特許第6240733号(P6240733)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6240733
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】使い捨て着用物品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/49 20060101AFI20171120BHJP
   A61F 13/496 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   A61F13/49 410
   A61F13/496
   A61F13/49 310
【請求項の数】6
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2016-194293(P2016-194293)
(22)【出願日】2016年9月30日
【審査請求日】2017年9月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】特許業務法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 寅成
【審査官】 田中 尋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−136794(JP,A)
【文献】 特開2006−240301(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/121981(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15−13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性を有する第1シート層及び通気性を有する第2シート層の間に弾性フィルムが積層され、前記第1シート層及び第2シート層が、間隔を空けて配列された多数のシート接合部で、弾性フィルムを貫通する接合孔を通じて又は前記弾性フィルムを介して接合された、弾性フィルム伸縮構造を備えており、
前記弾性フィルム伸縮構造を有する領域は、伸縮方向に伸縮可能な伸縮領域を有しており、
前記伸縮領域は、前記弾性フィルムの収縮力により前記伸縮方向に収縮しているとともに、前記伸縮方向に伸長可能であり、
前記弾性フィルムにおける前記シート接合部と重ならない部位に通気孔が形成されている、
ことを特徴とする使い捨て着用物品。
【請求項2】
前記第1シート層及び第2シート層がそれぞれ不織布であり、
前記第1シート層及び第2シート層は、間隔を空けて配列された多数のシート接合部で、前記弾性フィルムを貫通する接合孔を通じて接合されており、
前記シート接合部の少なくとも一部分では、前記弾性フィルムの溶融固化物を介して前記第1シート層及び第2シート層が接合されており、
前記弾性フィルム伸縮構造を有する領域を前記伸縮方向に弾性限界伸びまで伸長した状態で、前記伸縮方向及びこれと直交する方向の少なくとも一方において前記シート接合部の寸法が前記通気孔の寸法より大きい、
請求項1記載の使い捨て着用物品。
【請求項3】
前記第1シート層及び第2シート層がそれぞれ不織布であり、
前記第1シート層及び第2シート層は、間隔を空けて配列された多数のシート接合部で、前記弾性フィルムに形成された接合孔を通じて接合されており、
前記シート接合部の少なくとも一部分では、前記弾性フィルムの溶融固化物を介して前記第1シート層及び第2シート層が接合されており、
前記弾性フィルム伸縮構造を有する領域を前記伸縮方向に弾性限界伸びまで伸長した状態で、前記伸縮方向及びこれと直交する方向の少なくとも一方において、前記シート接合部の寸法が前記通気孔の寸法より小さく、かつ前記シート接合部の中心間隔が前記通気孔の中心間隔より広い、
請求項1又は2記載の使い捨て着用物品。
【請求項4】
前記通気孔は、前記弾性フィルムの自然長の状態でスリット形状を有している、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使い捨て着用物品。
【請求項5】
前身頃から後身頃にわたる一体的な外装体、又は前身頃及び後身頃に別々に設けられた外装体と、この外装体の幅方向中間部に取り付けられた、股間部の前後両側にわたる内装体と、前身頃における外装体の両側部と後身頃における外装体の両側部とがそれぞれ接合されたサイドシール部と、ウエスト開口及び左右一対の脚開口とを備えた、パンツタイプ使い捨て着用物品であって、
前記前身頃及び後身頃の少なくとも一方における前記外装体は、少なくとも前後方向の一部の範囲における前記サイドシール部間に対応する幅方向範囲にわたり、前記弾性フィルム伸縮構造を、その伸縮領域の伸縮方向が幅方向となるように備えている、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の使い捨て着用物品。
【請求項6】
不織布からなる第1シート層及び不織布からなる第2シート層の間に弾性フィルムが積層され、前記第1シート層及び第2シート層が、間隔を空けて配列された多数のシート接合部で、弾性フィルムを貫通する接合孔を通じて接合された、弾性フィルム伸縮構造を備えており、
前記弾性フィルム伸縮構造を有する領域は、伸縮方向に伸縮可能な伸縮領域を有しており、
前記伸縮領域は、前記弾性フィルムの収縮力により前記伸縮方向に収縮しているとともに、前記伸縮方向に伸長可能である、
使い捨て着用物品の製造方法であって、
前記弾性フィルム伸縮構造を有する領域を形成するに際し、通気性を有する第1シート層と通気性を有する第2シート層との間に、間隔を空けて配列された多数の通気孔を有する弾性フィルムを前記伸縮領域の伸縮方向に伸長しつつ挟んだ状態で、それらを、前記通気孔と重ならない箇所を含むように間隔を空けて配列された多数箇所で溶着することにより、前記多数箇所で前記弾性フィルムを溶融して接合孔を形成するとともに、その接合孔の位置で少なくとも前記弾性フィルムの溶融物の固化により前記第1シート層及び第2シート層を接合する、
ことを特徴とする使い捨て着用物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性フィルムが第1シート層及び第2シート層で挟まれた伸縮構造を有する使い捨て着用物品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ等の使い捨て着用物品においては、身体表面へのフィット性を向上するために、脚周りや胴周り等の適所に伸縮性を付与することが一般的である。伸縮性を付与するための手法としては、従来、糸ゴム等の細長状弾性部材をその長手方向に伸長した状態で取り付ける手法が広く採用されているが、ある程度の幅で伸縮性を付与したい場合には、糸ゴムを幅に間隔を置いて並べて配置した状態で固定する態様が採用されている。また、さらに面としてのフィット性に優れるものとして、弾性フィルムを伸縮性の付与方向に伸長した状態で取り付ける手法も提案されている。(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この弾性フィルムによる伸縮構造(以下、弾性フィルム伸縮構造ともいう)は、伸縮領域が不織布からなる第1シート層と、不織布からなる第2シート層との間に弾性フィルムが積層されてなるとともに、弾性フィルムがそれらの表面に沿う伸縮方向に伸長された状態で、第1シート層及び第2シート層が、伸縮方向及びこれと直交する方向にそれぞれ間隔を空けて配列された多数の点状のシート接合部で、弾性フィルムを貫通する接合孔を通じて接合されてなるものである。このような弾性フィルム伸縮構造は、自然長状態では、シート接合部間において弾性フィルムが収縮するのに伴い、シート接合部の間隔が狭くなり、第1シート層及び第2シート層におけるシート接合部間に伸縮方向と交差する方向に延びる収縮皺が形成される。反対に伸長時には、シート接合部間において弾性フィルムが伸長するのに伴い、シート接合部の間隔及び第1シート層及び第2シート層における収縮皺が広がり、第1シート層及び第2シート層の完全展開状態まで弾性伸長が可能となる。この弾性フィルム伸縮構造は、面的なフィット性に優れるのはもちろん、第1シート層及び第2シート層と弾性フィルムとの接合が無く、かつ第1シート層及び第2シート層の接合も極めて少ないため非常に柔軟であり、また、弾性フィルムの接合孔が厚み方向の通気性向上にも寄与するという利点がある。
【0004】
しかし、上記従来の弾性フィルム伸縮構造は、接合孔がシート接合部を取り囲む形態となり、シート接合部の周囲以外の部分における通気性はほとんど期待できない。使い捨て着用物品において、通気性の低下は、蒸れによる不快感をもたらすことはいうまでもない。
【0005】
この点について、特許文献1では、別の実施形態として、シート接合部を溶着により形成した後に、伸縮方向と直交する方向に引っ張ることによりシート接合部を断裂させて通気孔を形成することが提案されているが、この場合にも接合孔はシート接合部の位置にしか設けられず、通気性の向上はシート接合部の配置や数に制限されるという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2004−532758号公報
【特許文献2】特開平09−285487号公報
【特許文献3】特開平11−216163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明の主たる課題は、弾性フィルム伸縮構造において、シート接合部の制限を受けずに、通気性を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決した本発明の代表的態様は次のとおりである。
<第1の態様>
通気性を有する第1シート層及び通気性を有する第2シート層の間に弾性フィルムが積層され、前記第1シート層及び第2シート層が、間隔を空けて配列された多数のシート接合部で、弾性フィルムを貫通する接合孔を通じて又は前記弾性フィルムを介して接合された、弾性フィルム伸縮構造を備えており、
前記弾性フィルム伸縮構造を有する領域は、伸縮方向に伸縮可能な伸縮領域を有しており、
前記伸縮領域は、前記弾性フィルムの収縮力により前記伸縮方向に収縮しているとともに、前記伸縮方向に伸長可能であり、
前記弾性フィルムにおける前記シート接合部と重ならない部位に通気孔が形成されている、
ことを特徴とする使い捨て着用物品。
【0009】
(作用効果)
本第1の態様では、弾性フィルムにおけるシート接合部と重ならない部位に通気孔が形成されているため、シート接合部の制限を受けずに通気性を向上することができる。
【0010】
<第2の態様>
前記第1シート層及び第2シート層がそれぞれ不織布であり、
前記第1シート層及び第2シート層は、間隔を空けて配列された多数のシート接合部で、前記弾性フィルムを貫通する接合孔を通じて接合されており、
前記シート接合部の少なくとも一部分では、前記弾性フィルムの溶融固化物を介して前記第1シート層及び第2シート層が接合されており、
前記弾性フィルム伸縮構造を有する領域を前記伸縮方向に弾性限界伸びまで伸長した状態で、前記伸縮方向及びこれと直交する方向の少なくとも一方において前記シート接合部の寸法が前記通気孔の寸法より大きい、
第1の態様の使い捨て着用物品。
【0011】
(作用効果)
それぞれ不織布からなる第1シート層及び第2シート層が、シート接合部で接合孔を通じてかつ弾性フィルムの溶融固化物を介して接合された接合構造は、後述する第6の態様のように溶着により弾性フィルムへの接合孔の形成と、シート接合部の形成とを同時に行う手法により製造することができる。第1シート層及び第2シート層を直接に溶着するよりも弾性フィルムの溶融固化物を介して(接着剤として)接合すると、剥離強度が高くなる。ここで、シート接合部の寸法が通気孔の寸法より小さいと、部分的にシート接合部の位置と通気孔の位置が重なったときに、シート接合部の全体にわたり第1シート層及び第2シート層を直接に溶着することとなり、シート接合部の剥離強度が低下するおそれがある。シート接合部が剥離すると、剥離部分で第1シート及び第2シートが浮いてしまい、見栄えが悪化する。
これに対して、本態様のようにシート接合部の寸法が通気孔の寸法より大きい場合、シート接合部の少なくとも一部分では必ず弾性フィルムの溶融固化物を介して接合されることとなり、剥離強度が高いものとなる。
【0012】
<第3の態様>
前記第1シート層及び第2シート層がそれぞれ不織布であり、
前記第1シート層及び第2シート層は、間隔を空けて配列された多数のシート接合部で、前記弾性フィルムに形成された接合孔を通じて接合されており、
前記シート接合部の少なくとも一部分では、前記弾性フィルムの溶融固化物を介して前記第1シート層及び第2シート層が接合されており、
前記弾性フィルム伸縮構造を有する領域を前記伸縮方向に弾性限界伸びまで伸長した状態で、前記伸縮方向及びこれと直交する方向の少なくとも一方において、前記シート接合部の寸法が前記通気孔の寸法より小さく、かつ前記シート接合部の中心間隔が前記通気孔の中心間隔より広い、
第1又は2の態様の使い捨て着用物品。
【0013】
(作用効果)
それぞれ不織布からなる第1シート層及び第2シート層が、シート接合部で接合孔を通じてかつ弾性フィルムの溶融固化物を介して接合された接合構造は、後述する第6の態様のように溶着により弾性フィルムへの接合孔の形成と、シート接合部の形成とを同時に行う手法により製造することができる。第1シート層及び第2シート層を直接に溶着するよりも弾性フィルムの溶融固化物を介して(接着剤として)接合すると、剥離強度が高くなる。ここで、シート接合部の寸法が通気孔の寸法より小さいと、部分的にシート接合部の位置と通気孔の位置が重なったときに、シート接合部の全体にわたり第1シート層及び第2シート層を直接に溶着することとなり、シート接合部の剥離強度が低下するおそれがある。シート接合部が剥離すると、剥離部分で第1シート及び第2シートが浮いてしまい、見栄えが悪化する。
これに対して、本態様のようにシート接合部の中心間隔が通気孔の中心間隔よりも広いと、シート接合部の位置と通気孔の位置とが重なる確率が低くなり、剥離強度の低下が発生しにくいものとなる。
【0014】
<第4の態様>
前記通気孔は、前記弾性フィルムの自然長の状態でスリット形状を有している、第1〜3のいずれか1つの態様の使い捨て着用物品。
【0015】
(作用効果)
それぞれ不織布からなる第1シート層及び第2シート層が、シート接合部で接合孔を通じてかつ弾性フィルムの溶融固化物を介して接合された接合構造は、後述する第6の態様のように溶着により弾性フィルムへの接合孔の形成と、シート接合部の形成とを同時に行う手法により製造することができる。第1シート層及び第2シート層を直接に溶着するよりも弾性フィルムの溶融固化物を介して(接着剤として)接合すると、剥離強度が高くなる。ここで、通気孔の寸法が大きいと、通気孔と重なる位置で第1シート層及び第2シート層を直接に溶着する確率が高くなり、シート接合部の剥離強度が低下するおそれがある。シート接合部が剥離すると、剥離部分で第1シート及び第2シートが浮いてしまい、見栄えが悪化する。
これに対して、通気孔の形状を本態様のようなスリット形状とすることにより、通気孔と重なる位置で第1シート層及び第2シート層を直接に溶着する確率が低くなるとともに、直接に溶着する場合であっても溶着面積は小さくなる。よって、第1シート層及び第2シート層の剥離強度の低下が発生しにくいものとなる。
なお、通気孔が伸縮方向と交差する方向に延びるスリットの場合、伸長した状態で通気孔の面積が拡大し、通気性が向上する反面、第1シート層及び第2シート層を直接に溶着する確率及び直接溶着面積は増加する。一方、通気孔が伸縮方向に延びるスリットの場合、伸長した状態でも通気孔の面積は拡大しないが、第1シート層及び第2シート層を直接に溶着する確率及び直接溶着面積は著しく低いものとなる。
【0016】
<第5の態様>
前身頃から後身頃にわたる一体的な外装体、又は前身頃及び後身頃に別々に設けられた外装体と、この外装体の幅方向中間部に取り付けられた、股間部の前後両側にわたる内装体と、前身頃における外装体の両側部と後身頃における外装体の両側部とがそれぞれ接合されたサイドシール部と、ウエスト開口及び左右一対の脚開口とを備えた、パンツタイプ使い捨て着用物品であって、
前記前身頃及び後身頃の少なくとも一方における前記外装体は、少なくとも前後方向の一部の範囲における前記サイドシール部間に対応する幅方向範囲にわたり、前記弾性フィルム伸縮構造を、その伸縮領域の伸縮方向が幅方向となるように備えている、
第1〜4のいずれか1つの態様の使い捨て着用物品。
【0017】
(作用効果)
パンツタイプ使い捨て着用物品は、使い捨て着用物品の中でも、より下着に近いものとされている反面、フィット性を確保するために広範囲に伸縮領域を設けることが一般的となっている。よって、本発明はこのようなパンツタイプ使い捨て着用物品の伸縮領域に適している。
【0018】
<第6の態様>
不織布からなる第1シート層及び不織布からなる第2シート層の間に弾性フィルムが積層され、前記第1シート層及び第2シート層が、間隔を空けて配列された多数のシート接合部で、弾性フィルムを貫通する接合孔を通じて接合された、弾性フィルム伸縮構造を備えており、
前記弾性フィルム伸縮構造を有する領域は、伸縮方向に伸縮可能な伸縮領域を有しており、
前記伸縮領域は、前記弾性フィルムの収縮力により前記伸縮方向に収縮しているとともに、前記伸縮方向に伸長可能である、
使い捨て着用物品の製造方法であって、
前記弾性フィルム伸縮構造を有する領域を形成するに際し、通気性を有する第1シート層と通気性を有する第2シート層との間に、間隔を空けて配列された多数の通気孔を有する弾性フィルムを前記伸縮領域の伸縮方向に伸長しつつ挟んだ状態で、それらを、前記通気孔と重ならない箇所を含むように間隔を空けて配列された多数箇所で溶着することにより、前記多数箇所で前記弾性フィルムを溶融して接合孔を形成するとともに、その接合孔の位置で少なくとも前記弾性フィルムの溶融物の固化により前記第1シート層及び第2シート層を接合する、
ことを特徴とする使い捨て着用物品の製造方法。
【0019】
(作用効果)
このように、第1シート層及び第2シート層間に弾性フィルムを挟んだ状態で、接合部の配列パターンでヒートシールや超音波シール等により溶着すると、弾性フィルムに接合孔を形成するのと同時に、その接合孔を介して弾性フィルムの溶融物の固化により第1シート層及び第2シート層を接合することができ、簡素かつ効率的に製造することができる。しかも、弾性フィルムは接合孔とは別に通気孔を有するものとなるため、シート接合部の配置や数の制限なく、通気性を向上することができる。さらに、第1シート層及び第2シート層は弾性フィルムの溶融固化物を介して接合されるため、高い剥離強度を得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のとおり、本発明によれば、弾性フィルム伸縮構造において、シート接合部の制限を受けずに、通気性を向上することができる、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの平面図(内面側)である。
図2】展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの平面図(外面側)である。
図3】展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの要部のみ示す平面図である。
図4】(a)は図1のC−C断面図、(b)は図1のE−E断面図である。
図5図1のA−A断面図である。
図6図1のB−B断面図である。
図7】(a)は伸縮領域の要部平面図、(b)は(a)のD−D断面図、(c)は装着状態における断面図、(d)は自然長状態における断面図である。
図8】伸縮領域の(a)平面図、(b)拡大平面図、(c)拡大斜視図である。
図9】シート接合部の要部拡大平面図である。
図10】伸縮領域の(a)平面図、(b)拡大平面図、(c)拡大斜視図である。
図11】弾性フィルム伸縮構造の組立図である。
図12】弾性フィルム伸縮構造の(a)伸長状態の斜視図、(b)自然長状態の斜視図である。
図13】(a)は非伸縮領域の要部平面図、(b)は(a)のD−D断面図、(c)は装着状態における断面図、(d)は自然長状態における断面図である。
図14】弾性フィルム伸縮構造の組立図である。
図15】展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの平面図(外面側)である。
図16】(a)は図15のC−C断面図、(b)は図15のE−E断面図である。
図17】ある程度伸長した外装体の要部断面を概略的に示す断面図である。
図18】ある程度伸長した外装体の要部断面を概略的に示す断面図である。
図19】(a)第1溶着形態で形成されたシート接合部を概略的に示す拡大平面図、(b)第3溶着形態で形成されたシート接合部を概略的に示す拡大平面図である。
図20】超音波シール装置の概略図である。
図21】シート接合部の各種配列例を示す平面図である。
図22】シート接合工程の断面図である。
図23】弾性フィルム伸縮構造の組立図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しつつ詳説する。なお、断面図中の点模様部分はホットメルト接着剤等の接合手段を示している。
図1図6はパンツタイプ使い捨ておむつを示している。このパンツタイプ使い捨ておむつ(以下、単におむつともいう。)は、前身頃F及び後身頃Bをなす外装体20と、この外装体20の内面に固定され一体化された内装体10とを有しており、内装体10は液透過性トップシート11と液不透過性シート12との間に吸収体13が介在されてなるものである。製造に際しては、外装体20の内面(上面)に対して内装体10の裏面がホットメルト接着剤などの接合手段によって接合された後に、内装体10及び外装体20が前身頃F及び後身頃Bの境界である前後方向LD(縦方向)の中央で折り畳まれ、その両側部が相互に熱溶着又はホットメルト接着剤などによって接合されてサイドシール部21が形成されることによって、ウエスト開口及び左右一対の開口が形成されたパンツタイプ使い捨ておむつとなる。
【0023】
(内装体の構造例)
内装体10は、図4図6に示すように、液透過性トップシート11と、ポリエチレン等からなる液不透過性シート12との間に、吸収体13を介在させた構造を有しており、トップシート11を透過した排泄液を吸収保持するものである。内装体10の平面形状は特に限定されないが、図1に示されるようにほぼ長方形とすることが一般的である。
【0024】
吸収体13の表側(肌側)を覆う液透過性トップシート11としては、有孔又は無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維は、ポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。液透過性トップシート11に多数の透孔を形成した場合には、尿などが速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。液透過性トップシート11は、吸収体13の側縁部を巻き込んで吸収体13の裏側まで延在している。
【0025】
吸収体13の裏側(非肌当接側)を覆う液不透過性シート12は、ポリエチレン又はポリプロピレンなどの液不透過性プラスチックシートが用いられるが、近年はムレ防止の点から透湿性を有するものが好適に用いられる。この遮水・透湿性シートは、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸又は二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートである。
【0026】
吸収体13としては、公知のもの、例えばパルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布を基本とし、必要に応じて高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができる。この吸収体13は、形状及びポリマー保持等のため、必要に応じてクレープ紙等の、液透過性及び液保持性を有する包装シート14によって包装することができる。
【0027】
吸収体13の形状は、股間部に前後両側よりも幅の狭い括れ部分13Nを有するほぼ砂時計状に形成されている。括れ部分13Nの寸法は適宜定めることができるが、括れ部分13Nの前後方向長さはおむつ全長の20〜50%程度とすることができ、その最も狭い部分の幅は吸収体13の全幅の40〜60%程度とすることができる。このような括れ部分13Nを有する場合において、内装体10の平面形状がほぼ長方形とされていると、内装体10における吸収体13の括れ部分13Nと対応する部分に、吸収体13を有しない無吸収体側部17が形成される。
【0028】
液不透過性シート12は、液透過性トップシート11とともに吸収体13の幅方向両側で裏側に折り返されている。この液不透過性シート12としては、排便や尿などの褐色が出ないように不透明のものを用いるのが望ましい。不透明化としては、プラスチック中に、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、ホワイトカーボン、クレイ、タルク、硫酸バリウムなどの顔料や充填材を内添してフィルム化したものが好適に使用される。
【0029】
内装体10の両側部には脚周りにフィットする立体ギャザー90が形成されている。この立体ギャザー90は、図5及び図6に示されるように、内装体10の裏面の側部に固定された固定部91と、この固定部91から内装体10の側方を経て内装体10の表面の側部上まで延在する本体部92と、本体部92の前後端部が倒伏状態で内装体10の表面(図示形態ではトップシート11)の側部に固定されて形成された倒伏部分93と、この倒伏部分93間が非固定とされて形成された自由部分94とを有している。これらの各部は、不織布などのシートを折り返して二重シートとしたギャザーシート95により形成されている。ギャザーシート95は、内装体10の前後方向全体にわたり取り付けられており、倒伏部分93は無吸収体側部17よりも前側及び後側に設けられ、自由部分94は無吸収体側部17の前後両側に延在されている。また、二重のギャザーシート95間には、自由部分の先端部等に細長状ギャザー弾性部材96が配設されている。ギャザー弾性部材96は、製品状態において図5に示すように、弾性収縮力により自由部分94を立ち上げるためのものである。
【0030】
図5及び図6に示す形態では、倒伏非伸縮部分97以外ではギャザー弾性部材96の位置のホットメルト接着剤を介して、ギャザー弾性部材96がギャザーシート95に接着固定されるとともに、ギャザーシート95の対向面が接合されているものの、倒伏非伸縮部分97では、ギャザー弾性部材96の位置にホットメルト接着剤が無く、したがってギャザー弾性部材96とギャザーシート95とが接着されておらず、ギャザー弾性部材96を有する位置でギャザーシート95の対向面が接合されていないものである。
【0031】
図5及び図6に示される立体ギャザー90は、本体部92が折り返されていない形態であるが、図22(b)に示すように、本体部92における付け根側の部分が幅方向中央側に向かって斜めに起立し、中間部より先端側の部分が幅方向外側に向かって斜めに起立する形態とするなど、後述する倒伏非伸縮部分97に文字表示98を設けうる限り、公知のあらゆる形態を採用することができる。
【0032】
ギャザー弾性部材96としては、通常使用されるスチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコン、ポリエステル等の素材を用いることができる。また、外側から見え難くするため、太さは925dtex以下、テンションは150〜350%、間隔は7.0mm以下として配設するのがよい。なお、ギャザー弾性部材96としては、図示形態のような糸状の他、ある程度の幅を有するテープ状のものを用いることもできる。
【0033】
前述のギャザーシート95を構成する素材繊維も液透過性トップシート11と同様に、ポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工方法に得られた不織布を用いることができるが、特にはムレを防止するために坪量を抑えて通気性に優れた不織布を用いるのがよい。さらにギャザーシート95については、尿などの透過を防止するとともに、カブレを防止しかつ肌への感触性(ドライ感)を高めるために、シリコン系、パラフィン金属系、アルキルクロミッククロイド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いるのが望ましい。
【0034】
図3図6に示すように、内装体10はその裏面が、内外固定領域10B(斜線領域)において、外装体20の内面に対してホットメルト接着剤等により接合される。この内外固定領域10Bは、適宜定めることができ、内装体10の幅方向WDのほぼ全体とすることもできるが、幅方向両端部は外装体20に固定しないことが好ましい。
【0035】
(外装体の構造例)
外装体20は吸収体13の側縁より側方まで延在されている。外装体20は図示形態のように股間部において外装体20の側縁が内装体10の側縁より幅方向中央側に位置していても、また幅方向外側に位置していても良い。また、外装体20は、サイドシール部21と対応する前後方向範囲である胴周り部Tと、前身頃Fの胴周り部T及び後身頃Bの胴周り部Tの間の前後方向範囲である中間部Lとを有する。そして、図示形態の外装体20では、その中間部Lの前後方向中間を除いて、図2及び図4図6に示されるように、第1シート層20A及び第2シート層20Bの間に弾性フィルム30が積層されるとともに、図7に示されるように、第1シート層20A及び第2シート層20Bが、間隔を空けて配列された多数のシート接合部40で弾性フィルム30を貫通する接合孔31を通じて接合された、伸縮方向EDが幅方向WDとされた弾性フィルム伸縮構造20Xを有している。第1シート層20A及び第2シート層20Bは、弾性フィルム30の接合孔31を通じてではなく、弾性フィルム30を介して間接的に接合されていても良い。外装体20の平面形状は、中間部Lの幅方向両側縁がそれぞれ開口を形成するように凹状の脚周りライン29により形成されており、全体として砂時計に似た形状をなしている。外装体20は、前身頃F及び後身頃Bで個別に形成し、両者が股間部で前後方向LDに離間するように配置しても良い。
【0036】
図1及び図2に示す形態は、弾性フィルム伸縮構造20Xがウエスト端部23まで延在されている形態であるが、ウエスト端部23に弾性フィルム伸縮構造20Xを用いると、ウエスト端部23の締め付けが不十分になる等、必要に応じて、図15及び図16に示すようにウエスト端部23には弾性フィルム伸縮構造20Xを設けずに、従来の細長状のウエスト部弾性部材24による伸縮構造を設けることもできる。ウエスト部弾性部材24は、前後方向LDに間隔をおいて配置された複数の糸ゴム等の細長状弾性部材であり、身体の胴周りを締め付けるように伸縮力を与えるものである。ウエスト部弾性部材24は、間隔を密にして実質的に一束として配置されるのではなく、所定の伸縮ゾーンを形成するように3〜8mm程度の間隔を空けて、3本以上、好ましくは5本以上配置される。ウエスト部弾性部材24の固定時の伸長率は適宜定めることができるが、通常の成人用の場合230〜320%程度とすることができる。ウエスト部弾性部材24は、図示例では糸ゴムを用いたが、例えば平ゴム等、他の細長状の伸縮部材を用いても良い。図示しないが、ウエスト端部23に弾性フィルム30を設けるとともに、弾性フィルム30と重なる位置に細長状のウエスト部弾性部材24を設け、両方の弾性部材による伸縮構造とすることもできる。また、図示形態では、外装体20における脚開口の縁部分には、脚開口に沿って延びる細長状弾性部材は設けられていないが、当該縁部分における弾性フィルム30と重なる位置に、又は当該縁部分の弾性フィルム30に代えて、細長状弾性部材を設けることもできる。
【0037】
他の形態としては、図示しないが、前身頃Fの胴周り部Tと後身頃Bの胴周り部Tとの間の中間部Lには弾性フィルム伸縮構造20Xを設けない形態としたり、前身頃Fの胴周り部T内から中間部Lを経て後身頃Bの胴周り部T内まで前後方向LDに連続的に伸縮構造20Xを設けたり、前身頃F及び後身頃Bのいずれか一方にのみ弾性フィルム伸縮構造20Xを設けたりすること等、適宜の変形も可能である。
【0038】
個々のシート接合部40及び接合孔31の自然長状態での形状は、適宜定めることができるが、真円形(図7図8参照)、楕円形、三角形、長方形(図9(e)、図13参照)、ひし形(図9(b)参照)等の多角形、あるいは凸レンズ形(図9(a)参照)、凹レンズ形(図9(c)参照)、星形、雲形等、任意の形状とすることができる。個々のシート接合部の寸法は特に限定されないが、最大長さは0.5〜3.0mm、特に0.7〜1.1mmとするのが好ましく、最大幅40xは0.1〜3.0mm、特に伸縮方向と直交する方向XDに長い形状の場合には0.1〜1.1mmとするのが好ましい。
【0039】
個々のシート接合部40の大きさは、適宜定めれば良いが、大きすぎるとシート接合部40の硬さが感触に及ぼす影響が大きくなり、小さすぎると接合面積が少なく資材同士が十分に接着できなくなるため、通常の場合、個々のシート接合部40の面積は0.14〜3.5mm2程度とすることが好ましい。個々の接合孔31の開口の面積は、接合孔31を介してシート接合部が形成されるためシート接合部以上であれば良いが、シート接合部の面積の1〜1.5倍程度とすることが好ましい。なお、接合孔31の開口の面積は、弾性フィルム30単独の状態ではなく第1シート層20A及び第2シート層20Bと一体化した状態で、かつ自然長の状態における値を意味し、接合孔31の開口の面積が、弾性フィルム30の表と裏で異なる等、厚み方向に均一でない場合には最小値を意味する。
【0040】
シート接合部40及び接合孔31の平面配列は適宜定めることができるが、規則的に繰り返される平面配列が好ましく、図21(a)に示すような斜方格子状や、図21(b)に示すような六角格子状(これらは千鳥状ともいわれる)、図21(c)に示すような正方格子状、図21(d)に示すような矩形格子状、図21(e)に示すような平行体格子(図示のように、多数の平行な斜め方向の列の群が互いに交差するように2群設けられる形態)状等(これらが伸縮方向EDに対して90度未満の角度で傾斜したものを含む)のように規則的に繰り返されるものの他、シート接合部40の群(群単位の配列は規則的でも不規則でも良く、模様や文字状等でも良い)が規則的に繰り返されるものとすることもできる。
【0041】
シート接合部40における第1シート層20A及び第2シート層20Bの接合は、弾性フィルム30に形成された接合孔31を通じて接合される場合、少なくともシート接合部40における第1シート層20A及び第2シート層20B間以外では、第1シート層20A及び第2シート層20Bは弾性フィルム30と接合されていないことが望ましい。
【0042】
シート接合部40における第1シート層20A及び第2シート層20Bの接合手段は特に限定されない。例えば、シート接合部40における第1シート層20A及び第2シート層20Bの接合はホットメルト接着剤によりなされていても、ヒートシールや超音波シール等の素材溶着による接合手段によりなされていても良い。
【0043】
シート接合部40において第1シート層20A及び第2シート層20Bが弾性フィルム30の接合孔31を通じて接合される場合、シート接合部40が素材溶着により形成される形態は、シート接合部40における第1シート層20A及び第2シート層20Bの少なくとも一方の大部分又は一部の溶融固化物20mのみにより第1シート層20A及び第2シート層20Bが接合される第1溶着形態(図17(a)参照)、シート接合部40における弾性フィルム30の全部若しくは大部分又は一部の溶融固化物30mのみにより第1シート層20A及び第2シート層20Bが接合される第2溶着形態(図17(b)参照)、及びこれらの両者が組み合わさった第3溶着形態(図17(c)参照)のいずれでも良いが、第2、第3溶着形態が好ましい。特に好ましいのは、第1シート層20A及び第2シート層20Bの一部の溶融固化物20mと、シート接合部40における弾性フィルム30の全部若しくは大部分の溶融固化物30mとにより第1シート層20A及び第2シート層20Bが接合される形態である。なお、図19(b)に示される第3溶着形態では、黒色に写っている第1シート層20A又は第2シート層20Bの繊維溶融固化物20m間に、白色に写っている弾性フィルム30の溶融固化物30mが見られるのに対して、図19(a)に示される第1溶着形態では、第1シート層20A又は第2シート層20Bの繊維溶融固化物20m間に弾性フィルムの溶融固化物は見られない。
【0044】
第1接着形態や第3接着形態のように、第1シート層20A及び第2シート層20Bの少なくとも一方の大部分又は一部の溶融固化物20mを接着剤として第1シート層20A及び第2シート層20Bを接合する場合、第1シート層20A及び第2シート層20Bの一部は溶融しない方がシート接合部40が硬質化しないため好ましい。なお、第1シート層20A及び第2シート層20Bが不織布であるときには、第1シート層20A及び第2シート層20Bの一部が溶融しないことには、シート接合部40の全繊維について芯(複合繊維における芯だけでなく単成分繊維の中心部分を含む)は残るがその周囲部分(複合繊維における鞘だけでなく単成分繊維の表層側の部分を含む)は溶融する形態や、一部の繊維は全く溶融しないが、残りの繊維は全部が溶融する又は芯は残るがその周囲部分は溶融する形態を含む。
【0045】
第2溶着形態及び第3溶着形態のように、弾性フィルム30の溶融固化物30mを接着剤として第1シート層20A及び第2シート層20Bを接合すると、剥離強度が高いものとなる。第2溶着形態では、第1シート層20A及び第2シート層20Bの少なくとも一方の融点が弾性フィルム30の融点及びシート接合部40形成時の加熱温度よりも高い条件下で、第1シート層20A及び第2シート層20B間に弾性フィルム30を挟み、シート接合部40となる部位を加圧・加熱し、弾性フィルム30のみを溶融することにより製造することができる。一方、第3溶着形態では、第1シート層20A及び第2シート層20Bの少なくとも一方の融点が弾性フィルム30の融点よりも高い条件下で、第1シート層20A及び第2シート層20B間に弾性フィルム30を挟み、シート接合部40となる部位を加圧・加熱し、第1シート層20A及び第2シート層20Bの少なくとも一方と弾性フィルム30とを溶融することにより製造することができる。このような観点から、弾性フィルム30の融点は80〜145℃程度のものが好ましく、第1シート層20A及び第2シート層20Bの融点は85〜190℃程度、特に150〜190℃程度のものが好ましく、第1シート層20A及び第2シート層20Bの融点と弾性フィルム30の融点との差は60〜90℃程度であるのが好ましい。また、加熱温度は100〜150℃程度とするのが好ましい。
【0046】
第2溶着形態及び第3溶着形態では、第1シート層20A及び第2シート層20Bが不織布であるときには、弾性フィルム30の溶融固化物30mは、図18(c)に示すようにシート接合部40における第1シート層20A及び第2シート層20Bの厚み方向全体にわたり繊維間に浸透していても良いが、図17(b)(c)及び図18(a)に示すように厚み方向中間まで繊維間に浸透する形態、又は図18(b)に示すように第1シート層20A及び第2シート層20Bの繊維間にほとんど浸透しない形態の方が、シート接合部40の柔軟性が高いものとなる。
【0047】
図20は、第2溶着形態及び第3溶着形態を形成するのに好適な超音波シール装置の例を示している。この超音波シール装置では、シート接合部40の形成に際して、外面にシート接合部40のパターンで形成した突起部60aを有するアンビルロール60と超音波ホーン61との間に、第1シート層20A、弾性フィルム30及び第2シート層20Bを送り込む。この際、例えば上流側の弾性フィルム30の送り込み駆動ロール63及びニップロール62による送り込み移送速度を、アンビルロール60及び超音波ホーン61以降の移送速度よりも遅くすることにより、送り込み駆動ロール63及びニップロール62によるニップ位置からアンビルロール60及び超音波ホーン61によるシール位置までの経路で、弾性フィルム30をMD方向(マシン方向、流れ方向)に所定の伸長率まで伸長する。この弾性フィルム30の伸長率は、アンビルロール60及び送り込み駆動ロール63の速度差を選択することにより設定することができ、例えば300%〜500%程度とすることができる。62はニップロールである。アンビルロール60と超音波ホーン61との間に送り込まれた、第1シート層20A、弾性フィルム30及び第2シート層20Bは、この順に積層した状態で、突起部60aと超音波ホーン61との間で加圧しつつ、超音波ホーン61の超音波振動エネルギーにより加熱し、弾性フィルム30のみを溶融するか、又は第1シート層20A及び第2シート層20Bの少なくとも一方と弾性フィルム30とを溶融することによって、弾性フィルム30に接合孔31を形成するのと同時に、その接合孔31を通じて第1シート層20A及び第2シート層20Bを接合する。したがって、この場合にはアンビルロール60の突起部60aの大きさ、形状、離間間隔、ロール長方向及びロール周方向の配置パターンなどを選定することにより、シート接合部40の面積率を選択することができる。
【0048】
接合孔31が形成される理由は必ずしも明確ではないが、弾性フィルム30におけるアンビルロール60の突起部60aと対応する部分が溶融して周囲から離脱することにより開孔するものと考えられる。この際、弾性フィルム30における、伸縮方向EDに並ぶ隣接接合孔31の間の部分は、図7(a)、図9(a)及び図11(a)に示すように、接合孔31により伸縮方向両側の部分から切断され、収縮方向両側の支えを失うことになるため、収縮方向と直交する方向の連続性を保ちうる範囲で、伸縮方向EDと直交する方向XDの中央側ほど伸縮方向中央側に釣り合うまで収縮し、接合孔31が伸縮方向EDに拡大する。そして、後述する伸縮領域80のように弾性フィルム30が伸縮方向EDに沿って直線的に連続する部分が残るパターンでシート接合部40を形成すると、図7(a)及び図9(a)に示すように、個別の製品に切断すること等により自然長状態まで収縮するときに、接合孔31の拡大部分の伸縮方向EDの長さは、接合孔31とシート接合部40との間に隙間ができなくなるまで収縮することとなる。一方、後述する非伸縮領域70のように弾性フィルム30が伸縮方向EDに沿って直線的に連続する部分がないパターンでシート接合部40を形成すると、図11(a)に示すように、個別の製品に切断すること等により自然長状態まで収縮するときにほとんど収縮しないため、接合孔31とシート接合部40との間に隙間が大きく残されることとなる。
【0049】
第1シート層20A及び第2シート層20Bの構成材は、シート状のものであれば特に限定無く使用できるが、通気性及び柔軟性の観点から不織布を用いることが好ましい。不織布は、その原料繊維が何であるかは特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。不織布を用いる場合、その目付けは10〜25g/m2程度とするのが好ましい。また、第1シート層20A及び第2シート層20Bの一部又は全部は、一枚の資材を折り返して対向させた一対の層であっても良い。例えば、図示形態のように、ウエスト端部23では、外側に位置する構成材を第2シート層20Bとし、かつそのウエスト開口縁で内面側に折り返してなる折り返し部分20Cを第1シート層20Aとして、その間に弾性フィルム30を介在させるとともに、それ以外の部分では内側に位置する構成材を第1シート層20Aとし、外側に位置する構成材を第2シート層20Bとして、その間に弾性フィルム30を介在させることができる。もちろん、前後方向LDの全体にわたり第1シート層20Aの構成材及び第2シート層20Bの構成材を個別に設け、構成材を折り返しすることなく、第1シート層20Aの構成材及び第2シート層20Bの構成材間に弾性フィルム30を介在させることもできる。
【0050】
弾性フィルム30は特に限定されるものではなく、それ自体弾性を有する熱可塑性樹脂フィルムであれば、無孔のものの他、通気のために多数の孔やスリットが形成されたものも用いることができる。特に、幅方向WD(伸縮方向ED、MD方向)における引張強度が8〜25N/35mm、前後方向LD(伸縮方向と直交する方向XD、CD方向)における引張強度が5〜20N/35mm、幅方向WDにおける引張伸度が450〜1050%、及び前後方向LDにおける引張伸度が450〜1400%の弾性フィルム30であると好ましい。弾性フィルム30の厚みは特に限定されないが、20〜40μm程度であるのが好ましい。
【0051】
(伸縮領域)
外装体20における弾性フィルム伸縮構造20Xを有する領域は、幅方向WDに伸縮可能な伸縮領域を有している。伸縮領域80では、弾性フィルム30が幅方向WDに沿って直線的に連続する部分32を有しており、かつ弾性フィルム30の収縮力により幅方向WDに収縮しているとともに、幅方向WDに伸長可能となっている。より具体的には、弾性フィルム30を幅方向WDに伸長した状態で、幅方向WD及びこれと直交する前後方向LD(伸縮方向と直交する方向XD)にそれぞれ間隔を空けて、弾性フィルム30の接合孔31を介して第1シート層20A及び第2シート層20Bを接合し、多数のシート接合部40を形成することにより、弾性フィルム伸縮構造20Xを形成するとともに、伸縮領域80では弾性フィルム30が幅方向WDに沿って直線的に連続する部分を有するように接合孔31を配置することによって、このような伸縮性を付与することができる。
【0052】
伸縮領域80は、自然長状態では、図7(d)及び図9(d)に示すように、シート接合部40間の第1シート層20A及び第2シート層20Bが互いに離間する方向に膨らんで、前後方向LDに延びる収縮皺25が形成され、図7(c)及び図9(c)に示すように、幅方向WDにある程度伸長した装着状態でも、収縮皺25は伸ばされるものの、残るようになっている。また、図示形態のように、第1シート層20A及び第2シート層20Bは、少なくともシート接合部40における第1シート層20A及び第2シート層20B間以外では弾性フィルム30と接合されていないと、装着状態を想定した図7(c)及び図9(d)及び第1シート層20A及び第2シート層20Bの展開状態を想定した図7(a)(b)及び図9(a)(b)からも分かるように、これらの状態では、弾性フィルム30における接合孔31と、シート接合部40との間に隙間が形成され、弾性フィルム30の素材が無孔のフィルムやシートであっても、この隙間により通気性が付加される。また、図7(d)及び図9(d)に示す自然長状態では、弾性フィルム30の収縮により接合孔31がすぼまり、接合孔31とシート接合部40との間に隙間がほとんど形成されない。なお、装着状態及び自然長状態の収縮皺25の状態は、図8及び図10にも現れている。
【0053】
伸縮領域80の幅方向WDの弾性限界伸びは200%以上(好ましくは265〜295%)とすることが望ましい。伸縮領域80の弾性限界伸びは、製造時の弾性フィルム30の伸長率によってほぼ決まるがこれを基本として、幅方向WDの収縮を阻害する要因により低下する。このような阻害要因の主なものは、幅方向WDにおいて単位長さ当たりに占めるシート接合部40の長さ40xの割合であり、この割合が大きくなるほど弾性限界伸びが低下する。通常の場合、シート接合部40の長さ40xはシート接合部40の面積率と相関があるため、伸縮領域80の弾性限界伸びはシート接合部40の面積率により調整できる。
【0054】
伸縮領域80の伸長応力は、主に弾性フィルム30が幅方向WDに沿って直線的に連続する部分32の幅32wの総和により調整することができる。弾性フィルム30が幅方向WDに沿って直線的に連続する部分32の幅32wは、当該連続する部分32の両側縁に接する接合孔31の、前後方向LDの間隔31dに等しく、当該接合孔31の間隔31dは、前後方向LDにおける接合孔31の長さ31yと、前後方向LDにおけるシート接合部40の長さ40yとが等しいとき(前述の接合孔31及びシート接合部40の同時形成手法を採用する場合等)には、当該連続する部分の両側縁に接するシート接合部40の、前後方向LDの間隔40dに等しい。よって、この場合には、前後方向LDにおいて単位長さ当たりに占めるシート接合部40の長さ40yの割合により、伸縮領域80の伸長応力を調整することができ、通常の場合、シート接合部40の長さ40yはシート接合部40の面積率と相関があるため、シート接合部40の長さはシート接合部40の面積率により調整できる。伸縮領域80の伸長応力は、弾性限界の50%まで伸長したときの伸長応力を目安とすることができる。
【0055】
伸縮領域80におけるシート接合部40の面積率及び個々のシート接合部40の面積は適宜定めることができるが、通常の場合、次の範囲内とするのが好ましい。
シート接合部40の面積:0.14〜3.5mm2(特に0.14〜1.0mm2
シート接合部40の面積率:1.8〜19.1%(特に1.8〜10.6%)
【0056】
このように、伸縮領域80の弾性限界伸び及び伸長応力はシート接合部40の面積により調整できるため、図15に示すように、伸縮領域80内にシート接合部40の面積率が異なる複数の領域を設け、部位に応じてフィット性を変化させることができる。図15に示す形態では、前身頃Fにおける脚の付け根に沿って斜め方向に延びる領域81、及び脚開口の縁部領域82は、それ以外の領域と比べてシート接合部40の面積率が高く、従って伸長応力が弱く、柔軟に伸縮する領域となっている。また、後身頃Bにおける腸骨対向領域83、及び脚開口の縁部領域82も、それ以外の領域と比べてシート接合部40の面積率が高く、したがって伸長応力が弱く、柔軟に伸縮する領域となっている。
【0057】
(非伸縮領域)
外装体20における弾性フィルム伸縮構造20Xを有する領域には、図15に示すように、伸縮領域80の少なくとも幅方向一方側に非伸縮領域70を設けることができる。伸縮領域80及び非伸縮領域70の配置は適宜定めることができる。本実施形態のようなパンツタイプ使い捨ておむつの外装体20の場合、吸収体13と重なる部分は伸縮が不要な領域であるため、図示形態のように、吸収体13と重なる部分の一部又は全部(内外固定領域10Bのほぼ全体を含むことが望ましい)を非伸縮領域70とするのは好ましい。もちろん、吸収体13と重なる領域からその幅方向WD又は前後方向LDに位置する吸収体13と重ならない領域にかけて非伸縮領域70を設けることもでき、吸収体13と重ならない領域にのみ非伸縮領域70を設けることもできる。
【0058】
非伸縮領域70は、弾性フィルム30は幅方向WDに連続するものの、接合孔31の存在により幅方向WDに沿って直線的に連続する部分を有しない領域とされている。したがって、弾性フィルム30を幅方向WDに伸長した状態で、幅方向WD及びこれと直交する前後方向LDにそれぞれ間隔を空けて、弾性フィルム30の接合孔31を介して第1シート層20A及び第2シート層20Bを接合し、多数のシート接合部40を形成することにより、伸縮領域80及び非伸縮領域70の両者を含む弾性フィルム伸縮構造20X全体を形成するとしても、図11に示すように、非伸縮領域70では、弾性フィルム30が幅方向WDに沿って直線的に連続しないため、弾性フィルム30の収縮力が第1シート層20A及び第2シート層20Bにほとんど作用せず、伸縮性がほぼ消失し、弾性限界伸びは100%に近くなるのである。そしてこのような非伸縮領域70では、第1シート層20A及び第2シート層20Bが間隔を空けて配列された多数のシート接合部40で接合されており、シート接合部40が連続的とならないため、柔軟性の低下は防止される。換言すれば、弾性フィルム30が幅方向WDに沿って直線的に連続しない部分の有無により伸縮領域80及び非伸縮領域70を形成することができる。また、非伸縮領域70でも弾性フィルム30の連続性が残っており、図12からも分かるように、弾性フィルム30の独立切断片が残ることもなく、また皺も形成されないため、極めて見栄えが良く、かつ接合孔31による厚み方向の通気性が確保される。非伸縮領域70は、幅方向WDの弾性限界伸びが120%以下(好ましくは110%以下、より好ましくは100%)であると好ましい。
【0059】
非伸縮領域70における弾性フィルム30における接合孔31の配列パターンは適宜定めることができるが、図11に示すように千鳥状配置とし、接合孔31の前後方向LDの中心間隔31eが接合孔31の前後方向LDの長さ31yより短いパターンとすると、弾性フィルム30の連続性を維持しつつ幅方向WDの直線連続性をほぼ完全に無くすことができ、見栄えも図12に示すように好ましいものとなる。この場合、接合孔31の幅方向WDの中心間隔31fが接合孔31の幅方向WDの長さ31xより短いとがより好ましい。
【0060】
通常の場合、中でも弾性フィルム30を幅方向WDに4倍に伸長したときの伸長応力が4〜12N/35mmのものである場合、非伸縮領域70を幅方向WDに弾性限界まで伸ばした状態で、接合孔31の前後方向LDの中心間隔31eが0.4〜2.7mm、かつ接合孔31の前後方向LDの長さ31yが0.5〜3.0mm、特に0.7〜1.1mmであると好ましい。また、接合孔31の幅方向WDの中心間隔31fが、接合孔31の前後方向LDの長さ31yの0.5〜2倍、特に1〜1.2倍であると好ましく、接合孔31の幅方向WDの長さ31xが、接合孔31の幅方向WDの中心間隔31fの1.1〜1.8倍、特に1.1〜1.4倍であると好ましい。なお、非伸縮領域70を幅方向WDに弾性限界まで伸ばした状態(換言すれば第1シート層20A及び第2シート層20Bが完全に展開した状態)では、接合孔31の幅方向WDの中心間隔31fはシート接合部40の幅方向WDの中心間隔40fに等しく、接合孔31の前後方向LDの中心間隔31eはシート接合部40の前後方向LDの中心間隔40eに等しく、接合孔31の前後方向LDの長さ31yはシート接合部40の前後方向LDの長さ40yに等しい。
【0061】
非伸縮領域70では、シート接合部40における第1シート層20A及び第2シート層20Bの間以外では、第1シート層20A及び第2シート層20Bと弾性フィルム30とが接合されておらず、かつ自然長の状態でシート接合部40の幅方向両側に弾性フィルム30の接合孔31の周縁及びシート接合部40が離間されて形成された隙間を有していると、この隙間により常に通気性が付加されるため好ましい。前述の接合孔31及びシート接合部40の同時形成手法を採用する場合には、シート接合部40の形状等に関係なく、自然にこの状態になる。
【0062】
個々のシート接合部40及び接合孔31の自然長状態での形状は、特に限定されないが、柔軟性の観点からは面積が小さいことが望ましく、弾性フィルム30の幅方向WDの直線連続性をなくすためには、前後方向LDに長い形状であることが望ましいため、前後方向LDに長い楕円形、長方形(図11図13(d)参照)、ひし形(図13(b)参照)、凸レンズ形(図13(a)参照)、凹レンズ形(図13(c)参照)とすることが好ましい。ただし、ひし形のように角が鋭角であると、弾性フィルム30が破断しやすい。これに対して、凸レンズ形はシート接合部40の溶着が安定するため好ましく、凹レンズ形は面積をより小さくできる点で好ましい。
【0063】
非伸縮領域におけるシート接合部40の面積率及び個々のシート接合部40の面積は適宜定めることができるが、通常の場合、次の範囲内とすると、各シート接合部40の面積が小さくかつシート接合部40の面積率が低いことにより非伸縮領域70が硬くならいためが好ましい。
シート接合部40の面積:0.10〜0.75mm2(特に0.10〜0.35mm2
シート接合部40の面積率:4〜13%(特に5〜10%)
【0064】
このように、非伸縮領域70の弾性限界伸びは、接合孔31の配列パターンや、個々の接合孔31の寸法及び中心間隔により変化させることができる。よって、図示しないが、これらを伸縮領域80内の複数個所、又は複数の非伸縮領域70間で異ならしめることもできる。例えば、前身頃Fの非伸縮領域70における弾性限界伸びを後身頃Bの非伸縮領域70における弾性限界伸びよりも大きくするのは一つの好ましい形態である。
【0065】
非伸縮領域70は、伸縮領域と同様に幅方向WDに沿って直線的に連続する部分を有するものの、シート接合部の面積率が伸縮領域よりも高いことにより弾性限界伸びが著しく低く、具体的には130%以下とされている形態、従来の糸ゴムを用いる伸縮構造のように幅方向WDに一か所又は複数個所で切断する形態等、他の伸縮性を殺す形態を採用することもできる。
【0066】
(通気孔)
特徴的には、図7に伸縮領域80の例、図13に非伸縮領域70の例を示すように、弾性フィルム30におけるシート接合部40と重ならない部位に通気孔33が形成されているため、シート接合部40の位置や数に関係なく、通気性が向上するものとなっている。
【0067】
通気孔33の形状は特に限定されず、真円形(図示形態)、楕円形、三角形、長方形、ひし形等の多角形、星形、雲形、あるいはスリット(面積つまり切除部分を有しない切り込み。図14参照)等、任意の形状とすることができる。個々の通気孔33の寸法は特に限定されないが、小さ過ぎたり、少な過ぎたりすると通気性向上作用に乏しくなり、大き過ぎたり、多過ぎたりすると、後述するように第1シート層20A及び第2シート層20Bの剥離強度が低下するおそれがあるため、スリット状の通気孔33以外の場合、通気孔33の面積はシート接合部40の面積の3〜15%程度とすることが好ましく、自然長状態における通気孔33の面積率は4.4〜19.1%程度とすることが好ましい。スリット状の通気孔33の場合、各通気孔33の長さは0.1〜1mm程度とすることができる。さらに、通気孔33の伸縮方向EDの中心間隔及び伸縮方向EDと直交する方向の中心間隔は1〜2mm程度とすることができる。
【0068】
通気孔33の平面配列は適宜定めることができるが、図7等に示すように、規則的に繰り返される平面配列が好ましく、図21に示されるシート接合部40の配列形態と同様に、斜方格子状、六角格子状(これらは千鳥状ともいわれる)、正方格子状、矩形格子状、平行体格子(図示のように、多数の平行な斜め方向の列の群が互いに交差するように2群設けられる形態)状等(これらが幅方向に対して90度未満の角度で傾斜したものを含む)のように規則的に繰り返されるものの他、通気孔33の群(群単位の配列は規則的でも不規則でも良く、模様や文字状等でも良い)が規則的に繰り返されるものとすることもできる。
【0069】
通気孔33は、打ち抜き加工や針刺し加工により形成することができ、シート接合部40の形成前、つまり弾性フィルム30単独の状態で加工(予め穿孔済みの弾性フィルムを用いることも含む)しても、シート接合部40の形成後に第1シート層20A、弾性フィルム30及び第2シート層20Bが積層された状態で加工しても良い。
【0070】
通気孔33を形成済みの弾性フィルム30を用いて、前述のように溶着により弾性フィルム30への接合孔31の形成と、シート接合部40の形成とを同時に行う場合、図11に示すように、弾性フィルム30は第1シート層20A及び第2シート層20Bに挟まれるまでに所定の伸縮方向EDに伸長され、通気孔33が伸縮方向EDに拡大された伸長状態で第1シート層20A及び第2シート層20Bに挟まれ、溶着により図12(a)に示すようにシート接合部40が形成された外装体20となる。シート接合部40のうち通気孔33と重なる部位では、第1シート層20A及び第2シート層20Bが弾性フィルム30の溶融固化物を介さずに接合される。また、一部のみシート接合部40と重なる通気孔33は、シート接合部40の形成に伴い形成される接合孔31に合体する。伸縮方向EDに隣接するシート接合部40の間に位置する通気孔33や、接合孔31に合体する通気孔33は、その位置に応じてシート接合部40の形成に伴い張力が部分的に解放されるため、それに応じて伸縮方向EDに収縮する。そして、溶着後に外装体20が伸長状態から解放され、自然長の状態になると、図12(b)に襞を省略して示すように、接合孔31はシート接合部40の周縁に密着し、通気孔33は伸縮方向EDに収縮し、ほぼ伸長前の形状となる。また、接合孔31に合体した通気孔33は、シート接合部40の周囲に開口状態で残存する。
【0071】
ここで、第1シート層20A及び第2シート層20Bを直接に溶着するよりも弾性フィルム30の溶融固化物を介して(接着剤として)接合すると、剥離強度が高くなることは前述したとおりであるが、シート接合部40の寸法が通気孔33の寸法より小さいと、部分的にシート接合部40の位置と通気孔33の位置が重なったときに、シート接合部40の全体にわたり第1シート層20A及び第2シート層20Bを直接に溶着することとなり、シート接合部40の剥離強度が低下するおそれがある。これに対して、図示形態のように、弾性フィルム伸縮構造20Xを有する領域を伸縮方向EDに弾性限界伸びまで伸長した状態、つまり溶着時と同じ状態で、伸縮方向ED(及びこれと直交する方向XDの少なくとも一方であればよい)においてシート接合部40の寸法40x(アンビルロール60の突起部60aの寸法に等しい)が通気孔33の寸法33xより大きいと、図22(a)に溶着時の状態を示すように、溶着時にシート接合部40の少なくとも一部分では必ず弾性フィルム30を介して接合されることとなり、シート接合部40で第1シート層20A及び第2シート層20Bが剥離しにくいものとなる。
【0072】
また、何らかの理由でシート接合部40の寸法が通気孔33の寸法より小さくならざるを得ない場合は、図22(b)に溶着時の状態を示すように、伸縮方向ED(及びこれと直交する方向XDの少なくとも一方であればよい)において、シート接合部40の中心間隔40f(アンビルロール60の突起部60aのMD方向間隔に等しい)を通気孔33の中心間隔33fよりも広くするとよい。これにより、シート接合部40の位置と通気孔33の位置とが重なる確率が低くなり、剥離強度の低下が発生しにくいものとなる。
【0073】
他方、図11に示す形態は、弾性フィルム30が自然長状態でも面積を有する通気孔33の場合であるのに対して、図14に示す形態のように、通気孔33がスリット状の場合を示している。この場合、弾性フィルム30が自然長状態では通気孔33は面積を有しないが、溶着時には弾性フィルム30が伸長状態となるためスリットが開いて面積を有する通気孔33となる。張力の開放の部位や程度に応じて通気孔33が伸縮方向EDに収縮する点は図11に示す場合と同様であるが、スリット状の通気孔33の場合、通気孔33の位置によってはほぼ閉じた状態となる。図13に示す形態は、非伸縮領域70であり、弾性フィルム30のほぼ全体の張力が開放された状態となるため、すべての通気孔33が閉じた状態となる。このように通気孔33の形状をスリット状とすることにより、通気孔33と重なる位置で第1シート層20A及び第2シート層20Bを直接に溶着する確率が低くなるとともに、直接に溶着する場合であっても溶着面積は小さくなる。よって、第1シート層20A及び第2シート層20Bの剥離強度の低下が発生しにくいものとなる。
【0074】
なお、図示形態のスリット状通気孔33は伸縮方向EDと交差する方向に延びているため、伸長した状態で通気孔33の面積が拡大し、通気性が向上する反面、第1シート層20A及び第2シート層20Bを直接に溶着する確率及び直接溶着面積は増加するものである。よって、図23に示すように、スリット状通気孔33の向きを伸縮方向ED(つまりスリットの長手方向が伸縮方向EDに沿うようになる)とするのも一つの好ましい形態である。これにより、伸長した状態で通気孔33の長さは伸びるものの通気孔33の面積はほとんど拡大しないため、第1シート層20A及び第2シート層20Bを直接に溶着する確率及び直接溶着面積は著しく低いものとなる。
【0075】
通気孔33は、伸縮領域80及び非伸縮領域70の両方に設けることが好ましいが、いずれか一方のみに設けることもできる。また、通気孔33は、伸縮領域80と非伸縮領域70とで同じパターンとするほか、異なるパターンとすることもでき、部位に応じて通気孔33の数や配置、形状を変更することができる。図示しないが、第1シート層20A及び第2シート層20Bにおけるシート接合部40以外の部分に、厚み方向に貫通する通気孔33が形成されていてもよい。
【0076】
<明細書中の用語の説明>
明細書中の以下の用語は、明細書中に特に記載が無い限り、以下の意味を有するものである。
・「前身頃」「後身頃」は、パンツタイプ使い捨ておむつの前後方向中央を境としてそれぞれ前側及び後側の部分を意味する。また、股間部は、パンツタイプ使い捨ておむつの前後方向中央を含む前後方向範囲を意味し、吸収体が括れ部を有する場合には当該括れ部を有する部分の前後方向範囲を意味する。
・「弾性限界伸び」とは、伸縮方向EDにおける弾性限界(換言すれば第1シート層及び第2シート層が完全に展開した状態)の伸びを意味し、弾性限界時の長さを自然長を100%としたときの百分率で表すものである。
・「面積率」とは単位面積に占める対象部分の割合を意味し、対象領域(例えば伸縮領域80、非伸縮領域70、主伸縮部分、緩衝伸縮部分)における対象部分(例えばシート接合部40、接合孔31の開口、通気孔)の総和面積を当該対象領域の面積で除して百分率で表すものであり、特に伸縮構造を有する領域における「面積率」とは、伸縮方向EDに弾性限界まで伸ばした状態の面積率を意味するものである。対象部分が間隔を空けて多数設けられる形態では、対象部分が10個以上含まれるような大きさに対象領域を設定して、面積率を求めることが望ましい。
・「伸長率」は、自然長を100%としたときの値を意味する。
・「目付け」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度20±5℃、相対湿度65%以下)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を相対湿度10〜25%、温度50℃を超えない環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から米坪板(200mm×250mm、±2mm)を使用し、200mm×250mm(±2mm)の寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、20倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
・吸収体の「厚み」は、株式会社尾崎製作所の厚み測定器(ピーコック、ダイヤルシックネスゲージ大型タイプ、型式J−B(測定範囲0〜35mm)又は型式K−4(測定範囲0〜50mm))を用い、試料と厚み測定器を水平にして、測定する。
・上記以外の「厚み」は、自動厚み測定器(KES−G5 ハンディ圧縮計測プログラム)を用い、荷重:0.098N/cm2、及び加圧面積:2cm2の条件下で自動測定する。
・「引張強度」及び「引張伸度(破断伸び)」は、試験片を幅35mm×長さ80mmの長方形状とする以外は、JIS K7127:1999「プラスチック−引張特性の試験方法−」に準じて、初期チャック間隔(標線間距離)を50mmとし、引張速度を300mm/minとして測定される値を意味する。引張試験機としては、例えばSHIMADZU社製のAUTOGRAPH AGS−G100Nを用いることができる。
・「伸長応力」とは、JIS K7127:1999「プラスチック−引張特性の試験方法−」に準じて、初期チャック間隔(標線間距離)を50mmとし、引張速度を300mm/minとする引張試験により、弾性領域内で伸長するときに測定される引張応力(N/35mm)を意味し、伸長の程度は試験対象により適宜決定することができる。試験片は幅35mm、長さ80mm以上の長方形状とすることが好ましいが、幅35mmの試験片を切り出すことができない場合には、切り出し可能な幅で試験片を作成し、測定値を幅35mmに換算した値とする。また、対象領域が小さく、十分な試験片を採取できない場合であっても、伸長応力の大小を比較するのであれば、適宜小さい試験片でも同寸法の試験片を用いる限り少なくとも比較は可能である。引張試験機としては、例えばSHIMADZU社製のAUTOGRAPH AGS−G100Nを用いることができる。
・「展開状態」とは、収縮や弛み無く平坦に展開した状態を意味する。
・各部の寸法は、特に記載が無い限り、自然長状態ではなく展開状態における寸法を意味する。
・試験や測定における環境条件についての記載が無い場合、その試験や測定は、標準状態(試験場所は、温度20±5℃、相対湿度65%以下)の試験室又は装置内で行うものとする。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、弾性フィルム伸縮構造を適用可能な伸縮領域を有するものである限り、上記例のようなパンツタイプ使い捨ておむつの他、テープタイプ、パッドタイプ等の各種使い捨ておむつ、生理用ナプキン、スイミングや水遊び用の使い捨て着用物品等、使い捨て着用物品全般に利用できるものである。
【符号の説明】
【0078】
10…内装体、10B…内外固定領域、11…トップシート、12…液不透過性シート、13…吸収体、13N…括れ部分、14…包装シート、17…無吸収体側部、20…外装体、20A…第1シート層、20B…第2シート層、20C…折り返し部分、20X…弾性フィルム伸縮構造、21…サイドシール部、23…ウエスト端部、24…ウエスト部弾性部材、25…収縮皺、29…脚周りライン、30…弾性フィルム、31…接合孔、40…シート接合部、70…非伸縮領域、80…伸縮領域、90…立体ギャザー、93…倒伏部分、94…自由部分、95…ギャザーシート、96…ギャザー弾性部材、B…後身頃、ED…伸縮方向、F…前身頃、L…中間部、LD…前後方向、T…胴周り部、WD…幅方向、33…通気孔。
【要約】
【課題】弾性フィルム伸縮構造において、シート接合部の制限を受けずに、通気性を向上する。
【解決手段】上記課題は、通気性を有する第1シート層20A及び通気性を有する第2シート層20Bの間に弾性フィルム30が積層され、第1シート層20A及び第2シート層20Bが、間隔を空けて配列された多数のシート接合部40で、弾性フィルム30を貫通する接合孔31を通じて接合された、弾性フィルム伸縮構造20Xを備えており、弾性フィルム伸縮構造20Xを有する領域は、伸縮方向EDに伸縮可能な伸縮領域80を有しており、伸縮領域80は、弾性フィルム30の収縮力により伸縮方向EDに収縮しているとともに、伸縮方向EDに伸長可能であり、弾性フィルム30におけるシート接合部40と重ならない部位に通気孔33が形成されている、ことにより解決される。
【選択図】図14
図1
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