(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記洗浄液の噴射方向が傾けられたノズルは、前記板状体の前記直交する方向における両端部側に近づくにつれて、前記洗浄液の噴射方向の前記直交する平面に対する傾き角度が大きくなるものとされる、請求項1に記載の洗浄装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態1>
図1から
図15を参照して実施形態1を説明する。本実施形態では、液晶表示装置10の構成部品である液晶パネル11の製造過程において、ガラス基板(板状体の一例)30Aを搬送しながら、当該ガラス基板30Aの表面に対して洗浄処理を施す洗浄装置50(
図7参照)について例示する。なお、各図面の一部にはX軸、Y軸およびZ軸を示しており、各軸方向が各図面で共通した方向となるように描かれている。また、
図1、
図3、及び
図5では、図の上側を液晶表示装置10の上側(表側)とする。
【0021】
先に液晶表示装置10、及び液晶パネル11の構成について説明する。液晶表示装置10は、
図1及び
図2に示すように、液晶パネル11と、液晶パネル11に実装されて当該液晶パネル11を駆動する電子部品であるICチップ17と、ICチップ17に対して各種入力信号を外部から供給するコントロール基板19と、液晶パネル11と外部のコントロール基板19とを電気的に接続するフレキシブル基板18と、液晶パネル11に光を供給する外部光源であるバックライト装置14と、を備えている。また、液晶表示装置10は、相互に組み付けた液晶パネル11及びバックライト装置14を収容して保持するための表裏一体の外部部材15,16を備えており、このうち表側の外部部材15には、液晶パネル11に表示された画像を外部から視認させるための開口部15Aが設けられている。
【0022】
バックライト装置14は、
図1に示すように、表側に向けて開口した略箱型をなすシャーシ14Aと、シャーシ14A内に配された図示しない光源(冷陰極管、LED、有機EL等)と、シャーシ14Aの開口部を覆う形で配される図示しない光学部材と、を備えている。光学部材は、光源から出射される光を面状の光に変換する等の機能を有している。光学部材を通過して面状となった光は、液晶パネル11に入射し、液晶パネル11において画像を表示するために利用される。
【0023】
液晶パネル11は、
図2に示すように、全体として縦長の矩形状をなしており、その長辺方向が各図面のY軸方向と一致し、その短辺方向が各図面のX軸方向と一致している。液晶パネル11では、その大部分に画像を表示可能な表示領域A1が配され、その長辺方向における一方の端部側(
図2に示す下側)に偏った位置に画像が表示されない非表示領域A2が配されている。非表示領域A2の一部には、ICチップ17及びフレキシブル基板18が異方性導電膜(不図示)を介した圧着接続によって実装されている。なお、液晶パネル11では、
図1に示すように、後述するカラーフィルタ基板20よりも一回り小さな枠状の一点鎖線が表示領域A1の外形をなしており、当該一点鎖線よりも外側の領域が非表示領域A2となっている。
【0024】
液晶パネル11は、
図3に示すように、透光性に優れた一対のガラス製の基板20、30と、電界印加に伴って光学特性が変化する物質である液晶分子を含む液晶層11Aと、を備えている。液晶パネル11を構成する両基板20,30は、液晶層11Aの厚さ分のセルギャップを維持した状態で図示しないシール材によって貼り合わされている。両基板20,30のうち、表側(正面側)の基板20がカラーフィルタ基板20とされ、裏側(背面側)の基板30がアレイ基板(回路基板の一例)30とされる。両基板20,30の内面側には、
図3に示すように、液晶層11Aに含まれる液晶分子を配向させるための配向膜11B,11Cがそれぞれ形成されている。また、両基板20,30を構成するガラス基板20A,30Aの外面側には、それぞれ偏光板11D,11Eが貼り付けられている。
【0025】
カラーフィルタ基板20は、
図2に示すように、短辺寸法がアレイ基板30とほぼ同等であるものの、長辺寸法がアレイ基板30よりも小さく、アレイ基板30に対して長辺方向についての一方の端部(
図2に示す上側)を揃えた状態で貼り合わされている。従って、アレイ基板30のうち長辺方向についての他方の端部(
図1に示す下側)は、所定範囲に亘ってカラーフィルタ基板20が重なり合うことがなく、表裏両板面が外部に露出した状態とされており、ここにICチップ17及びフレキシブル基板18の実装領域が確保されている。アレイ基板30を構成するガラス基板30Aは、その主要部分にカラーフィルタ基板20及び偏光板11Eが貼り合わされており、ICチップ17及びフレキシブル基板18の実装領域が確保された部分がカラーフィルタ基板20及び偏光板11Eと非重畳とされている。
【0026】
続いてアレイ基板30及びカラーフィルタ基板20における表示領域A1内の構成について説明する。アレイ基板30を構成するガラス基板(基板の一例)30Aの内面側(液晶層11A側)には、
図3及び
図4に示すように、3つの電極32A〜32Cを有するスイッチング素子であるTFT(Thin Film Transistor)32及びITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電膜からなる画素電極33が多数個並んで設けられている。これらTFT32及び画素電極33の周りには、
図4に示すように、格子状をなすゲート配線34及びソース配線35が取り囲むようにして配設されている。ゲート配線34とソース配線35はそれぞれTFT32のゲート電極32Aとソース電極32Bとに接続され、画素電極33がドレイン配線(不図示)を介してTFT32のドレイン電極32Cに接続されている。
【0027】
また、アレイ基板30には、ゲート配線34に並行するとともに画素電極33に対して平面に視て重畳する容量配線36が設けられている。容量配線36は、Y軸方向についてゲート配線34と交互に配されている。ゲート配線34がY軸方向に隣り合う画素電極33の間に配されているのに対し、容量配線36は、各画素電極33におけるY軸方向のほぼ中央部を横切る位置に配されている。このアレイ基板30の端部には、ゲート配線34及び容量配線36から引き回された端子部及びソース配線35から引き回された端子部が設けられており、これらの各端子部には、
図1に示すコントロール基板19から各信号または基準電位が入力されるようになっており、それによりTFT32の駆動が制御される。
【0028】
一方、カラーフィルタ基板20を構成するガラス基板20Aの内面側(液晶層11A側)には、
図3に示すように、アレイ基板30の各画素電極33と平面に視て重畳する位置に多数個のカラーフィルタが並んで設けられている。カラーフィルタは、R(赤色),G(緑色),B(青色)を呈する各着色部22がX軸方向に沿って交互に並ぶ配置とされる。カラーフィルタを構成する各着色部22間には、混色を防ぐための略格子状の遮光部(ブラックマトリクス)23が形成されている。遮光部23は、アレイ基板30側のゲート配線34、ソース配線35、及び容量配線36に対して平面に視て重畳する配置とされる。また、各着色部22及び遮光部23の表面には、アレイ基板30側の画素電極33と対向する対向電極24が設けられている。液晶パネル11では、R(赤色),G(緑色),B(青色)の3色の着色部22及びそれらと対向する3つの画素電極33の組によって表示単位である1つの表示画素が構成されている。
【0029】
ここで、アレイ基板30に設けられたスイッチング素子であるTFT32について詳しく説明する。TFT32は、
図4及び
図5に示すように、アレイ基板30上に複数の膜を積層した構成とされている。具体的には、
図5に示すように、下層側(ガラス基板30A側)から順に、ゲート配線34に接続されたゲート電極32A、ゲート絶縁膜37、半導体膜38、ソース配線35に接続されたソース電極32B及び画素電極33に接続されたドレイン電極32C、層間絶縁膜39、保護膜40が積層されている。
【0030】
ゲート電極32Aは、ゲート配線34と同一材料からなるとともにゲート配線34と同一工程にてアレイ基板30上にパターニングされており、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、タンデル(Ta)、チタン(Ti)、銅(Cu)等の金属膜単体又はこれらの金属窒化物との積層膜で形成することができる。ゲート絶縁膜37は、例えばシリコン酸化膜(SiOx)からなり、ゲート電極32Aと半導体膜38との間を絶縁する。半導体膜38は、例えばアモルファスシリコン(a−Si)又は透明なアモルファス酸化物半導体(InGaZnOx)からなり、一端側がドレイン電極32Cに、他端側がソース電極32Bにそれぞれ接続されることで、相互間の導通を図るチャネル領域として機能する。
【0031】
ソース電極32B及びドレイン電極32Cは、ソース配線35と同一材料を含むとともにソース配線35と同一工程にてアレイ基板30上にパターニングされている。ソース電極32B及びドレイン電極32Cは、下層側(半導体膜38側)の第1導電膜32B1,32C1と上層側(層間絶縁膜39側)の第2導電膜32B2,32C2とを積層した構成とされる。下層側の第1導電膜32B1,32C1は、リン(P)等のn型不純物を高濃度にドーピングしたアモルファスシリコン(n+Si)からなり、オーミックコンタクト層として機能する。上層側の第2導電膜32B2,32C2は、異なる金属膜を積層してなる2層構造とされており、そのうち下層側の金属膜がチタン(Ti)からなり、上層側の金属膜がアルミニウム(Al)からなる。
【0032】
上記したソース電極32B及びドレイン電極32Cは、所定の間隔(開口領域)を挟んで対向状に配されているため、相互が直接的には電気的に接続されていない。しかし、ソース電極32B及びドレイン電極32Cは、その下層側の半導体膜38を介して間接的に電気的に接続されており、この半導体膜38における両電極32B,32C間のブリッジ部分が、ドレイン電流が流れるチャネル領域として機能する。
【0033】
層間絶縁膜39は、例えばシリコン酸化膜(SiOx)からなり、上記したゲート絶縁膜37と同一材料とされる。保護膜40は、有機材料であるアクリル樹脂(例えばポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA))やポリイミド樹脂からなる。従って、この保護膜40は、他の無機材料からなるゲート絶縁膜37、層間絶縁膜39に比べて膜厚が厚いものとされるとともに、平坦化膜として機能する。なお、TFT32における各絶縁膜(ゲート絶縁膜37、層間絶縁膜39及び保護膜40)は、それぞれアレイ基板30においてTFT32の形成領域以外の領域を含みつつ概ね全域に亘って均一な膜厚で形成されている。
【0034】
上記したTFT32、画素電極33、及び各配線34,35,36等の薄膜をアレイ基板30上に形成するに際しては、既知のフォトリソグラフィ法が用いられ、そのために各種製造装置50〜56が用いられている。具体的には、製造装置50〜56としては、
図6に示すように、洗浄装置50、成膜装置51、レジスト塗布装置52、露光装置53、現像装置54、エッチング装置55、及びレジスト剥離装置56が用いられる。そして、アレイ基板30を構成するガラス基板30Aには、洗浄装置50による洗浄工程、成膜装置51による成膜工程、レジスト塗布装置52によるレジスト塗布工程、露光装置53による露光工程、現像装置54による現像工程、エッチング装置55によるエッチング工程、レジスト剥離装置56によるレジスト剥離工程を経ることで、目的の薄膜が所定のパターンで形成され、この手順を各薄膜について繰り返し行うことで、各薄膜が順に積層されて形成される。
【0035】
具体的には、洗浄工程では、洗浄装置50により、各薄膜を形成する前のガラス基板30A上に洗浄液を噴射することでガラス基板30Aを洗浄し、ガラス基板30A上の塵や埃等の異物を除去する。成膜工程では、成膜装置51により、形成する薄膜の材料をガラス基板30Aの板面に対して均一な膜厚となるように成膜する。この成膜装置51としては、具体的には、CVD装置、スパッタ装置、真空蒸着装置等が用いられる。レジスト塗布工程では、レジスト塗布装置52により、成膜装置51によって成膜された材料膜に対してフォトレジストを均一な膜厚となるように塗布して積層形成する。このとき、フォトレジストとしては、ポジ型、またはネガ型のものが用いられる。露光工程では、露光装置53により、レジスト塗布装置52により塗布されたフォトレジストに対して、所定のパターンを有するフォトマスクを介してUV光等を照射することで、フォトマスクのパターンに応じた範囲を露光する。
【0036】
現像工程では、現像装置54により、ガラス基板30Aの板面上に現像液を供給することで、フォトレジストを現像し、露光領域又は非露光領域のいずれかを除去する。エッチング工程では、エッチング装置55により、材料膜のうち残されたフォトレジストによって覆われていない領域をエッチングして除去することで、材料膜をパターニングする。エッチング装置55としては、具体的には、エッチングガスやイオン、ラジカルによって材料膜をエッチングするドライエッチング装置やエッチング液によって材料膜をエッチングするウェットエッチング装置等が用いられる。このうちウェットエッチング装置では、ガラス基板30Aの板面上にエッチング液を供給することで、材料膜をエッチングする。レジスト剥離工程では、レジスト剥離装置56により、ガラス基板30Aの板面上にレジスト剥離液を供給することで、残されたフォトレジストを除去する。
【0037】
上記した各製造装置50〜56のうち、洗浄装置50は、上記した成膜前の洗浄工程以外にも、他の製造装置51〜56による工程の後で使用される場合がある。具体的には、成膜装置51による成膜工程の後に、成膜に伴う残余物質やゴミを除去するために洗浄工程を行う場合があり、その洗浄工程において洗浄装置50が用いられる。これ以外にも、例えばエッチング装置55としてドライエッチング装置を用いた場合、そのエッチング工程の後にドライエッチングによる残渣物を除去するために洗浄工程を行う場合があり、その洗浄工程においても、上記した洗浄装置50が用いられる。
【0038】
続いて洗浄装置50の構成について詳しく説明する。洗浄装置50は、
図7及び
図8に示すように、外部雰囲気から隔てられた洗浄槽50Aと、この洗浄槽50A内に配設された搬送装置60と、後述するノズル70,72が取り付けられた複数の配管80と、を備える構成とされる。なお、
図7〜
図13では、X軸方向がガラス基板30Aの搬送方向(前後方向)とされ、Y軸方向が左右方向(搬送されるガラス基板30Aの幅方向)とされ、Z軸方向が洗浄装置50の上下方向とされる。また、
図7及び
図8では、図の左側が搬送方向の上流側、図の右側が搬送方向の下流側とされる。洗浄装置50において、ガラス基板30Aは、薄膜の形成面又は形成予定面が上側に向けられた状態で搬送方向の上流側に投入され、その長辺方向がX軸方向に沿うとともにその短辺方向がY軸方向に沿った姿勢で、搬送装置60によって搬送方向の上流側から下流側へと搬送される(
図7及び
図8の矢印参照)。
【0039】
先に搬送装置60の構成について説明する。搬送装置60は、
図7及び
図8に示すように、軸状に延在し、ガラス基板30Aを搬送方向に沿って搬送する複数の搬送ローラ62と、各搬送ローラ62の両端部をその軸周りに回転可能に支持する軸受部64と、所定の高さ位置に固定されて軸受部64を保持する一対のフレーム66とを備えている。このうち一対のフレーム66は、ガラス基板30Aの搬送方向に沿って延在する形状とされ、各搬送ローラ62の取付位置に対応する位置に凹状に凹んでなる複数の凹状部66A1を有している。各凹状部66Aは、上方に開口する形で、ガラス基板30Aの搬送方向に沿って間欠的に設けられている。
【0040】
各搬送ローラ62は、一対のフレーム66の間に架け渡され、その延在方向がY軸方向に沿った姿勢で、搬送方向に沿って所定の間隔で並列配置されている。各搬送ローラ62は、図示しない回転機構によってその軸周りに回転されるようになっている。各搬送ローラ62は、
図7及び
図8に示すように、金属製のシャフト部62Aと、シャフト部62Aに取り付けられた合成樹脂製の複数の基板支持部62Bとを有している。各基板支持部62Bは、シャフト部62Aよりも径大な円板状とされ、搬送ローラ62の延在方向において所定の間隔を空けてシャフト部62Aに取り付けられている。ガラス基板30Aは、薄膜の形成面又は形成予定面とは反対側の板面が搬送ローラ62の基板支持部62Bによって継続的に支持されながら、搬送方向に沿って搬送される。
【0041】
軸受部64は、いわゆるボールベアリングであり、搬送ローラ62のシャフト部62Aの延在方向の両端部において、軸周りの外側に配されている。軸受部64は、その下側部分が各フレーム66の凹状部66Aに接着固定されることで、フレーム66に対して保持されている。なお、搬送装置60は、
図7に示すように、搬送方向の下流側に配された一つの搬送ローラ62と対向する形で当該搬送ローラ62の上側に配された一つの上乗せローラ68を備えている。この上乗せローラ68は、搬送ローラ62と同様の構成であり、その回転機構についても搬送ローラ62と同様とされる。この上乗せローラ68は、対向する搬送ローラ62との間にガラス基板30Aを挟み込んだ形で当該ガラス基板30Aを搬送方向の下流側に送り出すものとされる。このように対向する一対のローラ62,68の間にガラス基板30Aを挟み込むことで、ガラス基板30Aがその板面方向に滑ることを防止ないし抑制することができる。
【0042】
次に配管80の構成について説明する。各配管80は、
図8に示すように、搬送方向に沿って延在する主管部80Aと、主管部80Aから分岐して左右方向に沿って延在する複数の分岐管部80Bと、を備えている。各配管80の主管部80Aは搬送装置の左右方向における一端側に位置しており、各配管80の分岐管部80Bは搬送装置の左右方向における一端側から他端側に至るまで伸びている。また、各配管80において、各分岐管部80Bの搬送方向における間隔は略等しいものとされる。各配管80における各分岐管部80Bには、搬送装置60によって搬送されるガラス基板30A上に洗浄液を噴射する複数のノズル70,72が搬送方向と直交する方向(Y軸方向)に直線状に並列した形で取り付けられている。複数のノズル70,72は、各分岐管部80Bにおいて略等間隔で間欠的に設けられており、各分岐管部80Bにおけるノズル70,72の数、及びノズル70,72の配置はいずれも等しいものとされる。なお、各配管80の主管部80Aには、図示しない供給管から洗浄液が供給されるようになっている。主管部80Aに供給された洗浄液は、各分岐管部80Bまで流れて各ノズル70,72から噴射される。
【0043】
複数のノズル70,72の大部分は、搬送装置60によって搬送されるガラス基板30Aの板面に対して垂直に当たるように下方に向かって真っすぐに洗浄液を噴射する垂直ノズル(洗浄用ノズルの一例)70とされる。ここで、
図9における鎖線、及び
図10における一点鎖線は、各垂直ノズル70から噴射される洗浄液の噴射範囲を示している。
図9及び
図10に示すように、垂直ノズル70から噴射される洗浄液は、やや傾いた形で左右方向に拡がるように垂直ノズル70の噴射口からガラス基板30A側に向かって噴射される。また、
図9及び
図10に示すように、各垂直ノズル70から噴射される洗浄液は、その噴射範囲が左右方向の両側において隣り合う洗浄液の噴射範囲と重なり合うものとされる。このため、搬送装置60によって搬送されるガラス基板30Aは、垂直ノズル70が取り付けられた分岐管部80Bの直下を通過する際、分岐管部80Bの直下に位置するガラス基板30Aの板面の部位が幅方向の全域に亘って洗浄液に当たるようになっている。
【0044】
一方、搬送方向の最も下流側に位置する分岐管部80Bに取り付けられた各ノズル70,72のうち、左右方向の一端側に位置する3つのノズル72と左右方向の他端側に位置する3つのノズル72は、搬送装置60によって搬送されるガラス基板30Aの板面に対して斜め方向から当たるように下方に向かって洗浄液を噴射する傾斜ノズル72とされる。ここで、
図11における鎖線、及び
図12における一点鎖線は、各垂直ノズル70及び各傾斜ノズル72から噴射される洗浄液の噴射範囲を示している。
図9及び
図10に示すように、傾斜ノズル72から噴射される洗浄液は、やや傾いた形で前後方向に拡がるように傾斜ノズル72の噴射口からガラス基板30A側に向かって噴射される。詳しくは、傾斜ノズル72では、洗浄液の噴射方向D1が、搬送されるガラス基板30Aの板面と直交する平面P1に対して傾けられている(
図11及び
図13参照)。これに対し上記垂直ノズル70は、洗浄液の噴射方向がこの平面P1に沿うものとされる。
【0045】
傾斜ノズル72の構成及び傾斜ノズル72による洗浄液の噴射態様についてさらに詳しく説明する。傾斜ノズル72は、
図11及び
図13に示すように、搬送方向の上流側にわずかに傾けられた垂直ノズル70の噴射口に、略クランク状に屈曲して伸びる延長ノズル72Aを取り付けた構成とされる。延長ノズル72Aは、その噴射口がガラス基板30Aの左右方向における両端部側に向けられた姿勢で取り付けられている。このため、傾斜ノズル72からガラス基板30A上に噴射される洗浄液は、ガラス基板30Aの左右方向における両端部側に向かうようになっている。詳しくは、
図12において、図の右端側に位置する3つの傾斜ノズル72では、噴射される洗浄液がガラス基板30Aの右端部側に向かうように噴射方向が傾いており、図の左端側に位置する3つの傾斜ノズル72では、噴射される洗浄液がガラス基板30Aの左端部側に向かうように噴射方向が傾いている。また、傾斜ノズル72による洗浄液の噴射方向は、垂直ノズル70による洗浄液の噴射方向に比べて、搬送方向の上流側にわずかに傾いている(
図7参照)。
【0046】
各分岐管部80Bに取り付けられた傾斜ノズル72が上記のような構成とされることで、
図14に模式的に示すように、搬送装置60によって搬送されるガラス基板30A上の塵や埃等の異物R1は、傾斜ノズル72から噴射される洗浄液によってガラス基板30Aの左右方向における両端部側から当該ガラス基板30Aの外側に流し落とされる(
図14に示す矢印参照)。このため、ガラス基板30Aの左右方向における両端部側に洗浄液が滞留することが防止ないし抑制され、洗浄液によってガラス基板30A上から剥離された異物R1がガラス基板30A上に再び付着することが防止ないし抑制されるようになっている。
【0047】
ところで、洗浄装置50では、各ノズル70,72から噴射された洗浄液は回収され、図示しない循環装置により循環されて再び洗浄液として使用される。アレイ基板30の製造過程において、洗浄装置50が他の製造装置51〜56による工程の後で使用されると、上記異物R1が混入した洗浄液がガラス基板30A上に噴射されることがある。このため、洗浄装置50が他の製造装置51〜56による工程の後で使用される場合、ガラス基板30A上に洗浄液が滞留すると、洗浄液に混入した異物R1がガラス基板30A上に成膜された上記ゲート絶縁膜37や上記層間絶縁膜39に付着し、ゲート絶縁膜37や層間絶縁膜39の一部と共にガラス基板30Aから剥がれ、ゲート絶縁膜欠損又は層間絶縁膜欠損として検出されることがある。このような欠損が検出されたアレイ基板30は、不良品とされる。これに対し本実施形態では、上記のようにガラス基板30A上に洗浄液が滞留することが防止ないし抑制されるため、再利用される洗浄液に含まれる異物R1がガラス基板30A上のゲート絶縁膜37や層間絶縁膜39等に付着することが防止ないし抑制されるようになっている。
【0048】
ここで
図15のグラフに、本実施形態に係る洗浄装置50の適用前後において、ガラス基板30A上に成膜されたゲート絶縁膜37のゲート絶縁膜欠損、及びガラス基板30A上に成膜された層間絶縁膜39の層間絶縁膜欠損をそれぞれ検出した結果を示す。なお、
図15のグラフにおける横軸は1枚のアレイ基板30当たりに発生したパターン欠陥(上記ゲート絶縁膜欠損及び上記層間絶縁膜欠損)が何箇所発生したのかを示しており、縦軸はパターン欠陥の発生数毎にその発生頻度を百分率(%)で示している。また、丸印を結んだ線は本実施形態に係る洗浄装置50の適用前を示しており、四角印を結んだ線は本実施形態に係る洗浄装置50の適用後を示している。
図15のグラフに示すように、パターン欠陥の発生数が60を超えるものについては、本実施形態に係る洗浄装置50の適用前よりも適用後の方が大きく下回っている。従って、本実施形態の洗浄装置50を適用することにより、ガラス基板30Aの表面に洗浄液が滞留することが防止ないし抑制されており、ガラス基板30A上への異物R1の再付着によるパターン欠陥の発生数が低減されている。
【0049】
以上説明したように本実施形態に係る洗浄装置50では、搬送方向の最も下流側に位置する分岐管部80Bに取り付けられた複数のノズル70,72のうち、左右方向の両端部側に配された計6つの傾斜ノズル72について、洗浄液の噴射方向が搬送されるガラス基板30Aの板面と直交する平面に対して傾けられている。これにより、これらの6つの傾斜ノズル72から、搬送されるガラス基板30Aの左右方向の両端部側に向かうようにガラス基板30A上に洗浄液が噴射される。このため、搬送されるガラス基板30A上に洗浄液が滞留したとしても、傾斜ノズル72から噴射される洗浄液によって、ガラス基板30A上に滞留した洗浄液が、ガラス基板30Aの左右方向の両端部からガラス基板30Aの外側に流し落とされる。その結果、ガラス基板30A上に滞留した洗浄液に含まれる異物R1がガラス基板30Aに再付着することを抑制することができる。
【0050】
さらに、本実施形態に係る洗浄装置50において、各配管80に取り付けられる各ノズル70,72は、各配管80の分岐管部80Bに直線状に並列した形で配される。このため、洗浄装置50の製造過程において、複数のノズル70,72が直線状以外の形状(例えばV字型に屈曲した形状)に並列して配される構成と比べて簡単な工程で複数のノズル70,72を配することができる。
【0051】
また本実施形態では、傾斜ノズル72が垂直ノズル70よりも搬送方向の下流側に配されており、垂直ノズル70による洗浄液の噴射方向が、搬送されるガラス基板30Aの板面と直交する平面P1に沿っている。このような構成とされていることで、垂直ノズル70からガラス基板30A上に噴射された洗浄液が上記平面P1に対して傾かない形でガラス基板30Aに当たることとなるので、搬送方向に沿って搬送されるガラス基板30Aを傾斜ノズル72の下方に至るまでの間に垂直ノズル70によって効果的に洗浄することができる。
【0052】
ところで本実施形態では、傾斜ノズル72が搬送方向の最も下流側に配されており、傾斜ノズル72からガラス基板30Aの板面に対して傾いた形で洗浄液が噴射されるので、搬送方向の下流側において傾斜ノズル72からの洗浄液がガラス基板30Aと搬送ローラ62との間に入り込み、ガラス基板30Aがその板面方向に滑る虞がある。この点、本実施形態では、搬送方向の下流側において、搬送ローラ62と上乗せローラ68との間にガラス基板30Aが挟み込まれ、搬送方向のさらに下流側に当該ガラス基板30Aが送り出されるため、ガラス基板30Aが搬送ローラ62上をその板面方向に滑ることが防止ないし抑制されるようになっている。
【0053】
<実施形態2>
図16を参照して実施形態2を説明する。実施形態2は、傾斜ノズル72,173,174の噴射態様が実施形態1のものと異なっている。その他の構成については実施形態1と同様であるため、構造、作用、及び効果の説明は省略する。本実施形態の洗浄装置では、
図16に示すように、実施形態1と同様に、搬送方向の最も下流側に位置する分岐管部80Bに取り付けられた複数のノズル70,72,173,174のうち、左右方向の一端側に位置する3つのノズル72,173,174と左右方向の他端側に位置する3つのノズル72,173,174がそれぞれ傾斜ノズル72,173,174とされる。このうち内側(分岐管部80Bの左右方向における中央側)にそれぞれ位置する2つの傾斜ノズル72は、実施形態1の傾斜ノズル72と同様のものとなっている。
【0054】
一方、実施形態1と同様の傾斜ノズル72の外側(分岐管部80Bの左右方向における両端部側)にそれぞれ位置する2つの傾斜ノズル173は、その延長ノズル173Aがより外側に傾けられている。具体的には、これら2つの傾斜ノズル173は、洗浄液の噴射方向が、上述した平面P1に対して実施形態1と同様の傾斜ノズル72よりも外側にさらに略5°傾いた構成となっている。さらに、この2つの傾斜ノズル173の外側にそれぞれ位置する2つの傾斜ノズル174、即ち、分岐管部80Bの左右方向における両端にそれぞれ位置する2つの傾斜ノズル174は、その延長ノズル174Aがより外側に傾けられている。具体的には、これら2つの傾斜ノズル173は、洗浄液の噴射方向が、上述した平面P1に対して実施形態1と同様の傾斜ノズル72よりも外側にさらに略10°傾いた構成となっている。
【0055】
このように本実施形態では、分岐管部80Bの左右方向における両端部側に近づくにつれて、傾斜ノズル72,173,174による洗浄液の噴射方向の上記平面P1に対する傾き角度が大きくなるものとされる。ここで、搬送装置によって搬送されるガラス基板30A上では、ガラス基板30Aの左右方向における両端部側に近づくほど、洗浄液が滞留し易い。本実施形態では、各傾斜ノズル72,173,174が上記のような構成とされていることで、ガラス基板30A上のうち洗浄液が滞留し易い側に近づくほどガラス基板30A上に噴射される洗浄液の噴射方向の傾き角度が大きくなるので、ガラス基板30A上に滞留した洗浄液を、ガラス基板30Aの左右方向における両端部から当該ガラス基板30Aの外側に効果的に流し落とすことができる。
【0056】
<実施形態3>
図17を参照して実施形態3を説明する。実施形態3は、傾斜ノズル72,275,276の噴射態様が実施形態1及び実施形態2のものと異なっている。その他の構成については実施形態1と同様であるため、構造、作用、及び効果の説明は省略する。本実施形態の洗浄装置では、
図17に示すように、実施形態1及び実施形態2と同様に、搬送方向の最も下流側に位置する分岐管部80Bに取り付けられた複数のノズル70,72,275,276のうち、左右方向の一端側に位置する3つのノズル72,275,276と左右方向の他端側に位置する3つのノズル72,275,276がそれぞれ傾斜ノズル72,275,276とされる。このうち内側(分岐管部80Bの左右方向における中央側)にそれぞれ位置する2つの傾斜ノズル72は、実施形態1の傾斜ノズル72と同様のものとなっている。
【0057】
一方、実施形態1と同様の傾斜ノズル72の外側にそれぞれ位置する2つの傾斜ノズル275は、その延長ノズル275Aから噴射される洗浄液の噴射力が、実施形態1と同様の傾斜ノズル72の噴射力よりも大きいものとされる。さらに、この2つの傾斜ノズル275の外側にそれぞれ位置する2つの傾斜ノズル275、即ち、分岐管部80Bの左右方向における両端にそれぞれ位置する2つの傾斜ノズル276は、その延長ノズル276Aから噴射される洗浄液の噴射力が、その内側にそれぞれ位置する上記傾斜ノズル275の噴射力よりも大きいものとされる。
【0058】
このように本実施形態では、分岐管部80Bの左右方向における両端部側に近づくにつれて、傾斜ノズル72,275,276による洗浄液の噴射力が大きくなるものとされる。このような構成とされていることで、搬送されるガラス基板30A上のうち洗浄液が滞留し易い側(ガラス基板30Aの左右方向における両端部側)に近づくほどガラス基板30A上に噴射される洗浄液の噴射力が大きくなるので、ガラス基板30A上に滞留した洗浄液を、ガラス基板30Aの左右方向における両端部から当該ガラス基板30Aの外側に効果的に流し落とすことができる。
【0059】
上記の各実施形態の変形例を以下に列挙する。
(1)上記の各実施形態では、搬送方向の最も下流側に位置する分岐管部にのみ傾斜ノズルが取り付けられた構成を例示したが、傾斜ノズルが取り付けられる位置については限定されない。傾斜ノズルが搬送方向の上流側に配されてもよいし、傾斜ノズルが搬送方向の途中に配されてもよい。
【0060】
(2)上記の各実施形態では、洗浄装置が計6つの傾斜ノズルを備える構成を例示したが、傾斜ノズルの数については限定されない。
【0061】
(3)上記の各実施形態では、傾斜ノズルが垂直ノズルに延長ノズルを取り付けた構成とされた例を示したが、傾斜ノズルは直線状に並列した形で配されればよく、傾斜ノズルの構成及び噴射態様については限定されない。
【0062】
(4)上記の各実施形態では、洗浄装置の搬送装置によって搬送される板状体の一例としてガラス基板を例示したが、傾斜ノズルからの洗浄液が噴射される板状体はガラス基板に限定されない。
【0063】
以上、本発明の各実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。