特許第6240639号(P6240639)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240639
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】内燃機関の始動方法
(51)【国際特許分類】
   F02N 11/08 20060101AFI20171120BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   F02N11/08 V
   F02N11/08 X
   F02D45/00 345Z
【請求項の数】1
【外国語出願】
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-162537(P2015-162537)
(22)【出願日】2015年8月20日
(65)【公開番号】特開2016-53360(P2016-53360A)
(43)【公開日】2016年4月14日
【審査請求日】2015年9月30日
(31)【優先権主張番号】A 676/2014
(32)【優先日】2014年9月3日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】504344576
【氏名又は名称】ゲーエー ジェンバッハー ゲーエムベーハー アンド コー オーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(72)【発明者】
【氏名】ハーバート ショームベルガー
(72)【発明者】
【氏名】ニコラウス スピラ
(72)【発明者】
【氏名】フランシスコ ロペス
【審査官】 首藤 崇聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−002812(JP,A)
【文献】 特開2011−185260(JP,A)
【文献】 特開2008−168740(JP,A)
【文献】 特開平11−148397(JP,A)
【文献】 特開2013−064385(JP,A)
【文献】 特開2014−114701(JP,A)
【文献】 特開2009−57871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02N 11/08
F02D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(1)の始動方法であって、
前記内燃機関(1)は、複数のピストンシリンダ装置(2)を有しており、該ピストンシリンダ装置(2)の燃焼チャンバと前記燃焼チャンバの上流側に配置された燃料計測装置または混合装置との間にはデッド容積(3)が存在しており、
前記内燃機関(1)の始動を試行すると、前記ピストンが補助モータ(5)によって前記シリンダ内で駆動され、
始動の試行の最大許容時間は、前記内燃機関(1)の所定の始動時間(ts)によって制限され、
前記始動時間(ts)は、前記内燃機関(1)の始動試行前又は開始時に、前記補助モータ(5)の回転速度、前記内燃機関(1)のシリンダの数(Nzyl)、前記内燃機関(1)の前記ピストンシリンダ装置(2)の排除容積(Vzyl)、前記内燃機関(1)の容積効率(λL)及び前記デッド容積(3)の大きさに応じて、計算され、かつ、予め設定され、
前記内燃機関(1)の回転速度(n)が、前記始動時間(ts)の経過後に、始動回転速度(ns)に到達していないか、またはこれを超過すると、前記始動の試行が中断する内燃機関の始動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1記載の前提部分の特徴を有する内燃機関の始動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関、特に定置内燃機関の始動では、関与する構成部品(コンポーネント)へ大きなストレスを付加する。内燃機関の始動時に、一般的にギヤである、補助モータによって駆動されるそのスタータピニオンは、内燃機関のクランクシャフトに接続されているギヤリングに係合し、内燃機関が自動的に稼動することができる回転速度にまで内燃機関を加速する。関与する負荷は、機械部品、特に補助モータに関係している。電動補助モータの場合には、これら部品は電気巻線とスタータバッテリである。
【0003】
安全に関連する特徴の一つは、始動手順中に、可燃性混合物が排気マニホールドに送り込まれるため、フラッシュファイアの危険性が始動手順の時間と共に増加する。
【0004】
したがって、前述の理由のために、通常においては、始動手順の最大許容時間は所定の時間によって制限される。
【0005】
従来技術による始動手順の欠点の一つは、始動の試行の失敗、すなわち内燃機関の自動的な稼動に導かない始動での試行が頻発することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来技術と比較して、始動における試行の成功の可能性を増加させる始動方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1の特徴を有する方法によって達成される。有利な形態は従属請求項に記載されている。
【0008】
したがって、内燃機関の始動試行前または開始時に、内燃機関および/または補助モータの状況に応じて始動時間が計算され、かつ予め設定されるという事実は、始動の試行の成功の可能性を顕著に増加させる。始動の試行の成功とは、内燃機関が始動の試行によって自動的に稼動を開始することを意味するように使用されている。
【0009】
このようにして、始動プロセスに関与する機械部品および電気部品へのストレスを大きく減少させ、本発明による方法よりも始動試行での失敗が頻繁に発生する従来の始動方法と比較して、長時間の運用寿命を達成させる。
【0010】
したがって、内燃機関および/または補助モータの状況を、始動時間の確立のために考慮することは、内燃機関および/または補助モータの状況に適応した始動時間の確立を提供する。
【0011】
始動時間は、可燃性混合物が全てのシリンダ内に存在するまでに必要な時間に相応する。過剰に長い始動時間は、未燃混合物が排気マニホールドへと漏出するため、フラッシュファイアの危険性を増加させる。過剰に短い始動時間では、全てのシリンダが点火可能な混合物によって到達されるわけではないという結果となるであろう。提案する方法の利点は、フラッシュファイアの危険性を減少させ、始動プロセスの成功の可能性を増加させ、補助モータおよび可能であればバッテリへの負荷も減少させて、それらの運用寿命を増加させることである。
【0012】
内燃機関の回転速度が、始動時間の経過後に、始動回転速度に到達しないか、またはこれを超過すると、始動の試行が中断することが好適であろう。
【0013】
内燃機関の始動回転速度は、内燃機関がそれ自体で稼動するために最も早く始動する速度である。
【0014】
所定の始動時間の後に、内燃機関の速度も始動速度に実際に到達しているかどうかを確認するためにチェックがなされる。始動試行時に始動速度に到達していない場合には、その始動の試行は中断される。始動の試行の中断は、少なくとも補助モータのスイッチオフが関与する。始動の試行の中断時における別の適切な方策は、燃料が吸引され続けて未燃の状態で排出されないように、例えばガスバルブなどの燃料供給装置を停止させる(閉める)ことである。
【0015】
始動時間はデッド容積の大きさに応じて予め決定されることが好適である。デッド容積という用語は、燃焼チャンバと、燃焼チャンバの上流側に配置された燃料計測装置または混合装置との間に存在する容積を意味する。
【0016】
始動プロセス中に、デッド容積は、シリンダが可燃性混合物で充填されるまで、内燃機関のピストンシリンダ装置のポンプ作用によって空の状態とされなければならない。ピストンシリンダ装置の大部分が可燃性混合物で充填される前に、始動プロセスは成功することができない。よって、始動時間の決定においてデッド容積の大きさを考慮することは、始動の試行の成功の可能性を増加させることに貢献する。
【0017】
始動時間が、
補助モータの回転速度に応じて、および/または、
内燃機関のシリンダの数に応じて、および/または、
ピストンシリンダ装置の排除(スウェプト)容積に応じて、および/または、
内燃機関の容積効率に応じて、
予設定されていることが特に好適である。
【0018】
本発明を、図面と関連させて以下にてさらに詳説する。
(項目1)
内燃機関(1)の始動方法であって、
前記内燃機関(1)は、複数のピストンシリンダ装置(2)を有しており、該ピストンシリンダ装置(2)の上流側にはデッド容積(3)が存在しており、
前記内燃機関(1)の始動を試行すると、前記ピストンが補助モータ(5)によって前記シリンダ内で駆動され、
始動の試行の最大許容時間は、前記内燃機関(1)の所定の始動時間(t)によって制限され、
前記始動時間(t)は、前記内燃機関(1)の始動試行前または開始時に、前記内燃機関(1)および/または前記補助モータ(5)の状況に応じて計算され、かつ、予め設定される、
ことを特徴とする内燃機関の始動方法。
(項目2)
前記内燃機関(1)の回転速度(n)が、前記始動時間(t)の経過後に、始動回転速度(n)に到達していないか、またはこれを超過すると、始動の試行が中断する、
ことを特徴とする項目1記載の方法。
(項目3)
前記始動時間(t)は、前記デッド容積(3)の大きさに応じて予め決定される、
ことを特徴とする項目1または2記載の方法。
(項目4)
前記始動時間(t)は、前記補助モータ(5)の回転速度に応じて予め設定される、
ことを特徴とする項目1から3のいずれか1項に記載の方法。
(項目5)
前記始動時間(t)は、前記内燃機関(1)のシリンダの数(Nzyl)に応じて予め設定される、
ことを特徴とする項目1から4のいずれか1項に記載の方法。
(項目6)
前記始動時間(t)は、前記内燃機関(1)の前記ピストンシリンダ装置(2)の排除容積(Vzyl)に応じて予め設定される、
ことを特徴とする項目1から5のいずれか1項に記載の方法。
(項目7)
前記始動時間(t)が、前記内燃機関(1)の容積効率(λ)に応じて予め設定される、
ことを特徴とする項目1から6のいずれか1項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、補助モータを備えた内燃機関の概略図である。
図2図2は、始動プロセスの中の時間に対する回転速度の概略的なグラフである。
図3図3は、始動時間の計算を表わすグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、複数のピストンシリンダ装置2を有する内燃機関1を図示する概略図である。内燃機関1のピストンシリンダ装置2には、吸込マニホールド6によって燃料空気混合物(混合気)が供給される。吸込マニホールド6への燃料空気混合物の流れは、矢印によって象徴的に示されている。燃料供給装置7は計量して燃料を供給する。
【0021】
燃料供給装置7は、例えば気体混合装置、計量バルブまたはその他の通常の燃料供給装置でよい。
【0022】
スタータリング4によって内燃機関1のクランクシャフトに接続されている補助モータ5(スタータモータ)も図示されている。補助モータ5は、電気または空気圧で駆動することができる。電気駆動スタータの場合には、バッテリは通常はエネルギー保存手段として提供されており、空気圧スタータモータの場合には、圧縮空気保存手段がエネルギー供給源として機能する。
【0023】
始動プロセスにおいて、補助モータ5のピニオンがスタータリング4に係合し、内燃機関1がそれ自体で稼動を開始するまで内燃機関1を加速する。始動プロセスの間、ピストンシリンダ装置2は、吸込マニホールド6から気体(ガス)または混合物を要求する。
【0024】
ピストンシリンダ装置2と燃料供給装置7との間の吸込マニホールド6の部分は、本出願ではデッド容積3と称されている。始動プロセスにおいて、燃料供給装置による燃料の計量後、デッド容積3は、先ず、混合物がピストンシリンダ装置2に到達する前にその混合物で充填されなければならない。
【0025】
内燃機関1の回転毎のスループットと共にデッド容積3は、ピストンシリンダ装置2への混合物の移送に遅れを発生させる。この結果、始動プロセス中に、一定の時間の経過後にだけ、ピストンシリンダ装置2内に可燃性混合物が存在する。この時間は、ピストンシリンダ装置2のスループットと、補助モータ5の速度によって決定される内燃機関1の回転速度と、デッド容積3の大きさ(サイズ)とに由来している。ピストンシリンダ装置のポンプ効果(スループット)を解説する点において適切な基準は、シリンダ内の給気交換終了後に、理論上最大限に可能な充填量に対してどの程度の量の新規給気が可能であるかを示す容積効率である。
【0026】
始動速度が増すにつれて、排出されるデッド容積3もそれに対応して早くなる。所定の始動回転速度で、シリンダの数が増えるにつれて、排出されるデッド容積3もそれに対応して早くなる。所定の始動速度と所定のシリンダ数で、ピストンシリンダ装置2の排除容積が大きくなると、デッド容積3も早く排出される。
【0027】
図2は、X軸の時間tに対する、Y軸の内燃機関1の回転速度nのグラフである。このグラフは、始動プロセス中の内燃機関1の回転速度の典型的な変化を示している。したがって、補助モータ5によって内燃機関1を最大始動速度nmax(ここでは例えば180回転/分)にまで加速した後、内燃機関1の始動速度nに到達するまで始動プロセスが実行される。
【0028】
最大始動速度nmaxは、補助モータ5の出力、スタータバッテリの充電状態(電動補助モータの場合)、オイル温度および摩擦状態によって決定される。
【0029】
内燃機関1の始動速度nは、内燃機関1がそれ自体で最も早く稼動を開始する回転速度である。
【0030】
時間tで、補助モータ5は内燃機関1を最大始動速度nmaxに加速している。始動時間tは、内燃機関1がそれ自体で稼働し始め、始動速度nに到達する前にnmaxに保たれる時間を示している。
【0031】
最大始動速度nmaxは、始動プロセス中に補助モータ5が内燃機関1を維持する内燃機関1の回転速度である。内燃機関1がそれ自体の出力をピストンシリンダ装置2内の燃焼によって創出するとすぐに、内燃機関1はさらに加速する。内燃機関1が、ピストンシリンダ装置2内の燃焼によって始動速度nに到達すると、スタータは離脱する。
【0032】
図3aと図3bは、1実施例による始動時間tの計算のグラフである。
【0033】
用語的に明確にするため、この内燃機関1とは一般用語であることを強調する。この用語は、例えばピストンシリンダ装置2の種々のキャパシティによって相違する、種々の一連のエンジンを包含する。これら一連のエンジンには、ピストンシリンダ装置2の数によって異なる多様なタイプが存在する。したがってある一連のエンジンは、異なるシリンダ数のエンジンを含んでいるが、ある一連のエンジン内の個々のピストンシリンダ装置2の大きさ(容積)は実質的に同じであることもあり得る。
【0034】
先ず、異なるシリンダ数のタイプを含むことができるある一連のエンジンでは、基準始動時間trefが、所定のシリンダ数を備えたタイプのために確定される。
【0035】
本実施例では、基準始動時間trefが、20体のシリンダを備えたタイプのために決定される。さらに始動時間が、例えば12体のシリンダなどの異なる数のシリンダを備えたタイプのために決定される。12体のシリンダを備えたタイプの始動時間は、基準始動時間trefで除算される。この割算の結果は、シリンダの数を考慮するための因子である因子cylとなる。
【0036】
この関係は、図3aのグラフで示されている。図3aのグラフは、始動時間tに対してシリンダ数Nzylをプロットしたものである。20体のシリンダを備えたエンジンは、12体のシリンダを備えたエンジンの始動時間であるts_12よりも短い始動時間ts_20を有していることが分かるであろう。
【0037】
したがって因子cylは、前述の関係を表わし、同じ回転速度では、シリンダの数が多いほど、デッド容積3はより速く排出される。
【0038】
図示の実施例では、12体のシリンダを備えたタイプの確認された始動時間は、20体のシリンダを備えたタイプの1.27倍であり、すなわちこの特定の実施例では、その因子cylは1.27となる。因子cylは、その他の一連のエンジンでは異なる値となることは当然である。
【0039】
さらに、始動時間の影響は、第2の因子を考慮する。これは、図3bのグラフに示されている。始動回転速度を考慮するための因子を決定するため、2つの始動手順が異なる始動速度の同じエンジンで実行される。速い始動速度のほうが、より短い始動時間が達成される。
【0040】
図3bでは、最大始動速度nmaxが、始動時間tに対して示されている。速い始動速度nでは、始動時間がts_n2となる遅い始動速度nの場合よりも、短い始動時間ts_n1が達成されることが示されている。
【0041】
遅い始動速度の始動時間に対する速い始動速度の始動時間の比率は、始動速度を考慮する因子である因子nmaxを提供する。これは、デッド容積3が、回転速度が速いほうがより早く排出される前述の関係を表わしている。
【0042】
選択された内燃機関1のための最大に許容される必要な始動時間tmaxは、次の式で計算される。
max=tref・因子cyl・因子nmax
【0043】
シリンダの数と最大始動速度との関係が、基準測定によって知られると、ある一連のエンジン内の任意のシリンダ数と始動速度の計算が、因子cylと因子nmaxで可能となる。
【0044】
変動要因に応じて、始動時間は次の式で計算できる。
【0045】
吸込マニホールド6からピストンシリンダ装置2への体積流は、V´Zylによって特定され、m/sの単位を有している。体積流V´zylは、
V´Zyl=1/2*nmax*Nzyl*λ
の積となり、nmaxは最大始動速度であり、Nzylはシリンダ数であり、Vzylはシリンダの排除容量であり、λはシリンダの実際と理論上のガス交換の比率(容積効率)である。したがってこの式は、ピストンシリンダ装置2がnmaxの回転速度で、吸込マニホールドから要求する体積流を表わす。これらはエンジンのタイプに対して知られるパラメータである。
【0046】
容積効率λは、シリンダ内の給気交換終了後の、理論上の最大可能な充填量に関して利用可能な新規給気量を特定する。より大きな排除容積は、より大きい排出作用を提供し、その結果、より大きい体積流V´zylとなる。
【0047】
始動時間tは次のように計算できる。
=Vintake/V´Zyl
ここで、Vintakeはmを単位とするデッド容積3の空間容積である。
【符号の説明】
【0048】
使用用語リスト
1 内燃機関
2 ピストンシリンダ装置
3 デッド容積
4 スタータリング
5 補助モータ
6 吸込マニホールド
7 燃料供給装置
因子nmax 始動速度を考慮する因子
因子cyl シリンダの数を考慮する因子
max 最大に許容される必要な始動時間
始動時間
max 最大始動速度
始動速度
zyl シリンダ数
intake デッド容積3の空間容積(単位m
λ 実際と理論上のシリンダのガス交換の比率(容積効率)
図1
図2
図3