特許第6240637号(P6240637)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6240637乳化重合におけるスチレン化フェノールエトキシレート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240637
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】乳化重合におけるスチレン化フェノールエトキシレート
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/24 20060101AFI20171120BHJP
   C08F 20/18 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   C08F2/24 Z
   C08F20/18
【請求項の数】3
【外国語出願】
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-112464(P2015-112464)
(22)【出願日】2015年6月2日
(62)【分割の表示】特願2010-519996(P2010-519996)の分割
【原出願日】2008年8月11日
(65)【公開番号】特開2015-214696(P2015-214696A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2015年6月16日
(31)【優先権主張番号】60/935,402
(32)【優先日】2007年8月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509207807
【氏名又は名称】エトクス ケミカルズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ディヴィス ローレンス シー
(72)【発明者】
【氏名】ゴドウィン エドワード アール
(72)【発明者】
【氏名】ヒントン チャールズ ヴィー
(72)【発明者】
【氏名】タナー ジェームズ ティー
【審査官】 海老原 えい子
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭45−020913(JP,B1)
【文献】 特開昭63−055176(JP,A)
【文献】 特開2002−322218(JP,A)
【文献】 特開2008−201915(JP,A)
【文献】 特開2008−127419(JP,A)
【文献】 特開平05−247107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーの乳化重合によりラテックスを形成する方法であって、
水溶性の開始剤ならびに、下記式(II)の界面活性剤および陰イオン界面活性剤の組み合わせの存在下、水性媒体中で前記エチレン性不飽和モノマーを重合することから本質的になり;
【化1】
式中、n = 1、2あるいは3であり、xは1〜100であり、
前記陰イオン界面活性剤はドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、エトキシル化アルキルフェノール硫酸アンモニウム、およびエトキシル化脂肪族アルコール硫酸アンモニウムからなる群より選択され、
前記式(II)の界面活性剤が前記陰イオン界面活性剤に対し20〜30重量%であり、
前記エチレン性不飽和モノマーは、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、スチレン、メチルスチレン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、アミノアクリレートおよびアミノメタクリレートからなる群から選択される前記方法。
【請求項2】
xが5〜60である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
xが5〜40である請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、「乳化重合におけるスチレン化フェノールエトキシレート」の名称で2007年8月10日に出願された米国仮特許出願60/935,402号に基づく、35U.S.C.セクション119の優先権の利益を主張するものであり、該出願の内容の全てを引用により本出願の一部とする。
【0002】
本発明はエチレン性不飽和モノマーの乳化重合に関する。本発明はまた、スチレン化された界面活性剤を主要な乳化剤として使用したエチレン性不飽和モノマーの乳化重合に関する。本発明はさらに、水性モノマーエマルションの遊離基重合によるポリマー分散物の製造方法に関する。本発明はさらに、少なくとも1種の重合可能なエチレン性不飽和モノマーに由来するモノマー単位を含む、水系ポリマーおよびコポリマー分散物の製造方法に関する。前記ポリマーおよびコポリマー分散物は、水性媒体中で少なくとも1種のスチレン化された界面活性剤の存在下で行なわれる遊離基乳化重合工程により得られる。別の形態として、本発明は前記ポリマーまたはコポリマー分散物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
乳化重合は水性分散物ポリマーの最も重要な工業的製造方法である。乳化重合は、典型的には界面活性剤および水溶性開始剤の存在下に水性媒体中で行なわれ、高分子量ホモポリマーまたはコポリマーを高い固形分含量および低い分散物粘度で急速に生成する。その適用に際しては、乳化剤を使用することにより、通常は水である媒体中にモノマーを乳化することが必要である。そのような乳化剤は、開始剤、連鎖移動剤などのほとんどの重合に用いられる他の成分に加えて供給される。乳化剤の使用および種類により、典型的にはラテックス(通常は水である連続相中のポリマー粒子の安定したコロイド懸濁液)である生成されるポリマーまたはコポリマーの特性の多くが決まる。さらに、乳化剤は通常は完全にはラテックスから除去することができない。このため、また重合において乳化剤として使用された界面活性剤の有効性を予測することが非常に困難であるために、理論上は有用であると思われる多くの化合物が実際には有用ではない。
【0004】
乳化重合においては、界面活性剤を使用してモノマーの安定したエマルションを形成し、かつ生成物のポリマーの凝集を防ぐことが必要であることも知られている。界面活性剤は一般に、非重合性のもの、およびポリマー形成用のモノマーと重合可能な重合性のものの2種に分類される。非重合性界面活性剤の使用に伴う問題は、それらが生成物のポリマー中に残留物として残り、それらが水によって抽出され得ることから、生成物が水に対して脆弱になるということである。また界面活性剤は、化学的な構成により、アニオン性、カチオン性、非イオン性、または両性のものに分類される。
【0005】
慣用の乳化重合法では、ラテックスは通常様々なサイズの粒子を含み、それらが小さ過ぎたり大き過ぎたりするために適切なラテックスを得るのが困難であった。これらの困難を克服するためにこれまで様々な提案がなされているが、所望の究極的な成功を収めたものではない。例えば、様々な種類の乳化剤および触媒の使用が提案されている。また、重合の条件を変更することも示唆されている。しかしながら、これらのほとんどにおいて凝集が多すぎ、得られるラテックスに含まれる凝塊が多すぎ、あるいは部分的に凝集した粒子が沈殿し、収率を減じてしまう。さらには、そのようなラテックスの貯蔵寿命は全く不十分である。粘度が貯蔵中にほとんど変化せず、良好な熱安定を有し、維持するラテックスを得ることが望ましい。
【0006】
乳化重合により得られる最終生成物は通常、水中の固形分含量が典型的には30〜60%の、高分子量ポリマーの不透明で灰色または乳白色の分散物である。この分散物は典型的には、アクリル酸、メタクリル酸およびクロトン酸ホモポリマーおよびコポリマー、メタクリル酸およびアクリル酸エステルホモポリマーまたはコポリマー、酢酸ビニルホモポリマーまたはコポリマー、塩化ビニルおよび塩化ビニリデンホモポリマーまたはコポリマー、エチレンホモポリマーまたはコポリマー、スチレンおよびブタジエンホモポリマーまたはコポリマー、アクリルアミドホモポリマーまたはコポリマー、ブタジエン-アクリロニトリルコポリマー、スチレン-アクロレインコポリマー、および/または適用可能な場合には、それらのカルボキシル化物を含む。このような水性分散物の慣用の用途は、接着剤、繊維および粒子状物質用バインダー、保護および装飾的コーティング、浸漬品、発泡体、紙加工、カーペットおよび室内装飾品用裏地、ビチューメンおよびコンクリート用改質剤、紡糸および織物用改質剤である。より最近の用途としては、タンパク質固定剤、イムノアッセイにおける視覚的検出剤などのバイオ医学用途、剥離剤としての用途、回路基板用フォトレジストとしての電子用途、バッテリーにおける用途、伝導性塗料、コピー機、分子電子デバイス中の重要部品としての用途が挙げられる。
【0007】
エトキシル化されたスチレン化フェノールは、様々な用途に有効で効率的な顔料分散剤として広く開示されている。米国特許第6,736,892号(2004)は、水性インク中の顔料分散剤としての陰イオン性スチレン化フェノールエトキシレートおよびコーティング用途を開示している。米国特許出願第0235877号A1(2005)は、溶媒系用の有効で効率的な顔料分散剤としてのスチレン化フェノールアルコキシレートの脂肪酸エステルを開示している。米国特許第5,035,785号(1991)は電着浴中で有効で効率的な顔料分散剤としての非イオン性スチレン化フェノールエトキシレートを開示している。これらの分散剤は、フィルムの構造を強化し、フィルムの外観を劇的に改善し、この用途において改善されたフィルムの外観を維持することも判明している。従って、陰イオン性および非イオン性両者のスチレン化フェノールエトキシレートの、顔料粒子を分離し凝集から安定させることにおける有用性は周知であったものであり、水性および非水性系において示されている。これらの用途においては、これらの界面活性剤は、バインダーあるいはフィルム形成物質として使用される樹脂、顔料ペーストあるいは分散物、および融合助剤、粘度調整剤、当業者に周知のその他の添加剤のような他の添加剤を含む配合物の一部として加えられる。
【0008】
エチレン性不飽和モノマーの乳化重合においては、界面活性剤が重合反応を水相で生じさせるのに必要な必須の成分であることは当業者に周知である。界面活性剤が、剪断力または機械的な力による凝集に対してラテックス粒子を安定化させることによりさらに機能し、またラテックスへの電解質の添加による凝集に対してもラテックス粒子を安定化させることも当業者に周知である。乳化重合工程においては、界面活性剤が形成したミセルの内部で遊離基重合が起こるので、乳化重合における界面活性剤はラテックスの製造において必須の成分である(Bejamin B. Kline and George H. Redlich, "The Role of Surfactants in Emulsion Polymerization", Surfactant Science Series, 26, 1988)。界面活性剤の種類および濃度の選択がさらに多くのエマルション特性、特にラテックス粒子の粒径を決定する要因であることも当業者に周知である。小さい粒径は、着色において非常に望ましく、最終的なフィルムや被覆により高い光沢を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは今回、スチレン化フェノールエトキシレートがエチレン性不飽和モノマーの乳化重合において界面活性剤として有用であることを見出した。乳化重合の工程において陰イオン性および非イオン性のスチレン化フェノールエトキシレートの両者を使用することにより、小さな粒径および小さな粒度分布を有するラテックスが得られる。さらに、スチレン化フェノールエトキシレートを使用して調製されたラテックスは優れた物理的および化学的安定性を有する。本発明のスチレン化フェノールエトキシレートは、ラテックス特性を改善するために従来の界面活性剤と組み合わせて使用してもよい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーの乳化重合方法であって、水溶性の開始剤および下記式の界面活性剤の存在下、水性媒体中で前記エチレン性不飽和モノマーを重合することを含む前記方法を提供する。
【0011】
【化1】
【0012】
[式中、n = 1、2あるいは3であり;Xは1〜100であり;ZはSO3-およびPO32-からなる群から選択され;M+はNa+、K+、NH4+およびアルカノールアミンからなる群から選択される]。
【0013】
本発明はまた、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーの乳化重合方法であって、水溶性の開始剤および下記式の界面活性剤の存在下、水性媒体中で前記エチレン性不飽和モノマーを重合することを含む前記方法を提供する。
【0014】
【化2】
【0015】
[式中、n = 1、2あるいは3であり;Xは好ましくは1〜100である]。
【0016】
本発明はさらに、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーの乳化重合方法であって、水溶性の開始剤および下記式IおよびIIの界面活性剤の混合物の存在下、水性媒体中で前記エチレン性不飽和モノマーを重合することを含む前記方法を提供する。
【0017】
【化3】
[式中、n = 1、2あるいは3であり;Xは好ましくは1〜100であり;ZはSO3-またはPO32-であり;M+はNa+、K+、NH4+またはアルカノールアミンである]。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、式(I)の陰イオン性界面活性剤の存在下でのエチレン性不飽和モノマーの乳化重合に関する。
【0019】
【化4】
【0020】
式中、n = 1、2あるいは3であり;Xは好ましくは1〜100であり、より好ましくは約5〜60であり、最も好ましくは約5〜40であり;ZはSO3-またはPO32-であり得;M+はNa+、K+、NH4+またはアルカノールアミンである。
【0021】
本発明はさらに、式(II)の非イオン性界面活性剤の存在下でのエチレン性不飽和モノマーの乳化重合に関する。
【0022】
【化5】
【0023】
式中、n = 1、2あるいは3であり;Xは好ましくは1〜100であり、より好ましくは約5〜60であり、最も好ましくは約5〜40である。
【0024】
式(I)および(II)の化合物は、乳化重合において、個々にあるいは組み合わせて使用することができる。より一般的には、それらを組み合わせて使用する。組み合わせて使用する場合、式(I)の化合物の式(II)の化合物に対する比率は限定されないが、所望のエマルション特性により決まる。式(I)および(II)の界面活性剤はまた、当分野で一般に使用される他の界面活性剤と組み合わせて使用してもよい。組み合わせて使用する場合、これらの界面活性剤の比率は特定されないが、一般には、所与の配合物中に存在するエチレン性不飽和モノマーの性質に基づいて最適化される。本発明において使用することができる式(I)および式(I)の界面活性剤の合計量は、モノマーの全重量に対して約0.1%〜約20%であり、より好ましくは約0.2%〜約10%、最も好ましくは約0.5%から約7%である。また、式(I)および(II)の化合物は、エマルション特性を改善するために、慣用の界面活性剤と組み合わせて使用してもよい。
【0025】
乳化重合法で一般に使用される界面活性剤としては、陰イオン性および非イオン性分子の両者が挙げられる。乳化重合法において一般に利用される陰イオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルオキシドジスルホネート、エトキシル化アルキルフェノールスルフェートおよびホスフェート、アルキルスルホスクシネート、脂肪族アルコールの硫酸エステルおよびリン酸エステルなどが挙げられる。一般に使用される非イオン性界面活性剤としては、直鎖または分枝鎖アルコールエトキシレートおよびアルキルフェノールエトキシレート、特にオクチルフェノールエトキシレートが挙げられる。他の界面活性剤と組み合わせて使用する場合、その比率は制限されないが、所望のエマルション特性によって決まる。
【0026】
本発明の実施において重合され得る適切なモノマーとしては、ビニルモノマーあるいはアクリルモノマーなどの多数のエチレン性不飽和モノマーが挙げられる。本発明に従って使用するのに適当な典型的なビニルモノマーとしては、限定するものではないが、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニルなどのビニルエステル;スチレン、メチルスチレンなどのビニル芳香族炭化水素、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼンなどのその他の芳香族ビニル化合物などが挙げられる。塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのハロゲン化ビニルモノマーも使用することができる。
【0027】
本発明に従って使用することができる適当なアクリルモノマーとしては、アクリル官能性を有する化合物、例えば、アルキルアクリレートおよびメタクリレート、アクリル酸およびメタクリル酸ならびにアクリルアミドおよびアクリロニトリルが挙げられる。典型的なアクリルモノマーとしては、限定するものではないが、メチルアクリレートおよびメチルメタクリレート、エチル、プロピルおよびブチルアクリレートおよびメタクリレート、ベンジルアクリレートおよびメタクリレート、シクロヘキシルアクリレートおよびメタクリレート、デシルおよびドデシルアクリレートおよびメタクリレートなどが挙げられる。その他の典型的なアクリルモノマーとしては、ヒドロキシアルキルアクリレートおよびメタクリレート、例えばヒドロキシプロピルおよびヒドロキシエチルアクリレートおよびメタクリレート、メタクリル酸およびアクリル酸などのアクリル酸、およびアミノアクリレートおよびメタクリレートが挙げられる。遊離基付加重合に適したその他の不飽和モノマーも本発明に使用できることは当業者に理解されるであろう。
【0028】
遊離基を形成する多数の化合物が乳化重合法の触媒として利用される。触媒として使用される化合物は典型的には、当分野において「熱開始剤」と指称される、熱分解により遊離基を形成する化合物、あるいは酸化/還元反応により遊離基を形成する化合物の組み合わせである。そのような触媒は酸化剤と還元剤の組み合わせであり、当分野においては一般に「レドックス開始剤」と称される。熱あるいはレドックス触媒のいずれも本発明の実施において使用することができる。
【0029】
熱開始剤として使用される典型的な触媒としては、過硫酸塩、具体的には過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。典型的なレドックス開始剤としては、パーオキシド、特にベンゾイルパーオキシド、t-ブチルヒドロパーオキシド、ラウリルパーオキシド、過酸化水素、2,2'-ジアゾビスイソブチロニトリルなどの酸化剤または開始剤の組み合わせが挙げられる。典型的な還元剤としては亜硫酸水素ナトリウム、ホルムアルデヒド・スルホキシル酸ナトリウム、ナトリウムハイドロサルファイト、およびアスコルビン酸およびイソアスコルビン酸が挙げられる。触媒あるいは開始剤は、全モノマー重量の好ましくは0.1〜3重量パーセント、最も好ましくは全モノマー量の約0.1〜1重量パーセントの量で使用される。
【0030】
当業者に知られているその他の添加剤あるいは成分も本発明において使用してもよい。そのようなものとしては連鎖移動剤が挙げられ、これは分子量を調整するために用いられ、またpHを調節するための添加剤、ラテックス粒子をさらに安定させる保護コロイドとして使用される化合物が挙げられる。
【0031】
乳化重合工程に使用される従来の方法はいずれも本発明に使用することができる。そのような方法としては、標準的なモノマー添加法およびプレエマルションモノマー添加法の両者ならびに段階的モノマー添加の両者が含まれる。
【実施例】
【0032】
以下の実施例および比較例は、発明の有用性を示すことを意図するものであり、いかなる意味においても本発明の全体的な範囲を限定あるいは規定するものと解釈されるべきではないものである。
【0033】
すべての反応は、4枚のステンレスブレード付攪拌機、窒素ガス導入口、デジタル温度調節器に接続された熱電対、還流凝縮器、およびモノマー混合物および触媒溶液の添加のための導入口を備えた1500 mLガラス反応装置中で行なった。エマルション粘度は、ブルックフィールド(Brookfield)LVT粘度計でNo. 2スピンドルを30 rpmで使用して測定した。粒径測定はブルックヘヴン(Brookheven) 90 Plus粒径分析器で行なった。
【0034】
本発明のスチレン化フェノールエトキシレートは略記法により示す。例えば、20モルのエチレンオキシドを含むジスチレン化フェノールの硫酸ナトリウム塩は、DSP(POE 20)硫酸ナトリウムと記載する。Rhodacal(登録商標)DS-4、Abex(登録商標)JKBおよびAbex(登録商標)EP-120は、Rhodia社の登録商標であり、Triton(登録商標)X-405はダウ社の登録商標である。
【0035】
実施例1
687.0グラムの脱イオン水、33.0グラムのDSP(POE 20)硫酸ナトリウムの50パーセント溶液および15.0グラムのDSP(POE 40)を反応容器に加え、攪拌を開始した。窒素気流により酸素を溶液から除去し、溶液を65℃に加熱した。次に、333.0 gのメチルメタクリレート、333.0 gのブチルアクリレートおよび6.0 gのメタクリル酸のモノマー混合物を調製した。67.0 g(10%)のモノマー混合物を反応容器に加えた。その後、100.0 gの脱イオン水中の5.0 gの過硫酸カリウムからなる触媒溶液を調製し、触媒溶液の10%を反応容器に加えた。その後、痕跡量の硫酸第一鉄を加えた。反応混合物は70〜75℃に発熱した。その後、2時間にわたって、残りのモノマー混合物および触媒溶液を計量しながら反応容器へ供給した。添加の間、反応物の温度を70〜75℃の間に維持した。モノマーと触媒の添加が完了した後、反応混合物をさらに30分の間70〜75℃に保持した。その後、反応混合物を40℃に冷却し、20 mLの脱イオン水中の4グラムの水酸化アンモニウムを反応容器にゆっくり加えた。さらに15分間攪拌した後、エマルションを150ミクロンのフィルタバッグによりろ過した。エマルションの特性を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
比較例1
687.0グラムの脱イオン水、72.0グラムのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(Rhodacal(登録商標)DS-4)の22%溶液および18.7グラムのオクチルフェノール(POE 40)(Triton(登録商標)X-405)の80%溶液を反応容器に加え、攪拌を開始した。窒素気流により酸素を溶液から除去し、溶液を65℃に加熱した。次に、333.0 gのメチルメタクリレート、333.0 gのブチルアクリレートおよび6.0 gのメタクリル酸のモノマー混合物を調製した。67.0 g(10%)のモノマー混合物を反応容器に加えた。その後、100.0 gの脱イオン水中の5.0 gの過硫酸カリウムからなる触媒溶液を調製し、触媒溶液の10%を反応容器に加えた。その後、痕跡量の硫酸第一鉄を加えた。反応混合物は70〜75℃に発熱した。その後、2時間にわたって、残りのモノマー混合物および触媒溶液を計量しながら反応容器へ供給した。添加の間、反応物の温度は70〜75℃の間に維持した。モノマーと触媒の添加が完了した後、反応混合物をさらに30分間70〜75℃に保持した。その後、反応混合物を40℃に冷却し、20 mLの脱イオン水中の4グラムの水酸化アンモニウムを反応容器にゆっくり加えた。さらに15分間攪拌した後に、エマルションを150ミクロンのフィルタバッグによりろ過した。エマルションの特性を表2に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
実施例2
687.0グラムの脱イオン水、72.0グラムのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(Rhodacal(登録商標)DS-4)の22%溶液および15.0グラムのDSP(POE 40)を反応容器に加え、攪拌を開始した。窒素気流により酸素を溶液から除去し、溶液を65℃に加熱した。次に、333.0 gのメチルメタクリレート、333.0 gのブチルアクリレートおよび6.0 gのメタクリル酸のモノマー混合物を調製した。67.0 g(10%)のモノマー混合物を反応容器に加えた。その後、100.0 gの脱イオン水中の5.0 gの過硫酸カリウムからなる触媒溶液を調製し、触媒溶液の10%を反応容器に加えた。その後、痕跡量の硫酸第一鉄を加えた。反応混合物は70〜75℃に発熱した。その後、2時間にわたって、残りのモノマー混合物および触媒溶液を計量しながら反応容器へ供給した。添加の間、反応物の温度は70〜75℃の間に維持した。モノマーと触媒の添加が完了した後、反応混合物をさらに30分間70〜75℃に保持した。その後、反応混合物を40℃に冷却し、20 mLの脱イオン水中の4グラムの水酸化アンモニウムを反応容器にゆっくり加えた。さらに15分間攪拌した後に、エマルションを150ミクロンのフィルタバッグによりろ過した。エマルションの特性を表3に示す。
【0040】
【表3】
【0041】
上記の実施例におけるエマルションの特性は本発明の有用性を示している。実施例1におけるスチレン化フェノール陰イオン性および非イオン性界面活性剤の組み合わせは、比較例1におけるドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムおよびエトキシル化オクチルフェノールにより調製したエマルションより著しく小さい粒径を有するエマルションを生成した。さらに、実施例2における、標準的な非イオン性界面活性剤(エトキシル化オクチルフェノール)のDSP(POE 40)での置換により著しく小さい粒径および粒度分布を有するエマルションが生成された。
【0042】
実施例3
687.0グラムの脱イオン水、24.0グラムのDSP(POE 20)硫酸ナトリウムの50パーセント溶液および7.9グラムのDSP(POE 40)を反応容器に加え、攪拌を開始した。窒素気流により酸素を溶液から除去し、溶液を65℃に加熱した。次に、288.0 gのスチレン、210.0 gのエチルアクリレートおよび26.0 gのメタクリル酸のモノマー混合物を調製した。52.4 g(10%)のモノマー混合物を反応容器に加えた。その後、100.0 gの脱イオン水中の5.0 gの過硫酸カリウムからなる触媒溶液を調製し、触媒溶液の10%を反応容器に加えた。その後、痕跡量の硫酸第一鉄を加えた。反応混合物は70〜75℃に発熱した。その後、4時間にわたって、残りのモノマー混合物および触媒溶液を計量しながら反応容器へ供給した。添加の間、反応物の温度は80℃に維持した。モノマーと触媒の添加が完了した後、反応混合物をさらに30分間80℃に保持した。その後、反応混合物を40℃に冷却し、20 mLの脱イオン水中の8グラムの水酸化アンモニウムを反応容器にゆっくり加えた。さらに15分間攪拌した後に、エマルションを150ミクロンのフィルタバッグによりろ過した。エマルションの特性を表4に示す。
【0043】
【表4】
【0044】
比較例2
687.0グラムの脱イオン水、40.0グラムのC10-C12脂肪族アルコール(POE 15)硫酸アンモニウム(Abex(登録商標)JKB)の30%溶液および9.8グラムのオクチルフェノール(POE 40)(Triton(登録商標)X-405)の80%溶液を反応容器に加え、攪拌を開始した。窒素気流により酸素を溶液から除去し、溶液を65℃に加熱した。次に、288.0 gのスチレン、210.0 gのエチルアクリレートおよび26.0 gのメタクリル酸のモノマー混合物を調製した。52.4 g(10%)のモノマー混合物を反応容器に加えた。その後、100.0 gの脱イオン水中の5.0 gの過硫酸カリウムからなる触媒溶液を調製し、触媒溶液の10%を反応容器に加えた。その後、痕跡量の硫酸第一鉄を加えた。反応混合物は70〜75℃に発熱した。その後、4時間にわたって、残りのモノマー混合物および触媒溶液を計量しながら反応容器へ供給した。添加の間、反応物の温度は80℃に維持した。モノマーと触媒の添加が完了した後、反応混合物をさらに30分間80℃に保持した。その後、反応混合物を40℃に冷却し、20 mLの脱イオン水中の8グラムの水酸化アンモニウムを反応容器にゆっくり加えた。さらに15分間攪拌した後に、エマルションを150ミクロンのフィルタバッグによりろ過した。エマルションの特性を表5に示す。
【0045】
【表5】
【0046】
実施例4
687.0グラムの脱イオン水、40.0グラムのC10-C12脂肪族アルコール(POE 15)硫酸アンモニウム(Abex(登録商標)JKB)の30%溶液および7.9グラムのDSP(POE 40)を反応容器に加え、攪拌を開始した。窒素気流により酸素を溶液から除去し、溶液を65℃に加熱した。次に、288.0 gのスチレン、210.0 gのエチルアクリレートおよび26.0 gのメタクリル酸のモノマー混合物を調製した。52.4 g(10%)のモノマー混合物を反応容器に加えた。その後、100.0 gの脱イオン水中の5.0 gの過硫酸カリウムからなる触媒溶液を調製し、触媒溶液の10%を反応容器に加えた。その後、痕跡量の硫酸第一鉄を加えた。反応混合物は70〜75℃に発熱した。その後、4時間にわたって、残りのモノマー混合物および触媒溶液を計量しながら反応容器へ供給した。添加の間、反応物の温度は80℃に維持した。モノマーと触媒の添加が完了した後、反応混合物をさらに30分間80℃に保持した。その後、反応混合物を40℃に冷却し、20 mLの脱イオン水中の8グラムの水酸化アンモニウムを反応容器にゆっくり加えた。さらに15分間攪拌した後に、エマルションを150ミクロンのフィルタバッグによりろ過した。エマルションの特性を表6に示す。
【0047】
【表6】
【0048】
実施例3および実施例4のスチレン・アクリルエマルションの特性も本発明の有用性を示している。スチレン化フェノールエトキシレートは、従来の重合界面活性剤を使用して合成したエマルションと比較して、より小さな粒径を有するエマルションを生成した。
【0049】
以下の実施例もさらに本発明の有用性を示すものである。本発明の界面活性剤はやはり、ノニルフェノール(POE 30)硫酸アンモニウムおよびオクチルフェノール(POE 40)の従来の界面活性剤の組み合わせを使用して調製したエマルションと比較して、より小さな粒径を有するエマルションを生成した。
【0050】
実施例5
687.0グラムの脱イオン水、50.0グラムのDSP(POE 40)硫酸アンモニウムの30%溶液および15.0グラムのDSP(POE 40)を反応容器に加え、攪拌を開始した。窒素気流により酸素を溶液から除去し、溶液を65℃に加熱した。次に、134.4 gのメチルメタクリレート、532.0 gのブチルアクリレートおよび6.0 gのメタクリル酸のモノマー混合物を調製した。67.0 g(10%)のモノマー混合物を反応容器に加えた。その後、100.0 gの脱イオン水中の5.0 gの過硫酸カリウムからなる触媒溶液を調製し、触媒溶液の10%を反応容器に加えた。その後、痕跡量の硫酸第一鉄を加えた。反応混合物は70〜75℃に発熱した。その後、2時間にわたって、残りのモノマー混合物および触媒溶液を計量しながら反応容器へ供給した。添加の間、反応物の温度は70〜75℃の間に維持した。モノマーと触媒の添加が完了した後、反応混合物をさらに30分間70〜75℃に保持した。その後、反応混合物を40℃に冷却し、20 mLの脱イオン水中の4グラムの水酸化アンモニウムを反応容器にゆっくり加えた。さらに15分間攪拌した後に、エマルションを150ミクロンのフィルタバッグによりろ過した。エマルションの特性を表7に示す。
【0051】
【表7】
【0052】
比較例3
687.0グラムの脱イオン水、50.0グラムのノニルフェノール(POE 30)硫酸アンモニウム(Abex(登録商標)EP-120)の30%溶液および18.7グラムのオクチルフェノール(POE 40)(Triton(登録商標)X-405)の80%溶液を反応容器に加え、攪拌を開始した。窒素気流により酸素を溶液から除去し、溶液を65℃に加熱した。次に、134.4 gのメチルメタクリレート、532.0 gのブチルアクリレートおよび6.0 gのメタクリル酸のモノマー混合物を調製した。67.0 g(10%)のモノマー混合物を反応容器に加えた。その後、100.0 gの脱イオン水中の5.0 gの過硫酸カリウムからなる触媒溶液を調製し、触媒溶液の10%を反応容器に加えた。その後、痕跡量の硫酸第一鉄を加えた。反応混合物は70〜75℃に発熱した。その後、2時間にわたって、残りのモノマー混合物および触媒溶液を計量しながら反応容器へ供給した。添加の間、反応物の温度は70〜75℃の間に維持した。モノマーと触媒の添加が完了した後、反応混合物をさらに30分間70〜75℃に保持した。その後、反応混合物を40℃に冷却し、20 mLの脱イオン水中の4グラムの水酸化アンモニウムを反応容器にゆっくり加えた。さらに15分間攪拌した後に、エマルションを150ミクロンのフィルタバッグによりろ過した。エマルションの特性を表8に示す。
【0053】
【表8】
【0054】
実施例6
687.0グラムの脱イオン水、50.0グラムのノニルフェノール(POE 30)硫酸アンモニウム(Abex(登録商標)EP-120)の30%溶液および15.0グラムのDSP(POE 40)を反応容器に加え、攪拌を開始した。窒素気流により酸素を溶液から除去し、溶液を65℃に加熱した。次に、134.4 gのメチルメタクリレート、532.0 gのブチルアクリレートおよび6.0 gのメタクリル酸のモノマー混合物を調製した。67.0 g(10%)のモノマー混合物を反応容器に加えた。その後、100.0 gの脱イオン水中の5.0 gの過硫酸カリウムからなる触媒溶液を調製し、触媒溶液の10%を反応容器に加えた。その後、痕跡量の硫酸第一鉄を加えた。反応混合物は70〜75℃に発熱した。その後、2時間にわたって、残りのモノマー混合物および触媒溶液を計量しながら反応容器へ供給した。添加の間、反応物の温度は70〜75℃の間に維持した。モノマーと触媒の添加が完了した後、反応混合物をさらに30分間70〜75℃に保持した。その後、反応混合物を40℃に冷却し、20 mLの脱イオン水中の4グラムの水酸化アンモニウムを反応容器にゆっくり加えた。さらに15分間攪拌した後に、エマルションを150ミクロンのフィルタバッグによりろ過した。エマルションの特性を表9に示す。
【0055】
【表9】
【0056】
本出願中に引用した全ての特許、特許出願および刊行物は、それらにおいて引用された全ての文献を含め、全ての目的においてそれらの特許、特許出願あるいは刊行物が個々に表示されたのと同様の効果をもって、それらの全体を引用により本明細書の一部とする。
【0057】
上記に開示した本発明の多くの実施例は現時点における好ましい態様を含むものであるが、本発明の開示および特許請求の範囲の範囲内で、多くの他の態様や改変が可能である。従って、本明細書に記載する好ましい態様や実施例の詳細は限定的なものと解釈するべきではない。本明細書で使用される用語は単に記載のためのものであって限定を加えるためのものではなく、特許を請求する発明の趣旨や範囲から逸脱することなく様々な変更を加え、多数の等価物を生成することが可能であると理解されなければならない。