特許第6240631号(P6240631)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240631
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】板台車
(51)【国際特許分類】
   B62B 5/00 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
   B62B5/00 H
   B62B5/00 F
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-75801(P2015-75801)
(22)【出願日】2015年4月2日
(65)【公開番号】特開2016-196200(P2016-196200A)
(43)【公開日】2016年11月24日
【審査請求日】2016年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】592192907
【氏名又は名称】日建リース工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】関山 正勝
(72)【発明者】
【氏名】小林 巧
(72)【発明者】
【氏名】油井 道成
【審査官】 梶本 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−206037(JP,A)
【文献】 実開昭52−130850(JP,U)
【文献】 実開平03−114726(JP,U)
【文献】 実開平05−064041(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3149360(JP,U)
【文献】 英国特許出願公開第00918012(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台板の下面の四隅にそれぞれキャスタを付設してなる板台車であって、
前記台板は、合板からなる載置台と、前記載置台の全周に亘って形成した、ポリウレタン製の保護周縁と、を具備し、
前記保護周縁は、型枠内に配置した前記載置台の周囲の空隙にポリウレタンを注入して、前記載置台と一体成型されたことを特徴とする、
板台車。
【請求項2】
前記載置台に、少なくとも1つの把持孔を設けたことを特徴とする、請求項1に記載の板台車。
【請求項3】
前記把持孔を、前記載置台の中央部、前端部、および後端部にそれぞれ設けたことを特徴とする、請求項2に記載の板台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、載置台の側面に保護周縁を一体成型した板台車に関する。
【背景技術】
【0002】
板台車は、主に引越や倉庫内の運搬作業等において、重量物や大型品を搬送する際に使用される平板状の台車である。
板台車はハンドルを有さないため、搬送物を全方向から積み降ろしすることができ、作業性が高い。搬送時には、台板上に載置した搬送物を押すことにより、搬送物の下面と台板の上面との摩擦抵抗によって板台車を操作する。
公知の板台車は、合板製の載置台の下面にキャスタを付設してなる。載置台の側面の四隅には、載置台の端部保護のためゴム製の緩衝材が釘打ちされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の板台車には、次のような欠点があった。
<1>合板は単板を積層してなるため、木口から釘を打ち込むと割れや層の剥がれを生じやすい。したがって、緩衝材を載置台の側面から釘打ちすると載置台が破損しやすい。
<2>載置台の側面が外気に露出しているため劣化しやすい。また、載置台の木口から木くずが発生しやすい。
<3>緩衝材が載置台の四隅しか保護しないため、柱や壁の角に側辺の中央部がぶつかると、柱や壁と載置台の双方が破損する。
<4>緩衝材を合板の層に沿って釘打ちするため、振動や衝撃によって外れやすい。
<5>緩衝材がゴム製であるため、壁や柱に擦れると色移りし汚してしまう。
【0004】
本発明の目的は、次の効果のうち少なくとも1つを有する板台車を提供することにある。
<1>載置台に割れや剥がれが生じないこと。
<2>載置台が劣化しにくく、木くずが発生しないこと。
<3>載置台の全周を保護できること。
<4>緩衝材が振動や衝撃によって外れないこと。
<5>緩衝材が壁や柱に擦れても色移りしないこと。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記のような課題を解決するための、本発明の板台車は、台板の下面の四隅にそれぞれキャスタを付設してなる板台車であって、台板は、合板からなる載置台と、載置台の全周に亘って形成した、ポリウレタン製の保護周縁と、を具備し、保護周縁は、型枠内に配置した載置台の周囲の空隙にポリウレタンを注入して、載置台と一体成型されたことを特徴とする。
【0006】
本発明の板台車は、載置台に、少なくとも1つの把持孔を設けるのが望ましい。
【0007】
本発明の板台車は、把持孔を、載置台の中央部、前端部、および後端部にそれぞれ設けるのが望ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の板台車は、以上説明した構成を有するため、次の効果の少なくともひとつを備える。
<1>保護周縁が載置台と一体成型されるため釘を使用しない。よって載置台の割れや剥がれが生じない。
<2>載置台の側面を保護周縁で密閉するため合板の側端部が劣化しにくい。また、木くずが発生しない。
<3>保護周縁が載置台の全周を被覆するため、側辺の中央部がぶつかっても柱や台板が破損しない。
<4>保護周縁が載置台と一体成型されるため振動や衝撃によっても剥がれにくい。
<5>保護周縁がポリウレタン製なので、壁や柱に擦れても色移りしない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る板台車の説明図。
図2】本発明に係る板台車を重ねた状態の説明図。
図3】本発明に係る板台車の製造方法の説明図。
図4】本発明に係る板台車の製造方法の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の板台車について詳細に説明する。
【実施例1】
【0011】
[本発明の構成]
<1>全体の構成(図1)。
本発明の板台車1は、台板10の下面に複数のキャスタ20を付設してなる平板状の台車である。
以下、板台車1の台板10の長手方向の両端を前端及び後端とし、台板10の幅方向の両端を側端として説明する。
【0012】
<2>台板。
台板10は、板台車1の主構造であって、搬送物を載置する板状体である。
台板10は、載置台11と、載置台11の側面に、全周に亘って一体成型される保護周縁12と、を具備する。
【0013】
<2.1>載置台。
載置台11は、搬送物を載置し、搬送物の荷重をキャスタ20へ伝達する部分である。
載置台11は、矩形の合板からなる。本例では、ラワン材100%の合板を採用するが、これに限られず、各種の素材を採用することができる。
載置台11の厚みは強度と重さを考量して適宜選択する。
載置台11には、中央把持孔13と端部把持孔14をそれぞれ設けることができる。中央把持孔13と端部把持孔14は必須ではなく、省略してもよい。
【0014】
<2.1.1>合板の特性。
合板は薄く切った単板を、繊維方向を90度ずつ変えて積層し、熱圧接着した木質板である。そのため、縦目と横目の強度差が殆どなく、あらゆる方向からの力に対し高い抵抗力を有する。
また、積層構造による機械強度に加え、接着剤による補強効果も有するため、耐久性が強い。
さらに、厚さやサイズの選択の幅が広く、無垢材や樹脂板に比較して製造コストが安い。
【0015】
<2.2>保護周縁。
保護周縁12は、台板10の周縁部であって、載置台11の側面を保護する部材である。
保護周縁12は、載置台11の全周に亘って一体成型される。
保護周縁12は、弾性素材からなる。本例では保護周縁12として、ポリウレタンを採用する。ポリウレタンは耐摩耗性に優れるため、従来のゴム製の補強部材と異なり、壁や柱にこすれても色移りして汚すことがない。
【0016】
<2.2.1>保護周縁の機能。
本発明の板台車1は保護周縁12を載置台11と一体成型する点に特徴がある。
すなわち、上述の通り、載置台11の合板は、低コストでありながら高い強度を有する素材であるが、側面の木口部分は層が露出するため、外気の影響で劣化しやすい。
本発明の板台車1は、載置台11側面の木口部分をポリウレタン製の保護周縁12で一体に被覆するため、載置台11の側面と保護周縁12とが密着する。
そのため、載置台11の側面を衝撃から保護するとともに、木口を外気から遮断して載置台11端部の劣化を防ぐことができる。
よって、載置台11の緩衝機能と劣化防止機能を同時に達成することができる。
【0017】
<2.3>中央把持孔。
中央把持孔13は、載置台11の中央部に設けた貫通孔であって、板台車1を倒して人力で運搬する際に把持するための孔である。
本例では、中央把持孔13を円孔とする。中央把持孔13が円孔であるため、板台車1をいずれの向きに倒した状態でも、指を掛けて把持することができる。ただし中央把持孔13の形状はこれに限られない。
【0018】
<2.4>端部把持孔。
端部把持孔14は、載置台11の端部に設けた貫通孔であって、板台車1を倒して人力で運搬する際に把持するための孔である。
本例では、端部把持孔14は、載置台11の前端付近と後端付近にそれぞれ設けた孔であって、載置台11の幅方向に長い長穴とする。ただし形状はこれに限られない。
従来の板台車は、載置台の側辺中央部分が露出していたため、この部分が直接衝撃を受け破損しやすかった。よって、載置台の強度を確保するため、端部把持孔は載置台の一端にしか設けることができなかった。
これに対し、本発明の板台車1は、載置台11の全周を保護周縁12で保護しているため破損しにくい。
そのため、端部把持孔14を載置台11の前端、後端の両方に設けることができる。
【0019】
<2.4.1>端部把持孔の機能。
端部把持孔14を載置台11の両端に設けることによって、板台車1の前端、後端のいずれからでも端部を把持することが可能になる。そのため、板台車1を人力で運搬する際の作業性が高くなる。
また、複数の板台車1を積み重ねて保管する際、上下の板台車1の端部把持孔14、14内にそれぞれ固定板Bを連通することで、複数の板台車1同士の水平位置を固定し、安定した状態で積み上げることができる(図2)。
【0020】
<3>キャスタ。
キャスタ20は、板台車1の走行手段である。
キャスタ20には、公知の各種キャスタを採用することができる。
キャスタ20は、台板10下面の隅部に四か所付設する。
【0021】
[本発明の板台車の製造方法]
引き続き、図面を参照しながら本発明の板台車の製造方法について詳細に説明する。
【0022】
<1>載置台の形成。
所定寸法の合板を加工し、載置台11を形成する。
具体的には四隅のR加工、中央把持孔13、端部把持孔14の穿孔、キャスタ20用のボルト孔の穿孔等を行う。但し、これらの加工は必須ではない。また、穿孔は保護周縁12の形成後に行ってもよい。
これらの工程は公知の工程であるのでここでは詳述しない。
【0023】
<2>保護周縁の形成。
型枠Aを用いて載置台11の側面に保護周縁12を一体成型する。
本例では、型枠Aとして、枠台と蓋からなる閉鎖型の金型を採用する。枠台の上面には台板10の外寸に対応した内部空間が凹設される。
枠台の内部空間の中央に載置台11を配置し(図3)、枠台の上面に蓋を被せて型枠Aを密閉する。
型枠Aの注入孔から内部空間にポリウレタンを注入する。ポリウレタンは載置台11の外周の空間に充填される。
ポリウレタンが硬化することによって、載置台11の周囲に保護周縁12が一体成型され、台板10が完成する(図4)。
型枠Aの蓋を開き、台板10を脱型する。
尚、上記の工程は一実施例にすぎず、載置台11の側面に保護周縁12を一体成型できれば、他の公知の技術を採用することもできる。
【0024】
<3>キャスタの付設。
台板10の下面の四隅にキャスタ20をそれぞれ付設する。これは公知の工程であるのでここでは詳述しない。
【符号の説明】
【0025】
1 板台車
10 台板
11 載置台
12 保護周縁
13 中央把持孔
14 端部把持孔
20 キャスタ
A 型枠
B 固定板
図1
図2
図3
図4