(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
<システム構成>
図1を参照して、本発明の一実施形態に係る、決済制御システムの全体の構成の例を説明する。
【0016】
本実施形態に係る決済制御システムは、決済サーバ1、ウェアラブル端末2、管理者端末3、および決済端末5を備える。決済サーバ1、ウェアラブル端末2、管理者端末3は、ネットワーク6(3GおよびLTEなどの通信方式を使用した無線ネットワークおよびインターネットなどの公衆回線の組み合わせ)を介してそれぞれが相互に接続されている。また、決済サーバ1と決済端末5とは、ネットワーク6を介して相互に接続されている。
【0017】
決済サーバ1は、本実施形態に係る決済制御システムに係るサービス(以下、「決済サービス」)を提供する事業者またはその事業者と提携している事業者(以下、「サービス事業者」)に設置され、決済サービスを提供するコンピューティングデバイスである。決済サーバ1は、決済端末5から決済データを受信し、その決済データを処理する。決済サーバ1は単一のコンピュータデバイス、または、複数のコンピューティングデバイスで実装されてもよい。
【0018】
ウェアラブル端末2は、本発明に係る決済サービスを受け、サービス事業者と提携している加盟店店舗4で決済を行う者(利用者)が決済手段として使用するコンピュータデバイスである。ウェアラブル端末2による決済は、加盟店店舗4において、決済端末5がウェアラブル端末2に付されたRFIDを読み取ることによって行われる。ウェアラブル端末2は、腕時計型、眼鏡型、または指輪型など、利用者が身に付けることができる任意の形状を有しているが、その形状は限定されない。また、決済手段として使用するコンピュータデバイスは、ウェアラブル端末に限定されず、スマートフォンおよびタブレット端末などの携帯端末をも含み、携帯端末とは、ウェアラブル端末をも含む。なお、加盟店店舗とは、サービス事業者と提携して本実施形態に係る決済サービスの対象となる商品を販売し、および/またはサービスを提供する事業者(加盟店)の店舗を意味する。
【0019】
管理者端末3は、本発明に係る決済サービスを受け、利用者の決済を管理する者(管理者)が使用する、スマートフォンまたはタブレット端末などの携帯型コンピュータデバイスである。管理者端末3は、決済サーバ1およびウェアラブル端末2とそれぞれ通信し、決済サーバ1から決済データを受信し、ウェアラブル端末2に決済制限ルール情報電文などを送信する。なお、管理者端末3は、携帯型コンピュータデバイスに限定されず、ラップトップコンピュータなどのパーソナルコンピュータデバイスであってもよい。
【0020】
決済端末5は、加盟店店舗4の店舗内に設置され、利用者が決済を行う際に加盟店店舗において使用されるキャッシュレジスタ機器である。決済端末5は、通信機能およびRFID読み取り機能(RFIDリーダ)を備え、ウェアラブル端末2からRFIDを読み取ることによって、決済データを生成し、決済サーバ1に送信するなどの処理を実行する。決済データは、少なくとも、利用者識別番号、加盟店識別番号、および決済額を含む。
【0021】
アクセスポイント7は、加盟店店舗4の店舗内に設置された無線LANのアクセスポイントであり、店舗の位置を示すビーコン信号を、無線LAN(WiFi(Wireless Fidelity:登録商標)など)を介してウェアラブル端末2に送信する(すなわち、ビーコンデバイス)。なお、近年では、無線LANのアクセスポイントが設置されている、いわゆる公衆無線LANスポットが増えてきており、この公衆無線LANスポットを利用して、ウェアラブル端末2の通信部21は、ビーコン信号を受信することができる。
【0022】
次に、
図2のブロック図を参照して、本発明の一実施形態に係る、決済制御システムを構成するコンピュータデバイスの詳細な構成の例を説明する。決済サーバ1は、通信部11、制御部12、主記憶部13、および補助記憶部14を備え、それらの各要素がシステムバスを介して接続されている。
【0023】
通信部11は、ネットワーク6を介して接続されたウェアラブル端末2、管理者端末3、および決済端末5との間で制御情報およびデータを送受信するネットワークインタフェースである。
【0024】
制御部12は、中央処理装置(CPU)とも呼ばれ、上記各構成要素の制御やデータの演算を行う。また、制御部12は、本実施形態に係る各種処理を実行するための、補助記憶部14に格納されている各種プログラムを主記憶部13に読み取って実行する。
【0025】
主記憶部13は、メインメモリとも呼ばれ、決済サーバ1が受信した入力データ、コンピュータ実行可能な命令および当該命令による演算処理後のデータなどを記憶する。
【0026】
補助記憶部14は、ハードディスク(HDD)などに代表される記憶装置であり、制御部12に、本実施形態に係る各種処理を実行させるためのプログラム(図示せず)、および後述する地図データ、路線データなどを記憶している。また、決済サーバ1は、DBMS(Database Management System)を実装しており、後述する管理者データテーブルなどのデータを記憶したデータベーステーブル14aを記憶している。
【0027】
ウェアラブル端末2は、通信部21、制御部22、主記憶部23、補助記憶部24、ICチップ25、およびGPS(Global Positioning System)受信機を備えており、それらの各要素がシステムバスを介して接続されている。
【0028】
通信部21は、ネットワーク6を介してそれぞれ接続された決済サーバ1および管理者端末3との間で制御情報およびデータを送受信する。
【0029】
制御部22は中央処理装置であり、決済サーバ1からダウンロードされたウェアラブル端末実行プログラム(図示せず)を実行し、上記各構成要素の制御やデータの演算を行う。
【0030】
主記憶部23はメインメモリとも称され、入力データおよび制御情報などを記憶している。
【0031】
補助記憶部24は、ハードディスクなどの記憶装置であり、ウェアラブル端末実行プログラムおよび後述する地図データ、路線データなどを記憶している。また、ウェアラブル端末2は、DBMSを実装しており、後述する利用制限ルールデータテーブルなどのデータを記憶したデータベーステーブル24aを記憶している。
【0032】
ICチップ25は、ウェアラブル端末2の認証などを行うためのID情報が埋め込まれ、決済端末5のRFIDリーダによって読み取られる非接触式集積回路である。ID情報には、ウェアラブル端末2を身につけている利用者の利用者識別番号がエンコードされている。
【0033】
なお、本実施形態では、ウェアラブル端末2に付されたICチップ25を決済端末5のRFIDリーダが読み取る例を示しているが、そのような例に限定されない。例えば、ICチップ25にNFC(Near Field radio Communication)方式で通信可能なID情報をエンコードし、決済端末5のNFCリーダがICチップ25を読み取るような構成にしてもよい。また、ICチップ25の代わりに、ウェアラブル端末2にID情報がエンコードされたバーコード(一次元または二次元バーコード)を付して、決済端末5のバーコードリーダがバーコードを読み取るような構成にしてもよい。
【0034】
GPS受信機26は、ウェアラブル端末2の現在位置を算出するために、GPS衛星からGPS信号(緯度および経度などの位置情報)を受信する。GPS受信機26がGPS信号を受信すると、制御部22に送信され、ウェアラブル端末の現在位置が判定される。
【0035】
管理者端末3は、通信部31、制御部32、主記憶部33、補助記憶部34、および表示部35を備えており、それらの各要素がシステムバスを介して接続されている。
【0036】
通信部31は、ネットワーク6を介して接続された決済サーバ1およびウェアラブル端末2との間で制御情報およびデータを送受信する。
【0037】
制御部32は中央処理装置であり、ダウンロードされた管理者端末実行プログラム(図示せず)を実行し、上記各構成要素の制御やデータの演算を行う。
【0038】
主記憶部33はメインメモリとも称され、入力データおよび制御情報などを記憶している。
【0039】
補助記憶部34は、ハードディスクなどの記憶装置であり、管理者端末実行プログラムを記憶している。
【0040】
表示部35は、管理者端末実行プログラムを実行することによって管理者が操作するためのインタフェース画面を表示する。
【0041】
決済端末5は、スーパーマーケット、コンビニエンスストアなどを含む加盟店店舗4に設置された公知なキャッスレジスタ機器であり、その詳細な説明は本明細書では行わない。また、アクセスポイント7も、加盟店店舗に設置された、WiFiなどの通信方式でビーコン信号を送信する公知なアクセスポイントであり、その詳細な説明は本明細書では行わない。
【0042】
<カード番号登録>
次に、
図3を参照して、本実施形態に係る決済サービスを受けるのに必要となるカード番号登録処理を説明する。本実施形態では、管理者は、サービス事業者またはサービス事業者と提携している事業者から発行されたデビットカードを有しているものとする。
【0043】
まず、管理者は、決済サーバ1から、自身が保持する管理者端末3に管理者端末実行プログラムをダウンロードする。管理者端末実行プログラムがダウンロードされると、制御部32は、管理者端末実行プログラムを実行する(ステップS301)。
【0044】
管理者端末実行プログラムが実行されると、表示部35にカード番号登録インタフェース画面(図示せず)が表示される。そこで、管理者は、カード番号登録インタフェース画面から自身の氏名、保有するデビットカードのカード番号、およびデビットカードで使用する口座情報(金融機関番号および口座番号など)などを含む管理者情報を入力する(ステップS302)。
【0045】
管理者情報が入力されると、管理者情報電文として、通信部31が決済サーバ1に送信する(ステップS303)。
【0046】
決済サーバ1の通信部11が、ステップS303で送信された管理者情報電文を受信すると、管理者データテーブルにレコードを追加する(ステップS304)。管理者データテーブルは、決済サーバ1上で実装されたDBMSのデータベーステーブルであり、
図4にその例を示す。
【0047】
図4に示すように、管理者データテーブル400は、管理者識別番号、氏名、デビットカード番号、および口座情報を含むが、それらの項目に限定されず、その他の管理者に関する項目を含んでもよい。ステップS304においてレコードを追加する際に、管理者を識別するための一意な番号が管理者識別番号として割り当てられる。
【0048】
上述したステップS301乃至ステップS304の処理によって決済サーバ1に管理者が登録される。このような状態で、管理者は、利用者が決済に使用する仮想口座を開設する必要があり、その口座開設処理がステップS305以降のステップで実行される。なお、仮想口座とは、利用者が決済を行う際にその決済専用口座として使用される口座であり、決済ごとに口座番号が割り当てられる方法と、利用者ごとに口座番号が割り当てられる方法とが存在する。前者は、決済ごとに異なる口座番号が割り当てられ、後者は異なる決済でも同一の口座番号が割り当てられ、本実施形態では、後者の方式を採用するが、その方式に限定はされない。
【0049】
なお、ウェアラブル端末2においても管理者データテーブル400を実装し、通信部21が管理者端末3から管理者情報電文を受信し、制御部22が管理者データテーブル400にレコードを追加してもよい。この構成によって、ウェアラブル端末2においても管理者データが管理される。
【0050】
<決済口座開設>
ステップS305では、表示部35に仮想口座開設・入金インタフェース(図示せず)が表示される。そこで、管理者は、利用者氏名、利用可能金額、および管理者識別番号などを含む仮想口座開設情報を入力する(ステップS305)。
【0051】
仮想口座開設情報が入力されると、仮想口座開設情報電文として、通信部31が決済サーバ1に送信する(ステップS306)。
【0052】
決済サーバ1の通信部11が、ステップS306で送信された仮想口座開設情報電文を受信すると、仮想口座データテーブルにレコードを追加する(ステップS307)。仮想口座データテーブルは、決済サーバ1上で実装されたDBMSのデータベーステーブルであり、
図5にその例を示す。
【0053】
図5に示すように、仮想口座データテーブル500は、仮想口座番号、利用者識別番号、利用者氏名、利用可能金額、および管理者識別番号を含むが、それらの項目に限定されず、その他の仮想口座に関する項目を含んでもよい。ステップS307においてレコードを追加する際に、利用者ごとに割り当てられる仮想口座番号が設定され、また利用者を識別するための一意な番号が利用者識別番号として割り当てられる。
【0054】
仮想口座が開設されると、管理者は、その後の任意のタイミングで、仮想口座開設・入金インタフェースから利用可能金額を入力することによって、該当の仮想口座に追加で送金をすることができる。具体的には、管理者が該当の仮想口座番号で認証することによって表示部35に表示された仮想口座開設・入金インタフェースから利用可能金額を入力すると、該当の仮想口座番号、利用者氏名、入力された利用可能金額、および管理者識別番号を含む仮想口座送金情報電文が決済サーバ1に送信される。決済サーバ1の通信部11が仮想口座送金情報電文を受信すると、その電文に含まれる利用可能金額で仮想口座データテーブル500の該当のレコードを更新する。利用者は、仮想口座データテーブル500のレコードに設定された利用可能金額の範囲内で、ウェアラブル端末2を使用して決済を行うことができる。
【0055】
上述したステップS305乃至ステップS307の処理によって決済サーバ1に仮想口座が登録される。このような状態で、管理者は、利用者の決済が特定の地域または店舗などに基づいて制限されることを定義したルールを登録する必要があり、その利用制限ルール登録処理がステップS308以降のステップで実行される。
【0056】
なお、ウェアラブル端末2においても仮想口座データテーブル500を実装し、通信部21が管理者端末3から仮想口座開設情報電文および仮想口座送金情報電文を受信し、制御部22が管理者データテーブル400にレコードを追加してもよい。この構成では、ウェアラブル端末2でもDBMSが実装され、利用者が決済を行う際、利用者による決済額が仮想口座の残高を超えるか否かの判定が、ウェアラブル端末2によって行われることになる。
【0057】
また、仮想口座データテーブル500の最新の情報を決済サーバ1で記憶しつつ、利用者が決済を行う際に、ウェアラブル端末2が、決済サーバ1から仮想口座データテーブル500の最新の情報を受信するようにしてもよい。この構成でも、利用者が決済を行う際、利用者による決済額が仮想口座の残高を超えるか否かの判定が、ウェアラブル端末2によって行われることになる。
【0058】
本実施形態では、開設した仮想口座を通じて決済を行う例を示しているが、本実施形態に係る決済制御システムは、仮想口座に限定されず、通常の口座(普通・当座などを含む実口座)を通じた決済を処理または制御してもよい。
【0059】
<利用制限ルール登録>
ステップS308では、表示部35に利用制限ルール登録インタフェースが表示される。
図6に、利用制限ルール登録インタフェースの例を示す。
【0060】
利用制限ルール登録インタフェースは、利用者が特定の地域ごとに決済が制限されることを定義するための利用制限ルールを入力するための入力インタフェースである。利用制限ルール登録インタフェースの初期画面(図示せず)で、例えば、対象の都道府県を選択すると、選択された都道府県において、特定市区町村/地域または鉄道機関の路線/駅を選択することができる。
【0061】
特定の市区町村/地域ごとに利用制限ルールを定義する場合、市区町村/地域を選択すると、
図6に示すように、市区町村/地域選択画面600aが表示される。同じく、路線/駅を選択すると、路線/駅選択画面600bが表示される。
【0062】
市区町村/地域選択画面600aでは、選択された都道府県において特定の市区町村の中から特定の市区町村または地域を選択することができる。選択された市区町村/地域内で、またはそれらの半径Nキロメートル内で、利用者の決済が制限されることになる。なお、決済サーバ1の補助記憶部14には、全国の市区町村/地域データが記憶されており、制御部12が、管理者端末3からの要求に応じて、市区町村/地域データに基づいて市区町村/地域リストを生成して、管理者端末3に送信し、市区町村/地域選択画面600aにそのリストが表示される。
【0063】
路線/駅選択画面600bでは、選択された都道府県において特定の鉄道会社の中から特定の路線または駅を選択することができる。選択された路線/駅の半径Mキロメートル内で、利用者の決済が制限されることになる。なお、決済サーバ1の補助記憶部14には、全国の鉄道の路線/駅データが記憶されており、制御部12が、管理者端末3からの要求に応じて、路線/駅データに基づいて路線/駅リストを生成して、管理者端末3に送信し、路線/駅選択画面600bにそのリストが表示される。
【0064】
また、利用制限ルールは、サービス事業者と提携した加盟店ごとに定義することができる。加盟店選択画面600cでは、特定の市区町村/地域または鉄道機関の路線/駅を選択すると、選択された市区町村などに登録された加盟店の一覧が表示され、それらの中から利用制限対象となる加盟店を選択することができる。600cに示すように、加盟店のジャンルを選択することができ、表示される加盟店の一覧は、選択されたジャンルに基づいている。なお、決済サーバ1の補助記憶部14には、全国の加盟店データが記憶されており、制御部12が、管理者端末3からの要求に応じて、加盟店データに基づいて加盟店リストを生成して、管理者端末3に送信し、加盟店選択画面600cにそのリストが表示される。
【0065】
ステップS308で利用制限ルール情報が入力されると、利用制限ルール情報電文として、通信部31が決済サーバ1に送信する(ステップS309)。利用制限ルール情報電文は、市区町村/地域選択画面600aで選択された市区町村/地域、路線/駅選択画面600bで選択された路線/駅、および/または加盟店選択画面600cで選択された加盟店を示す情報と、管理者の識別番号と、利用者識別番号を少なくとも含む。なお、利用制限ルール情報電文は、1つの市区町村/地域または路線/駅などが選択される都度、決済サーバ1に送信されてもよく、選択された複数の市区町村/地域または路線/駅などを含めてまとめて送信されてもよい。
【0066】
決済サーバ1の通信部11が、ステップS309で送信された利用制限ルール情報電文を受信すると、制御部12が、利用制限ルールデータテーブルにレコードを追加する(ステップS310)。利用制限ルールデータテーブルは、決済サーバ1上で実装されたDBMSのデータベーステーブルであり、
図7にその例を示す。
【0067】
図7に示すように、利用制限ルールデータテーブル700は、管理者識別番号、利用者識別番号、制限タイプ、および制限識別値を含むが、それらの項目に限定されない。制限タイプとは、例えば、ステップS308で、管理者が特定の市区町村/地域に対してのみ利用制限ルールを定義した場合、「1:市区町村/地域制限」が設定される。同じく、管理者が特定の路線/駅に対してのみ利用制限ルールを定義した場合、「2:路線/駅制限」が設定され、特定の加盟店に対してのみ利用制限ルールを定義した場合、「3:加盟店制限」が設定される。
図7は、同一の管理者および利用者において、特定の市区町村/地域ごと、および特定の路線/駅ごとに利用制限をしていることを示している。
【0068】
制限識別値は、例えば、特定の市区町村/地域ごとに利用制限をしている場合(制限タイプに「1:市区町村/地域制限」が設定されている場合)、利用制限対象となる市区町村/地域を示す値が設定される。制御部22が利用制限ルールデータテーブル700にレコードを追加する際に、制限識別値の設定値が利用制限ルール情報電文に基づいて算出されるが、設定値の具体例を、
図8とともに説明する。
【0069】
図8は、地域データテーブル800a、駅データテーブル800b、および加盟店データテーブル800cをそれぞれ示している。地域データテーブル800a、駅データテーブル800b、および加盟店データテーブル800cは、決済サーバ1上で実装されたDBMSのデータベーステーブルである。
【0070】
地域データテーブル800aは論理値を含み、各レコードが1から始まる2の倍数の一意な値を有する(例えば、No.1のレコードに「1」が設定され、No.2乃至5のレコードにはそれぞれ、「2」、「4」、「8」および「16」が設定される。駅データテーブル800bおよび加盟店データテーブル800cも同様である。
【0071】
例えば、
図3で説明した利用制限ルール登録処理において、管理者が、東京都千代田区の飯田橋および内神田における利用者の決済を制限する場合、No.1のレコード(飯田橋およびNo.4のレコード(内神田)に設定された論理値を加算した値(9)が、利用制限ルールデータテーブル700の該当のレコードの制限識別値に設定される。千代田区の全領域で利用制限をする場合、千代田区内の地域全てのレコードの論理値を加算した値が制限識別値に設定される。駅データテーブル800bおよび加盟店データテーブル800cについても、
図8に示す階層表示の上位階層を選択すると、その下位の階層の全てに対応するレコードの論理値を加算した値が制限識別値に設定される。
【0072】
図7に示すNo.1のレコードでは、東京都千代田区の飯田橋、岩本町、および内神田における決済が制限されていることを示している(制限タイプが「1:市区町村/地域制限」であり、地域データテーブル800aのNo.1(飯田橋)、2(岩本町)、および4(内神田)のレコードの論理値がそれぞれ「1」、「2」および「8」であり、それらを加算した11が制限識別値に設定される)。
【0073】
また、
図7に示すNo.2のレコードでは、山手線の新宿駅、代々木駅、原宿駅、および渋谷駅から所定の範囲内における決済が制限されていることを示している(制限タイプが「2:路線/駅制限」であり、駅データテーブル800bのNo.1(新宿駅)、2(代々木駅)、3(原宿駅)、および4(渋谷駅)のレコードの論理値がそれぞれ「1」、「2」、「4」および「8」であり、それらを加算した15が制限識別値に設定される)。
【0074】
地域データテーブル800aの各データレコードの論理値に設定された値は、一意な値であるので、例えば、制限識別値に設定された値が9である場合、1と8とに分割することができる。よって、各々の分割した値を論理値として有する地域データテーブル800aのレコード、つまり利用制限された地域を全て特定することができる。具体的には、制限識別値に設定された値から、その設定された値に最も近い2の倍数の最大値を減算し、その減算後の値に最も近い2の倍数の最大値を減算していくことで、各々の2の倍数の最大値を論理値として有する地域データテーブル800aの各レコードに対応する地域を制限対象の地域として特定することができる。駅データテーブル800bおよび加盟店データテーブル800cについても同様である。
【0075】
なお、上述した方式は、2の倍数に限定されず、Nが2以上の整数であるNの倍数であってもよい。
【0076】
利用制限ルールデータテーブル700の制限識別値を上記のように構成することによって、例えば、多数の地域および/または駅などでの決済を制限する場合に、利用制限ルールデータテーブルの列がその制限対象の地域などに応じて増大することを防止することができる。つまり、利用制限ルールデータテーブル700を簡易化することができる。
【0077】
なお、ウェアラブル端末2においても利用制限ルールデータテーブル700、地域データテーブル800a、駅データテーブル800b、および加盟店データテーブル800cを実装し、通信部21が管理者端末3から利用制限ルール情報電文を受信し、制御部22が利用制限ルールデータテーブル700にレコードを追加してもよい。この構成では、ウェアラブル端末2でもDBMSが実装され、利用者が決済を行う際、利用者による決済が制限されるか否かの判定が、ウェアラブル端末2によって行われることになる。
【0078】
また、利用制限ルールデータテーブル700、地域データテーブル800a、駅データテーブル800b、および加盟店データテーブル800cの最新の情報を決済サーバ1で記憶しつつ、利用者が決済を行う際に、ウェアラブル端末2が、決済サーバ1からそれらデータテーブルの最新の情報を受信するようにしてもよい。この構成でも、利用者が決済を行う際、利用者による決済が制限されるか否かの判定が、ウェアラブル端末2によって行われることになる。
【0079】
また、本実施形態では、利用制限を行う地域/加盟店などについて利用制限ルールを定義しているが、その逆についての利用制限ルールを定義してもよい。この場合、ウェアラブル端末2による決済を行うことができる地域および/または加盟店などについての利用制限ルールが定義される。
【0080】
<決済制限>
利用制限ルールが登録されると、該当の地域または加盟店における利用者の決済が制限されることになるが、まず、通常の決済処理を説明する。
【0081】
決済端末5のRFIDリーダが、ウェアラブル端末2のICチップ25に埋め込まれたRFIDを読み取ると、決済端末5が、ウェアラブル端末2の認証を行う(つまり、ウェアラブル端末2を保持する利用者識別番号などを取得する)。このRFIDの読み取りは、RFIDリーダから磁界が発生し、ウェアラブル端末2内部のコイルが磁気を受けて電流が発生し、ICチップ25が起動することによって、決済端末5とのデータの通信が行われる。そして、決済端末5が、決済対象となる商品などに付されたバーコードなどを読み取り、加盟店識別番号、決済額、および利用者識別番号などを含む決済データを生成して、決済サーバ1に送信する。
【0082】
また、ウェアラブル端末2の通信部21は、GPS受信機26が受信したGPS信号(緯度・経度などの位置情報)を決済サーバ1に送信する。加えて、通信部21は、アクセスポイント7から受信したビーコン信号(利用者が位置している店舗の緯度・経度などの位置情報)を決済サーバ1に送信する。
【0083】
決済サーバ1の通信部11が決済データを受信すると、制御部12が決済データを処理し、利用者の仮想口座から決済額の引き落としを行うなどの決済処理が行われる。具体的には、制御部12が、決済データに含まれる利用者識別番号に基づいて、仮想口座データテーブル500から該当のレコードを取得し、決済額が、取得した仮想口座データレコードの利用可能金額以下であるかを判定する。その決済額が利用可能金額以下である場合、該当の仮想口座から決済額の引き落としをするための振替データなどが生成されるが、これらの処理は、従来からの公知な技術であるので、本明細書ではこれ以上の詳細な説明は行わない。
【0084】
利用者の決済が、地域および/または駅ごとに制限される場合、決済サーバ1の制御部12が、ウェアラブル端末2から受信したGPS信号の位置情報(緯度・経度)および補助記憶部24に記憶された地図データに基づいて、ウェアラブル端末2が該当の地域などに位置しているかを判定する。該当の地域などに位置していると判定した場合、送信された決済データを処理せず、ウェアラブル端末、管理者端末3および/または決済端末5にエラー応答または決済実処理応答を送信する。
【0085】
具体的には、制御部12は、決済データに含まれる利用者識別番号に基づいて、利用制限ルールデータテーブル700から該当のレコードを取得し、そのレコードの制限タイプおよび制限識別値に基づいて、地域データテーブル800a、駅データテーブル800bの該当のレコードを参照して、どの地域・駅で決済が制限されているかを判定する。そして、地図データに基づいて判定されたウェアラブル端末2の現在位置が、上述したように判定された地域・駅の所定の範囲内にあるかを判定する。
【0086】
上述した地図データは、GPS信号に基づいて、ウェアラブル端末2の現在位置が該当の地域・駅の所定の範囲内にあるかを判定するための、国土地理院によって作成/承認されたデジタル地図データである。
【0087】
なお、上述したように、決済が制限されているか否かの判定は、ウェアラブル端末2において行われてもよい(GPS受信機26が定期的に受信しているGPS信号に基づいて現在位置を判定することによって)。この場合、ウェアラブル端末2の補助記憶部24にも、上述した地図データが記憶される。ウェアラブル端末2の制御部22が、決済が制限されていると判定した場合、ICチップの起動を無効化するよう制御する(つまり、決済端末5によるRFIDの読み取りが行われなくなる)。
【0088】
利用者の決済が、加盟店ごとに制限される場合、制御部22が、決済サーバ1の制御部12が、ウェアラブル端末2から受信したビーコン信号および補助記憶部24に記憶された加盟店データ(各加盟店の位置情報を含む)に基づいて、ウェアラブル端末2が該当の加盟店内に位置しているかを判定する。該当の加盟店に位置していると判定した場合の決済の制御は、上述したのと同様である。
【0089】
具体的には、制御部12は、決済データに含まれる利用者識別番号に基づいて、利用制限ルールデータテーブル700から該当のレコードを取得し、そのレコードの制限タイプおよび制限識別値に基づいて、加盟店データテーブル800cの該当のレコードを参照して、どの加盟店で決済が制限されているかを判定する。そして、補助記憶部24に記憶された加盟店データに基づいて、ウェアラブル端末2が該当の加盟店にいるかを判定する。
【0090】
上述した補助記憶部24に記憶された加盟店データは、サービス事業者手が提携している全加盟店の緯度・経度などの位置情報を記憶したデータであるが、それらの位置情報は、加盟店データテーブル800cに記憶されてもよい。
【0091】
なお、上述したように、ウェアラブル端末2から受信したビーコン信号に基づいてウェアラブル端末2が該当の加盟店に位置しているかを判定しているか否かを判定する方法に代えて、決済端末5から送信される決済データに含まれる加盟店識別番号に基づいて、ウェアラブル端末2が該当の加盟店で決済を行おうとしているか否かを判定してもよい。決済データに含まれる加盟店識別番号を使用する代わりに、ウェアラブル端末2が、アクセスポイント7からBluetooth(登録商標)などの通信方式を介して加盟店識別番号を受信し、その加盟店識別番号を決済サーバ1に送信してもよい。この代理店識別番号は、ビーコン信号に含めてもよく、または別個に送信してもよい。
【0092】
また、ウェアラブル端末2から受信したビーコン信号に含まれるSSID(Service Set Identifier)またはMACアドレスに基づいて、そのアクセスポイント7が設置された加盟店、つまりウェアラブル端末2が該当の加盟店で決済を行おうとしているか否かを判定してもよい。
【0093】
さらに、上述したように、決済が制限されているか否かの判定は、ウェアラブル端末2において行われてもよい(通信部21が該当の加盟店のアクセスポイント7から受信したビーコン信号に基づいて該当の加盟店にいるかを判定することによって)。この場合、ウェアラブル端末2の補助記憶部24にも、上述した加盟店データが記憶される。ウェアラブル端末2の制御部22が、決済が制限されていると判定した場合の決済の制御は上述したのと同様である。
【0094】
以上説明したように、管理者端末3から利用制限ルールを定義することによって、ウェアラブル端末2による決済が、定義された利用制限ルールに従って制限される。このような構成によって、例えば、子供・老人などは、決済手段となるウェアラブル端末を紛失することなく、簡易かつ便利に決済を行うことができ、また、管理者の管理外の地域などにおける決済を防止することができる。
【0095】
なお、ウェアラブル端末2による決済が制限されていない地域/加盟店において決済をする場合、決済端末5から決済サーバ1に決済データが送信されることになるが、決済サーバ1の通信部11がこの決済データを管理者端末3に送信し、管理者端末3からの確認応答を待ってから制御部12が決済データを処理するようにしてもよい。具体的には、決済サーバ1から管理者端末3に送信される決済データには、利用者が位置する地域、駅、加盟店および/または決済額などを含み、管理者端末3がその決済データを受信し、その受信に応答して管理者がその決済を許可する旨の許可電文が決済サーバ1に送信されることに応答して、制御部12がその決済データを処理する。
【0096】
このように構成することによって、例えば、管理者が利用を制限するべき地域および/または加盟店の利用制限を定義することを忘れていた場合でも、その決済を防止することができる。また、管理者が意図していない高額決済をも防止することができる。
【0097】
以上のように、本発明に係る決済制御システムの説明を詳述したが、実施形態で説明した、管理者データテーブル400などの具体的なデータ構造は例示的なものにすぎず、特許請求する事項から逸脱しない範囲で変更がされてもよい。また、
図3で説明したフローチャートにおける各ステップの順序は、特許請求する事項から逸脱しない範囲で変更がされてもよい。
【0098】
また、本実施形態では、各都道府県の市区町村/地域、鉄道の路線/駅、および加盟店ごとに決済を制限しているが、その制限の単位は例示的なものにすぎない。例えば、鉄道路線に加え、バスなどの交通機関に従った地域ごとに決済を制限するように構成してもよい。また、利用者の自宅から所定の範囲内でのみ決済を許可するように構成してもよい。さらに、加盟店を特定の年齢・年代に従って分類分けし、その特定の分類分けされた加盟店の全てにおける決済を制限するように構成してもよい。
【解決手段】携帯端末から位置情報を受信し、決済端末から決済利用者識別番号を含む決済データを受信するように構成された通信部であって、決済データは、携帯端末に付されたICチップを決済端末が読み取ることによって生成される、通信部と、決済利用者ごとに特定の地域、公共交通機関の駅または店舗での決済制限を定義した利用制限ルールを記憶するように構成されたデータ記憶部と、決済利用者識別番号に基づいて、利用制限ルールをデータ記憶部から読み取り、読み取った利用制限ルールおよび受信した位置情報に基づいて、決済を制限するか否かを判定するように構成された制御部とを備え、通信部は、制御部が決済を制限すると判定したことに応答して、決済端末にエラー応答または決済未処理応答を送信するようにさらに構成されている。