(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、2つの電位の誤差を増幅して出力する半導体装置(いわゆる誤差増幅器)が
知られている。誤差増幅器には、目的に応じて多様な用途が存在する。例えば、誤差増幅
器を用いて、上述のパルス幅変調方式によって制御される電源回路を構成することが可能
である。
【0005】
図10は、当該電源回路が有するDCDCコンバータの構成例を示す図である。
図10
に示すDCDCコンバータは、電力変換部1と、出力検出部2と、制御回路部3とを有す
る。ここで、
図10に示す電源回路は、外部から電力変換部1に入力される直流電圧(V
in)を直流電圧(Vout)へと変換するDCDCコンバータである。なお、出力検出
部2は、直流電圧(Vout)を基にフィードバック信号を検出する機能を有する。また
、制御回路部3は、当該フィードバック信号に応じて電力変換部1における電力変換を制
御する機能を有する。
【0006】
具体的には、電力変換部1は、スイッチ11と、ダイオード12と、インダクタ13と
、キャパシタ14とを有する。なお、スイッチ11の一方の端子は、直流電圧(Vin)
が入力される端子に電気的に接続されている。また、ダイオード12のアノードは接地電
位が入力される端子に電気的に接続され、カソードはスイッチ11の他方の端子に電気的
に接続されている。また、インダクタ13の一端はスイッチ11の他方の端子及びダイオ
ード12のカソードに電気的に接続され、他端は直流電圧(Vout)を出力する端子に
電気的に接続されている。また、キャパシタ14の一方の電極は直流電圧(Vout)を
出力する端子に電気的に接続され、他方の電極は接地電位が入力される端子に電気的に接
続されている。
【0007】
出力検出部2は、抵抗21と、抵抗22とを有する。なお、抵抗21の一端は、直流電
圧(Vout)を出力する端子に電気的に接続されている。また、抵抗22の一端は抵抗
21の他端に電気的に接続され、他端は接地電位が入力される端子に電気的に接続されて
いる。
【0008】
制御回路部3は、誤差増幅器31と、パルス幅変調器32と、スイッチ駆動回路33と
、参照電圧発生器34とを有する。そして、誤差増幅器31は、トランスコンダクタンス
アンプ311と、キャパシタ312とを有する。また、パルス幅変調器32は、比較器3
21と、三角波発振器322とを有する。
【0009】
なお、トランスコンダクタンスアンプ311の反転入力端子(−)は抵抗21の他端及
び抵抗22の一端に電気的に接続され、非反転入力端子(+)は参照電圧発生器34が参
照電圧(Vref)を供給する配線に電気的に接続されている。また、キャパシタ312
の一方の電極はトランスコンダクタンスアンプ311の出力端子に電気的に接続され、他
方の電極は接地されている。また、比較器321の非反転入力端子(+)はトランスコン
ダクタンスアンプ311の出力端子及びキャパシタ312の一方の電極に電気的に接続さ
れ、反転入力端子(−)は三角波発振器322が三角波を供給する配線に電気的に接続さ
れている。また、スイッチ駆動回路33の入力端子は比較器321の出力端子に電気的に
接続されている。また、スイッチ駆動回路33の出力信号によって、スイッチ11のスイ
ッチングが制御される。
【0010】
次いで、
図10に示すDCDCコンバータの動作について以下に詳述する。
【0011】
電力変換部1が出力する直流電圧(Vout)は、外部に存在する負荷に対して供給さ
れると共に出力検出部2が有する抵抗21、22によって抵抗分圧される。当該抵抗分圧
された電圧は、フィードバック信号として制御回路部3が有する誤差増幅器31に入力さ
れる。誤差増幅器31では、当該フィードバック信号と参照電圧の誤差を増幅して誤差信
号として出力する。当該誤差信号は、パルス幅変調器32が有する比較器321に入力さ
れる。比較器321は、当該誤差信号と三角波の比較を基にして2値の信号を出力する。
当該2値の信号は、スイッチ駆動回路33を介してスイッチ11のスイッチングを制御す
る信号となる。電力変換部1では、スイッチ11によって直流電圧(Vin)が供給され
るか否かが選択される。すなわち、スイッチ11がオン状態となるデューティー比によっ
て、電力変換部1に供給される電力が制御される。
【0012】
端的に述べると、
図10に示すDCDCコンバータは、パルス幅変調方式を利用したフ
ィードバック制御によって制御されるDCDCコンバータ(いわゆるパルス幅変調方式に
よって制御される降圧型DCDCコンバータ)である。
【0013】
図10に示すDCDCコンバータにおいては、直流電圧(Vin)又は直流電圧(Vo
ut)が供給される負荷のインピーダンスなどの変動に伴う直流電圧(Vout)の変動
に対し、直流電圧(Vout)が一定となるように、制御回路部3においてスイッチ11
がオン状態となるデューティー比が制御される。具体的には、当該変動が生じた場合には
、フィードバック信号が変動することになる。これにより、フィードバック信号と参照電
圧に誤差が生じ、当該誤差に応じたトランスコンダクタンスアンプ311の出力電流によ
ってキャパシタ312の充放電が生じる。そして、当該充放電によって誤差信号が変動す
る。その結果、比較器321が出力する2値の信号のデューティー比が変動することで、
スイッチ11がオン状態となるデューティー比が制御される。
【0014】
なお、この動作によりフィードバック信号が参照電圧と等しくなるように制御され、等
しくなった時に当該動作は終了する。すなわち、当該動作は、キャパシタ312の充放電
が収束し、誤差増幅器31が出力する誤差信号が固定される(定常状態となる)ことによ
って終了する。
【0015】
ここで、
図10に示すDCDCコンバータにおいて消費電力の低減を図るためには、誤
差増幅器31などにスタンバイ機能を付加することが効果的である。ただし、誤差増幅器
31をスタンバイ状態とした場合、キャパシタ312の一方の電極に保持された電荷がト
ランスコンダクタンスアンプ311を介して消失する(固定された誤差信号が消失する)
。よって、誤差増幅器31がスタンバイ状態から復帰した際には、フィードバック信号と
参照電圧が等しくなるまでキャパシタ312に対する充放電が行われる。その結果、直流
電圧(Vout)が所望の値となるまでに動作の遅延が発生する。他方、当該遅延は、図
10に示すDCDCコンバータにおいてキャパシタ312の保持容量を低減する又はキャ
パシタ312を削除すれば発生しない。ただし、キャパシタ312はフィードバック制御
における位相補償の役割を果たしている。そのため、キャパシタ312の保持容量の低減
などを行う場合には、DCDCコンバータの出力が発振する蓋然性が高くなる。
【0016】
以上の内容が本発明の一態様が解決しようとする課題の一例である。端的に述べると、
本発明の一態様は、2つの電位の誤差を増幅して出力する半導体装置におけるスタンバイ
状態からの復帰に際して生じる動作遅延を抑制することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一態様の半導体装置は、チャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタ
によって、トランスコンダクタンスアンプの出力端子とキャパシタの一方の電極の電気的
な接続を制御することを要旨とする。ここで、酸化物半導体は、バンドギャップが広く、
且つ真性キャリア密度が低いという特徴を有する。よって、酸化物半導体層に生じるオフ
電流を極めて低くすることが可能である。このような特徴は、他の半導体(例えば、シリ
コン)にはない酸化物半導体に特有の特徴である。
【0018】
具体的には、本発明の一態様は、第1の信号と第2の信号の誤差を増幅し、誤差信号と
して出力する半導体装置であって、第1の入力端子が第1の信号を供給する配線に電気的
に接続され、第2の入力端子が第2の信号を供給する配線に電気的に接続されるトランス
コンダクタンスアンプと、ゲートがスタンバイ信号を供給する配線に電気的に接続され、
ソース及びドレインの一方がトランスコンダクタンスアンプに電気的に接続されるトラン
ジスタと、一方の電極がトランジスタのソース及びドレインの他方に電気的に接続され、
他方の電極が固定電位を供給する配線に電気的に接続されるキャパシタと、を有し、トラ
ンジスタは、チャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタであり、トランスコン
ダクタンスアンプの出力端子、及びトランジスタのソース及びドレインの一方が電気的に
接続するノードの電位、又は、トランジスタのソース及びドレインの他方、及びキャパシ
タの一方の電極が電気的に接続するノードの電位が誤差信号となる半導体装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様の半導体装置は、チャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタ
によって、トランスコンダクタンスアンプの出力端子とキャパシタの一方の電極の電気的
な接続を制御することが可能である。よって、トランスコンダクタンスアンプがスタンバ
イ状態となる場合であっても、当該トランジスタをオフ状態とすることでキャパシタの一
方の電極において長期に渡って電荷の保持を行うことが可能となる。また、トランスコン
ダクタンスアンプをスタンバイ状態から復帰する際には、当該トランジスタをオン状態と
することで、キャパシタの充放電を早期に収束させることができる。これにより、早期に
当該半導体装置の動作を定常状態とすることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明
は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態
および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、
本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0022】
<半導体装置の構成例>
図1(A)、(B)は、本発明の一態様の半導体装置の構成例を示す図である。
図1(
A)に示す半導体装置100は、信号(In1)と信号(In2)の誤差を増幅し、誤差
信号(V)として出力する機能を有する。具体的には、半導体装置100は、反転入力端
子(−)
が信号(In1)を供給する配線に電気的に接続され、非反転入力端子(+)が信号(I
n2)を供給する配線に電気的に接続されるトランスコンダクタンスアンプ101と、ゲ
ートが信号(In3)を供給する配線に電気的に接続され、ソース及びドレインの一方が
トランスコンダクタンスアンプ101の出力端子に電気的に接続されるトランジスタ10
2と、一方の電極がトランジスタ102のソース及びドレインの他方に電気的に接続され
、他方の電極が固定電位を供給する配線に電気的に接続されるキャパシタ103とを有す
る。なお、トランジスタ102は、チャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタ
である。
【0023】
図1(A)に示す半導体装置100においては、トランスコンダクタンスアンプ101
の反転入力端子(−)に入力される信号(In1)及び非反転入力端子(+)に入力され
る信号(In2)に応じてトランスコンダクタンスアンプ101の出力電流が制御される
。そして、トランジスタ102がオン状態であれば、当該出力電流によってキャパシタ1
03の充放電が生じる。この結果、トランスコンダクタンスアンプ101の出力端子及び
キャパシタ103の一方の電極が電気的に接続するノードの電位が誤差信号(V)となる
。なお、トランジスタ102のスイッチングは、外部から入力される信号(In3)によ
って制御される。
【0024】
加えて、
図1(A)に示す半導体装置100においては、トランスコンダクタンスアン
プ101をスタンバイ状態とすることが可能である。
【0025】
ここで、
図1(A)に示す半導体装置においては、信号(In3)を制御することによ
って、トランスコンダクタンスアンプ101がスタンバイ状態となる前にトランジスタ1
02をオフ状態とし、且つトランスコンダクタンスアンプ101がスタンバイ状態から復
帰した後にトランジスタ102をオン状態とすることが可能である。よって、
図1(A)
に示す半導体装置においては、トランスコンダクタンスアンプ101をスタンバイ状態と
する期間において、キャパシタ103の一方の電極に保持された電荷の消失を抑制するこ
とが可能である。これにより、
図1(A)に示す半導体装置においては、トランスコンダ
クタンスアンプ101がスタンバイ状態から復帰する際におけるキャパシタ103の充放
電を早期に収束させることができる。これにより、早期に当該半導体装置の動作を定常状
態とすることが可能となる。
【0026】
なお、本発明の一態様の半導体装置の構成として、
図1(B)に示す半導体装置150
を適用することも可能である。ここで、
図1(B)に示す半導体装置150は、誤差信号
(V)として電位が出力されるノードの位置が
図1(A)に示す半導体装置100と異な
る。具体的には、
図1(A)に示す半導体装置100においては、トランジスタ102の
ソース及びドレインの一方とトランスコンダクタンスアンプ101の出力端子が電気的に
接続するノードの電位を誤差信号(V)として出力しているのに対して、
図1(B)に示
す半導体装置150においては、トランジスタ102のソース及びドレインの他方とキャ
パシタ103の一方の電極が電気的に接続するノードの電位を誤差信号(V)として出力
している。その他の点について、
図1(B)に示す半導体装置150は、
図1(A)に示
す半導体装置100と同様であるため、詳細な説明については上述の説明を援用すること
とする。
【0027】
<酸化物半導体について>
以下では、酸化物半導体について詳述する。
【0028】
酸化物半導体は、少なくともIn、Ga、Sn及びZnから選ばれた一種以上の元素を
含有する。例えば、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導
体、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体、In−Sn−Zn
−O系酸化物半導体、In−Al−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Ga−Zn−O系酸
化物半導体、Al−Ga−Zn−O系酸化物半導体、若しくはSn−Al−Zn−O系酸
化物半導体、二元系金属の酸化物であるIn−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Zn−O
系酸化物半導体、Al−Zn−O系酸化物半導体、Zn−Mg−O系酸化物半導体、Sn
−Mg−O系酸化物半導体、In−Mg−O系酸化物半導体、若しくはIn−Ga−O系
酸化物半導体、又は一元系金属の酸化物であるIn−O系酸化物半導体、Sn−O系酸化
物半導体、若しくはZn−O系酸化物半導体などである。また、上記酸化物半導体にIn
とGaとSnとZn以外の元素、例えばSiを含ませてもよい。
【0029】
なお、In−Ga−Zn−O系酸化物半導体とは、インジウム(In)、ガリウム(G
a)、亜鉛(Zn)を有する酸化物半導体、という意味であり、その組成比は問わない。
【0030】
また、酸化物半導体層として、化学式InMO
3(ZnO)
m(m>0)で表記される
薄膜を用いることができる。ここで、Mは、Zn、Ga、Al、Mn及びCoから選ばれ
た一または複数の金属元素を示す。例えばMとして、Ga、Ga及びAl、Ga及びMn
、またはGa及びCoなどがある。
【0031】
また、酸化物半導体としてIn−Zn−O系の材料を用いる場合、原子数比で、In/
Zn=0.5〜50、好ましくはIn/Zn=1〜20、さらに好ましくはIn/Zn=
1.5〜15とする。Znに対するInの原子数比を好ましい前記範囲とすることで、上
述の半導体素子における電界効果移動度を向上させることができる。ここで、化合物の原
子数比がIn:Zn:O=X:Y:Zのとき、Z>1.5X+Yとする。
【0032】
また、酸化物半導体層としては、電子供与体(ドナー)となる水分又は水素などの不純
物が低減されて高純度化されることが好ましい。具体的には、高純度化された酸化物半導
体層は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass S
pectrometry)による水素濃度の測定値が、5×10
19/cm
3以下、好ま
しくは5×10
18/cm
3以下、より好ましくは5×10
17/cm
3以下、更に好ま
しくは1×10
16/cm
3以下である。また、ホール効果測定により測定できる酸化物
半導体層のキャリア密度は、1×10
14/cm
3未満、好ましくは1×10
12/cm
3未満、更に好ましくは1×10
11/cm
3未満である。
【0033】
ここで、酸化物半導体層中の、水素濃度の分析について触れておく。半導体層中の水素
濃度測定は、二次イオン質量分析法で行う。SIMS分析は、その原理上、試料表面近傍
や、材質が異なる層との積層界面近傍のデータを正確に得ることが困難であることが知ら
れている。そこで、層中における水素濃度の厚さ方向の分布をSIMSで分析する場合、
対象となる層が存在する範囲において、値に極端な変動がなく、ほぼ一定の値が得られる
領域における平均値を、水素濃度として採用する。また、測定の対象となる層の厚さが小
さい場合、隣接する層内の水素濃度の影響を受けて、ほぼ一定の値が得られる領域を見い
だせない場合がある。この場合、当該層が存在する領域における、水素濃度の極大値又は
極小値を、当該層中の水素濃度として採用する。更に、当該層が存在する領域において、
極大値を有する山型のピーク、極小値を有する谷型のピークが存在しない場合、変曲点の
値を水素濃度として採用する。
【0034】
スパッタリング法を用いて酸化物半導体層を作製する場合には、ターゲット中の水素濃
度のみならず、チャンバー内に存在する水、水素を極力低減しておくことが重要である。
具体的には、当該形成以前にチャンバー内をベークする、チャンバー内に導入されるガス
中の水、水素濃度を低減する、及びチャンバーからガスの排気する排気系における逆流を
防止するなどを行うことが効果的である。
【0035】
また、酸化物半導体層は非晶質であっても良いが、結晶性を有していても良い。例えば
、酸化物半導体層を、c軸配向を有した結晶(C Axis Aligned Crys
tal:CAACとも呼ぶ)を含む酸化物半導体膜(CAAC−OS膜とも呼ぶ)を用い
て構成することが可能である。
【0036】
具体的には、CAAC−OS膜は、CAAC−OS膜が成膜される膜表面に平行なa−
b面において六角形の格子を有する結合を有し、なおかつ、a−b面に概略垂直なc軸配
向を有する、六方晶構造の亜鉛を含む結晶を有する。
【0037】
CAAC−OSは、非晶質の酸化物半導体と比較して、金属と酸素の結合が秩序化して
いる。すなわち、酸化物半導体が非晶質の場合は、個々の金属原子によって金属原子に配
位している酸素原子の配位数が異なることも有り得るが、CAAC−OSでは金属原子に
配位している酸素原子の数はほぼ一定となる。そのため、微視的な酸素の欠損が減少し、
水素原子(水素イオンを含む)又はアルカリ金属原子の脱着による電荷の移動や不安定性
を減少させる効果がある。
【0038】
したがって、酸化物半導体層をCAAC−OS膜で構成することによって、チャネルが
酸化物半導体層に形成されるトランジスタの信頼性を向上させることが可能である。
【0039】
なお、スパッタリング法を用いてCAAC−OS膜を成膜する場合には、雰囲気中の酸
素ガス比が高い方が好ましい。例えば、アルゴン及び酸素の混合ガス雰囲気中でスパッタ
リング法を行う場合には、酸素ガス比を30%以上とすることが好ましく、40%以上と
することがより好ましい。雰囲気中からの酸素の補充によって、CAAC−OS膜の結晶
化が促進されるからである。
【0040】
また、スパッタリング法を用いてCAAC−OS膜を成膜する場合には、CAAC−O
S膜が成膜される基板を150℃以上に加熱しておくことが好ましく、170℃以上に加
熱しておくことがより好ましい。基板温度の上昇に伴って、CAAC−OS膜の結晶化が
促進されるからである。
【0041】
また、CAAC−OS膜に対して、窒素雰囲気中又は真空中において熱処理を行った後
には、酸素雰囲気中又は酸素と他のガスとの混合雰囲気中において熱処理を行うことが好
ましい。先の熱処理で生じる酸素欠損を後の熱処理における雰囲気中からの酸素供給によ
って復元することができるからである。
【0042】
また、CAAC−OS膜が成膜される膜表面(被成膜面)は平坦であることが好ましい
。よって、CAAC−OS膜が成膜される前に当該被成膜表面に対して化学機械研磨(C
hemical Mechanical Polishing:CMP)などの平坦化処
理を行うことが好ましい。また、当該被成膜面の平均ラフネスは、0.5nm以下である
ことが好ましく、0.3nm以下であることがより好ましい。
【0043】
次いで、CAAC−OS膜の結晶構造について
図2乃至
図4を参照して詳述する。なお
、特に断りがない限り、
図2乃至
図4は上方向をc軸方向とし、c軸方向と直交する面を
ab面とする。なお、単に上半分、下半分という場合、ab面を境にした場合の上半分、
下半分をいう。また、
図2において、丸で囲まれたOは4配位のOを示し、二重丸で囲ま
れたOは3配位のOを示す。
【0044】
図2(A)に、1個の6配位のInと、Inに近接の6個の4配位の酸素原子(以下4
配位のO)と、を有する構造を示す。Inが1個に対して、近接の酸素原子のみ示した構
造を、ここではサブユニットと呼ぶ。
図2(A)の構造は、八面体構造をとるが、簡単の
ため平面構造で示している。なお、
図2(A)の上半分および下半分にはそれぞれ3個ず
つ4配位のOがある。
図2(A)に示すサブユニットは電荷が0である。
【0045】
図2(B)に、1個の5配位のGaと、Gaに近接の3個の3配位の酸素原子(以下3
配位のO)と、Gaに近接の2個の4配位のOと、を有する構造を示す。3配位のOは、
いずれもab面に存在する。
図2(B)の上半分および下半分にはそれぞれ1個ずつ4配
位のOがある。また、Inも5配位をとるため、
図2(B)に示す構造をとりうる。
図2
(B)に示すサブユニットは電荷が0である。
【0046】
図2(C)に、1個の4配位のZnと、Znに近接の4個の4配位のOと、を有する構
造を示す。
図2(C)の上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位の
Oがある。
図2(C)に示すサブユニットは電荷が0である。
【0047】
図2(D)に、1個の6配位のSnと、Snに近接の6個の4配位のOと、を有する構
造を示す。
図2(D)の上半分には3個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位の
Oがある。
図2(D)に示すサブユニットは電荷が+1となる。
【0048】
図2(E)に、2個のZnを含むサブユニットを示す。
図2(E)の上半分には1個の
4配位のOがあり、下半分には1個の4配位のOがある。
図2(E)に示すサブユニット
は電荷が−1となる。
【0049】
ここでは、サブユニットのいくつかの集合体を1グループと呼び、複数のグループの集
合体を1ユニットと呼ぶ。
【0050】
ここで、これらのサブユニット同士が結合する規則について説明する。Inの上半分の
3個のOは下方向に3個の近接Inを有し、下半分の3個のOは上方向に3個の近接In
を有する。Gaの上半分の1個のOは下方向に1個の近接Gaを有し、下半分の1個のO
は上方向に1個の近接Gaを有する。Znの上半分の1個のOは下方向に1個の近接Zn
を有し、下半分の3個のOは上方向に3個の近接Znを有する。この様に、金属原子の上
方向の4配位のOの数と、そのOの下方向にある近接金属原子の数は等しく、同様に金属
原子の下方向の4配位のOの数と、そのOの上方向にある近接金属原子の数は等しい。O
は4配位なので、下方向にある近接金属原子の数と、上方向にある近接金属原子の数の和
は4になる。従って、金属原子の上方向にある4配位のOの数と、別の金属原子の下方向
にある4配位のOの数との和が4個のとき、金属原子を有する二種のサブユニット同士は
結合することができる。例えば、6配位の金属原子(InまたはSn)が上半分の4配位
のOを介して結合する場合、4配位のOが3個であるため、5配位の金属原子(Gaまた
はIn)または4配位の金属原子(Zn)のいずれかと結合することになる。
【0051】
これらの配位数を有する金属原子は、c軸方向において、4配位のOを介して結合する
。また、このほかにも、層構造の合計の電荷が0となるようにサブユニット同士が結合し
て1グループを構成する。
【0052】
図3(A)に、In−Sn−Zn−O系の層構造を構成する1グループのモデル図を示
す。
図3(B)に、3つのグループで構成されるユニットを示す。なお、
図3(C)は、
図3(B)の層構造をc軸方向から観察した場合の原子配列を示す。
【0053】
図3(A)においては、簡単のため、3配位のOは省略し、4配位のOは個数のみ示し
、例えば、Sn原子の上半分および下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがあることを
丸枠の3として示している。同様に、
図3(A)において、In原子の上半分および下半
分にはそれぞれ1個ずつ4配位のOがあり、丸枠の1として示している。また、同様に、
図3(A)において、下半分には1個の4配位のOがあり、上半分には3個の4配位のO
があるZn原子と、上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOが
あるZn原子とを示している。
【0054】
図3(A)において、In−Sn−Zn−O系の層構造を構成するグループは、上から
順に4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるSn原子が、4配位のOが1個ずつ
上半分および下半分にあるIn原子と結合し、そのIn原子が、上半分に3個の4配位の
OがあるZn原子と結合し、そのZn原子の下半分の1個の4配位のOを介して4配位の
Oが3個ずつ上半分および下半分にあるIn原子と結合し、そのIn原子が、上半分に1
個の4配位のOがあるZn2個からなるサブユニットと結合し、このサブユニットの下半
分の1個の4配位のOを介して4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるSn原子
と結合している構成である。このグループを複数結合してユニットを構成する。
【0055】
ここで、3配位のOおよび4配位のOの場合、結合1本当たりの電荷はそれぞれ−0.
667、−0.5と考えることができる。例えば、In(6配位または5配位)、Zn(
4配位)、Sn(5配位または6配位)の電荷は、それぞれ+3、+2、+4である。従
って、Snを含むサブユニットは電荷が+1となる。そのため、Snを含む層構造を形成
するためには、電荷+1を打ち消す電荷−1が必要となる。電荷−1をとる構造として、
図2(E)に示すように、2個のZnを含むサブユニットが挙げられる。例えば、Snを
含むサブユニットが1個に対し、2個のZnを含むサブユニットが1個あれば、電荷が打
ち消されるため、層構造の合計の電荷を0とすることができる。
【0056】
また、Inは5配位および6配位のいずれもとることができるものとする。具体的には
、
図3(B)に示したユニットとすることで、In−Sn−Zn−O系の結晶(In
2S
nZn
3O
8)を得ることができる。なお、得られるIn−Sn−Zn−O系の層構造は
、In
2SnZn
2O
7(ZnO)
m(mは0または自然数。)とする組成式で表すこと
ができる。なお、In−Sn−Zn−O系の結晶は、mの数が大きいと結晶性が向上する
ため、好ましい。
【0057】
また、このほかにも、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系酸化物
や、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn−O系酸化物(IGZOとも表記する。
)、In−Al−Zn−O系酸化物、Sn−Ga−Zn−O系酸化物、Al−Ga−Zn
−O系酸化物、Sn−Al−Zn−O系酸化物や、二元系金属の酸化物であるIn−Zn
−O系酸化物、Sn−Zn−O系酸化物、Al−Zn−O系酸化物、Zn−Mg−O系酸
化物、Sn−Mg−O系酸化物、In−Mg−O系酸化物や、In−Ga−O系酸化物、
一元系金属の酸化物であるIn−O系酸化物、Sn−O系酸化物、Zn−O系酸化物など
を用いた場合も同様である。
【0058】
例えば、
図4(A)に、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する1グループのモデ
ル図を示す。
【0059】
図4(A)において、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成するグループは、上から
順に4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるIn原子が、4配位のOが1個上半
分にあるZn原子と結合し、そのZn原子の下半分の3個の4配位のOを介して、4配位
のOが1個ずつ上半分および下半分にあるGa原子と結合し、そのGa原子の下半分の1
個の4配位のOを介して、4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるIn原子と結
合している構成である。このグループを複数結合してユニットを構成する。
【0060】
図4(B)に3つのグループで構成されるユニットを示す。なお、
図4(C)は、
図4
(B)の層構造をc軸方向から観察した場合の原子配列を示している。
【0061】
ここで、In(6配位または5配位)、Zn(4配位)、Ga(5配位)の電荷は、そ
れぞれ+3、+2、+3であるため、In、ZnおよびGaのいずれかを含むサブユニッ
トは、電荷が0となる。そのため、これらのサブユニットの組み合わせであればグループ
の合計の電荷は常に0となる。
【0062】
また、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成するグループは、
図4(A)に示したグ
ループに限定されず、In、Ga、Znの配列が異なるグループを組み合わせたユニット
も取りうる。
【0063】
<チャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタについて>
チャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタについて
図5(A)〜(D)を参
照して説明する。なお、
図5(A)〜(D)は、トランジスタの構造例を示す断面模式図
である。
【0064】
図5(A)に示すトランジスタは、導電層601(a)と、絶縁層602(a)と、酸
化物半導体層603(a)と、導電層605a(a)と、導電層605b(a)と、絶縁
層606(a)と、導電層608(a)と、を含んでいる。
【0065】
導電層601(a)は、被素子形成層600(a)の上に設けられている。
【0066】
絶縁層602(a)は、導電層601(a)の上に設けられている。
【0067】
酸化物半導体層603(a)は、絶縁層602(a)を介して導電層601(a)に重
畳する。
【0068】
導電層605a(a)及び導電層605b(a)のそれぞれは、酸化物半導体層603
(a)の上に設けられ、酸化物半導体層603(a)に電気的に接続されている。
【0069】
絶縁層606(a)は、酸化物半導体層603(a)、導電層605a(a)、及び導
電層605b(a)の上に設けられている。
【0070】
導電層608(a)は、絶縁層606(a)を介して酸化物半導体層603(a)に重
畳する。
【0071】
なお、必ずしも導電層601(a)及び導電層608(a)の一方を設けなくてもよい
。また、導電層608(a)を設けない場合には、絶縁層606(a)を設けなくてもよ
い。
【0072】
図5(B)に示すトランジスタは、導電層601(b)と、絶縁層602(b)と、酸
化物半導体層603(b)と、導電層605a(b)と、導電層605b(b)と、絶縁
層606(b)と、導電層608(b)と、を含んでいる。
【0073】
導電層601(b)は、被素子形成層600(b)の上に設けられている。
【0074】
絶縁層602(b)は、導電層601(b)の上に設けられている。
【0075】
導電層605a(b)及び導電層605b(b)のそれぞれは、絶縁層602(b)の
一部の上に設けられている。
【0076】
酸化物半導体層603(b)は、導電層605a(b)及び導電層605b(b)の上
に設けられ、導電層605a(b)及び導電層605b(b)に電気的に接続されている
。また、酸化物半導体層603(b)は、絶縁層602(b)を介して導電層601(b
)に重畳する。
【0077】
絶縁層606(b)は、酸化物半導体層603(b)、導電層605a(b)、及び導
電層605b(b)の上に設けられている。
【0078】
導電層608(b)は、絶縁層606(b)を介して酸化物半導体層603(b)に重
畳する。
【0079】
なお、必ずしも導電層601(b)及び導電層608(b)の一方を設けなくてもよい
。導電層608(b)を設けない場合には、絶縁層606(b)を設けなくてもよい。
【0080】
図5(C)に示すトランジスタは、導電層601(c)と、絶縁層602(c)と、酸
化物半導体層603(c)と、導電層605a(c)と、導電層605b(c)と、を含
んでいる。
【0081】
酸化物半導体層603(c)は、領域604a(c)及び領域604b(c)を含んで
いる。領域604a(c)及び領域604b(c)は、互いに離間し、それぞれドーパン
トが添加された領域である。なお、領域604a(c)及び領域604b(c)の間の領
域がチャネル形成領域になる。酸化物半導体層603(c)は、被素子形成層600(c
)の上に設けられる。なお、必ずしも領域604a(c)及び領域604b(c)を設け
なくてもよい。
【0082】
導電層605a(c)及び導電層605b(c)は、酸化物半導体層603(c)の上
に設けられ、酸化物半導体層603(c)に電気的に接続されている。また、導電層60
5a(c)及び導電層605b(c)の側面は、テーパ状である。
【0083】
また、導電層605a(c)は、領域604a(c)の一部に重畳するが、必ずしもこ
れに限定されない。導電層605a(c)を領域604a(c)の一部に重畳させること
により、導電層605a(c)及び領域604a(c)の間の抵抗値を小さくすることが
できる。また、導電層605a(c)に重畳する酸化物半導体層603(c)の領域の全
てが領域604a(c)でもよい。
【0084】
また、導電層605b(c)は、領域604b(c)の一部に重畳するが、必ずしもこ
れに限定されない。導電層605b(c)を領域604b(c)の一部に重畳させること
により、導電層605b(c)及び領域604b(c)の間の抵抗を小さくすることがで
きる。また、導電層605b(c)に重畳する酸化物半導体層603(c)の領域の全て
が領域604b(c)でもよい。
【0085】
絶縁層602(c)は、酸化物半導体層603(c)、導電層605a(c)、及び導
電層605b(c)の上に設けられている。
【0086】
導電層601(c)は、絶縁層602(c)を介して酸化物半導体層603(c)に重
畳する。絶縁層602(c)を介して導電層601(c)と重畳する酸化物半導体層60
3(c)の領域がチャネル形成領域になる。
【0087】
また、
図5(D)に示すトランジスタは、導電層601(d)と、絶縁層602(d)
と、酸化物半導体層603(d)と、導電層605a(d)と、導電層605b(d)と
、を含んでいる。
【0088】
導電層605a(d)及び導電層605b(d)は、被素子形成層600(d)の上に
設けられる。また、導電層605a(d)及び導電層605b(d)の側面は、テーパ状
である。
【0089】
酸化物半導体層603(d)は、領域604a(d)及び領域604b(d)と、を含
んでいる。領域604a(d)及び領域604b(d)は、互いに離間し、それぞれドー
パントが添加された領域である。また、領域604a(d)及び領域604b(d)の間
の領域がチャネル形成領域になる。酸化物半導体層603(d)は、例えば導電層605
a(d)、導電層605b(d)、及び被素子形成層600(d)の上に設けられ、導電
層605a(d)及び導電層605b(d)に電気的に接続される。なお、必ずしも領域
604a(d)及び領域604b(d)を設けなくてもよい。
【0090】
領域604a(d)は、導電層605a(d)に電気的に接続されている。
【0091】
領域604b(d)は、導電層605b(d)に電気的に接続されている。
【0092】
絶縁層602(d)は、酸化物半導体層603(d)の上に設けられている。
【0093】
導電層601(d)は、絶縁層602(d)を介して酸化物半導体層603(d)に重
畳する。絶縁層602(d)を介して導電層601(d)と重畳する酸化物半導体層60
3(d)の領域がチャネル形成領域になる。
【0094】
さらに、
図5(A)乃至
図5(D)に示す各構成要素について説明する。
【0095】
被素子形成層600(a)乃至被素子形成層600(d)としては、例えば絶縁層、又
は絶縁表面を有する基板などを用いることができる。また、予め素子が形成された層を被
素子形成層600(a)乃至被素子形成層600(d)として用いることもできる。
【0096】
導電層601(a)乃至導電層601(d)のそれぞれは、トランジスタのゲートとし
ての機能を有する。なお、トランジスタのゲートとしての機能を有する層をゲート電極又
はゲート配線ともいう。
【0097】
導電層601(a)乃至導電層601(d)としては、例えばモリブデン、マグネシウ
ム、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、若しくは
スカンジウムなどの金属材料、又はこれらを主成分とする合金材料の層を用いることがで
きる。また、導電層601(a)乃至導電層601(d)の形成に適用可能な材料の層の
積層により、導電層601(a)乃至導電層601(d)を構成することもできる。
【0098】
絶縁層602(a)乃至絶縁層602(d)のそれぞれは、トランジスタのゲート絶縁
層としての機能を有する。
【0099】
絶縁層602(a)乃至絶縁層602(d)としては、例えば酸化シリコン層、窒化シ
リコン層、酸化窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、酸化アルミニウム層、窒化アルミ
ニウム層、酸化窒化アルミニウム層、窒化酸化アルミニウム層、酸化ハフニウム層、又は
酸化ランタン層を用いることができる。
【0100】
また、絶縁層602(a)乃至絶縁層602(d)としては、例えば元素周期表におけ
る第13族元素及び酸素元素を含む材料の絶縁層を用いることもできる。例えば、酸化物
半導体層603(a)乃至酸化物半導体層603(d)が第13族元素を含む場合に、酸
化物半導体層603(a)乃至酸化物半導体層603(d)に接する絶縁層として第13
族元素を含む絶縁層を用いることにより、該絶縁層と酸化物半導体層との界面の状態を良
好にすることができる。
【0101】
第13族元素及び酸素元素を含む材料としては、例えば酸化ガリウム、酸化アルミニウ
ム、酸化アルミニウムガリウム、酸化ガリウムアルミニウムなどが挙げられる。なお、酸
化アルミニウムガリウムとは、ガリウムの含有量(原子%)よりアルミニウムの含有量(
原子%)が多い物質のことをいい、酸化ガリウムアルミニウムとは、ガリウムの含有量(
原子%)がアルミニウムの含有量(原子%)以上の物質のことをいう。例えば、Al
2O
x(x=3+α、αは0より大きく1より小さい値)、Ga
2O
x(x=3+α、αは0
より大きく1より小さい値)、又はGa
xAl
2−xO
3+α(xは0より大きく2より
小さい値、αは0より大きく1より小さい値)で表記される材料を用いることもできる。
【0102】
また、絶縁層602(a)乃至絶縁層602(d)に適用可能な材料の層の積層により
絶縁層602(a)乃至絶縁層602(d)を構成することもできる。例えば、複数のG
a
2O
xで表記される酸化ガリウムを含む層の積層により絶縁層602(a)乃至絶縁層
602(d)を構成してもよい。また、Ga
2O
xで表記される酸化ガリウムを含む絶縁
層及びAl
2O
xで表記される酸化アルミニウムを含む絶縁層の積層により絶縁層602
(a)乃至絶縁層602(d)を構成してもよい。
【0103】
また、トランジスタのチャネル長を30nmとしたとき、酸化物半導体層603(a)
乃至酸化物半導体層603(d)の厚さを例えば5nm程度にしてもよい。このとき、酸
化物半導体層603(a)乃至酸化物半導体層603(d)がCAAC−OS膜からなる
酸化物半導体層であれば、トランジスタにおける短チャネル効果を抑制することができる
。
【0104】
領域604a(c)、領域604b(c)、領域604a(d)、及び領域604b(
d)は、N型又はP型の導電型を付与するドーパントが添加され、トランジスタのソース
又はドレインとしての機能を有する。ドーパントとしては、例えば元素周期表における1
3族の元素(例えば硼素など)、元素周期表における15族の元素(例えば窒素、リン、
及び砒素の一つ又は複数)、及び希ガス元素(例えばヘリウム、アルゴン、及びキセノン
の一つ又は複数)の一つ又は複数を用いることができる。なお、トランジスタのソースと
しての機能を有する領域をソース領域ともいい、トランジスタのドレインとしての機能を
有する領域をドレイン領域ともいう。領域604a(c)、領域604b(c)、領域6
04a(d)、及び領域604b(d)にドーパントを添加することにより導電層との接
続抵抗を小さくすることができるため、トランジスタを微細化することができる。
【0105】
導電層605a(a)乃至導電層605a(d)、及び導電層605b(a)乃至導電
層605b(d)のそれぞれは、トランジスタのソース又はドレインとしての機能を有す
る。なお、トランジスタのソースとしての機能を有する層をソース電極又はソース配線と
もいい、トランジスタのドレインとしての機能を有する層をドレイン電極又はドレイン配
線ともいう。
【0106】
導電層605a(a)乃至導電層605a(d)、及び導電層605b(a)乃至導電
層605b(d)としては、例えばアルミニウム、マグネシウム、クロム、銅、タンタル
、チタン、モリブデン、若しくはタングステンなどの金属材料、又はこれらの金属材料を
主成分とする合金材料の層を用いることができる。例えば、銅、マグネシウム、及びアル
ミニウムを含む合金材料の層により、導電層605a(a)乃至導電層605a(d)、
及び導電層605b(a)乃至導電層605b(d)を構成することができる。また、導
電層605a(a)乃至導電層605a(d)、及び導電層605b(a)乃至導電層6
05b(d)に適用可能な材料の層の積層により、導電層605a(a)乃至導電層60
5a(d)、及び導電層605b(a)乃至導電層605b(d)を構成することもでき
る。例えば、銅、マグネシウム、及びアルミニウムを含む合金材料の層と銅を含む層の積
層により、導電層605a(a)乃至導電層605a(d)、及び導電層605b(a)
乃至導電層605b(d)を構成することができる。
【0107】
また、導電層605a(a)乃至導電層605a(d)、及び導電層605b(a)乃
至導電層605b(d)としては、導電性の金属酸化物を含む層を用いることもできる。
導電性の金属酸化物としては、例えば酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジ
ウム酸化スズ、又は酸化インジウム酸化亜鉛を用いることができる。なお、導電層605
a(a)乃至導電層605a(d)、及び導電層605b(a)乃至導電層605b(d
)に適用可能な導電性の金属酸化物は、酸化シリコンを含んでいてもよい。
【0108】
絶縁層606(a)及び絶縁層606(b)としては、絶縁層602(a)乃至絶縁層
602(d)に適用可能な材料の層を用いることができる。また、絶縁層606(a)及
び絶縁層606(b)に適用可能な材料の積層により、絶縁層606(a)及び絶縁層6
06(b)を構成してもよい。例えば、酸化シリコン層、酸化アルミニウム層などにより
絶縁層606(a)及び絶縁層606(b)を構成してもよい。例えば、酸化アルミニウ
ム層を用いることにより、酸化物半導体層603(a)及び酸化物半導体層603(b)
への不純物(水)の侵入抑制効果をより高めることができ、また、酸化物半導体層603
(a)及び酸化物半導体層603(b)中の酸素の脱離抑制効果を高めることができる。
【0109】
導電層608(a)及び導電層608(b)のそれぞれは、トランジスタのゲートとし
ての機能を有する。なお、トランジスタが導電層601(a)及び導電層608(a)の
両方、又は導電層601(b)及び導電層608(b)の両方を含む構造である場合、導
電層601(a)及び導電層608(a)の一方、又は導電層601(b)及び導電層6
08(b)の一方を、バックゲート、バックゲート電極、又はバックゲート配線ともいう
。ゲートとしての機能を有する導電層を、チャネル形成層を介して複数設けることにより
、トランジスタの閾値電圧を制御しやすくすることができる。
【0110】
導電層608(a)及び導電層608(b)としては、例えば導電層601(a)乃至
導電層601(d)に適用可能な材料の層を用いることができる。また、導電層608(
a)及び導電層608(b)に適用可能な材料の層の積層により導電層608(a)及び
導電層608(b)を構成してもよい。
【0111】
また、絶縁層602(a)乃至絶縁層602(d)に適用可能な材料の積層によりチャ
ネル保護層としての機能を有する絶縁層を構成してもよい。
【0112】
また、被素子形成層600(a)乃至被素子形成層600(d)の上に下地層を形成し
、該下地層の上にトランジスタを形成してもよい。このとき、下地層としては、例えば絶
縁層602(a)乃至絶縁層602(d)に適用可能な材料の層を用いることができる。
また、絶縁層602(a)乃至絶縁層602(d)に適用可能な材料の積層により下地層
を構成してもよい。例えば、酸化アルミニウム層及び酸化シリコン層の積層により下地層
を構成することにより、下地層に含まれる酸素が酸化物半導体層603(a)乃至酸化物
半導体層603(d)を介して脱離するのを抑制することができる。
【0113】
また、酸化物半導体層603(a)乃至酸化物半導体層603(d)に接する絶縁層中
の酸素を過剰にすることにより、酸化物半導体層603(a)乃至酸化物半導体層603
(d)に供給されやすくなる。よって、酸化物半導体層603(a)乃至酸化物半導体層
603(d)中、又は当該絶縁層と酸化物半導体層603(a)乃至酸化物半導体層60
3(d)の界面における酸素欠陥を低減することができるため、酸化物半導体層603(
a)乃至酸化物半導体層603(d)のキャリア濃度をより低減することができる。また
、これに限定されず、製造過程により酸化物半導体層603(a)乃至酸化物半導体層6
03(d)に含まれる酸素を過剰にした場合であっても、酸化物半導体層603(a)乃
至酸化物半導体層603(d)に接する上記絶縁層により、酸化物半導体層603(a)
乃至酸化物半導体層603(d)からの酸素の脱離を抑制することができる。
【0114】
次いで、チャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタの電界効果移動度の理論
値について、
図6及び
図7を参照して説明する。なお、ここでは、Levinsonモデ
ルを用いて、半導体内部に欠陥がないと仮定した場合の電界効果移動度を理論的に算出し
ている。酸化物半導体に限らず、実際に測定される絶縁ゲート型トランジスタの電界効果
移動度は、さまざまな理由によって本来の移動度よりも低くなる。そして、移動度を低下
させる要因としては半導体内部の欠陥や半導体と絶縁膜との界面の欠陥がある。
【0115】
半導体本来の移動度をμ
0、測定される電界効果移動度をμとし、半導体中に何らかの
ポテンシャル障壁(粒界等)が存在すると仮定すると、以下の様に表現できる。
【0117】
ここで、Eはポテンシャル障壁の高さであり、kがボルツマン定数、Tは絶対温度であ
る。
【0118】
また、ポテンシャル障壁が欠陥に由来すると仮定すると、Levinsonモデルでは
、以下の様に表される。
【0120】
ここで、eは電気素量、Nはチャネル内の単位面積当たりの平均欠陥密度、εは半導体
の誘電率、nはチャネルのキャリア面密度、C
oxは単位面積当たりの容量、V
gはゲー
ト電圧、tはチャネルの厚さである。なお、厚さ30nm以下の酸化物半導体層であれば
、チャネルの厚さは酸化物半導体層の厚さと同一として差し支えない。
【0121】
また、線形領域におけるドレイン電流I
dは、以下の様に表現できる。
【0123】
ここで、Lはチャネル長、Wはチャネル幅であり、ここでは、L=W=10μmである
。また、V
dはドレイン電圧である。
【0124】
さらに、上式の両辺をVgで割り、更に両辺の対数を取ると、以下の様になる。
【0126】
数4の右辺はV
gの関数である。この式からわかるように、縦軸をln(Id/Vg)
、横軸を1/Vgとする直線の傾きから欠陥密度Nが求められる。すなわち、トランジス
タのI
d―V
g特性から、欠陥密度を評価できる。
【0127】
欠陥密度は酸化物半導体の成膜時の基板温度に依存する。
図6は基板加熱温度と欠陥密
度の関係を示す。酸化物半導体としては、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛
(Zn)の比率が、In:Ga:Zn=1:1:1のものを用いた。基板加熱温度が高い
ものは室温で成膜したものよりも欠陥密度が低下することが示される。
【0128】
このようにして求めた欠陥密度等をもとに数1および数2よりμ
0=80cm
2/Vs
が導出される。欠陥の多い酸化物半導体(N=1.5×10
12/cm
2程度)では、移
動度は10cm
2/Vs程度である。しかし、半導体内部および半導体と絶縁膜との界面
の欠陥が無い理想的な酸化物半導体の移動度は80cm
2/Vsとなる。
【0129】
ただし、酸化物半導体層内部に欠陥がなくても、チャネルとゲート絶縁層との界面での
散乱によってトランジスタの輸送特性は影響を受ける。すなわち、ゲート絶縁層界面から
xだけ離れた場所における移動度μ
1は、以下の様に表される。
【0131】
ここで、Dはゲート方向の電界、B、lは定数である。Bおよびlは、実際の測定結果
より求めることができ、上記の測定結果からは、B=2.38×10
7cm/s、l=1
0nm(界面散乱が及ぶ深さ)である。Dが増加する(すなわち、ゲート電圧が高くなる
)と数5の第2項が増加するため、移動度μ
1は低下することがわかる。
【0132】
酸化物半導体層内部に欠陥が無い理想的なトランジスタの移動度μ
2を計算した結果を
図7に示す。なお、計算にはシノプシス社製デバイスシミュレーションソフト、Sent
aurus Deviceを使用し、酸化物半導体のバンドギャップ、電子親和力、比誘
電率、厚さをそれぞれ、3.15電子ボルト、4.6電子ボルト、15、30nmとした
。さらに、ゲート、ソース、ドレインの仕事関数をそれぞれ、5.5電子ボルト、4.6
電子ボルト、4.6電子ボルトとした。また、ゲート絶縁層の厚さは30nm、比誘電率
は4.1とした。チャネル長およびチャネル幅はともに10μm、ドレイン電圧V
dは0
.1Vである。
【0133】
図7で示されるように、ゲート電圧1V強で移動度50cm
2/Vs以上のピークをつ
けるが、ゲート電圧がさらに高くなると、界面散乱が大きくなり、移動度が低下すること
が分かった。
【0134】
<半導体装置の具体例>
図8(A)、(B)は、本発明の一態様に係る半導体装置の具体例を示す図である。具
体的には、
図8(A)、(B)に示す半導体装置は、パルス幅変調方式によって制御され
るDCDCコンバータである。
【0135】
図8(A)に示すDCDCコンバータは、電力変換部1と、出力検出部2と、制御回路
部4とを有する。なお、電力変換部1及び出力検出部2の構成は、
図10を参照して説明
したDCDCコンバータが有する電力変換部1及び出力検出部2の構成と同様である。よ
って、ここでは、上述の説明を援用することとする。
【0136】
制御回路部4は、半導体装置100と、パルス幅変調器32と、スイッチ駆動回路33
と、参照電圧発生器34とを有する。なお、半導体装置100、並びにパルス幅変調器3
2、スイッチ駆動回路33、及び参照電圧発生器34の構成は、
図1(A)を参照して説
明した半導体装置100、並びに
図10を参照して説明したパルス幅変調器32、スイッ
チ駆動回路33、及び参照電圧発生器34の構成と同様である。よって、ここでは、上述
の説明を援用することとする。
【0137】
なお、トランスコンダクタンスアンプ101の反転入力端子(−)は抵抗21の他端及
び抵抗22の一端に電気的に接続され、非反転入力端子(+)は参照電圧(Vref)を
供給する配線に電気的に接続されている。また、トランスコンダクタンスアンプ101の
出力端子、及びトランジスタ102のソース及びドレインの一方は、比較器321の非反
転入力端子(+)に電気的に接続されている。
【0138】
図8(A)に示すDCDCコンバータは、パルス幅変調方式を利用したフィードバック
制御によって制御されるDCDCコンバータ(いわゆるパルス幅変調方式によって制御さ
れる降圧型DCDCコンバータ)である。そして、当該DCDCコンバータは、
図1(A
)に示す半導体装置100を有する。これにより、
図8(A)に示すDCDCコンバータ
においては、トランスコンダクタンスアンプ101などをスタンバイ状態から復帰する際
に早期に直流電圧(Vout)を固定することが可能となる。
【0139】
また、
図8(A)に示すDCDCコンバータが有するスイッチ11として、チャネルが
酸化物半導体層に形成されるトランジスタを適用することは好ましい。当該トランジスタ
がオフ状態となっている際に生じる電流を低減することが出来ると共に、当該トランジス
タと、
図8(A)に示すトランジスタ102とを同一工程において作製することができる
(製造工程数を低減することができる)からである。
【0140】
なお、
図8(A)においては、
図1(A)に示す半導体装置100を有するDCDCコ
ンバータの具体例について例示したが、
図1(B)に示す半導体装置150を半導体装置
100と置換することも可能である。
【0141】
また、
図8(A)においては、降圧型DCDCコンバータの具体例について例示したが
、本発明の一態様に係る半導体装置は、降圧型DCDCコンバータに限定されない。例え
ば、当該半導体装置として、昇圧型、昇降圧型、反転型、cuk型、SEPIC型、又は
フライバック型のDCDCコンバータを適用することも可能である。
【0142】
一例として、昇圧型DCDCコンバータの具体例を
図8(B)に示す。
【0143】
図8(B)に示すDCDCコンバータは、電力変換部5と、出力検出部2と、制御回路
部4とを有する。なお、出力検出部2及び制御回路部4の構成は、
図10を参照して説明
したDCDCコンバータが有する出力検出部2及び
図8(A)を参照して説明した制御回
路部4の構成と同様である。よって、ここでは、上述の説明を援用することとする。
【0144】
電力変換部5は、スイッチ51と、ダイオード52と、インダクタ53と、キャパシタ
54とを有する。なお、インダクタ53の一端は、直流電圧(Vin)が入力される端子
に電気的に接続されている。スイッチ51の一方の端子は接地電位が入力される端子に電
気的に接続され、他方の端子はインダクタ53の他端に電気的に接続されている。また、
ダイオード52のアノードはインダクタ53の他端及びスイッチ51の他方の端子に電気
的に接続され、カソードは直流電圧(Vout)を出力する端子に電気的に接続されてい
る。また、キャパシタ54の一方の電極は直流電圧(Vout)を出力する端子に電気的
に接続され、他方の電極は接地電位が入力される端子に電気的に接続されている。
【0145】
図8(B)に示すDCDCコンバータは、パルス幅変調方式を利用したフィードバック
制御によって制御されるDCDCコンバータ(いわゆるパルス幅変調方式によって制御さ
れる昇圧型DCDCコンバータ)である。そして、
図8(B)に示すDCDCコンバータ
は、
図8(A)に示すDCDCコンバータと同様に、トランスコンダクタンスアンプ10
1などをスタンバイ状態から復帰する際に早期に直流電圧(Vout)を固定することが
可能である。
【実施例】
【0146】
図9(A)、(B)は、上述の半導体装置を有する電子機器の実施例を示す図である。
【0147】
図9(A)は、照明装置を示す図である。
図9(A)に示す照明装置は、筐体1001
と、照明部1003とを有している。そして、筐体1001内には上述の半導体装置が設
けられている。当該半導体装置を設けることによって、照明装置をスタンバイ状態から復
帰する際に生じる動作遅延を抑制することが可能となる。
【0148】
図9(B)は、表示装置を示す図である。
図9(B)に示す表示装置は、筐体2001
と、筐体2001に組み込まれた表示部2003と、筐体2001を支持するスタンド2
005とを有する。そして、筐体2001内には上述の半導体装置が設けられている。当
該半導体装置を設けることによって、表示装置がスタンバイ状態から復帰する際に生じる
動作遅延を抑制することが可能となる。