(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240617
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】ラジアル軸受
(51)【国際特許分類】
F16C 17/03 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
F16C17/03
【請求項の数】17
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-556974(P2014-556974)
(86)(22)【出願日】2013年1月29日
(65)【公表番号】特表2015-508872(P2015-508872A)
(43)【公表日】2015年3月23日
(86)【国際出願番号】EP2013051607
(87)【国際公開番号】WO2013120687
(87)【国際公開日】20130822
【審査請求日】2016年1月21日
(31)【優先権主張番号】102012002713.3
(32)【優先日】2012年2月14日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508204618
【氏名又は名称】フォイト・パテント・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ・ルドルフ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・フクス
(72)【発明者】
【氏名】クラウス−ペーター・シュペール
【審査官】
日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭58−102819(JP,A)
【文献】
特開昭58−037312(JP,A)
【文献】
特開昭58−180815(JP,A)
【文献】
米国特許第06485182(US,B1)
【文献】
特開2009−257349(JP,A)
【文献】
特表平10−508083(JP,A)
【文献】
特開昭52−118150(JP,A)
【文献】
特開昭52−093850(JP,A)
【文献】
実開平06−016719(JP,U)
【文献】
実開昭59−116625(JP,U)
【文献】
米国特許第02743142(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/00−17/26,33/00−33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(1)と、
軸受軸線(11a)に沿って延在するハウジング孔と、
複数の傾斜パッド(2)であって、当該傾斜パッドはシャフトを支承するために前記軸受軸線(11a)の周囲に設けられており、それぞれ径方向外側の軸受面(2.2)を有しており、当該径方向外側の軸受面(2.2)によって前記傾斜パッド(2)は前記ハウジング(1)において支持面(3.1)に対して支持されている傾斜パッドと、を有するラジアル軸受であって、
個々の傾斜パッド(2)の前記径方向外側の軸受面(2.2)と前記支持面(3.1)とは互いに対向的に設けられており、
個々の傾斜パッド(2)は前記ハウジング(1)に対して可動式に設けられており、
前記面(2.2,3.1)のうちの第一の面(2.2)は、前記軸受軸線(11a)に対して垂直な第一の切断面(12)によって第一の断面曲線(S1)を形成しており、当該第一の断面曲線(S1)は凸状に湾曲し、第一の主たる曲率半径(R1)を有しており、
第二の面(3.1)は前記軸受軸線(11a)に対して垂直な前記切断面(12)によって第二の断面曲線(S2)を形成しており、当該第二の断面曲線(S2)は相応に凹状に湾曲し、第二の主たる曲率半径(R2)を有しており、前記第一の面(2.2)の前記第
一の主たる曲率半径(R1)の絶対値は、前記第二の面(3.1)の前記第二の主たる曲率半径(R2)の絶対値よりも小さく、
前記第一の面(2.2)は前記軸受軸線(11a)に対して平行な第二の切断面(13)によって、第三の断面曲線(S3)を形成しており、当該第三の断面曲線(S3)は凸状に湾曲し、第一の副次的曲率半径(R3)を有しており、
前記第二の面(3.1)は前記軸受軸線(11a)に対して平行な前記第二の切断面(13)によって、第四の断面曲線(S4)を形成しており、当該第四の断面曲線(S4)は相応に凹状に湾曲し、第二の副次的曲率半径(R4)を有しており、
前記二つの副次的曲率半径(R3,R4)は互いに異なっている、ラジアル軸受において、
前記二つの面(2.2,3.1)のうちの少なくとも一つの面の前記主たる曲率半径(R1,R2)および/または前記副次的曲率半径(R3,R4)は変化し、
前記第二の面(3.1)の前記主たる曲率半径(R1,R2)および/または前記副次的曲率半径(R3,R4)は、前記二つの切断面(12,13)が前記第二の面(3.1)と形成している交点からの距離が増大するにつれて減少することを特徴とする、ラジアル軸受。
【請求項2】
前記第二の面(3.1)の前記主たる曲率半径(R1,R2)および/または前記副次的曲率半径(R3,R4)は、前記二つの切断面(12,13)が前記第二の面(3.1)と形成している交点からの距離が増大するにつれて減少することを特徴とする、請求項1に記載のラジアル軸受。
【請求項3】
前記第二の面(3.1)の前記第二の主たる曲率半径(R2)は、前記軸受軸線(11a)に対して垂直な前記第一の切断面(12)における接点において、前記軸受軸線(11a)と前記接点との距離よりも小さいことを特徴とする、請求項1に記載のラジアル軸受。
【請求項4】
前記傾斜パッド(2)は周方向において、径方向内側の軸受面(2.1)において生じる流体力学的な力が、前記径方向外側の軸受面(2.2)と前記支持面(3.1)との間の点接触でのみ生ずる、前記径方向外側の軸受面(2.2)における反力と平衡状態にあることによって配置されることを特徴とする、請求項1または請求項3に記載のラジアル軸受。
【請求項5】
前記支持面(3.1)は圧力ブロック(3)上に設けられており、当該圧力ブロックは前記ハウジング(1)に固定されており、特に当該ハウジングに埋め込まれているか、あるいは当該ハウジング(1)と一体的に実施されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のラジアル軸受。
【請求項6】
前記圧力ブロック(3)は、弾性係数が200GPaよりも大きく、特に250GPaまたはそれより大きい材料を有していることを特徴とする請求項5に記載のラジアル軸受。
【請求項7】
前記傾斜パッド(2)は、弾性係数が200GPaよりも大きく、特に250GPaまたはそれより大きい材料を有していることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のラジアル軸受。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のラジアル軸受であって、
当該ラジアル軸受への潤滑剤および冷却剤の供給は、前記ハウジング(1)において概ね周方向に延在しているとともに、軸方向において概ね軸受の中心にない、少なくとも一つの環状溝(4)を介して行われ、
前記傾斜パッド(2)への潤滑剤および冷却剤の供給は、前記ハウジング(1)において概ね径方向に延在しているとともに、前記環状溝(4)にアクセスできる少なくとも一つの孔を介して行われることを特徴とする、ラジアル軸受。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のラジアル軸受であって、
当該ラジアル軸受が、比較的高温の搬送オイルを、個々の前記傾斜パッド(2)と前記シャフトとによって形成される間隙から流し出すための第一のオイルバリア(8)を含んでおり、当該第一のオイルバリア(8)は二つの傾斜パッド(2)の間に設けられており、当該第一のオイルバリア(8)の自由端部によって径方向外部から前記間隙の領域内に突出していることを特徴とする、ラジアル軸受。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のラジアル軸受であって、
当該ラジアル軸受が、比較的低温の新鮮なオイルを、個々の前記傾斜パッド(2)と前記シャフトとによって形成される間隙にガイドするためのさらなるオイルバリア(9)を含んでおり、当該さらなるオイルバリア(9)は二つの傾斜パッド(2)の間に設けられており、当該さらなるオイルバリア(9)の自由端部によって径方向外部から、ハウジング(1)と傾斜パッド(2)との中間空間内に突出していることを特徴とする、ラジアル軸受。
【請求項11】
二つの傾斜パッド(2)の間に、個々の前記傾斜パッド(2)と前記シャフトとによって形成される間隙に冷却剤または潤滑剤を供給するためのオイル供給帯状体(5)が設けられており、当該オイル供給帯状体(5)は前記間隙の領域内に出口を有しており、当該オイル供給帯状体(5)の出口面は、前記シャフトの回転方向で見て最初に当該シャフトによって通過される前記傾斜パッド(2)の縁に向けられていることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のラジアル軸受。
【請求項12】
搬送または取り付けの際、前記傾斜パッド(2)が前記ハウジング(1)から脱落しないように、少なくとも一つの保持手段(2.3)が設けられていることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載のラジアル軸受。
【請求項13】
軸方向のハウジング面にそれぞれ、側方カバー(1.1)が取り付けられており、当該側方カバーは分割して実施されていてもよく、個々の傾斜パッド(2)に対して少なくとも一つのオイル流出溝(10)を有し得ることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載のラジアル軸受。
【請求項14】
前記傾斜パッド(2)の少なくとも一つは、前記縁の領域に、前記オイル供給帯状体(5)から流出するオイルを前記間隙内に供給するための凹所(7)を有していることを特徴とする、請求項11を直接または間接的に引用する場合の請求項12または請求項13に記載のラジアル軸受。
【請求項15】
前記オイル供給帯状体(5)は出口開口部を有しており、当該出口開口部は当該出口開口部の長手軸線の方向において、前記凹所(7)と重なることを特徴とする請求項14に記載のラジアル軸受。
【請求項16】
前記オイルバリア(8,9)の少なくとも一つは、前記軸受軸線(11a)の放射線に対して傾いていることを特徴とする、請求項9または10を直接または間接的に引用する場合の請求項10から15のいずれか一項に記載のラジアル軸受。
【請求項17】
前記オイルバリア(8,9)のうち少なくとも一つのオイルバリアの径方向内側端部は、前記径方向内側の軸受面(2.1)に、あるいは当該径方向内側の軸受面の径方向外側にあり、特に前記オイルバリア(8,9)はオイル供給帯状体(5)に設けられているか、あるいは当該オイル供給帯状体または前記ハウジング(1)と一体的に実施されていることを特徴とする、請求項9または10を直接または間接的に引用する場合の請求項10から16のいずれか一項に記載のラジアル軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1のおいて書き部に記載のラジアル軸受に関する。すなわち軸を支承する複数の傾斜パッドを有する軸受である。これは傾斜パッド軸受と称され、流体力学的な滑り軸受に数えられる。
【背景技術】
【0002】
ここにおいて以下の特許文献が参照される。
【0003】
ターボ変速機のロータ力学的特性は、概ね支承の特性によって決定され、シャフトの幾何学的形状によって決定される。軸回転速度が非常に大きい場合、ターボ変速機ではまず傾斜パッドラジアル軸受が用いられる。ターボ変速機建造における発展により、出力伝達と、出力密度と、回転速度とは増大し、同時に効率を高め、かつ振動挙動をより安定させることが求められている。増大するこれらの要求に応えるためには、傾斜パッドラジアル軸受であって、ターボ変速機システムにおいて、より大きな回転速度と軸受押圧を有し、非定常運転時の軸受のあそびの変化がより小さく、軸受変形は小さく、振動特性が改良された状態で作動され得る傾斜パッドラジアル軸受が必要とされている。
【0004】
軸受の上記の特性は互いに依存している。例えば軸受の圧締を高めることにより、軸受をより小さく実施し、かつ、軸受の効率を高める可能性が生じる。
【0005】
ターボ変速機の始動時に、過渡的運転ゆえに、軸受の冷却が少ない状態で局所的に熱による膨張が大きくなることがあり、それにより傾斜パッド軸受において軸受隙間が許容されないほど小さくなる。
【0006】
上記の傾斜パッドラジアル軸受は特に、超臨界的に回転するシャフトに対して考慮される。当該シャフトの振動挙動は軸受の剛性特性および減衰特性によって決定的に影響される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第5738447号明細書
【特許文献2】米国特許第6485182号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第60110751号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第69503138号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第2339192号明細書
【特許文献6】独国特許発明第19514830号明細書
【特許文献7】英国特許出願公開第2285491号明細書
【特許文献8】独国特許出願公開第602004003239号明細書
【特許文献9】欧州特許第1859175号明細書
【特許文献10】スイス特許第558481号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、請求項1のおいて書き部に記載のラジアル軸受を、傾斜パッドラジアル軸受を用いるための軸受押圧、効率、および振動挙動に関する現時点での限界が超えられ得るように構成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題は、請求項1に記載のラジアル軸受によって解決される。
【0010】
本発明に係るラジアル軸受はハウジングと、軸受軸線に沿って延在するハウジング孔と、複数の傾斜パッドとを有しており、当該傾斜パッドはシャフトを支承するために軸受軸線の周囲に設けられており、それぞれ径方向外側の軸受面を有しており、当該径方向外側の軸受面によって傾斜パッドはハウジングにおいて支持面に対して支持されており、個々の傾斜パッドの径方向外側の軸受面と支持面とは互いに対向的に設けられている。個々の傾斜パッドはハウジングに対して可動式に設けられている。
【0011】
本発明によれば、前記面のうちの第一の面は、軸受軸線に対して垂直な第一の切断面によって第一の断面曲線を形成している。第一の断面曲線は凸状に湾曲し、第一の主たる曲率半径を有しており、第二の面は軸受軸線に対して垂直な切断面によって第二の断面曲線を形成している。第二の断面曲線は相応に凹状に湾曲し、第二の主たる曲率半径を有しており、第一の面の第一の主たる曲率半径の絶対値は、第二の面の第二の主たる曲率半径の絶対値よりも小さい。第一の面は軸受軸線に対して平行な第二の切断面によって、第三の断面曲線を形成している。第三の断面曲線は凸状に湾曲し、第一の副次的曲率半径を有している。第二の面は軸受軸線に対して平行な第二の切断面によって、第四の断面曲線を形成している。第四の断面曲線は相応に凹状に湾曲し、あるいは湾曲しておらず、第二の副次的曲率半径を有しているか、あるいは相応に曲率を有しておらず、二つの副次的曲率半径は互いに異なっている。
【0012】
従って副次的曲率を有する二つの断面曲線に対しては、凸対凹、または凸対平面、または凹対凸、または平面対凸の曲率の組み合わせがある。
【0013】
支持面と径方向外側の軸受面との接点における二つの副次的曲率半径の比率は、曲率の組み合わせに応じて、径方向外側の軸受面と支持面との間に常に一つの接点のみがあるように、実施されている。
【0014】
本発明の主要な思想は、個々の傾斜パッドの径方向外側の軸受面と圧力ブロックの支持面との構成を、これら二つの面が概ね互いに点支承を形成はするが、その際、少なくとも従来の傾斜パッドラジアル軸受の線形接触の軸受剛性は保持され続け、傾斜パッドは運転時に、シャフトと傾斜パッドとの間の潤滑膜圧力の流体力学的な力の作用と、傾斜パッドとハウジングに固定的に取り付けられている圧力ブロックとの接触によってのみ、周方向における所望の位置に固定されるように行うことにある。
【0015】
上記の平衡状態に対して決定的なのは、支持面と径方向外側の軸受面との接点における第二の主たる曲率半径が、軸受軸線に対して垂直な切断面において、軸受軸線と接点との距離よりも小さいことである。
【0016】
非傾斜位置における個々の傾斜パッドは、少なくとも二つの方向において傾斜角を変えられるべきである。すなわち一方で、以下において軸受軸線と称されるラジアル軸受の長手軸線に対して平行である第一の傾斜軸線周りに傾斜角を変えられ、他方で第一の傾斜軸線に対して角度を成して、もしくは垂直に設けられており、それにより軸受軸線に対して角度を成して、もしくは垂直に設けられている第二の傾斜軸線周りに傾斜角を変えられるべきである。
【0017】
このとき二つの傾斜軸線は軸受軸線に対して必ずしも定置されている必要はなく、個々の軸受面と支持面との間の相対的な回転運動または転動運動により、軸受軸線に対して特に個々の傾斜パッドと共に移動し得る。この可傾性は、ラジアル軸受におけるシャフトの補正移動を可能にし、本発明に係る主たる曲率および/または副次的曲率を用いて実現される。副次的曲率はこのとき、要素全体(傾斜パッド、圧力ブロック)にわたって、いわば端から端まで、あるいは要素の部分にわたってのみ延在し得る。これにより、個々の傾斜パッドがある程度、制限されない傾斜自由度を有し、局所的な過負荷または縁の摩耗が生じないことが実現される。
【0018】
二つの対向する面の主たる曲率半径と副次的曲率半径はそれぞれ、互いに異なっているので、二つの面の理論的な接点を起点として、二つの面同士の距離は増大する。
【0019】
このとき好適に、同一の面の主たる曲率半径と副次的曲率半径とが互いに異なっていてもよい。これは、例えば個々の傾斜パッドが主たる曲率において、副次的曲率の場合と異なる半径を有していることを意味する。同じことは、以下においてさらに述べられるように、上記の面の主たる曲率および副次的曲率の半径が変化する場合、同様に当てはまる。
【0020】
好適に個々の傾斜パッドの径方向外側の軸受面は、直接的に、すなわち、さらなる要素を介装することなく、支持面によって担持される。直接的という当該概念は、滑り軸受の作動時、互いに対向する面、すなわち径方向外側の軸受面と支持面とが潤滑剤膜によって互いに分離されていてよく、それにより直接的に接触しないことを含んでいる。以下において一方の面が他方の面の上を転動する、あるいは転がるという場合、それはまた常にこれらの面の間にこのような潤滑剤膜が存在することを意味する。傾斜パッドは好適に、まさに一つの、特に一貫した面、すなわち径方向外側の軸受面を有しており、当該径方向外側の軸受面を用いて、傾斜パッドは同様にまさに一つの対向面、すなわち支持面によって担持される。切断面はそれぞれ以下のように設けられている。すなわち、個々の面を切断面により切断することから生じる曲線が当該面の縁に対して中心にあるように設けられている。しかしながらこれは必ずしも必要ではない。すなわち、切断面は、平面の縁に関して非対称な曲率が実現可能であるように設けられてもよい。
【0021】
さらに、上記の面のうち少なくとも一つの面の主たる曲率半径および/または副次的曲率半径は変化し得る。
【0022】
本発明の補足的な思想は、傾斜パッドを冷却するための潤滑および冷却のシステムを設け、それによって作動中の軸受温度が従来の傾斜パッドラジアル軸受の場合よりも小さくなることにある。冷却システムは、新鮮な(比較的冷たい)冷却媒体を、径方向内側の軸受面にできる限り直接的に、かつねらいを定めて塗布し、軸受によって加熱された冷却媒体を当該加熱のできるだけ直後に再び当該軸受から導出するという特徴を有している。
【0023】
傾斜パッドの冷却は好適に以下によって行われる。すなわち、二つの傾斜パッドの間に、個々の傾斜パッドとシャフトとによって形成される間隙に、冷却剤または潤滑剤を供給するためのオイル供給帯状体が設けられることによって行われる。このときオイル供給帯状体は間隙の領域内に出口を有しており、当該オイル供給帯状体の出口面は傾斜パッドの縁、特にシャフトの回転方向で見て最初にシャフトによって通過される流入縁に向けられている。
【0024】
このときオイル供給帯状体は複数設けられていてもよく、当該複数のオイル供給帯状体はラジアル軸受の周面にわたって配分されており、それによってそれぞれ二つの隣接する傾斜パッドの間にこのようなオイル供給帯状体が設けられている。
【0025】
さらに少なくとも一つのオイル供給帯状体は、シャフトの回転軸線もしくは軸受軸線の放射線に対して傾いていてよい。
【0026】
好ましくは少なくとも一つの傾斜パッドにおいて、流入縁の領域内に、オイル供給帯状体から流出するオイルを、シャフトと傾斜パッドとによって形成される間隙に供給するための凹所が設けられていてよい。このときオイル供給帯状体はオイル通路を含んでいる。従ってオイル供給帯状体もしくはオイル通路の出口開口部は、当該出口開口部の長手軸線の方向において、部分的にまたは完全に凹所と重なり得る。これにより傾斜パッドの凹所の長手軸線は、オイル供給帯状体の長手軸線に対して同軸的もしくは平行に設けられている。凹所と出口開口部の面は合同に実施されていてもよい。凹所は特に対称的な溝として実施されていてよい。凹所の長手軸線または対称軸線は放射線と一致してもよく、あるいは放射線に対して平行に設けられてもよい。この点はオイル供給帯状体のオイル通路に対して付加的または代替的に行われてよい。
【0027】
さらなる実施の形態によればラジアル軸受は、個々の傾斜パッドとシャフトとによって形成される間隙から比較的高温の搬送オイルを流し出すための第一のオイルバリアを含んでおり、当該第一のオイルバリアは二つの傾斜パッドの間に設けられており、当該第一のオイルバリアの自由端部によって径方向外部から間隙領域内に突出している。これにより、第一のオイルバリアは間隙から流出する高温のオイルの大部分を流し出す。
【0028】
ラジアル軸受はまた、比較的低温の新鮮なオイルを個々の傾斜パッドとシャフトとによって形成される間隙にガイドするためのさらなるオイルバリアを含み得、当該さらなるオイルバリアは二つの傾斜パッドの間に設けられており、当該さらなるオイルバリアの自由端部によって径方向外部から、ハウジングと傾斜パッドとの中間空間内に突出している。
【0029】
オイルバリアのうち少なくとも一つのオイルバリアの径方向内側の自由端部は好適に、当該径方向内側の自由端部が直接的に隣接している、傾斜パッドの径方向内側の軸受面に、あるいは当該径方向内側の軸受面の外側に設けられ得る。このとき特に一つのオイルバリアの自由端部は、シャフトの周方向において、さらなるオイルバリアの自由端部に対して離間するとともに、特にシャフトの回転方向で見て当該さらなるオイルバリアの自由端部に対して前置されていてよい。
【0030】
さらなる実施の形態によれば、このとき一方のオイルバリアとさらなるオイルバリアとは互いに軸方向において離間された状態で、それぞれ同一のオイル供給帯状体に設けられている。
【0031】
オイルバリアのうち少なくとも一つのオイルバリアの径方向内側の端部は好適に、径方向内側の軸受面に、あるいは当該径方向内側の軸受面の外側に設けられ得、好適にオイルバリアはオイル供給帯状体に、特に当該オイル供給帯状体の径方向内側端部に、形状接続的、摩擦接続的、または材料接続的に固定されているか、あるいは当該オイル供給帯状体またはハウジングと一体的に実施されている。
【0032】
さらなる特徴は、以下の詳細な説明に記載されている。図面に示されているのは以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】傾斜パッドラジアル軸受を等角図法において示す図である。
【
図3】
図1に示す軸受を側面において見た図である。
【
図4】
図1に示す軸受の軸方向断面A−Aを示す図である。
【
図5】
図1に示す軸受の径方向断面B−Bを示す図である。
【
図6】オイル供給帯状体の細部を拡大した縮尺で示す図である。
【
図7】圧力ブロックを有する傾斜パッドを拡大して示す図である。
【
図8】径方向外側の軸受面と支持面との曲率を空間的に示す図である。
【
図9】径方向外側の軸受面と支持面との曲率半径の推移を空間的な表示において象徴的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
ラジアル軸受は孔を有するハウジング1を含んでいる。ハウジング1はシリンダ状のスリーブから成っているということもできるであろう。図に示す場合、当該スリーブは二つのハーフシェルから構成されている。
図1および
図2を参照されたい。ハーフシェルは二つより多くてもよい。
【0035】
全ての主な要素は
図4と、
図7から
図9とから認識可能である。ここではまず傾斜パッド2が挙げられる。当該傾斜パッドは軸受軸線11aの周りに集められた状態で設けられている。本図の場合、4個の傾斜パッドが扱われているが、4個より多い傾斜パッド、または4個より少ない傾斜パッドでもよい。
【0036】
個々の傾斜パッド2は、特に
図7からよく分かる通り、径方向内側の軸受面2.1と径方向外側の軸受面2.2とを有している。径方向外側の軸受面2.2は支持面3.1によってハウジング1において支持されている。径方向外側の軸受面2.2と支持面3.1とは互いに対向的に設けられている。本図において支持面3.1は圧力ブロック3によって形成され、それによって個々の傾斜パッド2は圧力ブロック3によって、好適に直接的に担持されている。
【0037】
圧力ブロック3は本図の場合、ハウジング1内に組み込まれている。しかしながら圧力ブロックは他のやり方でハウジング1に固定されているか、あるいはハウジング1と一体的に実施されていてよい。
【0038】
図1から
図3から特に、ハウジング1の側方カバー1.1が認められる。側方カバー1.1はパッド保持ピン2.3を担持し、当該パッド保持ピンは傾斜パッド2に挿入されている。パッド保持ピン2.3は非作動時において、ラジアル軸受の取り付けおよび搬送の際、傾斜パッド2が軸受から脱落しないように、しかしながら側方カバー1.1内に設けられている径方向および接線方向における遊びの範囲内で傾斜パッドが移動できるようにしている。すなわちパッド保持ピン2.3は概ね、軸受軸線11aに対して径方向および接線方向において、軸受の非作動時に、側方カバー1.1と形状接続的に連結可能である。パッド保持ピン2.3は、作動時に傾斜パッドが空間的な補正移動を行う際、傾斜パッド2を妨げない。パッド保持ピン2.3は軸受の作動に対しては必要ない。
【0039】
パッド保持ピン2.3が側方カバー1.1に固定的に結合されており、傾斜パッド2における付属する孔に対して遊びを有していることも同様に考えられる。
【0040】
傾斜パッド2の径方向内側の軸受面2.1は、図に示されていないシャフトを支承するのに役立つ。シャフトはハウジング1に囲繞されている。径方向内側の軸受面2.1は軸受位置におけるシャフトの対応する半径よりも大きな半径を有している。しかしながら半径の推移も同様に考えられる。シャフトはハウジング1に対して、傾斜パッド2を用いて径方向において支承されている。
【0041】
ラジアル軸受が運転時にシャフトの空間的移動を受容するとともに補償できるように、個々の傾斜パッド2はハウジング1に対して可動的に設けられている。
図8はこのとき二つの面2.2、3.1のみを示しており、しかもシャフトの回転軸線12aが軸受軸線11aと一致する始動位置において示している。しかしながら必ずしもこの状態である必要はない。二つの軸線11a、12aは互いに平行に設けられていてもよい。軸線13aは軸受軸線11aに対して垂直に設けられている。
【0042】
図8および
図9の表示は縮尺通りではないので、特に本発明に係る二つの面2.2,3.1の曲率半径の相違は暗示されているにすぎない。
【0043】
図9に示されているように、面2.2,3.1のうち第一の面、本図では径方向外側の軸受面2.2は、軸受軸線11aに対して垂直な第一の切断面12によって第一の断面曲線S1を形成している。第一の断面曲線は凸状に湾曲し、第一の主たる曲率半径R1を有している。第二の面、本図では支持面3.1は軸受軸線11aに対して垂直な切断面12によって第二の断面曲線S2を形成している。第二の断面曲線は相応に凹状に湾曲し、第二の主たる曲率半径R2を有している。逆に支持面3.1の断面曲線S2が相応に凸状に湾曲しており、径方向外側の軸受面2.2の断面曲線S1が相応に凹状に湾曲していてもよい(図に示されていない)。
【0044】
面2.2、3.1のうち少なくとも一つは、主たる曲率半径に加えてさらに副次的曲率半径を有している。したがって径方向外側の軸受面2.2は、
図9に示されているように、軸受軸線11aに対して垂直な第二の切断面13によって、第三の断面曲線S3を形成している。断面曲線S3は凸状に湾曲し、第一の副次的曲率半径R3を有している。これに対応して支持面3.1は第二の切断面13によって、第四の断面曲線S4を形成しており、当該第四の断面曲線は凹状に湾曲し、第二の副次的曲率半径R4を有している。代替的に支持面3.1は副次的曲率半径を有しておらず(図に示されていない)、それによって無限大に近づく第二の副次的曲率半径R4を有していてもよい。
【0045】
このように面2.2,3.1は、互いに垂直に設けられている切断面12および13によって切断され、切断面12は軸受軸線11aに対して垂直であり、切断面13は軸受軸線11aに対して平行であるとともに本図の場合、軸受軸線11aを通過して設けられている。個々の面の断面曲線同士は互いに交差して交点を生じさせる。対向する面2.2、3.1の二つの交点が接触するとき、当該交点は以下において接触点Sと称される。
【0046】
図8および
図9に示されている、互いに垂直に設けられている軸線11aおよび12aは、上記のように傾斜パッド2の傾斜軸線と見なすことも可能である。
【0047】
切断面13は軸受軸線11aと接触点Sとを通過するように設けられている。切断面12は切断面13に対して垂直に、かつ、接触点Sと軸線13aとを通過するように設けられている。
【0048】
傾斜パッド2はシャフトの二つの移動、すなわち主たる移動と副次的移動とを、互いに独立して補償することができる。主たる移動は、回転軸線12aが軸受軸線11aに対して平行であるとき、径方向外側の軸受面2.2の主たる曲率半径R1が、支持面3.1の第二の主たる曲率半径R2上で転動する際、シャフトが径方向において描くものである。
【0049】
副次的移動は、径方向外側の軸受面2.2の第一の副次的曲率半径R3が、支持面3.1の第二の副次的曲率半径R4上で転動する際、軸線12aが軸受軸線11aに対して傾くことによって、シャフトが描くものであり、当該二つの軸線は切断面13内にとどまっている。このとき傾斜軸線は軸線13aである。
【0050】
二つの移動が互いに独立して重ねられることにより、個々の傾斜パッド2は個々のシャフト移動を所定の限界内で補償することができる。
【0051】
主たる移動の転動半径が表示されている切断面12において、径方向外側の軸受面2.2の断面曲線S1は例えば常に凸状の曲線を表し、支持面3.1の断面曲線S2は例えば常に凹状の曲線を表す。このとき第一の主たる曲率半径R1の絶対値は常に第二の主たる曲率半径R2の絶対値よりも小さい。
【0052】
図9において副次的移動の転動半径が表示されている切断面13において、断面曲線S3およびS4は径方向外側の軸受面2.2に対しては例えば凸状の曲線で表され、支持面3.1に対しては例えば凹状の曲線で表されている。このとき第三の副次的曲率半径R3の絶対値は常に第四の副次的曲率半径R4の絶対値よりも小さい。
【0053】
図に示されている実施の形態に関わらず、二つの面2.2、3.1を副次的曲率の構成に関して様々に組み合わせることが考えられる。
【0054】
上記の副次的移動に関し、切断面13において、径方向外側の軸受面2.2と支持面3.1との以下の線の輪郭も想定可能である。
【0056】
断面曲線の曲率の推移は、第一の切断面12(主たる移動)においても、第二の切断面13(副次的移動)においても、この場合第一の切断面における曲率の推移を主たる曲率半径と称し、第二の切断面における曲率の推移を副次的曲率半径と称するが、これらは変化してよく、一定である必要はない。
図9において示されているように、例えば本図において凸状に湾曲された軸受面2.2の第一の副次的曲率半径R3の絶対値は、交点/接触点Sからの距離が増大するにつれて減少し得る。代替的に、または付加的に、本図において凹状に表された支持面3.1の副次的曲率半径R4の絶対値は、交点/接触点Sからの距離が増大するにつれて増大し得る。
【0057】
同じことは主たる曲率半径にも当てはまる。すなわち、本図において凸状に湾曲された軸受面2.2の第一の主たる曲率半径R1の絶対値は、例えば交点/接触点Sからの距離が増大するにつれて(
図9参照)減少し得る。代替的に、または付加的に、本図において凹状に表された支持面3.1の第二の主たる曲率半径R2の絶対値は、交点/接触点Sからの距離が増大するにつれて増大し得る。
【0058】
切断面12および13において断面曲線S1−S4が描く線の輪郭に沿って、曲率半径が上記のように変化することにより、軸受の径方向の所望の高い剛性が得られると同時に、ほぼ点接触による傾斜パッド2の可動性が実現される。
【0059】
傾斜パッド軸受の作動中、耐力の平衡が自動調整されるために、傾斜パッド2は周方向において軸受軸線11aに対して自動的に位置決めされると同時に、ラジアル軸受においてシャフトが傾くことも避けられる。
【0060】
傾斜パッド2の軸方向における移動の自由は、分割して実施されていてもよい、側方カバー1.1(
図1から
図3)によって限定されている。傾斜パッド2の移動の自由の範囲内で、傾斜パッド2と側方カバー1.1との摩擦を小さく保つために、側方カバーと傾斜パッド2との間で、パッド保持ピン2.3に薄いディスクが取り付けられていてもよい。
【0061】
ラジアル軸受の径方向の剛性をさらに高めるために、圧力ブロック3の材料は、今まで図に示されていた実施の形態に関わらず、鋼の弾性係数よりも大きな弾性係数を有するべきであろう。200GPaよりも大きな数値、例えば250GPaまたはそれ以上が目標とされる。材料としては例えば工業用セラミックが考慮される。セラミック材料を基材とする構成要素を有するラジアル軸受の製造は、圧力ブロック3を用いることによって容易になる。圧力ブロック3および/または傾斜パッド2は、工業用セラミックでの実施に対して完全に、または部分的に考慮される。工業用セラミックは熱伝導性が非常に良好であるという有利点を有している。これにより、潤滑膜において放散されたエネルギーは迅速に放散され、それにより、最大軸受温度は著しく低減される。従来用いられていたパッド材料に対して、工業用セラミックが有しているさらなる有利点は、熱膨張係数が従来用いられていたパッド材料よりもはるかに小さいことである。これにより、非定常的な熱変形、およびそれとともに生じる高い軸受温度(温度オーバーシュート)に起因して、軸受のあそびが許容できないほど低減する危険は小さくなる。非定常的な熱変形、およびそれとともに生じる高い軸受温度により、特にターボ変速機の始動時、または過渡的運転時に、設備が停止することもあり得る。
【0062】
本発明に係るラジアル軸受に対して用いられる潤滑剤もしくは冷却剤は通常、オイルであるが、例えば水など、他の潤滑剤もしくは冷却剤も応用され得る。詳細な説明においては例として、潤滑剤もしくは冷却剤としてオイルが用いられる。
【0063】
特に
図2、
図4、
図5、および
図6は、本発明に係るオイル供給システムを表示している。
【0064】
個々の傾斜パッド2と図に示されていないシャフトとによって形成されるそれぞれの間隙にオイルを供給するために、ハウジングは少なくとも一つの、この場合は二つの環状溝4を有している。
図5を参照されたい。環状溝は好適に概ねハウジング1の周方向に延在しており、軸受軸線11aに沿って見た場合、概ねラジアル軸受の中心の外側にある。環状溝4は図に示すように、軸受の中心に対して対称に、最大の対向距離を有して、ハウジング1の外径に設けられていてもよい。さらに、オイル供給帯状体5が設けられている。
図1、
図4、および
図6を参照されたい。オイル供給帯状体5はオイル通路6を介して環状溝4と連通している。
【0065】
オイル供給帯状体5およびオイル通路6もまた、径方向半直線に対して傾いている。
図6の傾斜角αを参照されたい。オイル通路6の長手軸線は、軸受軸線11aの軸線に垂直な断面において、シャフトの周面によって限定される円に接する割線のように設けられていると言うこともできる。このとき角αはオイル供給方向と、シャフトに対する傾斜パッド接触面における接線面との間の、流入縁を介する角である。流入縁とは傾斜パッド2の縁であって、シャフトの回転方向において最初にシャフトが通過する縁のことである。流出縁とは同一の傾斜パッド2の縁であって、シャフトの回転方向において流入縁に後置されている縁を表す。角αは90°よりも大きい。上記の傾斜によって、間隙に対してオイルを特に効率的に噴射することが保証される。個々のオイル供給帯状体5は、図に示されていない計量スクリューをネジ留めするためのネジ穴5.1を有している。計量スクリューはノズルのように実施されていてよい。所定の出口面を有するこのような計量スクリューを用いることにより、オイル量は動作パラメータに適合される。個々の傾斜パッド2の流入縁における凹所7は、オイル供給の効率を高める。このとき個々の計量スクリューに一つの凹所7が配設されている。凹所7と計量スクリューとは、オイル通路6の長手軸線方向において重なり合う。
【0066】
シャフトとパッドの間の潤滑間隙から流出縁を介して、シャフトの回転方向において後置されている傾斜パッド2の流入縁に向かって流れる、高温の搬送オイルがあふれ出すことを低減するために、オイル供給帯状体5には弾性的な搬送オイルバリア8が設けられている。高温のオイルがパッドの背面からオイル流入領域内に侵入することを低減するために、第二の弾性的なオイルバリア9が設けられている。
【0067】
搬送オイルバリア8が二つの傾斜パッド2の間に、すなわち一方の傾斜パッドの流出縁と、他方の傾斜パッドの流入縁の間に設けられており、かつ、当該搬送オイルバリアの自由端部が径方向外側から間隙の領域内に突出していることにより、当該搬送オイルバリアは高温の搬送オイルが、オイル供給帯状体5を介して供給される低温の新鮮なオイルと混ざることを著しく緩和し、それによって二つのオイル流れを特に良好に互いに分離する。
【0068】
オイルバリア9はまた、比較的低温の新鮮なオイルを、傾斜パッドとシャフトの間に形成されている個々の間隙内に供給するのに役立つ。当該オイルバリア9も二つの傾斜パッド2の間に設けられていてよく、当該オイルバリアの自由端部が径方向外側からハウジング1と傾斜パッド2との間隙内に突出していてよい。
【0069】
一方のオイルバリアおよび/またはさらなるオイルバリア8,9の自由端部は好適に、傾斜パッドの径方向内側の面2.1の概ね径方向外側に設けられていてよい。このとき一方のオイルバリア8の自由端部は、周方向において他方のオイルバリア9の自由端部に対して離間して設けられていてよく、シャフトの回転方向で見て、
図6に示されているように、さらなるオイルバリア9の自由端部の前に設けられていてよい。オイル供給帯状体5と、一方のオイルバリア8および/またはさらなるオイルバリア9とは、傾斜パッド2の全長に沿って、軸受軸線11aの方向に延伸している。しかしながらこれは必ずしも必要ではない。オイルバリア8,9の一方または両方がオイル供給帯状体5に、特に当該オイル供給帯状体の径方向内側端部に固定されるか、または当該オイル供給帯状体の径方向内側端部と一体的に構成されていてよい。オイル供給帯状体5はハウジング1と一体的に形成されていてもよい。オイル供給帯状体5に沿って、多数の互いに離間された計量スクリューが設けられていてよく、当該計量スクリューは、流体をガイドするようにオイル通路6と接続されている。
【0070】
オイルバリア8において方向転換される、比較的高温の搬送オイルは、ハウジング1および/または側方カバー1.1内に設けられているオイル流出溝10を介して軸受から排出され得る。傾斜パッド2ごと、もしくはオイル供給帯状体5ごとにそれぞれ一つの、このようなオイル流出溝10が、軸受軸線11aの周囲に配分されて設けられていてよい。当然ながらこれと異なる数も考えられる。このときオイル供給帯状体5および/または一方のオイルバリア8は、オイル流出溝10を画定し得る。オイルバリアはシャフトの回転方向で見てオイル流出溝10に後置されている。オイル流出溝10は傾斜パッド2の流出縁に向けられており、それによって当該流出縁を介して間隙から流出する比較的高温の搬送オイル5を捕捉する、とも言えるであろう。
【0071】
本発明の有利点は以下のように要約される。
傾斜パッドの空間的な補正移動に基づいて、軸受においてシャフトが傾くことが回避され、積載能力は増大し、生じる最大温度は低下する。傾斜パッドの背面が軸方向において特殊な凸状の形状を有していることと、パッドの幾何形状が凸状であることとが、工業用セラミックという材料であって、圧力ブロックおよび/または傾斜パッドが当該工業用セラミックから製造されている工業用セラミックと結びついて、径方向の剛性が非常に高くなる。この点は軸受のロータ力学的特性が向上するための基礎となる。用いられるべき工業用セラミックは非常に良好な熱伝導性を有しているため、それにより最大軸受温度を低減させる基礎も得られる。従来のパッド材料に対して工業用セラミックが有しているさらなる有利点は、熱膨張係数が従来のパッド材料よりもはるかに小さいことである。これにより、過渡的運転時に、温度オーバーシュートにより、軸受のあそびが小さくなる危険は著しく低減する。
【0072】
潤滑剤および冷却剤をガイドするためのオイルバリア8,9を有するオイル供給帯状体5の構成は、環状溝4とオイル流出溝10の構成と結びついて、ラジアル軸受の作動中の傾斜パッドの平均温度をさらに低下させる。軸方向における軸受中心の外側の、ハウジングの周面に環状溝4を設けることにより、力が直接的に伝達され、それにより傾斜パッドの支持能力が高められる。
【符号の説明】
【0073】
1 ハウジング
1.1 側方カバー
2 傾斜パッド
2.1 径方向内側の軸受面
2.2 径方向外側の軸受面
2.3 パッド保持ピン
3 圧力ブロック
3.1 支持面
3.2 中心線
4 環状溝
5 オイル供給帯状体
5.1 ネジ穴
6 オイル通路
7 凹所
8 バリア
9 バリア
10 オイル流出溝
11a 軸受軸線
12a シャフトの回転軸線
13a 軸受軸線11aに垂直な軸線
12,13 切断面
R1 軸受軸線を横断する径方向外側の軸受面2.2の曲率半径
R2 軸受軸線を横断する支持面3.1の曲率半径
R3 軸受軸線に対して垂直な径方向外側の軸受面2.2の曲率半径
R4 軸受軸線に対して垂直な支持面3.1の曲率半径
S 交点
S1,S2 平面12における断面曲線
S3,S4 平面13における断面曲線