(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、フィルタの交換は2.5万キロ〜5万キロの走行ごとの交換が推奨されている。しかしながら、このような推奨タイミングで交換しても、フィルタ交換直後から走行距離に応じてフィルタの目詰まりは少しずつ進んでいくことから、フィルタの目詰まりによる燃費悪化などを完全に回避することはできなかった。
【0007】
また、上述した特許文献1に記載のサイクロン集塵装置では、容器内において十分な遠心力が働かず、比較的大きな塵埃は容器の底部で捕集することはできても、より微細な塵埃については容器の底部で捕集することができなかった。従って、これらの微細な塵埃をも確実に捕集するためには、フィルタを別途設ける必要があると共に、長期間の使用によりフィルタが目詰まりを起こすという問題があった。
【0008】
これに対し、特許文献2に記載の冷却装置においては、十分な遠心力を発生させることができることから、微細な塵埃であっても冷却用外気から分離させることができる。しかしながら、特許文献2に記載の冷却装置においては、層流を流れる冷却用外気に含まれる塵埃は、冷却用外気と共にファンの下流側に送られてしまう恐れがあった。即ち、
図15において、カバー703に形成された吸気開口部732の周縁領域から導入された冷却用外気は旋回流を形成するものの、吸気開口部732の中心領域を通って導入された冷却用外気は層流を形成する。そして、吸気開口部732はファンの回転軸の延長線A上に開口中心Cを有することから、層流はファンの回転により形成される旋回流の中心、即ち角速度が零の領域を流れ、層流を形成する冷却用外気に含まれる塵埃は冷却用外気から遠心分離されることなく、冷却用外気と共にファンの下流側に送られてしまうという問題があった。
【0009】
本発明の第1の目的は、空気中から塵埃をより効果的に除去することができるエアフィルタ装置及びこれを用いた集塵装置を提供することである。
【0010】
本発明の第2の目的は、自動車等に用いられるフィルタの目詰まりを防止することのできるエアフィルタ装置及び吸気装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のエアフィルタ装置は、気流を発生させるためのファンと、前記ファンを収容するケーシングと、を備え、
第1の所定方向における前記ケーシングの先端側には吸気開口部が形成され、前記ファンは、前記
第1の所定方向における前記ケーシングの基端側に配置され、前記ファンが
第2の所定方向に回転すると、前記ファンの回転によって前記吸気開口部から前記ファンに向けて流れる強制渦の旋回流が形成されると共に、前記ケーシングの内周領域において前記吸気開口部側に向けて流れる循環渦の流れが
前記旋回流の外方に形成され、前記吸気開口部を通して前記ケーシングの内部に導入された空気に含まれる塵埃は、前記旋回流によって径方向外方に遠心分離された後に前記循環渦の流れによって前記ケーシングの内周領域を前記吸気開口部側に流れ、前記吸気開口部の中心位置は前記ファンの回転軸線の延長線から偏倚し、前記吸気開口部は前記ファンの回転軸と同軸の所定の円筒領域内に位置し、前記所定の円筒領域は前記ファンの回転半径と同一の半径を有
し、前記吸気開口部は、前記ファンの回転軸線の延長線上に開口中心を有する開口部に代えて設けられていることを特徴とする。
また、本発明
の集塵装置は、エアフィルタ装置と、前記エアフィルタ装置に装着された
カバー部材と、を備え、
前記エアフィルタ装置と前記カバー部材の間には集塵空間が規定され、前記エアフィルタ装置は、気流を発生させるためのファンと、前記ファンを収容するケーシングと、を備え、第1の所定方向における前記ケーシングの先端側には収容開口部及び連通開口部が形成され、前記ファンは、前記第1の所定方向における前記ケーシングの基端側に配置され、前記集塵空間は前記連通開口部に連通し、前記カバー部材の先端側には吸気開口部が形成され、前記吸気開口部の周縁部には前記カバー部材の基端側に向かって延びる円筒部が設けられ、前記円筒部は前記収容開口部を挿通して前記ケーシングの内部まで延び、前記円筒部の軸線方向は前記ファンの回転軸の軸線方向に対して傾斜していることを特徴とする。
また、本発明のエアフィルタ装置は、エンジンに接続された吸気装置への塵埃侵入を防止するエアフィルタ装置であって、前記吸気装置の吸気口に接続されるケーシングと、前記ケーシングに収容されたファンと、を備え、
第1の所定方向における前記ケーシングの先端側には吸気開口部が形成され、前記ファンは、前記
第1の所定方向における前記ケーシングの基端側に配置され、モータと、前記モータにより回転駆動される羽根車と、を備え、前記羽根車は、前記モータにより回転駆動される回転軸と、前記回転軸に装着されたブレードと、を備え、前記回転軸の軸線方向は前記
第1の所定方向と実質平行であり、前記ブレードは、前記回転軸の軸線方向と実質平行な幅広面を有する平板状に形成され、前記エンジンが駆動すると共に前記ファンが
第2の所定方向に回転すると、前記エンジンの吸気効果により外部の空気が前記吸気開口部を介して前記ケーシング内に導入されると共に、前記ファンの回転によって前記吸気開口部から前記ファンに向けて流れる強制渦の旋回流が形成され、更に前記ケーシングの内周領域において前記吸気開口部側に向けて流れる循環渦の流れが
前記旋回流の外方に形成され、前記吸気開口部を通して前記ケーシングの内部に導入された空気に含まれる塵埃は、前記旋回流によって径方向外方に遠心分離された後に前記循環渦の流れによって前記ケーシングの内周領域を前記吸気開口部側に流れ
、前記吸気開口部の中心位置は前記ファンの回転軸線の延長線から偏倚し、前記吸気開口部は前記ファンの回転軸と同軸の所定の円筒領域内に位置し、前記所定の円筒領域は前記ファンの回転半径と同一の半径を有し、前記吸気開口部は、前記ファンの回転軸線の延長線上に開口中心を有する開口部に代えて設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明のエアフィルタ装置によれば、吸気開口部の中心位置はファンの回転軸線の延長線から偏倚しているので、吸気開口部の中心位置を通って導入された空気に含まれる塵埃であっても、効果的に遠心分離させることができる。また、吸気開口部は、回転軸と同軸の所定の円筒領域内に位置し、当該円筒領域はファンの回転半径と同一の半径を有するため、強制渦を効果的に形成することができる。
また
、吸気開口部の周縁部には筒状部が設けられ、外部の空気は吸気開口部及び筒状部を介してケーシングの内部に導入されるので、循環渦を効率的に形成することができる。また、筒状部の軸線方向は、回転軸の軸線方向に対して傾斜しているため、吸気開口部の中心位置を通って導入された空気に含まれる塵埃であっても、効果的に遠心分離させることができる。
また、本発明のエアフィルタ装置によれば、吸気開口部を通しケーシングの内部に導入された空気に含まれる塵埃は、旋回流によって径方向外方に遠心分離された後に循環渦の流れによってケーシングの内周領域を吸気開口部側に流れるので、塵埃がファンを通してケーシングの基端側へ流れるのを防止でき、これにより塵埃が吸気装置内部へ侵入するのを防止できる。よって、吸気装置が備えるフィルタにおける目詰まりを防止でき、フィルタ交換作業及びフィルタ交換費用が不要となる。また、フィルタの目詰まりによる空気抵抗の増加を防止でき、エンジンの燃焼効率の低下を防止することができる。
【0021】
更に、ブレードは回転軸の軸線方向と実質平行な幅広面を有する平板状に形成されているため、強制渦を効率的に形成して塵埃を良好に遠心分離させることができると共に、回転軸の軸方向において最小限の面積を有することとなり、ブレードを用いることによる空気抵抗を最小限に抑えることができる。
【0022】
また、ブレードがケーシング内で回転することにより、慣性効果を利用して吸気開口部から導入された空気を基端側から排出することができるので、エンジンに対する過給器としての機能をも発揮できる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[第1実施形態]
添付図面を参照して、本発明の第1実施形態に係るエアフィルタ装置について説明する。
図1を参照して、本実施形態に係るエアフィルタ装置1は、気流を発生させるためのファン2と、ファン2を覆うフードカバー3と、を備え、ファン2は所定方向Xにおけるフードカバー3の基端側(
図1における右側)に配置されている。
【0033】
本実施形態におけるファン2は軸流回転型ファンであって、円筒状のハウジング21と、ハウジング21に回転自在に支持された羽根車22と、羽根車22を回転駆動するための駆動モータ23と、を有している。羽根車22は、所定方向Xに延出する回転軸24と、回転軸24より径方向外方に延びる複数のブレード25を有している。回転軸24には砲弾形状の旋回流形成補助突部(旋回流形成補助手段)4が固定支持されている。旋回流形成補助突部4は、所定方向Xにおけるフードカバー3の先端側(後述する吸気開口部32側、
図1における左側)に向けて、フードカバー3の軸方向中央位置近傍まで延びている。また、旋回流形成補助突部4の直径は、回転軸24の直径とほぼ等しく構成されている。羽根車22が所定方向に回転すると、旋回流形成補助突部4は羽根車22と一体に回転する。また、ハウジング21の基端側には排気開口部26が規定されている。
【0034】
フードカバー3は、ファン2のハウジング21に着脱可能に装着されている。フードカバー3は砲弾形状に構成されており、その基端側は円筒形状に構成されてファン2の前方周囲を包囲し、その先端側は半球面形状に構成されてファン2の前方の一部を包囲している。また、フードカバー3の先端側には吸気開口部32及び連通開口部33が形成されている。なお、本実施形態及び後述の第3及び第4実施形態において、フードカバー3とハウジング21とによりケーシングが構成される。
【0035】
吸気開口部32は、所定方向Xにおいてファン2の羽根車22と対向するのが好ましい。換言すると、
図2をも参照して、ファン2の回転軸24と同軸の円筒領域であって、ファン2の回転半径と略同一の半径を有する円筒領域を円筒領域Rとして規定したときに、吸気開口部32は、円筒領域R内に位置するのが好ましい。また、本実施形態においては、吸気開口部32の中心位置Cは、ファン2の回転軸線の延長線Aから偏倚しており、当該偏倚量は少なくとも1ミリメートル以上であるのが好ましい。ここで、吸気開口部32は、その中心位置Cがファン2の回転軸線の延長線Aから偏倚していれば、
図2に実線で示すようにファン2の回転軸線の延長線A上に設けられてもよく、或いは
図2に一点鎖線で示すようにファン2の軸線の延長線Aから外れた位置に設けられてもよい。また、吸気開口部32の開口面積は、フードカバー3の基端側における横断面積よりも小さく構成されている。
【0036】
次に、
図3をも参照して、本実施形態のエアフィルタ装置1における空気の流れについて説明する。ファン2が作動して羽根車22が所定方向に回転すると、空気が吸気開口部32を通してフードカバー3の内部に導入される。このとき、フードカバー3の内部には、羽根車22の回転によって吸気開口部32から羽根車22に向けて流れる強制渦の旋回流F2が形成される。すなわち、ファン2の回転軸24の回転運動エネルギーの一部が、強制渦の旋回流F2を発生させるために必要な外部運動エネルギーの元となる。
【0037】
吸気開口部32より外部から導入された空気は、この強制渦の旋回流F2によって所定方向に螺旋状に回転しながら吸気開口部32から羽根車22に向けて流れる。また、羽根車22の上流側の付近では、強制渦の旋回流F2は旋回流形成補助突部4により径方向外側に押し広げられ、旋回流形成補助突部4の周囲に強制渦の旋回流F2が形成される。更に、上述したように、吸気開口部32の開口面積はフードカバー3の基端側における横断面積よりも小さく構成されているので、吸気開口部32の近傍におけるフードカバー3の内周領域には、拡大管の構造により、はく離流域Sが形成される。このはく離流域Sには、吸気開口部32側に向けて流れる気体の循環渦の流れF3が形成される。
【0038】
ここで、塵埃D(図中、×印で示す)が空気とともに吸気開口部32よりフードカバー3の内部に侵入すると、この塵埃Dは、強制渦の旋回流F2によって螺旋軌道を描きながら吸気開口部32から羽根車22に向けて流れる。強制渦は、中心からの距離に比例して角速度及び気圧が高くなる性質を有するため、塵埃Dはこのように流れる間に強制渦の旋回流F2によって径方向外方に遠心分離される。上述のように、旋回流形成補助突部4により旋回流F2が径方向外側に押し広げられることによって、羽根車22の上流側の付近において旋回流F2の回転方向の流速が高められる。これにより、羽根車22の上流側の付近における圧力は、はく離流域Sにおける圧力よりも大きくなる。このように圧力差が生じることによって、上述のように遠心分離された塵埃Dは、はく離流域Sに導入され、吸気開口部32側に向けて流れる循環渦の流れF3によってフードカバー3の内周領域を所定方向に螺旋軌道を描きながら先端側に向けて流れる。
【0039】
ここで、吸気開口部32は上述した円筒領域R内に位置することから、強制渦の旋回流F2が効果的に形成される。また、吸気開口部32の中心位置Cはファン2の回転軸線の延長線Aから偏倚していることから、
図4に示す様に、吸気開口部32の中心位置Cを通る空気の流れは曲線Lを描くこととなり、この曲線Lでは、その中心部を流れる層流が乱れて乱流域S2を形成する。よって、層流に含まれる塵埃Dは、乱流域S2において強制渦の旋回流F2に巻き込まれ、径方向外方に遠心分離される。即ち、吸気開口部32の中心位置Cを通って導入された空気が形成する流れは、ファン2の回転によって形成される旋回流F2の中心(角速度が零の地点)から外れるために、吸気開口部32の中心位置Cを通る層流は曲線部で消滅(或いは減少)し、これにより塵埃Dを効果的に遠心分離させることができる。
【0040】
このように、本実施形態におけるエアフィルタ装置1においては、層流が乱れて乱流域S2を形成するので、吸気開口部32から導入された空気から効果的に塵挨Dを遠心分離させることができる。
【0041】
上述の様にして循環渦の流れF3によってフードカバー3の先端側へ流れた塵埃Dの一部は、フードカバー3の連通開口部33を通してフードカバー3の外部へ排出される。また、フードカバー3の内部に残った塵埃Dは、フードカバー3の内周領域で所定方向に旋回するので、ファン2の通過風量に影響を与えることがない。一方、上述のようにして塵埃Dの除去された清浄な空気は、ハウジング21の基端側に規定された排気開口部26から排出される。
【0042】
このように、本実施形態におけるエアフィルタ装置1によれば、塵埃Dを効果的に遠心分離させることができるので、排気開口部26からは清浄な空気のみを排出させることができ、また塵埃Dがファン2のブレード25に付着するのを防止できる。
【0043】
このように構成されたエアフィルタ装置1は、例えば電子機器や家電製品等における冷却装置として用いることができるほか、空気清浄機や掃除機等の集塵装置の構成部材として用いることができる。以下、エアフィルタ装置1を冷却装置として用いた場合の実施例1及び2について説明する。
【0044】
[実施例1]
図5を参照して、図示の機器100は、例えばDVDレコーダや、監視カメラ、プロジェクターなどの電子機器や、冷蔵庫、電子レンジ、炊飯器などの電気製品等から構成され、ボックス状の筐体101を備えている。筐体101の内部には回路基板102が収容され、回路基板102には半導体デバイス等の発熱部材104が実装されている。なお、筐体101の内部には、回路基板102の他にも種々の電子部品等(図示せず)が収容されている。筐体101の側壁部101aには吸気口106が設けられ、この吸気口106に冷却装置としてのエアフィルタ装置1が取り付けられている。また、筐体101の側壁部101aには筐体101の内部に送り込まれた冷却用外気を外部に排出するための排気口107aが設けられている。
【0045】
当該構成において、ファン2が作動して羽根車22が所定方向に回転すると、空気(冷却用外気)が吸気開口部32を通してフードカバー3の内部に導入される。冷却用外気と共にフードカバー3の内部に侵入した塵埃Dは、上述の様にして連通開口部33を通して外部へ排出される。
【0046】
一方、塵埃Dの除去された清浄な冷却用外気は、ファン2を通して筐体101の内部に送り込まれ、回路基板102の発熱部品104を冷却しながら筐体101の内部を流れる。これにより筐体101の内部の圧力が上昇し、筐体101の内外の圧力差が生じることによって、筐体101内の冷却用外気は、排気口107aを通して外部に排出される。このようにして塵埃Dが筐体101の内部に侵入するのが防止され、これにより例えば、塵埃Dが回路基板102に付着して回路基板104が誤動作するのを防止することができる。
【0047】
[実施例2]
図6を参照して、図示の水槽200には水が張られ、観賞用の魚等が飼育されている。水槽200の側壁201には冷却装置としてのエアフィルタ装置1が装着され、またエアフィルタ装置1の基端側にはチューブ202が取り付けられている。チューブ202の内径はエアフィルタ装置1から離隔するに従って漸減し、その自由端側に規定された吹出孔202aが水面に対して斜めに対向するように配置されている。
【0048】
かかる構成により、エアフィルタ装置1から送り出された空気はチューブ202の吹出口202aから水面に向けて排出され、気化熱効果により水温を低下させることができる。よって、夏季等に水温が適正温度を超えて上昇した場合には、エアフィルタ装置1を駆動させることにより水温を低下させることがでる。また、チューブ202の内径がその自由端側に向かって漸減するように構成されているため、ノズル効果により冷却効果を向上できる。なお、本発明者による実験により、3℃〜4℃の水温冷却効果が得られることが確認できた。
【0049】
なお、
図6の例では、先端側が上側、基端側が下側となるようにエアフィルタ装置1を縦向きに配置したが、エアフィルタ装置1を横向きに配置することもできる。この場合には、
図6の例と異なり吸気開口部32が横を向くため、例えばエアフィルタ装置1が稼働していない状態で埃などが吸気開口部32からエアフィルタ装置1内へ侵入するのを防止できる。
【0050】
[第2実施形態] 次に、本発明の第2実施形態に係る集塵装置について説明する。なお、上述した第1実施形態と実質同一の部材には同一の参照番号を付し、その説明は省略する。
【0051】
図7を参照して、図示の集塵装置300は、エアフィルタ装置1と、エアフィルタ装置1の先端側に着脱可能に装着されたカバー部材5と、を備える。
【0052】
カバー部材5は断面円形状のキャップ状に構成されており、例えばポリカーボネート等の透明材料から形成されている。所定方向Xにおいて、カバー部材5の基端側には収容開口部51が規定され、その先端側には円形状の吸気開口部52が形成されている。吸気開口部52の周縁部には円筒部53が設けられ、筒状部53はカバー部材5の基端側(内方)に向かって延び、その軸方向は回転軸24の軸方向に対して所定の角度αをもって僅かに傾斜している。また、円筒部53の基端側(ファン2側、
図7における右側)には開口部54が規定されている。
【0053】
このように構成されたカバー部材5をエアフィルタ装置1に装着すると、エアフィルタ装置1の先端側は収容開口部51を介してカバー部材5の内部に収容され、カバー部材5の基端側端面55がハウジング21の先端面21aに当接して位置決めされる。一方、エアフィルタ装置1に設けられた吸気開口部32は収容開口部32として機能し、筒状部53はこの収容開口部32を挿通してフードカバー3の内部まで延び、フードカバー3の内部空間と外部とを連通させる。更に、カバー部材5とエアフィルタ装置1の間には集塵空間S3が規定され、この集塵空間S3は連通開口部33と連通する。カバー部材5をエアフィルタ装置1に装着させた状態においては、所定方向Xにおいて筒状部53の基端側に規定された開口部54は、旋回流形成補助突部4の先端よりも先端側に位置し、回転軸24の軸方向において羽根車22に対向するなお、本実施形態においては、ハウジング21とカバー部材5とによりケーシングが構成される。
【0054】
このように構成された集塵装置300において、ファン2が作動して羽根車22が所定方向に回転すると、空気が円筒部53を通してフードカバー3の内部に導入される。このように導入された空気に含まれる塵埃Dは、第1実施形態と同様に強制渦による旋回流F2により遠心分離され、循環渦の流れF3により連通開口部33を通してフードカバー3の外部へ排出され、集塵空間S3に集塵される。一方、このようにして塵埃Dの除去された清浄な空気は、ファン2を通して下流側に送り込まれる。
【0055】
ここで、本実施形態においては、筒状部53が設けられているため、はく離流域Sをより効率良く形成することができる。また、円筒部53は、その軸方向が回転軸24の軸方向に対して僅かに傾斜していることから、吸気開口部54(筒状部53)の中心領域から導入された空気が形成する流れは曲線を描く。この曲線では中心部を流れる層流が乱れて乱流域を形成することから、層流に含まれる塵埃Dであっても径方向外方に遠心分離させることができる。
【0056】
ファン2の作動を停止すると、遠心分離された塵埃Dは集塵空間S3内部に溜まる。このように集塵空間S3に溜まった塵埃Dは、カバー部材5をフードカバー3から取り外すことで除去できる。なお、筒状部53と開口部32の周縁部との間には隙間Gが形成されるので、エアフィルタ装置1をカバー部材5から引き抜くだけで、筒状部53が開口部32に支えることなく、両者を分離させることができる。また、カバー部材5は透明材料から形成されているため、集塵空間Sに溜まった塵埃Dを外部から確認することができる。
【0057】
このように構成されたエアフィルタ装置1は、空気清浄機として単独で用いることができるほか、円筒部53に吸気パイプ(図示せず)を接続させて掃除機として用いることができる。また、上述したエアフィルタ装置1と同様に冷却装置として電子機器等に装着させて用いることもできる。
【0058】
なお、本実施形態においては、円筒部53は、その軸線方向が所定方向X即ち回転軸24の軸線方向に対して傾斜するように構成されたが、円筒部53の軸線方向を回転軸24の軸線方向と平行としてもよい。このように構成された場合であっても、吸気開口部52の中心位置を回転軸24の軸線の延長線Aから偏倚させれば、円筒部53の軸線と回転軸24の軸線とは一致しないため、円筒部53の中心領域を通して導入された空気の流れは曲線を描き、このように導入された空気に含まれる塵埃Dも、上述のようにして強制渦の旋回流F2により遠心分離される。
【0059】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係るエアフィルタ装置について説明する。なお、本実施形態において、上述した第1実施形態と実質同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0060】
図8を参照して、図示のエアフィルタ装置1Aは上述したエアフィルタ装置1と略同一の構成を有するが、エアフィルタ装置1Aはファン2及び旋回流形成補助部4に代えてファン2Aを備える点で異なる。ファン2Aは、ハウジング21と、ハウジング21に回転自在に支持された羽根車22Aと、羽根車22Aを回転駆動するための駆動モータ23と、を有している。羽根車22Aは、回転軸24と、回転軸24より径方向外方に延びる複数のブレード25Aを有している。各ブレード25Aは平板状に形成され、その幅広面が回転軸24の軸線方向と平行になるように回転軸24に取り付けられている。
【0061】
このように構成されたエアフィルタ装置1Aでは、駆動モータ23が回転駆動し、羽根車22Aが所定方向に回転すると、
図8(b)に示す様に、羽根車22Aの回転運動エネルギーの一部が強制渦発生の外部運動エネルギーの元となり、フードカバー3の内部には吸気開口部32から羽根車22Aに向けて流れる強制渦による旋回流F2が形成されると共に、はく離流域Sには吸気開口部32側に向けて流れる気体の循環渦の流れF3が形成される。また、吸気開口部32から導入された空気の一部は、慣性効果により排気開口部26から外部へ排出されると共に、吸気開口部32から導入された空気の残部は連通開口部33から外部へ排出される。
【0062】
よって、上述したのと同様に、空気とともに吸気開口部32よりフードカバー3の内部に侵入した塵埃Dは、旋回流F2によって螺旋軌道を描きながら吸気開口部32からファン2Aに向けて流れながら径方向外方に遠心分離され、循環渦の流れF3によってフードカバー3の内周領域を所定方向に螺旋軌道を描きながら先端側へ流れ、連通開口部33を通して外部へ排出される。一方、上述のようにして塵埃Dの除去された清浄な空気は、排気開口部26から外部へ送られる。
【0063】
また、本実施形態においては、ブレード25Aを平板状に形成し、その幅広面が回転軸24の軸方向と平行に延びるように設けられていることから、より効率良く強制渦を発生させることができ、これにより遠心分離効果を向上させることができる。
【0064】
このように構成されたエアフィルタ装置1Aは、例えば自動車やバイク等に搭載されたエンジンへ空気を供給するための吸気装置に接続されて用いることができる。以下、エアフィルタ装置1Aを吸気装置に接続させて用いた場合の実施例3について説明する。
【0065】
[実施例3]
ここではまず、エアフィルタ装置1Aが接続される吸気装置について説明する。
図9(a)を参照して、図示の吸気装置6は、エンジン(図示せず)に空気を供給するものであって、空気の取り入れ口である吸気ダクト61と、空気を浄化させるエアフィルタ62を収容するフィルタボックス63と、空気の量を調整するスロットルバブル(図示せず)と、気筒ごとに空気を分ける吸気マニホールド64と、を備える。かかる構成において、エンジンが始動すると、エンジンの吸入負圧によって吸気ダクト61から空気が吸入され、このように吸入された空気はエアフィルタ62及びスロットルバブルを通過し、吸気マニホールド64を介してエンジンのシリンダーヘッド(図示せず)へ送られる。
【0066】
図9(b)をも参照して、上述の様に構成されたエアフィルタ装置1Aは、排気開口部26(
図8(b)参照)から排出された空気が吸気装置6へ供給されるように、中空の接続部材7を介して吸気装置6の上流端、即ち吸気ダクト61の吸気口61aに接続される。また、エアフィルタ装置1Aの駆動モータ23から延びるリード線(図示せず)は、自動車本体等に設けられたアクセサリ端子(図示せず)に電気的に接続される。
【0067】
このような構成においてエンジンが始動すると、アクセサリ端子から駆動モータ23へ電力が供給され、これにより駆動モータ23が回転駆動し、回転軸24と共にブレード25Aが所定方向に回転する。すると、上述したように慣性効果によって吸気開口部32からフードカバー3の内部に外部の空気が流れ込み、またこれと同時にエンジンの負圧吸引効果によっても吸気開口部32からフードカバー3内に空気が吸入される。上述したように、フードカバー3の内部にはブレード25Aの回転によって強制渦による旋回流F2が形成されると共に、拡大管の構造により循環渦の流れF3が形成されるため、空気に含まれる塵埃Dはフードカバー3の連通開口部33を通して外部へ排出される。一方、上述のようにして塵埃Dの除去された清浄な空気は、排気開口部26から接続部材7を介して吸気ダクト61へ送られ、エアフィルタ62及びスロットルバブルを通過し、マニホールド64からエンジンのシリンダーヘッドへ送られる。
【0068】
このように、エアフィルタ装置1Aを吸気装置6の上流端に設置することにより、予め塵埃Dが取り除かれた清浄な空気を吸気装置6へ供給できるので、吸気装置6が備えるエアフィルタ62の目詰まりを防止できる。また、エアフィルタ装置1Aにより取り除かれた塵埃Dは連通開口部33から外部へ排出されるので、エアフィルタ装置1A自体が目詰まりを起こすこともない。よって、エアフィルタ62又はエアフィルタ装置1Aの目詰まりによる空気抵抗の増加を回避でき、ひいては空気抵抗の増加に起因するエンジンの燃焼効率の低下等を防止することができる。
【0069】
更に、エアフィルタ装置1Aの排気開口部26からは、エンジンの吸気効果に加え、ファン2Aの回転により得られる慣性効果によっても空気が排出されるため、エアフィルタ装置1Aは過給器としての機能をも発揮でき、エンジンの吸気量を増加させることができる。
【0070】
なお、本実施例では、エアフィルタ装置1Aを吸気ダクト61の吸気口61aに装着させたが、吸気ダクト61を有しない吸気装置の場合には、エアフィルタ62を収容するフィルタボックス63の吸気口63aにエアフィルタ装置1Aを装着させてもよい。
【0071】
また、上記実施例ではエアフィルタ装置1Aのハウジング21と接続部材7とを別部材としたが、ハウジング21と接続部材7とを一体としてもよい。また、上記実施例ではハウジング21と吸気装置6の上流端(吸気口)とを接続部材7を介して接続させたが、ハウジング21と吸気装置6の上流端(吸気口)とを直接的に接続させてもよい。
【0072】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態に係る集塵装置について説明する。なお、本実施形態において、上述した第1〜第3実施形態と実質同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図10を参照して、図示の集塵装置400は、エアフィルタ装置1Bと、エアフィルタ装置1Bに着脱可能に装着された集塵容器8とを備える。エアフィルタ装置1Bは、
図1に示すエアフィルタ装置1と略同一の構成を有するが、エアフィルタ装置1Bは、旋回流形成補助突部4より径方向外方に延びる複数のブレード25Aを有する点でエアフィルタ装置1と異なる。各ブレード25Aは平板状に形成され、その幅広面が回転軸24の軸方向と平行になるように、旋回流形成補助突部4に取り付けられている。一方、集塵容器8は、その内部空間がエアフィルタ装置1Bの連通開口部33と連通するようにフードカバー3に着脱可能に装着されている。
【0073】
このように構成された集塵装置400において、ファン2が作動して羽根車22が所定方向に回転すると、空気が吸気開口部32を介してフードカバー3の内部に導入される。このように導入された空気に含まれる塵埃Dは、第1実施形態と同様に、強制渦による旋回流F2(
図1参照)により遠心分離され、循環渦の流れF3により連通開口部33を通してフードカバー3の外部へ排出され、集塵容器8内に集塵される。一方、このようにして塵埃Dの除去された清浄な空気は、ファン2を通して下流側に送り込まれる。
【0074】
ここで、本実施形態においては、旋回流形成補助突部4に加えてブレード25Aが設けられているため、強制渦をより効率良く形成することができ、塵埃Dをより効率的に遠心分離することができる。
【0075】
ファン2の作動を停止すると、遠心分離された塵埃Dは集塵容器8内部に溜まる。このように集塵容器8に溜まった塵埃Dは、集塵容器8をフードカバー3から取り外すことで除去できる。集塵容器8を透明材料から形成すれば、集塵容器8に溜また塵埃Dを外部から確認することができる。
【0076】
このように構成された集塵装置400は、空気清浄機や掃除機に応用できるほか、上述したエアフィルタ装置1と同様に冷却装置として電子機器等に装着させて用いることもできる。以下、集塵装置400を空気清浄機及び掃除機に応用した場合の実施例4及び5について順に説明する。
【0077】
[実施例4]
図11を参照して、図示の空気清浄機500は、集塵装置400と、集塵装置400を収容する筐体501と、を備える。集塵装置400が備えるエアフィルタ装置1Bは、その軸線方向が上下方向となり、吸気開口部32が下側に位置し、排気開口部26が上側に位置するように筐体501内部に配置されている。一方、集塵容器8は、筐体501に着脱可能に収容され、
図11に示す例では集塵容器8は筐体501の側方から引き出し可能とされている。
【0078】
筐体501はボックス状に形成され、その上面501aにはエアフィルタ装置1Bの排気開口部26に対応して複数のスリットからなる排気口502が形成されている。また、筐体501の下面501bには、エアフィルタ装置1Bの吸気開口部32に連通する吸気口503が形成され、吸気口503と吸気開口部32とは吸気パイプ504により接続されている。また、筐体501の下面501bには複数の脚部505が設けられ、これにより空気清浄機500の下面501bと空気清浄機500が載置される床面との間、ひいては下面501bに形成された吸気口503と床面との間に所定の隙間が確保される。
【0079】
このように構成された空気清浄機500においてファン2が作動すると、外部の空気が吸気口503、吸気パイプ504、及び吸気開口部32を介してフードカバー3の内部に導入され、このように導入された空気に含まれる塵埃Dは、上述したのと同様に、強制渦による旋回流F2により遠心分離され、循環渦の流れF3により連通開口部33を通して集塵容器8内に集塵される。一方、このようにして塵埃Dの除去された清浄な空気は、ファン2を通して下流側(
図11における上方向)に送り込まれ、筐体501に設けられた排気口502から排出される。
【0080】
ここで、フードカバー3内部において塵挨Dにかかる旋回流F2の遠心力は、塵挨Dの自重に反比例する。よって、本実施例の様に吸気開口部32が下方に位置し、排気開口部26が上方に位置するようにエアフィルタ装置1Bを配置することで、循環流の流れF3において下方へ向かう戻り流に重力が加わることになり、比較的自重の重い塵埃Dであっても連通開口部33側へ比較的容易に導くことが可能となり、集塵効率を向上できる。
【0081】
[実施例5]
図12を参照して、図示の掃除機600は、集塵装置400と、集塵装置400が着脱可能に装着される筐体601と、集塵装置400の吸気開口部32に接続された吸気パイプ602と、を備える。筐体601の先端側には開口部601aが設けられ、この開口部601aにエアフィルタ装置1Bのハウジング21が嵌め込まれるようにして装着される。また、筐体601の基端側には複数のスリットから形成される排気口603が設けられ、筐体601の上部基端側には把持部604が設けられている。
【0082】
吸気パイプ602は、吸気開口部32からフードカバー3の外方に延出するように、吸気開口部32の周縁部に設けられている。吸気パイプ602は、上述した円筒部52(
図7)と同様に、その軸方向が吸気ファン2の回転軸24の軸方向に対して僅かに傾斜してもよく、或いは回転軸24の軸方向と平行としてもよい。なお、本実施例においては、集塵装置400が筐体601に取り付けられた状態において、吸気開口部32の中心位置Cがファン2の回転軸線より下方に偏倚し、吸気パイプ602の軸線方向が吸気開口部32から外方に向かって下方に傾斜するように構成されている。
【0083】
このように構成された掃除機600においてファン2が作動すると、外部の空気が吸気パイプ602及び吸気開口部32を介してフードカバー3の内部に導入され、このように導入された空気に含まれる塵埃Dは、上述したのと同様に、強制渦による旋回流F2により遠心分離され、循環渦の流れF3により連通開口部33を通して集塵容器8内に集塵される。一方、このようにして塵埃Dの除去された清浄な空気は、ファン2を通して下流側に送り込まれ、筐体601に設けられた排気口603から排出される。
【0084】
以上、本発明の実施形態に係るエアフィルタ装置及び集塵装置について添付の図面を参照して説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されず、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【0085】
例えば、上記各実施形態においては、旋回流形成補助突部4及び/又はブレード25Aを用いたが、これら旋回流形成補助突部4及び/又はブレード25Aを省略しても良い。旋回流形成補助突部4及び/又はブレード25Aを用いなくても、ファン2,2Aの回転により上述のような強制渦の旋回流F2を形成することができ、旋回流F2により遠心分離された塵埃Dを循環渦の流れF3を通じて外部へ排出させることができる。
【0086】
また、
図1及び
図7に示すエアフィルタ装置1にブレード25Aを設けても良く、
図8に示すエアフィルタ装置1Aに
図1に示す様なブレード25を設けても良い。
【0087】
上記実施形態においては、略矩形状に形成されたブレード25Aを複数個用いたが、本発明はこれに限定されず、ブレード25Aは、例えば
図13(a)に示す様に三角形状であってもよく(ブレード25A’)、或いは
図13(b)に示す様に鉤型であってもよい(ブレード25A”)。また、ブレード25Aの個数は複数である必要はなく、例えば
図13(a)に示す様に1個のみ設けても良い。
【0088】
また、各実施形態において、
図14に示す様に、フードカバー3の吸気開口部32の周縁部に筒状部36を設けても良い。筒状部36は基端側(フードカバー3の内方)に延出し、所定方向Xにおける筒状部36の基端側に規定された開口部37は、ファン2(2A)よりも先端側に位置すると共に、所定方向Xにおいてファン2(2A)の羽根車22(22A)と対向する。筒状部36の軸方向Bは回転軸24の軸方向に対して僅かに傾斜してもよく、或いは平行としても良い。このような筒状部36を設けることにより、はく離流域Sをより効率良く形成することができる。
【0089】
また、上記実施形態においては、ファン2として軸流ファンを用いたが、これに代えて遠心型ファンを用いてもよい。この場合、円筒領域Rの横断面積は遠心型ファンの横断面積と等しい。
【0090】
更に、エアフィルタ装置1,1A,1Bにフィルタを設けることもできる。フィルタの設置位置としては、ブレード25の下流側、ブレード25Aの下流側、又はブレード25とブレード25Aの間とすることができる。このようにフィルタを設けることにより、虫等の侵入を防止することができると共に、フィルタが整流体としての機能を果たす。