(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電線接続部の圧着後の形態で、前記第1止水シートは、前記導体圧着部の前端よりも前側にはみ出し、前記第2止水シートは、前記被覆圧着部の後端よりも後側にはみ出すことを特徴とする請求項1に記載の圧着端子と電線の接続構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来の圧着端子501において、一方のバレル片513の上に他方のバレル片513を重ねて電線露出部511が圧着されるオーバーラップ方式は、圧着が難しく管理が大変という欠点があり、生産性を向上させる上での障害となる。また、幅方向シール517及び長手方向シール519は、エポキシ系UV硬化樹脂やウレタン系UV硬化樹脂がコータにより塗布された後、紫外線が照射されて硬化される。この場合、湿度の影響を受け、樹脂が圧縮や膨張して、扱いにくいという問題がある。
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、樹脂の塗布量を減らし、全体を塗る場合よりも封止材の管理を容易にすると共に、容易な圧着で圧着内部への水分の浸入を防ぐことができる圧着端子と電線の接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 導体と、前記導体を覆う絶縁被覆と、を有する電線と、相手側端子に電気的に接続されるための電気接続部が前部に形成され、前記電線の端末部に圧着される電線接続部が後部に形成された圧着端子と、を備え、前記電線接続部は、前記電線の端末部の絶縁被覆が除去されて前記導体が露出した導体露出部に圧着される導体圧着部と、前記電線の端末部に残された絶縁被覆の一部に圧着される被覆圧着部と、を有し、前記導体圧着部が前側に、前記被覆圧着部が後側に形成され、該導体圧着部の前端から該被覆圧着部の後端まで連続する断面U字状に形成され、前記電線の端末部に圧着された状態の前記電線接続部が、前記導体露出部の前端よりも前方側から前記絶縁被覆の一部の前端よりも後方側までを覆うと共に、電線延在方向に沿って延びる合わせ目を合わせるようにして圧着される、前記圧着端子と前記電線の接続構造であって、前記電線接続部の内面における前記導体圧着部の前端側に配置された第1止水シートと前記被覆圧着部に配置された第2止水シートとを更に備え、前記第1止水シートの前端が前記導体露出部の前端よりも前側に位置し、前記第2止水シートの後端が前記絶縁被覆の一部の前端よりも後側に位置し、前記電線の端末部に圧着された状態の前記電線接続部は、前記第1止水シートが配置された前記導体圧着部の前端
側より後方部分を通して、前記導体圧着部と前記導体露出部とが電気的に接続されると共に、前記導体圧着部と前記導体露出部との接続部分の前後が
少なくとも一方の面に粘着層が設けられた粘着シートである前記第1止水シート及び前記第2止水シートによって塞がれ、
前記電線接続部の圧着後の形態で、前記第1止水シートは、前記導体圧着部が圧着されることにより、前記導体圧着部の前端を覆うと共に前記導体圧着部の前方開口に圧着時の変形によって充填された状態となっており、前記電線接続部における前記合わせ目と前記導体圧着部の
前記前方開口を塞いでいる前記第1止水シートとが、封止材によって覆わることを特徴とする圧着端子と電線の接続構造。
【0008】
上記(1)の構成の圧着端子と電線の接続構造によれば、少なくとも一方の面に粘着層が設けられた粘着シートである第1止水シート及び第2止水シートによって、導体圧着部と導体露出部との接続部分の前後が塞がれ、電線接続部の合わせ目と導体圧着部の前方開口を塞いでいる第1止水シートとが、樹脂である封止材によって覆われる(塗布される)。これにより、樹脂の塗布量が、粘着シートの分だけ少なくて済み、封止材の管理が端子全体に塗布するより容易になる。
また、電線接続部は、電線延在方向に沿って延びる合わせ目を合わせるようにして圧着される所謂Bクリンプ方式にすることで、オーバーラップ方式よりも圧着の管理が容易となる。更に、圧着が容易であるBクリンプ方式によって形成される合わせ目は、V溝状に形成されるので、封止材の塗布による密閉が、容易となる。更に、合わせ目を塞いだ封止材が、導体圧着部の前方開口を塞いでいる第1止水シートの前側を連続して覆うので、第1止水シートの前側の封止構造を、より確実なものとすることができる。
【0009】
(2) 前記電線接続部の圧着後の形態で、前記第1止水シートは、前記導体圧着部の前端よりも前側にはみ出し、前記第2止水シートは、前記被覆圧着部の後端よりも後側にはみ出すことを特徴とする上記(1)の構成の圧着端子と電線の接続構造。
【0010】
上記(2)の構成の圧着端子と電線の接続構造によれば、電線接続部の圧着後の形態で、第1止水シートは、導体圧着部の前端よりも前側にはみ出すことで、第1止水シート同士の密着面積が増え、密閉性がより高まる。また、第2止水シートは、被覆圧着部の後端よりも後側にはみ出すことで、絶縁被覆との密着面積が増え、密閉性がより高まる。
【0011】
(3) 前記導体が、アルミニウム又はアルミニウム合金からなり、前記圧着端子が、銅又は銅合金からなることを特徴とする上記(1)又は(2)の構成の圧着端子と電線の接続構造。
【0012】
上記(3)の構成の圧着端子と電線の接続構造によれば、導体の材質と圧着端子の材質との組み合わせが、腐食され易い材質の組み合わせの場合であっても、圧着端子の外部から水が浸入することを確実に防ぐことができるので、防食性能を向上させることができる。そして、銅に比べ比重の小さいアルミニウム又はアルミニウム合金を導体に用いることができるので、銅又は銅合金を導体に用いた場合に比べ、軽量な圧着端子と電線の接続構造を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る圧着端子と電線の接続構造によれば、樹脂の塗布量を減らし、全体を塗る場合よりも封止材の管理を容易にすると共に、容易な圧着で圧着内部への水分の浸入を防ぐことができる。
【0014】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1及び
図2に示すように、本発明の一実施形態に係る圧着端子11と電線13の接続構造は、電線13と、圧着端子11と、第1止水シート15及び第2止水シート17と、封止材19と、を有する。この圧着端子11と電線13の接続構造は、端子付電線21に用いて好適なものである。なお、本明細書中において、圧着端子11と電線13の接続構造は、圧着端子側を「前」、電線側を「後」として説明する。
【0017】
電線13は、導体23がアルミニウム、或いはアルミニウム合金からなる。導体23は、複数の素線が束ねられてなる。絶縁被覆25は、絶縁性の合成樹脂からなり、導体23の外周を包囲するように形成されることによって、導体23を外部から絶縁可能に保護する。なお、導体23は、複数の素線が束ねられてなるものを例示したが、これに限らず単芯線であっても構わない。
【0018】
圧着端子11は、銅、或いは銅合金等の金属からなる板状部材27(
図6参照)から金型プレス加工等によって成形された端子である。本実施形態において、圧着端子11と電線13の接続構造を備える端子付電線21は、導体23が、アルミニウム又はアルミニウム合金からなり、圧着端子11が、銅又は銅合金からなる。圧着端子11は、不図示の相手側端子との接続部分となる電気接続部29と、電線13の端末部31に接続される電線接続部33と、電気接続部29と電線接続部33とを連結する中間一体連接部35と、を有している。
【0019】
電気接続部29は、角筒状をなす接続本体部の筒内に設けられた弾性接触片37に不図示の相手端子が接触される。
【0020】
電線接続部33は、板状部分の両側端部が合わせられた筒状をなし、絶縁被覆25から露出された導体23の導体露出部39に圧着される導体圧着部41と、絶縁被覆25の外周に圧着される被覆圧着部43と、導体圧着部41と被覆圧着部43との間を連接する圧着連接部45と、を有している。電線接続部33は、導体圧着部41が前側に、被覆圧着部43が後側に形成され、導体圧着部41の前端から被覆圧着部43の後端まで連続する断面U字状に形成される。
【0021】
導体圧着部41は、電線13の延在方向における電線接続部33の前端側に設けられ、かつ電線13の端末部31の先端の絶縁被覆25が除去されることによって露出された導体23の導体露出部39に圧着される部分である。
この導体圧着部41は、露出された導体露出部39が載置される導体圧着底壁部47と、導体圧着底壁部47の両側縁から起立され、導体露出部39の両側部から上部にわたって導体露出部39の外周を包囲するように圧着される一対の導体圧着起立壁部49とを有している。
【0022】
また、導体圧着部41は、内側の面が凹凸形状に形成されてなる凹凸表面部51(所謂セレーション)を有している。より具体的には、凹凸表面部51は、内側の面の複数箇所に長円形状の凹部が連続して形成された部分である。この凹凸表面部51は、導体圧着部41と導体露出部39との接触面積が増大されることによって密着強度を高める機能を有している。
【0023】
なお、本実施形態に係る端子付電線21は、凹凸表面部51として内側の面の複数箇所に長円形状の凹部が連続して形成されたものを例示したが、これに限らず、導体圧着部41の内側の面が凹凸形状に形成されていればその他の形状であっても構わない。
【0024】
被覆圧着部43は、電線13の延在方向における電線接続部33の後端側に設けられ、かつ電線13の端末部31に残された絶縁被覆25の一部に圧着される部分である。
この被覆圧着部43は、絶縁被覆25が載置される被覆圧着底壁部53と、被覆圧着底壁部53の両側縁から起立され、絶縁被覆25の両側部から上部にわたって絶縁被覆25の外周を包囲するように圧着される一対の被覆圧着起立壁部55とを有している。
【0025】
圧着連接部45は、電線13の延在方向に沿って導体圧着部41と被覆圧着部43との間を一体的に連接する部分である。
この圧着連接部45は、絶縁被覆25が載置される中間底壁部57と、中間底壁部57の両側縁から起立され、絶縁被覆25の両側部から上部にわたって絶縁被覆25の外周を包囲するように圧着される一対の中間起立壁部59とを有している。
【0026】
このような圧着連接部45は、導体圧着部41及び被覆圧着部43のそれぞれが電線13に対して圧着されやすいように導体圧着部41と被覆圧着部43との間を連接するように構成されている。
より具体的には、圧着連接部45は、絶縁被覆25に覆われた部分の電線13の外径と、導体23が露出された導体露出部39の部分の電線13の外径との差が小さくなるように、被覆圧着部43から導体圧着部41に向けて電線13の外径が漸次縮径されるように電線13に圧着されるように構成されている。
【0027】
このように、圧着端子11と電線13の接続構造を備える端子付電線21は、電線13の端末部31に圧着された状態の電線接続部33が、導体露出部39の前端61よりも前方側から絶縁被覆25の一部の前端63よりも後方側までを覆うと共に、電線延在方向に沿って延びる合わせ目65を合わせるようにして圧着される(
図3参照)。
【0028】
第1止水シート15は、電線接続部33の内面における導体圧着部41の前端67側に配置される。第1止水シート15の前端69は、電線接続部33が電線13の端末部31に圧着された際に、導体圧着部41の前端67よりも前側に位置する(
図4参照)。第1止水シート15は、導体圧着部41が圧着されることにより、導体圧着部41の前端67を覆うと共に、導体圧着部41の前方開口71に変形によって充填された状態となる。つまり、第1止水シート15は、前方開口71と導体圧着部41の前端67との隙間を封止する。電線13の端末部31に圧着された状態の電線接続部33は、第1止水シート15が配置された導体圧着部41の前端67側より後方部分を通して、導体圧着部41と導体露出部39とが電気的に接続される。この後方部分は、上記凹凸表面部51となる。なお、第1止水シート15及び第2止水シート17が貼着される面には、凹凸表面部51が省略されている。
【0029】
第2止水シート17は、被覆圧着部43に配置される。第2止水シート17の後端73は、絶縁被覆25の前端63よりも後側に位置する。第2止水シート17は、被覆圧着部43が電線13に圧着されることで、絶縁被覆25の外周面と密着して止水性を確保する。
【0030】
また、本実施形態において、圧着端子11と電線13の接続構造を備えた端子付電線21は、第1止水シート15の前端69が、導体圧着部41の前端67よりも前側に位置する。また、第2止水シート17の後端73は、被覆圧着部43の後端75よりも後側に位置する(
図3参照)。すなわち、第1止水シート15は、導体圧着部41の前端67から前側にはみ出している。第2止水シート17は、被覆圧着部43の後端75から後側にはみ出している。
なお、これら第1止水シート15及び第2止水シート17は、電線13に圧着した後の状態において、導体圧着部41の前端67及び被覆圧着部43の後端75から前端69と後端73がはみ出すことができれば、電線接続部33の内面に配置された状態では、導体圧着部41の前端67及び被覆圧着部43の後端75から第1止水シート15の前端69と第2止水シート17の後端73とがはみ出さない大きさとすることができる。その結果、各止水シートを小さくして、これら第1止水シート15及び第2止水シート17を形成する際の歩留まりを高めることもできる。
【0031】
第1止水シート15及び第2止水シート17は、基材シートの両面に粘着層が設けられた両面粘着シートである。そして、使用前の第1止水シート15及び第2止水シート17の各粘着層には、剥離シートが設けられている。第1止水シート15及び第2止水シート17は、一方の面の剥離シートを剥がして露出させた粘着層によって、電線接続部33の内面に貼り付けられる。
【0032】
端子付電線21は、電線接続部33において、導体圧着部41と導体露出部39との接続部分の前後が、第1止水シート15及び第2止水シート17によって塞がれる。また、端子付電線21は、電線接続部33における合わせ目65と、導体圧着部41の前方開口71を塞いでいる第1止水シート15とが、
図5(a)に示すように、封止材19によって覆わる。すなわち、導体圧着部41が圧着されることによって、導体圧着部41の前方開口71に充填された状態となる第1止水シート15が、更に封止材19によって覆われることになる。この前方開口71を覆う封止材19は、合わせ目65を覆う封止材19と連続して塗布され、固化することにより形成される。
【0033】
封止材19は、流動性を有し、接着性を有する樹脂を塗布し硬化させたものとすることができる。その硬化作用は、熱、紫外線、2液、嫌気、湿気等の方式によるとすることができる。
【0034】
このように、端子付電線21は、電線接続部33の凹凸表面部51が導体露出部39に電気的に接続されつつ、電線接続部33の合わせ目65及び前方開口71が封止材19によって封止されるので、導体23が露出された導体露出部39に、圧着端子11の外部から水が浸入して接触することを防ぐことができる。
【0035】
次に、圧着端子11と電線13の接続構造を有する端子付電線21の製造手順を説明する。
図6(a)は型抜きされて圧着端子に成形される前の板状部材を表す工程図、(b)は曲げ加工された圧着端子を表す工程図、(c)は電線接続部に電線が圧着された圧着端子を表す工程図、(d)は電線接続部の合わせ目に封止材が塗布された圧着端子を表す工程図である。
端子付電線21を製造するには、不図示の加工機を用いて板状部材27に対して圧着端子11の型抜き加工を行う(
図6(a)参照)。この型抜き加工によって、展開状態の複数の圧着端子11が形成される。また、この型抜き加工によって、複数の圧着端子11を連結させる帯状のキャリア77が形成され、このキャリア77に形成された送り孔79に不図示の加工機の搬送用の爪が挿通されることによって型抜きされた板状部材27が次工程に搬送される。
【0036】
型抜き加工された板状部材27の電線接続部33には、第1止水シート15及び第2止水シート17が貼られる。第1止水シート15は、第1止水シート15の前端69が導体圧着部41の前端67よりも前側にはみ出して貼られる。第2止水シート17は、第2止水シート17の後端73が被覆圧着部43の後端75から後側にはみ出して貼られる。第1止水シート15及び第2止水シート17は、両面粘着シートである場合、電線接続部33への貼着側の剥離シートのみが剥がされる。後の曲げ工程でのクリンパ等への付着を防止するためである。
【0037】
なお、第1止水シート15及び第2止水シート17は、圧着端子11が型抜き処理される前の板状部材27に対して、所定の位置に貼着されるものであってもよい。この場合、電線接続部33以外の不要部分に貼着された第1止水シート15及び第2止水シート17は、型抜き処理によって板状部材27の不要部分と共に廃棄される。
【0038】
その後、板状部材27は、不図示の加工機を用いて展開状態の端子金具に対して曲げ加工が施され、
図6(b)に示す所定形状に成形される。
【0039】
曲げ加工によって所定形状に成形された圧着端子11には、圧着加工において、圧着装置(図示略)により電線13が接続される。圧着端子11は、圧着装置のアンビルにセットされる。電線13は、絶縁被覆25が電線接続部33の被覆圧着部43の上、導体露出部39が導体圧着部41の上となるように上方から載置する。この際、導体圧着部41は、導体圧着部41の凹凸表面部51となる位置で位置決めされる。
【0040】
次いで、導体圧着部41の上からクリンパ(図示略)を降ろして、アンビルとクリンパとで導体圧着部41を挟み込む。これにより、導体圧着部41の一対の導体圧着起立壁部49は、載置された導体露出部39を、両側部から巻き込むように屈曲される。
【0041】
また、上述の導体圧着部41の圧着と同時に、被覆圧着部43の上から被覆用のクリンパ(図示略)を降ろして、被覆用のアンビルとクリンパとで被覆圧着部43を挟み込んで、一対の被覆圧着起立壁部55を巻き込むように屈曲させる。
【0042】
これにより、電線接続部33は、導体露出部39及び絶縁被覆25を両外側から巻き込むように一対の導体圧着起立壁部49及び一対の被覆圧着起立壁部55によって隣接する二山状の圧着状態を構成することができる(
図3参照)。二山状の圧着状態では、一対の導体圧着起立壁部49及び一対の被覆圧着起立壁部55におけるそれぞれの起立先端面同士が突き合わされる構成となる。この二山状の圧着方式は、圧着部分の断面視がB字状となることからBクリンプ方式と称される。このBクリンプ方式は、一方のバレル片の上に他方のバレル片を重ねて一山状の圧着状態を得る所謂オーバーラップ方式よりも圧着の作業管理を容易にすることができる。
【0043】
Bクリンプ方式によって圧着された圧着端子11は、導体圧着部41及び被覆圧着部43に、
図4(b)に示すように、電線13の延在方向に沿ってV溝状の合わせ目65が連続して形成される。そして、この合わせ目65には、封止材19がコータ等によって塗布される。封止材19は、合わせ目65と共に、導体圧着部41の前側となる前方開口71を塞ぐようにしても塗布される。すなわち、封止材19は、合わせ目65と前方開口71を塞いでいる第1止水シート15とに連続して塗布される。その後、塗布した封止材19を硬化させることで、
図1に示す本実施形態の端子付電線21が完成する。
【0044】
次に、上記した構成の本実施形態に係る圧着端子11と電線13の接続構造の作用を説明する。
本実施形態に係る圧着端子11と電線13の接続構造では、電線接続部33が、導体圧着部41の前端67から被覆圧着部43の後端75まで連続する断面U字状に形成される。第1止水シート15は、前端69が導体露出部39の前端61よりも前側に位置する。第2止水シート17は、後端75が絶縁被覆25の一部の前端63よりも後側に位置する。断面U字状の電線接続部33は、電線延在方向に沿って延びる合わせ目65を合わせるようにして圧着される。この圧着によって、導体圧着部41と導体露出部39との接続部分は、前側が導体露出部39の前端61よりも前側の第1止水シート15によって塞がれ、後ろ側が絶縁被覆25の一部の前端63よりも後側の第2止水シート17によって塞がれる。そして、電線接続部33の圧着後の合わせ目65は、封止材19によって覆われる。
【0045】
これにより、導体圧着部41と導体露出部39との接続部分は、前後が第1止水シート15及び第2止水シート17、電線延在方向に沿う合わせ目65が封止材19によって塞がれる。その結果、導体露出部39が外部へ通じる隙間の全てが塞がれ、導体圧着部41と導体露出部39との接続部分が外部から密閉状態に封止される。
【0046】
更に、合わせ目65を塞いだ封止材19は、導体露出部39の前端よりも前側を塞いでいる第1止水シート15を覆って、第1止水シート15の前側を二重に封止する。その結果、電線接続部33は、第1止水シート15が充填された前方開口71が、更に封止材19によって覆われ、確実な封止構造を形成することになる。
【0047】
封止材19は、V溝状の合わせ目65に充填されて硬化することで、合わせ目65との接合面が、一対のV溝内壁面となって、大きな接合面積となる。その結果、高い強度で、合わせ目65に接合することができる。また、表面は、断面視で円弧状の単一曲面となるので、他部材との干渉や引っ掛かりを生じにくくできる。これにより、亀裂や剥離が生じにくく、耐久性に優れた止水構造を得ることができる。
【0048】
また、圧着端子11と電線13の接続構造では、粘着性を有する粘着シートである第1止水シート15及び第2止水シート17によって、導体圧着部41と導体露出部39との接続部分の前後が塞がれ、電線接続部33の合わせ目65のみに樹脂である封止材19が塗布される。これにより、樹脂の塗布量が、粘着シートの分だけ少なくて済む。
【0049】
そして、電線接続部33は、電線延在方向に沿って延びる合わせ目65を合わせるようにして圧着される所謂Bクリンプ方式にすることで、オーバーラップ方式よりも圧着の管理が容易となる。更に、圧着が容易であるBクリンプ方式によって形成される合わせ目65は、V溝状に形成されるので、封止材19の塗布による密閉が、簡単に可能となる。
【0050】
また、本実施形態に係る圧着端子11と電線13の接続構造では、電線接続部33の圧着後の形態で、第1止水シート15は、導体圧着部41の前端67よりも前側にはみ出している。すなわち、第1止水シート15は、導体圧着部41の前端67よりも前側にはみ出すことで、第1止水シート15同士の密着面積が増え、密閉性がより高まる。また、第2止水シート17は、被覆圧着部43の後端75よりも後側にはみ出している。すなわち、第2止水シート17は、被覆圧着部43の後端75よりも後側にはみ出すことで、絶縁被覆25との密着面積が増え、密閉性がより高まる。
【0051】
また、本実施形態に係る圧着端子11と電線13の接続構造では、導体23の材質と圧着端子11の材質との組み合わせが、腐食され易い材質の組み合わせの場合であっても、圧着端子11の外部から水が浸入することを確実に防ぐことができるので、防食性能を向上させることができる。これにより、圧着端子11が電線13の導体23に対して異種金属で構成された場合であっても、異種金属間に電解液が供給されなくなる。そこで、銅や銅合金製の導体圧着部41に圧着したアルミニウムやアルミニウム合金製の導体露出部39に生じようとするガルバニック腐食が抑制される。
【0052】
そして、圧着端子11と電線13の接続構造は、銅に比べ比重の小さいアルミニウム又はアルミニウム合金を電線13の導体23に用いることができるので、銅又は銅合金を導体23に用いた場合に比べ、軽量な接続構造とすることができる。
【0053】
従って、本実施形態に係る圧着端子11と電線13の接続構造によれば、樹脂の塗布量を減らし、全体を塗る場合よりも封止材19の管理を容易にすると共に、容易な圧着で圧着内部への水分の浸入を防ぐことができる。
【0054】
ここで、上述した本発明に係る圧着端子と電線の接続構造の実施形態の特徴をそれぞれ以下に簡潔に纏めて列記する。
[1] 導体(23)と、前記導体(23)を覆う絶縁被覆(25)と、を有する電線(13)と、
相手側端子に電気的に接続されるための電気接続部(29)が前部に形成され、前記電線(13)の端末部(31)に圧着される電線接続部(33)が後部に形成された圧着端子(11)と、を備え、
前記電線接続部(33)は、前記電線(13)の端末部(31)の絶縁被覆(25)が除去されて前記導体(23)が露出した導体露出部(39)に圧着される導体圧着部(41)と、前記電線(13)の端末部(31)に残された絶縁被覆(25)の一部に圧着される被覆圧着部(43)と、を有し、前記導体圧着部(41)が前側に、前記被覆圧着部(43)が後側に形成され、該導体圧着部(41)の前端から該被覆圧着部(43)の後端まで連続する断面U字状に形成され、
前記電線(13)の端末部(31)に圧着された状態の前記電線接続部(33)が、前記導体露出部(39)の前端(61)よりも前方側から前記絶縁被覆(25)の一部の前端(63)よりも後方側までを覆うと共に、電線延在方向に沿って延びる合わせ目(65)を合わせるようにして圧着される、
前記圧着端子(11)と前記電線(13)の接続構造であって、
前記電線接続部(33)の内面における前記導体圧着部(41)の前端(67)側に配置された第1止水シート(15)と前記被覆圧着部(43)に配置された第2止水シート(17)とを更に備え、
前記第1止水シート(15)の前端(69)が前記導体露出部(39)の前端(61)よりも前側に位置し、前記第2止水シート(17)の後端(73)が前記絶縁被覆(22)の一部の前端(63)よりも後側に位置し、
前記電線(13)の端末部(31)に圧着された状態の前記電線接続部(33)は、
前記第1止水シート(15)が配置された前記導体圧着部(41)の前端(67)より後方部分を通して、前記導体圧着部(41)と前記導体露出部(39)とが電気的に接続されると共に、前記導体圧着部(41)と前記導体露出部(39)との接続部分の前後が前記第1止水シート(15)及び前記第2止水シート(17)によって塞がれ、
前記電線接続部(33)における前記合わせ目(65)と前記導体圧着部(41)の前方開口(71)を塞いでいる前記第1止水シート(15)とが、封止材(19)によって覆わることを特徴とする圧着端子と電線の接続構造。
[2] 前記電線接続部(33)の圧着後の形態で、前記第1止水シート(15)は、前記導体圧着部(41)の前端(67)よりも前側にはみ出し、前記第2止水シート(17)は、前記被覆圧着部(43)の後端(75)よりも後側にはみ出すことを特徴とする上記[1]の構成の圧着端子と電線の接続構造。
[3] 前記導体(23)が、アルミニウム又はアルミニウム合金からなり、
前記圧着端子(11)が、銅又は銅合金からなることを特徴とする上記[1]又は[2]の構成の圧着端子と電線の接続構造。
【0055】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。