特許第6240615号(P6240615)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240615
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】流体を処理するカートリッジ
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/08 20060101AFI20171120BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   G01N35/08 A
   G01N37/00 101
【請求項の数】13
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-552738(P2014-552738)
(86)(22)【出願日】2013年1月18日
(65)【公表番号】特表2015-504171(P2015-504171A)
(43)【公表日】2015年2月5日
(86)【国際出願番号】IB2013050491
(87)【国際公開番号】WO2013111042
(87)【国際公開日】20130801
【審査請求日】2016年1月15日
(31)【優先権主張番号】61/589,917
(32)【優先日】2012年1月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100141128
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 晃一
(72)【発明者】
【氏名】ネイゼン,ヤコビュス ヘルマニュス マリア
(72)【発明者】
【氏名】エフェルス,トーン ヘンドリック
【審査官】 長谷 潮
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/134191(WO,A1)
【文献】 特表2009−517682(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0120865(US,A1)
【文献】 国際公開第2005/106463(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を処理するカートリッジであって、
a)前記流体が供給される入口、および前記流体が測定される一つの第1検出チャンバを有するプレ処理流体システムと、
b)流体が測定される一つの第2検出チャンバを有するポスト処理流体システムと、
c)前記流体の少なくとも一部に対して透過性であって、前記第1検出チャンバを前記第2検出チャンバに結合する流体処理素子と、
を有し、
前記流体処理素子は、フィルタ材料と箔とを有するフィルタユニットを有し、
前記フィルタ材料は、前記箔のアパーチャに一体化され、
前記フィルタ材料は、少なくとも前記箔の前記第1検出チャンバの側にドーム形状を有し、
該ドーム形状により、前記第1検出チャンバにおける前記流体の測定、および前記第2検出チャンバにおける前記ポスト処理流体の測定、それぞれの測定期間の少なくとも一部に関して同時に生じるカートリッジ。
【請求項2】
請求項1に記載のカートリッジ内で流体を処理する方法であって、
a)前記カートリッジの前記入口に、前記プレ処理流体システムおよび前記ポスト処理流体システムの両方を満たす量の前記流体を導入するステップと、
b)前記カートリッジの前記第1検出チャンバ内で前記流体を測定するステップと、
c)前記カートリッジの前記第2検出チャンバ内で前記流体を測定するステップと、
を有する方法。
【請求項3】
前記プレ処理流体システムおよび前記ポスト処理流体システムの全体積は、500μLよりも小さい、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項4】
前記第1検出チャンバ内で前記流体を測定するステップは、電気化学的測定、電気インピーダンスもしくは熱伝導の測定、および/または光学的もしくは分光学的測定を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記第2検出チャンバは、透明側面を有し、前記処理チャンバ内での前記流体の光学的検査が可能である、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項6】
前記流体は、血液を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
記フィルタユニットに取り付けられた堅いキャリアを有する、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項8】
前記フィルタ材料は、中間箔の前記アパーチャ内に配置され、
該中間箔は、上部箔と底部箔の間に埋設される、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項9】
前記フィルタユニットの少なくとも一つの箔は、少なくとも一つのキャビティを有する、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項10】
前記フィルタ材料をある方向に押し付ける保持素子を有し、
該保護素子は、追加箔である、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項11】
前記キャリアは、流体を収容する少なくとも一つのキャビティを有し、
該キャビティは、前記フィルタ材料に接続される、請求項7に記載のカートリッジ。
【請求項12】
前記キャリアの少なくとも一つのキャビティは、前記対応するフィルタユニットの箔で被覆される、請求項11に記載のカートリッジ。
【請求項13】
前記流体処理素子と隣接して配置された処理チャンバを有し、ここで流体が処理される、請求項1に記載のカートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、流体を処理するカートリッジおよび方法に関し、特に、血液のような生物学的サンプルをフィルタ処理するカートリッジおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許公開公報第2011/0005341A1号には、両面テープからなる接着キャピラリ構造に取り付けられたフィルタ材料を有するフィルタ機器が示されている。フィルタ材料上に設置されたサンプルは、前記材料を通過し、さらなる調査のためキャピラリ構造に導入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許公開公報第2011/0005341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、少体積の流体、例えば血液サンプルの、より効率的な処理が可能となる手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的は、請求項1に記載のカートリッジおよび請求項2に記載の方法により達成される。好適実施例は、従属請求項に示されている。
【0006】
本発明の第1の態様によるカートリッジは、例えば、血液、唾液、または尿のような生物学的流体の検査のための、流体の処理に有益である。このカートリッジは、
a)被処理流体が供給される入口、および前記供給流体が処理される少なくとも一つの「第1」処理チャンバを有する第1の流体システムを有する。参照のため、この第1の流体システムは、以降、「プレ(前)処理流体システム」と称される:
b)流体を処理する少なくとも一つの「第2」処理チャンバを有し、以降「ポスト処理流体システム」と称される、第2の流体システム:
c)被処理流体の一部に対して透過性であり、前述のプレ処理流体システムをポスト処理流体システムに接続する流体処理素子。これは、プレ処理流体システムに供給された流体が、流体処理素子を介して、ポスト処理流体システムに導入されることを意味する:
を有する。その名称が示すように、流体が素子を通過する際に、この流体処理素子と流体の間で、相互作用が生じる。その結果、流体のある「処理」が行われることになる。従って、流体処理素子に導入される流体は、以下、「生(なま)流体」とも称され、そこに残る流体を「処理(後)流体」と称される。
【0007】
第2の態様では、本発明は、前述の種類のカートリッジ内で流体を処理する方法に関し、当該方法は、
a)カートリッジの入口に、プレ処理流体システムおよびポスト処理流体システムの両方を満たす量の被処理流体を導入するステップ。その結果、プレ処理流体システムは、生流体で充填され、ポスト処理流体システムは、処理流体で充填される:
b)カートリッジの第1処理チャンバ内で(生)流体を処理するステップ:
c)カートリッジの第2処理チャンバ内で(処理)流体を処理するステップ:
を有する。
【0008】
通常、導入された流体の異なる割合が、それぞれ、第1および第2の処理チャンバで処理されることに留意する必要がある。これは、流体の所与の部分(例えば分子)が第1処理チャンバと第2処理チャンバのいずれかにおいて処理され、両方のチャンバでは(連続して)処理されないことを意味する。また、第1および第2の処理チャンバでの処理は、通常、(少なくともこれらの期間の一部に対して)同時に生じ、異なる手順を有する。
【0009】
当該カートリッジおよび方法は、生段階および処理段階において、所与の流体量の並列的な処理が可能となる点で有意である。これは、流体処理素子によって分離された第1および第2の処理チャンバを提供することにより実現される。従って、入口に導入された流体は、生の部分と処理の部分とに分割され、その後これらが処理される。
【0010】
当該カートリッジおよび方法は、同じ発明の概念の異なる実現化であり、すなわち流体処理素子によって分離された第1および第2の処理チャンバが提供される。従って、これらの一つの実現のために提供される説明および規定は、他の実現にも有効である。以下、本発明の各種好適実施例について説明する。これらは、前述のカートリッジと方法の両方に適用される。
【0011】
カートリッジおよび方法は、少量の流体、例えば、限られた量でしか利用できない生物学的サンプルの処理のために適用されることが好ましい。従って、プレ処理流体システムとポスト処理流体システムを合わせた全体積量(当該方法のステップa)における流体の導入量)は、約500μLよりも少ないことが好ましく、約50μLよりも少ないことがより好ましい。そのような少量の全体積は、例えば、指を刺して得た血液滴によって、完全に充填される。
【0012】
第1処理チャンバ内の生流体の処理は、例えば、電気化学的測定、電気インピーダンスもしくは熱伝導測定、および/または光学もしくは分光測定(例えば拡散反射率、吸光)を有しても良い。
【0013】
第2処理チャンバは、任意で、透明側面を有しても良い。これにより、前記処理チャンバ内での処理流体の光学検査が可能になる。従って、この光学検査は、当該方法の処理ステップc)の一例を構成する。特に、これは、透明側面に直接隣接する薄い流体層に制限される。これは、例えば、流体にエバネッセント光学場を形成することにより、および例えば散乱光、蛍光、またはフラストレート全内部反射(FTIR)を観測することにより、実現される。従って、透明側面は、例えば、外部光線の照射が可能となるように設計され、散乱光および/またはその結果生じる全内部反射光の観測が可能となるように設計されることが好ましい。FTIR測定のより詳しい説明は、例えば、国際公開第WO2008/072156A2に認められ、これは本願の参照として取り入れられる。
【0014】
通常、流体処理素子は、該素子を介して流体が流通した際に、流体を操作または処理する、いかなる装置であっても良い。典型的な例では、流体処理素子は、流体のターゲット成分を保持するように設計されたフィルタ素子であっても良く、これを有しても良い。
【0015】
被処理流体は、血液であることが好ましい。医療用手続では、血液サンプルの必要量は、患者に生じる不都合を最小限に抑制するため、できる限り少量である必要がある。また、これと同時に、通常、そのようなサンプルに対して、多くの異なる検出手順が実施される。これらの手順のいくつかには、(血液全体から血漿を分離するための細胞のフィルタ処理のような)処理が要求され、他のものには要求されない。本発明のカートリッジおよび方法により、両方の要求が適切に合致する。
【0016】
以下、流体処理素子のコスト効果のある製造アプローチに基づいて、後者がフィルタとして設計された際の、本発明の好適実施例について説明する。
【0017】
従って、本発明は、例えば、血液、唾液、尿のような生物学的起源の液体のような流体をフィルタ処理するフィルタユニットを有する。通常、「フィルタ処理」の方法は、特定の物理的および/または化学的特性(例えばサイズ)により、フィルタユニットによって、流体のあるターゲット成分を保持するステップを有する。フィルタユニットは、以下の部材を有する:
a)被フィルタ処理流体に対して不透過性であり、少なくとも一つのアパーチャまたは開口を有する、少なくとも一つの箔。
【0018】
本願において、「箔」と言う用語は、通常、ある(固体)材料のシートまたは層を表すことに留意する必要がある。前記材料は、前記層内で均一に分布されることが好ましい。また、層は、通常、均一な厚さを有し、厚さ方向または厚さに直交する方向におけるその寸法(すなわち幅および全長)よりも厚さが著しく小さいという意味で、平坦である。通常、厚さは、10μmから1000μmの範囲であり、箔の全長および幅は、数mmから数cmの範囲にある。また、箔は、通常、自己支持構造であり、ある程度可撓性を有する。例えば、これは、所望の3次元構造に曲げたり、コイル状に巻いたりすることができる。
【0019】
b)流体の少なくとも一部に対して透過性のフィルタ材料であって、箔の前述のアパーチャに一体化されたフィルタ材料。
【0020】
箔のアパーチャへのフィルタ材料の一体化とは、フィルタ材料が(少なくとも部分的に)、アパーチャを提供するために除去された箔材料と置換され、箔と同じ層内に配置されることを意味する。フィルタ材料の箔への取り付けは、例えば、アパーチャの境界にこれをのり付けするなど、異なる方法で行われ得る。通常、アパーチャは、フィルタ材料で完全に充填され、これは、アパーチャを介して流れるいかなる流体も、フィルタ材料を介して流れることを意味する。流体がフィルタ材料を透過すると、フィルタ材料と流体との間で、親和相互作用が生じ、これにより、流体からのターゲット成分の意図的な保持が行われる。例えば生物学的細胞のようなターゲット成分は、細胞の直径よりも小さなポアサイズを有する多孔質フィルタ材料によって再誘導(retrain)される。
【0021】
箔のアパーチャへのフィルタ材料の一体化により、箔と実質的に同じ方法で処理され得るフィルタユニットが得られる。そのようなフィルタユニットは、例えば、ロールツーロール技術のようなコスト効果のある製造方法により、製造されおよび/または他の部材に取り付けられる。
【0022】
また、本発明は、流体を処理するカートリッジを有し、前記カートリッジは、実質的に堅いキャリアと、前述の種類のフィルタユニットとを有する。キャリアとフィルタユニットは、相互に取り付けられる(結合される)。
【0023】
堅いキャリアは、カートリッジに機械的な安定性を提供する。また、これは、検出プロセスの試験チャンバのような、追加の機能または部材を提供する。
【0024】
また、本発明は、フィルタ材料を有するフィルタユニット、特に前述の種類のフィルタユニットを製造する方法を有する。当該方法は、以下のステップを有する。これは、記載順に実施され、あるいは逆順に実施され、あるいは同時に実施される:
−2つの箔を相互に結合して、両者の間にフィルタ材料が埋設されるようにするステップ、
−フィルタ材料の位置に、各箔の少なくとも一つのアパーチャを提供するステップ。
【0025】
前述のステップが最初に実施される場合、すなわち2つの箔の曲げの前に、結合ステップ中にフィルタ材料が配置される位置に、アパーチャが提供される。
【0026】
2つの箔の間にフィルタ材料を埋設することにより、サンドイッチ構造が得られ、前記フィルタ材料は、箔内のアパーチャを介してアクセス可能な状態で、しっかり一体化される。また、そのような処理方法は、ロールツーロール製造技術のような効果的な製造プロセスと互換性がある。
【0027】
フィルタユニット、そのようなフィルタユニットを有するカートリッジおよび方法は、同じ本発明の概念の異なる実現化である。すなわち、フィルタ材料は、少なくとも一つの箔に一体化される。従って、これらの一つの実現のための説明および規定は、他の実現にも有効である。以下、本発明の各好適実施例について説明する。これは、このフィルタユニット、カートリッジ、および方法に関する。
【0028】
フィルタユニットの箔または少なくとも一つの箔は、ポリエチレン(PE)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、シクロポリオレフィン(COP、COC)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリイミド(PI)、ポリスチレンと配向性ポリスチレン(PS、OPS)、ポリビニリデンクロライド(PVDC)、ポリアミド、ナイロン(例えばキャスト、配向、または共存、PA、6、11、12、アモルファス、ポリアリールアミドMXD6)、ポリビニルブチラール(PVB)、液晶ポリマ(LCP)、およびフルオロポリマ(特にPCTFE)からなる群から選定された材料を有することが好ましい。
【0029】
フィルタ材料の種類は、用途を考慮して、すなわち被処理流体、および保持されるターゲット成分に応じて選定される。通常、フィルタ材料は、多孔質であり、平均ポアサイズは、約0.1μmと約1000μmの間の範囲である。適切なフィルタ材料は、例えば、非対称ポリスルホン膜(例えば、米国NY、ポートワシントン、Pall Corporation、Vivid(登録商標)血漿分離膜;英国、Maidstone、Whatman plc.VFの血液分離フィルタ)を有する。
【0030】
製造方法に関して示したように、フィルタ材料を箔のアパーチャに一体化する好適方法は、2つの箔の間に、前記フィルタ材料を配置することである。この箔は、以降、参照用に「上部箔」および「底部箔」と称される。この場合、フィルタ材料のサイズ(面積)は、一つの箔の一つのアパーチャよりも大きくなるように選定されることが好ましく、両方の箔の両方のアパーチャよりも大きくなるように選定されることがより好ましい。次に、フィルタ材料の境界は、上部箔と底部箔の間に、しっかりと保持される(挟まれる)。
【0031】
前述の実施例の別の展開では、フィルタ材料は、以降「中間箔」と称される、第3の箔のアパーチャに配置される。この中間箔は、上部箔と底部箔の間に取り込まれる。中間箔の厚さは、フィルタ材料の厚さと同程度、またはより薄いことが好ましい。また、中間箔のアパーチャは、オーバーラップなしで、フィルタ材料を完全に収容できるように、十分に大きいことが好ましい。これに対して、前述のように、上部箔および底部箔のアパーチャは、フィルタ材料の面積よりも小さいことが好ましい。中間箔の提供により、特に、好ましくないデッド体積を形成させずに、フィルタ材料を箔のスタックにより良く一体化することができるという利点が得られる。
【0032】
フィルタユニットが2または3以上の箔のスタックを有する場合、これらの全ての箔は、形状および材料が等しくても良い。代替実施例では、スタックの少なくとも2つの箔が異なる形状を有し、および/または異なる材料で構成される。例えば、2つの箔の厚さ、全面積、またはアパーチャサイズもしくは形状は、異なっていても良い。
【0033】
フィルタユニットにより構成された1または2以上の箔は、形状的に、均一な厚さの層であっても良い。しかしながら、好適実施例では、フィルタユニットの少なくとも一つの箔は、1または2以上キャビティを有し、すなわち均一層の形状に比べて、箔材料が存在しない空間を有する。箔内のキャビティは、例えば、高温エンボス処理により、容易に形成される。キャビティは、例えば、箔のアパーチャの境界の周囲に形成され、フィルタ材料が収容される空間が形成されも良い。また、箔のキャビティは、チャネルまたはチャンバ等を形成し、これを介して、流体が処理のため流通されても良い。
【0034】
関連する実施例では、フィルタユニットの箔は、任意で、突起を有しても良い。この突起は、均一層の形状に追加の材料の領域を定める。単純な均一層形状からずれた3次元構造を有する箔は、(厚い層における)キャビティを有する箔または(薄い層からの)突起を有する箔と見なされるので、この実施例は、前述のものとほぼ等価である。通常、構造化箔は、キャビティと突起の両方を有する。
【0035】
フィルタユニットのフィルタ材料は、少なくとも一つの側に、ドーム形状を有することが好ましい。すなわち、これは、それぞれ、フィルタユニットまたはその箔の面から、一つの方向に膨らむ。そのようなドーム形状は、しばしば、流体の処理の際に有意となる。例えば、フィルタ上に配置されたサンプルの液滴は、フィルタ材料が液滴に向かって膨らんでいる場合、より容易に吸収される。同様に、フィルタ材料のドーム形状は、フィルタ材料と、フィルタユニットまたはカートリッジの隣の部材との接触をより確実にするため使用されても良い。これにより、デッド体積が最小限に抑制され、フィルタ材料を通る流体は、キャピラリ力により、より確実に前進するようになる。フィルタ材料は、一方向において、または2方向(反対方向)において、ドーム形状を有しても良いことに留意する必要がある。後者の場合、箔のアパーチャ内のフィルタ材料の断面は、通常、凸状である。
【0036】
別の実施例では、所与の方向におけるフィルタ材料の加圧またはバイアス化のため、保持素子が提供される。この処理の結果、(一方向に)前述のドーム形状が生じる。通常、保持素子による加圧の使用により、フィルタ材料のある形状が保証され、および/またはフィルタ材料と、フィルタユニットまたはカートリッジの隣の部材との接触が保証される。
【0037】
前述の保持素子は、例えば、フィルタユニットの追加層、特に追加箔により実現され、これは、フィルタ材料を一方向に加圧する。この保持素子の実現は、例えば、フィルタユニット自身が製造されるロールツーロールプロセスと同様のロールツーロールプロセスにより、容易に達成される。
【0038】
多くの適用例において、フィルタ材料の片側は、フィルタユニットの意図する使用の間、アクセス可能のままである。アクセスは、例えば、フィルタ材料上にサンプル流体を設置する際に必要となる。好適実施例では、使用時にアクセスされるフィルタ材料の側は、所与の流体量を保持するように設計され、この量は、流体がフィルタ材料を完全に被覆し、これが(分子)吸着力のみで保持される場合、所与の最小値と所与の最大値の間の範囲である。この目的に対する設計パラメータは、フィルタ材料の直接アクセス可能な領域を定める外側箔のアパーチャのサイズおよび形状である。別の重要な設計パラメータは、それぞれのフィルタ側の表面化学特性であり、特に関連する箔および/またはフィルタ材料の化学的特性である。箔の表面は、例えば、疎水性であり、この場合、血液のような水性流体は反発する。示された設計を用いることで、アクセス可能なフィルタ側での未知の量の血液の適用後に、フィルタ材料により所望の量の血液を採取することができる。流体の最小量よりも少ない量が適用された場合、フィルタ材料の少なくとも一部は、流体で被覆されず、これは、目視検査によって容易に検出される。
【0039】
フィルタユニットの1または2以上の箔は、単一のアパーチャを有し、ここにフィルタ材料が配置される。より高度な設計では、フィルタユニットのフィルタ材料は、少なくとも2つのアパーチャを有する一つの箔により被覆され、フィルタ材料の同じ素子へのアクセスが提供される。いくつかのアパーチャを有するこの箔は、特に、使用中もアクセス可能な状態のフィルタ材料の側に配置される。フィルタ材料の上部において、単一の大きなアパーチャの代わりに、複数の小さなアパーチャを使用することにより、フィルタ材料と大きな対象物、例えばユーザの指(例えば指を刺して得た血液の直接採取中)または機器の間の好ましくない接触を回避することが助長される。直接接触は、アパーチャが十分に小さい場合、例えば約5mm未満の直径を有する場合、回避される。
【0040】
フィルタユニットは、任意で、特に電気的リード、電極、および/またはRFIDタグのような、電気部材を有しても良い。これらの部材は、箔と同じ製造方法で、例えばロールツーロール技術を用いて、形成されることが好ましい。例えば、フィルタユニットによって構成された箔の上に、導電構造がプリント印刷されても良い。
【0041】
カートリッジのキャリアは、任意で、フィルタユニットのフィルタ材料を支持する何らかの構造を有しても良い。この支持により、フィルタ材料に機械的安定性が提供され、フィルタ材料とキャリアの間の接触が提供される。
【0042】
通常、キャリアは、意図した目的のため、いかなる材料または構造を有しても良い。特定の実施例では、キャリアは、少なくとも局部的に透明であり、これにより、適用流体の光学的検査または処理が可能になる。
【0043】
カートリッジのキャリアは、任意で、流体の収容のための少なくとも一つのキャビティを有しても良い。前記キャビティは、フィルタ材料と接続されることが好ましい。後者の場合、流体は、キャビティを介してフィルタ材料の方に輸送され、またはフィルタ材料を通過した流体は、キャビティによって、さらなる処理ステップ用に採取される。キャリアのキャビティは、例えば、流体輸送用の、1または2以上の(細長い)チャネルを有し、あるいは処理ステップの間、流体を収容する1または2以上のチャンバを有する。
【0044】
前述の実施例の別の展開では、キャリアの少なくとも一つのキャビティは、キャリアに取り付けられたフィルタユニットの箔で覆われる。従って、キャビティは、最初、後にフィルタユニットの箔で覆われる側が開放されているため、キャリア内のキャビティの精巧な構造(例えばチャネルおよび/またはチャンバ)は、例えば、射出成形法により、容易に製造される。
【0045】
本発明の別の好適実施例では、第1の(マイクロ)流体システムが、フィルタ材料の第1の側に配置され、第2の(マイクロ)流体システムが、フィルタ材料の反対側に配置される。参照のため、以降、第1の流体システムを「プレ処理流体システム」と称し、第2の流体システムを「ポスト処理流体システム」と称する。この名称は、プレ処理流体システムが通常、生(未処理)流体を輸送するのに対して、ポスト処理流体システムには、フィルタ(処理)された流体のみが到達することを表す。フィルタ材料の対向する両側へのプレ処理およびポスト処理の流体システムの提供は、それぞれ、同じ流体サンプルを、フィルタ処理ステップなしで、並列的に処理できる点で有意である。従って、例えば、血液全体の検査(プレ処理流体システムにおいて)、ならびに単一の血液サンプルからの血液血漿(ポスト処理流体システムにおいて)の検査が可能になる。
【0046】
意図した用途および処理に応じて、前述の流体システムは、個々に設計される。好適実施例では、プレ処理流体システムは、例えば血液滴などの流体の入口を有しても良い。この流体は、次に、プレ処理流体システムに広がり、ある調査または処理ステップが行われるとともに、フィルタ材料を介して、ポスト処理流体システムに流れ、他の処理ステップが実施される。
【0047】
プレ処理流体システムは、例えば、フィルタ材料を通過しなかった流体を処理する処理チャンバを有しても良い。
【0048】
同様に、ポスト処理流体システムは、フィルタ材料を通過した流体を処理する処理チャンバを有しても良い。
【0049】
本発明の別の実施例では、フィルタユニットおよび/またはキャリアは、フィルタ材料に隣接して配置された処理チャンバを有し、ここで、流体が処理され、例えば、あるターゲット物質の存在が調査される。前記処理流体は、フィルタ材料を通過した流体であることが最も好ましい。フィルタ材料と直接隣接する処理チャンバの配置は、流体の必要量、および処理時間を最小限に抑制する。(フィルタ材料から処理チャンバへの)流体の移動中の材料および時間のロスが回避されるからである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】本発明による第1のフィルタユニットを通る概略的な断面を示した図である。
図2図1のフィルタユニットの分解斜視図である。
図3図1のフィルタユニットの上面図(上図)、および前記フィルタユニットを構成する箔の上面図(下の3つの図)である。
図4】フィルタユニットがキャリアに取り付けられる前の、図1のフィルタユニットを有するカートリッジを通る断面を示した図である。
図5】異なる厚さの箔を有する第2のフィルタユニットを有するカートリッジを通る断面を示した図である。
図6】フィルタ材料を保持するための追加上部箔を有する、第3のフィルタユニットを有するカートリッジを通る断面を示した図である。
図7図6のカートリッジの追加上部箔の4つの実施例の底面側を示した図である。前記実施例は、それぞれ、放射状スロットを有するアパーチャ、3つの接続された小円開口を構成するアパーチャ、および3つの非接続小円開口で構成されたアパーチャを有する。
図8】いくつかの開口を有する追加上部箔を有し、関連するキャリアを覆う、より大きな底部箔を有する第4のフィルタユニットを有するカートリッジを通る断面を示した図である。
図9】フィルタユニットをキャリアに取り付ける前の、第5のフィルタユニットを有するカートリッジを通る断面を示した図である。フィルタユニットの底部箔は、キャリアのオープンキャビティを被覆する。
図10】ポスト処理流体システムを有する第6のフィルタユニットを有するカートリッジを通る断面を示した図である。
図11】第7のフィルタユニットおよび関連するキャリアを有するカートリッジの上面図である。フィルタユニットは、プレ処理およびポスト処理流体システムを有する。
図12図11のカートリッジを通る断面を示した図である。
図13】プレ処理流体システムを有する第8のフィルタユニットを有するカートリッジの上面図である。処理チャンバは、フィルタ材料に隣接して配置される。
図14図13のカートリッジを通る断面を示した図である。
図15図11および図12と同様のカートリッジの上面を示した図である。ただし、プレ処理流体システムは、3つの平行分岐ラインに分岐される。
図16図13および図14と同様のカートリッジの上面図である。ただし、プレ処理流体システムは、3つの平行分岐ラインに分岐される。
図17】目視制御下において、サンプル流体の適用が可能となる、第11のフィルタユニットを有するカートリッジを通る断面を示した図である。流体の最大量が適用される場合を示す。
図18】流体の最小量が適用される際の図17のカートリッジを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明のこれらのおよび他の態様は、以降に示す実施例を参照することにより、明らかとなる。
【0052】
図において、同様の参照符号または100を掛けた異なる整数は、同一のまたは同様の部材を表している。
【0053】
唾液、尿、および特に血液のような、体内流体中の特定のターゲット分子を検出するバイオセンサが知られている。例えば、米国特許公開公報第US2010/0310423A1号に示されているようなバイオセンサプラットフォーム(フィリップス社の「マグノテック」プラットフォームとも称される)は、マルチチャンバ使い捨てカートリッジを使用する。別個の検出チャンバが、磁気粒子に基づく免疫学的検定および光学的検出方法(例えばフラストレート全内部反射(FTIR)または単一ビード検出)を用いた、異なるターゲットタンパク質の選択的検出に使用される。
【0054】
前述のバイオセンサのコストを低減するため、よりコスト効果のある使い捨てカートリッジの設計が望まれている。新たな設計では、ロールツーロール製造技術(例えば高温エンボス化箔、積層等)に基づいた製造が可能であることが好ましい。従って、単純なサブユニットにおける多くの機能(キャピラリ流体輸送、RF-ID、フィルタマウント、電気化学等)の容易な組み合わせが得られ、これは、未だ射出成形カートリッジ部品と組み合わされる(必要な場合、例えば、感光検出および/またはエバネッセント場励起)。別の目的は、限られた体積の(指を指して得た)血液サンプルから始まる血液中および血漿中のターゲット分子の検出を可能にすることである。さらに、少量のサンプル体積の最適な搾取が好ましい。ある態様では、提案されたアプローチは、可能な限り、ロールツーロールプロセスへの切り換えを提案する。このアプローチの利点は、ある機能が既にロールツーロールプロセスにおいて行われていることである(例えばRFタグ)。これは、スムーズな一体化を可能にする。
【0055】
従って、本発明の重要な態様は、箔に取り付けられるフィルタに、低コストのロールツーロール(R2R)製造技術が適用できることである。このサブユニットは、他の箔系の機能(例えばスクリーン印刷電極、RF-IDタグ、キャピラリチャネル、高温エンボス化構造)で補完することができる。箔系のサブユニットは、射出成形部品と組み合わされ(必要な場合)、使い捨てカートリッジが形成される。射出成形部品は、R2R技術では実現できない重要な機能を有する。
【0056】
以下、例えば、相互にマグノテックプラットフォーム用のカートリッジを構成する、ロールツーロールサブユニット(「フィルタユニット」)と、射出成形部品(「キャリア」)との組み合わせの多くの例について説明する。全ての例には、積層(ラミネート)技術を使用して取り付けられた、血液分離フィルタが含まれる。ある適用例では、射出成形部品は、さらに、箔系部品に置換され、完全に箔系のカートリッジが得られる。
【0057】
図1には、本発明の第1の実施例によるフィルタユニット100を示す(スケールなし)。図に示した調整装置は、図4、5、8、9、10、12,14、17および18と同様に適用される(すなわち、全ての図において、他の調整装置は、示されていない)。図2および3は、それぞれ、フィルタユニット100の分解図および上面図を示す。
【0058】
フィルタユニット100は、フィルタ材料101を有し、これは多孔質で、血液サンプルのような流体に対して、(部分的に)透過性である。図2に示すように、フィルタ材料101は、ほぼ円形のディスクとして提供される。このフィルタ材料101のディスクは、「中間箔」104の対応するアパーチャA’に適合する。
【0059】
また、フィルタユニット100は、上部箔102と底部箔103とを有する。ここで「上部」および「底部」と言う用語は、図中のこれらの箔の位置を意味する。上部箔および底部箔102、103は、孔またはアパーチャAを有し、これらは、フィルタ材料101のディスクよりも小さい。また、これらは、前述の中間箔104の対向する両側に積層される。従って、上部箔102および底部箔103は、中間箔104およびフィルタ材料101を取り囲む。図1から明らかなように、フィルタ材料101は、中間箔104よりも厚い。従って、フィルタ材料101は、圧縮され、上部箔および底部箔のアパーチャA内で(z方向の正または負の方向に)膨脹する。
【0060】
図1乃至3のようなフィルタユニットを用いて、実験的な血液分離試験を実施した。これは、箔の間に積層された、試験フィルタ材料(Pall Vivid血漿分離膜、グレードGX:直径10mm)を有する。使用サンプル体積(約40μL)は、端部でリークが生じるように、意図的に多めに選定される。ただし、リークは観察されなかった(すなわち上部箔と底部箔の間に覆われたフィルタ材料の外側の境界は、実質的に乾いたままである)。フィルタ材料の外側では、明確な血漿が観察された。
【0061】
図1乃至3のフィルタユニット100は、3つの箔で構成されるが、2つの箔または層の間に、フィルタ材料を積層しても良いことは明らかである。この場合、1または両方の箔が、フィルタ材料用のアパーチャの周囲に、エンボス化構造を有することが好ましい。
【0062】
図4には、図1乃至3のフィルタユニット100およびキャリア150で構成されたカートリッジ190を示す。これらの2つの部材は、積層技術を用いてこれらが相互に取り付けられる直前で示されている。
【0063】
キャリア150は、本体151で構成され、これは、例えば、射出成形法により、透明プラスチックで構成され、フィルタ支持153、1または2以上の処理/検出チャンバ155、およびフィルタ支持を前記チャンバに接続するチャネル154を有する。また、キャリア150は、ラミネート152を有し、これは、処理チャンバ155および関連のチャネル154を被覆し、閉止する。
【0064】
フィルタユニット100の実施例は、アパーチャAの形状が等しく、上部箔および底部箔102、103の厚さが等しい点で、対称である。実際には、非対称構造を選定することが有意である(異なるアパーチャ径、異なる箔厚さなど)。図5には、一例としてのカートリッジ290を示す。フィルタユニット200は、非対称構造を有する。底部箔203は、上部箔202(および中間箔204)よりも厚い。非対称性は、積層を実施する順序により、およびフィルタ材料自身の非対称性により、意図的に導入することができる。非対称な条件の結果、通常、上方または下方に向かって、フィルタ材料のドーム化が生じる。このドーム化を使用することにより、一般に、フィルタ材料とフィルタ支持の間に要求される、良好な接触を得ることができる。特に、極めて限られたサンプル体積を用いた血液分離フィルタの状況では、厳密にフィルタとフィルタ支持の間のデッド体積を最小値に低減できる点で有意である。
【0065】
フィルタユニット200に取り付けられたキャリア250は、フィルタ材料201の出口側と直接隣接する、処理チャンバ255を形成する。従って、フィルタから処理チャンバまでの輸送の際に、流体は消失しない。キャリア250は、例えば、堅い部材(例えば射出成形プラスチック部品)、または追加の箔であっても良い。
【0066】
図6および7には、フィルタユニット300のフィルタ材料301とキャリア350のフィルタ支持の間に、良好な物理的接触を確実に形成するための別の方法を示す。ここで、「保持素子」として、追加の上部層または上部箔305が追加され、これは、フィルタ材料301をフィルタ支持に向かって下方に押し付けるように機能する。
【0067】
図7には、フィルタとフィルタ支持の間で良好な物理的接触を確実に実施するために使用され得る、追加の上部箔305内のアパーチャAの構造に関する4つのオプション例が示されている。上側の2つの図において、追加上部箔305内のアパーチャAは、放射状スロットまたはカットに取り囲まれ、これにより、アパーチャのリング形状の境界を、下向きに曲げることができる(図には、追加上部箔が上下反対に示されていることに留意する必要がある)。
【0068】
図7の上から3番目の図では、中心孔によって接続された3つの別個の小さな円形開口または孔により、単一のアパーチャAが構成される。この結果、3つの図では、フィルタの中心において、フィルタ支持上のフィルタ材料に押圧を加えるように変形することができる。
【0069】
図7の最も下側の図では、アパーチャA全体が3つの別個の(非接続)円形孔で構成される。従って、追加上部箔は、自身が平坦であり、フィルタ支持に向かって押し付けた際に、ドーム状のフィルタが誤った方向にドーム状の形状を取ることが回避される。また、そのような追加の上部箔は、フィルタ材料の接触の回避を支援する。約0.3mmの箔厚さおよび3mmの直径の孔の組み合わせにより、フィルタが、指での接触に対して適切に保護される。
【0070】
図8には、フィルタユニット400の第4の実施例を示す。底部箔403は、その上の上部箔402、および中間箔404よりも大きな面積を有する。そのような大きな底部箔403は、キャリア450に取り付けられた際に、キャビティの開閉に使用され得る(図示されていない)。また、フィルタユニット400は、追加上部箔405を有し、これは、フィルタ材料401の上部にいくつかのアパーチャA1、A2を有し、これによりフィルタ材料の接触が回避されるとともに、フィルタ材料が下向きに曲げられる。
【0071】
図9に示したフィルタユニット500は、図8と同様であるが、この場合、4つの全ての箔502、503、504、および505は、対応するキャリア550の全領域にわたって延在する。底部箔503には、射出成形キャリア550の検出チャンバおよびチャネルを閉止する、標準的な積層機能が採用される。従って、単一の箔系サブユニットにおいて、2つの機能が組み合わされる。キャリア550は、右側に、血漿ドレインチャネル554、および検出チャンバ555を有する。フィルタユニット500および射出成形キャリア550は、相互に取り付けられ、最終カートリッジ590が構成される。
【0072】
図10には、フィルタユニット600およびキャリア650を有するカートリッジ690の別の実施例を示す。ここで、フィルタユニット600は、(上から下に)以下の部材で構成される:
−下方にフィルタ材料を支持する追加上部層605、
−アパーチャを有する上部箔602、
−例えば、血液分離フィルタのような、フィルタ材料601を収容するアパーチャを有する中間箔604、
−アパーチャを有する底部箔603、
−追加底部箔606。
【0073】
追加底部箔606は、血漿ドレインチャネル654、および処理チャンバ655を有する(箔内のアパーチャまたは孔により実現される)。ドレインチャネル654は、フィルタ位置と処理チャンバ655の間の距離を橋渡しする。フィルタ支持構造および血漿ドレインチャネル654は、追加底部箔606(および/または底部箔603)内でエンボス化される。
【0074】
射出成形キャリア650は、光検出部として機能し、これは、検出ゾーンの寸法を抑制する。抑制された寸法により、より迅速でコスト効果のある製造が可能となる。この方法では、キャリア650の射出成形用の高グレード光学材料の使用が低減される。
【0075】
図11および図12には、カートリッジ790の上面および断面を示す。カートリッジは、第7の実施例のフィルタユニット700および関連するキャリア750を有し、フィルタユニットは、プレ処理およびポスト処理流体システムを有する。フィルタユニット700は、(血液)フィルタ材料701を有し、これは、中間箔704内に配置され、上部箔702と底部箔703の間に積層される。
【0076】
また、上部箔702上には、追加上部箔705が提供される。この追加上部箔705は、血液設置孔710と、この孔710を血液分離フィルタ701に接続する一体化血液供給チャネル711とを有する「プレ処理流体システム」を有する。血液供給チャネル711は、特定の検出チャンバ712を血液で充填するように機能する(図11には、概略的に矩形構造で示されている)。
【0077】
また、「ポスト処理流体システム」を有する、追加底部層706が提供される。ポスト処理流体システムは、血漿ドレインチャネル754と、血漿検出チャンバ755とを有する。チャネル754は、右側の検出チャンバ755に血漿を供給する。この部分は、図10の場合と同様である。
【0078】
この実施例の主な目的は、血液および血漿の両方の測定用に、限られた全サンプル体積を有する、単一の(指を刺して得た)血液サンプルを使用することである。そのような構造の別の利点は、フィルタ材料701が血漿検出領域755に接近されることである。これにより、必要な血漿の体積が抑制される。これは、サンプル設置領域710と検出領域755の間の距離が、試験に使用されない血漿で充填された長い血漿チャネルによって橋渡しされる必要がないからである。
【0079】
カートリッジ790の適用例では、1または複数の血液検出チャンバ712(またはチャネル711自身)が電気化学的に使用され、ポスト処理流体システム内の血漿がタンパク質の検出に使用される。電気化学的検出手順の実現のため、マイクロスケールの電気化学に使用されるようなスクリーン印刷電極が、例えば、積層プロセスにおいて使用される箔の一つ(例えば705、702)に対して実現される。
【0080】
血液分離フィルタの前処理に使用される部材は、血液の電気化学測定と互換性がない。このような障害に対処する方法は、フィルタ材料701と、血液および血漿用の検出チャンバ712、755とを流体的に分離することである。
【0081】
流体処理素子によって結合された、プレ処理流体システムおよびポスト処理流体システムの提供は、本発明の独立した態様であることに留意する必要がある。
【0082】
この例では、光検出用の射出成形キャリア750の寸法は、機能のほとんどがフィルタユニット700の積層構造に移転されるため、最小限に抑制され得る。
【0083】
図13および図14には、図11および図12のカートリッジの変形例であるカートリッジ890を示す。ここでも、積層フィルタ材料801およびプレ処理流体システムの組み合わせが示されており、後者は、血液設置孔810とフィルタ材料の間に、一体化血液供給チャネル811を有する。
【0084】
部材の違いは、フィルタ材料801の後ろのポスト処理流体システムに関する。特に、処理チャンバ855は、キャリア850内に形成され、このキャリアは、底部箔803内のアパーチャに取り付けられる。従って、血漿の検出領域を有する処理チャンバ855は、血液分離フィルタ材料801の直下に配置される。
【0085】
カートリッジ890の一つの目的は、血液と血漿の両方において、ターゲット分子および/または電気化学的特性の検出を可能にすることである。また、提案された構造は、フィルタ材料801を血漿検出領域855に近づけ、必要な血漿の体積を低減する。サンプル設置領域810と検出領域855の間の距離は、試験に使用されない血漿が充填された血漿チャネルによって橋渡しされる必要はない。その代わり、生じる血漿の最適使用ができ、必要なサンプル体積が最小限に抑制される。別の重要な利点は、サンプル設置と検出領域における血漿到達の間の時間が低減されることである。フィルタが血液で濡れた後、できるだけ速やかに、第1の血漿が、ほぼ瞬時にフィルタの底部側に達する。また、カートリッジ890の相当の部分をロールツーロール技術で製造することができ、これにより、全体のコストが抑制される。
【0086】
流体処理素子(例えばフィルタ材料801)と直接隣接する処理チャンバ(例えば855)の配置は、本発明の独立した態様であることに留意する必要がある。
【0087】
また、原理上、被フィルタ処理流体(例えば血液)を、いくつかの分離フィルタにわたって分配させることも可能である。これは、例えば、ある試験用の血液分離フィルタ中に存在する化学的前処理成分が、別の試験用のフィルタまたは検出領域に使用される成分と互換性がない場合、有益である。
【0088】
図15には、カートリッジ990の上面図を示す。このカートリッジには、図11および図12のカートリッジにおける前述の原理が適用できる。カートリッジ990は、入口910(血液設置位置)と、3つの分岐ラインに分岐された対応するチャネル911とを有するプレ処理流体システムを有する。1または2以上の検出チャンバ912(血液用)は、分岐点の前にチャネル911と結合され、1または2以上の検出チャンバ913(血液用)は、分岐点の後にチャネル911の分岐ラインに結合される。
【0089】
チャネル911の各分岐ラインは、(異なる)フィルタ材料901を有する別のフィルタ(サブ)ユニットにつながっている。また、チャネル954および検出チャンバ955(血漿用)を有する別個のポスト処理流体システムは、各フィルタ材料901の後ろに提供される。これらのチャネル954の一つが一例として示されているが、これらのチャネルにおいて、分岐が生じても良い。
【0090】
図16には、カートリッジ1090の上面図を示す。このカートリッジには、図13および図14のカートリッジに対する前述の原理が適用される。カートリッジ1090は、入口1010(血液設置位置)、および3つの分岐ラインに分岐された対応するチャネル1011を有するプレ処理流体システムを有する。1または2以上の検出チャンバ1012(血液用)は、分岐点の前でチャネル1011に結合され、1または2以上の検出チャンバ1013(血液用)は、分岐点の後でチャネル1011の分岐ラインに結合される。カートリッジ1090により、いくつかの異なる血液分離フィルタにわたって、血液の分配が可能になる。これは、例えば、ある試験用の血液分離フィルタ内に存在する化学的前処理成分が、別の試験のフィルタまたは検出領域に使用される成分と互換性のない場合、有益である。フィルタ材料1001の下側の血漿用の検出領域1055a、1055b、1055cは、図16では、矩形によって示されている。この検出には、例えば、ターゲット分子および/または電気化学的特性の検出が含まれても良い。
【0091】
図11乃至16におけるカートリッジ790、890、990、1090の重要な特徴は、同じ血液サンプルを起源とする血液と血漿の同時検出である。カートリッジ構造は、単純で、安価であり、いつかの機能(キャピラリ流体輸送、フィルタマウント、血液と血漿の分離、血液と血漿の同時検出)は、積層技術を用いて組み合わされる。これにより、ロールツーロール技術に基づく使い捨てカートリッジの、コスト効果のある大量生産が可能となる。
【0092】
図13図14、および図16のカートリッジ990および1190の追加の重要な特徴は、血液分離フィルタの直下にある、血漿用の検出領域を有するバイオセンサカートリッジである。
【0093】
試験手順の信頼性のある発展のためには、しばしば、最小値と最大値の間の、特定のサンプル体積を設置することが重要となる。しかしながら、原理上、サンプル体積測定装置が使用されないサンプル設置の場合、しばしば、バイオセンサカートリッジ上に正しい量のサンプルが配置されたかどうかについて、不確定性が存在する。一つの重要な例は、(針を刺した後の)指からカートリッジへの直接血液配置である。この場合、目視制御しか行うことができない。
【0094】
前述の問題に対する対処として、フィルタ材料の上部(またはより一般的には、サンプル配置パッドまたは構造の上部)に、1または2以上のサンプル配置孔を有する追加上部層が追加されても良い。
【0095】
例えば、追加上部箔の厚さおよびサンプル配置孔の直径の適切な選択により、設置されたサンプルの体積の最小値と最大値の間で、目視外観の差異を判断することができる。これにより、指に針を刺した後に、指から直接血液設置をするような難しい場合でも、設置サンプル体積の目視制御が可能となる。
【0096】
図17および図18には、前述の対応策を示す。図には、フィルタユニット1100を通る断面が示されており、これは、上部箔1102および底部箔1103に取り囲まれるように、積層技術を用いて取り付けられたフィルタ材料1101を有する。サンプルBの最大値(例えば30μL;図17)が提供される状況と、最小サンプル体積(例えば20μL;図18)が追加される状況間の違いが判断できるように、追加上部層1105が提供されている。追加上部層1105の厚さおよび配置孔の直径Hは、血液分離の後に、最大サンプル体積と最小サンプル体積の差異が、目視で容易に判断できるように選定される。これにより、指から直接、血液が設置されるような難しい状況においても、設置されるサンプル体積の目視制御が可能となる。
【0097】
原理上、追加上部層1105の凹部Hは、全サンプル体積範囲が収容できるほど、十分に大きい必要がある。フィルタ材料1101の直径よりも小さな孔の直径を形成することにより、両極限間の目視の差異を広げることができる。図17における破線は、サンプルBの最小体積と最大体積の間の体積差を示している。分子吸着力により保持される別のサンプル流体がない場合、最大値が得られる。
【0098】
従って、十分な血液が設置されたかどうかは、サンプル配置孔内の少なくとも凹状のメニスカスの存在で判断することができる。最大血液配置の場合、顕著な凸状のメニスカスが形成される。中央の層は、薄くても良いが、全フィルタ領域が血液で濡れる必要がある。最小サンプル体積よりも少ない量が設置された場合、(例えば白い)フィルタ材料は、フィルタの中央のサンプル血液層を介して、明確に見えるようになる。
【0099】
追加上部層1105を疎水性にして、この効果を明確化することが好ましい。目視評価は、フィルタの中央領域の色および/または血液メニスカスの形状に基づいて行われる。メニスカス形状は、斜めの角度から観測することにより、最も良く見える。凸状血液メニスカスは、十分なサンプルが設置された場合に生じ、血液分離を駆動するキャピラリ力に寄与する。
【0100】
必要な場合、目視判断され得る全サンプル体積範囲は、同じフィルタ材料の上に、2以上の配置孔を用いることにより、低減することができる。
【0101】
前述の実施例は、血液分離フィルタに対する予備を刺して得た血液の設置の状況に対して説明されたが、同様の課題は、血液分離フィルタを有しない他のシステム(例えば、血液中のバイオマーカの直接検出)に対しても、機能することは明らかである。ここでは、血液分離フィルタは、別の種類のサンプル設置パッドまたは構造に置換される。
【0102】
フィルタの上部の被覆層の追加の利点は、意図しない接触からフィルタが保護されることである。また、被覆層を使用して、フィルタと該フィルタの下側のフィルタ支持の間の物理的な接触を向上させ、これを確実に行うことができる。
【0103】
図面を参照して説明した前述の実施例の特徴は、各種態様で、組み合わされ、および/または修正され得る。
【0104】
例えば、カートリッジの充填は、自立的なキャピラリ駆動流体流に基づくと仮定した。しかしながら、入口側に高い圧力を印加し、カートリッジのベント側に低い圧力を印加して、あるいはカートリッジ操作による流体流の機械的な活性化(すなわちユーザまたは解析器により生じるぜん動流れ)により、流体流を促進させることも可能である。
【0105】
別の想定される変更は、サンプルの配置を有する。前述の例では、カートリッジの前側の入口ポート、および(上部)箔内の対応するチャネルによるキャピラリピックアップについて説明した。これに代わって、サンプルのキャピラリピックアップは、側面で生じても良い(グルコースストリップのように)。フィルタ材料は、例えばフィルタユニットの側面、例えば上部箔と底部箔の間にアクセス可能であり、この側を介してサンプルを設置しても良い。
【0106】
また、前述の例では、ほとんどの場合、(生物学的または非生物学的起源の)血液サンプルおよび血液分離フィルタに対して、説明した。しかしながら、本発明の範囲に、他のサンプルおよびフィルタが含まれることは明らかである。従って、全般に、示された装置および手順操作は、「生(なま)流体」の処理(例えばろ過)に使用され得る。その後、「処理流体」は、同じ装置内でさらに処理されても良い。
【0107】
(部分的に)箔系のカートリッジを使用することの利点は、箔に利用可能な技術(例えば、導電性パターン、RF-ID、電気化学用のスクリーン印刷電極、改良型高温エンボス化パターンなど)の数の増加とともに、着実に高まる。
【0108】
示されたいかなる実施例のフィルタ材料の前の部分も、本発明の他の示されたいかなる実施例におけるフィルタ材料の後の部分と組み合わせ可能であることに留意する必要がある。同様に、示されたいかなるフィルタユニット100、200、…1300も、示されたいかなるキャリア150、250、…1150と組み合わせ可能である。
【0109】
図面および前述の記載において、本発明について詳しく説明したが、そのような提示および説明は、一例を示すためのものであり、限定的なものではない。本発明は、示された実施例に限定されるものではない。当業者には、図面、開示、および請求項の検討から、請求項に記載の発明の実施の際に、示された実施例に対する他の変更が理解される。請求項において、「有する」と言う用語は、他の素子またはステップを排斥するものではなく、「一つの」と言う用語は、複数の存在を否定するものではない。単に、相互に異なる従属項に、ある手段が記載されていることから、これらの手段の組み合わせが有意に利用されないと解してはならない。請求項内のいかなる参照符号も、発明の範囲を限定するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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