特許第6240655号(P6240655)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240655
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】無線基地局、無線端末及びプロセッサ
(51)【国際特許分類】
   H04W 8/22 20090101AFI20171120BHJP
   H04W 16/18 20090101ALI20171120BHJP
   H04W 24/10 20090101ALI20171120BHJP
【FI】
   H04W8/22
   H04W16/18
   H04W24/10
【請求項の数】5
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2015-249883(P2015-249883)
(22)【出願日】2015年12月22日
(62)【分割の表示】特願2015-123376(P2015-123376)の分割
【原出願日】2010年7月28日
(65)【公開番号】特開2016-67046(P2016-67046A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2016年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】キュリーズ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】福田 憲由
【審査官】 桑原 聡一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/002317(WO,A1)
【文献】 特表2011−527136(JP,A)
【文献】 Huawei,Location correlation for real-time measurements reporting[online], 3GPP TSG-RAN WG2♯70 R2-102910,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ra,2010年 5月10日
【文献】 Nokia Siemens Networks, Nokia Corporation,Immediate MDT effect on network load[online], 3GPP TSG-RAN WG2♯70 R2-103189,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ra,2010年 5月10日
【文献】 R2-093589 (TS 36.305 v0.2.0),2009年 5月20日,第8.1.3.1.1 節,URL,www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_66/Docs/R2-093589.zip
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24−7/26
H04W 4/00−99/00
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部を備え、前記制御部は、
自局に接続する無線端末に対して、端末能力情報の送信を要求する能力情報送信要求を送信する処理と、
前記無線端末から送信された前記端末能力情報を受信する処理と、
前記無線端末によって測定された参照信号の受信電力あるいは当該参照信号の受信品質を示す無線品質情報を含むMeasurement Report情報を受信する処理と、を実行し、
前記端末能力情報は、ネットワークの補助がなくても無線端末単体で位置情報を測定する測位システムを有するか否かを示す情報を含み、
該受信した端末能力情報は、前記無線端末に対して、前記無線端末のアイドル状態において測定した前記無線品質情報と前記アイドル状態において前記測位システムで測定された位置情報前記Measurement Report情報に含めて送信させるMDT測定処理を設定するか否かを判断するために使用され
前記MDT測定処理は、前記無線端末が前記無線品質情報を定期的に取得する処理を含むことを特徴とする無線基地局。
【請求項2】
前記制御部は、前記MDT測定処理を行う場合に、前記能力情報送信要求を送信する処理を実行する請求項1に記載の無線基地局。
【請求項3】
制御部を備え、前記制御部は、
接続先の無線基地局から、端末能力情報の送信を要求する能力情報送信要求を受信する処理と、
前記能力情報送信要求の受信に応じて、前記端末能力情報を前記無線基地局に送信する処理と、
前記無線基地局から送信された参照信号の受信電力あるいは当該参照信号の受信品質を示す無線品質情報を含むMeasurement Report情報を送信する処理と、を実行し、
前記端末能力情報は、ネットワークの補助がなくても無線端末単体で位置情報を測定する測位システムを有するか否かを示す情報を含み、
該送信した端末能力情報は、自無線端末に対して、自無線端末のアイドル状態において測定した前記無線品質情報と前記アイドル状態において前記測位システムで測定された位置情報前記Measurement Report情報に含めて送信させるMDT測定処理を設定するか否かを判断するために使用され
前記MDT測定処理は、前記無線端末が前記無線品質情報を定期的に取得する処理を含むことを特徴とする無線端末。
【請求項4】
前記制御部は、前記MDT測定処理が設定された場合、前記測位システムで測定した位置情報を、前記Measurement Report情報に含めて送信する処理を実行する請求項3に記載の無線端末。
【請求項5】
無線端末に備えられるプロセッサであって、
接続先の無線基地局から、端末能力情報の送信を要求する能力情報送信要求を受信する処理と、
前記能力情報送信要求の受信に応じて、前記端末能力情報を前記無線基地局に送信する処理と、
前記無線基地局から送信された参照信号の受信電力あるいは当該参照信号の受信品質を示す無線品質情報を含むMeasurement Report情報を送信する処理と、を実行し、
前記端末能力情報は、ネットワークの補助がなくても無線端末単体で位置情報を測定する測位システムを有するか否かを示す情報を含み、
該送信した端末能力情報は、自無線端末に対して、自無線端末のアイドル状態において測定した前記無線品質情報と前記アイドル状態において前記測位システムで測定された位置情報前記Measurement Report情報に含めて送信させるMDT測定処理を設定するか否かを判断するために使用され
前記MDT測定処理は、前記無線端末が前記無線品質情報を定期的に取得する処理を含むことを特徴とするプロセッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線基地局、無線端末及びプロセッサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線端末の地理的な位置を示す位置情報(以下、適宜「無線端末の位置情報」と略記する)を使用したサービスが提供されている。
【0003】
そのようなサービスの普及に伴い、無線通信システムの標準化団体である3GPP(3rd Generation Partnership Project)では、無線端末の位置情報を取得するための測位技術の標準化が進められている(非特許文献1参照)。
【0004】
測位技術には、無線端末が自身で位置情報を得るタイプと、ネットワーク側に設けられる位置情報サーバで位置情報を得るタイプとがある。なお、位置情報サーバは、E−SMLC(Evolved Serving Mobile Location Centre)と称されることがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】3GPP TS 36.305: “Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network (E-UTRAN); Stage 2 functional specification of User Equipment (UE) positioning in E-UTRAN”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、無線端末の位置情報を無線基地局が利用可能とすることで、高度な通信制御を実現可能になると考えられる。
【0007】
しかしながら、無線端末の位置情報を無線基地局が位置情報サーバから取得する場合には、無線基地局と位置情報サーバとの間でシグナリングが発生し、ネットワークのトラフィックを増大させる問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、無線端末の位置情報を取得する必要がある処理を行う場合でも、ネットワークのトラフィック増大を抑制できる無線基地局及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明は以下のような特徴を有している。まず、本発明に係る無線基地局の特徴は、自局に接続する無線端末に対して、前記無線端末の測位能力を示す端末能力情報の送信を要求する能力情報送信要求を送信する送信部(送受信部110)と、前記無線端末から送信された前記端末能力情報を受信する受信部(送受信部110)と、前記受信部が受信した前記端末能力情報に応じて、前記無線端末の地理的な位置を示す位置情報を前記無線端末から取得可能か否かを判別する判別部(能力判別部122)とを備えることを要旨とする。
【0010】
このような特徴によれば、無線基地局は、無線端末の測位能力を把握でき、無線端末の位置情報を無線端末自身から取得可能か否かを判別できる。よって、無線端末の位置情報を無線端末自身から取得できる場合には、位置情報サーバから無線端末の位置情報を取得する処理を省略できるため、無線基地局と位置情報サーバとの間でシグナリングが発生せず、ネットワークのトラフィック増大を抑制できる。
【0011】
本発明に係る無線基地局の他の特徴は、上記の特徴に係る無線基地局において、前記送信部は、無線中継局が前記無線端末のハンドオーバ候補となる場合に、前記能力情報送信要求を送信することを要旨とする。
【0012】
本発明に係る無線基地局の他の特徴は、上記の特徴に係る無線基地局において、前記送信部は、前記無線中継局に対して、前記無線中継局の測位能力を示す中継局能力情報の送信を要求する能力情報送信要求をさらに送信し、前記受信部は、前記無線中継局から送信された前記中継局能力情報をさらに受信し、前記判別部は、前記受信部が受信した前記中継局能力情報に応じて、前記無線中継局の地理的な位置を示す位置情報を前記無線中継局から取得可能か否かをさらに判別することを要旨とする。
【0013】
本発明に係る無線基地局の他の特徴は、上記の特徴に係る無線基地局において、前記無線端末及び前記無線中継局のそれぞれから位置情報を取得可能であると判別された場合に、前記無線端末及び前記無線中継局のそれぞれから位置情報を取得する取得部(位置情報取得部123)と、前記取得部によって取得された位置情報に基づいて前記無線端末のハンドオーバを制御するハンドオーバ制御部とをさらに備え、前記ハンドオーバ制御部は、前記無線端末と前記無線中継局との間の相対距離の変化量が所定量を超える場合に、前記無線中継局へのハンドオーバを規制することを要旨とする。
【0014】
本発明に係る無線基地局の他の特徴は、上記の特徴に係る無線基地局において、前記送信部は、無線端末を利用して無線品質情報及び位置情報を収集するための測定処理を行う場合に、前記能力情報送信要求を送信することを要旨とする。
【0015】
本発明に係る無線基地局の他の特徴は、上記の特徴に係る無線基地局において、自局に接続する複数の無線端末の中から、前記測定処理に使用する無線端末を選択する選択部(端末選択部127)をさらに備え、前記送信部は、前記能力情報送信要求を前記複数の無線端末に送信し、前記判別部は、前記受信部が前記複数の無線端末から受信する前記端末能力情報に応じて、前記複数の無線端末毎に測位能力を判別し、前記選択部は、判別された測位能力に応じて、前記測定処理に使用する無線端末を選択することを要旨とする。
【0016】
本発明に係る制御方法の特徴は、無線基地局の制御方法であって、自局に接続する無線端末に対して、前記無線端末の測位能力を示す端末能力情報の送信を要求する能力情報送信要求を送信するステップと、前記無線端末から送信された前記端末能力情報を受信するステップと、前記受信するステップで受信した前記端末能力情報に応じて、前記無線端末の地理的な位置を示す位置情報を前記無線端末から取得可能か否かを判別するステップとを備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、無線端末の位置情報を無線基地局が利用する場合でも、ネットワークのトラフィック増大を抑制できる無線基地局及びその制御方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係る無線通信システムの概略構成を示す図である。
図2】第1実施形態に係る無線端末の構成を示すブロック図である。
図3】第1実施形態に係るリレーノードの構成を示すブロック図である。
図4】第1実施形態に係る無線基地局の構成を示すブロック図である。
図5】第1実施形態に係る移動管理装置の構成を示すブロック図である。
図6】第1実施形態に係るハンドオーバ制御動作の動作例1を説明するための図である(その1)。
図7】第1実施形態に係るハンドオーバ制御動作の動作例1を説明するための図である(その2)。
図8】第1実施形態に係るハンドオーバ制御動作の動作例2を説明するための図である。
図9】第1実施形態に係るハンドオーバ制御動作の動作例3を説明するための図である。
図10】第1実施形態に係る無線通信システムの全体概略動作を示すシーケンス図である。
図11】第1実施形態に係る無線通信システムの動作パターン1を示す動作シーケンス図である。
図12】第1実施形態に係る無線通信システムの動作パターン2を示す動作シーケンス図である。
図13】第2実施形態に係る無線通信システムの概略構成を示す図である。
図14】第2実施形態に係る無線基地局の構成を示すブロック図である。
図15】第2実施形態に係る無線通信システムの動作シーケンスを示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下において、本発明の第1実施形態、第2実施形態、及びその他の実施形態を説明する。以下の各実施形態における図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。
【0020】
(1)第1実施形態
第1実施形態においては、(1.1)無線通信システムの構成、(1.2)無線通信システムの動作、(1.3)第1実施形態の効果の順に説明する。
【0021】
(1.1)無線通信システムの構成
(1.1.1)無線通信システムの概略構成
図1は、第1実施形態に係る無線通信システム1の概略構成を示す図である。
【0022】
第1実施形態に係る無線通信システム1は、無線基地局100、無線端末200、及びリレーノード300(無線中継局)を有する。無線通信システム1は、例えば、第4世代(4G)携帯電話システムとして位置づけられているLTE-Advancedに基づいて構成されている。
【0023】
無線基地局100は、例えば半径が数百m程度のセルを形成するマクロ基地局である。無線基地局100が形成するセルとは、無線基地局100に接続可能な通信エリアである。図1の例では、無線基地局100は、ビルBに設置されており、移動不能である。
【0024】
無線基地局100は、図示を省略するバックホールネットワークに接続されている。バックホールネットワークは有線通信網であり、無線基地局100はバックホールネットワークを介して他の無線基地局との基地局間通信を行うことができる。
【0025】
無線端末200及びリレーノード300は、無線基地局100が形成するセル内に位置している。無線端末200及びリレーノード300は、無線基地局100に無線により接続している。
【0026】
無線端末200は、ユーザUが所持しており、ユーザUの移動に伴って移動する。無線端末200は、携帯電話端末であってもよく、カード型の通信端末であってもよい。無線端末200は、無線基地局100に接続し、無線基地局100と直接的な無線通信を行う。無線端末200は、接続先の切り替え動作であるハンドオーバを実行する。無線端末200は、一の無線基地局から他の無線基地局へのハンドオーバだけでなく、一の無線基地局から一のリレーノードへのハンドオーバも実行できる。
【0027】
無線端末200は、受信する無線信号の無線品質の測定を行う。無線品質としては、周期的に送信される参照信号の受信電力(RSRP)、又は当該参照信号の受信品質(RSRQ)等である。無線端末200は、接続先の無線基地局100から受信する無線信号の無線品質だけでなく、受信可能な無線信号の無線品質を測定する。
【0028】
無線端末200は、定期的に無線品質を測定する。あるいは、無線端末200は、接続先の無線基地局100との間の無線品質のレベルが所定レベルを下回った場合等に無線品質を測定してもよい。
【0029】
無線端末200が受信する無線信号には、当該無線信号の送信元を識別する識別子(セルID)が含まれている。無線端末200は、無線品質の測定結果をセルIDと共に無線基地局100に報告する。このような報告は、LTEにおいて測定報告(Measurement Report)と称される。
【0030】
リレーノード300は、輸送機器Tに設置されており、輸送機器Tの移動に伴って移動する。図1では、輸送機器Tとしてバスを例示している。リレーノード300は、無線基地局100に無線により接続し、無線のバックホールを持つ小出力の中継基地局である。無線端末200がリレーノード300に接続した場合、リレーノード300は、無線端末200と無線基地局100との通信を中継する。すなわち、無線端末200は、リレーノード300に接続した場合には、リレーノード300を介して無線基地局100と間接的に通信する。
【0031】
無線基地局100は、無線基地局100に接続する無線端末200についてのハンドオーバの決定権を持っている。無線端末200は、ハンドオーバの指示を無線基地局100から受信した場合には、無線基地局100によって指定されたハンドオーバ先へのハンドオーバを実行する。
【0032】
具体的には、無線基地局100は、無線端末200から受信した測定報告に基づいて無線端末200の無線状態を把握し、他の無線基地局へのハンドオーバの必要性がある場合には、ハンドオーバ先の候補となる無線基地局に対し、バックホールネットワークを介してハンドオーバリクエストを送信する。そして、無線基地局100は、ハンドオーバ先候補の無線基地局からの応答を受信し、ハンドオーバ先候補の無線基地局が無線端末200を受け入れ可能であれば、無線端末200に対してハンドオーバ指示を送信する。無線端末200は、無線基地局100との接続を切断後、ハンドオーバ先の無線基地局に接続することでハンドオーバを完了する。このような手順の詳細については、例えば、3GPP TS36.300:“Evolved Universal Terrestrial Radio Access (E-UTRA) and Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network (E-UTRAN); Overall description”: Figure 10.1.2.1.1-1 Intra-MME/Serving Gateway HOを参照されたい。
【0033】
また、無線基地局100は、無線端末200から受信した測定報告に基づいて無線端末200の無線状態を把握し、リレーノード300へのハンドオーバの必要性がある場合には、ハンドオーバ先の候補となるリレーノード300に対し、ハンドオーバリクエストを送信する。そして、無線基地局100は、ハンドオーバ先候補のリレーノード300からの応答を受信し、ハンドオーバ先候補のリレーノード300が無線端末200を受け入れ可能であれば、無線端末200にハンドオーバ指示を送信する。無線端末200は、無線基地局100との接続を切断後、ハンドオーバ先のリレーノード300に接続することでハンドオーバを完了する。
【0034】
輸送機器Tに搭載されたリレーノード300が送信する無線信号は、輸送機器T外にも到達する。このため、当該輸送機器T外において無線基地局100に接続している無線端末200は、リレーノード300から受信する無線信号の無線品質のレベルが所定レベル以上であれば、リレーノード300が無線端末200のハンドオーバ先の候補になる。
【0035】
例えば、リレーノード300から無線端末200が受信する無線信号の無線品質のレベルがある閾値以下であり、無線基地局100から無線端末200が受信する無線信号の無線品質のレベルがある閾値以上であれば、リレーノード300が無線端末200のハンドオーバ先の候補になる。
【0036】
無線端末200が、輸送機器Tに設置されたリレーノード300へのハンドオーバを行った場合、リレーノード300が形成する通信エリアは狭いことから、無線端末200又はリレーノード300が移動すると、無線端末200はリレーノード300から無線基地局100へのハンドオーバを行う必要がある。
【0037】
図1の例では、信号待ちにより停止している輸送機器Tの周辺に無線端末200が位置しており、無線端末200が無線基地局100からリレーノード300へのハンドオーバを行った場合において、輸送機器Tが移動を再開すると、無線端末200はリレーノード300から無線基地局100へのハンドオーバを行う必要がある。結果として、無線基地局100からリレーノード300へのハンドオーバは無駄になる。
【0038】
一方で、無線端末200が輸送機器T内に存在し、輸送機器Tの移動に伴って移動する場合、無線端末200は、リレーノード300に接続することで、無線基地局100に接続するよりも良い条件で無線基地局100との通信を行うことができる。具体的には、リレーノード300は無線端末200よりも高度な無線通信機能を有するため、無線基地局100と良好な通信を行うことができる。また、無線端末200は、小さな送信電力での無線通信が可能であるため、バッテリの消費を抑制できる。
【0039】
そこで、無線基地局100は、無線端末200とリレーノード300との間の相対距離の変化が無い又は小さい状態が維持されるか否かに基づいて、無線基地局100からリレーノード300へのハンドオーバを制御する。相対距離の変化が無い又は小さい状態が維持される場合には、無線端末200が輸送機器T内に存在するとみなすことができる。また、相対距離の変化が無い又は小さい状態が維持されない場合には、無線端末200が輸送機器T外に存在するとみなすことができる。
【0040】
コアネットワーク700は、無線基地局100の上位装置である移動管理装置500と、位置情報を管理する位置情報サーバ600とを有する。LTEにおいて移動管理装置500は、MME(Mobility Management Entity)と称され、位置情報サーバ600はESMLC(Evolved Serving Mobile Location Centre)と称される。
【0041】
位置情報サーバ600は、無線端末200及びリレーノード300のそれぞれが複数の無線基地局から受信する無線信号の到達時間差や、当該無線信号に含まれる基地局ID等を収集して、無線端末200及びリレーノード300のそれぞれの位置情報を生成及び管理する。位置情報サーバ600(E−SMLC)の詳細については、非特許文献1を参照されたい。
【0042】
(1.1.2)無線通信システムの詳細構成
(1.1.2.1)無線端末の構成
図2は、無線端末200の構成を示すブロック図である。
【0043】
図2に示すように、無線端末200は、アンテナ201、アンテナ202、送受信部210、GPS受信機220、制御部230、記憶部240、及びバッテリ250を有する。
【0044】
送受信部210は、無線周波数帯の信号(すなわち無線信号)を処理する無線部211と、ベースバンド帯の信号を処理するベースバンド部212とを有する。送受信部210は、アンテナ201を介して、無線基地局100又はリレーノード300との間で無線信号の送受信を行う。
【0045】
GPS受信機220は、アンテナ202を介してGPS衛星からの信号を受信する。制御部230は、例えばCPUを用いて構成され、無線端末200が具備する各種の機能を制御する。記憶部240は、例えばメモリを用いて構成され、無線端末200の制御等に用いられる各種の情報を記憶する。バッテリ250は、無線端末200の各ブロックに供給される電力を蓄える。
【0046】
制御部230は、無線品質測定部231、位置測定部232、及びハンドオーバ実行部233を有する。
【0047】
無線品質測定部231は、送受信部210が受信する無線信号の無線品質を定期的又は不定期に測定する。送受信部210は、無線品質測定部231による測定結果の報告を無線基地局100に送信する。上述したように、無線品質はRSRP又はRSRQ等であるが、RSRP又はRSRQ等の値をそのまま送信する場合に限らず、RSRP又はRSRQ等のインデックスを測定結果の報告として無線基地局100に送信してもよい。
【0048】
位置測定部232は、GPS受信機220が受信した信号に基づいて、無線端末200の位置を測定する。送受信部210は、位置測定部232による測位結果の報告を無線基地局100に送信する。
【0049】
ハンドオーバ実行部233は、ハンドオーバの指示を送受信部210が受信した場合、ハンドオーバの指示により指定されたハンドオーバ先へのハンドオーバを実行する。
【0050】
なお、無線端末200は、アンテナ202、GPS受信機220、及び位置測定部232を有していないことがある。この場合、無線端末200は、自身で位置情報を得ることができない。
【0051】
このような測位能力に関する情報は、無線端末200の記憶部240に予め記憶される。無線端末200の制御部230は、無線基地局100からの要求に応じて、記憶部240に記憶されている測位能力の情報を無線基地局100に送信するよう送受信部210を制御する。
【0052】
(1.1.2.2)リレーノードの構成
図3は、リレーノード300の構成を示すブロック図である。
【0053】
図3に示すように、リレーノード300は、アンテナ301、アンテナ302、アンテナ303、送受信部310、送受信部320、GPS受信機330、制御部340、及び記憶部350を有する。
【0054】
送受信部310は、無線信号を処理する無線部311と、ベースバンド帯の信号を処理するベースバンド部312とを有する。送受信部310は、アンテナ301を介して、無線基地局100との間で無線信号の送受信を行う。
【0055】
送受信部320は、無線信号を処理する無線部321と、ベースバンド帯の信号を処理するベースバンド部322とを有する。送受信部320は、アンテナ302を介して、無線端末200との間で無線信号の送受信を行う。
【0056】
ただし、アンテナ301及び302は共通であってもよく、送受信部310及び320は共通であってもよい。その場合、送信・受信の切り替えを制御する機能を必要とする。
【0057】
GPS受信機330は、アンテナ303を介してGPS衛星からの信号を受信する。制御部340は、例えばCPUを用いて構成され、リレーノード300が具備する各種の機能を制御する。記憶部350は、例えばメモリを用いて構成され、リレーノード300の制御等に用いられる各種の情報を記憶する。
【0058】
制御部340は、位置測定部341を有する。位置測定部341は、GPS受信機330が受信した信号に基づいて、リレーノード300の位置を測定する。送受信部310は、位置測定部341による測位結果の報告を無線基地局100に送信する。
【0059】
なお、リレーノード300は、アンテナ303、GPS受信機330、及び位置測定部341を有していないことがある。この場合、リレーノード300は、自身で位置情報を得ることができない。
【0060】
このような測位能力に関する情報は、リレーノード300の記憶部350に予め記憶される。リレーノード300の制御部340は、無線基地局100からの要求に応じて、記憶部350に記憶されている測位能力の情報を無線基地局100に送信するよう送受信部310を制御する。
【0061】
(1.1.2.3)無線基地局の構成
図4は、無線基地局100の構成を示すブロック図である。
【0062】
図4に示すように、無線基地局100は、アンテナ101、送受信部110、制御部120、バックホール通信部130、及び記憶部140を有する。
【0063】
送受信部110は、無線信号を処理する無線部111と、ベースバンド帯の信号を処理するベースバンド部112とを有する。送受信部110は、アンテナ101を介して、無線端末200又はリレーノード300との間で無線信号の送受信を行う。
【0064】
制御部120は、例えばCPUを用いて構成され、無線基地局100が具備する各種の機能を制御する。バックホール通信部130は、バックホールネットワークを介して他の無線基地局との通信を行う。記憶部140は、例えばメモリを用いて構成され、無線基地局100の制御等に用いられる各種の情報を記憶する。
【0065】
制御部120は、能力情報取得部121、能力判別部122、位置情報取得部123、移動距離算出部124、相対距離算出部125、及びハンドオーバ制御部126を有する。
【0066】
能力情報取得部121は、自局に接続する無線端末200の測位能力を示す情報(以下、端末能力情報)と、自局に接続するリレーノード300の測位能力を示す情報(以下、リレーノード能力情報)とを取得する。
【0067】
能力判別部122は、端末能力情報に応じて、自局に接続する無線端末200の位置情報を無線端末200から取得可能か否かを判別する。また、能力判別部122は、リレーノード能力情報に応じて、自局に接続するリレーノード300の位置情報をリレーノード300から取得可能か否かを判別する。
【0068】
位置情報取得部123は、無線端末200及びリレーノード300のそれぞれから位置情報を取得可能であると判別された場合に、無線端末200及びリレーノード300のそれぞれから位置情報を取得する。具体的には、位置情報取得部123は、送受信部110が無線端末200から受信する測位結果の報告に基づいて無線端末200の位置情報を取得する。また、位置情報取得部123は、送受信部110がリレーノード300から受信する測位結果の報告に基づいてリレーノード300の位置情報を取得する。
【0069】
移動距離算出部124は、所定時間に渡る無線端末200の移動距離を示す値と、所定時間に渡るリレーノード300の移動距離を示す値とを算出する。移動距離算出部124による移動距離算出動作の詳細については後述する。
【0070】
相対距離算出部125は、位置情報取得部123が取得する位置情報に基づいて、所定時間に渡る無線端末200とリレーノード300との間の相対距離の変化量を示す値を算出する。相対距離算出部125は、第1の算出部に相当する。相対距離算出部125による相対距離算出動作の詳細については後述する。
【0071】
ハンドオーバ制御部126は、ハンドオーバに関する制御を行う。例えばハンドオーバ制御部126は、ハンドオーバ先の決定やハンドオーバに関するメッセージの生成を行う。
【0072】
ハンドオーバ制御部126は、相対距離算出部125によって算出された相対距離の変化量を示す値が閾値以下である場合に、無線端末200による無線基地局100からリレーノード300へのハンドオーバを指示するメッセージを生成する。送受信部110は、当該メッセージを無線端末200に送信する。ハンドオーバ制御部は、無線端末200とリレーノード300との間の相対距離の変化量を示す値が閾値を越える場合に、無線端末200による無線基地局100からリレーノード300へのハンドオーバを規制する。ハンドオーバ制御部126によるハンドオーバ制御動作の詳細については後述する。
【0073】
制御部120は、リレーノード300が無線端末200のハンドオーバ候補となる場合に、無線基地局100に接続する無線端末200に対して、無線端末200の測位能力を示す端末能力情報の送信を要求するCapability Requestメッセージ(能力情報送信要求)を送信するよう送受信部110を制御する。制御部120は、リレーノード300が無線端末200のハンドオーバ候補となる場合に、無線基地局100に接続するリレーノード300に対して、リレーノード300の測位能力を示す端末能力情報の送信を要求するCapability Requestメッセージを送信するよう送受信部110を制御する。
【0074】
(1.1.2.4)移動管理装置の構成
図5は、移動管理装置500の構成を示すブロック図である。
【0075】
図5に示すように、移動管理装置500は、送受信部510、制御部520、及び記憶部530を有する。
【0076】
送受信部510は、バックホールネットワークに接続されており、バックホールネットワークを介して無線基地局100及び位置情報サーバ600との通信を行う。送受信部510は、無線端末200及びリレーノード300のそれぞれの位置情報を位置情報サーバ600から受信する。制御部520は、例えばCPUを用いて構成され、移動管理装置500が具備する各種の機能を制御する。記憶部530は、例えばメモリを用いて構成され、移動管理装置500の制御等に用いられる各種の情報を記憶する。
【0077】
制御部520は、情報取得部521、移動距離算出部522、相対距離算出部523、及びハンドオーバ判断部524を有する。
【0078】
情報取得部521は、送受信部510が位置情報サーバ600から受信する位置情報を取得する。移動距離算出部522は、所定時間に渡る無線端末200及びリレーノード300のそれぞれの移動距離を示す値を算出する。移動距離算出部522による移動距離算出動作の詳細については後述する。
【0079】
相対距離算出部523は、情報取得部521が取得する位置情報に基づいて、所定時間に渡る無線端末200及びリレーノード300の間の相対距離の変化量を示す値を算出する。相対距離算出部523による相対距離算出動作の詳細については後述する。
【0080】
ハンドオーバ判断部524は、ハンドオーバに関する判断を行う。具体的には、ハンドオーバ判断部524は、リレーノード300への無線端末200のハンドオーバを許容するか否かを判断する。
【0081】
(1.2)無線通信システムの動作
以下において、第1実施形態に係る無線通信システム1の動作について説明する。
【0082】
(1.2.1)ハンドオーバ制御動作
無線基地局100又は移動管理装置500は、無線端末200及びリレーノード300のそれぞれの位置情報を取得し、取得した位置情報を用いて無線端末200のハンドオーバを制御する。
【0083】
以下において、そのようなハンドオーバ制御動作について、(1.2.1.1)動作例1、(1.2.1.2)動作例2、(1.2.1.3)動作例3の順に説明する。
【0084】
(1.2.1.1)動作例1
図6及び図7は、ハンドオーバ制御動作の動作例1を説明するための図である。
【0085】
図6及び図7に示すように、無線端末200とリレーノード300との間の無線品質のレベルが無線端末200と無線基地局100との間の無線品質のレベルよりも高い状態におけるタイミング0において、無線基地局100又は移動管理装置500は、リレーノード300の位置情報A(X1,Y1,Z1)と、無線端末200の位置情報B(X2,Y2,Z2)とを取得する。ここでは位置情報がX座標、Y座標、Z座標で定義されているが、Z座標(垂直方向)は必ずしも位置情報に含まれていなくてもよい。
【0086】
タイミング0から所定時間経過後であって、無線端末200とリレーノード300との間の無線品質のレベルが無線端末200と無線基地局100との間の無線品質のレベルよりも高い状態におけるタイミングtにおいて、無線基地局100又は移動管理装置500は、リレーノード300の位置情報A’(X1’,Y1’,Z1’)と、無線端末200の位置情報B’(X2’,Y2’,Z2’)とを取得する。
【0087】
無線基地局100又は移動管理装置500は、図6に記載の計算式を用いて、A, A’間の距離をリレーノード300の移動距離(MDA)として算出し、B, B’間の距離を無線端末200の移動距離(MDB)として算出する。
【0088】
リレーノード300の移動距離(MDA)又は無線端末200の移動距離(MDB)の少なくとも一方がゼロよりも大きい場合、無線基地局100又は移動管理装置500は、図6に記載の計算式に従って、A, B間の相対距離1(RD1)を算出し、A’, B’間の相対距離2(RD2)を算出する。さらに、無線基地局100又は移動管理装置500は、相対距離1(RD1)と相対距離2(RD2)との差分(例えば|RD1 - RD2|)を算出する。このようにして算出される相対距離の差分は、所定時間(0〜tの期間)に渡る無線端末200とリレーノード300との間の相対距離の変化量を示す。
【0089】
相対距離1(RD1)と相対距離2(RD2)との差分が閾値以下である場合、無線基地局100は、無線基地局100からリレーノード300へのハンドオーバの指示を無線端末200に送信する。これにより、無線端末200は、無線基地局100からリレーノード300へのハンドオーバを実行する。
【0090】
一方、リレーノード300の移動距離(MDA)又は無線端末200の移動距離(MDB)の両方がゼロである場合、無線基地局100又は移動管理装置500は、タイミングtからさらに所定時間経過後であって、無線端末200とリレーノード300との間の無線品質のレベルが無線端末200と無線基地局100との間の無線品質のレベルよりも高い状態におけるタイミング2tにおいて、リレーノード300の位置情報A”(X1”,Y1”,Z1”)と、無線端末200の位置情報B”(X2”,Y2”,Z2”)とを取得する。
【0091】
無線基地局100又は移動管理装置500は、A, A”間の距離をリレーノード300の移動距離(MDA’)として算出し、B, B”間の距離を無線端末200の移動距離(MDB’)として算出する。リレーノード300の移動距離(MDA’)又は無線端末200の移動距離(MDB’)の少なくとも一方がゼロよりも大きい場合、無線基地局100又は移動管理装置500は、A, B間の相対距離1(RD1)を算出し、A”, B”間の相対距離2(RD2’)を算出する。さらに、無線基地局100又は移動管理装置500は、相対距離1(RD1)と相対距離2(RD2’)との差分(例えば|RD1 - RD2’|)を算出する。当該差分が閾値以下である場合、無線基地局100は、無線基地局100からリレーノード300へのハンドオーバの指示を無線端末200に送信する。
【0092】
このように、無線基地局100は、無線端末200とリレーノード300との間の無線品質のレベルが無線端末200と無線基地局100との間の無線品質のレベルよりも高く、且つ、相対距離の変化量(差分)の値が閾値以下である場合に、無線基地局100からリレーノード300へのハンドオーバを無線端末200に実行させるよう制御する。
【0093】
また、無線基地局100は、無線端末200とリレーノード300との間の無線品質のレベルが無線端末200と無線基地局100との間の無線品質のレベルよりも高くても、相対距離の変化量(差分)の値が閾値よりも大きい場合には、無線基地局100からリレーノード300へのハンドオーバを無線端末200に実行させない(規制する)よう制御する。
【0094】
このようなハンドオーバ制御を行うことで、無線端末200が輸送機器T内に存在する場合にはリレーノード300へのハンドオーバを実行させ、無線端末200が輸送機器T内に存在しない場合にはリレーノード300へのハンドオーバを実行させないようにすることができる。
【0095】
また、無線端末200及びリレーノード300のそれぞれの移動距離がゼロである場合には、無線端末200が輸送機器T内に存在するか否かの判定が難しいため、無線端末200及びリレーノード300の少なくとも一方の移動距離がゼロよりも大きくなったときに相対距離の変化量(差分)の値を算出することで、無線端末200が輸送機器T内に存在するか否かの判定の精度が向上する。
【0096】
(1.2.1.2)動作例2
図8は、ハンドオーバ制御動作の動作例2を説明するための図である。
【0097】
図8に示すように、無線端末200とリレーノード300との間の無線品質のレベルが、無線端末200がリレーノード300に接続可能な状態にある第1の時刻において、無線基地局100又は移動管理装置500は、リレーノード300の位置情報A(X1,Y1,Z1)を取得する。無線端末200がリレーノード300に接続可能な状態とは、例えば、無線端末200とリレーノード300との間の無線品質のレベルが無線端末200と無線基地局100との間の無線品質のレベルよりも良好な状態を意味する。
【0098】
第1の時刻から所定時間経過後の第2の時刻において、無線基地局100又は移動管理装置500は、リレーノード300の位置情報A’(X1’,Y1’,Z1’)と、無線端末200の位置情報B(X2,Y2,Z2)とを取得する。
【0099】
無線基地局100又は移動管理装置500は、図8に記載の計算式を用いて、A, A’間の距離をリレーノード300の移動距離(MDA)として算出する。
【0100】
リレーノード300の移動距離(MDA)がゼロよりも大きい場合、無線基地局100又は移動管理装置500は、図8に記載の計算式を用いて、第2の時刻におけるA’, B間の相対距離(RD)を算出する。ここで、第1の時刻における無線端末200とリレーノード300との間の相対距離をゼロとみなしている点で、上述した動作例1とは異なる。すなわち、リレーノード300の送信電力は小さいため、無線端末200がリレーノード300に接続可能な状態にある場合には無線端末200がリレーノード300の近傍に位置すると推定できる。よって、第1の時刻における無線端末200とリレーノード300との間の相対距離はゼロとみなすことができる。
【0101】
A’, B間の相対距離(RD)は、所定時間(第1の時刻〜第2の時刻)に渡る無線端末200とリレーノード300との間の相対距離の変化量を示す。
【0102】
A’, B間の相対距離(RD)が閾値以下である場合、無線基地局100又は移動管理装置500は、無線端末200による無線基地局100からリレーノード300へのハンドオーバを許容(肯定)すると判断する。閾値は、図8においてリレーノード300を中心とした円に示すように、リレーノード300から所定距離(例えば輸送機器T内の範囲)と対応する値である。無線基地局100は、ハンドオーバを許容する場合に、リレーノード300へのハンドオーバを無線端末200に指示する。
【0103】
なお、リレーノード300の移動距離(MDA)がゼロである場合、無線基地局100又は移動管理装置500は、第2の時刻からさらに所定時間経過後の第3の時刻において、リレーノード300の位置情報A”(X1”,Y1”,Z1”)を取得する。このように、無線基地局100又は移動管理装置500は、リレーノード300の移動距離(MDA)がゼロである場合には、リレーノード300の位置情報の取得を所定回数だけ繰り返す。
【0104】
このようなハンドオーバ制御を行うことで、動作例1と同様に、無線端末200が輸送機器T内に存在する場合にはリレーノード300へのハンドオーバを実行させ、無線端末200が輸送機器T内に存在しない場合にはリレーノード300へのハンドオーバを実行させないようにすることができる。
【0105】
(1.2.1.3)動作例3
図9は、ハンドオーバ制御動作の動作例3を説明するための図である。
【0106】
図9に示すように、無線端末200とリレーノード300との間の無線品質のレベルが、無線端末200がリレーノード300に接続可能な状態にある第1の時刻において、無線基地局100又は移動管理装置500は、リレーノード300の位置情報A(X1,Y1,Z1)を取得する。無線端末200がリレーノード300に接続可能な状態とは、例えば、無線端末200とリレーノード300との間の無線品質のレベルが無線端末200と無線基地局100との間の無線品質のレベルよりも良好な状態を意味する。
【0107】
第1の時刻から所定時間経過後の第2の時刻において、無線基地局100又は移動管理装置500は、リレーノード300の位置情報A’(X1’,Y1’,Z1’)と、無線端末200の位置情報B(X2,Y2,Z2)とを取得する。
【0108】
無線基地局100又は移動管理装置500は、図9に記載の計算式を用いて、A, A’間の距離をリレーノード300の移動距離(MDA)として算出し、A, B間の距離を無線端末200の移動距離(MDB)として算出する。ここで、第1の時刻における無線端末200とリレーノード300との間の相対距離をゼロとみなし、第1の時刻における無線端末200の位置をリレーノード300の位置と等しいものとする点で、上述した動作例1とは異なる。すなわち、リレーノード300の送信電力は小さいため、無線端末200がリレーノード300に接続可能な状態にある場合には無線端末200がリレーノード300の近傍に位置すると推定できる。よって、第1の時刻における無線端末200とリレーノード300との間の相対距離はゼロとみなすことができる。
【0109】
リレーノード300の移動距離(MDA)又は無線端末200の移動距離(MDB)の少なくとも一方がゼロよりも大きい場合、無線基地局100又は移動管理装置500は、図9に記載の計算式を用いて、第2の時刻におけるA’, B間の相対距離(RD)を算出する。第1の時刻における無線端末200とリレーノード300との間の相対距離をゼロとみなしているため、算出されるA’, B間の相対距離(RD)は、所定時間(第1の時刻〜第2の時刻)に渡る無線端末200とリレーノード300との間の相対距離の変化量を示す。
【0110】
A’, B間の相対距離(RD)が閾値以下である場合、無線基地局100又は移動管理装置500は、無線端末200による無線基地局100からリレーノード300へのハンドオーバを許容(肯定)すると判断する。閾値は、図9においてリレーノード300を中心とした円に示すように、リレーノード300から所定距離(例えば輸送機器T内の範囲)と対応する値である。無線基地局100は、ハンドオーバを許容する場合に、リレーノード300へのハンドオーバを無線端末200に指示する。
【0111】
なお、リレーノード300の移動距離(MDA)及び無線端末200の移動距離(MDB)がゼロである場合、無線基地局100又は移動管理装置500は、第2の時刻からさらに所定時間経過後の第3の時刻において、リレーノード300の位置情報A”(X1”,Y1”,Z1”)及び無線端末200の位置情報B’(X2’,Y2’,Z2’)を取得する。このように、無線基地局100又は移動管理装置500は、リレーノード300の移動距離(MDA)及び無線端末200の移動距離(MDB)がゼロである場合には、リレーノード300及び無線端末200の位置情報の取得を所定回数だけ繰り返す。
【0112】
このようなハンドオーバ制御を行うことで、動作例1と同様に、無線端末200が輸送機器T内に存在する場合にはリレーノード300へのハンドオーバを実行させ、無線端末200が輸送機器T内に存在しない場合にはリレーノード300へのハンドオーバを実行させないようにすることができる。
【0113】
(1.2.2)無線通信システムの動作シーケンス
次に、第1実施形態に係る無線通信システム1の動作シーケンスについて、(1.2.2.1)全体概略動作、(1.2.2.2)動作パターン1、(1.2.2.3)動作パターン2の順に説明する。
【0114】
(1.2.2.1)全体概略動作
図10は、第1実施形態に係る無線通信システム1の全体概略動作を示すシーケンス図である。ここでは、無線基地局100に接続する無線端末200及びリレーノード300のそれぞれが通信実行中の状態(RRC Connected状態)であるものとする。
【0115】
図10に示すように、ステップS11において、無線基地局100は、無線端末200における無線品質の測定制御(Measurement Control)に関する情報を無線端末200に送信する。
【0116】
ステップS12及びS13において、無線基地局100は、通信の制御に使用する制御データ以外のデータであるパケットデータを無線端末200及びリレーノード300と送受信する。パケットデータの送受信は以降においても継続される。
【0117】
ステップS14において、無線基地局100は、無線端末200の測位能力を示す端末能力情報の送信を要求するCapability Requestメッセージ(能力情報送信要求)を無線端末200に送信する。
【0118】
ステップS15において、無線基地局100は、リレーノード300の測位能力を示す端末能力情報の送信を要求するCapability Requestメッセージ(能力情報送信要求)をリレーノード300に送信する。
【0119】
ステップS16において、無線端末200は、無線基地局100からのCapability Requestメッセージに応じて、無線端末200の測位能力を示すCapability Indicationメッセージ(端末能力情報)を無線基地局100に送信する。
【0120】
ステップS17において、リレーノード300は、無線基地局100からのCapability Requestメッセージに応じて、リレーノード300の測位能力を示すCapability Indicationメッセージ(中継局能力情報)を無線基地局100に送信する。
【0121】
ステップS18において、無線基地局100は、無線端末200からのCapability Indicationメッセージが示す能力情報と、リレーノード300からのCapability Indicationメッセージが示す能力情報とを記憶する。
【0122】
ステップS19において、無線基地局100は、無線端末200における無線品質の測定結果の報告に使用される無線リソースを無線端末200に割り当て、割り当て結果を示す情報(UL allocation)を無線端末200に送信する。
【0123】
ステップS20において、無線端末200は、無線基地局100からの制御に従い、受信する無線信号の無線品質を測定し、測定結果を示すMeasurement Reportメッセージを無線基地局100に送信する。
【0124】
ステップS21において、無線基地局100は、無線端末200からのMeasurement Reportメッセージに基づいて、無線端末200にハンドオーバを行わせる必要があるか否かを判断する。具体的には、例えば、無線基地局100は、無線基地局100に対応する無線品質と、他のノード(他の無線基地局又はリレーノード300)に対応する無線品質とを比較し、他のノードに対応する無線品質の方が無線基地局100に対応する無線品質よりも良好である場合には、無線端末200にハンドオーバを行わせる必要があると判断する。
【0125】
ステップS22において、無線基地局100は、無線端末200のハンドオーバ先(ハンドオーバターゲット)がリレーノード300であるか否かを判断する。無線基地局100は、例えば、Measurement Reportメッセージに含まれるセルIDに基づいて、ハンドオーバターゲットがリレーノード300であるか否かを判断する。ハンドオーバターゲットがリレーノード300である場合、以降の処理に進む。
【0126】
ステップS23において、無線基地局100は、ステップS18で記憶した能力情報に応じて、無線端末200の位置情報を無線端末200から取得可能か否か、及び、リレーノード300の位置情報をリレーノード300から取得可能か否かを判別する。
【0127】
そして、無線端末200及びリレーノード300のそれぞれから位置情報を取得可能であると判別された場合、後述する動作パターン1に従った動作が開始される。動作パターン1は、上述した動作例1〜3の何れかのハンドオーバ制御を主に無線基地局100が行う動作パターンである。
【0128】
一方、無線端末200及びリレーノード300のそれぞれから位置情報を取得不能であると判別された場合、後述する動作パターン2に従った動作が開始される。動作パターン2は、上述した動作例1〜3の何れかのハンドオーバ制御を主に移動管理装置500が行う動作パターンである。
【0129】
(1.2.2.2)動作パターン1
図11は、第1実施形態に係る無線通信システム1の動作パターン1を示す動作シーケンス図である。ここでは、上述した動作例1に従ったハンドオーバ制御動作を行うものとする。
【0130】
ステップS101において、無線基地局100は、測位結果の情報の送信を要求する位置情報要求を無線端末200に送信する。
【0131】
ステップS102において、無線基地局100は、測位結果の情報の送信を要求する位置情報要求をリレーノード300に送信する。
【0132】
ステップS103において、無線端末200は、位置情報要求を受信すると、測位を行うとともに、測位結果を示す位置情報報告を無線基地局100に送信する。
【0133】
ステップS104において、リレーノード300は、位置情報要求を受信すると、測位を行うとともに、測位結果を示す位置情報報告を無線基地局100に送信する。
【0134】
ステップS105において、無線基地局100は、無線端末200からの位置情報報告に基づいて、無線端末200の位置情報を記憶する。また、無線基地局100は、リレーノード300からの位置情報報告に基づいて、リレーノード300の位置情報を記憶する。
【0135】
ステップS106において、無線基地局100は、一定時間を計時する。一定時間の経過後、ステップS107において、無線基地局100は、Measurement Controlに関する情報を無線端末200に送信する。
【0136】
ステップS108において、無線基地局100は、無線端末200における無線品質の測定結果の報告に使用される無線リソースを無線端末200に割り当て、割り当て情報(UL allocation)を無線端末200に送信する。
【0137】
ステップS109において、無線端末200は、無線基地局100からの制御に従い、受信する無線信号の無線品質を測定し、測定報告(Measurement Reportメッセージ)を無線基地局100に送信する。
【0138】
ステップS110において、無線基地局100は、ステップS115で無線端末200から受信した測定報告に基づいて、無線端末200にハンドオーバを行わせる必要があるか否かを判断する。具体的には、例えば、無線基地局100は、無線基地局100に対応する無線品質と、リレーノード300に対応する無線品質とを比較し、リレーノード300に対応する無線品質の方が無線基地局100に対応する無線品質よりも良好である場合には、リレーノード300へのハンドオーバを無線端末200に行わせる必要があると判断する。リレーノード300へのハンドオーバを無線端末200に行わせる必要があると判断される場合、以降の処理に進む。
【0139】
ステップS111において、無線基地局100は、位置情報要求を無線端末200に送信する。
【0140】
ステップS112において、無線基地局100は、位置情報要求をリレーノード300に送信する。
【0141】
ステップS113において、無線端末200は、位置情報要求を受信すると、改めて測位を行うとともに、測位結果を示す位置情報報告を無線基地局100に送信する。
【0142】
ステップS114において、リレーノード300は、位置情報要求を受信すると、改めて測位を行うとともに、測位結果を示す位置情報報告を無線基地局100に送信する。
【0143】
ここで、無線基地局100が無線端末200及びリレーノード300から位置情報報告を受信してから、無線基地局100からの位置情報再要求により、無線基地局100が無線端末200及びリレーノード300から改めて受信するまでの時間を所定時間とする。
【0144】
ステップS115において、無線基地局100は、無線端末200及びリレーノード300それぞれの移動距離を算出する。無線端末200及びリレーノード300の両移動距離が0である場合、処理がステップS106に戻る。ただし、無線基地局100がこの処理を繰り返すことが出来る回数は限られているものとし、この回数を所定回数とする(図7参照)。無線端末200及びリレーノード300の少なくとも一方の移動距離が0よりも大きい場合、処理がステップS116に進む。
【0145】
ステップS116において、無線基地局100は、ステップS105で記憶しておいた無線端末200及びリレーノード300の位置情報より相対距離1を算出し、ステップS113及びS114で受信した位置情報報告に基づいて相対距離2を算出する。そして、無線基地局100は、相対距離1と相対距離2との差分を算出する。
【0146】
ステップS117において相対距離1と相対距離2との差分が閾値以下である場合、ステップS118において、無線基地局100は、無線基地局100からリレーノード300へのハンドオーバを決定し、無線基地局100からリレーノード300へのハンドオーバの指示を無線端末200に送信する。一方、ステップS117において相対距離1と相対距離2との差分が閾値よりも大きい場合、無線基地局100は、無線基地局100からリレーノード300へのハンドオーバを取り止める。
【0147】
(1.2.2.3)動作パターン2
図12は、第1実施形態に係る無線通信システム1の動作パターン2を示す動作シーケンス図である。ここでは、上述した動作例2又は3に従ったハンドオーバ制御動作を行うものとする。
【0148】
ステップS201において、無線基地局100は、ハンドオーバ要求メッセージをリレーノード300に送信する。なお、無線基地局100でハンドオーバ対象がリレーノード300と判断した場合には、リレーノード300へのハンドオーバ要求メッセージの送信をせずに、ハンドオーバの判断を要求する判断要求メッセージを移動管理装置500へ送信しても構わない。
【0149】
ステップS202において、リレーノード300は、無線基地局100からのハンドオーバ要求メッセージに応じて、コアネットワーク700にハンドオーバを判断してもらうため、移動管理装置500に宛てて判断要求メッセージを送信する。リレーノード300がコアネットワーク700と接続する時は無線基地局100を介すため、無線基地局100は移動管理装置500への判断要求メッセージが送信されたことを確認できる。
【0150】
ステップS203において、無線基地局100は、移動管理装置500への判断要求メッセージが自局を通過するときに、ハンドオーバに関連するタイマーを止める。なお、無線基地局100は、所定時間後において、無線端末200に無線品質の測定要求を可能にするための処理を行う。
【0151】
ステップS204において、移動管理装置500は、判断要求メッセージを受信する。ステップS205において、移動管理装置500は、リレーノード300の位置情報を要求する位置情報要求メッセージを位置情報サーバ600に送信する。
【0152】
ステップS206及びS207において、位置情報サーバ600は、位置情報要求メッセージに応じて、リレーノード300の位置情報を測定する。
【0153】
ステップS208において、位置情報サーバ600は、位置情報の測定結果を移動管理装置500に送信する。
【0154】
ステップS209において、移動管理装置500は、リレーノード300の位置情報を保持する。
【0155】
ステップS210において、移動管理装置500は、所定のインターバルの経過を待つ。
【0156】
ステップS211において、移動管理装置500は、リレーノード300及び無線端末200のそれぞれの位置情報を要求する位置情報要求メッセージを位置情報サーバ600に送信する。
【0157】
ステップS212〜S214において、位置情報要求メッセージを受信した位置情報サーバ600は、リレーノード300及び無線端末200のそれぞれの位置情報を測定する。
【0158】
ステップS215において、位置情報サーバ600は、位置情報の測定結果を移動管理装置500に送信する。
【0159】
なお、初めに位置情報サーバ600から移動管理装置500に位置情報の通知(ステップS208)が届いてから、次に位置情報の通知(ステップS215)が届くまでの時間を所定時間とする。
【0160】
ステップS218において、移動管理装置500は、上述した動作例に従って移動距離の算出を行う。動作例2については、リレーノード300の移動距離が0である場合に、ステップS209に処理が戻り、ステップS209〜S215が繰り返される。動作例3については、無線端末200及びリレーノード300のそれぞれの移動距離が0である場合に、ステップS209に処理が戻り、ステップS209〜S215が繰り返される。ただし、移動管理装置500がこの処理を繰り返すことが出来る回数は限られているものとし、この回数を所定回数とする。
【0161】
所定回数経過後、または位置情報の再通知後、動作例2については、移動管理装置500は、リレーノード300の移動距離が0でないと判断した場合に、無線端末200及びリレーノード300のそれぞれの位置情報から相対距離を算出する。動作例3については、移動管理装置500は、無線端末200及びリレーノード300のそれぞれの移動距離が0でない場合に、無線端末200及びリレーノード300のそれぞれの位置情報から相対距離を算出する。
【0162】
移動管理装置500は、算出された相対距離が閾値以下である場合には、無線端末200による無線基地局100からリレーノード300へのハンドオーバを許容(肯定)すると判断し、算出された相対距離が閾値以上であると判断した場合には、無線端末200による無線基地局100からリレーノード300へのハンドオーバを拒否(否定)すると判断する。
【0163】
ステップS219において、移動管理装置500は、判断結果の情報を無線基地局100に送信する。
【0164】
一方、ステップS216において、無線基地局100は、無線端末200が無線品質の測定結果を無線基地局100に通知できるようにリソースの割り当てを行う。
【0165】
ステップS217において、無線端末200は、無線基地局100からの指示に従い、無線基地局100に無線品質の測定結果を通知する。測定結果には、無線端末200とリレーノード300との間の無線品質の情報が含まれる。
【0166】
ステップS220において、無線基地局100は、ステップS219で移動管理装置500から受信した判断結果の情報と、ステップS217で無線端末200から受信した測定結果とに基づいて、無線端末200による無線基地局100からリレーノード300へのハンドオーバを実行させるか否かを決定する。
【0167】
ここで、無線基地局100は、移動管理装置500によるハンドオーバの判断結果が許可(肯定)であり、且つ、無線端末200とリレーノード300との間の無線品質が良好である場合に、無線端末200による無線基地局100からリレーノード300へのハンドオーバを実行させると決定する。ハンドオーバを実行させると決定した場合には、リレーノード300による受け入れ可否を確認し、その後にリレーノード300へのハンドオーバの指示を無線端末200に送信する。
【0168】
(1.3)第1実施形態の効果
以上説明したように、第1実施形態によれば、無線基地局100は、無線端末200とリレーノード300との間の無線品質のレベルが無線端末200と無線基地局100との間の無線品質のレベルよりも高くても、相対距離の変化量(差分)の値が閾値よりも大きい場合には、無線基地局100からリレーノード300へのハンドオーバを無線端末200に実行させないよう制御する。
【0169】
このようなハンドオーバ制御を行うことで、無線端末200が輸送機器T内に存在する場合にはリレーノード300へのハンドオーバを実行させ、無線端末200が輸送機器T内に存在しない場合にはリレーノード300へのハンドオーバを実行させないようにすることができるため、無駄なハンドオーバによる処理負荷及び通信遅延の発生を防止できる。
【0170】
特に、無線基地局100からリレーノード300へのハンドオーバは、無線基地局間でのハンドオーバと比較してオーバーヘッドが大きくなる。第1実施形態によれば、無線基地局100からリレーノード300へのハンドオーバが行われる確率を低減できるため、オーバーヘッドを抑制できる。
【0171】
また、無線端末200及び無線基地局100の両方の移動距離がゼロである場合には相対距離の変化量(差分)の値を算出せずに、無線端末200及び無線基地局100の少なくとも一方の移動距離がゼロよりも大きくなったときに相対距離の変化量(差分)の値を算出することで、判定精度を向上させることができる。
【0172】
第1実施形態では、ハンドオーバ制御部126は、無線端末200とリレーノード300との間の無線品質のレベルが無線端末200と無線基地局100との間の無線品質のレベルよりも高い場合に、位置情報要求を無線端末200及びリレーノード300に送信する。すなわち、ハンドオーバ制御部126は、無線端末200とリレーノード300との間の無線品質のレベルが無線端末200と無線基地局100との間の無線品質のレベル以下である場合には、位置情報要求を無線端末200及びリレーノード300に送信しない。
【0173】
これにより、ハンドオーバを行う必要があるときにのみ位置情報報告を無線端末200及びリレーノード300に送信させることができる。したがって、無線端末200及びリレーノード300が位置情報報告を定期的に送信する場合と比較して、オーバーヘッドを低減できる。
【0174】
第1実施形態に係る動作例2又は3では、ハンドオーバターゲットがリレーノード300であった場合、無線端末200とリレーノード300との間の相対距離は無いもの(ゼロ)とみなすことで、ハンドオーバ要求がなされた時点での無線端末200の位置情報を測定する手法が省けるため、ハンドオーバに関わる計算を削減できる。
【0175】
また、動作例2又は3によれば、リレーノード300が移動していた場合、リレーノード300における所定時間経過後の位置におけるリレーノード300と無線端末200との間の相対距離に基づいてリレーノード300へのハンドオーバを制御することで、無線端末200の移動距離を算出する処理が削減できる。
【0176】
第1実施形態では、位置情報の測定をコアネットワーク700(具体的には、位置情報サーバ600)で行うことにより、GPSなど無線端末200単体あるいはリレーノード300単体で位置情報が測定できるシステムを有していないケースにも適用できるとともに、無線端末200―無線基地局100―コアネットワーク700間の制御信号が削減でき、トラフィックの負荷が低減できる。
【0177】
第1実施形態では、無線基地局100は、無線端末200及びリレーノード300のそれぞれの測位能力に応じて、上述した動作パターン1及び動作パターン2のうち適切な動作パターンを選択できる。すなわち、無線基地局100は、無線端末200及びリレーノード300の測位能力を把握し、無線端末200の位置情報を無線端末200自身から取得可能か否かを判別するとともに、リレーノード300の位置情報をリレーノード300自身から取得可能か否かを判別する。
【0178】
よって、無線基地局100は、無線端末200の位置情報を無線端末200自身から取得できる場合には、位置情報サーバ600から無線端末200の位置情報を取得する処理を省略できる。また、リレーノード300の位置情報をリレーノード300自身から取得できる場合には、位置情報サーバ600からリレーノード300の位置情報を取得する処理を省略できる。従って、動作パターン1によれば、無線基地局100と位置情報サーバ600との間でシグナリングが発生せず、ネットワークのトラフィック増大を抑制できる。
【0179】
(2)第2実施形態
第2実施形態では、無線端末200を利用して無線品質情報及び位置情報を収集するための測定処理を行うケースについて説明する。このような技術は、MDT(Minimization of Drive Test)と称される。
【0180】
無線通信システムでは、無線基地局100を設置した後に、周辺にビルが建設されたり、周辺基地局の設置状況が変化したりすると、当該無線基地局100の周辺の無線伝搬環境が変化する。
【0181】
このため、従来は、測定機材を搭載した測定用車両を用いて、無線伝搬環境に関する無線品質情報を定期的に収集することが行われている。具体的には、測定用車両により、通信エリア内の各位置で無線品質を測定する。
【0182】
このような収集方法は、工数が多く費用が高いという課題がある。この課題に対し、MDTは、ユーザの無線端末200を使用して、収集作業を自動化しようとするものである(3GPP TR36.805及びTS37.320参照)。
【0183】
(2.1)無線通信システムの全体構成
図13は、第2実施形態に係る無線通信システム1の概略構成を示す図である。なお、図13では、第1実施形態で説明した移動管理装置500や位置情報サーバ600の図示を省略している。
【0184】
図13に示すように、第2実施形態に係る無線通信システム1は、無線基地局100、及び複数の無線端末200を有する。無線通信システム1は、例えば、第4世代(4G)携帯電話システムとして位置づけられているLTE-Advancedに基づいて構成されている。
【0185】
無線基地局100は、例えば半径が数百m程度のセルを形成するマクロ基地局である。無線基地局100が形成するセルとは、無線基地局100に接続可能な通信エリアである。無線基地局100は、図示を省略するバックホールネットワークに接続されている。
【0186】
無線端末200は、無線基地局100が形成するセル内に位置し、無線基地局100に無線により接続して通信を行っている。
【0187】
無線端末200は、ユーザUが所持しており、ユーザUの移動に伴って移動する。無線端末200は、携帯電話端末であってもよく、カード型の通信端末であってもよい。
【0188】
各無線端末200は、受信する無線信号の無線品質の測定を行う。無線品質としては、周期的に送信される参照信号の受信電力(RSRP)、又は当該参照信号の受信品質(RSRQ)等である。無線端末200は、接続先の無線基地局100から受信する無線信号の無線品質だけでなく、受信可能な無線信号の無線品質を測定する。無線端末200は、定期的に無線品質を測定する。あるいは、無線端末200は、接続先の無線基地局100との間の無線品質のレベルが所定レベルを下回った場合等に無線品質を測定してもよい。
【0189】
各無線端末200は、GPSなど無線端末200単体で位置情報が測定できるシステムを有しているものと、そのような測位システムを有していないものとがある。測位システムを有していない無線端末200について位置情報を取得する場合には、無線基地局100は、位置情報サーバ600から当該位置情報を取得する必要があるため、無線基地局100と位置情報サーバ600との間でシグナリングが発生する。また、アイドル状態の無線端末は、正確な位置が測定できない。
【0190】
無線基地局100は、MDT configurationに従い、無線端末200を利用して無線品質情報及び位置情報を収集する。ここで、GPSなどの測位システムを有していない無線端末200をMDTに使用すると、シグナリングによるネットワーク(バックホール)のトラフィック増大に繋がる。また、アイドル状態の無線端末は、正確な位置が測定できない。そこで、無線端末が有している位置測定能力(測位能力)に基づいて、MDTに使用する無線端末を選択する。
【0191】
(2.2)無線基地局の構成
図14は、第2実施形態に係る無線基地局100の構成を示すブロック図である。
【0192】
図14に示すように、第2実施形態に係る無線基地局100は、アンテナ101、送受信部110、制御部120、バックホール通信部130、及び記憶部140を有する。
【0193】
送受信部110は、無線信号を処理する無線部111と、ベースバンド帯の信号を処理するベースバンド部112とを有する。送受信部110は、アンテナ101を介して、無線端末200との間で無線信号の送受信を行う。
【0194】
制御部120は、例えばCPUを用いて構成され、無線基地局100が具備する各種の機能を制御する。バックホール通信部130は、バックホールネットワークを介して他の無線基地局との通信を行う。記憶部140は、例えばメモリを用いて構成され、無線基地局100の制御等に用いられる各種の情報を記憶する。
【0195】
制御部120は、能力情報取得部121、能力判別部122、端末選択部127、及び測定制御部128を有する。
【0196】
能力情報取得部121は、自局に接続する無線端末200の測位能力を示す情報(端末能力情報)を取得する。
【0197】
能力判別部122は、端末能力情報に応じて、自局に接続する無線端末200の位置情報を無線端末200から取得可能か否かを判別する。能力判別部122は、複数の無線端末200からの端末能力情報に応じて、無線端末自身で位置情報を取得可能か否かを複数の無線端末200毎に判別する。
【0198】
端末選択部127は、能力判別部122による判別結果に基づき、測定処理(MDT)に使用する無線端末200を選択する。
【0199】
測定制御部128は、無線端末200による無線品質情報及び位置情報の測定を制御する。
【0200】
(2.3)無線通信システムの動作
図15は、第2実施形態に係る無線通信システム1の動作シーケンスを示すシーケンス図である。
【0201】
図15に示すように、ステップS301において、無線基地局100は、MDTによる測定処理を開始するか否かを確認する。MDTによる測定処理は、定期的に行われてもよく、オペレータのサーバからの指示に応じて行われてもよい。MDTによる測定処理を開始する場合、処理がステップS302に進む。
【0202】
ステップS302において、無線基地局100は、無線端末200の測位能力を示す端末能力情報の送信を要求するCapability Requestメッセージ(能力情報送信要求)を各無線端末200に送信する。
【0203】
ステップS303において、各無線端末200は、無線基地局100からのCapability Requestメッセージに応じて、自端末の測位能力を示すCapability Indicationメッセージ(端末能力情報)を無線基地局100に送信する。
【0204】
ステップS304において、無線基地局100は、各無線端末200からの端末能力情報に応じて、無線端末200がどのような位置測定能力(測位能力)を有しているのかを判別する。そして、無線基地局100は、無線端末200の測位能力の情報を元に、測定処理(MDT)に使用する無線端末200を選択する。
【0205】
ステップS305において、無線基地局100は、測定処理(MDT)に使用する無線端末200に対し、無線品質情報及び位置情報の測定制御(MDT indication)に関する情報を送信する。
【0206】
測定処理(MDT)に使用する無線端末200は、無線基地局100からの制御に従い、受信する無線信号の無線品質及び位置を測定し、ネットワークから要求があった場合に測定結果を示すMeasurement Reportメッセージを無線基地局100に送信する。無線基地局100は、このようにして収集される無線品質情報及び位置情報を、オペレータのサーバに送信する、あるいは、自局の通信パラメータの調整に使用する。
【0207】
(2.4)第2実施形態の効果
以上説明したように、第2実施形態によれば、無線基地局100は、例えば、複数の無線端末200のうち、GPSなどの測位システムを有している無線端末200を選択してMDTに使用することによって、位置情報サーバ600から無線端末200の位置情報を取得する処理を省略できる。従って、位置情報サーバ600との間のシグナリングによるネットワーク(バックホール)のトラフィック増大を抑制できる。また、アイドル状態の無線端末を用いてMDTを行う場合でも、正確な位置が測定できる。
【0208】
(3)その他の実施形態
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0209】
上述した実施形態では、LTE-Advancedに基づく無線通信システムを例示したが、LTE-Advancedに限らず、例えばモバイルWiMAX(IEEE 802.16e)に基づく無線通信システム等、他の無線通信システムに対して本発明を適用してもよい。
【0210】
このように本発明は、ここでは記載していない様々な実施形態等を包含するということを理解すべきである。したがって、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0211】
100…無線基地局、101…アンテナ、110…送受信部、111…無線部、120…制御部、121…能力情報取得部、122…ベースバンド部、122…能力判別部、123…位置情報取得部、124…移動距離算出部、125…相対距離算出部、126…ハンドオーバ制御部、127…端末選択部、128…測定制御部、130…バックホール通信部、140…記憶部、200…無線端末、201…アンテナ、202…アンテナ、210…送受信部、211…無線部、212…ベースバンド部、220…GPS受信機、230…制御部、231…無線品質測定部、232…位置測定部、233…ハンドオーバ実行部、240…記憶部、250…バッテリ、300…リレーノード、301,302,303…アンテナ、310,320…送受信部、312…ベースバンド部、320…送受信部、321…無線部、322…ベースバンド部、330…GPS受信機、340…制御部、341…位置測定部、350…記憶部、500…移動管理装置、510…送受信部、520…制御部、521…情報取得部、522…移動距離算出部、523…相対距離算出部、524…ハンドオーバ判断部、530…記憶部、600…位置情報サーバ、700…コアネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15