(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
これから記載の実施形態に詳細に言及する。実施形態の1以上の実施例を図面に示した。各実施例は説明のために記載され、開示された実施形態を限定するものではない。実際、本実施形態では、本開示の範囲又は趣旨から逸脱することなく様々な変更及び変形が可能であることが当業者には明らかになるであろう。例えば、1つの実施形態の一部として例示又は記載した特徴は、別の実施形態と共に利用して、さらに別の実施形態を与えることができる。したがって、本発明は、このような変更及び変形が添付された特許請求の範囲及びその均等物の範囲内に入るように対象に含むことが意図される。
【0019】
図1から
図5を参照すると、アブレイダブル皮膜及びその堆積方法は、セラミックマトリックス複合材(CMC)上での使用のために提供される。工程は、粗いサイズ及び細かいサイズを含む2以上の粒子サイズのスラリーを調製するものである。スラリーは、焼結助剤をさらに含む。スラリーは、1つの実施形態によれば、部品の上及び型内に置かれ、ゲル化される。代替の実施形態では、ゲル化スラリーは、押出により部品上に直接書き込まれる。ゲル化スラリーは乾燥及び焼結され、ガスタービンエンジン部品又は耐環境皮膜のいずれかの上に堆積されたアブレイダブル皮膜が残る。耐環境皮膜(EBC)は、改善された製造、動作又は性能につながる。
【0020】
さらに具体的には、本明細書において以下で説明するように、本明細書に記述されるEBCは焼結助剤を含み、この焼結助剤は焼結温度を下げることができて、それによって、高い焼結温度に対する暴露を通じて部品を損傷することなく、高温燃焼中に発生するガスによる腐食から、下にある部品を保護する気密性のシールとして働くことができる高密度のEBC層の形成を促進する。さらに、形成は、例えば、ブレードなどのローター部品が接触したときに壊れる多孔質アブレイダブル層の形成でもよい。
【0021】
本明細書に記述されるEBCは、CMC又はモノリシックセラミックスとの併用に適していてもよい。「CMC」は、ケイ素含有マトリックス及び強化材料をいう。複合材料は、これには限定されないが、セラミックマトリックス複合材(CMC)を含む様々な低延性及び低熱膨張係数材料で形成又は構成されてもよい。概して、本明細書で用いるCMC材料には、セラミック繊維、例えば炭化ケイ素(SiC)が含まれ、その形態は、窒化ホウ素(BN)などの柔軟材料で被覆される。本明細書における使用に許容されるCMCのいくつかの例には、マトリックス、並びに炭化ケイ素、窒化ケイ素及びこれらの混合物を含む強化繊維を有する材料を含むことができるが、これらに限定されるべきではない。本明細書で用いる「モノリシックセラミックス」は、炭化ケイ素、窒化ケイ素及びこれらの混合物を含む材料をいう。本明細書において、CMC及びモノリシックセラミックスは、まとめて「セラミック」と呼ばれることもある。
【0022】
通常、CMCは、他の低延性の高温対応材料で構成することができる。CMC材料は一般に、約1%以下の室温引張延性を有し、これは、本明細書において低引張延性材料の定義に用いられる。一般に、CMC材料は、約0.4%〜約0.7%の範囲の室温引張延性を有する。
【0023】
CMC材料には、繊維の長さに平行な方向(「繊維方向」)の材料引張強度が、直角な方向の引張強度よりも強いという特色がある。この直角な方向には、マトリックス、層間、第2又は第3の繊維の方向を含んでもよい。様々な物理特性が繊維とマトリックスの方向の間で異なっていてもよい。
【0024】
被覆エンジン部品には、耐環境皮膜の1以上の層を組み込んでもよく、この層は、アブレイダブル材料、及び/又は部品の表面でのCMC材料との使用に適した既知のタイプのこすれに強い材料でもよい。この層は「こすれコート」と呼ばれることもある。本明細書で用いる用語「アブレイダブル」は、2つの部品が接触している間、例えば、可動部品、例えばタービンブレード先端にほとんど、又は全く損傷を与えることなく、こすれコートがすり減らされたり、砕かれたり、又は侵食されたりすることができることを示唆する。このアブレイダブル特性は、こすれコートの材料組成の、その物理的な構成又はこれらの一部の組合せによる結果でもよい。こすれコートは、イットリア安定化ジルコニア、希土類二ケイ酸塩又はバリウムストロンチウムアルミノケイ酸塩などのセラミック層を含んでもよい。本明細書で用いる用語「(1以上の)障壁皮膜」は、耐環境皮膜(EBC)をいうことができる。本明細書におけるEBCは、「セラミック部品」上での使用、又は単に、ガスタービンエンジン内に存在するような高温環境(例えば、2100°F(1149℃)を上回る動作温度)で見られる「部品」上での使用に適していてもよい。このようなセラミック部品の例には、例えば、燃焼器部品、タービンブレード、シュラウド、ノズル、熱シールド及びベーンを含むことができる。
【0025】
まず
図1を参照すると、非限定的な例として、タービンブレード又はシュラウドなどの被覆エンジン部品10。
【0026】
被覆エンジン部品10は、ベースCMC構造物12によって規定される。ベースCMC構造物12は、さらに、1以上の層を含んでもよいEBC14を少なくとも1つ有してもよい。1つの実施形態によれば、EBC14は、ボンドコート層16、例えば気密性のボンドコートを含んでもよく、これは、高温蒸気の凝縮に対してシールし、高い焼結温度に対する暴露による部品の損傷を阻止するために密度が高い。アブレイダブルこすれ皮膜又はアブレイダブル層30がボンドコート層16の外側に配置されてもよい。さらに具体的には、EBC14は、
図1に概略を示し、本明細書において以下に記載の通り、以下の様々な組合せを含む皮膜系を含んでもよい:任意選択のボンドコート層16、任意選択の非晶質シリカ層20、1以上の遷移層22、任意選択の柔軟層24、任意選択の中間層26及び任意選択の外層28。ベースCMC構造物12又はEBC14のいずれかの上にアブレイダブル層30があり、これはスラリーのゲルにより堆積される。記載のない限り、アブレイダブル層がEBC14に付与されても、又はガスタービンエンジン部品10に直接付与されてもよい。
【0027】
ボンドコート層16は、ケイ素金属、ケイ化物又はこれらの組合せを含んでもよく、概して、約0.1ミル〜約6ミル(約2.5〜約150マイクロメートル)の厚さを有してもよい。本明細書において以下に記載する付与方法のために、ケイ素ボンドコートが欠けている局所領域がいくつか存在することがあるが、これらは許容される。例えば、1つの実施形態では、ボンドコート層16は、ベースCMC構造物12の表面をほぼ100%覆うことができて、別の実施形態では、ベースCMC構造物12の表面積の約90%以上を覆うことができる。
【0028】
本明細書において用いられる「ケイ化物」は、希土類(Ln)ケイ化物、ケイ化クロム(例えば、CrSi
3)、ケイ化ニオブ(例えば、NbSi
2、NbSi
3)、ケイ化モリブデン(例えば、MoSi
2、Mo
5Si
3、MoSi
3)、ケイ化タンタル(例えば、TaSi
2、TaSi
3)、ケイ化チタン(例えば、TiSi
2、TiSi
3)、ケイ化タングステン(例えば、WSi
2、W
5Si
3)、ケイ化ジルコニウム(例えば、ZrSi
2)、ケイ化ハフニウム(例えば、HfSi
2)、ケイ化レニウム及びこれらの組合せ又は合金を含んでもよい。
【0029】
本明細書で用いる「(Ln)」と表す「希土類」は、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)の希土類元素及びこれらの混合物をいう。
【0030】
非晶質シリカ層20は、約0.0ミル〜約0.2ミルの初期厚さを有する。しかし、非晶質シリカ層20の厚さは経時的に大きくなることができる。具体的には、ボンドコート層16中のケイ素は、EBCの使用寿命の間にゆっくりと酸化して、非晶質シリカ層20の厚さを徐々に大きくすることができる。セラミック部品ではなくボンドコートが酸化され、非晶質シリカ層内の酸素拡散速度が遅いため、ボンドコート層16のこの酸化によって、下にあるセラミック部品を酸化から保護することができる。非晶質シリカ層20は、いくつかの実施形態では、本明細書において下に定義した通り、非晶質シリカ層20内への「ドーピング成分」の拡散により、ドーピング成分でドープされ得る。
【0031】
Kirbyらによって発行された米国特許第8501840号明細書(参照により本明細書に組み込まれる。以下「Kirbyら」。)に記載されているように、遷移層22は、希土類二ケイ酸塩、以下で定義されるドープ希土類二ケイ酸塩、又は二次材料を含むドープ希土類二ケイ酸塩を含んでもよい。さらに具体的には、遷移層22は、一次遷移材料の遷移層を約85〜約100体積%、二次材料の遷移層を約15体積%以下含んでもよく、1つの実施形態では、一次遷移材料の遷移層を約85〜約99体積%、二次材料の遷移層を約1〜約15体積%含んでもよい。別の実施形態では、遷移層22は、以下で説明するように、ドープされ得る100%一次遷移材料を含んでもよい。
【0032】
本明細書で用いる「一次遷移材料」は、希土類二ケイ酸塩(Ln
2Si
2O
7)又はドープ希土類二ケイ酸塩をいう。本明細書で用いる「ドープ希土類二ケイ酸塩」は、鉄、アルミニウム、ガリウム、インジウム、チタン、ニッケル、コバルト、希土類(Lnb)、これらの酸化物(例えば、Fe
2O
3、Fe
3O
4、Al
2O
3、Ga
2O
3、In
2O
3、NiO、Co
3O
4、TiO
2、Lnb
2O
3)、これらの化合物(例えば、Lnb
2Si
2O
7、Lnb
2SiO
5、ケイ酸鉄、ケイ酸ニッケル、ケイ酸コバルト、ムライト、希土類アルミニウム酸化物、希土類チタン酸化物、希土類ガリウム酸化物、希土類インジウム酸化物など。)及びこれらの混合物からなる群から選択される「ドーピング成分」でドープLn
2Si
2O
7をいう。「ドープ」は、ドーピング成分が一次材料に溶け込んだ状態をいい、格子間位置を占めるドーピング成分陽イオンによって、又はこれらの効果のいくつかの組合せによって、(Lnb
2Si
2O
7ドーピング成分を用いてLn位置を置換するLnbの場合のように)Ln
2Si
2O
7のLn又はSi位置のいずれかを置換するドーピング成分陽イオンによってこの状態が発生し得る。一次材料中に存在する任意のドーピング成分は、一次材料への溶解限度を超えるレベルである場合、熱処理で一次材料に部分的に溶けてもよく、残りは溶けずに二次材料になり、又は反応に関与して二次材料を生成する(例えば、FeドープLn
2Si
2O
7とFe
2O
3二次材料;FeドープLn
2Si
2O
7とLn
3Fe
5O
12二次材料、TiドープLn
2Si
2O
7とTiO
2二次材料;又はNiドープLn
2Si
2O
7と希土類ニッケル酸化物二次材料)。
【0033】
本明細書の実施形態に関して、「Lnb希土類金属」又は単に「Lnb」は、LnbがLnと同じ希土類ではない希土類金属のサブセットをいう。
【0034】
「ケイ酸鉄」は、Fe
2SiO
4などの化合物及び希土類鉄ケイ酸塩のガラスを含むことができる。「希土類鉄酸化物」は、ガーネット(Ln
3Fe
5O
12)、単斜晶フェライト(Ln
4Fe
2O
9)及びペロブスカイト(LnFeO
3)などの化合物を含むことができる。「希土類アルミニウム酸化物」は、ガーネット(Ln
3A
15O
12)、単斜晶アルミン酸塩(Ln
4A
12O
9)及びペロブスカイト(LnAlO
3)などの化合物を含むことができる。「希土類アルミニウム酸化物」は、約35〜50重量%のLn
2O
3、約15〜25重量%のA
12O
3及び約25〜50重量%のSiO
2からなるガラス質材料を含むこともできる。「希土類チタン酸化物」は、Ln
2Ti
2O
7(パイロクロア)及びLn
2TiO
5などの化合物を含むことができる。「希土類ガリウム酸化物」は、ガーネット(Ln
3Ga
5O
12)、単斜晶ガラート(Ln
4Ga
2O
9)、ペロブスカイト(LnGaO
3)及びLn
3GaO
6などの化合物を含むことができる。「希土類インジウム酸化物」は、ガーネット(Ln
3In
5O
12)及びペロブスカイト(LnInO
3)などの化合物を含むことができる。「ケイ酸ニッケル」は、Ni
2SiO
4などの化合物を含むことができる。「ケイ酸コバルト」は、Co
2SiO
4などの化合物を含むことができる。
【0035】
各遷移層22は、約0.1ミル〜約5ミルの厚さを有してもよく、以下に記載の通り形成され、下にある層に付与されてもよい。1つの実施形態では、1つを超えて存在する遷移層があってもよい。このような例では、各遷移層は、一次遷移材料及び二次材料の同じか、又は異なる組合せを含んでもよい。各遷移層が、一次遷移材料及び二次材料の同じ組合せを含む場合、厚さを段階的に積み上げることができる。遷移層22は、遷移層の0〜約15体積%のポロシティレベル、別の実施形態では、遷移層の約0.01〜約15体積%のポロシティレベルを有してもよい。このように、遷移層22は気密性であり、したがって高温蒸気に対してシールするのに十分高い密度がある。別の実施形態では、遷移層22は、ドープ希土類二ケイ酸塩である一次遷移材料、二次遷移材料及び気孔からなる。本実施形態では、気孔体積及び二次遷移材料体積の合計は、遷移層の0〜約15体積%のレベルである。この実施形態によって、二次材料が使用中に完全に揮発する場合、ポロシティが元のままであるような、高温蒸気に対して気密性の遷移層が確保される。
【0036】
同様に、Kirbyらによって記述されているように、外層28は、希土類一ケイ酸塩、ドープ希土類一ケイ酸塩、又は二次材料を含むドープ希土類一ケイ酸塩を含んでもよい。さらに具体的には、外層28は、一次外側材料の外層を約85〜約100体積%、先に定義した二次材料の外層を約15体積%以下含むことができて、1つの実施形態では、一次外側材料の層を約85〜約99体積%、二次材料の外層を約1〜約15体積%含むことができる。別の実施形態では、外層28は、以下で説明するように、一次外側材料がドープされ得る100%一次外側材料を含んでもよい。
【0037】
本明細書で用いる「一次外側材料」は、希土類一ケイ酸塩又はドープ希土類一ケイ酸塩をいう。本明細書で用いる「ドープ希土類一ケイ酸塩」は、先に定義したドーピング成分でドープLn
2SiO
5をいう。再び、ドーピング成分は、ドーピング成分が一次材料に溶け込んだ状態をいい、格子間位置を占めるドーピング成分陽イオンによって、又はこれらの効果のいくつかの組合せによって、(Ln位置を置換するLnbの場合のように)Ln
2SiO
5のLn又はSi位置のいずれかを置換するドーピング成分陽イオンによってこの状態が発生し得る。一次遷移層材料と同様に、一次外側材料へのドーピング成分の溶解限度が超える場合、上述の二次材料が存在するようになる。外層28は、約0.1ミル〜約3ミルの厚さを有してもよく、以下に記載の通り形成され、下にある層に付与されてもよい。1つの実施形態では、外層28は、外層28の0〜約30体積%のポロシティレベル、別の実施形態では、外層28の約0.01〜約30体積%のポロシティレベル、別の実施形態では、外層28の約0.01〜約15体積%のポロシティレベルを有してもよい。いくつかの実施形態では、外層28は、その内部に、熱膨張異方性及び下にある材料との熱膨張の不一致により動作中に形成し得るクラックを最大約10クラック/mmの密度で含むことができる。
【0038】
外層28内のポロシティ及びクラックの発生によって高温蒸気が通過できるようになるが、外層28は凝縮に耐える。これは、使用中に高温蒸気と反応せずに体積が変わることを意味する。一方、下にある遷移層22は気密性であり、高温蒸気が上述のボンドコート又はCMCまで通過するのを防ぐ。
【0039】
存在する場合、柔軟層24は、一次柔軟材料の柔軟層を約85〜約100体積%、二次柔軟材料の柔軟層を約15体積%以下含んでもよく、1つの実施形態では、一次柔軟材料の柔軟層を約85〜約99体積%、二次柔軟材料の柔軟層を約1〜約15体積%含んでもよい。別の実施形態では、柔軟層24は、一次外側材料が希土類元素でドープされてもよい一次柔軟材料の柔軟層を100体積%含んでもよい。
【0040】
本明細書で用いる「一次柔軟材料」は、BSAS、又は希土類ドープBSAS(ここで、ドーピング成分は、1種以上の希土類元素、酸化物、或いはバリウム、ストロンチウム、アルミニウム又はケイ素を含む化合物からなる。)をいい、一方、「二次柔軟材料」は、Ln
2O
3、Ln
2Si
2O
7、Ln
2SiO
5、Ln
3Al
5O
12、ムライト及びこれらの組合せをいう。柔軟層24は、約0.1ミル〜約40ミルの厚さを有してもよく、以下に記載の通り形成され、付与されてもよい。1つの実施形態では、柔軟層24は、柔軟層の0〜約30体積%のポロシティレベル、別の実施形態では、柔軟層の約0.01〜約30体積%のポロシティレベル、別の実施形態では、柔軟層の約0.01〜約15体積%のポロシティレベルを有してもよい。
【0041】
存在する場合、中間層26は、希土類一ケイ酸塩又はドープ希土類一ケイ酸塩の先に定義した一次外側材料を含むことができる。非晶質シリカ層20と同様に、EBC14の使用寿命の間、中間層26が形成し得る。さらに具体的には、高温蒸気は外層28に浸透し、蒸気が遷移層の一次遷移材料と反応してSiO
2を揮発させるとき、中間層26が形成し得る。
【0042】
遷移層22と同様に、アブレイダブル層30は、希土類二ケイ酸塩、ドープ希土類二ケイ酸塩、又は二次材料を含むドープ希土類二ケイ酸塩を含んでもよい。さらに具体的には、アブレイダブル層30は、一次材料のアブレイダブル層30を約85〜約100体積%、二次材料のアブレイダブル層30を約15体積%以下含んでもよく、1つの実施形態では、一次材料のアブレイダブル層30を約85〜約99体積%、二次材料のアブレイダブル層を約1〜約15体積%含んでもよい。別の実施形態では、アブレイダブル層30は、で上述の通り、一次材料がドープされ得る100%一次材料を含んでもよい。
【0043】
アブレイダブル層30のためのドーピング成分は、鉄、アルミニウム、ガリウム、インジウム、チタン、ニッケル、コバルト、これらの酸化物(例えば、Fe
2O
3、Fe
3O
4、Al
2O
3、Ga
2O
3、In
2O
3、NiO、Co
3O
4、TiO
2など。)、これらの化合物(例えば、Lnb
2Si
2O
7、希土類アルミニウム酸化物、希土類チタン酸化物、希土類ガリウム酸化物、希土類インジウム酸化物など。)及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。「ドープ」は、ドーピング成分が一次材料に溶け込んだ状態をいい、格子間位置を占めるドーピング成分陽イオンによって、又はこれらの効果のいくつかの組合せによって、(Ln位置を置換するLnbの場合のように)Ln
2Si
2O
7のLn又はSi位置のいずれかを置換するドーピング成分陽イオンによってこの状態が発生し得る。一次材料中に存在する任意のドーピング成分は、一次材料への溶解限度を超えるレベルである場合、熱処理で一次材料に部分的に溶けてもよく、残りは溶けずに二次材料になり、又は反応に関与して二次材料を生成する(例えば、FeドープLn
2Si
2O
7とFe
2O
3二次材料;FeドープLn
2Si
2O
7とLn
3Fe
5O
12二次材料、TiドープLn
2Si
2O
7とTiO
2二次材料;又はNiドープLn
2Si
2O
7と希土類ニッケル酸化物二次材料)。
【0044】
アブレイダブル層30は他の層よりも厚くてもよく、例えば5ミルを超え、例えば最大60ミルでもよい。さらに、層は多孔質(体積で最大50%のポロシティ)で動作中に層の破壊を促進し、部品、例えば、タービンブレード又はシュラウドの意図しない破壊を代わりにもたらす可能性のあるこすれ力(rub force)の低減を促進する。
【0045】
例として、限定することなく、本明細書に記述されるEBC系は、1つの実施形態では、ベースCMC構造物12、ボンドコート層16、遷移層22及びアブレイダブル層30を含んでもよく;別の実施形態では、ベースCMC構造物12、ボンドコート層16、遷移層22、外層28及びアブレイダブル層30を含んでもよく;別の実施形態では、ベースCMC構造物12、ボンドコート層16、遷移層22、柔軟層24、外層28及びアブレイダブル層30を含んでもよく;別の実施形態では、ベースCMC構造物12、ボンドコート層16、遷移層22、柔軟層24、遷移層22、外層28及びアブレイダブル層30を含んでもよく;別の実施形態では、ベースCMC構造物12、ボンドコート層16、非晶質シリカ層20及び遷移層22を含んでもよく;別の実施形態では、ベースCMC構造物12、ボンドコート層16、非晶質シリカ層20、遷移層22、外層28及びアブレイダブル層30を含んでもよく;別の実施形態では、ベースCMC構造物12、ボンドコート層16、非晶質シリカ層20、遷移層22、柔軟層24、外層28及びアブレイダブル層30を含んでもよく;別の実施形態では、ベースCMC構造物12、ボンドコート層16、非晶質シリカ層20、遷移層22、柔軟層24、遷移層22、外層28及びアブレイダブル層30を含んでもよく;別の実施形態では、ベースCMC構造物12、ボンドコート層16、遷移層22、中間層26、外層28及びアブレイダブル層30を含んでもよく;別の実施形態では、ベースCMC構造物12、ボンドコート層16、非晶質シリカ層20、遷移層22、中間層26、外層28及びアブレイダブル層30を含んでもよく;別の実施形態では、ベースCMC構造物12、ボンドコート層16、非晶質シリカ層20、遷移層22、中間層26(動作中に形成し得る。)、外層28及びアブレイダブル層30を含んでもよく;別の実施形態では、ベースCMC構造物12、ボンドコート層16、非晶質シリカ層20、遷移層22、柔軟層24、遷移層22、中間層26(動作中に形成し得る。)、外層28及びアブレイダブル層30を含んでもよい。このような実施形態は、最高約1704℃(3100°F)の温度を有する環境内での使用に適している可能性がある。
【0046】
代わりに、EBC系は、ベースCMC構造物12、ボンドコート層16、遷移層22、柔軟層24及びアブレイダブル層30を含んでもよく;別の実施形態では、ベースCMC構造物12、ボンドコート層16、非晶質シリカ層20、遷移層22、柔軟層24及びアブレイダブル層30を含んでもよい。このような実施形態は、最高約1538℃(2800°F)の温度を有する環境内での使用に適している可能性がある。
【0047】
先述の実施形態に加えて実施形態が同様に許容され、すべての層が初めに存在する必要はなく、むしろ、エンジン動作中に形成してもよいことを当業者なら理解するであろう。その上さらに、環境皮膜14又は関連する層16、20、22、24、26及び28のいずれかを使用することなく、アブレイダブル層30を代わりに直接エンジン部品又は構造物12に付与することができる。したがって、アブレイダブル層30が熱障壁皮膜として機能してもよい。いくつかの実施形態によれば、さらに大きな割合で微細粒子を使用して、さらに高密度になり、したがって、さらに堅牢な温度サイクリングがもたらされてもよい。さらに、BSAS又はシリコーン粉末を、特に粗大粒子の部分のすべて又は一部として使用すると、同様に緻密化が改善され、温度サイクリングが改善される。
【0048】
以下の説明にしたがってアブレイダブル層30を含むEBC系10を形成し、付与することができる。主として、アブレイダブル層30を形成する方法が2つある。1つの方法によれば、スラリーが生成され、部品上にゲルキャストされる。第2の方法によれば、スラリーが生成され、押出工程によって部品上に直接書き込まれる。いずれの場合も、部品上に堆積されるスラリーのすべてではないにしろほとんどが最終皮膜で完全に利用される(すなわち、プラズマ溶射工程と比べて廃棄物が非常に少ない)。
【0049】
ボンドコート層16が様々な方法で部品上に形成されてもよい。ボンドコート層16は、プラズマ溶射工程、化学蒸着工程、電子ビーム物理蒸着工程、溶融ケイ素への浸漬、スパッタリング工程、電気めっき、及び当業者に既知のその他の従来の付与工程によって付与されてもよい。
【0050】
先述の通り、非晶質シリカ層20は、EBCの使用寿命の間に形成し得る。具体的には、周囲雰囲気の酸素が、EBC中に存在する(1以上の)外層、柔軟層及び遷移層のいずれかに拡散して、ボンドコート層16のケイ素と反応し、非晶質シリカ層20を形成することができる。代わりに、非晶質シリカ層20を、化学蒸着、プラズマ溶射又はその他の従来の方法により意図的に堆積させてもよい。
【0051】
非晶質シリカ層20と同様に、先述の通り、EBCの使用寿命の間、高温蒸気が遷移層22と反応するとき、中間層26が同様に形成し得る。
【0052】
遷移層22、柔軟層24及び外層28の形成のための製造及び付与工程は、スラリーの堆積、続いて、液体その他の有機加工助剤を除去する乾燥及び熱処理、並びに層を緻密化する熱処理からなることができる。スラリーは溶媒又は水性であり、各層に適切な一次組成の細かい粒子、層の緻密化に必要な温度を下げる焼結助剤その他の有機加工助剤を含む。このようなスラリーでは、焼結助剤はドーピング成分でもある。最も好ましい実施形態は、2200°F〜2450°Fの温度で可能な最も高密度の皮膜を与える、最大の熱処理低減をもたらす濃度での焼結助剤の使用を伴い、ここで、皮膜は、いかなる二次材料も生成せずに、焼結助剤ドープ一次組成になる。この堆積のための工程はKirbyらに議論されている。別の実施形態では、遷移層22、柔軟層24及び外層28は溶射(例えば、大気プラズマ溶射)によって形成される。
【0053】
さらに
図2に関して、アブレイダブル層30の製造工程は、流し込み可能なスラリーからなり、このスラリーは、不可逆ゲル(すなわち、せん断を加えられても流動液体に戻ることができないゲル)を生成するために堆積され、架橋され、液体を除去し、かつ架橋ポリマーを燃焼するために熱処理され(「乾燥され」)、最後に層を緻密化するために熱処理される。この方法は「ゲルキャスティング」法と呼ばれる。具体的には、スラリーがステップ100で生成され、ステップ102でガスタービンエンジン部品10に付与される。型はステップ104でスラリー混合物に適用される。次にスラリーはステップ106でゲル化する。その後のステップにおいて、不可逆ゲルマトリックスがステップ108で乾燥される。乾燥後、乾燥した不可逆ゲルマトリックスがステップ110で焼結される。
【0054】
さらに
図3に関して、別の実施形態では、アブレイダブル層30は、せん断粘度が大きく低下したスラリー又は可逆なゲル(すなわち、せん断を加えられると流動液体に戻るゲル)が堆積される。この方法は、「直接書き込み」工程によって、高いアブレイダブル隆起部を形成するためのシリンジによるスラリーの押出に向いている。せん断を加えるとシリンジ内のスラリーの流れが促進されるが、せん断が除かれるとゲルは速やかにリセットされて重力による流れを防ぐ。具体的には、本実施形態では、スラリーはステップ200で生成され、可逆なゲルはステップ202でスラリーから生成される。可逆なゲルスラリーは、ステップ204でガスタービンエンジン部品に直接書き込まれる。次に、直接書き込まれた可逆なゲルスラリーは、ステップ206で乾燥される。乾燥された後、乾燥した可逆なスラリー208のバインダーは燃焼される。最後に、乾燥した可逆なゲルスラリーは、ステップ210で焼結される。
【0055】
アブレイダブル層を形成するために「ゲルキャスティング」法(不可逆ゲル)及び「直接書き込み」法(可逆なゲル)において利用されるスラリーにはいくつか共通点がある。いずれの方法のスラリーも希土類二ケイ酸塩の一次材料からなる。希土類二ケイ酸塩は、Yb
2Si
2O
7、Y
2Si
2O
7、Lu
2Si
2O
7及びこれらの組合せを含む前述の希土類二ケイ酸塩の材料のいずれかを含んでもよいが、これらには限定されない。
【0056】
アブレイダブルスラリー中の一次材料は、粗大粒子及び微細粒子を含む2以上の平均サイズ又は「モード」の粒子で形成される。微細粒子は、任意の希土類二ケイ酸塩又は希土類一ケイ酸塩、すなわち、Ln
2Si
2O
7又はLn
2SiO
5(式中、Lnは、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)及びこれらの組合せにすることができる。)を含んでもよい。粗大粒子は、いずれも上述の任意の希土類二ケイ酸塩、任意の希土類一ケイ酸塩、バリウムストロンチウムアルミノケイ酸塩(BSAS)、単斜晶酸化ハフニウム、希土類ガリウムガーネット(Ln
2Ga
2O
9(式中、Lnは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びこれらの組合せにすることができる。)、ムライト、ケイ素金属、炭化ケイ素、窒化ケイ素、酸化タンタル、タンタル酸アルミニウム、酸化ケイ素及びこれらの組合せを含んでもよい。いくつかの実施形態によれば、粗い粒子は、約2マイクロメートル〜約100マイクロメートルの範囲の平均サイズを有してもよい。細かい粒子材料は、約2マイクロメートル以下の平均粒径を有してもよい。低表面積の粗い粒子を含有すると、普通なら層内又は皮膜内でクラックを発生させるはずの乾燥工程及び焼結工程における応力が小さくなる。このような乾燥応力及び焼結応力は皮膜の厚さと共に大きくなる。したがって、乾燥応力及び焼結応力を小さくする粗大粒子の使用は、アブレイダブル層(すなわち、1回の熱処理後にクラックのない、5ミルを超え、最大40ミルの層)のさらに大きな厚みを達成する重要な要素である。層内のポロシティも、粗い部分の増加に伴って幾分大きくなるが、これは、焼結熱処理中の緻密化の原動力がいくらか奪い去られるためである。焼結は、固結した粒子の高表面積の層が、ポロシティを小さくしながら一緒に拡散して低表面積の凝集層(cohesive layer)を形成するときに起こる過程であることに留意されたい。この過程の原動力は、高表面積の細かい粒子が持つ高い表面エネルギーの低下である。したがって、高表面積を持つ微細粒子が存在することで、粗い粒子の周辺を焼結することにより、このような過程が確実に熱処理中に起こり、強度が得られ、ポロシティが小さくなる。さらに、本明細書に記述される任意の焼結助剤の存在によって、焼結助剤がないときよりも低い温度で、粗い粒子の周辺の微細粒子の焼結が可能になる。粗い粒子は細かい粒子と比べて低表面積であるため、層内のポロシティは、粗い部分の増加に伴って幾分大きくなるが、これは、焼結熱処理中の緻密化の原動力がいくらか奪い去られるためである。粗大粒子と微細粒子のブレンドによって、単一のスラリー(又はゲル)の付与、乾燥及び焼結サイクルを用いて、微細粒子のみの使用よりも厚くてクラックがなく、しかもさらに多孔質の層を形成する自由が与えられる。いくつかの実施形態によれば、双峰性粒子は、粗大材料を最大70体積%、微細材料を最大65体積%含んでもよい。このような実施形態を焼結した後、ポロシティの量は皮膜体積で最大45%でもよく、クラックのない約40ミルの最大厚さを有してもよい。
【0057】
粗い粒子部分の化学は、低表面積の粒子が導入されるにも関わらず、皮膜内のポロシティを最小にするような方法で選ぶことができる。BSAS、ケイ素金属、ムライト及びケイ素は、例えば、粗大粒子の一部又は全体として、粗い部分が微細粒子(すなわち、希土類二ケイ酸塩)と同じ材料によるものである場合よりも、焼結後の皮膜内において、より少ないポロシティを促進することができる。この効果は、粗い粒子の周辺でのより良い緻密化を促進する焼結中の(BSAS、ケイ素金属、ムライト又は酸化ケイ素の)粗い粒子に直接隣接する液相の柔軟な挙動又は形成による可能性がある。
【0058】
粗い粒子は球状粒子からなってもよいが、最大50から1のアスペクト比を持つ長球である粒子でもよい。長球の粒子は、皮膜層にさらに強度を与えることができる;しかし、これも、焼結熱処理中のこのような粒子周辺での細かい粒子の緻密化において干渉により生じ得る高いポロシティによってバランスがとられる。
【0059】
本明細書で用いる「スラリー焼結助剤」は、スラリー中の含有に適した焼結助剤組成物をいうことができる。いくつかの実施形態では、約0.01重量%〜約5重量%にすることができて、いくつかの実施形態では、約0.01重量%〜約50重量%にすることができる。アブレイダブル層スラリーは、鉄、カルボニル鉄、アルミニウム、ニッケル、コバルト、インジウム、ガリウム、希土類(Lnb)、これらの合金、ケイ素とのこれらの合金、及び希土類金属とのこれらの合金を含む金属粒子;酸化鉄(例えば、Fe
2O
3、Fe
3O
4)、ケイ酸鉄、希土類鉄酸化物、Al
2O
3、ムライト、希土類アルミン酸塩、希土類アルミノケイ酸塩、TiO
2、希土類チタン酸塩、酸化ガリウム、酸化インジウム、希土類没食子酸塩、希土類インジウム酸塩、NiO、酸化コバルト、ケイ酸ニッケル、ケイ酸コバルト、希土類ニッケル酸化物及びLnb
2Si
2O
7を含む不溶性の酸化物粒子並びにこれらの組合せからなる群からでもよい焼結助剤も含む。焼結助剤は、炭化鉄、窒化鉄、窒化アルミニウム、炭化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化インジウム、窒化チタン、炭化チタン、炭化ニッケル、窒化ニッケル、窒化コバルト及び炭化コバルト;水酸化鉄、水酸化ガリウム、水酸化インジウム、水酸化アルミニウム、水酸化ニッケル、水酸化コバルト、水酸化チタンを含む水酸化物;炭酸鉄、炭酸ガリウム、炭酸インジウム、炭酸チタン、炭酸アルミニウム、炭酸ニッケル及び炭酸コバルトを含む炭酸塩;シュウ酸鉄、シュウ酸ガリウム、シュウ酸アルミニウム、シュウ酸チタン、シュウ酸ニッケル及びシュウ酸コバルトを含むシュウ酸塩を含む、空気中の熱処理で酸化物に変わる不溶性の非酸化物粒子でもよい。
【0060】
焼結助剤は、鉄、アルミニウム、チタン、ガリウム、インジウム、ニッケル、コバルト又はこれらの混合物の陽イオンを含む溶媒又は水溶性の焼結助剤「塩」でもよく、これらは熱処理中に乾燥されて析出し、酸化物の形態に変わる。このような「塩」には、硝酸塩、塩化物、酢酸塩、アセトアセトナトが含まれる。溶媒溶性塩の例には:鉄エトキシド、鉄2,4−ペンタンジオネート及び鉄テトラメチルヘプタンジオネートも含まれる;「溶媒溶性ガリウム塩」は、8−ヒドロキシキノリン酸ガリウム、ガリウム2,4−ペンタンジオネート、ガリウムエトキシド、ガリウムイソプロポキシド及びガリウム2,2,6,6−テトラメチルヘプタンジオネートを含むことができる;「溶媒溶性アルミニウム塩」は、ブトキシド、アルミニウムジ−s−ブトキシドエチルアセトアセテート、アルミニウムジイソプロポキシドエチルアセトアセテート、アルミニウムエトキシド、アルミニウムエトキシエトキシエトキシド、アルミニウム3,5−ヘプタンジオネート、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウム9−オクタデセニルアセトアセテートジイソプロポキシド、アルミニウム2,4−ペンタンジオネート、アルミニウムペンタンジオネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウム2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート及びアルミニウムフェノキシドを含むことができる;「溶媒溶性ニッケル塩」は、ニッケル2,4−ペンタンジオネート、ニッケル2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネートを含むことができる;「溶媒溶性チタン塩」は、チタンアリルアセトアセテートトリイソプロポキシド、チタンビス(トリエタノールアミン)ジイソプロポキシド、チタンブトキシド、チタンジ−n−ブトキシドビス(2−エチルヘキサノエート)、チタンジイソプロポキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンジイソプロポキシドビス(テトラメチルヘプタンジオネート、チタンエトキシド、チタンジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)、チタン2−エチルヘキソキシド、チタンヨージドトリイソプロポキシド、チタンイソブトキシド、チタンイソプロポキシド、チタンメタクリレートトリイソプロポキシド、チタンメタクリルオキシエチルアセトアセテートトリイソプロポキシド、チタンメトキシド、チタンメトキシプロポキシド、チタンメチルフェノキシド、チタンn−ノニルオキシド、チタンオキシドビス(ペンタンジオネート)、チタンオキシドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)及びチタンn−プロポキシドを含むことができる;「溶媒溶性ホウ素塩」は、ボロンエトキシド、ボロンブトキシド、ボロンイソプロポキシド、ボロンメトキシド、ボロンメトキシエトキシド、ボロンn−プロポキシドを含むことができる;「溶媒溶性アルカリ土類塩」は、カルシウムイソプロポキシド、カルシウムメトキシエトキシド、カルシウムメトキシド、カルシウムエトキシド、ストロンチウムイソプロポキシド、ストロンチウムメトキシプロポキシド、ストロンチウム2,4−ペンタンジオネート、ストロンチウム2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート、マグネシウムエトキシド、マグネシウムメトキシド、マグネシウムメトキシエトキシド、マグネシウム2,4−ペンタンジオネート、マグネシウムn−プロポキシド、バリウムイソプロポキシド、バリウムメトキシプロポキシド、バリウム2,4−ペンタンジオネート、バリウム2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネートを含むことができる。
【0061】
焼結助剤は、粒子(特に細かい粒子)の焼結に必要な温度を約2200°F〜2450°Fまで下げる。このような焼結助剤がないと、2700°Fを超える温度−基材の機械的特性を確実に低下させる温度まで焼結過程は起こらない。最終的には、熱処理後、これらの焼結助剤は一次材料に溶け込むドーピング成分にもなる。また、焼結助剤濃度はできるだけ低く保たれて焼結効果を高め、好ましい実施形態では、いかなる二次材料も生成しないが、別の実施形態では、15体積%未満の二次材料を生成する。
【0062】
粗大粒子及び微細粒子並びに焼結助剤を含む多峰形のEBCスラリーの使用によってもたらされる厚い皮膜性能の利点を活かすために、乾燥工程及び焼結工程全体にわたって粗大粒子の沈降を防ぎ、重力の作用による堆積されるスラリーのたれ及び流れ(ランニング)を防ぎ、基材への付着を保つスラリー堆積の方策が利用されなければならない。一方、細かい希土類二ケイ酸塩粒子及び5ミル未満の厚さの焼結助剤からなる単峰性のスラリーから堆積されるKirbyらが記載したEBC皮膜は、重力によってもたらされる欠陥が大幅に少ないため、欠陥を発生させることなく簡単なディップコーティング法、塗付法及び吹付法を用いることができる。本明細書に記述される本発明では、厚い皮膜(5〜40ミル)をうまく堆積できるスラリー堆積法と共に、双峰性のスラリーの使用と焼結助剤を組合せる。「ゲルキャスティング」法は、皮膜を「モールド・イン(mold−in)」するために、基材を取り囲む型に低粘度スラリー(粗大粒子及び微細粒子並びに焼結助剤を含む。)を流し込む方法を提供することによって、厚い皮膜の課題を克服する。次に、架橋性モノマーも含むスラリーを架橋させて、皮膜の幾何形状に固定し、重力の作用による沈降を防ぐ不可逆ゲルを生成する。したがって、皮膜の幾何形状は型の幾何形状によって制御されるであろうし、これによって、滑らかな表面又はアブレイダブル隆起部が可能になる。次に、「ゲル化」皮膜を乾燥及び焼結することができる。代わりに、直接書き込み法では、スラリー中の粒子間に弱い引力を与えるために化学種が導入される。このような場合、スラリーは、せん断応力がある状態では流れるが、せん断応力がない状態では重力の作用によって流れないように固まる可逆的な粒子ゲルになる。また、可逆なゲルは、粗大粒子の沈降を防ぎ、シリンジからの押出後にスラリーの形状を保てるようにする、せん断粘度が大きく低下した挙動を示す。この方法により、堆積の位置を定めるロボット制御及び押出速度を使用して、基材表面に直接書き込まれるアブレイダブル隆起部を持つ皮膜が可能になる。堆積後、スラリーの粒子ゲルを乾燥及び焼結する。最後に、上述の「ゲルキャスティング」法と「粒子ゲル」法の両方を組合せることが可能である。
【0063】
「ゲルキャスティング」スラリー及び「直接書き込み」スラリーは、1以上の液体、ただし、好ましくは2つ以上の液体を含む;しかし、液体を選ぶ方策は方法によって決まる。「ゲルキャスティング」法では、約50℃を超える温度に加熱されない限り乾燥が抑えられるように、全液体の80%を超えるレベルの液体の一方は蒸気圧が非常に低い。これは、乾燥、又はゲル化と乾燥の混合とは対照的に、皮膜付与のために確実にゲル化を起こすのに必要な手段を提供するので、Janneyらによって記述されているバルク物品のための他のゲルキャスティング法とは異なる。皮膜付与では体積に対する表面積の比が高いので、低蒸気圧溶媒が用いられない限り、ゲル化が起こる前にスラリーは乾燥するであろう。
【0064】
「直接書き込み」スラリーでは、溶媒の1種以上は高蒸気圧液体である。これにより、室温又はやや高温で皮膜を乾燥するのに必要な時間が短縮され、1以上の低蒸気圧液体と共に用いられるとき、当業者には既知のある種の乾燥欠陥を排除する効果を有することができる。
【0065】
さらに具体的には、高蒸気圧液体は、水及び以下を含む溶媒をいうが、これらには限定されない:メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ドデカノール、アセトン、ジアセトンアルコール、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、メトキシベンゼン、ヘプタン、オクタン、キシレン、ミネラルスピリット、ナフサ(naptha)(VM&Pナフサなど)、テトラヒドロフラン、エーテル、メチルアセトアセトナト、エチルアセトアセトナト及びこれらの組合せ。
【0066】
さらに具体的には、「低蒸気圧液体」は、グリセリン、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、これには限定されないが、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのジエチレングリコールベースのエーテル、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、様々な分子量のポリエチレングリコール、ジブチルフタレート、ビス(2−エチルヘキシル)フタレート、ビス(n−ブチル)フタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジイソオクチルフタレート、ジエチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジ−n−ヘキシルフタレート、ジ(プロピレングリコール)ジベンゾエート、ジ(エチレングリコール)ジベンゾエート、トリ(エチレングリコール)ジベンゾエート及びこれらの組合せをいうことができる。
【0067】
「ゲルキャスティング」スラリー及び「直接書き込み」スラリーは、スラリーに含まれる「分散剤」のタイプにおいて異なる。ゲルキャスティング法では、一次材料粒子及び任意の焼結助剤粒子(すなわち、不溶性の焼結助剤が用いられる場合。)が確実に液体媒体中で均一に分布又は「分散される」よう1以上の分散剤が用いられてもよい。ゲルキャスティングスラリーにおいて、1つを超える分散剤が用いられる場合、分散剤はすべてアニオン性又はカチオン性でなければならない。アニオン性の分散剤は、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、リン酸エステル、スルホン化ポリマー、ポリシラザン、これらとポリビニルアルコールとのコポリマー、これらとポリ酢酸ビニルとのコポリマー、及びこれらとポリエチレンオキシドとのコポリマーをいうことができる。カチオン性の分散剤は、ポリエチレンイミン、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリビニルアルコールとのコポリマー、ポリ酢酸ビニルとのコポリマー、及びポリエチレンオキシドとのコポリマーをいうことができる。1つの分散剤の利用又は複数の分散剤の同時の利用は、スラリー中、一次材料の添加量が最大60体積%まで確実にスラリーを流し込み可能なままにする(スラリー中の残りの40体積%には、液体、焼結助剤、分散剤及びバインダー(増粘剤としても知られる。)が含まれるであろうことに留意されたい)。
【0068】
「直接書き込み」法のスラリーでは、2つの分散剤が用いられる。最初は、一次材料粒子及び任意の焼結助剤粒子(すなわち、不溶性の焼結助剤が用いられる場合。)を分散させる目的で、ただ1つの分散剤(アニオン性又はカチオン性のいずれか)がスラリーに含まれる。しかし、均一な分散が達成された後、反対の電荷を帯びた分散剤が加えられ、スラリーへ激しく混合される。反対の電荷を帯びた分散剤を加えると、スラリーは、上述の直接書き込み工程により、シリンジによって押し出されてもよい均一で可逆なゲルになる。反対の電荷を帯びた、引き付ける(attracting)分散剤によって誘導されるゲルネットワークは、粗い粒子の沈降、最終的には細かい粒子からの粗い粒子の分離を防ぐのに十分である。
【0069】
「ゲルキャスティング」法において、スラリーは、液相に可溶なモノマーを含む。「モノマー」又は「モノマー溶液」は、「開始剤」の存在下で架橋する材料をいうことができる。この架橋が生じると、不可逆ゲルが生成され、部品の表面でスラリーの形状を保持する。また、不可逆ゲルは分散した一次材料を所定の位置に固定し、粗い粒子の沈降、最終的には細かい粒子からの粗い粒子の分離を防ぐ。その上さらに、不可逆ゲルは、乾燥中に生じる応力を支えられる強いポリマーネットワークなので、不可逆ゲルによって、クラックが発生することなくさらに厚い層の形成及び乾燥が可能になる。
【0070】
モノマーは、以下の化学を含むことができるが、これらには限定されない。ヒドロキシメチルアクリルイミド、エトキシメチルアクリルアミド、メタクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド、アクリルアミド、メトキシポリ(エチレングリコール)モノメタクリレート、N−ビニルピロリドン、ジアリルフタレート及びこれらの混合物。当業者には明らかであるように、モノマー化学は、スラリーの液相に溶けるように選ばれなければならない。
【0071】
開始剤は、キャストする直前に行われるモノマーの架橋を開始するためにゲルキャスティングスラリーに加えられる化学である。開始剤は、過硫酸アンモニウム、アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]塩酸塩及び過酸化ジクミルから選ぶことができる。さらに、開始剤は光開始剤にすることができる。
【0072】
モノマーと開始剤を合わせた後、熱(例えば50℃以下の温度)を利用して架橋工程を速めることができる。過硫酸アンモニウム開始剤と合わせたモノマーの場合、テトラメチルエチレンジアミンとして知られる化学触媒をさらに添加することにより、反応を加速することができる。光開始剤と合わせたモノマーの場合、紫外線を当てると架橋反応が起こる。光開始剤及び紫外線を用いる「ゲルキャスティング」法は、皮膜の領域の一部が未硬化で残り、洗い落とされるような交互積層及びフォトレジストマスキングにも向いている。このような方法を用いて、アブレイダブル隆起部パターンを形成することもできる。
【0073】
「直接書き込み」法では、反対の電荷を帯びた高分子電解質の引力によって形成され、しかし、この「可逆なゲル」に特徴的な大きなせん断粘度低下の挙動を生み出すのに十分なネットワークは、乾燥中に生じる応力を支えるゲルキャスティング法の不可逆架橋ゲルほど強くはない。その結果、バインダー又は「増粘剤」を用いて、堆積される(deposted)スラリーに生強度を与え、乾燥する時のクラックの発生を防ぐ。このようなバインダーには、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ[(n−ブチルメタクリレート−コ−イソブチルメタクリレート)]、メチルメタクリレートコポリマー、エチルメタクリレートコポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリN−ビニルピロリン、エチルセルロース、ニトロセルロースその他の溶媒溶性セルロース誘導体並びにこれらの組合せが含まれる。
【0074】
「ゲルキャスティング」スラリー又は「直接書き込み」スラリーのいずれかにおいてスラリー中の泡を減らすために界面活性剤が用いられてもよい。「界面活性剤」は、フルオロカーボン、ジメチルシリコーン及びエトキシル化アセチレンジオールの化学(例えば、Surfynol(登録商標)420及び502(Air Products and Chemicals,Inc.)など、Surfynol(登録商標)シリーズの市販の界面活性剤。)及びこれらの組合せからなる群から選択される組成物をいう。
【0075】
ゲルキャスティング法によりアブレイダブル層を形成するスラリー堆積サイクルは、一般に、スラリー生成、キャスティング調製、スラリー付与、ゲル化、乾燥、バインダー燃焼及び焼結を含むことができる。様々な組成物のスラリーを用いて様々な組成のEBC層を形成することができること、複数のスラリー堆積サイクルを用いて特定の層の全体の厚さを積み上げることができることを当業者なら理解するであろう。しかし、ゲルキャスティング法の1つの利点は、厚いアブレイダブル層を1回の堆積サイクルで形成できることである。
【0076】
本明細書で用いる「有機加工助剤」は、スラリー中に存在する任意の分散剤、架橋ポリマー、バインダー及び界面活性剤をいう。これらの有機加工助剤は主として、焼結された後の皮膜中に存在しないように加工中に揮発する炭素その他の元素からなる。
【0077】
ゲルキャスティングスラリーは、希土類二ケイ酸塩(dislicate)一次材料と、焼結助剤、溶媒、分散剤、モノマー及び界面活性剤を含む先述のスラリー成分のいずれか又はすべてとを、混合媒体と共に容器内で合わせることにより生成することができる。混合物は、最大直径約1インチ(約25.4mm)のアルミナ又はジルコニア混合媒体を用いる振盪、直径約0.25インチ〜約1インチ(約0.64cm〜約2.54cm)のアルミナ又はジルコニア混合媒体を用いるボールミル粉砕、直径約1mm〜約5mmのジルコニアベースの混合媒体を用いるアトライター粉砕、直径約1mm〜約5mmのジルコニアベースの媒体を用いる遊星ボールミル粉砕或いは超音波エネルギーを同時に加える機械的な混合又は撹拌など、当業者に既知の従来の技術を用いて混合することができる。混合媒体又は超音波エネルギーは、スラリー中で凝集したどのようなセラミック粒子も引き離すことができる。次に、存在するどのような混合媒体も、例えば漉して除去してもよい。
【0078】
あらかじめ加えられていない場合、希望するならば、バインダーを任意選択でスラリーに加えてもよく、機械的撹拌、ローリング、ブレンディング、振盪のような方法その他の同様の方法により、増粘剤が完全に溶けるまで(一般に約5〜約60分後。)生じる混合物を撹拌してもよい。
【0079】
すべてのスラリー成分が混合したら、スラリーの最初の混合後、又は皮膜層を堆積させるためのスラリーの使用後などに様々なメッシュサイズのスクリーンに通してスラリーを濾過し、存在する可能性のあるあらゆる不純物を除去することができる。例えば、325メッシュのスクリーンを用いて、約44ミクロン以上の平均サイズを有する不純物を濾過して除くことができる。
【0080】
混合及び任意選択の濾過後、ゆっくりとしたローリング、ゆっくりとした機械的な混合、又は他の同様の方法により、スラリーを不定期に(indefinitely)撹拌して、スラリーに気泡が混入するのを避けることができる。1つの実施形態では、加工中に蒸発した溶媒を補うために追加の溶媒を加えることによってスラリーを回復させてもよい。代わりに、混合したら、付与のために必要になるまでスラリーを取っておくことができる。先の実施形態は、本明細書に記述されるスラリー組成物を生成するための1つの方法を述べており、以下の実施例に記載の通り、他の方法も許容されることを当業者なら理解するであろう。
【0081】
キャスティング調製中、ゲルキャストアブレイダブルスラリーを堆積するために基材が調製される。耐環境皮膜層は、スラリー工程又はプラズマ溶射工程のいずれかによって既に堆積されているであろう。したがって、アブレイダブル層30の形成において、このような層30のためのスラリーが、被覆エンジン部品10、ボンドコート層16、非晶質シリカ層20、又は所望の別の層の一方に付与される。当業者に既知の従来の技術を用いて基材を調製して型成形及びマスキングを適用し、アブレイダブルスラリーを受け入れる。型成形を用いて、ゲルキャストスラリーが流し込まれるベースCMC構造物12と金型表面との間の隙間を定めることにより、アブレイダブル層の形状及び厚さを形づくる。マスキングは、基材の選択領域にスラリーが被覆されるのを防ぐテープ、ツーリング(tooling)及びペイント・オン(paint−on)接着剤を含んでもよいが、これらには限定されない。1つの実施形態では、型成形はアブレイダブル層に滑らかな表面を与える。この場合、滑らかさは金型表面の滑らかさによって決まる。別の実施形態では、型成形は、一連のアブレイダブル隆起部など、アブレイダブル層の表面にテクスチャーを与える特殊設計のものでもよい。
【0082】
基材を調製したら、開始剤を加えることによってキャスティングのためにアブレイダブルスラリーを調製する。開始剤を液体の重量の最大2%の量で加え、激しく混合する。激しい混合によってスラリーに混入した空気は、デシケーター(dessicator)内に陰圧をかけて除去することができる。アブレイダブル層スラリーを開始剤と共に型に流し込んだら、架橋が完了してスラリーが非可逆的にゲル化するまで時間をおく。待ち時間は、熱を加える(25℃〜85℃)ことによって、場合によってはUV光を当てることによって最小限に抑えることができる。ゲル化の後、皮膜の生強度は、取り扱い、マスキング除去及び型除去に十分である。
【0083】
任意選択で、1以上の別のスラリーの層を第1のゲル化層上に配置して、別のゲル化層を形成してもよい。付与される最後の層は、先述の通り成形されてもよいアブレイダブル層30であると理解されるべきである。
【0084】
代替の実施形態では、型がなく、各薄層が堆積された後にスラリーが非可逆的にゲル化する複数の浅いパス(pass)でゲルキャストスラリーが積み上げられる。この場合、部品をスラリー浴に浸漬したり、塗付、ローリング、スタンピング(stamping)、吹付により、又はスラリーを部品に流し込んだりしてゲルキャストスラリーが堆積されてもよい。スラリー付与は手作業で実施することができて、又は自動化されてもよい。
【0085】
スラリーが部品に付与された後、スラリーがまだ湿っている間に平らにして過剰なスラリー材料を除去してもよい。部品のスピニング、回転、吊り下げ、振動付与あり、又はなしの液切り(dripping)、或いはドクターブレードの使用など、従来の技術を用いてレベリングを行い、過剰なスラリー材料を除去してもよいが、これらには限定されない。スラリー付与と同様、レベリングは手作業で実施することができて、又は自動化されてもよい。
【0086】
次に、非可逆的にゲル化したアブレイダブル層で被覆されたエンジン部品10を乾燥する。ゲルキャスティングスラリー法で用いられる溶媒は室温で乾燥しないように低蒸気圧なので、乾燥は炉内又は乾燥オーブン内で行ってもよく、0.5〜5℃/分の遅い速度で85℃〜285℃の低温まで加熱(保持時間あり、又はなし。)して、液体を蒸発させてもよい。別の実施形態では、乾燥は、真空チャンバーに入れ、真空に引いて液体を蒸発させて行われる。さらに別の実施形態では、液体は、拡散過程又は浸透過程によって、不可逆ゲルから液体を抽出するような原動力をもたらす材料にゲル化アブレイダブル皮膜を接触させることにより抽出される。乾燥は、型除去の前又は後のいずれで行われてもよいが、型除去の前の場合、乾燥環境に耐えることができる適切な型材料が用いられるべきである。
【0087】
次に、あらゆる有機加工助剤が熱分解されるように、高温環境中に乾燥した部品を置くことによって有機加工助剤の燃焼が行われてもよい。1つの実施形態では、有機加工助剤の燃焼は、乾燥した部品を約1℃/分〜約15℃/分の速度で約275℃〜約1000℃の温度に加熱し、部品をこの温度で約0〜約10時間保持することによって行われてもよい。別の実施形態では、被覆部品を約2℃/分〜約6℃/分の速度で約600℃〜約800℃の温度に加熱し、部品をこの温度で約0〜約10時間保持してもよい。別の実施形態では、保持せずに目標温度までゆっくりと上げ、続いて、別の温度まで異なる速度で上げたり下げたりすることにより、保持時間を省くことができる。別の実施形態では、約400℃〜約1400℃の温度に加熱した炉内に被覆部品を入れることによって、バインダー燃焼を速やかに行うことができる。
【0088】
次に、燃焼した被覆エンジン部品10を焼結させて、少なくともアブレイダブル層30を含む耐環境皮膜14を含む部品を製造してもよい。焼結は、同時に緻密化し、皮膜に強度を与え、一次材料を焼結助剤「ドーピング成分」でドープすることに役立つ。焼結は、従来の炉を用いて、又はマイクロ波焼結、レーザー焼結、赤外焼結などのような方法を用いることによって実施することができる。
【0089】
焼結は、燃焼した部品を約1℃/分〜約15℃/分の速度で約1100℃〜約1375℃の温度に加熱し、部品をこの温度で約0〜約24時間保持することによって行うことができる。焼結後、アブレイダブル層30は、約6ミルを超える厚さと約5%〜約50%の間のポロシティを有する。
【0090】
直接書き込み法によりアブレイダブル層を形成するスラリー堆積サイクルは概してスラリー生成、キャスティング調製、スラリー付与、乾燥、バインダー燃焼及び焼結を含むことができる。様々な組成物のスラリーを用いて様々な組成のEBC層を形成することができること、複数のスラリー堆積サイクルを用いて特定の層の全体の厚さを積み上げることができることを当業者なら理解するであろう。しかし、直接書き込み法の利点は、厚いアブレイダブル層を1回の堆積サイクルで形成できることである。
【0091】
図3の実施形態の直接書き込みスラリーは、希土類二ケイ酸塩(dislicate)一次材料と、焼結助剤、溶媒、分散剤及び界面活性剤を含む先述のスラリー成分のいずれか又はすべてとを、混合媒体と共に容器内で合わせることにより生成することができる。混合物は、最大直径約1インチ(約25.4mm)のアルミナ又はジルコニア混合媒体を用いる振盪、直径約0.25インチ〜約1インチ(約0.64cm〜約2.54cm)のアルミナ又はジルコニア混合媒体を用いるボールミル粉砕、直径約1mm〜約5mmのジルコニアベースの混合媒体を用いるアトライター粉砕、直径約1mm〜約5mmのジルコニアベースの媒体を用いる遊星ボールミル粉砕或いは超音波エネルギーを同時に加える機械的な混合又は撹拌など、当業者に既知の従来の技術を用いて混合することができる。混合媒体又は超音波エネルギーは、スラリー中で凝集したどのようなセラミック粒子も引き離すことができる。次に、存在するどのような混合媒体も、例えば漉して除去してもよい。
【0092】
上述の通りスラリーを生成した後、(既にスラリー中にある)第1の分散剤とは反対の電荷の二次分散剤を加える。二次分散剤の添加の後、上述の混合方法のいずれかを用いる激しい混合が続く。反対の電荷を帯びた分散剤の添加及び混合の直後に、スラリーは、せん断粘度が大きく低下した可逆なゲルになる。
【0093】
可逆なゲルは、オリフィスを通して材料を部品上に押し出して付与することができる。オリフィスの直径及び形状を選んで、最終的にアブレイダブル隆起部になる押し出されるビーズのサイズ及び形状に影響を与えることができる。可逆なゲルを単一のパスで全厚さで堆積することができて、又は複数のパスを用いて材料を積み上げることができる。互いに90°、45°、又は選択したある角度のパスを持つ一連のパターン化されたアブレイダブル隆起部を被せることによって特有の「スパニング(spanning)」構造を形成することもできる。アブレイダブル隆起部の間隔によって、可逆なゲルスラリーの次の層が前の層の隆起部に広がらなければならない長さが定まる。せん断粘度が大きく低下した可逆なゲルのレオロジーによって、このスパニングの挙動が可能になる。
【0094】
可逆なゲルは手作業で、又はより好ましくは、材料が十分に制御されて均一に配置されるようにロボット堆積(robotic deposition)により付与することができる。人間のオペレーターによって必要とされる触れる時間を減らすために、ロボット堆積を高いレベルまで自動化することもできる。
【0095】
可逆なゲルは、付与された後、型を被せて、材料がある一定の厚さ又は表面テクスチャーと共形となるようにすることでさらに成形することができる。
【0096】
堆積後、室温又は最高85℃〜285℃のやや高温で可逆なゲルを乾燥する。
【0097】
次に、あらゆる有機加工助剤が熱分解されるように、高温環境中に乾燥した部品を置くことによって有機加工助剤の燃焼が行われてもよい。1つの実施形態では、有機加工助剤の燃焼は、乾燥した部品を約1℃/分〜約15℃/分の速度で約275℃〜約1000℃の温度に加熱し、部品をこの温度で約0〜約10時間保持することによって行われてもよい。別の実施形態では、被覆部品を約2℃/分〜約6℃/分の速度で約600℃〜約800℃の温度に加熱し、部品をこの温度で約0〜約10時間保持してもよい。別の実施形態では、保持せずに目標温度までゆっくりと上げ、続いて、別の温度まで異なる速度で上げたり下げたりすることにより、保持時間を省くことができる。別の実施形態では、約400℃〜約1400℃の温度に加熱した炉内に被覆部品を入れることによって、バインダー燃焼を速やかに起こすことができる。
【0098】
次に、燃焼した被覆エンジン部品10を焼結させて、少なくともアブレイダブル層30を含む耐環境皮膜14を含む部品を製造してもよい。焼結は、同時に緻密化し、皮膜に強度を与え、一次材料を焼結助剤「ドーピング成分」でドープすることに役立つ。焼結は、従来の炉を用いて、又はマイクロ波焼結、レーザー焼結、赤外焼結などのような方法を用いることによって実施することができる。
【0099】
焼結は、燃焼した部品を約1℃/分〜約15℃/分の速度で約1100℃〜約1375℃の温度に加熱し、部品をこの温度で約0〜約24時間保持することによって行うことができる。焼結後、アブレイダブル層30は、約6ミルを超える厚さと約5%〜約50%の間のポロシティを有する。
【0100】
ゲルキャスティング法又は直接書き込み法のいずれかのバインダー燃焼及び焼結熱処理は、周囲空気雰囲気中又はガス雰囲気中で行われてもよく、ガスは、窒素、水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンなどの希ガス、これらの混合物、又は酸素とのこれらの混合物から選択される。
【0101】
代替の実施形態では、マスキング除去、乾燥、有機加工助剤燃焼及び焼結が行われる前に、アブレイダブル層30を含むEBCの一部又はすべての層を次々に重ねて付与することができる。各層の付与後、層は、次の層を付与する前にゲル化するべきであることを当業者なら理解するであろう。
【0102】
別の実施形態では、所望の結果を得るために、焼結助剤がスラリーの遷移層又は外層に直接加えられる必要はない。焼結助剤をEBCスラリーの1つの層に加えることができて、焼結中、焼結助剤は、EBCを通じて残りの層まで拡散することができる。別の実施形態では、焼結助剤を含まない一次材料スラリーは、層を付与し、乾燥させ、次に、以下で説明するように、熱処理前に焼結助剤を含むゾル−ゲル溶液を逆浸透させる(back infiltrating)ことによって緻密化することができる。
【0103】
浸透によって、さらに厚いEBC材料の層を一度に緻密化できることがある。さらに、浸透は、皮膜が所望の通りに高密度でない場合に焼結後に焼結助剤をさらに加える方法である。浸透に用いられるゾル−ゲル溶液は、先に定義した通り、有機溶媒と溶媒溶性塩焼結助剤の溶液、又は水と水溶性塩焼結助剤の溶液でもよい。
【0104】
理論によって制限しようとするものではないが、焼結助剤がないときよりも低い温度で表面積の縮小(すなわち、凝集して高密度の皮膜を形成する高表面積粒子。)が起こるように、本明細書のEBCの実施形態に焼結助剤を含有すると、一次材料の拡散速度を大きくすることができる。先述の通り、さらに低温(すなわち、約1344℃以下)で焼結すると、エンジン環境から高温蒸気が浸透しにくい非常に高密度の皮膜が生じるだけでなく、さらに高い温度に対する長時間の暴露によって起こり得る下にある部品の機械的特性の低下を防ぐのにも役立つ。
【0105】
焼結助剤は、EBCに含まれる焼結助剤の量及び皮膜が焼結温度に暴露される時間に応じて、様々な形で作用することができる。例えば、1つの実施形態では、焼結助剤は材料を「ドープ」する一次材料に完全に溶ける。別の実施形態では、一次材料に可溶な焼結助剤の量を超える場合、焼結助剤の残りの不溶性の部分が一次材料と反応して二次材料を生成することができる。別の実施形態では、先述の通り、一次材料及び二次材料が、残った焼結助剤と共に存在することができる。いくつかの実施形態では、焼結助剤は完全に溶けるが、焼結後に残る二次材料が10%を超えないことも望ましい。
【0106】
これら後者の2つの実施形態では、二次材料が高温蒸気中で高揮発性のとき、EBCの中間層又は(存在するとき)柔軟層のいずれかの二次材料の全体積及びポロシティ(及び(存在するとき)残った焼結助剤)が約15体積%以下のままである限り、気密性のシールは保たれる。代わりに、これら後者の2つの実施形態では、二次材料が、これらには限定されないが、希土類酸化物、希土類チタン酸塩、希土類鉄化合物、希土類没食子酸塩、希土類アルミン酸塩、希土類酸化インジウム及び希土類アルミノケイ酸塩などの化合物を含む希土類を含むときなど、二次材料が高温蒸気中で非常に揮発しにくいとき、EBCの中間層又は(存在するとき)柔軟層のいずれかのポロシティが約15体積%以下のままで、気密性のシールが保たれる必要がある。気密性は、Kirbyらによって記述された遷移層に特に重要であるが、最大50体積%のポロシティを有することができる本明細書に記述されるアブレイダブル層には必要ではない。
【0107】
焼結助剤が低レベルのとき、緻密化された皮膜層は初めにどのような検出可能な二次材料も含まないことがあることに留意されたい。いくつかの実施形態では、二次材料が検出可能になることはないことがある。しかし、他の実施形態では、エンジン環境中で高温蒸気に数時間暴露された後、X線回折、電子顕微鏡、電子分散分光(EDS)及び同種のものなどの技術を用いて二次材料が検出可能になり得る。
【0108】
本明細書に記述されるEBCの実施形態は、現在のEBC及びその製造工程を超える様々な利益を提供することができる。具体的には、先述の通り、本明細書のEBCの実施形態に焼結助剤を含有すると、さらに低温(すなわち、約1350℃以下)での焼結が可能になる。この結果、エンジン環境から高温蒸気が浸透しにくい非常に高密度の皮膜が生じ、さらに高い温度に対する長時間の暴露によって起こり得る下にある部品の機械的特性の低下を防ぐのにも役立つ。また、本明細書に記載の実施形態は、スラリー堆積工程の使用により、現在のEBCよりも少ない費用で製造することができて、この工程は、様々な層に焼結助剤を取り込むことによって可能になる。さらに、本実施形態は、薄層(<2ミル)を付与するときでさえも、プラズマ溶射などの従来の技術よりも均一な厚さを有するEBCを提供することができる。さらに、スラリー堆積工程は内部の部品流路へのEBCの付与、並びに研磨ステップを追加することなく滑らかな表面仕上げを生じる能力に対処できる。
【0109】
EBCによって、修復される必要がある小さい欠陥及び/又は狭い欠陥(例えば、直径約10ミクロン〜約5mm;又は幅約10ミクロン〜約1mm)が生じる場合がありうる。以下の修復工程は本明細書に記述されるEBCに適用可能であり、本明細書において以下で説明するように、個々のEBC層の焼結後、又は全体に付与されたEBCの焼結後に行われてもよい。
【0110】
1つの実施形態では、修復は、本明細書に記述される方法を用いてEBCが付与されるときに、1以上の個々の層内の欠陥を補修するステップを含んでもよい。本実施形態では、修復は、所与の層を焼結後に、欠陥を有する層の形成に用いられる同じスラリー材料を含む修復スラリーを付与することによって実施することができる。例えば、遷移層が焼結後に欠陥を生じる場合、遷移層の当初の付与で用いた同じ遷移層スラリー材料を含む「遷移層修復スラリー」を用いて欠陥を修復することができる。1つの実施形態では、修復スラリーは、当初のスラリー層よりも固体添加量の多い一次材料セラミック粒子を含むことができるが、これによって皮膜の修復された部分を乾燥及び焼結するときに、収縮を少なくすることができるからである。特に、修復スラリー中の一次材料セラミック粒子の固体添加量は、(1つの実施形態では、層の形成に用いられる当初のスラリーの約10体積%を超え、別の実施形態では、当初のスラリーの約10〜約55体積%であるのとは対照的に)約30〜約55体積%よりも多くすることができる。修復スラリーは、先述の方法並びに本明細書に記述されるゲルキャスティング工程及び直接書き込み工程での方法を含む任意の従来の方法を用いて付与されてもよい。次に、生じる「修復(修復された)皮膜」は、EBCの任意の次の層を付与する前に、本明細書において先述の通り加工されてもよい。
【0111】
代替の実施形態では、修復は、EBC全体の付与及び焼結の後の欠陥の修復を含んでもよい。本実施形態では、修復は、欠陥を有するEBCに対して、一次遷移材料の粗い部分を除く、先に定義したアブレイダブル層スラリー(すなわち、一次材料、焼結助剤及び任意選択で二次材料)中に存在する同じ材料を含む層修復スラリーを用いて行われてもよい。この特定の修復スラリーは、EBC中に存在するあらゆる欠陥に浸透することができて、焼結後に修復されたEBC皮膜に気密性のシールをもたらすことができる。再び、遷移層修復スラリーの固体添加量は、約30〜55体積%を超えて含んでもよい。
【0112】
このような修復工程は、皮膜全体の剥ぎ取り及び再付与とは対照的に、皮膜の付与又は寿命の間の様々な時点で局部的な欠陥を修復する能力をもたらすことができる。その結果、時間、労力及び材料を節減することができる。
【実施例1】
【0114】
ゲルキャスティング法
グリセロール(低蒸気圧液体)、N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド(モノマー)、ポリアクリル酸−ポリエチレンオキシドコポリマー(アニオン性の分散剤)、イットリウムドープ二ケイ酸イッテルビウム(一次材料)、Fe
3O
4酸化鉄(焼結助剤)及びAl
2O
3(焼結助剤)を直径0.25インチのイットリウムドープ二酸化ジルコニウム粉砕媒体と共にプラスチック瓶内で合わせた。混合物を少なくとも12時間ローラーミルにかけた。
【0115】
次に、(重量で)10%の過硫酸アンモニウム開始剤溶液をスラリーに投入し、続いて手作業で数分間激しく混合した。
【0116】
次に、化学蒸着工程により堆積されたケイ素金属ボンドコート、及びスラリー堆積工程により堆積されたFeドープ二ケイ酸イッテルビウム遷移層(ポロシティ5%以下の気密性。)を既に有する炭化ケイ素試験片の上にスラリーをキャスティングした。ドクターブレードを用いてスラリーを平らにし、過剰なスラリーを除去して所望の厚さを設定した。
【0117】
次に、スラリーを50℃まで30分間加熱してスラリーを非可逆的にゲル化した。
【0118】
次に、ゲル化スラリーを1.5℃/分の速度で150℃まで熱で乾燥した。
【0119】
次に、3℃/分の速度で550℃まで加熱してバインダー燃焼を行った。
【0120】
最後に、10℃/分の速度で1344℃まで加熱して(1344℃で10時間保持して)焼結を行った。
【0121】
冷却後、走査電子顕微鏡(SEM)評価(evalution)のためにサンプルを横に切断してエポキシにはめ込んだ。得られた後方散乱像300を
図4に示す。図中、EBC皮膜の後方散乱SEM断面は以下を含む:(A)化学蒸着(CVD)工程により堆積されたケイ素ボンドコート、(B)スラリー堆積法により堆積されたFeドープ二ケイ酸イッテルビウム遷移層、及び(C)ゲルキャスティングスラリー法により堆積されたFeドープされ、イットリウムドープ二ケイ酸イッテルビウムアブレイダブル層、及び(D)スラリー堆積法により最上部に堆積されたFeドープ一ケイ酸イットリウム層。
【実施例2】
【0122】
直接書き込み法
1−ヘキサノール(高蒸気圧液体)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(低蒸気圧液体)、イットリウムドープ二ケイ酸イッテルビウム粉末(粗い平均粒径の一次材料)、イットリウムドープ二ケイ酸イッテルビウム(細かい平均粒径の一次材料)、Fe
3O
4酸化鉄(焼結助剤)、Al
2O
3酸化アルミニウム(焼結助剤)及びポリN−ビニルピロリドン(カチオン性の分散剤、バインダー)を直径0.25インチの球形のイットリウムドープ酸化ジルコニウム媒体と共にプラスチック瓶内で合わせた。混合物を少なくとも12時間ローラーミルにかけた。次に、ポリアクリル酸の50%水溶液をスラリーに加え、続いて手作業で素早く撹拌した。撹拌して約1分後に、スラリーは、直接書き込み堆積に適した、せん断粘度が大きく低下した可逆なゲルになった。
【0123】
次に、化学蒸着工程により堆積されたケイ素金属ボンドコート、及びスラリー堆積工程により堆積されたFeドープ二ケイ酸イッテルビウム遷移層(ポロシティ5%以下の気密性。)を既に有する炭化ケイ素試験片の上に可逆なゲル「直接書き込み」スラリーをシリンジによって押し出した。
【0124】
次に、スラリーを1.5℃/分の速度で150℃まで加熱して乾燥した。
【0125】
次に、3℃/分の速度で550℃まで加熱してバインダー燃焼を行った。
【0126】
最後に、10℃/分の速度で1344℃まで加熱して(1344℃で10時間保持して)焼結を行った。
【0127】
冷却後、可逆なゲルスラリーを用いて直接書き込まれた、Feドープされ、イットリウムドープ二ケイ酸イッテルビウムアブレイダブル隆起部の光学顕微鏡断面を示す
図5に示す通り、サンプル400を実体顕微鏡により特徴づけた。
【0128】
構造及び方法の前述の説明は、例示の目的のために示されている。網羅するものでも、本明細書で開示する形態及び/又はステップに厳密に構造及び方法を限定するものでもなく、上述の教示に照らして、明らかに多くの変更及び変形が可能である。本明細書に記述される特徴は、任意の組合せにおいて組合せてもよい。本明細書に記述される方法のステップは、物理的に可能な任意の順序で実施されてもよい。複合構造のある特定の形態を例示及び説明してきたが、これらには限定されず、ここに添付する特許請求の範囲によってのみ限定されるものと理解される。
【0129】
本明細書において複数の本発明の実施形態を説明及び例示してきたが、本明細書に記述される機能を果たし、かつ/又は結果及び/又は1以上の利点を得るための様々な他の手段及び/又は構造を当業者なら容易に想定するであろう。また、このような変形及び/又は変更はそれぞれ、本明細書に記述される実施形態の範囲内にあると見なされる。より一般的には、本明細書に記述されるすべてのパラメータ、寸法、材料及び構成は例示であることを意図すること、実際のパラメータ、寸法、材料及び/又は構成は本発明の教示が用いられる1以上の特定の応用例によって決まることを当業者であれば容易に理解するであろう。本明細書に記述される特定の本発明の実施形態の多くの均等物を通常の実験内で当業者は理解し、又は確認することができるであろう。したがって、前述の実施形態は例として提示されているに過ぎず、添付された特許請求の範囲及びその均等物の範囲内で、具体的に説明及び記載されている以外の本発明の実施形態を行ってもよいと理解されるべきである。本開示の本発明の実施形態は、本明細書に記述される個々の特徴、システム、物品、材料、キット及び/又は方法それぞれを対象とする。さらに、2つ以上のこのような特徴、システム、物品、材料、キット及び/又は方法の任意の組合せは、このような特徴、システム、物品、材料、キット及び/又は方法が互いに一致しない場合、本開示の本発明の範囲内に含まれる。
【0130】
実施例を用いて、最良の形態を含む実施形態が開示され、さらに、任意のデバイス又はシステムの作製及び使用並びに任意の組み込まれた方法の実施を含む、装置及び/又は方法を当業者が実施することが可能になる。これらの例は網羅するものでも、本明細書で開示するステップ及び/又は形態に厳密に本開示を限定するものでもなく、上述の教示に照らして、多くの変更及び変形が可能である。本明細書に記述される特徴は、任意の組合せにおいて組合せてもよい。本明細書に記述される方法のステップは、物理的に可能な任意の順序で実施されてもよい。
【0131】
辞書の定義、参照により組み込まれる文書内の定義及び/又は定義される用語の通常の意味よりも、本明細書において定義され用いられるすべての定義が優先すると理解されるべきである。明細書及び特許請求の範囲で本明細書において用いられる不定冠詞「a」及び「an」は、そうではないことが明確に示されていない限り、「1以上の」を意味すると理解されるべきである。明細書及び特許請求の範囲で本明細書において用いられる語句「及び/又は」は、そのように結合された要素、すなわち、ある場合には接続的に存在し、他の場合には離接的に存在する要素の「一方又は両方」を意味すると理解されるべきである。
【0132】
1つを超えるステップ又は行為を含む本明細書に記載の任意の方法において、そうではないことが明確に示されていない限り、方法のステップ又は行為の順序は、方法のステップ又は行為が記載されている順序に必ずしも限定されないことも理解されるべきである。