(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の多価フェニレンエーテルノボラック樹脂はポリ(フェニレンエーテル)構造の樹脂がアルキレン基等の有機基(以下、結合基又は連結基とも称する)を介して結合した構造を有する。すなわち、本発明の多価フェニレンエーテルノボラック樹脂は、ポリ(フェニレンエーテル)構造の樹脂とノボラック樹脂の構造を有する樹脂である。
【0015】
ポリ(フェニレンエーテル)構造の樹脂とは具体的には前述の特許文献1、特許文献2に記載の樹脂であり、キシレノールやトリメチルフェノールの酸化重合体が一般的であるが、特許文献2に記載の樹脂のようにビフェノール類や、ビスフェノール類と2,6−キシレノール等のフェノール化合物類の酸化重合体等もあげることができる。
ここで、ビスフェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェールIといったビスフェノール類を使用することができる。市販品としてはSABIC製のPPO(登録商標)が挙げられ、特に分子量の範囲からSA120やSA90−100等が好ましい。また、特に多官能化の度合いからSA90−100のような2官能のものを使用することが好ましい。ビフェノール類としては、例えば、下記式の化合物が挙げられる。
【0017】
(式中、R
1は各々独立の置換基を表し、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基であり、tは1〜4の整数を示す。)
【0018】
フェノール化合物類としては、o−クレゾール、2,6−ジメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2−エチルフェノール、2−メチル−6−エチルフェノール、2,6−ジエチルフェノール、2−n−プロピルフェノール、2−エチル−6−n−プロピルフェノール、2−メチル−6−クロルフェノール、2−メチル−6−ブロモフェノール、2−メチル−6−イソプロピルフェノール、2−メチル−6−n−プロピルフェノール、2−エチル−6−ブロモフェノール、2−メチル−6−n−ブチルフェノール、2,6−ジ−n−プロピルフェノール、2−エチル−6−クロルフェノール、2−メチル−6−フェニルフェノール、2−フェニルフェノール、2,6−ジフェニルフェノール、2,6−ビス−(4−フルオロフェニル)フェノール、2−メチル−6−トリルフェノール、2,6−ジトリルフェノール等の一価フェノール化合物が挙げられる。
【0019】
使用するポリ(フェニレンエーテル)樹脂の分子量としては、400〜8000(重量平均分子量 ゲルパーミエーションクロマトグラフィー ポリスチレン換算)であり、好ましくは500〜4000である。
使用する樹脂の分子量が高すぎる場合、溶剤への相溶性や、他の樹脂との相溶性で支障をきたし、硬化物に取り込む際に分離し、硬化不良、特性の偏在化をもたらすことから好ましくない。また分子量が小さい場合、特に200程度の場合、一般的なノボラック樹脂と比べ大きな誘電特性の差が出せず、好ましくない。
これら分子量の制御としては単純に分子をつなげるだけでなく、ラジカルによる解重合により分子量制御が可能となった事例も挙げられる。
【0020】
本発明の多価フェニレンエーテルノボラック樹脂は、フェニレン構造を結合基で繋げることでノボラックもしくはそれに類する形(便宜上、すべてノボラックと表現する)となる。
結合基としては炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。具体的にはメチレン、エチレン、プロピレン、シクロヘキサン-ジイル、フェニルメチレン、フェニレンビスメチレン、ビエニレンビスメチレン、フェニレンビスエチレン、フェニレンビスプロピレン、等が挙げられる。
本発明における結合基としては、特に下記式(1)に示す構造が好ましい。
【0022】
(式中、*部はポリ(フェニレンエーテル)樹脂のベンゼン骨格に結合する。)
【0023】
これら連結基の結合方法としては、原料ポリ(フェニレンエーテル)樹脂と各種アルデヒド類、ケトン類、ベンジルメチレン化合物、ビニルベンゼン構造を有する化合物等の結合形成化合物を利用して、溶剤存在下、酸性または塩基性条件下で加熱することで合成できる。
【0024】
ここで、結合形成化合物の具体的な例としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グリオキザール、プロピルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、オクチルアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、ピリジンカルボアルデヒド等のアルデヒド類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類、キシリレングリコール、キシリレンジハライド(ハロゲン:塩素、臭素などが挙げられる。)、ビスアルコキシメチルベンゼン(キシリレンビスアルキルエーテル、具体的にはビスメトキシメチルベンゼン、ビスエトキシメチルベンゼン、ビスプロポキシメチルベンゼン、ビスブトキシメチルベンゼン、ビスフェノキシメチルベンゼン、ビスアリルオキシメチルベンゼンなど、炭素数1〜6のアルコキシメチル体など。本合成反応においては特にキシリレングリコール、キシリレンジクロライド、ビスメトキシメチルベンゼンが好ましい。なお、置換基の配置はオルソ、メタ、パラいずれでもかまわないが、耐熱性、機械特性のバランスから特にパラ体が好ましい。)等のキシリレン化合物類、ビフェニルジメタノール、ビスハロゲノメチルビフェニル(ハロゲン:塩素、臭素などが挙げられる。)、ビスアルコキシメチルビフェニル(具体的にはビスメトキシメチルビフェニル、ビスエトキシメチルビフェニル、ビスプロポキシメチルビフェニル、ビスブトキシメチルビフェニル、ビスフェノキシメチルビフェニル、ビスアリルオキシメチルビフェニルなど、炭素数1〜6のアルコキシメチル体など。)等のビフェニルビスメチレン化合物類等のベンジルメチレン化合物、ジビニルベンゼン等のビニルベンゼン構造を有する化合物が挙げられる。
本合成反応においては特にビフェニルジメタノール、ビスクロロメチルビフェニル、ビスメトキシメチルビフェニルが好ましい。
【0025】
本発明の多価フェニレンエーテルノボラック樹脂は、原料ポリ(フェニレンエーテル)樹脂と結合形成化合物とを、溶剤の混合液に、必要に応じて触媒を加えて加熱することにより得られる。
また、原料ポリ(フェニレンエーテル)樹脂と必要に応じて触媒を溶解させた溶液に結合形成化合物を徐々に添加してもよい。反応時間は通常3〜150時間、反応温度は通常40〜150℃である。このようにして得られた多価フェニレンエーテルノボラック樹脂は用途によって、精製せずに用いることもできるが、通常、反応終了後に反応混合物を必要に応じて中和等の処理をしてから、晶析あるいは加熱減圧下において溶媒類を除去する事で精製して各種用途に使用する。また、反応によって、得られる多価フェニレンエーテルノボラック樹脂の平均分子量は大きくなるため、樹脂の軟化点が非常に高くなり、反応容器から取り出すことが困難になることから、以下(a)〜(d)の手法が利用できる。
【0026】
(a)水溶性溶剤で希釈後、水と混合させることで再沈殿することで得る方法。
(b)炭素数1〜4のアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール他)により希釈し、再沈殿することで得る方法。
(c)反応・精製終了後の溶剤に含まれる水のみ除去(加熱減圧等)した後、溶剤カットのワニスとして反応容器から取り出す方法。(樹脂濃度としては、好ましくは10〜90重量%であり、より好ましくは10〜80重量%、特に好ましくは30〜80重量%である。)特に粘度を重要視する場合が多く、その流動性から25℃での粘度が1000Pa・s以下が好ましく、より好ましくは100Pa・s以下である。粘度が高すぎる場合、使用時に流動性が無いことから取出しや、他の樹脂との混合が困難になることがある。なお使用可能な溶剤については後述する(硬化性樹脂組成物ワニスの項に記載の溶剤である。)。
(d)他樹脂(後述する硬化性樹脂組成物用硬化剤の項に記載の樹脂)と混合し、硬化剤組成物として反応容器から取り出す方法。(混合割合は他樹脂と本発明の樹脂の重量比で90:10〜30:70が好ましく、より好ましくは80:20〜30:70である。本発明の樹脂の配合量が少ない場合、誘電特性の大幅な改良は無い。)
【0027】
また、原料ポリ(フェニレンエーテル)樹脂と結合形成化合物との反応モル比(水酸基当量比)は1.2:1〜20:1が好ましく、より好ましくは1.5:1〜15:1、特に好ましくは1.5:1〜10:1である。反応モル比が1.2:1を下回る、すなわち結合形成化合物1に対し、原料ポリ(フェニレンエーテル)樹脂が1.2未満である場合、生成する多価フェニレンエーテルノボラック樹脂の分子量が大きくなりすぎてしまうため、溶剤への溶解性、また他の樹脂との相溶性が悪くなることがある。また、20:1を上回る、すなわち、結合形成化合物1に対し、原料ポリ(フェニレンエーテル)樹脂が20を超える場合、耐熱性に乏しくなることがある。
【0028】
本発明の多価フェニレンエーテルノボラック樹脂の合成において使用できる溶媒としては、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、アノン、シクロペンタノン、メチルエチルケトンなどが挙げられるがこれらに限定されるものではなく、単独でも2種以上併用してもよい。併用できる溶剤としては上記それぞれに加え、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、カルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、N−メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の含窒素溶剤などが挙げられる。溶媒の使用量は原料ポリ(フェニレンエーテル)樹脂と結合形成化合物との合計量100重量部に対し、通常5〜500重量部、好ましくは10〜400重量部の範囲である。
【0029】
触媒としては、基本的には酸性触媒を用いることが好ましい。結合形成化合物がベンジルハライドの場合は触媒の添加がなくともスムーズに反応を進めることができ、後の精製のしやすさの観点から触媒無し、もしくはほとんど使用しない方が好ましい。触媒を使用する場合、酸性触媒の具体例としては塩酸、硫酸、リン酸等の鉱酸類;シュウ酸、トルエンスルホン酸、酢酸等の有機酸類;タングステン酸等のヘテロポリ酸、活性白土、無機酸、塩化第二錫、塩化亜鉛、塩化第二鉄等、その他酸性を示す有機、無機酸塩類、等のノボラック樹脂製造用に通常使用される酸性触媒などが挙げられる。これら触媒は、前述に挙げた物に限定されるものではなく、単独でも2種以上を併用してもよい。触媒の使用量は、原料ポリ(フェニレンエーテル)樹脂に対し、通常0.005〜2.0倍モル、好ましくは0.01〜1.1倍モルの範囲、もしくは原料ポリ(フェニレンエーテル)樹脂100gに対し0.1〜50gが好ましく、より好ましくは0.3〜20部である。触媒量が少ないと反応の進行が遅くなる。また高温での反応が必要になる、反応が最後まで進まない等の課題が生じ、好ましく無い。また、触媒量が多すぎる場合、中和・精製等の後処理において多大な労力がかかることがある。
なお、反応により腐食性ガスが生成する場合は、引圧、もしくは窒素等の不活性ガスを送り込むことにより、系内から排出させることが好ましい。
【0030】
このようにして得られる多価フェニレンエーテルノボラック樹脂は、下記式(A)で示されるような構造式で代表され、この代表構造式の具体例を以下説明する。
得られる多価フェニレンエーテルノボラック樹脂は、下記Bに例示的に記載されているポリ(フェニレンエーテル)樹脂のベンゼン骨格が下記Aで例示的に記載されている連結基によって連結されており、前記連結基はポリ(フェニレンエーテル)樹脂の同一分子中のベンゼン骨格同士で、或いは2つ以上のポリ(フェニレンエーテル)樹脂の分子のベンゼン骨格同士間を連結している。
そして、連結基周辺の部分構造は例えば、下記式(A)のような構造となる。尚、下記ベンゼン骨格は、ポリ(フェニレンエーテル)樹脂分子中のベンゼン骨格を表している。
【0032】
(上記式中、Pはポリ(フェニレンエーテル)樹脂の残基を、Xは下記式(1)で表される連結基を、Rは水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を、*は水素原子または上記Xを示し、nは1〜2の整数を表す。)
【0033】
ここで、上記のポリ(フェニレンエーテル)樹脂の残基は、さらに別のベンゼン骨格でXを介して、ポリ(フェニレンエーテル)樹脂分子中のベンゼン骨格と連結し得る。
【0035】
このようにして得られる本発明の多価フェニレンエーテルノボラック樹脂は褐色の樹脂状(もしくは紛体)で、有機溶剤に可溶であり、ワニスとしても取り扱うことのできる樹脂となる。
このようにして得られる本発明の多価フェニレンエーテルノボラック樹脂の水酸基当量は400〜6000が好ましく、500〜5000が特に好ましい。
重量平均分子量としては、600〜50000が好ましく、700〜25000が特に好ましい。
【0036】
本発明の多価フェニレンエーテルノボラック樹脂は、そのままで熱可塑性プラスチック(もしくはその原料)として使用したり、熱可塑性プラスチックと混合して特性改善を行ったり、エポキシ樹脂の原料やその硬化剤として使用したりすることもできる。
【0037】
以下、本発明の多価フェニレンエーテルノボラック樹脂を含む本発明のエポキシ樹脂組成物(以下、硬化性樹脂組成物とも称する)について記載する。本発明の硬化性樹脂組成物においては、エポキシ樹脂を必須成分として使用する。
【0038】
本発明の硬化性樹脂組成物においては、エポキシ樹脂−硬化剤を必須成分とする組成物であり、多価フェニレンエーテルノボラック樹脂をエポキシ樹脂の硬化剤として必ず含有する。また、必要に応じて硬化促進剤を含有する。
【0039】
本発明の硬化性樹脂組成物において使用できるエポキシ樹脂の具体例としては、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂などが挙げられる。具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールS、チオジフェノール、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロルメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類、アルコール類から誘導されるグリシジルエーテル化物、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂等、シルセスキオキサン系のエポキシ樹脂(鎖状、環状、ラダー状、あるいはそれら少なくとも2種以上の混合構造のシロキサン構造にグリシジル基、および/またはエポキシシクロヘキサン構造を有するエポキシ樹脂)等の固形または液状エポキシ樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
本発明の硬化性樹脂組成物が含有する硬化剤としては、前述の本発明の多価フェニレンエーテルノボラック樹脂以外に他の硬化剤を併用することが出来る。併用する場合は、前述の本発明の多価フェニレンエーテルノボラック樹脂と他の硬化剤との硬化剤組成物として使用することができる。併用する場合、本発明の多価ポリフェニレンエーテルノボラック樹脂の全エポキシ樹脂組成物中に占める割合は、30重量%以上が好ましく、特に40重量%以上が好ましい。
【0041】
併用し得る硬化剤としては、例えばフェノール樹脂、フェノール系化合物、アミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、カルボン酸系化合物などが挙げられる。
用いうる硬化剤の具体例としては以下の通りである。
フェノール樹脂、フェノール化合物;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロロメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4’−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4’−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類、テルペンとフェノール類の縮合物などのポリフェノール類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0042】
好ましいフェノール樹脂としては、誘電率の面からフェノールアラルキル樹脂(芳香族アルキレン構造を有する樹脂)が挙げられ、特に好ましくはフェノール、ナフトール、クレゾールから選ばれる少なくとも一種を有する構造であり、そのリンカーとなるアルキレン部が、ベンゼン構造、ビフェニル構造、ナフタレン構造から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする樹脂(具体的にはザイロック、ナフトールザイロック、フェノールビフェニレンノボラック樹脂、クレゾール−ビフェニレンノボラック樹脂、フェノール−ナフタレンノボラック樹脂などが挙げられる。)である。
【0043】
アミン系化合物、アミド系化合物;ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド樹脂などの含窒素化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0044】
酸無水物系化合物、カルボン酸系化合物;無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ブタンテトラカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物、などの酸無水物;各種アルコール、カルビノール変性シリコーン、と前述の酸無水物との付加反応により得られるカルボン酸樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0045】
その他の併用し得る硬化剤としては、イミダゾール、トリフルオロボラン−アミン錯体、グアニジン誘導体の化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0046】
本発明の硬化性樹脂組成物において硬化剤の使用量は、全エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対してその官能基(水酸基)当量で0.7〜1.2当量が好ましい。エポキシ基1当量に対して、0.7当量に満たない場合、あるいは1.2当量を超える場合、いずれも硬化が不完全となり良好な硬化物性が得られないことがある。
【0047】
本発明の硬化性樹脂組成物においては、硬化剤とともに硬化促進剤を併用しても差し支えない。用い得る硬化促進剤の具体例としては、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾ−ル類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、テトラブチルアンモニウム塩、トリイソプロピルメチルアンモニウム塩、トリメチルデカニルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩などの4級アンモニウム塩、トリフェニルベンジルフォスフォニウム塩、トリフェニルエチルフォスフォニウム塩、テトラブチルフォスフォニウム塩などの4級フォスフォニウム塩が挙げられる。(4級塩のカウンターイオンはハロゲン、有機酸イオン、水酸化物イオンなど、特に指定は無いが、特に有機酸イオン、水酸化物イオンが好ましい。)、オクチル酸スズ等の金属化合物等が挙げられる。硬化促進剤を用いる場合は、エポキシ樹脂100重量部に対して0.01〜5.0重量部が必要に応じ用いられる。
【0048】
本発明の硬化性樹脂組成物には、リン含有化合物を難燃性付与成分として含有させることもできる。リン含有化合物としては反応型のものでも添加型のものでもよい。リン含有化合物の具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシリレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジル−2,6−ジキシリレニルホスフェート、1,3−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、1,4−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、4,4'−ビフェニル(ジキシリレニルホスフェート)等のリン酸エステル類;9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のホスファン類;エポキシ樹脂と前記ホスファン類の活性水素とを反応させて得られるリン含有エポキシ化合物、赤リン等が挙げられるが、リン酸エステル類、ホスファン類またはリン含有エポキシ化合物が好ましく、1,3−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、1,4−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、4,4'−ビフェニル(ジキシリレニルホスフェート)またはリン含有エポキシ化合物が特に好ましい。リン含有化合物の含有量はリン含有化合物/全エポキシ樹脂=0.1〜0.6(重量比)が好ましい。0.1以下では難燃性が不十分になることがあり、0.6以上では硬化物の吸湿性、誘電特性が低下することがある。
【0049】
さらに本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて酸化防止剤を添加しても構わない。使用できる酸化防止剤としては、フェノール系、イオウ系、リン系酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。酸化防止剤の使用量は、本発明の硬化性樹脂組成物中の樹脂成分100重量部に対して、通常0.008〜1重量部、好ましくは0.01〜0.5重量部である。
【0050】
フェノール系酸化防止剤の具体例として、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−p−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール等のモノフェノール類;2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルスルホン酸エチル)カルシウム等のビスフェノール類;1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、トコフェノール等の高分子型フェノール類が例示される。
【0051】
イオウ系酸化防止剤の具体例として、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート等が例示される。
【0052】
リン系酸化防止剤の具体例として、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビ(2,4−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、ビス[2−t−ブチル−6−メチル−4−{2−(オクタデシルオキシカルボニル)エチル}フェニル]ヒドロゲンホスファイト等のホスファイト類;9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のオキサホスファフェナントレンオキサイド類などが例示される。
【0053】
これらの酸化防止剤はそれぞれ単独で使用できるが、2種以上を組み合わせて併用しても構わない。特に本発明においてはリン系の酸化防止剤が好ましい。
【0054】
さらに本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて光安定剤を添加しても構わない。
光安定剤としては、ヒンダートアミン系の光安定剤、特にHALS等が好適である。HALSとしては特に限定されるものではないが、代表的なものとしては、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’―ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ〔{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)〔〔3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル〕メチル〕ブチルマロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクチロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)等が挙げられる。HALSは1種のみが用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0055】
さらに本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じてバインダー樹脂を配合することも出来る。バインダー樹脂としてはブチラール系樹脂、アセタール系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ−ナイロン系樹脂、NBR−フェノール系樹脂、エポキシ−NBR系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。バインダー樹脂の配合量は、硬化物の難燃性、耐熱性を損なわない範囲であることが好ましく、樹脂成分100重量部に対して通常0.05〜50重量部、好ましくは0.05〜20重量部が必要に応じて用いられる。
【0056】
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて無機充填剤を添加することができる。無機充填剤としては、結晶シリカ、溶融シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ジルコニア、フォステライト、ステアタイト、スピネル、チタニア、タルク等の粉体またはこれらを球形化したビーズ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。これら無機充填剤の含有量は、本発明の硬化性樹脂組成物中において0〜95重量%を占める量が用いられる。更に本発明の硬化性樹脂組成物には、シランカップリング剤、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の離型剤、界面活性剤、染料、顔料、紫外線吸収剤等の種々の配合剤、各種熱硬化性樹脂を添加することができる。
【0057】
本発明の硬化性樹脂組成物は、各成分を均一に混合することにより得られる。本発明の硬化性樹脂組成物は従来知られている方法と同様の方法で容易にその硬化物とすることができる。例えば本発明のポリフェニレンエーテルノボラック樹脂とエポキシ樹脂並びに必要により硬化促進剤、リン含有化合物、バインダー樹脂、無機充填材及び配合剤とを必要に応じて押出機、ニーダ、ロール等を用いて均一になるまで充分に混合して硬化性樹脂組成物を得、その硬化性樹脂組成物をポッティング、溶融後(液状の場合は溶融無しに)注型あるいはトランスファー成型機などを用いて成型し、さらに80〜200℃で2〜10時間加熱することにより本発明の硬化物を得ることができる。
【0058】
また本発明の硬化性樹脂組成物を必要に応じてトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の溶剤に溶解させ、硬化性樹脂組成物ワニスとし、ガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させて加熱乾燥して得たプリプレグを熱プレス成形することにより、本発明の硬化性樹脂組成物Aの硬化物とすることができる。この際の溶剤は、本発明の硬化性樹脂組成物と該溶剤の混合物中で通常10〜70重量%、好ましくは15〜70重量%を占める量を用いる。また液状組成物であれば、そのまま例えば、RTM方式でカーボン繊維を含有するエポキシ樹脂硬化物を得ることもできる。
【0059】
また本発明の硬化性樹脂組成物をフィルム型組成物の改質剤としても使用できる。具体的にはB−ステージにおけるフレキ性等を向上させる場合に用いることができる。このようなフィルム型の樹脂組成物は、本発明の硬化性樹脂組成物を前記硬化性樹脂組成物ワニスとして剥離フィルム上に塗布し、加熱下で溶剤を除去した後、Bステージ化を行うことによりシート状の接着剤として得られる。このシート状接着剤は多層基板などにおける層間絶縁層として使用することが出来る。
【0060】
本発明の硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂が使用される一般の用途が挙げられ、例えば、接着剤、塗料、コーティング剤、成形材料(シート、フィルム、FRP等を含む)、絶縁材料(プリント基板、電線被覆等を含む)、封止剤の他、他樹脂等への添加剤等が挙げられる。接着剤としては、土木用、建築用、自動車用、一般事務用、医療用の接着剤の他、電子材料用の接着剤が挙げられる。これらのうち電子材料用の接着剤としては、ビルドアップ基板等の多層基板の層間接着剤、ダイボンディング剤、アンダーフィル等の半導体用接着剤、BGA補強用アンダーフィル、異方性導電性フィルム(ACF)、異方性導電性ペースト(ACP)等の実装用接着剤等が挙げられる。
【0061】
封止剤、基板としては、コンデンサ、トランジスタ、ダイオード、発光ダイオード、IC、LSIなど用のポッティング、ディッピング、トランスファーモールド封止、IC、LSI類のCOB、COF、TABなど用のといったポッティング封止、フリップチップなどの用のアンダーフィル、QFP、BGA、CSPなどのICパッケージ類実装時の封止(補強用アンダーフィルを含む)およびパッケージ基板などを挙げることができる。またネットワーク基板や、モジュール基板といった機能性が求められる基板用途へも好適である。
【実施例】
【0062】
次に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、以下において部は特に断わりのない限り重量部である。尚、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
以下に実施例で用いた各種分析方法について記載する。
エポキシ当量: JIS K 7236 (ISO 3001) に準拠
ICI溶融粘度: JIS K 7117−2 (ISO 3219) に準拠
軟化点: JIS K 7234 に準拠
全塩素: JIS K 7243−3 (ISO 21672−3) に準拠
GPC:
カラム(Shodex KF−603、KF−602.5、KF−602、KF−601x2)
連結溶離液はテトラヒドロフラン
流速は0.5ml/min.
カラム温度は40℃
検出:RI(示差屈折検出器)
【0063】
以下、実施例、比較例により本発明を具体的に説明する。
【0064】
(実施例1)
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらポリフェニレンエーテル樹脂(サビック製 MX90-100、GPCチャートにおいてMn=2066、Mw=3553、Mz=5951)175部、p−キシリレングリコール(東京化成製 試薬)9.6部、トルエン(純正化学製 試薬)300部、パラトルエンスルホン酸・一水和物(東京化成製 試薬)2部加え、100℃2時間反応させ、その後、110−120℃で還流状態とし、そのまま7時間反応を行った。
反応終了後、メチルイソブチルケトン200部を加え、水洗を繰り返し、水層が中性になったことを確認した後、油層からロータリーエバポレーターを用いて減圧下、溶剤類を留去することで本発明の多価フェニレンエーテルノボラック樹脂(P−1)を179部を得た。(なお、原料であるポリフェニレンエーテル樹脂のGPCチャートではMn=2091、Mw=4215、Mz=7774であった。)
【0065】
(実施例2)
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらポリフェニレンエーテル樹脂(サビック製 MX90-100)75部、p−キシリレングリコール(東京化成製 試薬)5部、トルエン(純正化学製 試薬)130部、パラトルエンスルホン酸・一水和物(東京化成製 試薬)1部加え、100℃2時間反応させ、その後、110−120℃で還流状態とし、そのまま10時間反応を行った。
反応終了後、メチルイソブチルケトン100部を加え、水洗を繰り返し、水層が中性になったことを確認した後、油層からロータリーエバポレーターを用いて減圧下、溶剤類を徐々に除去し、水の流出がなくなったことを確認し、メチルイソブチルケントンを追加し、樹脂濃度50%に調整した。これにより本発明の多価フェニレンエーテルノボラック樹脂ワニス(V−1)を143部を得た。GPCのチャートでは、Mn=2111、Mw=4345、 Mz=7932であった。
【0066】
(実施例3)
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらポリフェニレンエーテル樹脂(サビック製 MX90-100)87.5部、p−キシリレングリコール(東京化成製 試薬)4.8部、メチルイソブチルケトン(純正化学製 試薬)138部、パラトルエンスルホン酸・一水和物(東京化成製 試薬)1部加え、100℃2時間反応させ、その後、110−120℃で還流状態とし、そのまま7時間反応を行った。
反応終了後、メチルイソブチルケトン100部を加え、水洗を繰り返し、水層が中性になったことを確認した後、油層からロータリーエバポレーターを用いて減圧下、溶剤類を徐々に除去し、水の流出がなくなったことを確認し、メチルイソブチルケントンを追加し、樹脂濃度60%に調整した。
得られた本発明の多価フェニレンエーテルノボラック樹脂ワニス(V−2)を50部、フェノールビフェニレンノボラック(日本化薬製 KAYAHARD GPH-65)70部加え、溶解した後、ロータリーエバポレーターで減圧下、溶剤類を留去し、本発明の多価フェニレンエーテルノボラック樹脂が30%含有された、硬化剤組成物(H-1)を得た。軟化点は121℃であった、
【0067】
(実施例4)
実施例3中、フェノールビフェニレンノボラック(日本化薬製 KAYAHARD GPH-65)70部を30部に変えた以外は同様に操作を行い、本発明の硬化剤組成物(H-2)を得た。
(実施例5)
実施例3中、フェノールビフェニレンノボラック(日本化薬製 KAYAHARD GPH-65)70部を20部に変えた以外は同様に操作を行い、本発明の多価フェニレンエーテルノボラック樹脂が60%含有された、硬化剤組成物(H-3)を得た。軟化点は130℃であった。
【0068】
(実施例6)
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらポリフェニレンエーテル樹脂(サビック製 SA120-100 、GPC測定においてMn=2960、 Mw=6863、Mz=11851)100部、p−キシリレングリコール(東京化成製 試薬)10部、トルエン(純正化学製 試薬)140部、パラトルエンスルホン酸・一水和物(東京化成製 試薬)2.0部加え、100℃2時間反応させ、その後、110−120℃で還流状態とし、そのまま7時間反応を行った。
反応終了後、メチルエチルケトン100部を加え、メタノール1000部を入れた容器に徐々に滴下し、再沈殿を行った。得られた樹脂粉末を濾過後、メタノール:水=1:1 100部で洗浄した後、水100部で5回洗浄を行った。これにより、本発明の多価フェニレンエーテルノボラック樹脂(P−3)を89部を得た。GPCのチャートではMn=3683、Mw=7356、Mz=11860であった。また、得られた(P-3)30部に対し、KAYAHARD GPH-65を20部、トルエン50部を使用し、混合した後、ロータリーエバポレーターで減圧下、溶剤類を留去し、硬化剤組成物(H-4)を得た。
【0069】
(比較例1)
ポリフェニレンエーテル樹脂(サビック製 MX90-100)を30部、フェノールビフェニレンノボラック(日本化薬製 KAYAHARD GPH-65)70部加え、メチルイソブチルケトンに溶解した後、ロータリーエバポレーターで減圧下、溶剤類を留去し、比較用の硬化剤組成物(H’-1)を得た。
(比較例2)
ポリフェニレンエーテル樹脂(サビック製 MX90-100)を30部、フェノールビフェニレンノボラック(日本化薬製 KAYAHARD GPH-65)20部加え、メチルイソブチルケトンに溶解した後、ロータリーエバポレーターで減圧下、溶剤類を留去し、比較用の硬化剤組成物(H’-2)を得た。
【0070】
実施例7〜8及び比較例3
<誘電率・誘電正接試験>
前記で得られた硬化剤組成物及びエポキシ樹脂等を表1の割合(重量部)で配合し、ミキシングロールを用いて均一に混合・混練し、封止用エポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物をミキサーにて粉砕し、更にタブレットマシーンにてタブレット化した。このタブレット化されたエポキシ樹脂組成物をトランスファー成型(175℃×60秒)し、更に脱型後160℃×2時間+180℃×6時間の条件で硬化、評価用試験片を得た。
なお、硬化物の物性は以下の要領で測定した。
・誘電率・誘電正接:空洞共振器法
使用機器 関東電気応用開発 空洞共振器1GHz
リファレンス テフロン(登録商標)
【0071】
【表1】
【0072】
実施例9及び比較例4
<誘電特性試験・耐熱性試験>
前記で得られた硬化剤組成物及びエポキシ樹脂等を表2の割合(重量部)で配合し、ミキシングロールを用いて均一に混合・混練し、封止用エポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物をミキサーにて粉砕し、更にタブレットマシーンにてタブレット化した。このタブレット化されたエポキシ樹脂組成物をトランスファー成型(175℃×60秒)し、更に脱型後160℃×2時間+180℃×6時間の条件で硬化、評価用試験片を得た。
なお、硬化物の物性は以下の要領で測定した。
・誘電率・誘電正接:空洞共振器法
使用機器 関東電気応用開発 空洞共振器1GHz
リファレンス テフロン(登録商標)
・耐熱性(TMA):JIS K 7244に準拠して測定した。
【0073】
【表2】
【0074】
実施例10及び比較例5
<耐熱性試験・誘電特性試験>
前記で得られた硬化剤組成物及びエポキシ樹脂等を表3の割合(重量部)で配合し、ミキシングロールを用いて均一に混合・混練し、封止用エポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物をミキサーにて粉砕し、更にタブレットマシーンにてタブレット化した。このタブレット化されたエポキシ樹脂組成物をトランスファー成型(175℃×60秒)し、更に脱型後160℃×2時間+180℃×6時間の条件で硬化、評価用試験片を得た。
なお、硬化物の物性は以下の要領で測定した。
・誘電率・誘電正接:空洞共振器法
使用機器 関東電気応用開発 空洞共振器1GHz
リファレンス テフロン(登録商標)
・耐熱性(DMA)
動的粘弾性測定器:TA−instruments、DMA−2980
測定温度範囲:−30〜280℃
温速度:2℃/分
試験片サイズ:5mm×50mmに切り出した物を使用した(厚みは約800μm)
Tg:Tan−δのピーク点をTgとした
・耐熱性(TMA):JIS K 7244に準拠して測定した。
【0075】
【表3】
【0076】
以上の結果から、本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化剤(組成物)として、類似構造を有するH’-1、H’-2を使用したものと比較し、耐熱性にも優れることが明らかであり、また他の硬化剤を使用したものと比較して誘電率・誘電正接も良く、優れた誘電特性を有することが確認された。
【0077】
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。
なお、本出願は、2012年11月6日付で出願された日本国特許出願(特願2012−244309)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。