(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6240727
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】複合膜押出機のレベリング装置及び制御プロセス
(51)【国際特許分類】
B29C 47/16 20060101AFI20171120BHJP
B29C 47/92 20060101ALI20171120BHJP
B29L 7/00 20060101ALN20171120BHJP
【FI】
B29C47/16
B29C47/92
B29L7:00
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-174348(P2016-174348)
(22)【出願日】2016年9月7日
【審査請求日】2016年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】516269560
【氏名又は名称】許 錦才
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100155848
【弁理士】
【氏名又は名称】福山 東成
(72)【発明者】
【氏名】許 錦才
【審査官】
関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−315298(JP,A)
【文献】
特公昭39−014534(JP,B1)
【文献】
特開昭52−078966(JP,A)
【文献】
米国特許第04140463(US,A)
【文献】
特開平10−024481(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第103286933(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 47/16
B29C 47/92
B29L 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合膜押出機のレベリング装置であって、
前記複合膜押出機は、ダイヘッドと、複合膜における膜層の膜排出口とを含み、
前記レベリング装置は、前記ダイヘッドを直線運動可能とするダイヘッド駆動装置と、前記膜排出口を前記ダイヘッドの移動に伴って当該ダイヘッドの移動方向と同一方向に運動させた後に初期位置に復帰させる幅調整機構と、PLCコントローラとを含み、
前記ダイヘッドの運動方向が前記幅調整機構による位置復帰方向と平行であり、
前記ダイヘッド駆動装置と前記幅調整機構が、前記PLCコントローラに信号を送信する変位量検出装置を含み、
前記幅調整機構が更に、前記PLCコントローラにより制御される幅調整モータと、前記膜排出口を運動させる伝動ユニットとを含む
ことを特徴とする複合膜押出機のレベリング装置。
【請求項2】
前記ダイヘッド駆動装置は、リニアモータ又はリニアガイドであることを特徴とする請求項1記載の複合膜押出機のレベリング装置。
【請求項3】
前記変位量検出装置は、エンコーダであることを特徴とする請求項1記載の複合膜押出機のレベリング装置。
【請求項4】
前記変位量検出装置は、回折格子変位センサであることを特徴とする請求項1記載の複合膜押出機のレベリング装置。
【請求項5】
前記伝動ユニットは、前記ダイヘッドに設けられたスケール標識と、ラックと、前記幅調整モータにより動作するギヤとを含み、
前記ギヤと前記ラックが噛合するように構成されている
ことを特徴とする請求項1記載の複合膜押出機のレベリング装置。
【請求項6】
前記伝動ユニットは、前記ダイヘッドに設けられたスケール標識と、スクリューと、当該スクリューに覆設されて前記幅調整モータにより動作するロータとを含み、
前記スクリューと前記ロータの内壁が噛合するように構成されている
ことを特徴とする請求項1記載の複合膜押出機のレベリング装置。
【請求項7】
前記レベリング装置はシールユニットを更に含み、
前記膜排出口が前記シールユニットに設けられ、
前記シールユニットが、前記ダイヘッドに固定された固定部材と、前記伝動ユニットの運動に伴って運動するスライダと、前記スライダの底部に固定されたシール部材とを含む
ことを特徴とする請求項1記載の複合膜押出機のレベリング装置。
【請求項8】
前記固定部材には、前記スライダを収容して運動させるスライド溝が開設され、
前記スライド溝がフック部を含む
ことを特徴とする請求項7記載の複合膜押出機のレベリング装置。
【請求項9】
前記PLCコントローラは、マンマシンインタフェースを備えることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の複合膜押出機のレベリング装置。
【請求項10】
複合膜押出機のレベリング装置における制御プロセスであって、
前記複合膜押出機は、ダイヘッドと、複合膜における膜層の膜排出口とを含み、
前記レベリング装置は、前記ダイヘッドを直線運動可能とするダイヘッド駆動装置と、前記膜排出口を前記ダイヘッドの移動に伴って当該ダイヘッドの移動方向と同一方向に運動させた後に初期位置に復帰させる幅調整機構と、PLCコントローラとを含み、
前記ダイヘッドの運動方向が前記幅調整機構による位置復帰方向と平行であり、
前記ダイヘッド駆動装置と前記幅調整機構は、変位量検出装置を含み、
前記幅調整機構は更に、前記PLCコントローラにより制御される幅調整モータと、前記膜排出口を運動させる伝動ユニットとを含み、
前記変位量検出装置は、前記ダイヘッドと前記幅調整機構の変位量信号を前記PLCコントローラに送信し、
前記ダイヘッドの移動に伴って前記幅調整機構及び前記膜排出口が当該ダイヘッドの移動方向と同一方向に移動した後に、前記PLCコントローラは、前記ダイヘッドと前記幅調整機構の間の変位補償量に基づいて前記幅調整モータを駆動し、前記伝動ユニットにより当該膜排出口を前記初期位置に復帰可能にする
ことを特徴とする複合膜押出機のレベリング装置における制御プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質包装材料の製造技術分野に関し、更に、複合膜の平坦度調節装置に関する。特に、複合膜について、巻き取り過程で継続的に膜を積層するロール表面に現れる明らかな凹凸を自動レベリングし、レベリングされた複合膜の各膜層を正確に位置決めして積層することで、ロール表面を平らにして押し出す装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の軟質包装業界におけるプラスチック押出機では、複合膜の押し出し時に押出ダイヘッドが熱変形したり降伏変形したりすることで、押し出し後に複合膜の各膜に凹凸が生じるとの現象があった。位置固定されたダイヘッド押出ダイヘッドを用いる場合、各膜層の突出部分及び/又は凹陥部分が同一位置に積層されると、複合膜の凹凸はより深刻となり、製品を廃棄することすらある。また、押出機のダイヘッドが移動する場合には、初期設定された膜排出口の位置に複合膜の各膜層が対応しない。従来の方法では、膜排出口以外の部分の各膜を切除することで、複合膜の各膜層が同一位置において同一寸法で排出されるよう保証している(特許文献1参照)。しかし、このような方法では大量の原材料を消耗することになり、極めて無駄が多い。そこで、複合膜における各膜層の凹凸をレベリング可能であるとともに、複合膜の積層時の無駄を減少可能な装置を設計することが現在早急に解決すべき技術的課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国実用新案第202429762号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来技術における瑕疵を解消することを目的とする。
【0005】
本発明は、押出機のダイヘッドを直線運動可能とするダイヘッド駆動装置と、複合膜における膜層の膜排出口を押出機のダイヘッドの移動に伴って運動させた後に初期位置に復帰させる幅調整機構と、PLCコントローラとを含む複合膜押出機のレベリング装置であって、押出機のダイヘッドの運動方向が幅調整機構による位置復帰方向と平行であり、ダイヘッド駆動装置と幅調整機構が、PLCコントローラに信号を送信する変位量検出装置を含み、幅調整機構が更に、PLCコントローラにより制御される幅調整モータと、膜排出口を運動させる伝動ユニットを含む複合膜押出機のレベリング装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
好ましくは、ダイヘッド駆動装置は、リニアモータ又はリニアガイドである。
【0007】
好ましくは、変位量検出装置は、エンコーダである。
【0008】
好ましくは、変位量検出装置は、回折格子変位センサである。
【0009】
好ましくは、伝動ユニットは、押出機のダイヘッドに設けられたスケール標識及びラック、幅調整モータにより動作するギヤを含み、ギヤとラックが噛合するように構成されている。
【0010】
好ましくは、伝動ユニットは、押出機のダイヘッドに設けられたスケール標識及びスクリュー、スクリューに覆設されて幅調整モータにより動作するロータを含み、スクリューとロータの内壁が噛合するように構成されている。
【0011】
好ましくは、シールユニットを更に含み、膜排出口がシールユニットに設けられ、シールユニットが、押出機のダイヘッドに固定された固定部材と、伝動ユニットの運動に伴って運動するスライダ、及びスライダの底部に固定されたシール部材を含む。
【0012】
好ましくは、固定部材には、スライダを収容して運動させるスライド溝が開設され、スライド溝がフック部を含む。
【0013】
好ましくは、PLCコントローラは、マンマシンインタフェースを備える。
【0014】
本発明の他の目的は、次の方案で実現される。即ち、複合膜押出機のレベリング装置における制御プロセスであって、ダイヘッド駆動装置と幅調整機構における変位量検出装置は、それぞれ押出機のダイヘッドと幅調整機構の変位量信号をPLCコントローラに送信し、PLCコントローラは、押出機のダイヘッドと幅調整機構の間の変位補償量を分析した後に幅調整モータを駆動し、伝動ユニットにより膜排出口を初期位置に復帰可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以下の有益な効果が得られる。即ち、ダイヘッド駆動装置によって押出機のダイヘッドを運動させることで、複合膜における各膜層の凹凸が重なり合うことがなくなる結果、複合膜の歩留り率が上がり、製品の平坦度が向上するとともに、製品品質が高まる。また、幅調整機構によって、複合膜の膜排出口を押出機のダイヘッドの移動に伴って運動させた後に初期位置に復帰させるため、原材料の無駄が減少する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、レベリング装置の全体構造を示す図である。
【
図4】
図4は、レベリング装置の制御プロセスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、実施例を組み合わせて本発明につき更に詳細に説明する。ただし、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0018】
実施例1
図1〜
図4に示す複合膜押出機のレベリング装置は、押出機のダイヘッドを直線運動可能とするダイヘッド駆動装置1と、複合膜の膜排出口3を押出機のダイヘッドの移動に伴って運動させた後に初期位置に復帰させる幅調整機構2と、PLCコントローラとを含む。押出機のダイヘッドの運動方向は幅調整機構2による位置復帰方向と平行であり、ダイヘッド駆動装置1と幅調整機構2は、PLCコントローラに信号を送信する変位量検出装置を含む。また、幅調整機構2は更に、PLCコントローラにより制御される幅調整モータ21と、膜排出口3を運動させる伝動ユニット22を含む。好ましくは、変位量検出装置はエンコーダであり、エンコーダによって初期位置が特定される。エンコーダの初期位置は膜排出口3の初期位置に対応している。ダイヘッド駆動装置1と幅調整機構2とのエンコーダは、初期位置に対する変位量を検出し、信号に変換してからPLCコントローラに送信可能である。PLCコントローラはダイヘッド駆動装置1と幅調整機構2の変位量の差、即ち補償量を算出し、PLCコントローラが補償量に基づいて幅調整モータ21の回動を制御する。ダイヘッドが右方向へ移動する場合、ダイヘッドの移動に伴ってラック222、幅調整機構2、膜排出口3が右方向へ移動する。このとき、膜排出口3の初期位置への復帰を保証するためには、幅調整機構2を左方向へ移動させる必要がある。逆の場合には、幅調整モータ21が出力軸とギヤ223を順に回動させると、ギヤ223はラック222に対して左方向に運動するとともに、スライダ42、シール部材43及び膜排出口3を左方向へ運動させ、膜排出口3が初期位置に復帰する。ダイヘッド駆動装置1は、複合膜における各膜層同士の凹凸の積層を解消することで、製品の廃棄率を低下させるためのものである。また、幅調整機構2は、初期設定位置にない複合膜の各膜層を同一位置、同一寸法で次の加工工程へ投入し、原材料の無駄を減らすためのものである。
【0019】
また、伝動ユニット22は、押出機のダイヘッドに設けられたスケール標識221を更に含む。スケール標識221はスケール221定規であってもよいし、ラック222に設けられるスケール221線としてもよい。シールユニット4は、押出機のダイヘッドに固定された固定部材41を更に含む。固定部材41には、スライダ42を収容して運動させるスライド溝が開設されており、スライド溝はフック部を含む。フック部はスライダ42の脱落を防止するためのものである。フック部は、スライド溝におけるL状の屈折辺としてもよい。
【0020】
実施例2
図1、
図3及び
図4に示す複合膜押出機のレベリング装置は、押出機のダイヘッドを直線運動可能とするダイヘッド駆動装置1と、複合膜の膜排出口3を押出機のダイヘッドの移動に伴って運動させた後に初期位置に復帰させる幅調整機構2と、PLCコントローラとを含む。押出機のダイヘッドの運動方向は幅調整機構2による位置復帰方向と平行であり、ダイヘッド駆動装置1と幅調整機構2は、PLCコントローラに信号を送信する変位量検出装置を含む。また、幅調整機構2は更に、PLCコントローラにより制御される幅調整モータ21と、膜排出口3を運動させる伝動ユニット22を含む。ダイヘッド駆動装置1は、押出機のダイヘッドを左右に直線運動可能とするリニアモータ又はリニアガイドである。PLCコントローラは、マンマシンインタフェース(HIMI)を備える。マンマシンインタフェースは、押出機のダイヘッドの初期量、移動量範囲及び幅調整機構2の初期量、補償量範囲等のパラメータを含むため、ユーザは、実際の工程の必要性に応じてマンマシンインタフェースに設定すればよい。また、各データの比較分析や計算は、PLCコントローラが具備するソフトウェアを実行することで実現される。好ましくは、変位量検出装置は回折格子変位センサであり、回折格子変位センサは回折格子スケール221と検出部材を含む。検出部材はダイヘッド駆動装置1と幅調整機構2に設けられ、初期位置を特定するとともに、ダイヘッド駆動装置1と幅調整機構2の変位量を検知し、信号に変換してPLCコントローラに送信する。PLCコントローラはダイヘッド駆動装置1と幅調整機構2の変位量の差、即ち補償量を算出し、PLCコントローラが補償量に基づいて幅調整モータ21の回動を制御する。ダイヘッドが右方向へ移動する場合、ダイヘッドの移動に伴ってスクリュー、幅調整機構2、膜排出口3が右方向へ移動する。このとき、膜排出口3の初期位置への復帰を保証するためには、幅調整機構2を左方向へ移動させる必要がある。逆の場合には、幅調整モータ21が出力軸とギヤ223を順に回動させると、ギヤ223がラック222に対して左方向に運動するとともに、スライダ42、シール部材43及び膜排出口3が左方向へ運動して、膜排出口3が初期位置に復帰する。
【0021】
実施例1と実施例2はいずれもPLCを有し、好ましくは、まず駆動装置に信号を送信し、幅調整モータ21とダイヘッド駆動装置1が駆動装置のパルスに基づいて移動動作を行う。
【0022】
上記によれば、本発明を良好に実現可能である。なお、上記実施例は本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明の実施範囲を限定するものではない。即ち、本発明の内容に基づいてなされる等価の変更及び補足は、いずれも本発明の特許請求の範囲に包含される。
【要約】
【課題】複合膜における各膜層の凹凸をレベリング可能であるとともに、複合膜の積層時の無駄を減少可能な複合膜押出機装置を提供する。
【解決手段】押出機のダイヘッドを直線運動可能とするダイヘッド駆動装置と、複合膜における膜層の膜排出口を押出機のダイヘッドの移動に伴って運動させた後に初期位置に復帰させる幅調整機構と、PLCコントローラとを含む。押出機のダイヘッドの運動方向は幅調整機構による位置復帰方向と平行であり、ダイヘッド駆動装置と幅調整機構は、PLCコントローラに信号を送信する変位量検出装置を含む。幅調整機構は更に、PLCコントローラにより制御される幅調整モータと、膜排出口を運動させる伝動ユニットを含む。これにより、複合膜の歩留り率が上がり、製品の平坦度が向上するとともに、製品品質が高まる。また、原材料の無駄が減少する。
【選択図】
図3