(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1又は直列接続された複数の太陽電池セルと当該太陽電池セルと並列に接続されたバイパスダイオードとを含む太陽電池モジュールが直列に複数接続された太陽電池ストリングを含む太陽電池アレイにおける、バイパスダイオードの故障検査装置であって、
前記太陽電池ストリングの負極側に接続される陽極側端子と、
前記太陽電池ストリングの正極側に接続される陰極側端子と、
前記陽極側端子と前記陰極側端子との間に接続された前記太陽電池ストリングに、前記バイパスダイオードの順方向に、低電圧側から高電圧側に向かう掃引電圧を印加する電圧源と、
前記陽極側端子と前記陰極側端子との間に接続された前記太陽電池ストリングに流れる電流量を検知する電流検知部と、
前記電流検知部により、予め指定された上限電流量が検知された場合、前記太陽電池ストリングに流れる電流を遮断する電流遮断部と、
を備え、
前記電圧源が、
バッテリーと、
前記バッテリーの出力電圧を昇圧する昇圧部と、
前記昇圧部の出力電圧により充電されるコンデンサと、
前記陽極側端子と前記陰極側端子との間の電圧値を検知する電圧検知部と、
前記陰極側端子または前記陽極側端子に接続されるとともに、前記電圧検知部による電圧値検知対象と直列に接続され、前記電圧検知部の検知結果に基づいて抵抗値を変化させることで、前記充電されたコンデンサにより前記掃引電圧を前記陽極側端子と前記陰極側端子との間に印加する可変抵抗と、
を備える、バイパスダイオードの故障検査装置。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電システムの太陽電池アレイとして、直列に接続された複数の太陽電池モジュールにより構成された太陽電池ストリングが、並列に複数接続された構成が広く使用されている。また、太陽電池モジュールとして、1又は直列接続された複数の太陽電池セル(以下、太陽電池クラスタという。)を有し、太陽電池クラスタごとに、パイパスダイオードが並列接続された構造が広く使用されている。このバイパスダイオードには、故障や影等に起因して各太陽電池モジュールに電流のアンバランスが生じ、太陽電池モジュールに逆バイアスが印加される状況が発生した場合に電流が流れる。このようなバイパスダイオードの動作により、逆バイアスが印加された太陽電池モジュール(太陽電池クラスタ)の発熱や破損を防止することができる。
【0003】
太陽電池クラスタが正常に動作している場合、当該太陽電池クラスタに並列に接続されたバイパスダイオードには太陽電池クラスタにおける発生電圧により逆バイアスが印加され、バイパスダイオードは非導通状態にある。そのため、例えば、バイパスダイオードが故障してオープン状態になっている場合(以下、オープン故障ともいう。)でも、故障したバイパスダイオードに並列接続された太陽電池クラスタは正常に動作する。しかしながら、バイパスダイオードが故障してオープン状態になっている場合、上述のバイバスダイオードの作用効果が得られなくなってしまう。そのため、バイパスダイオードの異常検知を目的とした種々の手法が提案されている。
【0004】
例えば、後掲の特許文献1は、太陽電池モジュールが発電を行わない夜間等に、バイパスダイオードの順方向のI−V特性を取得し、取得したI−V特性のパターンと、正常時のI−V特性のパターンとを比較することで、バイパスダイオードが故障しているか否かを診断する手法が開示されている。
【0005】
また、後掲の特許文献2は、太陽電池モジュールが発電を行わない夜間等に、太陽電池モジュールの負極から正極に向けて定電流を印加し、このときの太陽電池モジュールの負極と正極との間の電位差に基づいてバイパスダイオードの故障を判定する故障検知装置を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年の太陽電池アレイの太陽電池ストリングでは多数の太陽電池クラスタが直列に接続されており、1つの太陽電池ストリングにおいて接続されるバイパスダイオードの数が100個近くになることもある。このような太陽電池ストリングに対して、バイパスダイオードの順方向に電圧を付与する場合、順方向電流を流すためには、少なくとも、バイパスダイオードの順電圧Vfと全ダイオードの数とを乗算した電圧を印加する必要がある。例
えば、30直列の結晶系ストリングを想定した場合、バイパスダイオードの数は90個程度になることが考えられ、バイパスダイオードの順電圧Vfが1.0Vであるときは、90V以上の電圧を印加する必要がある。
【0008】
バイパスダイオードの順方向に電圧を印加する場合、全てのバイパスダイオードが正常に動作すると、各バイパスダイオードの両端(カソード−アノード間)には、ほぼ等しい電圧が印加されることになる。一方、これらのバイパスダイオードの中にオープン故障となっているバイパスダイオードが存在すると、正常なバイパスダイオードの両端には順電圧Vf程度の電圧が印加され、故障したバイパスダイオードの両端には、太陽電池ストリングに印加された電圧のうち、正常なバイパスダイオードの両端に印加された電圧を除いた部分が印加される状態になる。当該電圧は、故障したバイパスダイオードと並列に接続された太陽電池クラスタに対しては逆方向に印加されることになる。
【0009】
上述のような100V程度の電圧を印加する能力を有する装置を使用してバイパスダイオードの故障検査をする場合、検査対象の太陽電池ストリングに含まれるバイパスダイオード数が90個程度である場合は、故障したバイパスダイオードと並列に接続された太陽電池クラスタに印加される逆方向電圧は数V程度であるため大きな問題にはならない。しかしながら、建物の屋根上等に設置された実使用状態にある太陽電池アレイでは、バイパスダイオード数を事前に認識することは困難であり、印加電圧の大きさを事前に調整することができない。
【0010】
検査対象の太陽電池ストリングに含まれるバイパスダイオード数が少なく、かつ検査対象の太陽電池ストリングにオープン故障のバイパスダイオードが含まれている場合、太陽電池ストリングに印加された電圧の大部分が、故障したバイパスダイオードと並列に接続された太陽電池クラスタに印加されることになる。そのため、上述の特許文献1、2のように、検査開始時に大きな電圧が印加される構成では、故障したバイパスダイオードと並列に接続された太陽電池クラスタに大きな逆方向電圧が印加されることになる。この場合、当該逆方向電圧の印加に起因して太陽電池クラスタが損傷することがある。このような太陽電池クラスタの損傷に気付くことなく、太陽電池アレイに発電を実施させた場合、損傷した太陽電池クラスタ(太陽電池モジュール)に加熱、発火等の事象が発生する可能性がある。
【0011】
バイパスダイオードのオープン故障の発生が確認された時点で、直ちに、当該バイパスダイオードを含む太陽電池モジュールが交換されるのであれば、太陽電池クラスタに破損が発生しても特に問題にはならないかもしれない。しかしながら、バイパスダイオードにオープン故障が発生している場合でも、各太陽電池モジュールの電流バランスが乱れた結果として、オープン故障が発生しているバイパスダイオードに並列に接続された太陽電池クラスタに逆方向電圧が発生しない限りは、太陽電池アレイは正常に発電動作をする。そのため、バイパスダイオードにオープン故障が見つかった場合でも、通常は、見つかった時点で直ちに太陽電池モジュール等が交換されることはなく、後日、改めて対応がなされる。また、当該対応がなされるまでの間も、太陽電池アレイによる発電が禁止されることもない。また、太陽電池アレイが、例えば、一般住宅の屋根上等に設置されている場合、特許文献1、2が開示するように、バイパスダイオードの検査を夜間に行うとき、直ちに太陽電池モジュール等の交換作業を行うことは、作業安全性の確保や近隣住宅への配慮の観点から困難であることも多い。
【0012】
そもそも、検査対象に故障が発生している場合であっても、検査において検査対象を劣化させる(検査対象の状態を変化させる)こと自体が好ましくないが、以上で説明した内容を鑑みても、バイパスダイオードの故障検査の際には、当該検査に起因する太陽電池クラスタの損傷を確実に防止する必要がある。なお、上述の特許文献1、2では、このよう
な課題は認識されていないため、当該課題に対応することは困難である。
【0013】
本発明は、このような従来技術の課題を鑑みてなされたものであって、並列接続された太陽電池クラスタを破損することなく、バイパスダイオードの故障を検知することができる、バイパスダイオードの故障検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の目的を達成するために、本発明は以下の技術的手段を採用している。まず、本発明は、1又は直列接続された複数の太陽電池セルと当該太陽電池セルと並列に接続されたバイパスダイオードとを含む太陽電池モジュールが直列に複数接続された太陽電池ストリングを含む太陽電池アレイにおける、バイパスダイオードの故障検査装置を前提としている。そして、本発明に係るバイパスダイオードの故障検査装置は、陽極側端子、陰極側端子、電圧源、電流検知部、及び電流遮断部を備える。陽極側端子は、太陽電池ストリングの負極側に接続される。陰極側端子は、太陽電池ストリングの正極側に接続される。電圧源は、陽極側端子と陰極側端子との間に接続された太陽電池ストリングに、当該太陽電池ストリングに含まれるバイパスダイオードの順方向に、低電圧側から高電圧側に向かう掃引電圧を印加する。電流検知部は、陽極側端子と陰極側端子との間に接続された太陽電池ストリングに流れる電流量を検知する。電流遮断部は、電流検知部により、予め指定された上限電流量が検知された場合、太陽電池ストリングに流れる電流を遮断する。
【0015】
このバイパスダイオードの故障検査装置では、太陽電池ストリングに含まれるバイパスダイオードの順方向に、低電圧側から高電圧側に向かう掃引電圧が印加される。そのため、仮に、オープン故障のバイパスダイオードが存在していても、検査の開始時点で、当該バイパスダイオードに並列に接続された太陽電池セル(太陽電池クラスタ)に大きな逆方向電圧が印加されることはない。また、掃引電圧の印加過程で太陽電池ストリングに流れる電流量が予め指定された上限電流量に到達すると、電流経路が遮断される構成であるため、オープン故障のバイパスダイオードに並列に接続された太陽電池セル(太陽電池クラスタ)に、逆方向電圧に起因するブレークダウン電流が流れたときに電圧印加を停止することができる。したがって、バイパスダイオードの検査過程において、オープン故障のバイパスダイオードに並列に接続された太陽電池セル(太陽電池クラスタ)が破損することを確実に防止することができる。
【0016】
上記バイパスダイオードの故障検査装置において、電圧源が、バッテリー、昇圧部、コンデンサ、電圧検知部、及び可変抵抗を備える構成を採用することができる。昇圧部は、バッテリーの出力電圧を昇圧する。コンデンサは、昇圧部の出力電圧により充電される。電圧検知部は、陽極側端子と陰極側端子との間の電圧値を検知する。可変抵抗は、陰極側端子に接続されるとともに、電圧検知部による電圧値検知対象と直列に接続され、電圧検知部の検知結果に基づいて抵抗値を変化させることで、充電された上記コンデンサにより上述の掃引電圧を陽極側端子と陰極側端子との間に印加する。この構成により、屋外での持ち運びが容易なポータブル型のバイパスダイオードの故障検査装置を実現することができる。なお、当該構成において、可変抵抗がトランジスタにより構成され、電流遮断部が当該トランジスタをオフ状態にすることで太陽電池ストリングに流れる電流を遮断する構成を採用することができる。
【0017】
また、以上の構成において、電圧源により陽極側端子と陰極側端子との間に印加された電圧値及び電流検知部により検知された電流量に基づいて、太陽電池ストリングに含まれるバイパスダイオードの故障の有無を判定する判定部をさらに備える構成を採用することもできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、並列接続された太陽電池クラスタを破損することなく、バイパスダイオードの故障を検知することができる。また、小型化、軽量化も容易に実現することができるため、実使用状態にある屋外に設置された太陽電池アレイが備えるバイパスダイオードの故障検査に好適なポータブル型の故障検査装置を実現可能である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながらより詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態におけるバイパスダイオードの故障検査装置の構成を示す概略構成図である。実使用状態にある太陽光発電システムが備える太陽電池アレイは、複数の太陽電池ストリングが並列接続された構成を有しているが、
図1では、1つの太陽電池ストリング110のみを図中に示している。
【0021】
まず、太陽電池ストリング110について簡単に説明する。
図1に示すように、太陽電池ストリング110は、複数の太陽電池モジュールが直列に接続された構成を有している。
図1では、3つの太陽電池モジュール11、12、13が直列に接続された構成を例示している。各太陽電池モジュール11、12、13は、太陽電池クラスタ121、122、123とバイパスダイオード131、132、133とが並列に接続された構成を有している。太陽電池クラスタ121、122、123は、1又は直列接続された複数の太陽電池セルにより構成される。各バイパスダイオード131、132、133は、カソード側(陰極側)が太陽電池クラスタ121、122、123の正極側にそれぞれ接続され、アノード側(陽極側)が太陽電池クラスタ121、122、123の負極側にそれぞれ接続されている。
【0022】
公知のように、バイパスダイオード131、132、133は、故障や影等に起因して各太陽電池モジュール121、122、123に電流のアンバランスが生じ、いずれかの太陽電池モジュールに逆バイアスが印加される状況が発生した場合に導通状態となる。例えば、太陽電池モジュール12に逆バイアスが印加される状況が発生した場合、太陽電池モジュール12に含まれるバイパスダイオード132が導通状態になる。このバイパスダイオード132の動作により、逆バイアスが印加された太陽電池モジュール12(太陽電池クラスタ122)の発熱や破損を防止することができる。
【0023】
次いで、バイパスダイオードの故障検査装置100について説明する。
図1に示すように、故障検査装置100は、太陽電池ストリング110の負極側(バイパスダイオード131、132、133のアノード側)の出力端子111に接続される陽極側端子1と、太陽電池ストリング110の正極側(バイパスダイオード131、132、133のカソード側)の出力端子112に接続される陰極側端子2を備える。陽極側端子1及び陰極側端子2には、陽極側端子1と陰極側端子2との間に接続された太陽電池ストリング110に掃引電圧を印加する電圧源3が接続されている。電圧源3が印加する掃引電圧は、低電圧側から高電圧側に向かう掃引電圧であり、バイパスダイオード131、132、133の順方向に印加される。電圧源3は、故障検査装置100を操作するオペレータの指示に応じて上記掃引電圧の印加を開始する。
【0024】
また、故障検査装置100は、電流検知部4、電流遮断部5、及び判定部6を備える。電流検知部4は、陽極側端子1と陰極側端子2との間に接続された太陽電池ストリング110に流れる電流量を検知する。この例では、電流検知部4は、電圧源3と陰極側端子2
との間で電流量を検知する構成になっている。電流量の検知方法は、特に限定されず、公知の任意の手法を採用することができる。例えば、電流の流路に電流検知用抵抗を介在させ、当該電流検知用抵抗の両端に発生する電位差に基づいて電流量を検知する構成を採用することができる。
【0025】
電流遮断部5は、予め指定された上限電流量が電流検知部4により検知された場合に太陽電池ストリング110に流れる電流を遮断する。特に限定されないが、この例では、電流遮断部5は、電流検知部4と陰極側端子2との間に介在された、エンハンスメント型のNチャネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)により構成されている。本構成では、電流検知部4は、予め指定された上限電流量の電流を検知した場合、電流遮断部5であるMOSFETのゲートに、MOSFETをオフ状態にする電圧(例えば、接地電位)を入力することで太陽電池ストリング110に流れる電流を瞬時に遮断する。
【0026】
判定部6は、電圧源3により陽極側端子1と陰極側端子2との間に印加された電圧値及び電流検知部4により検知された電流量に基づいて、太陽電池ストリング110に含まれるバイパスダイオード131、132、133の故障の有無を判定する。具体的な判定方法については後述する。
【0027】
図2は、本実施形態の故障検査装置100のより具体的な構成を示す概略構成図である。
図2では、検査対象の太陽電池ストリング110の記載を省略している。
図2に示すように、本実施形態では、電圧源3は、バッテリー31、昇圧部32、コンデンサ33、電圧検知部34、及び可変抵抗35を備える。
【0028】
昇圧部32は、バッテリー31の出力電圧を昇圧する。特に限定されないが、
図2の例では、昇圧部32は昇圧コイル(フライバック式DC−DCコンバータ)により構成されており、昇圧部32の一次側にバッテリー31及び一次側回路をオン状態とオフ状態とに切り替えるスイッチ36が接続されている。なお、バッテリー31には、例えば、市販の乾電池を使用することができる。
【0029】
昇圧部32の二次側には、昇圧部32の出力電圧により充電されるコンデンサ33が接続されている。特に限定されないが、本実施形態では、コンデンサ33は電解コンデンサにより構成されており、正極側が陽極側端子1に、負極側が陰極側端子2に、それぞれ接続されている。また、本実施形態の故障検査装置100では、掃引電圧の上限として100V程度の電圧が出力可能となるように、コンデンサ33には130V程度の電圧が充電可能になっている。なお、昇圧部32とコンデンサ33の正極との間、及びコンデンサ33と陽極側端子1との間には、逆流防止用のダイオード37、38がそれぞれ介在されている。
【0030】
電圧検知部34は、陽極側端子1と陰極側端子2との間の電圧値を検知する。本実施形態では、電圧検知部34は、
図2に示すように、陽極側端子1の近傍に設けられた電位検知位置と、陰極側端子2の近傍に設けられた電位検知位置との間の電位差を検知する。電圧値の検知方法は特に限定されず、公知の任意の手法を採用することができる。また、本構成では、電圧源3により陽極側端子1と陰極側端子2との間に印加された電圧値は、電圧検知部34により判定部6へ通知される。
【0031】
可変抵抗35は、陰極側端子2に接続されるとともに、電圧検知部34による電圧値検知対象(すなわち、太陽電池ストリング110)と直列に接続される。可変抵抗35は、電圧検知部34の検知結果に基づいて抵抗値を変化させることで、充電されたコンデンサ33の電荷を使用して上述の掃引電圧を陽極側端子1と陰極側端子2との間に印加する。
特に限定されないが、本実施形態では、可変抵抗35は、電流遮断部5であるMOSFETにより構成されている。
【0032】
この構成では、掃引電圧の印加開始前は、可変抵抗35の抵抗値は無限大(MOSFETがオフ状態)に維持されている。このとき、電圧源3により、陽極側端子1と陰極側端子2との間に接続された太陽電池ストリング110に印加される電圧は0Vである。特に限定されないが、本実施形態では、電圧検知部34が、可変抵抗35であるMOSFETのゲートに、MOSFETをオフ状態にする電圧(ここでは、接地電位)を入力することで当該状態が実現されている。
【0033】
オペレータによる掃引開始指示が入力されると、電圧検知部34が、MOSFETのゲートに、次第に大きくなる正電圧を入力することで可変抵抗35の抵抗値を減少させる。これにより、陽極側端子1と陰極側端子2との間に接続された太陽電池ストリング110には0Vから次第に増大する掃引電圧が印加されることになる。特に、本構成では、電圧検知部34は、自身が検知した電圧値に応じてMOSFETのゲートに入力する正電圧の大きさを設定することで、定速での電圧掃引を実現している。また、本構成では、数百msec程度の比較的高速での掃引が可能である。なお、MOSFETを可変抵抗35として動作させる場合、MOSFETの線形領域が使用される。
【0034】
また、上述のように、本実施形態では、可変抵抗35を構成するMOSFETと電流遮断部5であるMOSFETとが同一のMOSFETで構成されている。このような構成であっても、電流検知部4は、予め指定された上限電流量の電流を検知した場合、電圧検知部34によりMOSFETのゲートに入力されている電圧値に関わらず、当該ゲートにMOSFETをオフ状態にする電圧(ここでは、接地電位)を入力することで太陽電池ストリング110に流れる電流を遮断するは可能である。
【0035】
本実施形態の故障検査装置100を使用して太陽電池ストリング110の検査を実施する場合、太陽電池ストリング110の負極側出力端子111が陽極側端子1に接続されるとともに、正極側出力端子112に陰極側端子2が接続される。故障検査装置100と検査対象である1つの太陽電池ストリング110との電気的接続は、例えば、太陽電池アレイとパワーコンディショナとの間に設置され、各太陽電池ストリング110に接続される電気配線を集約する集電部(集電箱)を利用することで、容易に実現可能である。なお、故障検査装置100によるバイパスダイオード131、132、133の検査は、例えば、夜間等、太陽電池ストリング110が発電を行っていない状況下で実施される。
【0036】
接続が完了すると、オペレータの指示に応じてスイッチ36のオン、オフの切り替えが繰り返し実施され、コンデンサ33が充電される。コンデンサ33の充電が完了すると、スイッチ36のオン、オフの切り替えが停止される。なお、コンデンサ33の充電完了は、スイッチ36のオン、オフ切り替え動作の継続時間や、コンデンサ33の正電極と負電極との間の電位差等により検知可能である。また、充電完了は、充電完了ランプの点灯や充電完了音の発生等、オペレータが認識可能な任意の手法によりオペレータに通知されることが好ましい。
【0037】
充電完了後、オペレータの指示に応じて電圧検知部34が可変抵抗35の抵抗値を上述のように変化させ、太陽電池ストリング110に掃引電圧を印加する。なお、オペレータによる指示を求めることなく、コンデンサ33の充電完了後、自動的に掃引電圧の印加が開始される構成であってもよい。なお、特に限定されないが、本実施形態では、陽極側端子1と陰極側端子2との間に掃引電圧を印加している間、昇圧部32の一次側回路のスイッチ36はオフ状態に維持される。これにより、電流検知部4及び電圧検知部34は、電気特性をより安定して取得することができる。
【0038】
図3は、掃引電圧を印加した際に検知される電流の一例を示す模式図である。
図3において、横軸は掃引電圧(電圧検知部34により検知された電圧値)に対応し、縦軸が電流検知部4により検知された電流量に対応する。また、
図3は、太陽電池ストリング110に含まれるバイパスダイオード数が比較的少ない3個の場合(
図1参照)について例示している。
【0039】
なお、
図3において、実線は、各バイパスダイオード131、132、133が正常な場合に対応する。破線は、バイパスダイオード131、132、133のいずれかがオープン故障であり、かつ故障したバイパスダイオードに並列に接続された太陽電池セルがフロントコンタクト型である場合に対応する。点線は、バイパスダイオード131、132、133のいずれかがオープン故障であり、かつ故障したバイパスダイオードに並列に接続された太陽電池セルがバックコンタクト型である場合に対応する。公知のように、フロントコンタクト型は、一方の出力電極が太陽電池セルの表面側に存在し、他方の出力電極が太陽電池セルの裏面側に存在する構造を有する。また、バックコンタクト型は、両方の出力電極が太陽電池セルの裏面側に存在する構造を有する。なお、この例では、電流検知部4に予め設定された上限電流量は0.1Aである。
【0040】
バイパスダイオード131、132、133が正常である場合、各バイパスダイオード131、132、133のアノード−カソード間には均等に電圧が印加される。そして、
図3に実線で示すように、各バイパスダイオード131、132、133のアノード−カソード間に順電圧Vfが印加されたとき(すなわち、陽極側端子1と陰極側端子2間に印加される電圧が順電圧Vfの3倍であるとき)に各バイパスダイオード131、132、133はオン状態となり急激に順方向電流が流れ始める。例えば、各バイパスダイオード131、132、133の順電圧Vfが1.0Vである場合、電流検知部4における検知電流は、掃引電圧が3.0Vを超えると流れ始める。
【0041】
一方、バイパスダイオード131、132、133のいずれかがオープン故障である場合、故障したバイパスダイオードには電流が流れない。その結果、陽極側端子1と陰極側端子2間に印加される電圧の大部分(印加電圧−2×Vf)が故障したバイパスダイオードに並列接続されている太陽電池クラスタに逆方向電圧として印加される。例えば、
図1において、バイパスダイオード132がオープン故障であった場合、掃引電圧が100Vに到達した時点で、太陽電池クラスタ122に98Vの逆方向電圧が印加されることになる。
【0042】
図3から理解できるように、太陽電池クラスタ122を構成する太陽電池セルがフロントコンタクト型である場合、出力電極と半導体とのオーミックコンタクトを実現するN型高濃度不純物領域及びP型高濃度不純物領域が、太陽電池セルの表面側と裏面側とに離れて設けられるため、98Vの逆方向電圧が印加されても逆方向電流は流れていない。また、太陽電池クラスタ122を構成する太陽電池セルがバックコンタクト型である場合、出力電極と半導体とのオーミックコンタクトを実現するN型高濃度不純物領域及びP型高濃度不純物領域が、太陽電池セルの裏面側で隣接して設けられるため、逆方向電圧が20Vを超えると逆方向電流が流れていることが理解できる。したがって、98Vの逆方向電圧が太陽電池クラスタ122に印加された場合、逆方向のブレークダウンが発生して太陽電池セルが破損してしまう可能性がある。
【0043】
しかしながら、本実施形態の故障検査装置100では、電流検知部4により予め指定された上限電流量(ここでは、0.1A)に到達した時点で、電流遮断部5であるMOSFETがオフ状態になるため、太陽電池セルの破損を確実に防止することができる。
【0044】
判定部6は、掃引電圧を印加したときに、電流検知部4に検知される電流量に以上のような差異があることを利用してバイパスダイオードに故障があるか否かを判定する。すなわち、電流検知部4により順方向電流の流れ始め(例えば、1mAの順方向電流)が検知されたときに電圧検知部34により検知された電圧値と、電流検知部4により上限電流量到達が検知されたときに電圧検知部34により検知された電圧値との差が比較的小さい(上限電流値の大きさにもよるが、例えば、10V未満)である場合、判定部6はバイパスダイオードに故障はないと判定する。また、電流検知部4により順方向電流の流れ始めが検知されたときに電圧検知部34により検知された電圧値と、電流検知部4により上限電流量到達が検知されたときに電圧検知部34により検知された電圧値との差が比較的大きい(例えば、10V以上)である場合、又は、電圧掃引中に上限電流量到達が検知されなかった場合、判定部6はいずれかのバイパスダイオードが故障していると判断する。なお、判定結果の通知は、故障検査装置100が備えるディスプレイ上での故障有を示すメッセージ表示、故障有を示すランプの点灯や点滅、故障有を示すアラームの発報等、オペレータが認識可能な任意の手法で実施することができる。また、故障したバイパスダイオードを含む太陽電池モジュールは、例えば、バイパスダイオードの故障が検知された太陽電池ストリングに属する各太陽電池モジュールについて個別に検査をすることで特定すればよい。
【0045】
なお、以上では、判定部6が、単一の太陽電池ストリングについて取得された電圧−電流特性に基づいてバイパスダイオードの故障の有無を判定する構成としたが、判定部6は、太陽電池アレイを構成する複数の太陽電池ストリングの電圧−電流特性の相対比較に基づいて故障の有無を判定する構成であってもよい。例えば、判定部6が、太陽電池アレイを構成する複数の太陽電池ストリングについてそれぞれ取得された電圧−電流特性を比較し、他の電圧−電流特性と異なる特性を示す太陽電池ストリングについてバイパスダイオードに故障があると判定する構成であってもよい。
【0046】
以上説明したように、故障検査装置100では、太陽電池ストリング110に含まれるバイパスダイオード131、132、133の順方向に、低電圧側から高電圧側に向かう掃引電圧が印加される。そのため、仮に、オープン故障のバイパスダイオードが存在していても、検査の開始時点で、そのバイパスダイオードに並列に接続された太陽電池クラスタに大きな逆方向電圧が印加されることがない。また、掃引電圧の印加過程で太陽電池ストリングに流れる電流量が予め指定された上限電流量に到達すると、電流経路が遮断される構成であるため、オープン故障のバイパスダイオードに並列に接続された太陽電池クラスタに、逆方向電圧に起因するブレークダウン電流が流れたときに電圧印加を停止することができる。したがって、バイパスダイオードの検査過程において、オープン故障のバイパスダイオードに並列に接続された太陽電池クラスタが破損することを確実に防止することができる。また、比較的大きな電圧を出力可能であるため、多くのバイパスダイオードが直列に接続された近年の太陽電池ストリングに対しても、故障検査を確実に実施することができる。
【0047】
また、故障検査装置100は、バッテリー31での動作が可能であるため、屋外での持ち運びが容易なポータブル型の故障検査装置を実現することができる。そのため、建物の屋根上等に設置された実使用状態にある太陽電池アレイに対しても容易に故障検査を実施することができる。
【0048】
なお、上述した実施形態は本発明の技術的範囲を制限するものではなく、既に記載したもの以外でも、本発明の範囲内で種々の変形や応用が可能である。例えば、上記実施形態では、特に好ましい形態として、判定部6を備える構成としたが、判定部6を備えることは必須ではない。例えば、測定結果のみを故障検査装置100が備えるディスプレイに表示し、当該表示からオペレータ等が故障の有無を判断する構成であってよい。
【0049】
また、上記実施形態では、特に好ましい形態として、可変抵抗35と電流遮断部5とを同一のMOSFETで構成したが、可変抵抗35と電流遮断部5とは個別のトランジスタ等により構成することも可能である。
【0050】
さらに、
図2に示す電圧源3の回路構成は、特に好適な態様の例示であって、他の構成の採用を排除するものではない。本発明の効果を奏する範囲において任意に変更可能であり、同様の作用を奏する他の回路構成を採用することも可能である。