(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240614
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】連続可変トロイダル変速機
(51)【国際特許分類】
F16H 15/38 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
F16H15/38
【請求項の数】23
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-551618(P2014-551618)
(86)(22)【出願日】2013年1月10日
(65)【公表番号】特表2015-505019(P2015-505019A)
(43)【公表日】2015年2月16日
(86)【国際出願番号】EP2013050425
(87)【国際公開番号】WO2013104727
(87)【国際公開日】20130718
【審査請求日】2016年1月12日
(31)【優先権主張番号】1200357.0
(32)【優先日】2012年1月10日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】504290859
【氏名又は名称】トロトラク・(ディヴェロプメント)・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】デ フライタス アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ダットソン ブライアン
【審査官】
塚原 一久
(56)【参考文献】
【文献】
特表2007−502393(JP,A)
【文献】
特開2011−153638(JP,A)
【文献】
実開平04−121567(JP,U)
【文献】
特開2008−249117(JP,A)
【文献】
特開2010−144743(JP,A)
【文献】
米国特許第03394617(US,A)
【文献】
米国特許第03267756(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 13/00−15/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機であって、
変速機軸線の周りに回転するよう同軸に装着され、間にトロイダルキャビティが定められる入力レース及び出力レースと、
前記入力レース及び前記出力レースの間に配置され、それぞれの接触領域において前記入力レース及び前記出力レースと駆動係合する2つ以下の転動要素であって、各転動要素が転動軸の周りで回転するよう各キャリッジ組立体上に装着され、前記転動要素のそれぞれが各傾転軸の周りで自在に枢動することができ、前記傾転軸が、転動要素の中心の前記転動軸に垂直に前記転動要素を通過し、これにより前記入力レース及び前記出力レースの回転速度比である変速機比の変化によって前記各転動要素の前記傾転軸の周りの傾斜角度の変化を引き起こす前記2つ以下の転動要素と、を有し、
前記各キャリッジ組立体が、ピッチ軸線の周りで前記各キャリッジ組立体と関連する転動要素が枢動するよう装着され、その結果、前記関連する転動要素のピッチ角の変化をもたらし、前記ピッチ軸線が前記転動要素の中心及び前記接触領域を通過し、
前記変速機が更に、制御部材を有し、この制御部材は、複数のキャリッジ組立体の少なくとも1つのキャリッジによって支持される反力に対してほぼ垂直な並進移動によって、前記複数のキャリッジ組立体の少なくとも1つに対して動作可能であり、この並進移動により前記関連する転動要素がそのピッチ軸線の周りで枢動して、前記関連する転動要素のピッチ角を変化させ、前記2つ以下の転動要素に前記傾転軸の周りで枢動を行わせて、これにより変速機比の変化をもたらすように構成されている、変速機。
【請求項2】
前記トロイダルキャビティは、前記入力レース及び前記出力レースに対してほぼ平行に且つ等間隔に配置された中心面を定め、前記傾転軸の少なくとも1つは、キャスター角によって前記変速機の中心面に対して傾斜している、請求項1に記載の変速機。
【請求項3】
少なくとも1つの前記キャリッジ組立体は、前記変速機軸線に平行な方向で前記変速機の中心面からオフセットしている作動点で作動される、請求項2に記載の変速機。
【請求項4】
前記作動点でのオフセットは、前記キャスター角を定める、請求項3に記載の変速機。
【請求項5】
少なくとも1つの前記傾転軸は、前記転動要素の中心及び前記作動点を通って延びる、請求項3又は4に記載の変速機。
【請求項6】
少なくとも1つの前記キャリッジ組立体及び前記関連する転動要素は、共に4つの接点を有し、これらの接点は、前記入力レース、前記出力レース、前記作動点、反力点にある、請求項3〜5の何れか1項に記載の変速機。
【請求項7】
前記関連する転動要素からの荷重は、前記作動点から分離された、前記反力点によって担われる、請求項6に記載の変速機。
【請求項8】
さらに、20Wよりも小さい出力を有する前記制御部材を作動させる動力手段を備える、請求項1〜7の何れか1項に記載の変速機。
【請求項9】
前記制御部材は、前記変速機軸線を含む平面の同じ側で前記2つの転動要素に動作可能に連結される、請求項1〜8の何れか1項に記載の変速機。
【請求項10】
前記制御部材は、2つのキャリッジ組立体の双方を同時に作動させるものである、請求項1〜9の何れか1項に記載の変速機。
【請求項11】
前記並進入力は、キャリッジ反力に対して実質的に垂直である、請求項10に記載の変速機。
【請求項12】
さらに、前記トロイダルキャビティ内に設けられた反力部材を備え、この反力部材は、前記転動要素からの反力トルクを担うように2つの転動要素に動作可能に連結される、請求項1〜11の何れか1項に記載の変速機。
【請求項13】
前記反力部材は、この反力部材が前記トロイダルキャビティ内で各転動要素によって生成される反力荷重を平衡にするように前記変速機軸線の半径方向に移動可能である、請求項12に記載の変速機。
【請求項14】
前記反力部材は、線形移動可能である、請求項13に記載の変速機。
【請求項15】
さらに、前記反力部材の移動を減衰させるダンパーを備える、請求項13又は14に記載の変速機。
【請求項16】
前記反力部材は、前記変速機軸線の方向に移動可能である、請求項12〜15の何れか1項に記載の変速機。
【請求項17】
前記キャリッジ組立体は、同時に作動する、請求項1〜16の何れか1項に記載の変速機。
【請求項18】
前記キャリッジ組立体が装着される単一の制御部材を備える、請求項1〜17の何れか1項に記載の変速機。
【請求項19】
前記ピッチ軸線の周りの少なくとも1つの前記キャリッジ組立体の移動が、単一アクチュエータを用いて達成される、請求項1〜18の何れか1項に記載の変速機。
【請求項20】
転動要素を2つのみ有する、請求項1〜19の何れか1項に記載の変速機。
【請求項21】
前記2つの転動要素は、前記入力作動面及び出力作動面の間に配置され、それぞれの接触領域において前記入力作動面及び出力作動面とトラクション流体を通じて駆動係合する、請求項1〜20の何れか1項に記載の変速機。
【請求項22】
各キャリッジ組立体は、ピッチ軸線の周りで枢動するよう装着され、その結果、各転動要素の各ピッチ角の変化をもたらし、前記ピッチ軸線が前記各転動要素の前記接触領域を通過する、請求項1〜21の何れか1項に記載の変速機。
【請求項23】
請求項1〜22の何れか1項に記載の変速機を組み込んだ、エンジンから補機に駆動力を伝達するための駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機(バリエータ)に関する。より具体的には、本発明は、機械的変速システムの構成要素である変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書において、変速機は、2つの回転可能要素を相互接続させ、これにより回転時にこの2つの回転可能要素がある比(「変速機比」と呼ばれる)によって互いに関連する回転速度を有し、この比は、最小変速機比と最大変速機比の間を実質的に無段で変化することができる変速機の構成要素である。
【0003】
フルトロイダル変速機
一連の変速機は、「フルトロイダル」変速機として公知である。フルトロイダル変速機において、各回転可能要素は変速機内のそれぞれのレースに接続され、各回転可能要素がそのレースと共に回転するよう固定され、また、レースが共通軸線(「変速機軸線」)の周りを回転するようになっている。各レースは作動面を有し、各作動面は、変速機軸線に平行な方向で対面するように配列される。各作動面内には、変速機軸線と同軸に弓形断面の環状凹部が形成される。この凹部は、変速機軸線に対して実質的に同じ半径(「トロイダル半径」)のものであり、これら凹部の断面が共通の仮想円上にあるように配列され、その仮想円の平面が変速機軸線と交差し、仮想円の中心が作動面に平行且つ作動面間に等間隔に配置された面(「中心面」)内にある。仮想円を変速機軸線の周りに延ばすことにより、仮想トーラスが描かれ、作動面がトーラスの対向する境界領域を占める。従って、レースの作動面間のスペースは、「トロイダルキャビティ」と呼ばれる。
【0004】
トロイダルキャビティ内には複数の転動要素が設けられる。各転動要素は、2つのレースのそれぞれの作動面と接触する(以下で検討する条件に従って)転動面を有する。各転動要素は、それぞれのキャリッジにおいて担持され、転動面の中心となる転動軸の周りでキャリッジに対して回転できるようになっている。
【0005】
キャリッジに対するレース(本明細書では「入力レース」と呼ぶ)のうちの一方のレースの回転により、各転動要素が回転するようになり、またこれにより、入力レースの回転と反対方向に他方のレース(本明細書では「出力レース」と呼ぶ)にトルクが加わるようになる。加えられたトルクに応答して出力レースが回転できるようになる場合、出力レースは、入力レースの回転とは反対方向に回転することになる。このような回転中、各転動要素は、それぞれの作動面上で描かれるそれぞれの円形接触軌跡の周りで入力レース及び出力レースと接触することになる。これら2つの軌跡が同じ半径(軌跡の半径は、一般に「接触半径」と呼ばれる)である場合、出力レース及び入力レースは、同じ回転速度(反対方向ではあるが)を有することになる。しかしながら、入力レースの接触半径(「入力半径」)が出力レースの接触半径(「出力半径」)と等しくない場合、出力レースの速度は、入力レースの速度よりも大きいか又は小さくなる。一般に、変速機比は、入力半径と出力半径の比に等しくなる。
【0006】
各キャリッジは、転動軸が移動して入力及び出力半径を変えることができるように構成され、この移動は「傾転」と呼ばれている。少なくとも変速機が平衡状態で作動中であるときには、入力及び出力半径は、トロイダル半径の周りに対称的に配置される。
【0007】
上記の説明では、作動面と転動要素との間の接触に言及している。しかしながらこれは簡素化されている。トロイダル変速機のほとんどの実施形態は、トラクション(牽引)駆動力を用いて作動する。換言すると、作動面及び転動要素は、トラクション流体中に少なくとも部分的に浸漬される。これは、圧力が閾値を超えたときに急激に増大する粘度を有するという性質がある。レースが回転すると、トラクション流体が、転動要素及び作動面間に形成されるニップ内に引き込まれて、転動面と作動面との間にトラクション流体の薄い層を生成し、よって文字通りこれらの間に接触が存在しない。十分なトラクション駆動力を得るために、レースを変速機軸線に沿って互いに向けて付勢する端部荷重が加えられる。端部荷重は、作動面と転動面との間の界面で適切なトラクションを生成するのに十分な荷重であるが、変速機の効率及び耐久性を損なう程ではない荷重を提供する要件の平衡をとるよう最適化される。多くの実施形態において、レースは、端部荷重に応答して変速機軸線に沿って僅かな移動を生じることができる。
【0008】
上述のフルトロイダル変速機の一般的構成の範囲内で、キャリッジの制御、装着、及び移動の自由度、レースの数及び構成、転動要素の数及び構成などに関して極めて多くの変形形態が実施可能である。
【0009】
上述の変速機の1つの実施形態において、各転動要素は、互いに接触した状態にある2つの転動要素の列で置き換えられる。従って、各転動要素は、1の作動面と、及び他の転動要素と接触状態にある。この構成は、上述の構成と比べて幾つかの利点と幾つかの欠点とを有するが、ここではこれらを検討しない。この修正形態を組み込んだ変速機において、両方のレースが変速機軸線の周りで同じ方向に転回している点に留意されたい。
【0010】
レースを定義するための用語「入力」及び「出力」の使用は、これらの構成要素に関する機能的又は構造的限定として解釈すべきではなく、これらは単に標識に過ぎない。変速機は、完全に対称的作動とすることができる。これらは通常、特定の文脈において簡潔で分かりやすい説明を提供するよう選ばれることになる。例えば、車両用変速機の場合、入力は通常は原動機に接続され、出力は通常、最終駆動システムに接続され、変速機を通る標準的な動力方向を示すことになる。しかしながら、車両がオーバーラン状態にあるときには、実際には、エンジンブレーキにより変速機の出力から入力に動力が導かれるようになることは理解されるであろう。
【0011】
本明細書の残りの部分において、用語「変速機(バリエータ)」は、文脈上他の意味を示さない限り、上述のフルトロイダル変速機を指す。
【0012】
変速機の制御
変速機を制御するのに使用される主要な2つの方式、トルク制御と比制御がある。
【0013】
トルク制御は、変速機の特性から生じる特徴に依存するので、多速度変速機において直接相当するものは存在しない。トルク制御は、
図1〜3に関連する国際特許公開第2010/070341号の部品を含む、多くの公報において記載されており、本発明の理解を可能にするのに必要とされる概要のみをここで説明する。
【0014】
トルク制御は、幾つかの設計特徴を有する変速機に依存する。
・各キャリッジは、中心面に対して僅かな角度で傾斜した反力軸の周りの回転自由度を有する。
・各キャリッジは、アクチュエータにより加えられる力に抗して反力軸に沿って軸方向に移動することができる。
【0015】
これらの要件の第1は、トルク制御下にある間に傾転角がアクチュエータにより直接制御されないことを意味する点に留意されたい。
【0016】
各レースは、作動面に接線方向で作用する力を各転動要素に加える。従って、各アクチュエータにより等しく且つ対向する接線方向の力が提供されて、対応する転動要素の転動軸を反力軸に沿って固定して維持されなければならない。アクチュエータにより加えられる力が変化した場合、キャリッジに作用する力が不平衡となり、よって転動軸が移動することになる。変速機の幾何形状は、反力軸に沿った移動時に反力軸の周りに連結が生成され、これによりキャリッジが回転するように構成される。これは、キャリッジに作用する力の不均衡を低減するように、傾転角、従って変速機比を変化させる。従って、キャリッジは、力が均衡状態に戻る新しい傾転角に向かって移動する。変速機の幾何形状に起因して、キャリッジ組立体は、反力軸に沿って移動して、傾転軸の周りで回転し、入力及び出力レースの速度の比に対応するようになる。
【0017】
比制御は、複数の離散的な間隔を置いた比で変速機の制御に対する最も近い類似性を担う。比制御構成においてローラ及びキャリッジの変位は、ロータキャリッジが受ける反力に応答しない手段により制御される。比制御の基本的作動原理は、制御システムが、所望の動作条件を達成するのに必要な変速機比を決定付け、アクチュエータを作動させて、目標比を達成するのに必要な角度まで転動軸が直接傾転するようにキャリッジを移動させることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】国際特許公開第2010/070341号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的
他の移動なしでキャリッジの傾転を直接変化させることにより比制御を達成しようとする場合、1つの副次的な影響は、転動要素と作動面との間の接触点が作動面にわたって半径方向に移動することである。これは、想起されるように、高度に粘性のある接触点の領域においてトラクション流体を剪断することによってのみ達成することができる。従って、このような直接制御作動を達するためにアクチュエータに供給しなければならない動力レベルは甚大で、必要とされる力及びストロークを提供するための高コストの作動機構が必要となる可能性がある。本発明の目的は、低作動力を用いて、従って低コストのアクチュエータを必要とする転動要素の制御を可能にする構成を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この目的を達成するため、本発明は、変速機(典型的にはフルトロイダル変速機)を提供し、該変速機は、変速機軸線の周りに回転するよう同軸に装着され、間にトロイダルキャビティが定められる作動面を各々有する入力レース及び出力レースと、作動面の間に配置され、それぞれの接触領域において作動面とトラクション流体を通じて駆動係合する複数の転動要素と、を備え、各転動要素が転動軸の周りで回転するようキャリッジ組立体上に装着され、各キャリッジが傾転軸の周りで自在に枢動することができ、該傾転軸が、転動軸に垂直に転動要素を通過してローラ中心にて転動軸と交差し、これにより傾転角の変化によってレースの回転速度比である変速機比の変化を引き起こし、各ローラキャリッジ組立体が枢動を引き起こすことができ、その結果転動要素のピッチ角の変化をもたらし、ピッチ角が、ローラ中心を通るピッチ軸線の周りにあり且つ接触領域を通過し、変速機が更に、ローラキャリッジそれぞれが枢動を行わせてピッチ角を変化させ、複数の転動要素に傾転軸の周りで枢動を行わせて、これにより変速機比の変化をもたらすようにするよう動作可能な制御部材を備える。
【0021】
ピッチ軸線が接触領域を通過する構成により、ピッチ軸線の周りの回転又は回転成分が、接触点におけるディスクに対する回転方向の変化を含み、接触半径の大きな変化を含まないことが確保される。従って、必然的に変速機比の大きな変化を引き起こさず、作動面にわたる接触領域の有意な並進移動を引き起こさず、これによりピッチ角の変化時に行う必要のある動作が最小限になる。このことは、低出力のアクチュエータを必要とする低い作動力を用いて変速機比の変更を行うことを可能にし、従って、低コストである。
【0022】
ピッチ角を変更する作用は、転動要素の転動面と入力又は出力作動面との間の接触面を考察することにより理解することができる。接触面の中心における作動面上の点は、変速機軸線に接線方向の速度で移動していなければならない。ピッチ角が0であり、転動要素の傾転角が0(変速機比が−1.0に相当)である場合、接触面の中心における転動面上の点はまた、変速機軸線に接線方向の速度で移動していることになる。しかしながら、ピッチ角の変更は、転動面上の点の速度ベクトルを回転させる作用があり、変速機軸線に向かう又は変速機軸線から離れる方向の成分が増大することになる。その結果、これは、転動面に作用する力を生じさせ、ピッチ角を低減する傾向にある方向で転動要素の傾転の変化を引き起こす。従って、転動要素は、新しい平行傾転角に漸近的に近づくよう傾転することになる。
【0023】
各キャリッジ組立体は、それぞれの転動要素の中心を通る軸線の周りで枢動するよう装着することができ、任意選択的に、作動点を中心とした円弧を描く湾曲運動をするように軸線から半径方向に離れた作動点にて作動することができる。各作動点は、好ましくは、変速機軸線に平行な方向で変速機の中心面からオフセットしており、この場合、オフセットは通常、各転動要素と関連の作動面との間のキャスター角を決定付ける。
【0024】
各キャリッジ組立体は、i)作動点の周りで制御部材との連結によって、及びii)転動要素の回転中心に作用する第2の反力点又は中心と転動要素からのトルクを担う作動点との間にある点における連結によって枢動に制約させることができる。
【0025】
各転動要素及びそれぞれのキャリッジ組立体が共に、入力面、出力面、作動点、及び反力点にある4つの接点を有し、転動要素がトロイダルキャビティ内でその接点の位置に拘束されるようになるが、転動要素は、転動要素の回転軸に垂直で且つ傾転軸にも垂直な軸線の周りで傾斜移動するよう装着され、変速機比を変化させるよう位置を自在に操舵することができる。制御部材は、並進移動による作動を提供するよう適合させることができる。
【0026】
制御部材は、変速機軸線と同軸で且つ入力面及び出力面の大きい方の周辺に接線方向のシリンダの表面の半径方向外向きの位置にてキャリッジ組立体を作動させることができる。
【0027】
それぞれのキャリッジ組立体は各々、同時に作動することができる。変速機は、各それぞれのキャリッジ組立体に対するアクチュエータを備えることができる。変速機は、キャリッジ組立体が装着される単一の制御部材を備えることができる。
【0028】
制御部材は通常、固定部と、該固定部に動作可能に連結された可動部とを備え、可動部が変速機軸線に垂直な面で移動可能である。制御部材の固定部は、それぞれのキャリッジに各々対応する複数の弓形スロットを備えることができ、キャリッジ組立体が、キャリッジが枢動に拘束されるようにそれぞれのスロットに沿ってキャリッジ組立体の滑動係合のための係合部を含む。本発明の実施形態において、各キャリッジ組立体は、制御部材に連結されたステムを含む。
【0029】
各キャリッジ組立体は、好ましくは、転動要素の転動軸が変速機軸線に垂直な面に傾斜するように装着され、これにより転動要素は、転動要素の中心と、転動要素の軸線から半径方向に配置された枢動点との間に定められる軸線の周りで自在に回転することができ、枢動点は、トロイダルキャビティの中心面から軸方向にオフセットしており、制御部材又は変速機が反力部材を備える場合には反力部材上の何れかに位置する。キャリッジ組立体は、長手方向似延びるキャリッジステムと、転動要素が回転可能に装着され且つステムの長手方向軸線の周りで回転可能なローラキャリアとを備えることができる。各転動要素は、転動要素の中心を通る枢動継手によりそれぞれのローラキャリア上に装着され、転動要素が歳差軸線の周りに自在に回転することができるようになる。
【0030】
制御部材は、変速機軸線の半径方向に移動することができ、任意選択的に、トロイダルキャビティ内で各転動要素によって生成される反力荷重を制御部材が平衡にするように非半径方向で移動可能とすることができる。制御部材は、変速機軸線を通る平面の同じ側で複数の転動要素に動作可能に連結することができる。
【0031】
典型的な実施形態において、トロイダルキャビティは、2つの転動要素を収容する。
【0032】
本発明の好ましい実施形態は、トロイダルキャビティ内で転動要素からの反力トルクを担うように複数の転動要素に動作可能に連結される反力部材を備える。このような実施形態において、反力トルクは通常、制御部材から分離された反力部材によって完全に又は部分的に担われる。反力部材は、各転動要素の中心に枢動可能に連結することができる。反力部材は、キャリッジ組立体が枢動に制約されるように転動要素に連結することができる。好ましい構成において、反力部材は、変速機軸線の半径方向に移動可能であり、任意選択的に、反力部材がトロイダルキャビティ内で各転動要素によって生成される反力荷重を平衡にするように非半径方向で移動可能である。変速機は更に、変速機軸線に対して半径方向での反力部材の移動を減衰させるダンパーを含むことができる。反力部材は、変速機軸線に対して半径方向での反力部材の移動を制限する機械的な端部ストップを含むことができる。反力部材は、ディスク・転動要素の接触から生じて変速機比を変化させる反力トルクに応答して変速機軸線の周りで回転するよう装着することができる。例えば、反力部材は、所定レベルを上回る反力トルクに応答して変速機軸線の周りで回転するよう装着することができる。これは、反力トルクに応答して反力部材を付勢することができる弾性手段を備えた変速機で達成することができる。
【0033】
ピッチ軸線の周りでの各キャリッジの移動は、好ましくは、単一の並進入力によって達成される。このような並進入力は、キャリッジ反力に実質的に垂直とすることができる。これにより、任意選択的に、作動部材によりキャリッジからの反力を効果的に担うことが可能となり、また任意選択的に、オフセットステムによりキャスター角を定めることが可能となる。並進入力は、変速機の全てのローラキャリッジに対してアクチュエータ、好ましくは単一のアクチュエータを用いて達成することができる。本発明を具現化する変速機は、20Wよりも小さい、好ましくは10Wよりも小さい、更により好ましくは5Wよりも小さい出力を有する、制御部材を作動させる動力手段を備えることができる。
【0034】
本発明の好ましい実施形態において、ピッチ軸線の周りのキャリッジの移動は、変速機の1又はそれ以上の構成要素によるピッチ軸線の周りの回転ではない移動によって引き起こされる。例えば、ピッチ軸線の周りのこのようなキャリッジの移動は、ピッチ軸線と一致しない構成要素の回転移動のみが付随して起こることができる。
【0035】
本発明の実施形態は、複数のトロイダルチャンバを有する変速機を提供するよう拡張することができる。例えば、本発明を具現化する変速機は、第2の入力面及び第2のトロイダルキャビティを定めるよう第2の入力面に面する第2の出力面と、第2の入力面及び第2の出力面の間に配置され、第2の入力面及び第2の出力面と駆動係合する第2の複数の転動要素と、を更に備え、各転動要素が、それぞれのキャリッジ組立体上で回転可能に装着され、転動要素の中心を通る軸線の周りで傾転して変速機比を変化させることができ、各転動要素が、枢動するよう装着されて、その結果、転動要素の回転軸に垂直で且つ比変化軸に垂直な転動要素の中心を通る軸線の周りで転動要素が傾斜するようになり、変速機は更に、転動要素それぞれを傾斜させ、その結果歳差と変速機比の変化とをもたらすように各キャリッジ組立体を作動させる制御部材と、任意選択的に第1のキャビティにおいて複数の転動要素に動作可能に連結された第1の反力部材と、第2のキャビティにおいて第2の複数の転動要素に動作可能に連結された第2の反力部材とを備え、第1の反力部材及び第2の反力部材が、転動要素それぞれから生じる反力荷重を担い、変速機は更に、反力部材からの反力トルクが平衡になるように第1及び第2のキャビティの反力部材に動作可能に連結された荷重分散組立体を備えることができる。
【0036】
本発明の変速機は、補機に駆動力を提供するのに特に有用である。あらゆる既知の補機は、本発明の変速機を備えた駆動装置により駆動することができるが、本変速機は、過給機用の駆動構成システムにおいて特に恩恵がある。好適には、駆動力は、本発明による変速機を備えた連続可変変速機を含む駆動システムを通じて内燃エンジンから過給機に伝達される。この過給装置は、乗用車及び普通路上車両に特に応用される。過給機駆動装置における変速機の使用は、コスト、複雑性、及び重量を最小に抑えることを可能にする。
【0037】
本発明は更に、内燃エンジン用の過給装置を提供し、該過給装置が、回転駆動入力を有する過給機と、内燃エンジンからの駆動力を受け取る回転駆動入力及び過給機の入力に接続された回転駆動出力を有する変速機と、を備え、変速機が、該変速機の入力と出力との間に動作可能に接続された本発明による変速機を含む。
【0038】
変速機は、好適には、入力からの動作比で駆動される出力と、変速機の動作比を設定するよう動作する制御手段とを有する。1つの実施形態において、変速機は、2つのローラを含む単一キャビティを有する。
【0039】
好適には、変速機は遊星歯車列を含む。好ましくは、遊星歯車列は、牽引駆動遊星歯車列である。好ましい実施形態において、遊星歯車列は、変速機とトラクション流体を共有する。
【0040】
過給機は、何らかの既知のタイプとすることができる。好ましくは、過給機は、遠心式過給機である。
【0041】
次に、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明の第1の実施形態である変速機の一部の斜視図である。
【
図2】
図1に示す変速機の一部の制御組立体の図である。
【
図5】反力部材を含む本発明の第2の実施形態の変速機の一部の斜視図である。
【
図6】反力部材を含む本発明の第2の実施形態の変速機の一部の部分切り欠き図である。
【
図7】キャビティ間の反力トルクを平衡するための荷重分散組立体を備えた2連キャビティを有する本発明の第3の実施形態の変速機の一部の斜視図である。
【
図8】キャビティ当たりに3つのローラとキャビティ間の反力トルクを平衡するための荷重分散組立体とを備えた2連キャビティを有する本発明の第4の実施形態の変速機の一部の斜視図である。
【
図11】反力部材及びトルク検知要素を含む本発明の第5の実施形態の変速機の一部の斜視図である。
【
図12】トルクが反作用している、
図11に示す変速機の一部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
実施形態に関する説明を読む際には、本明細書の導入部において記載した用語、説明、及び定義に適切に留意すべきである。
【0044】
図1〜4は、本発明を具現化した変速機(バリエータ)の一部の様々な図を示している。変速機は、ほぼ環状の形状をした入力レースを備える。入力レース10は、入力レース10の作動面を提供するために弓形断面の環状凹部12が形成されて内側表面を有する。変速機は更に、
図4に破線で示され、入力レース10と実質的に同様である出力レース14を備える。入力レース10及び出力レース14は、変速機軸線V上に同軸に配置され、これらの作動面が互いに対面し、従って、これらの作動面によって境界付けられるレース10、14間にトロイダルキャビティを形成する。レース10、14の各々は、変速機軸線Vの周りを回転するよう装着される。この場合は好適に輪郭が付けられた外側転動面を有する略円筒ローラ20、22の形態のである転動要素は、トロイダルキャビティ内で作動するように配置される。この実施形態において、2つのこのようなローラが存在するが、代替として、より多くの数を設けることができることは理解されるであろう。
【0045】
各ローラ20、22は、それぞれローラキャリッジ組立体24、26上に装着される。各ローラキャリッジ組立体24、26は、ステム28、30及びフォーク32、34を含む。各フォーク32、34は、それぞれのローラ20、22を担持し、該ローラ20、22が軸受上で回転して中心を通って延びる転動軸の周りで回転するようにすることができる。各ローラ組立体24、26内では、各フォーク32、34は、転動軸に垂直なそれぞれの傾転軸の周りにステム28、30上で回転することができる。
【0046】
各キャリッジ組立体24、26は、ステム28、30の傾転軸が
図4に示すように平面Pに対して傾斜しているように装着される。平面Pは、
図4に示すように、キャスター角として知られる角度「α」で変速機軸線に垂直である。各ローラ20、22は、ステム28、30の長手方向軸線であり、ローラ20、22の中心を通るそれぞれの傾転軸の周りで自在に枢動し、換言すると、キャスター角は、変速機の傾転軸と中心面との間の角度である。
【0047】
入力レース10は、ローラ20、22によって駆動され、また、レース間で駆動係合したローラ20、22を通じて出力レース14に駆動力を伝達する。
【0048】
変速機は、支持部44上に担持されるスライダー42を備えた制御組立体40を含む。スライダー42は、固定部分44に対して線形往復移動するように適合される。ペグ46は、支持部44からスライダー42内のスロット48を貫通して突出し、支持部上でのスライダー42の移動範囲を制限するストップ部として機能するようになる。制御組立体40は、並進移動により変速機の作動を制御するように適合される。スライダー42は、変速機軸線に垂直な平面内で支持部44に沿って矢印Cで示される方向に前後に移動することができる。この実施形態において、スライダー42は、変速機軸線Vに平行で且つ入力レース10及び出力レース14の大きい方の周辺に接線方向にある円筒平面の半径方向外向きの位置にて各ローラキャリッジ組立体24、26に接続される。代替の実施形態において、キャリッジ組立体24、26は各々、固有のアクチュエータによって作動することができる。支持部44は、変速機軸線Vに垂直な変速機の中心面に対しキャスター角αで各々が傾斜した反力面50、52を有する。
【0049】
制御組立体40は、作動継手56、58によりキャリッジ組立体24、26に動作可能に接続される。作動継手56、58は、ステム28、30がスライダー42に対して枢動可能にしながら、各ステム28、30の各部分をスライダー42と共に線形的に移動するよう拘束する。単一の制御組立体40は、キャリッジ組立体24、26の両方を一体となって制御する。キャリッジ組立体24、26はまた、それぞれの反力点にて制御組立体40に連結される。各反力点は、支持部44のそれぞれの反力面50、52に延びる弓形スロット60、62を含む。キャリッジ組立体24、26の各々のステム28、30は、それぞれの弓形スロット内に延びる突出する反力ピン64、66を担持し、該スロットには、スロット60、62において各反力ピン64、66の自由な滑動係合を可能にするほど十分な緊密滑り嵌めがある。ステムは、スロットとの円滑な係合及び転動係合を提供するようなローラを備えることができる。
【0050】
(代替の実施形態において、弓形スロットは、ステム28、30に垂直に配列することができ、該ステムは、スロットを貫通し、該スロットと協働してローラキャリッジを位置付ける係合部を形成する)。
【0051】
各ローラ20、22及びそのキャリッジ組立体24、26は、全体で変速機との4つの接触点を有し、すなわち、入力レースの作動面及び出力レースの作動面でのローラ20、22間の接点、作動継手58、58における制御組立体40との接点、及び反力ピン64、66及びそのそれぞれのスロット60、62を通る反力点を有する。各キャリッジ組立体24、26は、制御組立体40との2つの接点によって、及びローラと入力及び出力レースの作動面との間の接点によってトロイダルキャビティ内に位置付けられる。これらの接点は、キャリッジ組立体24、26が枢動移動して、ローラ20、22の中心を通り且つスライダー42の移動平面に垂直なそれぞれの操舵軸A−A’、B−B’の周りのピッチ角を変化させることができるように、キャリッジ組立体24、26が装着されることを意味している。操舵軸は、キャリッジ組立体の傾転軸に垂直である。キャリッジ組立体キャリッジ組立体24、26は、ローラ枢動軸から半径方向に離れて位置する作動継手56、58を通って作動され、キャリッジ組立体24、26が軸線A−A’、B−B’を中心とした円弧を描く湾曲運動をするようになる。ローラは、スロット33、34との係合部14、24の係合によって誘導される。ローラキャリッジ10、20は、反力点の周りのスロット60、62における反力ピン64、66の連結による枢動移動に制約される。この構成によって、ローラ20、22からの反力トルクを担うことができる。
【0052】
スライダー42が移動したときに生じるキャリッジ組立体の枢動は、傾転軸(すなわち、ローラの中心を通り変速機軸線Vと平行な軸)の周りの回転成分をローラ20、22に与える。枢動はまた、傾転軸に垂直な軸(比変化軸とも呼ばれる)の周りの回転成分を与える。この回転により、各ローラ20、22がその傾転を変更して速度比を変化させることが可能になり、入力面及び出力面からの接触力を瞬間的に生じることができる。歳差軸の周りを回転できるようにフォーク32、34においてローラ20、22を装着することにより、ローラ20、22が、平衡に達するための最小抵抗の経路を見つけ出して変速機比を変化させることができるようになる。このように、キャリッジ組立体の枢動と傾転軸の周りの自由度とを組み合わせることで、ローラは、傾転運動を受けて変速機速度比の変更を自由行うことができる。従って、ローラ20、22は、変速機軸線に平行な軸の周りの傾斜による作動力に応答して操舵(すなわち、傾転を変化させ)し、これらの位置を変更して変速機の速度比を変えることができる。ローラの傾転及び従って変速機比を変化させる働きをするあらゆる成分を最小限にする最適枢動移動を得るために、スロット60、62は、変速機軸線に垂直な平面上に形状が突出したときに変速機軸線上に中心をなす弓形であるように形成される。
【0053】
別の実施形態において、各キャリッジ組立体は、単独でステムを備え、ローラは、ジンバルによってステムの端部上に装着される。この構成において、各ローラ20、22は、傾転軸の周りを自由に傾転できるように、ローラ中心を通る枢動継手によりそれぞれのキャリッジ組立体上に装着される。ステムは、変速機の中心面Pに適切に位置し、ジンバル構成により、ローラ20、22が自在に傾転できるようなキャスター角及び自由度が提供される。
【0054】
図5及び6は、変速機の一部を示し、該変速機は、入力レース110と出力レース(図示せず)との間で駆動力を伝達するローラ120、122に動作可能に連結された反力部材160を含む。反力部材の目的は、ローラ120、122からの反力トルクを担うことである。ローラ120、122は、キャリッジ組立体162、164に装着される。各キャリッジ組立体は、キャリア166、168及び装着部品170、172を備える。各ローラ120、122は、それぞれのキャリア166、168上でその軸の周りに回転するよう担持される。各キャリア166、168は、それぞれの装着部品170、172に枢動可能に接続される。
【0055】
各装着部品170、172は、制御部材174に沿った線状移動が阻止されるように細長制御部材174上に担持される。制御部材174は、方向Cで直線往復動で移動することができ、これにより装着部品170、172も方向Cで移動するようになる。(この実施形態において、制御部材は、
図1〜4に示すスロット構成を備えた可動部品及び固定部品を含まない)。各キャリッジ組立体は、装着部品170、172と制御部材174との間の接続によって、及び反力部材160との接触によるローラ120、122の中心での反力点によりトロイダルキャビティ内に位置付けられる。この実施形態において、反力トルクは、制御部材174によってではなく反力部材160によって担われる。
【0056】
反力部材160は、アパーチャ182を有する本体180を備え、このアパーチャを通って変速機入力シャフト及び/又は出力シャフトがクリアランスを有して通ることができる。反力シャフト184、190は、本体180から反対の方向に同軸で突出し、変速機の中心面内で変速機軸線に垂直に整列される。各反力シャフト184、190の末端部分は、変速機のケーシング100及びケーシング100に固定された装着ブロック194内にそれぞれ形成されたアパーチャ内に保持され、シャフト184、190がアパーチャ内で回転できるようになる。反力部材160に連結が形成されると回転を生じさせ、シャフト184、190の回転を引き起こすことになる。しかしながら、アパーチャ内でシャフト184、190の末端部分を拘束することにより、反力トルクが抑制される。反力部材160は、球面継手186、188によって各ローラ120、122の中心に動作可能に連結され、反力トルクをローラ120、122から反力部材160に伝達し、また、ローラ120、122と反力部材160との間の相対的な枢動を可能にする。反力部材160は、ディスクの回転中のディスク/ローラ接触から生じてこれにより変速機比を変化させる反力トルクに応答して変速機軸線の周りに回転するよう装着される。
【0057】
制御部材174は、アパーチャ192にて反力部材160を通過するが、アパーチャには連結されない。反力トルクが担われて反力部材が変速機軸線の周りを回転するときの汚損を避けるために、制御部材174とアパーチャ192との間には適切に十分なクリアランスが存在する。
【0058】
反力部材160は、変速機軸線の半径方向に移動可能であり、また反力部材160がトロイダルキャビティ内で各ローラ120、122によって発生される反力荷重を平衡させるように非半径方向にも移動することができる。
【0059】
反力部材160は、例えば、変速機軸線に対して半径方向で本体180の移動を減衰させるダンパーを含むことができる。機械的な端部ストップを設け、変速機軸線に対して半径方向での反力部材160の移動を制限することができる。
図7は、本発明を具現化する2連キャビティ変速機の一部を示している。変速機は、入力レース210と、該入力レース210の対向する側部に変速機軸線の方向で配置された類似の第1及び第2の出力レース214(1つのみを図示)とを備える。各出力レース214は、入力レース210に面する作動面216を有する。入力レース210は、第1及び第2の出力レース214にそれぞれ面する第1及び第2の作動面212を有する。従って、2つのトロイダルキャビティが定められ、第1が入力レース210と第1の出力レース214の間、第2が入力レース210と第2の出力レースとの間にある。
【0060】
第1のセットのローラ220、222が第1のトロイダルキャビティ内に設けられ、入力レース210と第1の出力レースとの間で駆動力を伝達し、第2のセットのローラ220’、222’が第2のトロイダルキャビティ内に設けられ、入力レース210と第2の出力レース214との間で駆動力を伝達する。ローラ220、222;220’、222’が、それぞれのキャリッジ組立体224、226;224’、226’上に装着される。各キャリッジ組立体は、キャリア266及び装着部270を備える。ローラ220は、キャリア266上で回転するよう装着される。キャリアは、装着部270に接続され、傾転運動を受けてローラ220、222;220’、222’の傾転角を変化させ、これにより変速機比を自在に変えるようになる。それぞれのキャリッジ組立体224、226;224’、226’は、それぞれのローラの中心を通る軸線の周りで枢動するように装着される。
【0061】
それぞれの油圧アクチュエータ280、280’が各キャビティと関連付けられる。各アクチュエータ280、280’は、変速機のケーシング200に固定されるシリンダ282、282’と、シリンダ282、282’に油圧流体を好適に適用することによりシリンダの内外に線形駆動することができるアクチュエータロッド284、284’とを備える。
【0062】
各キャビティ内では、2つのキャリッジ組立体224、226;224’、226’の装着部270は、共通の制御ロッド274、274’に接続され、その結果、キャリッジ組立体が線形移動に抗して制御ロッドに固定されるが、制御ロッドに対して枢動できるようになる。各制御ロッド274、274’は、制御ロッドとアクチュエータロッドとの間の枢動を許容する継手288、288’を通じてそれぞれのアクチュエータロッド284、284’に接続される。すなわち、アクチュエータ284、284’の作動は、制御ロッド274、274’の線形移動、従って、キャリッジ組立体224、226;224’、226’の線形移動を引き起こす。
【0063】
各キャビティは、ローラ220、222;220’、222’が球面継手により動作可能に連結される反力部材260、260’を有し、上述の実施形態の構成と実質的に同様の反力部材が、それぞれのローラから生じる反力荷重を担うようになる。上述の実施形態と同様に、各反力部材260、260’は、反力シャフトを有し、そのうちの1つの末端部分が、変速機のケーシング200のアパーチャ内に保持される。他の反力シャフトは、制御ロッド274、274’が通過するアパーチャを有するヨーク286、286’によって固定される。
【0064】
反力部材260、260’は、荷重分散組立体によって動作可能に連結される。荷重分散組立体は、枢動点292によりケーシング286に装着されるバー290を備える。バー290は、枢動点292により対称的にヨーク286、286’に枢動可能に接続される。従って、反対向きの等しい力がヨークを通じて各反力部材に加えられ、これにより等しい反力トルクが2つのトロイダルキャビティ内のローラ220、222;220’、222’に確実に加わるようになる。
【0065】
図8〜10は、本発明の別の実施形態を示している。変速機は、入力レース310と、該入力レース310の対向する側部に変速機軸線の方向で配置された類似の第1及び第2の出力レース314(1つのみを図示)とを備える。レースによって定められる2つのトロイダルキャビティの各々内には、3つのローラ320、322、324;320’、322’(ローラの1つは図面には図示されていない)がある。
【0066】
変速機は、各キャビティ内に反力部材360、360’を備える。反力部材360、360’は、変速機のケーシング300上に枢動可能に装着されたバー390を含む荷重平衡組立体によって互いに連結され、各に反力部材360は、枢動点392の周りで対称的にバー390に枢動可能に接続される。
【0067】
各ローラ320、322、324;320’、322’は、それぞれのキャリッジ組立体326、328、330;326’、328’、330’によって回転するよう担持される。各キャリッジ組立体326、328、330;326’、328’、330’は、キャリア366及び装着部370を備える。ローラ320は、キャリア366上で回転するよう装着される。装着部370に接続され、傾転運動を受けてローラ320、322、324;320’、322’の傾転角を変化させ、これにより変速機比を自在に変えるようになる。制御ペグ372は、各装着部から突出する。
【0068】
環状制御部材340、340’が各キャビティ内に設けられる。各制御部材340、340’は、3つの半径方向スロット342を有し、その各々に制御ペグ372の1つが受けられる。変速機は更に、各キャビティと関連付けられる油圧アクチュエータを含む。各アクチュエータは、変速機のケーシング300に固定されるシリンダ382、382’と、シリンダ382に油圧流体を好適に適用することによりシリンダの内外に線形駆動することができるアクチュエータロッド384(1つだけが図で見える)とを備える。各アクチュエータロッド384は、枢動点344、344’によりそれぞれの制御部材340、340’に接続される。この構成に関して、油圧アクチュエータの作動により制御部材340、340’が回転し、これにより制御ペグ370の移動及びひいてはそれぞれの装着部370上でのキャリア366上の回転が生じる。
【0069】
図11及び12において、反力部材460は、所定レベルを上回る反力トルクに応答して変速機軸線の周りで回転するよう装着される。反力部材460は、アパーチャ482を有する本体480を備え、このアパーチャを通って変速機入力シャフト及び/又は出力シャフトがクリアランスを有して通ることができる。反力シャフト484、490は、本体480から反対の方向に同軸で突出し、変速機の中心面内で変速機軸線に垂直に整列される。第2の実施形態と同様に、反力シャフト490の1つは、ヨーク486を通じてアクチュエータ480に接続される。他の反力シャフト490は、弾性装着組立体430に連結される。
【0070】
この実施形態において、弾性装着組立体430は、反力シャフト490が接続される支持バー432と、変速機のケーシングに接続されるクレードル434とを含む。支持バー432は、反力シャフト490が反力トルクを加える圧縮バネ436によりクレードル内に保持される。反力トルクは、支持バー432上での連結をもたらし、その回転が反力シャフト490の伝達を変位させる。バネ436は、特定の閾値を超える力が加わったときに撓むように設定することができる。与えられた力を検出し、これを利用して制御部材70への入力信号を提供することができ、その結果、例えば、制御部材は、検出された反力トルクを低減するよう機能し、これにより変速機に入るトルクを低減する働きをするようになる。
【0071】
これらの実施形態の各々において、転動要素を傾斜させようとする変速機の作動は、転動要素の実質的又は完全に半径方向外向きで起こるであることが分かるであろう。従って、作動の実施に関与している構成要素は、転動要素間のスペースへの侵入が最小であるか、又は侵入がない。これらの実施形態の各々において、転動要素を傾斜させようとする変速機の作動は、変速機軸線に平行な方向でレースを越えて延びないスペース内で起こる。変速機が大型の変速システムの一部として使用される場合には、構成要素をパッケージングすることができる、変速機軸線の方向でのレースを越えて利用できるスペースはほとんど又は全く無いことが多い。加えて、各実施形態において、その周りに傾斜回転が起こる軸線は、シャフトなどの物理的構成要素と一致しておらず、傾転軸から遠隔にある構成要素(作動点及び反力点)によってキャリアの運動時に加わる制約により定められる。
【符号の説明】
【0072】
10 入力レース
12 環状凹部
20 ローラ
22 ローラ
26 ローラキャリッジ組立体
30 ステム
32 フォーク
40 制御組立体
42 スライダー
44 固定部分
48 アパーチャ
50 反力面
58 作動継手
60 スロット