特許第6240905号(P6240905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240905
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】パイプラインミルカーの洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   B08B 9/035 20060101AFI20171127BHJP
   A01J 7/00 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   B08B9/035
   A01J7/00
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-271720(P2013-271720)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-123441(P2015-123441A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2015年11月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000103921
【氏名又は名称】オリオン機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128794
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 庸悟
(72)【発明者】
【氏名】上條 利幸
(72)【発明者】
【氏名】宮下 芳行
(72)【発明者】
【氏名】岡谷 利幸
(72)【発明者】
【氏名】松岡 巧
【審査官】 山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−005963(JP,A)
【文献】 特開平11−346586(JP,A)
【文献】 特表2010−522324(JP,A)
【文献】 特開2013−102700(JP,A)
【文献】 特開2004−223335(JP,A)
【文献】 米国特許第04445522(US,A)
【文献】 米国特許第05167201(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 9/035
A01J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ポンプの真空圧によって作動する搾乳ユニットで搾乳したミルクを収集するために、ミルク配管が搾乳の現場となる畜舎内に巡らされ、ミルクを一時的に貯留するレシーバージャーに両端が接続された該ミルク配管の一方の端近傍に設けられた仕切弁を閉じ、該ミルク配管の一方の端側から他方の端側へ洗浄液を流す洗浄工程を行うパイプラインミルカーの洗浄方法において、
前記搾乳ユニットから前記ミルク配管に接続される流路の間に乳量計付自動離脱装置が設けられ、該乳量計付自動離脱装置に配された乳量ポット内の電気伝導度値を電気伝導度センサで検知して洗浄液の有無を判別することで、前記洗浄工程の洗浄液残水を回収する際の前記搾乳ユニットからエアーが流入する段階であって前記洗浄液残水を前記エアーと回収するエアー回収工程であることを検知する際に、
前記電気伝導度センサによって検知される前記電気伝導度値について閾値を定めておき、該閾値を一定時間以上継続して上回った場合には、前記エアーを間欠的に流入させて前記洗浄液残水を回収させる前記エアー回収工程と判断して、前記搾乳ユニットからミルクチューブを介して前記ミルク配管に連続する流路内へ、前記エアーを間欠的に流入させて前記洗浄液残水を回収させるように、該搾乳ユニットから該ミルク配管に接続されるまでの流路に配された開閉弁を開閉操作させることを特徴とするパイプラインミルカーの洗浄方法。
【請求項2】
前記開閉弁が前記搾乳ユニットのミルククローに設けられたダイヤフラム弁であって、該ダイヤフラム弁の開閉操作により、該搾乳ユニットから前記ミルク配管への間欠的なエアー流入を制御することを特徴とする請求項1記載のパイプラインミルカーの洗浄方法。
【請求項3】
前記開閉弁が前記ミルクチューブに設けられたダイヤフラム弁であって、該ダイヤフラム弁の開閉操作により、該搾乳ユニットから前記ミルク配管への間欠的なエアー流入を制御することを特徴とする請求項1記載のパイプラインミルカーの洗浄方法。
【請求項4】
複数の前記搾乳ユニットを複数のグループに分け、該グループごとに前記開閉弁の開閉操作を行うことにより、前記ミルク配管へのエアーの流入を抑制するように制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のパイプラインミルカーの洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搾乳ユニットで搾乳したミルクを収集するために、搾乳の現場となる畜舎内に巡らされて両端がミルクを一時的に貯留するレシーバージャーに接続されたミルク配管を備える真空配管式搾乳機(パイプラインミルカー)の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パイプラインミルカーは、例えば図1に示すように、畜舎(乳牛の場合は牛舎90)内に一対の真空ライン(ミルク配管30、真空配管40)が配設され、このミルク配管30及び真空配管40に、ディストリビューションタンク51を介して真空ポンプ50が接続されて真空圧が供給される。一対の真空ライン(ミルク配管30、真空配管40)内の圧力は、真空圧調整器41などにより、所定の一定圧に調整されて、ミルク配管30が例えば50kPa前後と、真空配管40が例えば50kPa前後とになる。なお、ミルク配管30は、レシーバージャー32、真空接続配管39、液体と空気を分離するサニタリートラップ38及び真空接続配管49を介して真空配管40の本管を経由し、さらにディストリビューションタンク51を介して真空ポンプ50に接続されている。また、レシーバージャー32は、処理室80に、真空ポンプ50及びディストリビューションタンク51などは、処理室80とは別に設けられた機械室に設置されている。
【0003】
15はミルクチューブであって、搾乳ユニット10で搾った牛乳などを乳量計付自動離脱装置20へ送るように接続されている。30aは洗浄用のミルク配管であって、ミルク配管30から分岐されて設けられ、処理室80に設置されている。40aは洗浄用の真空配管であって、真空配管40から分岐されて設けられ、洗浄用のミルク配管30aに併設されている。31は洗浄タップであって、乳量計付自動離脱装置20から延びるミルク配管接続用のミルクチューブ17及び真空チューブ(図示せず)のそれぞれが、対応する洗浄用のミルク配管30a及び洗浄用の真空配管40aのそれぞれに着脱可能に接続されるように設けられている。
【0004】
牛舎90内には、乳量計付自動離脱装置20から延びるミルク配管接続用のミルクチューブ17および真空チューブ(図示せず)が着脱可能に接続されるように、搾乳用タップ(図示せず)が一対の真空ライン(ミルク配管30、真空配管40)について設けられている。ティ−トカップ12やミルククロー11(図2参照)を構成要素とする搾乳ユニット10が搾ったミルクは、ミルククロー11で生じる真空圧と大気圧との差圧により、ミルクチューブ15、乳量計付自動離脱装置20及びミルク配管接続用のミルクチューブ17を介してミルク配管30に輸送される。ミルク配管30は、搾ったミルクを一時的に貯留するレシーバージャー32に対して最も遠い位置が一番高く配置され、レシーバージャー32に接続する入り口が最も低い位置に配置されている。搾乳ユニット10から輸送されたミルクは、ミルク配管30に送り込まれた後、ミルク配管30の高低差と、レシーバージャー32とミルククロー11の圧力差によってレシーバージャー32に送り込まれる。レシーバージャー32に溜められたミルクは、レシーバージャー32の底部からミルクポンプ33によって、そのポンプ33のインラインフィルタ33aに接続された送水チューブ34を通って、バルククーラー(図示せず)に送られて貯蔵される。なお、36はエアーインジェクタであり、大気をミルク配管30に導入してミルクを輸送できるように設けられている。
【0005】
このようなパイプラインミルカーには、搾乳開始前の搾乳ユニット10及びミルク配管30を殺菌する予備洗浄や、搾乳後にミルクの通過域を洗浄する目的で、洗浄装置が付設されている。この洗浄装置は、上面が開放された洗浄槽60と、洗浄液供給装置70とから成り、洗浄液供給装置70は、給湯管(図示せず)、給水管(図示せず)、殺菌剤供給器71、酸洗剤供給器72、アルカリ洗剤供給器73を有し、夫々の洗浄液の供給口が、洗浄槽60に臨むように配設されている。また、洗浄槽60には、底部に排水口が開口しており、その排水口に接続された排水管を開閉する排水バルブ61が設けられている。一方、ミルクポンプ33のインラインフィルタ33aに接続された送水チューブ34は、洗浄工程の際に洗浄槽60に接続され、その洗浄槽60に洗浄液を戻すことができる。
【0006】
このような構成から成る洗浄装置では、先ず、送水チューブ34をミルクポンプ33のインラインフィルタ33aに接続し、同時に洗浄槽60に洗浄液を満たす。洗浄タップ31にミルク配管接続用のミルクチューブ17を連結することで、乳量計付自動離脱装置20及びミルクチューブ15を介して搾乳ユニット10をミルク配管30に接続する。そして、仕切弁35を閉じ、搾乳ユニット10のティ−トカップ12から洗浄液を吸引して、ミルククロー11、搾乳ユニット10のミルクチューブ15、乳量計付自動離脱装置20及びミルク配管接続用のミルクチューブ17を経由して、その洗浄液をミルク配管30に送り込む。
すなわち、洗浄液は、洗浄槽60の洗浄液中に浸漬されるように垂下された搾乳ユニット10(図2、8〜10参照)を介して吸い上げられてミルク配管30に達する。そして、ミルク配管30を通過してレシーバージャー32に流入した洗浄液は、ミルクポンプ33から送水チューブ34を経由して再び洗浄槽60に戻される。
【0007】
洗浄工程は、通常、先ず、牛乳蛋白などを変性させない程度のぬるま湯で乳成分を洗い流し、次いで、熱アルカリ水で脂肪分の分解洗浄を行い、更に、必要に応じて、酸洗浄によって、カルシウム塩などの無機塩類を除去し、ぬるま湯で、すすぎ洗いをして終了する。なお、搾乳ユニット10は、通常の乳牛用の場合、1個のミルククロー11と、乳牛の各分房に対応する4個のティートカップ12を有する。このティートカップ12では、ティートカップシェルに筒状ゴム製のライナーが内装されることにより、ティートカップ内部をライナーの内側の乳汁流路と外側の空気室とに区分する。内側の乳汁流路はミルク配管30へ接続され、外側の空気室はティートカップ側面の接続口に接続したパルセータ用の接続チューブなど及び乳量計付自動離脱装置20に内蔵されたパルセータ22a(図3(c)参照)を介して真空配管40へ接続されている。
【0008】
このような真空配管式搾乳機(パイプラインミルカー)について、本出願人は、そのミルク配管の洗浄方法にかかる発明を先に提案してある。それによれば、真空ポンプの真空圧によって作動する搾乳ユニットで搾乳したミルクを収集するために、ステンレススチール製の配管で構成されていると共に搾乳の現場となる畜舎内に巡らされ、前記ミルクを一時的に貯留するレシーバージャーに両端が接続されたミルク配管について、該ミルク配管の一方の端近傍に設けられた仕切弁を閉じ、該ミルク配管の一方の端側から他方の端側へ洗浄液を流すことによって前記レシーバージャーへ前記洗浄液が送られるように、該ミルク配管の一方の端側で前記仕切弁の取付位置よりもレシーバージャーから離れた位置に接続されて設けられた大気開放用開閉弁を操作することで前記洗浄液を送るパイプラインミルカーの洗浄方法であって、前記ミルク配管の前記畜舎内に巡らされた部分であって任意の位置に配置された真空圧センサーによる検出値によって、前記大気開放用開閉弁の開閉を制御することで、前記ミルク配管の配管内の真空圧を任意の設定範囲で変動させて前記洗浄液を間欠的に送ることで該配管内の洗浄をする(特許文献1参照)。
【0009】
しかしながら、従来のパイプラインミルカーの洗浄方法における洗浄液回収工程では、全ての搾乳ユニット10が開放状態となり、ミルク配管30の真空度が急激に低下し、搾乳ユニット10や乳量計(乳量計付自動離脱装置20)の内部などの洗浄液を回収できなくなることがあった。洗浄液が残水として残ると、搾乳前に排水する作業が必要となり、作業効率が低下する。また、冬季間は、凍結防止として自動洗浄終了後に排水作業が必要となり、状況によっては、搾乳作業前に解凍作業が必要になることや、機器破損によるトラブルが発生する恐れがある。
【0010】
また、以上に示した洗浄槽60を用いて洗浄する方式では、複数の搾乳ユニット10の洗浄液吸い込み口(ティートカップ12のマウス部)を、洗浄液面と同一平面上の位置で保持することが困難であり、エアー回収工程時にエアーを吸い込むものと洗浄液を吸い込むものが混在する。このため、最後まで洗浄液を吸い込む搾乳ユニット10は、ミルク配管30内の真空度が著しく低下しているため、ミルク配管30まで洗浄液を吸い上げられずに残水が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2012−5963号公報(第1頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
パイプラインミルカーの洗浄方法に関して解決しようとする問題点は、従来の方法によれば、ミルク配管の循環洗浄については洗浄効率を高めることができて効果的であったが、洗浄液の残水をより効率的に回収することが難しかったことにある。
そこで本発明の目的は、洗浄液を搾乳ユニットから吸引してミルク配管を洗浄する洗浄工程で、ミルクチューブ内などに残る洗浄液残水を回収する作業効率を向上できるパイプラインミルカーの洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明に係るパイプラインミルカーの洗浄方法の一形態によれば、真空ポンプの真空圧によって作動する搾乳ユニットで搾乳したミルクを収集するために、ミルク配管が搾乳の現場となる畜舎内に巡らされ、ミルクを一時的に貯留するレシーバージャーに両端が接続された該ミルク配管の一方の端近傍に設けられた仕切弁を閉じ、該ミルク配管の一方の端側から他方の端側へ洗浄液を流す洗浄工程を行うパイプラインミルカーの洗浄方法において、前記搾乳ユニットから前記ミルク配管に接続される流路の間に乳量計付自動離脱装置が設けられ、該乳量計付自動離脱装置に配された乳量ポット内の電気伝導度値を電気伝導度センサで検知して洗浄液の有無を判別することで、前記洗浄工程の洗浄液残水を回収する際の前記搾乳ユニットからエアーが流入する段階であって前記洗浄液残水を前記エアーと回収するエアー回収工程であることを検知する際に、前記電気伝導度センサによって検知される前記電気伝導度値について閾値を定めておき、該閾値を一定時間以上継続して上回った場合には、前記エアーを間欠的に流入させて前記洗浄液残水を回収させる前記エアー回収工程と判断して、前記搾乳ユニットからミルクチューブを介して前記ミルク配管に連続する流路内へ、前記エアーを間欠的に流入させて前記洗浄液残水を回収させるように、該搾乳ユニットから該ミルク配管に接続されるまでの流路に配された開閉弁を開閉操作させる。
【0014】
また、本発明に係るパイプラインミルカーの洗浄方法の一形態によれば、前記開閉弁が前記搾乳ユニットのミルククローに設けられたダイヤフラム弁であって、該ダイヤフラム弁の開閉操作により、該搾乳ユニットから前記ミルク配管への間欠的なエアー流入を制御することを特徴とすることができる。
また、本発明に係るパイプラインミルカーの洗浄方法の一形態によれば、前記開閉弁が前記ミルクチューブに設けられたダイヤフラム弁であって、該ダイヤフラム弁の開閉操作により、該搾乳ユニットから前記ミルク配管への間欠的なエアー流入を制御することを特徴とすることができる。
【0015】
また、本発明に係るパイプラインミルカーの洗浄方法の一形態によれば、前記搾乳ユニットから前記ミルク配管に接続される流路の間に乳量計付自動離脱装置が設けられ、該乳量計付自動離脱装置に配された乳量ポット内の電気伝導度センサで洗浄液の有無を判別し、エアーが流入する段階であって洗浄液残水を回収する工程であることを検知し、前記開閉弁を開閉操作することでエアーを間欠的に流入させることを特徴とすることができる。
また、本発明に係るパイプラインミルカーの洗浄方法の一形態によれば、複数の前記搾乳ユニットを複数のグループに分け、該グループごとに前記開閉弁の開閉操作を行うことにより、前記ミルク配管へのエアーの流入を抑制するように制御することを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るパイプラインミルカーの洗浄方法によれば、洗浄液を搾乳ユニットから吸引してミルク配管を洗浄する洗浄工程で、ミルクチューブ内などに残る洗浄液残水を回収する作業効率を向上できるという特別有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係るパイプラインミルカーの形態例を示すシステム図である。
図2】本発明に係るミルク配管真空度低下時の洗浄液残水状態を示すように、搾乳ユニットからミルク配管及び真空配管までの形態例を示す説明図である。
図3】本発明に係る乳量計付自動離脱装置の形態例を示す正面図(a)、側面図(b)、及び切換弁収納ボックスの断面図(c)である。
図4】本発明に係る乳量計付自動離脱装置に設けられている乳量計の乳量ポットの断面図(a)、及び側面図(b)である。
図5】本発明に係る乳量計の乳量ポットについて、搾乳ユニットから洗浄液を吸い上げている循環洗浄工程であって、計量中の状態を示す断面図(a)、排水中の状態を示す断面図(b)である。
図6】本発明に係る乳量計の乳量ポットについて、搾乳ユニットから洗浄液を吸い上げていない洗浄液回収工程であって、開口の状態を示す断面図(a)、閉口の状態を示す断面図(b)である。
図7】本発明に係るミルククローの形態例を示す断面図である。
図8】本発明に係る循環洗浄工程時の洗浄槽内及びダイヤフラム弁の開閉動作の状態を説明図である。
図9】本発明に係る循環洗浄工程時と洗浄液回収工程時との洗浄槽内及びダイヤフラム弁の開閉動作の状態を説明図である。
図10】本発明に係る複数の搾乳ユニットを複数にグループを分けた場合の洗浄液回収工程時の洗浄槽内及びダイヤフラム弁の開閉動作の状態を説明図である。
図11】本発明に係るパイプラインミルカーの洗浄方法における洗浄工程の動作タイムチャートであり、従来動作と改良後動作を比較して示している。
図12】本発明に係るパイプラインミルカーの洗浄方法における複数の搾乳ユニットを複数にグループを分けた場合の洗浄工程の動作タイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るパイプラインミルカーの洗浄方法の実施例を添付図面(図1図12)に基づいて詳細に説明する。
本発明は、真空ポンプ50の真空圧によって作動する搾乳ユニット10で搾乳したミルクを収集するために、ミルク配管30が搾乳の現場となる畜舎90内に巡らされ、ミルクを一時的に貯留するレシーバージャー32に両端が接続されたミルク配管30の一方の端近傍に設けられた仕切弁35を閉じ、そのミルク配管30の一方の端側から他方の端側へ洗浄液を流す洗浄工程を行うパイプラインミルカーの洗浄方法に関するものである。
【0019】
本発明を実施するための機械構成は、その全体構成が、図1に基づいて[背景技術]の欄で記載した説明のとおりであり、以下には、本発明に係る要部として、搾乳ユニット10から乳量計付自動離脱装置20を経由してミルク配管30及び真空配管40まで接続された構成の形態例について詳細に説明する。
【0020】
本形態例の乳量計付自動離脱装置20は、図2に示すように、制御基板ユニット21、切替弁収納ボックス22、乳量ポット23を構成要素として備える。また、この乳量計付自動離脱装置20は、ミルクチューブ15によって搾乳ユニット10に接続されており、ミルク配管接続用のミルクチューブ17によってミルク配管30に接続されている。
この構成によれば、図2に示すように、ミルク配管30の真空度が低下した際には、洗浄液残水が、ミルクチューブ15及びミルク配管接続用のミルクチューブ17内に溜まりやすい。これは、ミルクチューブ15及びミルク配管接続用のミルクチューブ17が下方に湾曲し易い柔軟性のあるチューブによって構成されているためである。
【0021】
また、この乳量計付自動離脱装置20は、図3(a)に示すように、ミルク配管接続用のミルクチューブ17や真空チューブ(図示せず)の末端に設けられた接続部28を備えている。その接続部28は、ミルク配管接続口28a、真空配管接続口28b及び電源プラグ28cを備えている。
さらに、この乳量計付自動離脱装置20は、図3(c)に示すように、切替弁収納ボックス22内に、パルセータ22a、乳量ポット23に設けられたバルブ制御ダイヤフラム24を操作するための切替弁としての排乳バルブ用三方弁22b、ミルククロー11に内蔵されたダイヤフラム弁11aを操作するための切替弁としての搾乳ユニット用三方弁22cや、離脱モータ22dが内蔵されており、それぞれが真空チューブ(図示せず)を介して真空配管40に接続されている。また、搾乳ユニット開閉弁用の真空ニップル22eが下面から外部に突き出た状態に配されている。この真空ニップル22eに三連チューブ16(図2参照)のうちの一本であるダイヤフラム弁制御用のチューブが接続され、そのチューブがミルククロー11の真空ニップル11b(図7参照)に接続される。これによれば、切替弁としての搾乳ユニット用三方弁22cが開閉制御されることで、ミルククロー11のダイヤフラム弁11aが開閉操作され、流体の吸入にかかる開閉を行うことができる。
【0022】
次に、乳量計の乳量ポット23の形態例と、その作動状態を図4〜6に基づいて説明する。
本形態例の乳量ポット23は、図4(a)に示すように、搾乳ユニット10へ接続されるインレット23a、ミルク配管30へ接続されるアウトレット23b及びダイヤフラム用真空ニップル24aを備えている。また、図4(b)に示すように、バルブ制御ダイヤフラム24、電極センサ25、エアーパイプ26及び排乳バルブ27を備えている。搾乳されたミルクは、インレット23aから乳量ポット23に流入されて計量され、アウトレット23bから排出される。
【0023】
この乳量ポット23の作動例を図5及び図6の状態図に基づいて説明する。
図5は、循環洗浄工程であって、洗浄槽60内には洗浄液がある状況で、搾乳ユニット10から洗浄液を吸い上げているときの乳量ポット23内部の状態を示している。
洗浄工程時において、排乳バルブ27は、バルブ制御ダイヤフラム24によって一定周期で開閉する。洗浄水循環時は、周期的に電極センサの電気伝導度値(AD値)が低下する。すなわち、図5(a)に示すように、排乳バルブ27が閉じた際には、洗浄液が乳量ポット23内に溜まり、AD値が低下する。この状況下では、搾乳ユニット10のダイヤフラム弁11aは開のままを保持される。
【0024】
図6は、洗浄液回収工程であって、洗浄槽60内の洗浄液が排水された後の状況で、搾乳ユニット10から洗浄液を吸い上げていないときの乳量ポット23内部の状態を示している。この乳量ポット23によれば、ミルククロー11のダイヤフラム弁11aの動作をさせるように、エアーの流入状態を、以下のように検知することができる。
洗浄工程時において、排乳バルブ27は、バルブ制御ダイヤフラム24によって一定周期で開閉する。洗浄液回収工程時は、洗浄液を吸い上げていないため、電極センサのAD値は大きい状態のままになる。すなわち、図6(a)に示すように、排乳バルブ27が閉じた際にも、洗浄液が乳量ポット23内に溜まらないため、AD値が大きいまま変化しない。設定時間以上、設定AD値より大きい状態が持続したら、搾乳ユニット10のダイヤフラム弁11aを遮断する。設定周期でダイヤフラム弁11aの開閉を繰り返し、搾乳ユニット内の残水を回収する。設定時間閉じることで、空気の流入を遮断して真空度を安定させる。そして、ミルク配管内の真空度が安定したら、設定時間を置き、急激にエアーを流入させる。
【0025】
次に、ミルククロー11の形態例について、図2及び図7に基づいて説明する。
本形態例のミルククロー11によれば、真空ニップル11bと、ティートカップ12に接続される複数のティートカップ接続口11cと、ミルクチューブ15に接続されるミルクチューブ接続口11dを備え、ダイヤフラム弁11aが内蔵されている。真空ニップル11bは、乳量計付自動離脱装置20の真空ニップル22eへ三連チューブ16(図2参照)のうちのダイヤフラム弁制御用のチューブによって接続されている。ミルククロー11内では真空ニップル11bからの通路がダイヤフラム弁11aへ接続されており、搾乳ユニット用三方弁22cの操作でダイヤフラム弁11aの開閉制御がなされる。すなわち、搾乳ユニット用三方弁22cから真空ニップル11bを介してダイヤフラム弁11aに真空圧が与えられると、ダイヤフラム弁11aが開くことになる。このダイヤフラム弁11aの開閉によって、ティートカップ12側からの流体の流入について開閉操作を行うことができる。なお、図2に示すように、ティートカップ12のショートミルクチューブ13であり、ティートカップ12から延長されてミルククロー11に接続されている。また、図2に示すように、パルセータ用の接続チューブ14であり、ティートカップ12のシェルに設けられた接続口に接続されている。これらの構成は既知のものであり、搾乳のための動作については説明を省略する。
【0026】
以下に、本発明のパイプラインミルカーの洗浄方法にかかる動作構成について、詳細に説明する。
洗浄工程の洗浄液残水を回収する際の搾乳ユニット10からエアーが流入する段階で、その搾乳ユニット10からミルクチューブ(ミルクチューブ15やミルク配管接続用のミルクチューブ17)を介してミルク配管30に連続する流路内へ、エアーを間欠的に流入させるように、搾乳ユニット10からミルク配管30に接続されるまでの流路に配されたダイヤフラム弁11aなどの開閉弁を開閉操作する。
【0027】
これによれば、ミルク配管30の真空度を安定させ、多数の搾乳ユニット10の使用時でも、均一に洗浄液を回収できる。すなわち、搾乳ユニット10からのエアー流入を制御(間欠運転)することで、ミルク配管30内の真空度低下を抑え、一定真空度を保つことで、回収エアーの流速(吸引力)を高め、洗浄液残水の回収率を向上させることができる。エアー流入を間欠的に繰り返し、ミルクチューブ15やミルク配管接続用のミルクチューブ17の最下部位置に塊状に滞留する洗浄液残水を一気に押し出すことにより、エアーの継続的流入時に比べて高い回収効果を得ることができる。また、少ないポンプ排気量でも洗浄液を効率よく回収でき、真空ポンプ50の運転負荷が低減され、真空容量の小さな真空ポンプ50を用いることも可能となる。これによれば、機器設備費削減、節電による省エネルギーを実現できる。
【0028】
前述のエアー流入を制御する開閉弁としては、搾乳ユニット10のミルククロー11内蔵の真空駆動方式のダイヤフラム弁11aを用いることができる。すなわち、前記開閉弁が搾乳ユニット10のミルククロー11に設けられたダイヤフラム弁11aであって、そのダイヤフラム弁11aの開閉操作により、搾乳ユニット10からミルク配管30への間欠的なエアー流入を制御することができる。
【0029】
これによれば、現状製品の乳量計付自動離脱装置20の制御プログラムの変更のみで、搾乳ユニット10、ミルクチューブ15やミルク配管接続用のミルクチューブ17の残水対策ができる。
複数台の搾乳ユニット10を使用する場合では、個々の電気伝導度値(AD値)の検知によって、ミルククロー11の開閉弁(ダイヤフラム弁11a)動作を制御するため、エアー流入を制御するダイヤフラム弁11aはランダムに動作し、ミルク配管30の真空度を維持し易く、洗浄液を効率よく回収できる。
【0030】
ミルククロー11にダイヤフラム弁11aなどの開閉弁が内蔵されていない場合は、一例として、ミルクチューブ15ライン上に配置した真空駆動方式のダイヤフラム式遮断バルブ(ダイヤフラム弁)によって、同様の効果を得ることができる。すなわち、前記開閉弁がミルクチューブ15に設けられたダイヤフラム弁であって、そのダイヤフラム弁の開閉操作により、搾乳ユニット10からミルク配管30への間欠的なエアー流入を制御する。
【0031】
次に、以上に示した動作構成を実行させる動作制御方法について説明する。
本形態例では、搾乳ユニット10からミルク配管30に接続される流路の間に乳量計付自動離脱装置20が設けられ、その乳量計付自動離脱装置20に配された乳量ポット23内の電気伝導度センサとしての電極センサ25で洗浄液の有無を判別し、エアーが流入する段階であって洗浄液残水を回収する工程であることを検知し、開閉弁を開閉操作することでエアーを間欠的に流入させる(図9参照)。前記開閉弁としては、例えば前述のようにミルククロー11に内蔵の真空切換弁であるダイヤフラム弁11aを用いることができる。
【0032】
すすぎ、アルカリ洗浄、酸性洗浄、殺菌液、エアー回収の各々の工程での電気伝導度値(AD値)の検知によって、洗浄液循環工程であるか、エアー回収工程であるかを判別する。すなわち、すすぎ、アルカリ洗浄、酸性洗浄、殺菌液、エアー回収の各々の工程では異なる電気伝導度値を示し、エアー回収工程の洗浄液が無い状態では、電気伝導度値が一定の所定値に近づくため、乳量計内(乳量ポット23内)の電気伝導度値を検知することで、洗浄液循環工程であるか、エアー回収工程であるかを判別する。
【0033】
また、エアー回収工程中の電気伝導度値(AD値)に関する閾値を定め、その閾値を一定時間以上継続して上回った場合には、洗浄液が無いエアー回収工程と判断して、ミルククロー11に内蔵のダイヤフラム弁11aなどの流路を開閉するバルブを間欠動作させることができる。
以上の動作構成によれば、搾乳ユニット10(ミルククローバルブ)の開閉制御により、ミルク配管30へのエアー流入を抑制できる。なお、洗浄液回収工程時に安定した真空時を得られるように、エアー流入のON/OFF時間(時間間隔)を適宜に設定するのは勿論である。
【0034】
また、複数の搾乳ユニット10を複数のグループに分割し、そのグループごとに前記開閉弁の開閉操作を行うことにより、ミルク配管30へのエアーの流入を抑制するように制御することができる。すなわち、搾乳ユニット10をグループ分けすることで、一方のグループに対して他方のグループの開閉弁(ダイヤフラム弁11a)について、その開閉の開始タイミングを所定の間隔で遅延するように設定できる。これによれば、複数の搾乳ユニット10が全て同期して間欠運転することを防止でき、多数のユニットからの同時エアー流入によるミルク配管の急激な真空度低下を防止できる。なお、電気伝導度値(AD値)が設定値以下になった場合は、ダイヤフラム弁11aは開状態を保持する。
【0035】
以上の動作制御方法について、図8〜10に基づき、図11、12のタイムチャートを参照して、洗浄槽60の水位とダイヤフラム弁11aの制御動作との関係を説明する。
図8は、洗浄工程の内の洗浄液を循環させている循環洗浄工程時の洗浄槽60などの状態を示している。この状態では、洗浄槽60内の洗浄液の水位は上下するが、ティートカップ12の吸い込み口は洗浄液中に浸漬された状態にある。この際に、真空三方弁22cが制御基板ユニット21によって制御されることで、ダイヤフラム弁11aが開いた状態になっている。
【0036】
図9は、循環洗浄工程と洗浄回収工程との切り替えがなされている状況の制御動作について示している。
設定時間以上、エアーのみが継続して流入すると、乳量ポット内の電極センサ25(図4〜6参照)の電気伝導度値(AD値)は、設定時間T1(図11、12参照)以上の間、設定値(洗浄液無し閾値)以上を維持することになる。これにより、各々の独立した制御基板(制御基板ユニット21)は、洗浄液回収工程と判定する。設定タイミングで、ダイヤフラム弁11aの開閉動作をさせ、ミルク配管30内の真空度低下を抑制する。すなわち、所要の一定の時間T2(図11、12参照)を閉じ、所要の一定の時間T3(図11、12参照)を開く動作である間欠開閉動作を行う。なお、T1〜3の時間間隔は、洗浄条件によって適宜に設定される。
また、乳量ポット23内の電極センサ25の電気伝導度値(AD値)が、設定時間以上の間、設定値(洗浄液無し閾値)以下となった場合、各々の独立した制御基板(制御基板ユニット21)は、洗浄液が循環している循環洗浄工程であると判定し、ダイヤフラム弁11aの開動作を保持する。
【0037】
図10は、搾乳ユニット10の数が多い場合において、ミルク配管30内の真空度低下を防止するための制御方法であって、グループAとグループBとで、開閉タイミングの制御設定値を変更した場合の作動制御状態を示してある。本実施例によれば、一方のグループの開閉開始タイミングを遅延(T4(図12参照))させ、全グループが同時に開閉しないようにしている。
【0038】
以上に説明した動作制御方法の実施例について、タイムチャートを、図11及び12に示してある。
図11は、洗浄時動作タイムチャートであり、従来動作と改良後動作とを比較して示している。それぞれ、DC24V電源(洗浄モード)、排乳バルブ(乳量ポット)、電極センサのAD値(乳量ポット)、ダイヤフラム弁(搾乳ユニット)、排水バルブ(洗浄槽)、洗浄槽洗浄液量、ミルク配管内真空度、ミルクチューブ内残水の関係を示してある。その動作制御の内容は、以上に説明したとおりであり、説明を省略する。
【0039】
また、図12は、複数の搾乳ユニット10を二つのグループにブロック分けをした場合の「搾乳ユニットのブロック分け」洗浄時動作タイムチャートであり、ブロックAとブロックBとを比較して示している。図11と同様の要素についての関係を示してある。その動作制御の内容は、以上に説明したとおりであり、説明を省略する。
なお、以上のような制御を行う制御基板ユニット21に設けられる制御装置は、コンピュータ制御システムや、シーケンス制御システムによって構成できる。また、各センサの測定値を表示する表示手段を設け、その表示データに基づいて作業者が各種装置を手動で調整、制御することも可能である。
【0040】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【符号の説明】
【0041】
10 搾乳ユニット
11 ミルククロー
11a ダイヤフラム弁
11b 真空ニップル
11c ティートカップ接続口
11d ミルクチューブ接続口
12 ティートカップ
13 ティートカップのショートミルクチューブ
14 パルセータ用の接続チューブ
15 ミルクチューブ
16 三連チューブ
17 ミルク配管接続用のミルクチューブ
20 乳量計付自動離脱装置
21 制御基板ユニット
22 切替弁収納ボックス
22a パルセータ
22b 排乳バルブ用三方弁
22c 搾乳ユニット用三方弁
22d 離脱モータ
22e 真空ニップル
23 乳量ポット
23a インレット
23b アウトレット
24 バルブ制御ダイヤフラム
24a ダイヤフラム用真空ニップル
25 電極センサ
26 エアーパイプ
27 排乳バルブ
28 接続部
28a ミルク配管接続口
28b 真空配管接続口
28c 電源プラグ
30 ミルク配管
30a 洗浄用のミルク配管
31 洗浄タップ
32 レシーバージャー
33 ミルクポンプ
33a インラインフィルタ
34 送水チューブ
35 仕切弁
36 エアーインジェクタ
38 サニタリートラップ
39 真空接続配管
40 真空配管
40a 洗浄用の真空配管
41 真空調整器
49 真空接続配管
50 真空ポンプ
51 ディストリビューションタンク
60 洗浄槽
61 排水バルブ
70 洗浄液供給装置
71 殺菌剤供給器
72 酸洗剤供給器
73 アルカリ洗剤供給器
80 処理室
90 牛舎
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11
図12