(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
自動車道路の路側の下方に傾斜した法面の縦方向へ設置の既設の縦方向排水溝と、該法面の小段に略水平に横方向に設置の既設の横方向排水溝と、該縦方向排水溝と該横方向排水溝を接続した該小段に設置の既設の小段集水桝からなる排水機構において、該小段集水桝の上方の小段の上部法面に設置の縦方向排水溝の底面上に縦方向に延びるバイパス排水溝の底面の上端を設置し、該バイパス排水溝を小段に設置の該小段集水桝の上を通して該小段集水桝をスルーパスさせ、スルーパス後の該バイパス排水溝の底面の下端部を小段の下部法面に設置の縦方向排水溝の上に配設したことを特徴とする縦方向排水溝のバイパス排水溝からなる改良した法面排水機構。
縦方向に延びるバイパス排水溝は、小段の上部法面に設置の上部バイパス排水溝と小段に設置の中間部バイパス排水溝と小段の下部法面に設置の下部バイパス排水溝からなり、これらバイパス排水溝は縦方向に延びる底面とその左右の側壁から該バイパス排水溝に形成されており、該上部バイパス排水溝の勾配は小段の上部法面に設置の縦方向排水溝の勾配よりも緩やかであり、該中間部バイパス排水溝勾配は小段の略水平な勾配と同一であり、該下部バイパス排水溝の勾配は小段の下部法面に設置の縦方向排水溝の勾配と略同一であり、これらの上部バイパス排水溝と小段に設置の中間部バイパス排水溝と下部バイパス排水溝はそれらの接続による一体化が一方のバイパス排水溝の下方に突出する受け部板とその背後の開口孔および他方のバイパス排水溝の下方に突出する差込爪による差込みからなっていることを特徴とする請求項1に記載の縦方向排水溝のバイパス排水溝からなる改良した法面排水機構。
【背景技術】
【0002】
高速道路を含む自動車道路において降雨があると、大量の道路に降った雨水は道路側部の側溝に流入し、側溝の適宜位置に設けられた集水桝に集められ、該道路の側部の地盤が山際や堤防などの下降する傾斜面である法面の場合に、上記の道路の側溝の集水桝から該法面に配設の縦方向排水溝に流される。一方、道路を構成する地盤である道路側部の傾斜して下降する法面の全面に降った雨水はそのまま法面の傾斜に沿って下方に流れ、この法面の下部の略水平な小段の部分に流れつく。この小段から小段の下方の法面を、さらに下方に流れ、最下部の法面より下部の略水平となった平地に設置されている横方向排水溝に流入し、横方向排水溝の適宜位置に設けられた集水桝に集水される。
【0003】
ところで、出願人は、法面の傾斜部と略水平に近い小段の略水平な段部を道路側部の傾斜面の全高さに応じて、例えば、法面の傾斜部の略高さ7m毎に小段の略水平な段部を配設し、法面と段部である小段からなる箇所の複数を形成し、それらの略水平に近い小段の段部に横方向排水溝をそれぞれ配設し、一方、法面の傾斜部に縦方向排水溝を適宜間隔で複数箇所に設置し、さらに法面の傾斜部の縦方向排水溝の下端でかつ略水平な小段の段部との交差部に集水桝を設置し、左右の縦方向排水溝の下端に設置の複数の集水桝の間を小段の段部の横方向排水溝で連設して形成の排水機構を既に開発している(例えば、特許文献1参照。)。この排水機構では、法面の傾斜部に降雨した雨水が法面の傾斜部の直下にある小段の横方向排水溝に流入し、法面の傾斜面に降雨した雨水は小段の段部までの傾斜部を流下することとなる。ところで、それまで用いられていた排水機構では、法面に降雨した雨水が全ての法面の傾斜部を流下して、全ての法面の下方の略平地となっている箇所に設置の横方向排水溝に全ての法面に降雨した全雨水が流入される。したがって、それまで用いられていた排水機構と異なって、出願人の開発した上記の排水機構では、それぞれの小段で、その小段の上方の法面の雨水のみを集水するので、当該小段の下側の法面の土砂に浸透する雨水の量もその箇所の法面に降雨した量にのみ限られるので、その量は少なく、したがって、法面が雨水の浸透によって軟化されることが防止できるものである。
【0004】
しかしながら、上記の法面に設置の排水機構では、大量の降雨があるとき、すなわち、法面の最上部に自動車道などの側溝があり、その自動車道に大量の降雨があり、自動車道の側溝の集水桝に大量の降雨が集水され、その集水桝から集水された大量の雨水が上記の法面に設置の排水機構の縦方向排水溝に流入すると、法面の最初の水平の段部である小段に設けられた横方向排水溝の集水桝に、該縦方向排水溝の下端が接続されているので、上記の大量に縦方向排水溝に流入した雨水は横方向排水溝との接続部である集水桝に流入することとなる。したがって、この集水桝には、縦方向排水溝の雨水に加えて当該法面に降った雨水が小段の横方向排水溝に集められて加わることで、集水桝の能力以上の流入量となって、雨水が集水桝から溢れだし、当該小段より下方の法面が溢れでた雨水で水浸しとなる恐れがある。
【0005】
このような集水桝から雨水が溢れだす不都合を解消するものとして、ゲリラ豪雨等に際しても効率的な排水を実現し、特に横方向排水溝の小段の部分の小段排水溝を通じて排水を促進させることで、縦方向排水溝と小段排水溝との合流部における溢流すなわちオーバーフローを防止し、オーバーフローに起因する法面の崩壊に有効な対策として、小段排水溝との合流部への流入部分の縦方向排水溝の底部において、該縦方向排水溝の底面の勾配を異ならせて上向きとし、該縦方向排水溝の流下水にジャンプ作用を及ぼすジャンプ部を、横方向排水溝の小段の部分の小段排水溝の直前に設け、ジャンプした排水を該小段排水溝の上を経て該小段排水溝の下方に配設の縦方向排水溝に流し入れる法面排水溝が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。ところで、この提案の法面排水溝の構造においても、ジャンプ部を除く縦方向排水溝は傾斜した法面の勾配を有しているので、縦方向排水溝を流下する雨水は該法面の傾斜で勢いが強められているので、縦方向排水溝のジャンプ部のジャンプ作用をして持ち上げても、該流下水は流速が十分に抑制しきれておらず、このためにジャンプした雨水の着水部分である縦方向排水溝から着水時の勢いで溢流し、その周囲の法面へ溢れ出し、この溢れ出した水が当該法面の土壌に浸透して法面を崩壊する悪影響を及ぼしかねない問題を有している。
【0006】
ところで、法面に設けた法面排水溝である縦方向排水溝の上流側から流れ込む排水が小段の横方向排水溝である小段排水溝の部分で、この横方向排水溝からの流れ込む排水と合流し、この合流した排水が小段における縦方向排水溝と横方向排水溝の合流部として設けられた集水桝に流れ込むことになると、これらの排水の流入量は集水桝の処理能力を越える場合がある。この場合、集水桝から流れ込んだ排水が溢れ出し、集水桝周辺の土壌を流して崩壊する恐れがある。ところで、このような対策として、処理能力の大きな排水溝や集水桝に変更することが考えられるが、これらの排水溝や集水桝が既設の場合、これらの既設の排水溝や集水桝を大型の形状に改変することは、法面や小段の敷地面積の面やコストの面から極めて難しい問題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本願発明が解決しようとする課題は、自動車道路を構成する路側の下方に傾斜する法面に設けた路側部の側溝から法面を縦方向に降下する縦方向排水溝と該法面途中の略水平な小段に設けた横方向排水溝すなわち小段排水溝との交差箇所である小段集水桝の箇所において、該縦方向排水溝から勢いよく流下する排水の溢流によってひき起こされる該交差箇所周辺の法面への浸水による土壌崩壊をなくすために、既設の縦方向排水溝からの排水の勢いを殺ぐことの可能な、既設の小段集水桝の交差箇所における既設の縦方向排水溝や横方向排水溝あるいは小段集水桝はそのままの状態に残して、既設の縦方向排水溝に小段集水桝をバイパスする構造を設けて小段の下方の既設の縦方向排水溝に流下させて法面への溢水を防止した改良した排水機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための本発明の手段は、第1の手段では、自動車道路の路側の下方に傾斜した法面の縦方向へ設置の既設の縦方向排水溝と、この法面の小段に略水平に横方向に設置の既設の横方向排水溝と、該縦方向排水溝と該横方向排水溝を接続した該小段に設置の既設の小段集水桝からなる排水機構において、小段集水桝の上方の小段の上部法面に設置の縦方向排水溝の底面上に縦方向に延びるバイパス排水溝の底面の上端を設置し、該バイパス排水溝を小段に設置の該小段集水桝の上を通して該小段集水桝をスルーパスさせ、スルーパス後のバイパス排水溝の底面の下端部を小段の下部法面に設置の縦方向排水溝の上に配設したことを特徴とする縦方向排水溝のバイパス排水溝からなる改良した法面排水機構である。また、上記の課題を解決するための本発明の他の手段は、自動車道路の路側の下方に傾斜した法面の縦方向へ設置の既設の縦方向排水溝と、この法面の小段に略水平に横方向に設置の既設の横方向排水溝と、該縦方向排水溝と該横方向排水溝を接続した該小段に設置の既設の小段集水桝からなる排水機構において、小段集水桝の上方の小段の上部法面に設置の縦方向排水溝の底面上に縦方向に延びるバイパス排水溝の底面の上端を設置し、該バイパス排水溝を小段に設置の該小段集水桝の上を通して該小段集水桝をスルーパスさせ、スルーパス後のバイパス排水溝の底面をパンチングメタルから形成し、該パンチングメタルからなるバイパス排水溝の底面の下端部を小段の下部法面に設置の縦方向排水溝の上に配設したことを特徴とする縦方向排水溝のバイパス排水溝からなる改良した法面排水機構である。
【0010】
第2の手段では、縦方向に延びるバイパス排水溝は、小段の上部法面に設置の上部バイパス排水溝と小段に設置の中間部バイパス排水溝と小段の下部法面に設置の下部バイパス排水溝からなり、これらバイパス排水溝は縦方向に延びる底面とその左右の側壁から該バイパス排水溝に形成されており、該上部バイパス排水溝の勾配は小段の上部法面に設置の縦方向排水溝の勾配よりも緩やかであり、該中間部バイパス排水溝勾配は小段の略水平な勾配と同一であり、該下部バイパス排水溝の勾配は小段の下部法面に設置の縦方向排水溝の勾配と略同一であり、これらの上部バイパス排水溝と小段に設置の中間部バイパス排水溝と下部バイパス排水溝はそれらの接続による一体化が一方のバイパス排水溝の下方に突出する受け部板とその背後の開口孔および他方のバイパス排水溝の下方に突出する差込爪による差込みからなっていることを特徴とする第1または上記他の手段の縦方向排水溝のバイパス排水溝からなる改良した法面排水機構である。
【0011】
さらなる他の手段では、小段に設置の中間部バイパス排水溝と小段の下部法面に設置の下部バイパス排水溝は、底面をパンチングメタルから形成するものとし、該パンチングメタルの形成箇所は、小段の上方に位置する中間部バイパス排水溝の小段集水桝より張り出した底面と、下部バイパス排水溝部材の前後の接続部を除く底面であることを特徴とする第2の手段の縦方向排水溝のバイパス排水溝からなる改良した排水機構である。
【発明の効果】
【0012】
上記の手段とすることで、第1および他の手段では上部法面の縦方向排水溝と下部法面の排水溝を小段集水桝の上をスルーパスするバイパス排水溝で一体化して接続しているので、縦方向排水溝の雨水が該小段集水桝に流入しないので、該小段集水桝が多量の雨水で溢れて周辺に溢流することが無い。かつ、他の手段では、該小段集水桝の上をスルーパス後のバイパス排水溝の底面をパンチングメタルから形成しているので、上部の縦方向排水溝から当該バイパス排水溝に流入した雨水はパンチングメタルの孔を滴下して徐々に下方の縦方向排水溝に流入するのでその流入する水量による力が緩和されるので、該縦方向排水溝の水流と激しくスプラッシュして外部に飛散して漏洩することが防止できる。
【0013】
第2の手段では、バイパス排水溝は上部バイパス排水溝と中間部バイパス排水溝と下部バイパス排水溝の一体化は一方のバイパス排水溝の下方に突出する受け部板とその背後の開口孔および他方のバイパス排水溝の下方に突出する差込爪による差込みからなっているので、一方のバイパス排水溝の受け部板背後の開口孔に他方のバイパス排水溝の差込爪を挿入した場合に、開口孔から突出する差込爪がその前部に位置する受け部板の突出により保護されるので、差込爪が下方から押されて開口孔から抜けて外れることは無く、長期にわたって安定してバイパス排水溝の働きが維持できる。
【0014】
さらなる他の手段では、バイパス排水溝に形成のパンチングメタルの箇所は小段の上方に位置する中間部バイパス排水溝の小段集水桝より張り出した底面と、下部バイパス排水溝部材の前後の接続部を除く底面であるので、上記段落0012で記載のバイパス排水溝のパンチングメタルの孔を通して徐々に下方の縦方向排水溝に滴下する距離は、パンチングメタルの部分が十分に長いので、バイパス排水溝を流れる雨水が下方の下部法面の縦方向排水溝にパンチングメタルの孔から分散して滴下し、この分散滴下により該縦方向排水溝の水流と一挙に衝突することが無いので、衝突によるスプラッシュが外部へ飛散による漏洩がより一層に防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
自動車道路2の路側3のガードレール3aの外側に設けられた道路側溝4と該道路側溝4の側溝集水桝5から斜め下方へ下る法面6において、
図8の法面排水機構1の概略図の上部に示すように、道路側溝4の適所に側溝集水桝5を設け、自動車道路2の路面に降った雨水や路面に走行中のタンクローリーなどから誤ってまかれたオイルなどの汚濁物質が道路側溝4から側溝集水桝5に集められる。
【0017】
ところで、従来の法面排水機構として、段落0003に記載のように、かつて本出願人の開発した、
図8に示す法面排水機構1では、側溝集水桝5に集められた雨水などは、側溝集水桝5から傾斜して下る法面6に配設の縦方向排水溝8aにより、法面6の途中に設けた略水平な段部である小段7に配設の小段集水桝11に流入される。一方、この法面6の下端の小段7には法面6の下端部に沿って横方向へ流れる横方向排水溝9が設けられている。そこで、小段7の上部の法面6(以下、「上部法面6a」という。)に降った雨水は、この上部法面6aの傾斜面に沿って下方に流れ、小段7の横方向排水溝9に流入する。この横方向排水溝9に流入した雨水は、さらに横方向排水溝9を流れて、上部法面6aの縦方向排水溝8aと横方向排水溝9の交差部に設けられている小段集水桝11へ流入し、上部法面6aに配設の縦方向排水溝8aから流下した雨水とこの小段集水桝11で合わされて一体化される。この小段集水桝11で一体化された雨水は小段集水桝11から、さらに小段7の下部法面6bの斜面に設けられた縦方向排水溝8bにより下方の段部へと流される。
【0018】
以上のように、本出願人の開発した法面排水機構1では、法面6の傾斜部に降雨した雨水は該法面6の傾斜部の直下にある小段7の横方向排水溝9に流入する。すなわち傾斜面に降雨した雨水は段部の小段7まで法面6の傾斜部のみを流下することとなる。これは、それまで用いられていた排水機構のように、全ての法面6に降雨した雨水がそれらの全ての法面6の傾斜部を流下し、全ての法面6の下方の平地に設置されている横方向排水溝9に全ての雨水が流入されるものとは異なる。すなわち、本出願人の開発した法面排水機構1では、法面6に複数段にわたって設けられた各小段7の箇所で、その小段7よりも上方の小段7との間の法面6に降った雨水のみを当該小段7の横方向排水溝9に集水する。したがって、当該小段7の下側の下部法面6bの土砂に浸透する雨水の量もその箇所の法面6に降雨した量に限られる。このように、当該横方向排水溝9に流入する雨水の量はその直上の上部法面6aに降雨した雨水に限定されて少なく、当該の法面6が雨水の浸透により軟化することが防止できる。
【0019】
しかしながら、かつて出願人の発明した、
図8に示す法面6に設けた法面排水機構1でも、大量の降雨がある場合、法面6の最上段に自動車道路2とその道路側溝4があり、自動車道路2へ大量の降雨があって道路側溝4の側溝集水桝5に大量の降雨が集水され、この側溝集水桝5から大量の雨水が法面排水機構1の法面6を下る縦方向排水溝8に流入するとき、法面6の最初の段部である小段7に設けられた横方向排水溝9の小段集水桝11に、上記の縦方向排水溝8の下端が接続されているので、上記の側溝集水桝5から縦方向排水溝8に流入した大量の雨水が当該縦方向排水溝8の下端から下段の小段7の横方向排水溝9の小段集水桝11に流入することとなる。したがって、小段集水桝11には、縦方向排水溝8の大量の雨水に加えて、当該小段7の上部法面6aに降った大量の雨水が当該小段7の横方向排水溝9に集められて加わることとなる。したがって、大量の降雨がある場合には、小段集水桝11の能力以上の流入量となって雨水が小段集水桝11から溢れだし、当該小段7より下方の下部法面6bが溢れでた雨水で水浸しとなる恐れがある。
【0020】
そこで、本発明の法面排水機構1では、自動車道路2の路側3の道路側溝4の適所に側溝集水桝5を設け、この側溝集水桝5から下方へ傾斜した法面6に設置の既設の縦方向排水溝8と、該法面6の途中の段状となった小段7に設置の小段7に沿って横方向へ延びる横方向排水溝9との両者を接続する当該小段7の既設の小段集水桝11から法面排水機構1を形成している。さらに本発明の法面排水機構1においては、
図1に示す、小段集水桝11の上方の上部法面6aに設置の当該小段7の上部法面6aの縦方向排水溝8aの底面8cの上に縦方向に延びるバイパス排水溝12の底面12dの端部12eを設置するものとする。次いで、このバイパス排水溝12を小段7に設置の小段集水桝11の上方に配設することで小段集水桝11をスルーパスさせる。このスルーパスさせたバイパス排水溝12の縦方向に延びる底面12dの下流側の先端部をパンチングメタル14から形成する。さらに当該小段7より下部の下部法面6bに設置の縦方向排水溝8bの上に、このバイパス排水溝12のパンチングメタル14からなる底面12dを載置することで、縦方向排水溝8のバイパス排水溝12からなる改良した法面排水機構1としている。
【0021】
すなわち、上記の縦方向排水溝8のバイパス排水溝12は、
図2の側面図あるいは
図3の斜視図に見られるように、上部バイパス排水溝12aと中間部バイパス排水溝12bと下部バイパス排水溝12cから形成されている。これらのバイパス排水溝12には、左右へ張り出して、上部バイパス排水溝12、中間部バイパス排水溝12b、下部バイパス排水溝12cを縦方向排水溝8の周囲の法面補強コンクリート面10aや横方向排水溝9の周囲の小段補強コンクリート面10bや、あるいは小段集水桝11の桝蓋11aに係止する係止片13がこれらの上部バイパス排水溝12の側壁12fや中間部バイパス排水溝12bの側壁12fおよび下部バイパス排水溝12cの側壁12fに設けられている。すなわち、上部バイパス排水溝12aは側壁12fの上端部から、中間部バイパス排水溝12bと下部バイパス排水溝12cは側壁12fの下端部から、それぞれ外側へ左右に張り出して係止片13が設けられている。これらの係止片13によって、上部バイパス排水溝12aや中間部バイパス排水溝12bおよび下部バイパス排水溝12cは、それらの左右の、法面補強コンクリート面10aや小段集水桝11の桝蓋11aあるいは小段補強コンクリート面10bにねじ止めにより固定されている。
【0022】
図4、
図5および
図6はバイパス排水溝12の構造を示す。このバイパス排水溝12について、上部バイパス排水溝12aを
図4に、中間部バイパス排水溝12bを
図5に、下部バイパス排水溝12cを
図6に、それぞれを示している。これらの
図4〜
図6における各図の(a)は上流側を右側に、下流側を左側にして示す平面図であり、各図の(b)は上流側を右側に、下流側を左側にして示す側面図であり、各図の(c)は上流側から見た正面図で、各図の(d)は下流側から見た背面図である。
【0023】
これらのバイパス排水溝12について説明する。最上部の上部法面6aとその直下の最上段の小段7とその直下の下部法面6bに設置されるバイパス排水溝12では、それらの横幅は縦方向排水溝8の幅に対応している。すなわち、上部に位置する上部バイパス排水溝12aの幅は最も狭く、中部に位置する小段7上の中間部バイパス排水溝12bの幅はやや広く、下部に位置する下部バイパス排水溝12cの幅は最も広くなっている。さらに下部の段部となるに連れて縦方向排水溝8の流量が徐々に増大するので、縦方向排水溝8の幅は広くなっている。このように下段になるに連れて幅が広くなっている縦方向排水溝8の幅の広がりに対応して、各バイパス排水溝12の横幅も下段になるに連れて広くなっていく。そこで、最上部の小段7を中心にして配設されるバイパス排水溝12について、それらの大きさについての実施例を以下に説明する。
【0024】
図4に示す上部バイパス排水溝12aの大きさについて説明すると、上部バイパス排水溝12aの長さは、本体部が1000mmで、先端部の底面12dが130mmであり、全長1130mmである。さらに本体部の幅は220mmである。本体部に有する側壁12fの長さは本体部と同一の1000mmである。先端部の130mmの底面12dの形状は、小段7より上側の上部法面6aに設置の縦方向排水溝8aの内部形状に副う形状に形成されており、この先端部の底面12dの幅は本体部の幅の220mmよりやや幅狭となっている。
図4の(a)は上部バイパス排水溝12aの平面図であり、上部バイパス排水溝12aの先端部直後の側壁12fの上端12gから両側へ張り出している係止片13を
図4の(c)の正面図に示すように有する。
図4の(b)は上部バイパス排水溝12aの側面図であり、上部バイパス排水溝12aの下流側の側壁12fの下端12hから下方へ突出する左右2個の差込爪12iを有する。この差込爪12iは、下記に示す
図5の(a)の中間部バイパス排水溝12bの平面図の底面12dの上流側に端部12eに設けられた開口孔12kに差し込まれ、上部バイパス排水溝12aと中間部バイパス排水溝12bを一体的に連結している。さらに、
図4の(c)は正面図であり、上流側の側壁12fの上端2hから水平に左右に張り出した係止片13を有する。
図4の(d)は背面図で、下流側の底面12dの端部12eに左右の差込爪12iが底より下側に30mm突出している。なお、側壁12fの上端2hから水平に左右に張り出した係止片13は上流側のものが見えている。
【0025】
次いで、
図5の中間部バイパス排水溝12bについて説明する。この中間部バイパス排水溝12bは小段7の小段集水桝11の上に設けられ、長さは本体部が1500mm、下流側である後端側では、側壁12fのみが後方に200mm延びており、全長1700mm、幅225mmであり、上部バイパス排水溝12aよりも幅が5mm広くなっている。
図5の(a)はその平面図で、中間部バイパス排水溝12bの上流側および下流側の側壁12fの下端から係止片13が両側へ張り出している。さらに、上流側の端部12eの底面12dから下方に30mm延びている、
図7の(a)に示す受け部板12jの直後に、受け部板12jに沿って開口孔12kを有し、また、さらに中間部バイパス排水溝12bの下流側の底面12dは長さ350mmの区間が多数の孔の空いた透水性のパンチングメタル14から形成されている。
図5の(b)は側面図で、排水溝の底部の上流側の端部より30mm下方に突出する受け部板12jを有する。一方、下流側の底面12dの端部12eには、
図7の(b)に示す下方に突出する2個の差込爪12iを有する。この差込爪12iより下流側には上記したように側壁12fのみが設けられている。さらに、
図5の(c)は正面図で底面12dより下方に延びる受け部板12jが示されている。
図5の(a)に見られるように、上流側の底面12dの端部12eには、(b)に示す受け部板12jの直後に、左右2個の開口孔12kが設けられており、上記したように、
図4の上部バイパス排水溝12aの下流側の端部12eの2個の差込爪12iを差し込んで係合するものとしている。
図5の(c)の正面図はさらに底部で左右に両側へ張り出した係止片13示されている。さらに
図5の(d)は背面図で、上記の(b)で記載したように、下流側の底面12dの端部12eより下側に突出している左右2個の差込爪12iを有しており、この差込爪12iは30mmの長さからなっている。
【0026】
さらに
図6の下部バイパス排水溝12cについて説明すると、長さは全長1000mmで、幅は230mmで、これは中間部バイパス排水溝12bの幅よりもさらに5mm広がっている。
図6の(a)は平面図で、下部バイパス排水溝12cの上流側と下流側の側壁12fの下端12hから両側へ張り出した係止片13を有する。さらに下部バイパス排水溝12cの上流部の長さ50mmの底面12dおよび下流部の長さ50mmの底面12dを除く中間部には、長さ900mmの区間からなる多数の孔の空いた透水性のパンチングメタル14が形成されている。
図6の(b)はその側面図で、下部バイパス排水溝12cの上流側の端部には底面12dより30mm下方に突出する受け部板12jを有し、その受け部板12jの後方に沿って、
図6の(a)に示すように、左右2個の開口孔12kを有する。
図6の(c)は正面図で、側壁12fの下端12hから左右に張り出す係止片13を有しており、さらに上流側の底面12dから下方に受け部板12jを有している。この受け部板12jの直後の、
図6の(a)に示す、開口孔12kに、
図5の中間部バイパス排水溝12bの下流側の底部から下方に延びる2個の差込爪12iを差し込んで、中間部バイパス排水溝12bに下部バイパス排水溝12cを係止して一体化するものとする。さらに
図6の(d)は背面図を示し、下部バイパス排水溝12cの左右の側壁12fの下端12hから左右に張り出す係止片13を有している。
【0027】
ところで、上記した
図4、
図5および
図6に記載のバイパス排水溝12である上部バイパス排水溝12a、中間部バイパス排水溝12bおよび下部バイパス排水溝12cの素材は、一般にZAM鋼板として知られているZn−6%Al−3%Mg合金メッキ鋼板などの住宅・建材用の素材を、使用するものとする。このZn−6%Al−3%Mg合金メッキ鋼板上には、Mgを含んだ塩基性塩化亜鉛主体の腐食生成物が長期間にわたって安定に存在し、保護性の低い酸化亜鉛の生成が抑制される。さらに、塩基性の塩化亜鉛主体の腐食生成物の下に難溶性の塩基性炭酸アルミニウムが堆積することで、耐食性が大幅に向上している。したがって、ZAM鋼板を、
図4、
図5および
図6に示す本発明におけるバイパス排水溝12である上部バイパス排水溝12a、中間部バイパス排水溝12bおよび下部バイパス排水溝12cの素材とすることにより、本発明によるバイパス排水溝12である上部バイパス排水溝12a、中間部バイパス排水溝12bおよび下部バイパス排水溝12cが長期間にわたって安定して法面排水機構1として使用できる。
【0028】
そこで、本発明における法面排水機構1の作用について以下に説明する。自動車道路2の路面に降雨した雨水は路面に散乱している汚濁物質と共に路側3の道路側溝4を流れて適宜箇所ごとに設置されている側溝集水桝5に集められる。この集められた汚濁物質を含む雨水は側溝集水桝5で汚濁物質の一部を除去され、除去された雨水がさらに側溝集水桝5から道路側部の下り勾配に傾斜した法面6に設置の縦方向排水溝8aに流される。一方、自動車道路2を形成する地盤面である道路側部を下降する傾斜状の法面6の全面に降った雨水はそれぞれの位置の法面6の傾斜面に沿って下方に流れて、略水平となった小段7に流れ着く。この小段7に流れ着いた雨水は、法面6に平行に設けられた小段7の略中央の横方向に設置されている横方向排水溝9に流入し、次いで、小段7を横方向に横方向排水溝9の下流に向って流れる。ところで、この小段7の横方向排水溝9には上記の道路側溝4の適宜箇所ごとに設けられている側溝集水桝5のそれぞれの下方の位置にそれぞれ小段排水桝11が設けられている。したがって、小段7を横方向排水溝9により横方向に流れる雨水はこの小段排水桝11に流入する。この小段排水桝11に流入した雨水は、一部が該小段排水桝11より下流側となる横方向排水溝9に流され、残余の雨水が小段排水溝11から小段7の下方の下部法面6bの傾斜面に設けられた縦方向排水溝8bに流下される。このような法面6と小段7に設けられた縦排水溝8と横方向排水溝9と小段排水桝11の組合せの繰り返しにより、雨水は最下部の法面6より下部の平地に設置されている横方向排水溝9に流入し、横方向排水溝9の適宜位置に設けられた集水桝に集水され、集水された雨水は小川などは放水される。
【0029】
ところで、本発明では、上記した小段7の小段集水桝11の箇所には、小段の上部法面の縦方向排水溝8aを流下する雨水が、小段集水桝11の上をバイパス排水溝12によりスルーパスされて、小段の下部法面の縦方向排水溝8bに流下される。そこで、このバイパス排水溝12の作用を説明する。バイパス排水溝12の上部バイパス排水溝12aの上流側の端部12eは幅狭になって縦方向排水溝8aの底面8cに当接し、縦方向排水溝8aを流れ下りる雨水を上部バイパス排水溝12aに受け入れ、このバイパス排水溝12から小段の下部法面の縦方向排水溝8bに流される。しかも、この場合、上部バイパス排水溝12aに続く小段集水桝11上に続く小段7の縦方向排水溝8上の中間部バイパス排水溝12bの部分は、
図1に示すように、パンチングメタル14となっているので、この中間部バイパス排水溝12bを流れる雨水の一部はこのパンチングメタル14の孔から下方の縦方向排水溝8bに徐々に滴下して流れる。この結果、中間部バイパス排水溝12bのパンチングメタル14上の残りの雨水の流れの勢いが殺がれるので、さらに中間部バイパス排水溝12bに続く下部法面6b上の下部バイパス排水溝12cに滴下する雨水の勢いはやや弱いものとなる。このやや勢いの弱い雨水は、さらに下部バイパス排水溝12cの底面12dのほぼ全面にわたって設けられているパンチングメタル14上を下流に向って流下しながら、該パンチングメタル14の孔から順次に下方の縦方向排水溝8bに滴下することとなる。
【0030】
したがって、本願発明のバイパス排水溝12を設けることで、ゲリラ豪雨などがあって、小段7の上部法面の縦方向排水溝8aを流下する大量の雨水が一挙に小段7の下部法面6bの縦方向排水溝8bに流入することを防止して、大量の雨水を下部法面の縦方向排水溝8bに流れの勢いを殺して周囲に飛散させることなく徐々に流下するものとしている。これに対し、特許文献2のように、横方向の小段排水溝と縦方向排水溝の合流部手前の縦方向排水溝の底面勾配を異なるものとしたもの、すなわち流下する水にジャンプ作用を及ぼすジャンプ台を設けた法面排水機構としたものでは、大量の流下する水を一挙にジャンプさせて小段排水溝と縦方向排水溝の合流部に流入させているので、合流した時点でジャンプした水は合流部の元の水と激しくぶつかってスプラッシュを起こして周辺に雨水を飛散させる恐れがある。
【0031】
これとは対照的に、本発明では小段集水桝11の箇所で当該小段7の横方向排水溝9を流れる雨水の略全量のみが流れるだけであるので、当該地域に大量の降雨があったとしても、当該小段集水桝11の周辺および法面6が縦方向排水溝8aからの雨水で溢れることが的確に防止できる。
【0032】
さらに、本発明のバイパス排水構12の上部バイパス排水溝12aと中間部バイパス排水溝12bと下部バイパス排水溝12cは、それぞれの接続のために、これらの底面12dに、下に突出する例えば長さ30mmの受け部板12jを有し、その直後に開口孔12kを有する。そこで、バイパス排水溝12の底面12dから下に突出する長さ30mmの差込爪12iを接続する他のバイパス排水溝12の開口孔12kに差し込んで接続したとき、もし、この開口孔12kの背後に受け部板12jがなければ、これらバイパス排水溝12が載っている下部の例えば小段集水桝11の桝蓋11aあるいは下部の補強コンクリート面10に、差込爪12iの先端が当接して載ったとき、この差込爪12iが差し込まれた他方のバイパス排水溝12の底面12dは直接に小段集水桝11の桝蓋11aあるいは下部の補強コンクリート面10に載ることとなる。このために、この差込爪12iを有するバイパス排水溝12の底面12dは他方のバイパス排水溝12の底面12dから差込爪12iの長さ分の30mmだけ上側へ浮き上がってしまい、差込爪12iが容易に開口孔12kから抜けて接続が外れることとなる。しかし、バイパス排水溝12の底面12dに下に突出する受け部板12jを有するとき、この下に突出する受け部板12jの先端がその下部のコンクリート面に載ることとなるので、接続するバイパス排水溝12の底面12dの下に突出する差込爪12iは受け部板12jと共に下部のコンクリート面でに載るので、差込爪12iの先端のみの浮き上がりが防止される。その結果、バイパス排水構12は長期にわたって一体化が保たれ、その働きが継続できる。