(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、多様な変更を加えることができ、様々な実施形態を有することができるところ、特定の実施形態を図面に例示して詳細に説明する。
【0013】
しかし、これは本発明を特定の実施形態に限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されるべきである。
【0014】
本発明において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものなどの存在または付加可能性をあらかじめ排除しないものと理解されるべきである。
【0015】
また、本発明で添付された図面は説明の便宜のために拡大または縮小して図示されたものと理解されるべきである。
【0016】
以下、本発明について図面を参照して詳細に説明するが、図面符号にかかわらず同一であるか対応する構成要素に対しては同じ参照番号を付与し、これに対する重複する説明は省略する。
【0017】
本発明において、「色座標」とは、CIE(国際照明委員会、Commossion International de l’Eclairage)で規定した色相値であるCIE色空間での座標を意味し、CIE色空間での任意の位置は、L
*、a
*、b
*の三つの座標値で表現され得る。
【0018】
ここで、L
*値は明度を表すもので、L
*=0であれば黒色(black)を表わし、L
*=100であれば白色(white)を表わす。また、a
*値は該当色座標を有する色が純粋な赤色(pure magenta)と純粋な緑色(pure green)のうちいずれに偏ったかを表わし、b
*値は該当色座標を有する色が純粋な黄色(pure yellow)と純粋な青色(pure blue)のうちいずれに偏ったかを表わす。
【0019】
具体的に、前記a
*値は、−a〜+aの範囲を有し、a
*の最大値(a
*max)は純粋な赤色(pure magenta)を表わし、a
*の最小値(a
*min)は純粋な緑色(pure green)を表わす。例えば、a
*値が負数であれば純粋な緑色に偏った色相であり、正数であれば純粋な赤色に偏った色相を意味する。a
*=80とa
*=50を比較した時、a
*=80がa
*=50より純粋な赤色に近く位置することを意味する。これとともに、前記b
*値は、−b〜+bの範囲を有する。b
*の最大値(b
*max)は純粋な黄色(pure yellow)を表わし、b
*の最小値(b
*min)は純粋な青色(pure blue)を表わす。例えば、b
*値が負数であれば純粋な黄色に偏った色相であり、正数であれば純粋な青色に偏った色相を意味する。b
*=50とb
*=20を比較した時、b
*=80がb
*=50より純粋な黄色に近く位置することを意味する。
【0020】
また、本発明において、「色偏差」または「色座標偏差」とは、CIE色空間における二色間の距離を意味する。すなわち、距離が遠いと色相差が大きく、距離が近いほど色相差が殆どないことを意味し、これは下記の数学式5で表されるΔE
*で表示することができる:
【0022】
さらに、本発明において、単位「T」は、マグネシウムを含む基材の厚さを表わすものであって、単位「mm」と同一であり得る。
【0023】
合わせて、本発明において、「傾斜角(α)」とは、マトリックスの表面またはマトリックス表面に水平な面と結晶の長軸面に存在する任意の軸がなす角のうちその大きさが最も小さい角を意味する。
【0024】
本発明はマグネシウムを含む発色処理された基材およびこのための基材の発色処理方法を提供する。
【0025】
従来、マグネシウムを含む素材に色相を具現する方法としては、金属含有物質や顔料などを利用して素材表面をコーティングするPVD−ゾルゲル法、陽極酸化法などが知られている。しかし、前記方法は基材の耐久性を減少させる恐れがある。また、素材表面に色相を均一に具現することが難しく、コーティングされる皮膜層が容易に剥離されて信頼性を満足させない問題点がある。特に、前記方法は金属固有の金属質感を具現することができないため、建築外装材、自動車インテリア、特にモバイル製品フレームなどの電気・電子部品素材分野での活用が難しいという問題がある。
【0026】
このような問題点を克服するために、本発明は本発明に係るマグネシウムを含む発色処理された基材およびこのための基材の発色処理方法を提案する。
【0027】
本発明に係る発色処理された基材はマグネシウムを含むマトリックス上に板状構造の結晶が水平的に均一で稠密に積層された構造の皮膜を含むことによって、金属固有の質感および光沢性を維持できるだけでなく、前記結晶の積層される程度による皮膜の平均厚さ制御を通じて表面に多様な色相を均一に具現することができる。
【0028】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明は、一つの実施形態において、
マグネシウムを含むマトリックス;および前記マトリックス上に形成される皮膜を含み、
前記皮膜は、平均大きさが50〜100nmであり、下記の化学式1で表される化合物を含有する板状構造の結晶を含み、
[化学式1]
M(OH)
m
前記化学式1において、
Mは、Na、K、Mg、CaおよびBaからなる群から選択される1種以上を含み、
mは1または2であり;
前記結晶は、下記の数学式1の条件を満足する発色処理された基材を提供する:
[数学式1]
α≦30°
前記化学式1において、
αは前記マトリックスの表面または前記マトリックス表面に水平な面と結晶の長軸面上に存在する任意の軸がなす平均傾斜角を表わす。
【0029】
具体的に前記発色処理された基材は数学式1の条件を30°以下、29°以下、28°以下、27°以下または26°以下に満足させることができる。
【0030】
本発明に係る発色処理された基材は、マグネシウムを含むマトリックスと皮膜を含み、マトリックス上に位置した皮膜によって表面に入射される光を散乱および屈折させることによって表面に色相が具現され得る。
【0031】
このとき、前記皮膜は化学式1で表される化合物を含有し、板状構造の結晶が積層された構造を有することができ、化学式1で表される化合物は具体的にナトリウム水酸化物(NaOH)、カリウム水酸化物(KOH)、マグネシウム水酸化物(Mg(OH)
2)、カルシウム水酸化物(Ca(OH)
2)およびバリウム水酸化物(Ba(OH)
2)の中のいずれか一つ以上であり得、より具体的にはマグネシウム水酸化物(Mg(OH)
2)であり得る。
【0032】
一つの例として、前記発色処理された基材は、皮膜が形成された表面に対するX線回折測定時、2θで表示される18.5±1.0°、38.0±1.0°、50.5±1.0°、58.5±1.0°、62.0±1.0°および68.5±1.0°の回折ピーク値を有し、前記回折ピーク値は下記の数学式2の条件を満足することができる:
【0033】
[数学式2]
P
1/P
2≧0.9
前記数学式2において、
P
1は2θで表示される18.5±1.0°範囲に存在する回折ピークの強度で、
P
2は2θで表示される38.0±1.0°範囲に存在する回折ピークの強度である。
【0034】
このとき、前記基材は、0.9以上、1.0以上、1.1以上、1.2以上または1.5以上のP
1とP
2の比率を有して前記数学式2の条件を満足させることができる。
【0035】
具体的に、前記発色処理された基材の表面に対するX線回折を測定した結果、マグネシウムの回折ピーク値である2θで表示される18.5±1.0°、38.0±1.0°、50.5±1.0°、58.5±1.0°、62.0±1.0°および68.5±1.0°の回折ピーク値が確認された。また、前記回折ピーク値中18.5±1.0°範囲のピークはその強度が最も強く表れ、38.0±1.0°範囲のピークとの比率が約1.66〜4.8であることが確認された。このようなX線回折結果はブル-サイト(brucite)結晶型、すなわち六方晶系形態のマグネシウム水酸化物のX線回折と一致するので、マトリックス上に形成された皮膜は六方晶系の結晶型を有するマグネシウム水酸化物(Mg(OH)
2)が板状構造で積層された構造であることを表わす。このような結果から、本発明に係る前記発色処理された基材は前記数学式2の条件を満足することが分かる(実験例1参照)。
【0036】
また、前記皮膜の結晶は、その大きさが特に制限されるものではないが、50〜100nmの平均大きさを有し得る。
【0037】
一般的に組織内の粒子は、微細・均一である方が、組織内で発生する強度低下の原因となり得る欠陥の寸法や残留応力を減少させるので、組織の強度を向上させることができる。すなわち、前記結晶は50〜100nmの平均大きさを有することによって、マトリックス上に結晶間の空き空間を形成せずに水平的に均一かつ稠密に積層され得、これによって、基材表面に入射される光の拡散を防止して金属固有の質感および光沢を保存するとともに、基材の耐久性を向上させることができる。
【0038】
具体的に、前記発色処理された基材の表面を目視および走査電子顕微鏡(SEM)で観察した。その結果、前記発色処理された基材は金属固有の光沢を維持しつつ色相が均一に発色することを目視で確認することができる。また、走査電子顕微鏡結果から、前記基材の表面は約50〜100nmの大きさを有する板状構造の結晶がマトリックス表面に対して水平的に稠密に積層され、結晶の長軸面上に存在する任意の軸とマトリックスの表面がなす平均傾斜角(α)が30°以下となるように積層された構造であることを確認することができる。このような結果から、本発明に係る発色処理された基材はマグネシウムを含むマトリックス上に板状構造の結晶が均一で稠密に積層された皮膜を含み、数学式1の条件を満足することが分かる(実験例3参照)。
【0039】
さらに、本発明に係る発色処理された基材は、マトリックス上に形成された皮膜の平均厚さを制御することによって多様な色相を具現することができる。前記皮膜は平均厚さが変わるにつれてマトリックス表面に進行される入射光およびマトリックス表面から反射光の性質を制御することによって具現される色相を調節することができる。このとき、前記皮膜の平均厚さは特に制限されないが、1nm〜900nm、具体的には1nm〜800nm;1nm〜700nm;または1nm〜600nmであり得る。
【0040】
具体的に、一実施形態において本発明に係るマグネシウムを含む基材の平均厚さによる具現される色相を評価した結果、平均厚さが約200±50nmである皮膜がマトリックス上に形成された場合、具現される色相は黄色(yellow)であると現れた。また、平均厚さが約600±50nmである皮膜がマトリックス上に形成された場合、具現される色相は緑色(green)であると示された。このような結果から、マトリックス上に形成された皮膜の厚さによりマトリックス表面に入射される光の散乱および屈折が変化して具現される色相の色偏差が発生することが分かる。
【0041】
また、本発明に係る発色処理された基材は皮膜上に形成されたトップコートをさらに含むことができる。
【0042】
前記トップコートは、マグネシウムを含む基材表面の耐スクラッチ性および耐久性を向上させるためにさらに含まれ得る。このとき、前記トップコートを形成するクリアコーティング剤は、金属、金属酸化物または金属水酸化物上のコーティングに適用可能なクリアコーティング剤であれば特に制限されない。より具体的には、金属コーティングに適用可能な艶消しクリアコーティング剤または艶有り/艶消しクリアコーティング剤などが挙げられる。
【0043】
これとともに、前記トップコートは、皮膜と優秀な密着力を有することができる。具体的に、トップコートを含む発色処理された基材に対する35℃、5重量%塩水噴霧72時間経過後の密着性評価時、前記トップコートは、5%以下の剥離率を有し得る。
【0044】
また、本発明は、一つの実施形態において、マグネシウムを含むマトリックス上に皮膜を形成する段階を含み、前記皮膜は、平均大きさが50〜100nmであり、下記の化学式1で表される化合物を含有する板状構造の粒子が、前記マトリックスの表面または前記マトリックス表面に水平な面と結晶の長軸面上に存在する任意の軸がなす平均傾斜角が30°以下となるように積層された構造を有する基材の発色処理方法を提供する:
[化学式1]
M(OH)
m
前記化学式1において、
Mは、Na、K、Mg、CaおよびBaからなる群から選択される1種以上を含み、
mは、1または2である。
【0045】
本発明に係る基材の発色処理方法は、マグネシウムを含む基材上に皮膜を形成する段階を含み、前記皮膜を形成する段階は金属基材上に皮膜を形成するために当業界で通常的に用いられる方法であれば特に制限されない。具体的にはマグネシウムを含む基材を水酸化溶液に浸漬して皮膜を形成することができる。
【0046】
このとき、前記水酸化溶液としては、水酸基(−OH基)を含む溶液であれば特に制限されない。具体的にはNaOH、KOH、Mg(OH)
2、Ca(OH)
2およびBa(OH)
2からなる群から選択される1種以上が溶解された溶液を用いることができる。本発明は前記水酸化溶液を浸漬溶液として用いることによって、マトリックス表面に皮膜を迅速かつ均一に形成できるだけでなく、金属固有の光沢および質感を維持できる利点がある。
【0047】
また、本発明に係る製造方法は、浸漬条件によりマトリックス表面に形成される皮膜の厚さを制御することができる。ここで、前記マトリックスは厚さによって熱伝導量が異なるため、マトリックスの厚さが異なる場合、同じ条件下で浸漬されたマトリックスであっても表面に形成される皮膜の厚さが異なり得る。したがって、マグネシウムを含むマトリックスの厚さにより浸漬条件を調節して皮膜の厚さを制御することが好ましい。
【0048】
一つの例として、マグネシウムを含むマトリックスの厚さが0.4〜0.7Tである場合、前記水酸化溶液の濃度は、1重量%〜20重量%、より具体的には1重量%〜15重量%であり得る。これとともに、前記水酸化溶液の温度は90℃〜200℃、より具体的には、100℃〜150℃、より具体的に95℃〜110℃の温度範囲で遂行され得る。合わせて、浸漬時間は1分〜180分、具体的には5分〜90分の間遂行され得る。前記皮膜を形成する段階は前記条件範囲内で経済的に多様な色相を基材表面に具現することができるだけでなく、結晶の成長速度調節が容易であるため、結晶の過成長による過度な皮膜の平均厚さ増加を防止して基材の金属固有の質感および光沢を維持することができる。
【0049】
図2を参照すると、100℃、10重量%NaOH溶液に180分以下で浸漬された基材の場合、50〜100nmの直径を有する板状構造の結晶が水平的に稠密に積層されて皮膜を構成することを確認することができる。これに反し、240分の間浸漬された基材は結晶が成長して直径が100nmを超過するものと示され、表面が不均一であることを確認することができる(実験例3参照)。
【0050】
さらに、前記皮膜を形成する段階は、マグネシウムを含むマトリックスをN
1濃度の水酸化溶液で浸漬する第1浸漬段階;および前記マトリックスをN
n濃度の水酸化溶液で浸漬する第n浸漬段階を含み、第1および第n浸漬段階で、水酸化溶液の濃度は互いに独立的に下記の数学式4および5を満足し、nは2以上6以下の整数である方法によって遂行され得る:
[数学式4]
8≦N
1≦25
[数学式5]
|N
n−1−N
n|>3
前記数学式4および5において、N
1およびN
nは各段階別水酸化溶液の濃度を意味し、単位は重量%である。
【0051】
前述した通り、前記水酸化溶液に浸漬する段階は、マグネシウムを含む基材の表面に皮膜を形成して色相を具現する段階であって、形成される皮膜の厚さ調節を通じて発色される色相を調節することができる。このとき、前記皮膜の厚さは水酸化溶液の濃度により制御が可能であるため、マトリックスを浸漬させる水酸化溶液の濃度を N
1〜N
n、具体的にN
1〜N
6;N
1〜N
5;N
1〜N
4;N
1〜N
3;またはN
1〜N
2;に細分化して順次浸漬する場合、表面に具現される色相の微細な色相差を調節することができる。
【0052】
一方、本発明に係る基材の発色処理方法は、皮膜を形成する段階の前に、表面を前処理する段階;および皮膜を形成する段階の後で、リンシングする段階のうちいずれか一つ以上の段階をさらに含むことができる。
【0053】
このとき、前記表面を前処理する段階は、マグネシウムを含むマトリックスに皮膜を形成する前に表面をアルカリ洗浄液で処理して表面に残留する汚染物質を除去するか、研磨を遂行する段階である。このとき、前記アルカリ洗浄液としては、金属、金属酸化物または金属水酸化物の表面を洗浄のために当業界で通常的に用いられるものであれば、特に制限されない。また、前記研磨はバフィング(buffing)、ポリッシング(polishing)、ブラスティング(blasting)または電解研磨などによって遂行され得るがこれに制限されるものではない。
【0054】
本段階では、マグネシウムを含むマトリックス表面に存在する汚染物質やスケールなどを除去できるだけでなく、表面の表面エネルギーおよび/または表面状態、具体的に表面の微細構造変化を通じて皮膜形成速度を制御することができる。すなわち、研磨が遂行されたマトリックスの場合、研磨が遂行されなかったマトリックスと同じ条件下で皮膜を形成するとしても、マトリックス表面に形成された皮膜の厚さは互いに異なることがあり、したがって、表面に発色される色相が互いに異なり得る。
【0055】
また、前記リンシングする段階は、マトリックスに皮膜を形成した後、具体的にマトリックスを水酸化溶液に浸漬する段階の後で、マトリックス表面をリンシングすることによって、表面に残留する水酸化溶液を除去する段階である。この段階ではマトリックス表面に残留する水酸化溶液を除去することによって残留水酸化溶液による追加的な皮膜形成を防止することができる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を実施例および実験例によってより詳細に説明する。
ただし、下記の実施例および実験例は本発明を例示するだけのもので、本発明の内容は下記の実施例および実験例に限定されるものではない。
【0057】
実施例1〜実施例3.
1cm×1cm×0.4Tのマグネシウムを含む試片をアルカリ洗浄液に浸漬して脱脂し、脱脂された試片を下記の表1に表わした時間の間、100℃、10重量%NaOH溶液に浸漬した。その後、前記試片を蒸溜水でリンシングし、乾燥オーブンで乾燥させて発色処理された試片を製造した。
【0058】
【表1】
【0059】
比較例1〜比較例4.
1cm×1cm×0.4Tのマグネシウムを含む試片をアルカリ洗浄液に浸漬して脱脂し、脱脂された試片を下記の表2に示した通り、100℃浸漬溶液に浸漬した。その後、前記試片を蒸溜水でリンシングし、乾燥オーブンで乾燥させて発色処理された試片を製造した。
【0060】
【表2】
【0061】
実験例1.皮膜成分および構造分析
本発明に係る発色処理された基材の皮膜を構成する成分および皮膜の構造を確認するために下記のような実験を遂行した。
【0062】
実施例1〜3、および比較例2で得た試片に対するX線回折(XRD)を測定した。このとき、測定機器はRigaku ultra−X(Cu Ka radiation、40kV、120mA)を用いた。また、測定条件は、1.5406Å波長を0.02°/secの走査速度で走査して2θが10〜80°である範囲内でX線回折パターンを得た。
【0063】
また、前記実施例1〜3で得た試片に対する透過電子顕微鏡(TEM)撮影を遂行してマグネシウム試片上に積層された皮膜の平均厚さを測定し、測定された結果を
図1と下記の表3に表した。
【0064】
【表3】
【0065】
図1を詳察すると、実施例1〜3で得た試片は、マトリックスであるマグネシウムの2θで表示される18.5±1.0°、38.0±1.0°、50.5±1.0°、58.5±1.0°、62.0±1.0°および68.5±1.0°の回折ピーク値が確認された。また、前記回折ピーク値中18.5±1.0°範囲のピークはその強度が最も強く表れ、38.0±1.0°範囲のピークとの比率が約1.66〜4.8であることが確認された。ここで前記回折ピーク値およびパターンはブルーサイト(brucite)結晶型、すなわち六方晶系形態のマグネシウム水酸化物の回折値でマトリックス上に形成された皮膜が六方晶系の結晶型を有するマグネシウム水酸化物(Mg(OH)
2)が板状構造で積層された構造であることを表わす。これに反し、比較例2で得た試片は、2θで表示される回折ピーク値が実施例で得た試片と類似するように表れたが、18.5±1.0°範囲のピークはその強度が弱く38.0±1.0°範囲のピークとの比率が約0.4であることが確認された。これは比較例2の試片に形成された皮膜がマグネシウム水酸化物の結晶が積層された構造を有するが、前記結晶がマトリックス上に積層された構造は実施例とは相異なることを意味する。
【0066】
また、表3を詳察すると、前記皮膜は浸漬時間が増加するにつれてその厚さが増加するものと示された。具体的に、浸漬時間がそれぞれ30分、80分および170分である実施例1〜3の試片の場合、皮膜の平均厚さはそれぞれ200±50nm、600±50nmおよび800±50nmであることが確認された。
【0067】
このような結果から、本発明に係る発色処理された基材は化学式1で表される化合物を含有する板状構造の結晶が積層された皮膜を含むことが分かり、皮膜の平均厚さは1〜900nmであって、基材が浸漬時間が増加するにつれて増加することが分かる。
【0068】
実験例2.浸漬時間による発色色相分析
浸漬時間により表面で具現される色相および色相均一度を確認するために下記のような実験を遂行した。
【0069】
1cm×1cm×0.4Tのマグネシウムを含む試片をアルカリ洗浄液に浸漬して脱脂し、脱脂された試片を100℃、10重量%NaOH溶液に170分間浸漬した。このとき、前記試片をNaOH溶液に浸漬した直後、5〜10分間隔で試片の表面色相を目視で観察し、浸漬時間による具現される色相を確認した。また、実施例2および3で得た発色処理された試片を対象に、各表面に存在する任意の3地点、A〜Cを選定し、選定された地点に対してCIE色空間での色座標を4回繰返し測定した。測定された色座標から、平均色座標(L
*、a
*、b
*)と色座標偏差を導き出し、その結果を下記の表4に示した。
【0070】
【表4】
【0071】
本発明に係る発色処理された基材は浸漬時間により多様な色相を表面に具現することができることが分かる。
【0072】
具体的に、マグネシウムを含む試片は水酸化溶液に浸漬すると、マグネシウム固有の色相である銀色を維持して30分が経過した後、順次黄色、赤色、紫色、藍色および緑色が均一に発色されると確認された。これはマトリックスの浸漬時間を制御することによって、マトリックス表面に具現される色相を調節する可能性があることを意味する。
【0073】
また、前記表4を詳察すると、発色処理された基材に具現された色相は色相均一度が優秀であることが分かる。具体的に、実施例2の試片は色座標偏差が0.25<ΔL
*<0.30、0.15≦Δa
*<0.20、0.15<Δb
*<0.20およびΔE
*<0.400であると示された。また、実施例3の試片も色座標偏差が0.20<ΔL
*<0.25、0.15≦Δa
*<0.20、0.35≦Δb
*<0.40および0.45≦ΔE
*<0.500であり、偏差が小さいと確認された。
【0074】
このような結果から、マグネシウムを含むマトリックスを1〜20重量%の濃度を有する50〜200℃のNaOH、KOH、Mg(OH)
2、Ca(OH)
2およびBa(OH)
2のような水酸化溶液に浸漬する時間を制御することによって、基材表面に多様な色相を均一に具現することができることが分かる。
【0075】
実験例3.浸漬溶液および浸漬時間による皮膜の構造分析
本発明に係る発色処理された基材の皮膜形成において、浸漬溶液の種類および浸漬時間が及ぼす影響を評価するために下記のような実験を遂行した。
【0076】
実施例1、実施例2、比較例1、比較例2および比較例4で製造された発色処理されたマグネシウム試片の表面色相および光沢度を目視で評価した。その後、走査電子顕微鏡(SEM)を利用して50、000倍率で各試片の表面に形成された皮膜を観察し、その結果を
図2に示した。
【0077】
発色処理された試片を目視で観察した結果、実施例1および3の試片は金属固有の光沢を維持しつつ均一に発色することを確認することができた。これに反し、比較例の試片は均一に発色するが発色力が非常に低く、光沢が顕著に減少したことが確認された。
【0078】
また、
図2を詳察すると、実施例1および2の試片は50〜100nmの平均大きさを有する板状構造の結晶が積層されて皮膜を構成することを確認することができる。また、皮膜を構成する結晶間の隙間がほとんど存在しないことを確認することができる。これは板状構造の結晶が水平的に稠密に積層されて結晶の長軸面上に存在する任意の軸とマトリックス表面がなす平均角度が30°以下と、低いことを意味する。
【0079】
これに反し、比較例1に係る試片の場合、皮膜を構成する結晶の平均大きさが100nmを超過するものと示され、表面が均一でないことを確認することができる。また、比較例2および4の試片は板状構造の結晶が、結晶の長軸面上に存在する任意の軸とマトリックスがなす平均角度が約75〜105°の平均角度をなし、不規則的なネットワークを形成する構造の皮膜が含まれることを確認することができる。
【0080】
このような結果から、本発明は1〜20重量%の濃度を有するNaOH、KOH、Mg(OH)
2、Ca(OH)
2およびBa(OH)
2のような水酸化溶液にマグネシウムを含むマトリックスを浸漬させることによって、マトリックス上に板状構造の結晶が水平的に稠密に積層されるということがわかる。また、このような積層構造によって金属固有の光沢が低下することなく均一に色相が具現された基材を得ることができることが分かる。