特許第6240835号(P6240835)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6240835
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】装飾板、扉およびテーブル
(51)【国際特許分類】
   B44C 3/02 20060101AFI20171127BHJP
【FI】
   B44C3/02 A
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-81033(P2017-81033)
(22)【出願日】2017年4月17日
【審査請求日】2017年4月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517135497
【氏名又は名称】株式会社VeroMetal Japan
(74)【代理人】
【識別番号】100143111
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 秀夫
(74)【代理人】
【識別番号】100189876
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 将晴
(72)【発明者】
【氏名】山田 実
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−161471(JP,A)
【文献】 実開昭56−108597(JP,U)
【文献】 実開昭55−126417(JP,U)
【文献】 特開昭56−2200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B44C 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質板を基材とし、前記基材の表面に塗装層を有する装飾板であって、
前記塗装層は、複数の金属塗装層と漆塗装層との中から選択された、少なくとも一つの金属塗装層を含み、
前記金属塗装層は、表層側に位置する金属塗膜層と前記基材側に位置する揮発硬化型の樹脂膜層とを有し、
前記金属塗膜層が、シリカ成分を含まず、少なくとも95重量%の金属成分を含むと共に膜厚が120μm以上3.0mm以下とされ、
前記基材に接している前記樹脂膜層が前記基材との接着層をなし、
露出された前記金属塗膜層は、その形成されている位置に応じて色相が変化された状態とされ、色相が変化された各々の位置において光り輝いた状態とされている、
ことを特徴とする装飾板。
【請求項2】
前記金属塗膜層は、銅、錫、亜鉛、銀、鉄、ニッケル、アルミニウム、マグネシウム、チタニウム、クロム、モリブデン、マンガン、バナジウムの中から選択された少なくとも1つの金属成分を含み、
前記金属成分の平均粒径が10μm以上20μm以下の粒子からなっている、
ことを特徴とする請求項1に記載の装飾板。
【請求項3】
前記位置に応じて色相が変化された状態は、一つの金属成分の酸化膜の膜厚に応じて、前記金属塗膜層の表面で反射された光の波長が異なることにより発生されている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の装飾板。
【請求項4】
前記位置に応じて色相が変化された状態は、請求項1に記載の塗装層をなす金属塗装層同士が並んでいる境界、又は前記漆塗装層と前記金属塗装層とが並んでいる境界において、前記境界を挟んだ各々の塗装層の表面で反射される光の波長が異なることにより発生されている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の装飾板。
【請求項5】
前記位置に応じて色相が変化された状態は、請求項1に記載の塗装層をなす金属塗装層又は漆塗装層の中のいずれかが起伏を有することにより、
前記塗装層の表面の起伏に応じて、光が異なる方向に反射されることにより発生されている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の装飾板。
【請求項6】
漆塗装層を含み、前記漆塗装層には、少なくとも朱色漆と黒色漆のいずれかが含まれ、前記漆塗装層が、前記基材に塗装されている、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の装飾板。
【請求項7】
漆塗装層を含み、前記漆塗装層には、少なくとも朱色漆と黒色漆のいずれかが含まれ、前記漆塗装層が、起伏を有するように塗装された金属塗装層に塗装されている、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の装飾板。
【請求項8】
扉であって、扉本体の面板が木質合板からなり、
前記扉本体の面板が、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の装飾板とされている、
ことを特徴とする扉。
【請求項9】
テーブルであって、前記テーブルの天板が無垢木材又は木質合板からなり、
前記天板が、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の装飾板とされている、
ことを特徴とするテーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属成分を含有し、剥落又は損傷しにくい塗装層(以下、金属塗装層という。)を備えた、高い装飾性を有する装飾板に関する。具体的には、金属成分が95重量%以上とされた複数の種類の金属塗装層と漆塗装層との中から選択された一つの金属塗装層を含み、全体が研磨されて、色相が変化された状態で光り輝き、主として建物の扉本体又はテーブルの天板に使用される木質材を基材とした装飾板に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅の玄関ドア等は、高級な質感と耐久性が求められるために、主として金属製の扉が使用されている。高級な扉は、扉本体に凸凹を形成させて陰影をつけると共に、黄銅、青銅、化粧フィルム等により、一部分が経年変化したように色相を変化させて、高い装飾性が付与されている。同様に、宿泊施設の客室のドア等も、高級な質感と廊下からの遮音性が求められているために、主として金属性の扉が使用されている。
【0003】
金属製の扉は、高い装飾性を備えさせやすく、耐久性と遮音性を有している半面、重量が重く、幼児、女性や高齢者等にとっては開閉が容易ではないという課題があった。また、金属製の扉に塗装をした場合には、人や物の出入りの際に、塗装層が傷つき易く、高級な質感を維持するために手間がかかるという課題があった。
【0004】
従来から、金属の質感および色を有する装飾材を提供することを課題として、建材に金属成分を含有した塗装をする多くの技術が開示されている。特許文献1には、表面硬度を向上させると共に難燃性を備えさせるために、金属粉とガラスパウダーを含んだ金属塗料粉末と、結合剤とを有する水溶性金属含有塗料組成物からなる金属塗装層を、壁等の基材の表面に形成させる技術が開示されている。
【0005】
この技術によれば、ガラスパウダーの添加効果により表面の耐摩耗性が上昇して硬度が高まり、摩耗による損傷等が防止されると共に、メラミン系難燃剤の添加により発熱時に窒素ガスが発生され、難燃性が向上するとされている。しかし、特許文献1に記載の技術によるだけでは、表面の耐摩耗性を向上させ、難燃性を付与することができても、色調が単調となり、高い装飾性を付与することができないという課題があった。
【0006】
また、金属塗装の表面を硬化させたガラスパウダーは、塗装表面の摩耗を防止できる反面、例えば扉の開閉の際、扉が物に衝突した際等のように、金属塗装層に大きな衝撃力が瞬間的に加わった場合には、ガラスパウダーを含んだ金属塗装層に、ひび割れや剥離を発生させる可能性があった。また、ひび割れた金属塗装層は、修復することが困難であるという課題があった。
【0007】
特許文献2には、金属自体が醸し出す独特な風合いや、時の経過による風合いの変貌を表現できるメタリック調塗布層、メタリック調シートおよび化粧板に関する技術が開示されている。特許文献2に記載の技術によれば、金属微粉末とワニス樹脂等を含んだ塗料を基材に塗布させ、乾燥後の塗布層の金属成分の含有割合が90重量%以上とされている。そして、部分ごとに研磨の程度を変えることにより、特定部位を強調することができるとされている。
【0008】
しかし、特許文献2の技術による、一種類の金属塗装層を形成させるだけの技術によれば、装飾性を高くするには、部分毎に研磨作業を工夫して、輝きの程度・艶の程度を変化させることが必要であった。この技術によれば、熟練作業員の技能が必要であり、手間がかかる上に、研磨を少なくした部分は輝きが鈍くなり、装飾板の表面を複数の色相を有し光り輝いた状態とし、高い装飾性のあるものとすることはできないという課題があった。
【0009】
特許文献3には、仕上げ面が模様塗料により凸凹多色模様とされ、意匠性に富んだ外観とされた多色模様の塗膜形成方法に関する技術が開示されている。この技術によれば、基材表面に、着色塗料を用いて凸部を有する下塗り塗膜を形成させ、次いで下塗り塗膜と色調の異なる着色塗料を用いて、下塗り塗膜の凸部が認識できるように上塗り塗膜を形成させる。そして上塗り塗膜が流動状態であるうちに、上塗り塗膜の凸部を擦ることにより、下塗り塗膜の凸部の色が視認できるようにさせている。
【0010】
しかし、特許文献3の技術によれば、上塗り塗膜が流動状態であるうちに、上塗り塗膜の凸部を擦ることが必要であった。上塗り塗膜が流動状態であるうちに、上塗り塗膜の凸部をサンドペーパー等の研磨面で擦ると、研磨面が塗剤で埋まってしまう。そうするとサンドペーパー等を使うことはできず、コテ、ヘラ、刷毛等を使って凸部を擦ることが必要であり、下塗り塗膜の凸部を装飾性が高く表現することは困難であった。
【0011】
また、塗料の中に含まれる樹脂成分の割合が7割以上と高いため、上塗り塗膜が硬化してから、サンドペーパーやスチールウール等で擦ると、上塗り塗膜を削り過ぎることになり、意図した模様を表現しにくく、この技術によっても高い装飾性を有する装飾板を提供することが困難であるという課題があった。
【0012】
また、日本には漆塗装をし、耐久性を高めると共に装飾性を高くする伝統工芸技術がある。しかし従来は、金属素材に漆塗装層を形成させる主な目的は防錆であったため、金属素材に対しては漆特有の質感が表現されていなかった。金属素材に形成させた漆塗装層に漆特有の質感を表現しようとすると、漆塗装層の膜厚を厚くする必要があり、そうすると金属粉を混入させた漆塗料を焼き付ける必要があった。
【0013】
しかし、漆塗料に金属粉を均一に混入させることが困難であったため、金属粉を混入させた漆塗料に応じて、塗り回数を変える等する必要があり、金属素材と漆塗装層との付着性を高くすることは困難であり、金属素材に漆特有の質感を表現するには手間がかかっていた。
【0014】
そこで、特許文献4には、金属素材に塗装させた漆塗装層が厚膜であっても、その剥離強度を高くさせる技術が開示されている。この技術によれば、金属素材に塗装させた厚膜の漆塗装層の剥離強度を高くするために、下塗りの漆塗装層を高温で焼き付けておいた上で、上塗りの漆塗装層も高温で焼き付けるとされている。これにより、金属素材と漆塗装層との剥離強度が向上されるとしている。
【0015】
特許文献4に記載の技術による場合には、下塗り層、上塗り層のいずれの漆塗装層も100℃以上から300℃以下の高温で焼き付ける必要があった。そうすると、木質素材に起伏のある漆塗装層を形成させようとすると、炭化等により木質素材が変質することを避けるため、この技術を適用することはできなかった。木質素材に、起伏のある装飾性の高い漆塗装層を形成させるためには、予めパテで下地の起伏を作っておいてから、漆塗装を塗り重ねるという従来技術による必要があり、非常に手間がかかるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2006-289942号公報
【特許文献2】特開2014-91323号公報
【特許文献3】特開2002-320913号公報
【特許文献4】特開2006−150728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
そこで、本願の発明者は、金属成分を含有し、剥落又は損傷しにくい金属塗装層を備えた、高い装飾性を有する装飾板を提供することを課題とした。詳細には、金属成分が95重量%以上とされた複数の金属塗装層と漆塗装層との中から選択された一つの金属塗装層を含み、全体が研磨されて、色相が変化された状態で光り輝き、主として建物の扉本体又はテーブルの天板に使用される、木質材を基材とした装飾板を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第1の発明は、木質板を基材とし、前記基材の表面に塗装層を有する装飾板であって、前記塗装層は、複数の金属塗装層と漆塗装層との中から選択された、少なくとも一つの金属塗装層を含み、前記金属塗装層は、表層側に位置する金属塗膜層と前記基材側に位置する揮発硬化型の樹脂膜層とを有し、前記金属塗膜層が、シリカ成分を含まず、少なくとも95重量%の金属成分を含むと共に、膜厚が120μm以上3.0mm以下とされ、前記基材に接している前記樹脂膜層が前記基材との接着層をなし、露出された前記金属塗膜層は、その形成されている位置に応じて色相が変化された状態とされ、色相が変化された各々の位置において光り輝いた状態とされていることを特徴としている。
【0019】
本発明の金属塗装層は、木質板を基材として、微粉末とされた金属成分を含んだ塗料を塗布して乾燥させた状態で、基材側から、順に樹脂膜層、金属塗膜層、樹脂膜層の状態となる。繊維径の異なる複数のスチールウールを使って、この外方側の樹脂膜層を少しずつ取り除いて、更に研磨剤を塗ったバフ等により研磨させて、金属塗膜層の表面を光り輝いた状態とさせる。
【0020】
ここで金属塗装層を形成させる金属成分含有塗料(以下、金属塗料という。)が乾燥するまでの作用を説明すると、金属塗料が塗布されると、金属塗料の成分をなしていた樹脂の一部が、基材に金属塗膜層を接着させる接着層、又は基材側の金属塗膜層に重ねた金属塗膜層を接着させる接着層をなす樹脂膜層とされる。そして、金属塗料の成分をなす微粉末の金属粉は、前記樹脂膜層の上に沈下するように重なって、樹脂により結合された金属塗膜層となる。そして、金属塗料に含まれていた大部分の樹脂が浮上するようにして、外方側の樹脂膜層をなす。
【0021】
複層に重ねられた金属塗装層の各々の一部を露出させる場合には、基材側金属塗装層の外方側の樹脂膜層が乾燥してから、その樹脂を削りとって基材側金属塗膜層の表面を粗面としてから、外方側金属塗装層を塗装すると好適である。そうすると、基材側金属塗膜層に重ねた金属塗膜層が接着されて、2つの金属塗装層が一体となる。
【0022】
金属塗装層の上に漆塗装層を塗装する場合には、基材側金属塗膜層の金属粉を結合させている樹脂と漆塗装層が一体となる。また、漆塗装層の上に金属塗装層を塗装する場合には、金属塗装層の基材側の樹脂が、漆塗装層に接着する接着層となり、漆塗装層と金属塗装層が一体となる。そして、各々の塗装層が乾燥してから、露出させた各々の塗装層の表面を研磨するようにする。いずれの塗装層の境界においても、各々の接する塗装層が一体となっているため、塗装層同士が剥離されることがない。また、シリカ成分を含んでいないため、ガラス層が形成されず、衝撃力を受けても塗装層にひび割れが発生しない。
【0023】
金属塗膜層に占める金属成分の割合は95重量%以上とされ、金属とほぼ同じ性質であるため表面が傷つきにくく、金属塗膜層の表面が光を反射する波長も金属とほぼ同一となる。金属塗装層の表面を研磨させて、金属塗膜層が形成されている位置に応じて色相が変化される状態とする方法は、下記の方法のいずれかとすればよい。
【0024】
第1の方法は、金属塗膜層を斑に酸化させて、酸化膜の膜厚を予め変えておき、研磨した後の残された酸化膜の膜厚を変えることにより、反射された光に濃淡が表れるようにし、色相を変化させる方法である。第2の方法は、塗装層をなす金属塗装層及び漆塗装層の中から選択された複数の塗装層のいずれもが露出されるように並ばせ、その境界を挟んで、塗装層の成分の違いにより反射される光の波長が異なるようにさせる方法である。
【0025】
第3の方法は、塗装層をなす金属塗装層及び漆塗装層の中のいずれかに起伏を形成させ、前記塗装層の表面に起伏があることにより、入射した光を異なった方向に反射させるようにする方法である。これらの方法を併用してもよいことは勿論のことである。金属塗膜層の膜厚が120μm以上であるため金属の質感を表現できると共に、3mm以下の膜厚であるため乾燥に長時間を要することなく、色相が変化された状態を高い装飾性に富んだものとすることができる。
【0026】
第1の発明によれば、金属塗装層を含めた塗装層の全体が研磨されることにより、露出された金属塗装層が形成されている位置に応じて色相が変化された状態とされ、色相が変化された各々の位置において光り輝いた状態とされて、装飾性が高いと共に、塗装層が損傷されにくく軽量で取り扱いやすい装飾板となるという有利な効果を奏する。
【0027】
本発明の第2の発明は、第1の発明の装飾板において、前記金属塗膜層は、銅、錫、亜鉛、銀、鉄、ニッケル、アルミニウム、マグネシウム、チタニウム、クロム、モリブデン、マンガン、バナジウムの中から選択された少なくとも1つの金属成分を含み、前記金属成分の平均粒径が10μm以上20μm以下の粒子からなっていることを特徴としている。
【0028】
金属塗膜層は、前記の多くの金属の中から選択された1つ又は複数の金属成分を含んで形成されている。金属成分を一つの金属によるものとすれば、その金属の地色を活かした色相とすることができ、複数の金属を混合させれば合金の金属の色相とすることができる。また、金属成分の平均粒径が10μm以上20μm以下であるため、スチールウールやバフ等で研磨した場合に、金属粉は樹脂に固められた状態で、金属粒子の表側の一部が研磨され、金属色を活かした色相で光り輝いた状態とされる。
【0029】
例えば、銅を主成分として亜鉛を混合させれば青銅の色相とすることができる。また銅の割合を増加させて、亜鉛の割合を減少させることにより、青銅がやや腐蝕したような色相とすることができる。第2の発明によれば、多くの金属成分の中から、金属成分を選択して混合させることにより、選択した金属成分に応じた様々な色相が表現できる。
【0030】
また、主成分をなす金属と酸化しにくい金属とを、混合割合を変えて混合させて2種類の金属塗料を作り、2種類の金属塗料を使って、並んで露出するように塗装した部分を酸化させた場合には、その酸化の程度の違いにより、並んだ部分の色相が異なることになる。そうすると微妙な色相の違いを表現することができる。
【0031】
本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明の装飾板において、前記位置に応じて色相が変化された状態は、一つの金属成分の酸化膜の膜厚に応じて、前記金属塗膜層の表面で反射された光の波長が異なることにより発生されていることを特徴としている。
【0032】
一つの金属成分の酸化膜の膜厚に応じて、位置に応じて色相が変化された状態とする方法は、金属塗膜層の一部を酸化させて、酸化させた部分と酸化させていない部分とを一体に研磨すればよい。酸の強さ、酸に接触している時間を変えて、酸化の程度を変え、金属塗膜層に不均一な厚さの酸化膜を形成させる。そうすると、酸化されていない部分は金属自体の色となり、酸化膜が厚い部分は錆色となり、酸化膜が薄い厚さの部分はその厚さに応じて、金属自体の色と錆色との間の色となる。
【0033】
そして、その表面を、一体に研磨すれば、酸化させていない部分は金属自体の固有の波長の光を反射し、換言すれば金属自体の色となり、酸化させた部分は酸化された金属に固有の波長の光を反射し、換言すれば錆色となり、酸化膜の膜厚に応じて色相が異なった状態となり、位置に応じて色相が変化された状態となる。
【0034】
本発明の第4の発明は、第1又は第2の発明の装飾板において、前記位置に応じて色相が変化された状態は、第1の発明の塗装層をなす金属塗装層同士が並んでいる境界、又は前記漆塗装層と前記金属塗装層とが並んでいる境界において、前記境界を挟んだ各々の塗装層の表面で反射される光の波長が異なることにより発生されていることを特徴としている。
【0035】
境界を挟んだ各々の塗装層の表面で反射される光の波長が異なるようにさせる方法は、複数の金属塗装層だけを並べてもよく、漆塗装層を含めて並べてもよい。第4の発明によれば、複数の金属自体の固有の色又は漆の色が入り混じった状態に、色相が変化された状態とされ、複雑な模様を表現させることができ、装飾模様を精緻に変化させた、より装飾性の高い装飾板とすることができる。
【0036】
本発明の第5の発明は、第1又は第2の発明の装飾板において、前記位置に応じて色相が変化された状態は、第1の発明の塗装層をなす金属塗装層又は漆塗装層の中のいずれかが起伏を有することにより、前記塗装層の表面の起伏に応じて、光が異なる方向に反射されることにより発生されていることを特徴としている。第5の発明によれば、塗装層の表面の起伏に応じて、光が異なる方向に反射されることにより、色相と共に色調も変化される装飾板とすることができる。
【0037】
起伏を有する塗装層は、金属塗装層であってもよく、漆塗装層であってもよい。金属塗装層は、金属塗料を混合させる際に、結合用塗料の粘度を変えることにより、金属塗料自体の粘度を変えて、金属塗膜層に容易に起伏を形成させることができる。また、漆塗装層を起伏させるには、生漆といわれる漆の原液に砥の粉、小麦粉を練り合わせてパテとして、予め起伏をつけておけばよい。
【0038】
本発明の第6の発明は、第1から第5の発明の装飾板において、漆塗装層を含み、前記漆塗装層には、少なくとも朱色漆と黒色漆のいずれかが含まれ、前記漆塗装層が、前記基材に塗装されていることを特徴としている。第6の発明によれば、木質の基材に直接に漆塗装層を形成させている。伝統工芸に秀でた漆職人により木質の基材に優れた模様を形成させ、それに金属塗装層を重ねることにより、上品で奥ゆかしい漆の美観が際立ち、工芸品とできる程の、非常に高い装飾性を付与させた装飾板とすることができる。
【0039】
本発明の第7の発明は、第1から第5の発明の装飾板において、漆塗装層を含み、前記漆塗装層には、少なくとも朱色漆と黒色漆のいずれかが含まれ、前記漆塗装層が、起伏を有するように塗装された金属塗装層に塗装されていることを特徴としている。
【0040】
金属塗装層は、金属塗料に含まれている結合用塗料の粘度を変えることにより、金属塗料自体の粘度を変えて、金属塗装層に容易に起伏を形成させることができ、熟練した技能を必要としない。起伏を形成させた金属塗装層の上に漆塗料を塗っても、外方側の金属塗装層と漆塗装層とが一体化し、剥離しにくい状態とされる。第7の発明によれば、起伏を有した漆塗装層と金属塗膜層が並び、漆の美観が際立った質感を有する、高い装飾性を付与させた装飾板を容易に製造することができる。
【0041】
本発明の第8の発明は、扉であって、扉本体の面板が木質合板からなり、前記扉本体の面板が第1から第7の発明の装飾板とされていることを特徴としている。金属と比較して軽量な木質素材を使い、幼児、女性や高齢者等でも開閉し易い、金属の質感を有する、高い装飾性を有する扉となるという有利な効果を奏する。
【0042】
本発明の第9の発明は、テーブルであって、前記テーブルの天板が無垢木材又は木質合板からなり、前記天板が第1から第7の発明の装飾板とされていることを特徴としている。金属の質感を有すると共に高い装飾性のある塗装層を備えたテーブルの天板であっても、物を落下させる等により衝撃を加えても、塗装層自体に割れが発生されることがなく、金属の質感を有する、耐久性のある装飾性の高いテーブルとなる。
【発明の効果】
【0043】
・本発明の第1の発明によれば、露出された金属塗装層が形成されている位置に応じて色相が変化された状態とされ、色相が変化された各々の位置において光り輝いた状態とされて、装飾性が高いと共に、塗装層が損傷されにくく軽量で取り扱いやすい装飾板となるという有利な効果を奏する。
・本発明の第2の発明によれば、多くの金属成分の中から、金属を選択して混合させることにより、様々な色相が表現できる。
・本発明の第3の発明によれば、酸化膜の膜厚に応じて色相が異なった状態となり、位置に応じて色相が変化された状態となる。
【0044】
・本発明の第4の発明によれば、複数の金属自体の固有の色又は漆の色が入り混じった状態に、色相が変化された状態とされ、複雑な模様を表現させることができ、装飾模様を精緻に変化させた、より装飾性の高い装飾板とすることができる。
・本発明の第5の発明によれば、塗装層の表面の起伏に応じて、光が異なる方向に反射されることにより、色相と共に色調も変化される装飾板とすることができる。
・本発明の第6の発明によれば、上品で奥ゆかしい漆の美観が際立ち、工芸品とできる程の、非常に高い装飾性を付与させた装飾板とすることができる。
【0045】
・本発明の第7の発明によれば、起伏を有した漆塗装層と金属塗膜層が並び、漆の美観が際立った質感を有する、高い装飾性を付与させた装飾板を容易に製造することができる。
・本発明の第8の発明によれば、幼児、女性や高齢者等でも開閉し易い、金属の質感を有する、高い装飾性を有する扉となるという有利な効果を奏する。
・本発明の第9の発明によれば、物を落下させる等により衝撃を加えても、塗装層自体に割れが発生されることがなく、金属の質感を有する、耐久性のある装飾性の高いテーブルとなる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】正面図(実施例1)。
図2】正面図(実施例2)。
図3】正面図(実施例3)。
図4】正面図(実施例4)。
図5】正面図(実施例5)。
図6】装飾板の使用態様を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明の装飾板は、木製合板を基材として、金属成分が95重量%以上の複数の金属塗装層と漆塗装層との中から、少なくとも一つの金属塗装層を含んだ塗装層を形成させることにより、装飾性が高いと共に、塗膜の表面がひび割れることがない耐久性が高い装飾板とした。
【0048】
まず、本発明の金属塗膜層をなす金属塗料を説明する。本発明の金属塗料は、銅、錫、亜鉛、銀、鉄、ニッケル、アルミニウム、マグネシウム、チタニウム、クロム、モリブデン、マンガン、バナジウムの中から金属成分が選択されて金属色が表現される。例えば、銅色を表現する場合には、金属成分は銅100重量%の金属粉とされる。
【0049】
青銅色を表現する場合には、金属成分は銅52重量%、錫4重量%、亜鉛40重量%、銀4重量%の混合粉末とされる。同じ青銅色でも、経年変化をした青銅色を表現する場合には、銅の割合を増やし、銅55重量%、錫4重量%、亜鉛36重量%、銀5重量%の混合粉末とされ、白っぽい青銅色を表現する場合には、銅の割合を減らし、銅40重量%、錫5重量%、亜鉛49重量%、銀5重量%とし、アルミニウム1重量%が混合された混合粉末とされる。
【0050】
主要な金属を同一としながらも、その割合を変え、また適宜他の金属が混合されることにより、僅かな色違いの金属色を表現することができる。各々の金属は微粉末の状態とされ、その粒径は約10μmから20μmとされている。塗装される前に、金属粉は、以下に示す結合用塗料、硬化用塗料と均一に混合されて、金属成分を含んだ塗料とされる。
【0051】
結合用塗料としては、ポリマーとしてスチレン33重量%、溶剤としてトルエン2重量%、脂肪酸コバルト塩2重量%、テレフタル酸ジメチル3重量%、ポリエチレングリコール60重量%を含んだポリエチレングリコール溶液が使用される。硬化用塗料としては、フタル酸ジメチル40重量%、メチルエチルケトンペルオキシド32重量%、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール ジイソブチラート25重量%、過酸化水素1重量%、メチルエチルケトン0.5重量%、水1.5重量%を混合させた混合粘性体が使用される。結合用塗料と硬化用塗料の95重量%は、揮発又は削りとられて金属塗装層から除去される。
【0052】
上記の混合割合は、最も好適な割合に過ぎず、塗布する方法に応じて粘度を変えるように、組成割合を変更して使用してもよいことは勿論のことである。本発明の金属塗料は、金属粉、結合用塗料、硬化用塗料のいずれにもガラスパウダーをなすシリカ成分を含んでいないため、塗料が硬化した状態で、表面にガラス皮膜が形成されることはなく、硬い物が衝突してもガラスがひび割れたような傷跡がつかない。
【0053】
金属塗料として混合するには、金属粉に結合用塗料を混合させて攪拌し、その後硬化用塗料を混合するようにする。表現する金属色に応じて、金属塗料に占める金属粉と結合用塗料と硬化用塗料の混合割合の重量比は、例えば青銅色とする場合には75:25:0.5、アルミニウム色とする場合には50:50:1、銅色とする場合には60:40:0.8、ステンレス色とする場合には67:33:0.7となるように混合させる。混合された結合用塗料と硬化用塗料の95重量%は金属塗装層から除去されるため、金属塗膜層に占める金属成分は95重量%以上とされる。
【0054】
金属塗料の粘性は、粘度2〜20Pa・sの低粘度とされるが、塗装方法により変更されればよい。例えば、平坦な塗装面となるように塗装するには、約2Pa・sの低い粘度とし、スプレーガンにより塗装することが好適である。この場合には金属塗膜層の厚さは約120μmとされる。
【0055】
一方、金属塗膜層に起伏を形成させる場合には、粘度を約20Pa・sとし、スポンジの表面に金属塗料を押し付けて金属塗料を吸い込ませて、スポンジを基材の上に押し付けるように塗ればよい。またリブを有するローラに金属塗料を吸い込ませて、基材に筋を付けるように塗布してもよい。ローラやスポンジを使って膜厚が厚い金属塗膜層を形成させる場合には、0.5mmから3mmの膜厚とすることもでき、容易に起伏をつけることができる。
【0056】
金属塗装をしてから、常温20℃で24時間経過すると金属塗装層は完全に乾燥し、金属塗膜層も硬化し、研磨しても樹脂と混ざらない状態となる。工程を短縮するためには、60℃の環境で1時間乾燥させても、前記と同様の乾燥状態とさせることができる。金属塗装層を完全に乾燥させた状態で、繊維中心径の太さが♯220(以下#は番手を示す)から♯800までの細径のスチールウールを使って、表面の樹脂膜層を削りとりながら、金属塗膜層の表面を磨き上げるようにする。
【0057】
樹脂膜層の表面硬度は5Hであり、金属塗膜層の表面硬度は樹脂膜層よりも硬い6Hであるため、樹脂膜層だけが削りとられて、金属塗膜層の表面が露出されて磨かれた状態となる。そして、更に♯1300のスチールウールを使って、金属塗膜層の素地を整えてから、布材に研磨剤を付けて、バフ研磨加工処理をし、金属塗膜層の表面を光り輝いた状態とさせる。以下、順に実施例1から実施例5までの金属塗装がされた装飾板について説明する。
【実施例1】
【0058】
実施例1では、部分的に濃淡を有する状態で光り輝く装飾板1を、図1を参照して説明する。図1は、扉をなす装飾板の表面部分の一部拡大写真を示している。装飾板1は、木質合板の上に青銅色をなす金属塗膜層を形成させ、金属塗膜層の表面の酸化程度を異ならせ、酸化膜の厚さが斑となるように酸化させて、その酸化膜を研磨することにより、残った酸化膜の厚さに変化をもたせて、色相が異なるように、全体が光り輝く装飾板1としている。
【0059】
装飾板1は木質合板を基材とし、青銅色をなす金属塗装層が形成されている。金属塗料に含まれる金属成分とその割合は、銅52重量%、錫4重量%、亜鉛40重量%、銀4重量%の混合粉末とされている。結合用塗料と、硬化用塗料は、前記のものを使用している。以下の実施例についても同様である。
【0060】
まず、金属成分をなす金属粉、結合用塗料、硬化用塗料を、室温20℃の常温で、約5Pa・sの粘度となるように、均一な状態となるように混合させた。そして、ノズル口径が約1.5mmのスプレーガンを使って、基材全体に金属塗料を偏りなく吹付け塗装をした。吹付け塗装をしてから常温で24時間乾燥させて、♯220、#360、#500、#800のスチールウールを使って各約5分ずつ研磨して、金属塗装層の樹脂膜層を削りとった。
【0061】
金属塗膜層が露出された状態としてから、硝酸と二酸化セレンを主成分としている水溶液を酸化剤とし、金属塗膜層の酸化膜の厚さが斑となるように吹き付けた。前記水溶液の濃度と酸化時間は適宜調整されればよい。金属塗膜層が酸化された状態となってから、#1300のスチールウールを使って全体を研磨した。そして、研磨剤を塗布したバフで磨きあげた。酸化膜の膜厚が厚い部分10は濃度の濃い色相に、酸化膜の膜厚が薄い部分11は濃度の淡い色相とさせ、酸化膜が斑となっている位置に応じて色相が変化された状態とし、各々の位置において光り輝いた状態とさせた。
【実施例2】
【0062】
実施例2では、木質合板の上に、3種類の金属塗膜層が、各々の素地の色を有して光り輝くようにされた装飾板2を、図2を参照して説明する。図2は、テーブルの天板をなす装飾板の表面部分の一部拡大写真を示している。装飾板2は、木質合板の上に、真鍮色と、銅色と、鉄色をなす3種類の金属塗料を、各金属塗料の粘度が約20Pa・sとなるように混合し、前述のスプレーガンを使って大きな塊を落とすようにして、全体に3種類の金属色が入り混じり、小さな凸凹20ができるように塗装した。真鍮色の金属塗料の金属成分とその重量比は、銅54重量%、錫5重量%、亜鉛36重量%、銀5重量%とした。
【0063】
各塗装層は、約60℃の乾燥炉で30分から1時間乾燥させている。各金属塗装層を、表面に凸凹を有する状態とし、夫々その表面を♯220、#360、#500、#800のスチールウールで研磨して樹脂膜層を削りとってから、順に上の金属塗装層を塗装している。3層の金属塗装層が形成されてから、#1300のスチールウールで研磨し、その装飾状態が変色しないようにクリアコートを塗装した。なお、酸化処理はしていない。
【0064】
実施例2の装飾板は、酸化処理はされていないため、銅色をなす金属塗膜層21、真鍮色をなす金属塗膜層22、鉄色をなす金属塗膜層23の金属色の境界が判別できる状態となり、小さな斑模様が全体に形成されている高い装飾性を有する、光り輝いた装飾板とされている。なお、金属塗膜層の境界をなす凹部の一部に研磨できない部分が残っていても、高い装飾性は損なわれない。
【実施例3】
【0065】
実施例3では、木質合板の上に形成させた黒漆の漆塗装層の上に、1種類の金属塗膜層により筋をなして流れたような模様を表現した装飾板3を、図3を参照して説明する。図3は、装飾板の表面部分の一部拡大写真を示している。まず、木質合板の上に、従来の漆塗り工法により、約1mmの膜厚の漆塗装層を形成させる。具体的には、木質の基材に生漆を塗りこんで木地を調整する下地工程を経て、錆漆、生漆、砥の粉、水を混ぜた粘度の高い黒漆を塗り、24時間乾燥させた。
【0066】
そして、銅の金属粉を金属成分とし、粘度が約20Pa・sのマヨネーズ程度の粘性の金属塗料とした。そして、前記漆塗装層の上に、ローラを転がすようにして、ローラに吸い込ませた金属塗料により、筋を引くような模様30を形成させ、縦横に液体が筋をなして流れたような模様としてから、常温で24時間乾燥させた。
【0067】
乾燥後に、漆塗装層を傷つけないように、♯220、#360、#500のスチールウールで、順に金属塗装層の表面の樹脂膜層を取り除いてから、#800、#1300のスチールウールで、順に金属塗装層を漆塗装層と共に研磨し、金属塗膜層の上の樹脂膜層を完全に削りとった。更に研磨剤を塗ったバフにより研磨し、金属塗膜層31の表面が全体に、黒色の漆塗装層32を背景にして光り輝く装飾板とした。
【実施例4】
【0068】
実施例4では、木質合板の上に、黒色の漆により平坦な漆塗装層40を形成させてから、その上に斑となった小さな凸凹を有する金属塗装層を形成させ、金属塗装層の表面が全体に光り輝くようにされた装飾板4を、図4を参照して説明する。図4は、装飾板の表面部分の一部拡大写真を示している。
【0069】
黒色漆は、従来の漆塗り工法により木質合板に黒漆塗装をしている。まず、木質の基材に生漆を塗りこんで木地を調整する下地工程を経て、黒色の漆を塗る工程としている。黒色の漆を塗ってから24時間の乾燥時間をあけて、漆塗装層の上に真鍮色をなす金属塗装層を形成させている。真鍮色の金属塗装層41の金属成分は、実施例2と同様であるためここでは省略する。
【0070】
黒色の漆塗装層の上に、金属塗料を含ませたスポンジを押し当てて、小さな凸凹42を形成させるようにしている。金属塗装層を塗装してから24時間乾燥させて、小さな凸凹が硬化してから、♯220、#360、#500、#800、#1300のスチールウールで研磨し、その後で研磨剤を塗布したバフで凸凹の表面を研磨した。
【0071】
小さな凸凹をなす真鍮色の金属塗膜層の表面と、窪んだ状態とされている露出した黒色の漆塗装層の表面が共に研磨されて、全体が光り輝いた状態の装飾板4とされる。装飾板4において、入射した光は、漆黒の漆塗装層40を背景にして、真鍮色の金属塗装層の小さな凸凹42により乱反射されて、高い装飾性を有する状態で、光り輝くようになる。
【実施例5】
【0072】
実施例5では、木質合板の上に、ゆるやかな起伏を有する金属塗装層を形成させてから、その上に黒漆と朱漆の漆塗装層を形成させ、漆塗装面が起伏を有する状態とさせてから、更に複数の金属塗装層を塗装させ、その表面全体を研磨させた装飾板5を、図5を参照して説明する。図5は、装飾板の表面部分の一部拡大写真を示している。
【0073】
塗装層は、下方から、ゆるやかな起伏を形成させるための金属塗装層、黒色の漆塗装層50、朱色の漆塗装層51、真鍮の金属塗装層52、シルバー色の金属塗装層53が、夫々一部が重なり、一部が露出されるように塗装されている。下層の金属塗装層の外方の樹脂膜層を、♯220、#360、#500のスチールウールを使って樹脂膜層を削りとって粗面としてから、上の金属塗装層が塗装されている。各金属塗装の乾燥時間は、約60℃の乾燥炉で30分から1時間としている。シルバー色の金属塗料の金属成分とその重量比は、銅65重量%、ニッケル20重量%、亜鉛15重量%とされている。真鍮色の金属塗装層の金属成分は、実施例2と同様であるためここでは省略する。
【0074】
最上層の金属塗装層が塗装されてから24時間をあけて塗装層全体が乾燥してから、♯220、#360、#500のスチールウールを使って最外層の樹脂膜層を削りとって、#800、#1300のスチールウールで塗装層全体を研磨し、その後で研磨剤を塗布したバフで凸凹の表面を研磨した。
【0075】
(その他)
・今回開示された実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記した説明に限られず特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
・なお、上記の実施例では、具体的な扉の構成、テーブルの構成は示していないが、扉の面板60(図6(A)図参照)又はテーブルの天板61(図6(B)図参照)を除く各々の構成は、公知の部材を組み合わせて扉又はテーブルとすればよいことは勿論のことである。
【符号の説明】
【0076】
1,2,3,4,5…装飾板、
10…酸化膜の膜厚が厚い部分、11…酸化膜の膜厚が薄い部分、
20…凸凹、21…銅色をなす金属塗膜層、22…真鍮色をなす金属塗膜層、
23…鉄色をなす金属塗膜層、
30…筋を引くような模様、31…金属塗膜層、32…黒漆の漆塗装層、
40…漆塗装層、41…真鍮色の金属塗装層、42…小さな凸凹、
50…黒色の漆塗装層、51…朱色の漆塗装層、52…真鍮の金属塗装層、
53…シルバー色の金属塗装層、
60…扉の面板、61…テーブルの天板
【要約】
【課題】高い装飾性を有すると共に、金属成分を含有し、剥落又は損傷しにくい金属塗装層を備えた装飾板を提供することを課題とした。
【解決手段】複数の金属塗装層と漆塗装層との中から選択された、少なくとも一つの金属塗装層を含み、前記金属塗装層は、表層側に位置する金属塗膜層と前記基材側に位置する樹脂膜層とを有し、前記金属塗膜層が、シリカ成分を含まず、少なくとも95重量%の金属成分を含むと共に膜厚が120μm以上3.0mm以下とされ、露出された前記金属塗膜層は、その形成されている位置に応じて色相が変化された状態とされ、色相が変化された各々の位置において光り輝いた状態の装飾板とした。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6