている。このため、外側ファンケーシング41dの成形と同時に制振部41eを成形できるから、外側ファンケーシング41dに低コストで制振部41eを設けることができる。
【0047】
また、制振部41e及び外側ファンケーシング41dは、例えば樹脂材料で形成することができ、例えば、ポリプロピレン、ABS樹脂、アクリロニトリルを用いることができる。
【0048】
取付部41gの形態は、ファン41を機械室29に取付けることができれば特に制限されず、爪、鉤、嵌合可能な凹凸などでもよい。羽41aから発生する振動は、外壁41bbからスペーサ41cを介して一部が内壁41dbに伝わる。この振動は、内壁41dbから取付部41gを介して機械室29、冷蔵庫1に伝わる。本実施例では、取付部41g及び外壁41bb又は内壁41dbの間に設けられた制振部41eによって振動の伝達を抑制することができる。以下、詳細に説明する。
【0049】
[上流側制振部41e1、下流側制振部41e2及び挿通孔41g1]
上流側制振部41e1及び下流側制振部41e2は、それぞれ外側ファンケーシング41dの前後方向で異なる位置に設けられており、互いに略対向している。
【0050】
挿通孔41g1は、上流側制振部41e1及び下流側制振部41e2を介して羽41aの反対側に位置している。本実施例では、上流側制振部41e1及び下流側制振部41e2は、挿通孔41g1より下方側で、かつ、外壁41bb(高さh)より上方側に位置している。
【0051】
ファン41は、機械室29の壁面を貫通するボルト等を挿通孔41g1に挿通して、機械室29に取付けることができる。羽41aの振動は、挿通孔41g1に挿通したボルト等を介して機械室29や冷蔵庫1に伝搬する。このため、羽41aと挿通孔41g1の間に上流側制振部41e1、下流側制振部41e2を設けることで振動の伝搬を抑制することができる。
【0052】
図9では、外側ファンケーシング41dの前後方向それぞれに二つの制振部41e(上流側制振部41e1、下流側制振部41e2)を設けているが、個数や位置関係はこれに限られない。例えば、
図4のK部拡大図である
図10のように、さまざまにすることができる。
図10(a)は、本実施例と同様であり、上流側制振部41e1より下流側制振部41e2の方が上方に位置している。
図10(b)は上流側制振部41e1のみを設けたものである。
図10(c)は下流側制振部41e2のみを設けたものである。
図10(d)は下流側制振部41e2より上流側制振部41e1の方が上方に位置しているものである。
図10(e)は下流側制振部41e2と上流側制振部41e1とが同一の高さに位置しているものである。
図10の何れの場合であっても振動を抑制する効果が得られるが、発明者による解析の結果、上流側制振部41e1、下流側制振部41e2両者が設けられて高さh(
図9参照)までの距離が異なる
図10(a),
図10(d)が最も好ましく、上流側制振部41e1、下流側制振部41e2両者が設けられて高さhまでの距離が同一である
図10(e)が次いで好ましく、上流側制振部41e1、下流側制振部41e2のいずれか一方が設けられている
図10(b),
図10(c)が次いで好ましいことがわかった。
【0053】
[脚部側制振部41e3及び脚部41g2]
図11は、
図9のA部拡大図であり、外側ファンケーシング41dの下端近傍の拡大図である。外側ファンケーシング41dは機械室29の床面に接する脚部41g2に、脚部側制振部41e3を介して繋がっている。脚部側制振部41e3は、外側ファンケーシング41dの外周に一端を有し、脚部41g2に他端を有する部材であり、その形状は上流側制振部41e1、下流側制振部41e2と同様にすることができる。脚部側制振部41e3及び脚部41g2は、外側ファンケーシング41dと一体に成形されている。
【0054】
機械室29は、取付部41gである脚部41g2を係止可能な機械室側係止部(不図示)を有している。羽41aの振動は脚部41g2を介して機械室29の床面を伝わる。このため、脚部41g2より外壁41bb又は内壁41dbに近い位置に脚部側制振部41e3を設けることで、振動の伝搬を抑制できる。
【0055】
なお、外側ファンケーシング41dの上側に設けられている上流側制振部41e1、下流側制振部41e2を纏めて、上側制振部と呼び、外側ファンケーシング41dの下側に設けられている脚部側制振部41e3を下側制振部と呼称する。本実施例のように、ファン41の上下側それぞれから機械室29に取付けることで、ファン41の固定を安定させることができる。これにより、冷蔵庫1の運搬時にファン41が脱離したり破損することを抑制できる。