特許第6240911号(P6240911)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240911
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】計量装置
(51)【国際特許分類】
   G01G 11/00 20060101AFI20171127BHJP
【FI】
   G01G11/00 D
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-77462(P2014-77462)
(22)【出願日】2014年4月4日
(65)【公開番号】特開2015-200502(P2015-200502A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2016年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】591156799
【氏名又は名称】ユニパルス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 光一
(72)【発明者】
【氏名】赤石 耕二
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−25831(JP,A)
【文献】 特開2013−250237(JP,A)
【文献】 特開2008−296175(JP,A)
【文献】 特開平5−57252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G 1/00−23/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を搬送するとともに前記物品の重量を計量する計量コンベアと、
前記計量コンベアを支持し、前記計量コンベアで搬送中の前記物品の重量に対する信号を出力する荷重センサと、
前記物品を取り込んで前記計量コンベアに受け渡す搬送コンベアと、
前記搬送コンベアと前記計量コンベアとの間に配置されて、前記搬送コンベアから前記計量コンベアに乗り移る前記物品の存在を検出して検出信号を出力する搬入センサと、
前記荷重センサからの前記重量に対する信号を受け、前記重量に対する信号を所定の信号処理条件に従って処理した信号を出力する信号処理部と、
前記信号処理部から前記処理した信号を得て、前記物品の重量値の演算と前記物品の前記重量値の記憶を行う重量演算部と、
前記重量演算部が算出した前記重量値と、良否判定基準値を比較して前記物品の良否判定を行う判定部とを具備する計量装置において、
前記搬入センサから出力される前記物品の前記計量コンベアへの乗り移りを検出した前記検出信号と、前記信号処理部から出力される所定の重量値を示す前記処理した信号と、を前記重量演算部が受信した時点で開始し、第1所定時間をもって終了する第1のタイマと、
前記第1のタイマの前記第1所定時間終了と同時に開始し、第2所定時間をもって終了する第2のタイマと、
前記第1のタイマの作動中に、前記搬入センサによる前記物品の検出を行った場合に、前記第1のタイマを、前記第1所定時間を待たずに終了させ、計量不能なる信号を前記判定部へ送信する第1の判断手段と、
前記第2のタイマの作動中に、前記搬入センサによる前記物品の検出を行った場合に、前記第2のタイマを、前記第2所定時間を待たずに終了させる第2の判断手段と、
を有し
前記重量演算部が、前記第2のタイマ作動中における前記物品の重量値を演算して前記物品の重量値を定義することを特徴とした計量装置。
【請求項2】
前記重量演算部が、前記第2のタイマ作動中における前記物品の最大重量値を記憶して、前記最大値を前記物品の重量値と定義することを特徴とした請求項1に記載の計量装置。
【請求項3】
前記重量演算部が、前記第2のタイマ作動中における前記物品の複数の重量値を記憶して、前記複数の重量値の単純平均を前記物品の重量値と定義することを特徴とした請求項1に記載の計量装置。
【請求項4】
前記重量演算部が、前記第2のタイマ作動中における前記物品の複数の重量値を記憶して、前記複数の重量値の最大値と前記複数の重量値の最小値の差分を所定の分割数にグループ分けし、前記グループのうち最大の値を有する最上位グループと最小の値を有する最下位グループを除いたグループにおける前記複数の重量値の単純平均を前記物品の重量値と定義することを特徴とした請求項1に記載の計量装置。














【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、肉、魚、食品、医薬品などの物品を計量して良否を判定する計量装置に関するものである。その中でも、物品を搬送コンベアから計量コンベアへ搬送しながら計量を行う計量装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来から食品等の生産ラインにおいては、生産ライン内に組み込まれて、上流の搬送コンベアから所定の間隔で搬送されてくる物品の重量を、搬送している間に計量し、得られた計量値が基準範囲内にあるか否かを判定し、基準範囲内の良品とそれ以外の不良品とを選別している。この類の計量装置は、搬入センサと、荷重センサと、重量演算部と、良否の判定部とで構成されているのが通例である。
【0003】
計量の方法は、搬入センサにより上流から搬送されてくる物品の通過が検出されると、その検出から物品の重量の計量が開始されるまでの時間待機し、すなわちある基準時間の経過後に荷重センサが物品の重量を計量する。荷重センサはその重量に対する値を電気信号に変換しフィルタなどの信号処理部を経て重量演算部に送信する。よって荷重センサに重量に対する信号を出力させる基準時間は予め試験物体を試験搬送するなどにより試験されることで定められるようになっている。この重量に対する信号は重量演算部に保管され最終的な補正演算がなされて重量値が確定されると共に判定部に出力され、この重量値と良否の基準値との比較を判定部で行うことにより、物品の良否および異物混入等が判定されるようになっている。
【0004】
なお、予め設定した基準時間が、現実に搬送される物品が安定して計量できる時間からずれていると、計量値にばらつきが生じ誤判定を招くおそれがあるので、
予め試験物品を計量コンベアに搬入して、荷重センサからの重量に対する信号を得て、重量演算部に保管された信号波形図を参照することにより安定していると思われる計量タイミングを求めるのが通例である。
【0005】
しかしながら、何らかの影響で物品の搬入間隔が小さくなってしまった場合には、物品と次に計量すべき物品の一部または全部が同時に荷重センサに載置されてしまい、適正な被検査物の計量値が得られないといういわゆる2個乗りが発生し、重量データのばらつきがより大きくなるという問題があった。図9は計量装置の搬送部を示す模式図であり、搬送部で2個乗りが発生した状態を示している。
【0006】
図9に示すように、矢印A方向にて搬送コンベア5に搬送直前の物品2と、後続の物品2bの一部が計量コンベア3の荷重センサ6に同時に乗ってしまった場合には、荷重センサ6により物品2と後続の物品2bの一部が同時に計量されてしまい正確な物品の重量値が得られない。
【0007】
この基準時間を最適な値に設定するには、物品の搬入間隔のばらつきや搬入間隔に応じた搬送部の搬送速度を適格に把握し、この搬入間隔や搬送速度の最適値に対応する基準時間を得る必要がある。また、検査効率の向上を図るためには、現在設定されている搬送速度および基準時間で制限される検査の限界能力に対し、稼動中の検査能力は余裕があるか否かを把握する必要がある。ゆえに、最適な搬送速度または検査能力の限界に対する稼動中の検査能力の余裕の度合いを搬入間隔から求めるものが提案されている。(例えば、特許文献1参照)
【0008】
またこの種の計量装置では、物品を搬送しながら計量を行う動的計量を採用しているため、物品が搬送コンベアから計量コンベアに乗り移るときの衝撃や物品とコンベアとの接地状態などの要因により、計量値に誤差が生じてしまうことが知られている。
【0009】
よって動的計量を行う計量装置では、物品の搬送間隔に応じて計量タイミングおよびフィルタ特性を変化させながら計量を行うようにしたものがある。しかし乗り継ぎによる残振動の影響がない状態まで待って計量をする方法では、計量の遅延により精度の悪化に繋がってしまう恐れがある。例えば、残振動が収束した時間から計量を開始すると、ローパスフィルタ(低域通過フィルタ)による減衰帯域が狭くなり、精度悪化に繋がってしまう。また、特定帯域除去フィルタにより残振動の成分を除去する手法もあるが、フィルタ遅延により計量に遅延が生じ、計量能力(時間毎の計量可能個数)の低下に繋がってしまうため、物品の搬送間隔および搬送方向の長さに応じて動的計量時の偏りを補正する提案がなされている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第5149544号公報
【特許文献2】特開2014−25831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載の技術では、最適搬入間隔を算出し、この最適搬入間隔に基づいて最適搬送速度を算出するのであるが、これはあくまで統計によって得られたデータを元に算出が行われているため、搬送速度や物品の姿勢のばらつきが大きい際にはこれらを丸めた最適値となってしまい、搬入間隔の分布の度合いによっては搬送速度を大きくすることが困難な場合が生じる。また統計処理のために使用するデータの範囲を設定しなければならず、この設定に試行錯誤が生じる。さらに計算による最適搬送速度が実際に工程設計された所望する搬送の速度より小さい場合、結局上記同様に信号波形図から計量タイミングを求めるという試行錯誤を行うことになり、やはり生産効率を悪化させる要因になっていた。
【0012】
また、特許文献2に記載の技術では、搬入センサで検出した後、所定時間経過後の計量ポイントにおける計量値と補正用の動的補正係数を使うと共に、かつ、搬送方向長さと搬送間隔を搬入センサで読み取り計算して、さらにこれを動的補正係数に加えて重量を計量している。しかしながら特許文献2に記載の実施例のセンサは透過型光電センサであり、物体の形状と搬送速度により、搬入センサのチャタリングなどにより搬送方向長さと搬送間隔を正確に捉えるのは、実際の工程内では困難であると考えられる。これらを改善するために複数のセンサの配置や微小スポットで高速応答のレーザセンサの使用なども考えられるが、センサの複数個使用によるコストアップや複数個のセンサ配置の条件出しなどに時間がかかり、生産効率に大きな悪影響をおよぼすことになる。
また搬送方向長さと搬送間隔を搬入センサで読み取ることから、物品の品種が違うとその都度条件は変わるため、物品毎に部品マスタを作ることからは避けられず、やはり工程の条件出しに時間がかかるという難点があった。
【0013】
本発明は、前述のような従来の問題を解決するためになされたもので、非常にシンプルな構成で、物品毎に物品マスタを作る必要がなく、かつ物品の計量コンベアへの2個乗りを検出して、精度良く物品の重量計量を可能とする計量装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、
物品を搬送するとともに物品の重量を計量する計量コンベアと、
計量コンベアを支持し、計量コンベアで搬送中の物品の重量に対する信号を出力する荷重センサと、
物品を取り込んで計量コンベアに受け渡す搬送コンベアと、
搬送コンベアと計量コンベアとの間に配置されて、搬送コンベアから計量コンベアに乗り移る物品の存在を検出して検出信号を出力する搬入センサと、
荷重センサからの重量に対する信号を受け、重量に対する信号を所定の信号処理条件に従って処理した信号を出力する信号処理部と、
信号処理部から処理した信号を得て、物品の重量値の演算と物品の重量値の記憶を行う重量演算部と、
重量演算部が算出した重量値と、良否判定基準値を比較して物品の良否判定を行う判定部とを具備する計量装置において、
搬入センサから出力される物品の計量コンベアへの乗り移りを検出した検出信号と、信号処理部から出力される所定の重量値を示す処理した信号と、を重量演算部が受信した時点で開始し、第1所定時間をもって終了する第1のタイマと、
第1のタイマの第1所定時間終了と同時に開始し、第2所定時間をもって終了する第2のタイマと、
第1のタイマの作動中に、搬入センサによる物品の検出を行った場合に、第1のタイマを、第1所定時間を待たずに終了させ、計量不能なる信号を判定部へ送信する第1の判断手段と、
第2のタイマの作動中に、搬入センサによる物品の検出を行った場合に、第2のタイマを、第2所定時間を待たずに終了させる第2の判断手段と、を有し
重量演算部が、第2のタイマ作動中における物品の重量値を演算して物品の重量値を定義する構成によってなされている。
【0015】
重量演算部が、第2のタイマ作動中における物品の最大重量値を記憶して、最大値を物品の重量値と定義することが望ましい。
【0016】
重量演算部が、第2のタイマ作動中における物品の複数の重量値を記憶して、複数の重量値の単純平均を物品の重量値と定義することが望ましい。
【0017】
重量演算部が、第2のタイマ作動中における物品の複数の重量値を記憶して、複数の重量値の最大値と複数の重量値の最小値の差分を所定の分割数にグループ分けし、グループのうち最大の値を有する最上位グループと最小の値を有する最下位グループを除いたグループにおける複数の重量値の単純平均を物品の重量値と定義することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る計量装置の内部構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第1の計量モードの実施形態に係る計量装置の動作を示すフロー図である。
図3】本発明の第2の計量モードの実施形態に係る計量装置の動作を示すフロー図である。
図4】本発明の実施形態に係る計量装置の動作を示す信号図である。
図5】本発明の実施形態に係る計量装置の動作を示す信号図である。
図6】本発明の実施形態に係る計量装置の動作を示す信号図である。
図7】本発明の実施形態に係る計量装置の動作を示す信号図である。
図8】本発明の実施形態に係る計量装置の動作を示す信号図である。
図9】計量装置の2個乗りの例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る計量装置の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0020】
図1に示すように、計量装置1は計量する対象の物品2を搬送しながら計量する構成になっている。
【0021】
計量装置1は、生産ラインの一部を構成する搬入コンベア4の下流側に設置されており、所定の間隔で矢印A方向に順次搬入されてくる肉、魚、加工食品、医薬品などの被計量物すなわち物品2の重さを計量し、計量結果を出力するようになっている。
【0022】
計量コンベア3は、搬入コンベア4から矢印A方向に搬入されてくる物品2を所定の搬送速度により搬送するようになっている。搬送速度は、物品2の生産量、および原則複数個の物品が計量コンベア3に乗らない間隔を保つこと等を考慮して設定される。この物品2は、計量コンベア3により搬送され、搬送されている間に重量が荷重センサ6により計量されるようになっている。また物品2は、計量の後、後段の搬出コンベア5へ搬送されるようになっている。
【0023】
物品2は荷重センサ6によって計量され、予め設定された重量の上限および下限の基準値とそれぞれ比較し、物品2の重量として得られた計量値が基準値の範囲内にあるか否かを判定して、範囲内のものを良品とし、範囲外のものを不良品として良否判定することができるように構成されている。また複数の基準値に対応して重量のグループを作成しておき、各々の物品をグループ分けするような場合もある。
【0024】
計量した結果の計量値、良否判定結果やグループ分け結果、および装置のエラー等は、判定結果表示部13にて表示されるようになっている。
【0025】
搬入コンベア4,計量コンベア3、搬出コンベア5は、プーリとそれに巻きつけられた環状のベルト、プーリとベルトを回転させるモータ、このモータを駆動するモータ駆動回路および電源からなり、物品2の大きさ、重量および搬送速度等を考慮して設けられている。
【0026】
計量コンベア3は荷重センサ6上に設けられて、計量コンベア3上に乗った物品2の重量が計量できるように構成されている。
【0027】
荷重センサ6は、電磁力平衡方式もしくはロードセル方式(電気抵抗線式)の検出部と、検出部から出力された物品の重量に対するアナログ信号をデジタル変換するA/D変換部と、このデジタル重量信号を記憶する重量信号記憶手段を有している。
【0028】
電磁力平衡式は、天秤機構を有しており、この天秤の片側に物品を載せ、もう片側におもり(分銅)をのせる代わりに、電磁力を加えて、この天秤を釣り合わせるものであり、ちょうど釣り合ったときの電流の大きさを検出しアナログ重量信号を出すように構成している。
【0029】
ロードセル方式は、物品が乗ることで変形する起歪体に、歪みゲージを貼り付け、この歪みゲージが伸び縮みし、抵抗値の変化をもとにホイートストンブリッジ回路から電圧信号に増幅変換してアナログ重量信号を出すように構成している。
【0030】
それぞれに特長があるため、物品の種類によって適宜用いられるが、本発明では重量を計量できるものであればその方式は特に問うものではない。
【0031】
本実施例では、検出部から出力された物品の重量を示すアナログ重量信号をデジタル変換するA/D変換部は1msec毎にサンプリングが可能なものを使用している。またA/D変換部で変換されたデジタル信号は、重量信号記憶手段によって所定の期間分を記憶されている。
【0032】
搬入センサ7は、例えば拡散反射型の光電センサであり、搬入コンベア4と計量コンベア3の間に配置されている。拡散反射型は投受光一体型構造のため省スペースで設置が可能である。また図1に示すように下向きに設置できるため、ゴミの付着が少なく、飛散物が多い計量環境では有利である。
もちろん透過型の光電センサ1対を、搬入コンベア4と計量コンベア3の間で上下もしくはコンベア幅方向にて挟んだ設置も可能である。物品2の大きさ、形状、色あるいは搬送速度などの計量環境などによって適当なセンサを選択すれば良い。
【0033】
拡散反射型の光電センサを使用した場合、投光部の光が検出物体にあたり、受光部に戻ってくることで検出の信号を出す。すなわち、物品2が搬入コンベア4によって搬送され、計量コンベア3へ乗り移る直前で、物品2の計量コンベア3への搬入が検出できるようになっている。検出された搬入開始の信号は例えば電圧出力で重量演算部9に送られるようになっている。
【0034】
信号処理部8は、荷重センサ6の重量信号記憶部によって所定の期間分を記憶された重量に対する信号を受信し、ローパスフィルタ(LPF)と移動平均フィルタによって信号を処理するように設けられている。
信号処理部8が有するLPFは、1つもしくは複数を組み合わせたもので構成される場合があり、重量に対する信号の高周波成分が除去される。これと同時に、移動平均フィルタにより、ある瞬間の重量に対する信号を中心とした所定の期間前後における重量値の平均が求められ、重量値の所定の移動平均値が得られる。本実施例では、最大期間999msecまで設定可能な移動平均フィルタを使用している。
【0035】
重量演算部9は、信号処理部8からの物品2のフィルタリングされた計量信号および搬入センサ7からの物品2の計量コンベア3への搬入検出信号を受けて、物品2の最終確定を行った計量値を演算する。なお、搬入センサ7からの物品2の計量コンベア3への搬入検出信号は、物品無しから物品有りへの変化のエッジのみを検出しており、物品有りから物品無しへの変化のエッジの検出は行っていない。また搬入センサ7からの物品2の計量コンベア3への搬入検出信号を受けて、後述のタイマの停止をさせる判断手段も有している。ここでの演算、条件処理については後述する。
【0036】
記憶部10は、重量演算部9内にあって、記憶媒体により構成され、搬入センサ7が物品を検出してから計量を開始するまでの時間、計量期間、フィルタの設定値、物品の良否判定の上限下限値、および計量の演算に使用するデータすなわち補正係数等が記憶されている。
【0037】
設定部11は、記憶部10に保存されている情報を基に、荷重センサ6および重量演算部9に指示、設定を行う。また計量モードの選択指令も行い、記憶部10からの呼び出しを行えるようにしてある。またこれらの設定値を変更して記憶部10へ再登録する機能も有している。
【0038】
判定部12は、重量演算部9から出力された計量値と記憶部10に予め記憶されている良否判定の上限下限値を読み出し比較して、重量演算部9から出力された計量値が上限下限値で規定される許容範囲内にあるかを判定するようになっており、範囲内であれば良品として判定出力し、範囲外であれば不良と判定出力する。
【0039】
判定結果表示部13は、判定部12で判定された良品、不良品の状態表示や、計量した物品の重量値、計量におけるエラー等を表示する。
【0040】
次いで、図2および図3を参照して、実際の計量の手順について説明する。
本発明は計量演算を行う手段として2つの計量モードを有しており、第1の計量モードは最大値モードでありもう一つは第2の計量モードは平均モードである。平均モードには単純平均演算をするものと除去平均演算をするものが組み込まれている。いずれも計量演算を開始するまでの手順は同じであるため、まず計量演算開始以前の手順について説明する。(S01からS07)
【0041】
まず使用者により、計量の方法すなわち計量モード、すなわち最大値モードもしくは平均モードの選択が、設定部11によりなされる。
【0042】
搬入コンベア4が駆動を開始し、計量コンベア3もほぼ同時に駆動し始め、物品2は図1における矢印Aの方向に移動し始める。物品2が搬入コンベア4と、計量コンベア3の中間まで移動し、搬入センサ7が物品2の存在を検出するのを待つ状態となる(S01)。搬入センサ7が物品2を検出したら、次いで計量コンベア3を支持している荷重センサ6により、物品2の計量が開始される。
【0043】
この計量開始時直ちに、物品2の計量値を確定する演算が行われるわけではなく、物品2が計量コンベア3上に乗り始めたかどうかを判断するための計量が行われる。本実施例では1msec毎にサンプリングするA/Dコンバータを搭載しており、荷重センサ9から出力された重量に対する信号は前述の信号処理部8のLPFおよび移動平均フィルタにより処理され、重量演算部9へ送られる。
【0044】
重量演算部9は、記憶部10に記憶された所定の重量値Waと最新の重量値を比較して、最新の重量値がWaを超えたかどうかを判断して(S02)、タイマ1を起動させる(S03)。タイマ1の作動期間は、物品2の形状および重心位置等に応じて使用者等により決められるものであり、おおよそ物品2が計量コンベア3に乗り移り、荷重センサ9での計量が略一定になり始めた時点で終了とするのが一般的な設定方法である。
また所定の重量値Waは、物品が計量コンベア3上に無い時にも振動などで計量値がノイズとして現れるため、物品が乗り始めて重量の増加がみられた時点での重量値を用いている。
【0045】
さて、物品2が搬入センサ7検出エリアを通過し、このタイマ1が作動している期間中に後続の物品2bが搬入コンベア4により計量コンベア3へ送られて来て、その後搬入センサ7が後続の物品2bを検出した時には(S04)、タイマ1を強制終了させる(S05)。この状態では物品の計量コンベア3への2個乗りとなっている可能性が高いため、計量不能と重量演算部9に判断させ、判定部12へゼロの重量値の信号を送信し、判定部12はこれを受けて結果計量値表示部13へ計量不能を示す表示をするように指令する(S06)。
【0046】
このタイマ1が作動している最中に後続の物品2bが送られて来ず、搬入センサ7が後続の物品2bの検出が無いまま、タイマ1の所定の期間が経過した時点でタイマ1は作動期間を完了する(S07)。
【0047】
ここまでが、2つの計量モードに共通の手順である。
【0048】
次に、2つの計量モードのうち、まず最大値モードの計量について図2のS08以下にて説明する。
前述のタイマ1が完了した時点で、設定部11にて使用者が最大値モードを選択している場合は以下の様に行われる。
【0049】
タイマ1が完了した瞬間からタイマ2が作動を開始する(S08)。タイマ2の作動期間は、物品2の重量や形状、計量コンベア3の搬送速度とコンベア長、および計量信号が安定する時間等から鑑みて、使用者もしくは自動的にこれを定める手段により設定される。
【0050】
タイマ2の作動と同時に、その時点での計量値を重量演算部9は取得する(S09)。この計量値がタイマ2の作動期間中の最初の計量であれば(S10)、この計量値を最大値として記憶する(S12)。次に搬入センサ7から後続の物品2bの検出エッジ信号の有無を確認し(S20)、もし搬入センサ7から後続の物品2bの検出エッジ信号があれば、直ちにタイマ2の作動を停止する(S21)。
【0051】
もしこの計量値がタイマ2の作動期間中の最初の計量でなければ(S10)、現在の最大値と新しく取得した計量値を比較し(S11)、大きい方を最大値として記憶する(S12)。次に物品2の時と同様に、搬入センサ7から後続の物品2bの検出が行われ、タイマ2の作動期間完了まで、上記の新しく取得した計量値と記憶された最大値との比較を繰り返して行う(S22)。
【0052】
いずれにしても、タイマ2が完了もしくは停止させられた時点で、現在記憶している最大値を計量値として定義して(S30)、さらに動的補正係数演算処理を行って(S40)最終的な物品2の計量値を出力する。
【0053】
ここで動的補正係数演算処理とは、予めタイマ1、タイマ2の設定値を決めるために、試験用物品を所望の搬送条件でテストしてタイマ2の期間中に得られる計量値の平均値と、その試験用物品の静止時の重量との差を求め、物品が移動しながら計量される補正演算前の値から物品の補正重量値へ実行処理する演算処理である。
【0054】
重量演算部9によって動的補正係数演算処理(S40)がなされた後、判定部12によりその値が許容範囲にあるかどうかの判断がなされ(S50)、判定がOKなら判定OK出力(S52)、判定がNGなら判定NG出力(S51)がなされる。また同時にこの確定された物品の計量値も出力(S53)する。この表示は判定結果表示部13にて行われる。
【0055】
次に、平均モードの計量について図3のS08以下にて説明する。
前述のタイマ1が完了した時点で、設定部11にて使用者が平均値モードを選択している場合は以下の様に行われる。
【0056】
タイマ1が完了した瞬間からタイマ2が作動を開始する(S08)。タイマ2の作動期間は、前述の最大値モードと同様に、物品2の重量や形状、計量コンベア3の搬送速度とコンベア長、および計量信号が安定する時間から鑑みて、使用者もしくは自動的にこれを定める手段により設定される。
【0057】
タイマ2の作動と同時に、その瞬間で一番新しい計量値を重量演算部9は取得するとともに(S09)、この計量値を記憶部10にて記憶する(S13)。
【0058】
次いで、後続の物品2bの検出を搬入センサ7からの信号を基に判断し、もし搬入センサ7から後続の物品2bの検出が行われたら(S20)、直ちにタイマ2の作動を強制終了する(S21)。搬入センサ7から後続の物品2bの検出がなければ、タイマの2の作動期間完了まで新しい計量値を重量演算部9は取得しその都度記憶する(S22)。よって記憶部10はタイマ2の作動期間中に取得したすべての計量値を記憶することになる。
【0059】
タイマの2の完了もしくは強制終了した後、重量演算部9は、記憶部10にて記憶したタイマの2の作動期間内の全計量データを読みだして、平均値を演算する(S31)。
【0060】
本実施例では、平均値モードに単純平均と除去平均の2つがある。
【0061】
単純平均は、記憶部10にて記憶したタイマの2の作動期間内の全計量データを加算して、これをデータ数で割り算して平均値を求めたものである。
【0062】
除去平均は、記憶部10にて記憶したタイマの2の作動期間内の全計量データのうち最大値と最小値を抽出し、その最大値と最小値の差を所定の分割数にて割ってグループ分けし、最大のグループおよび最小のグループのデータを除去して、残りのグループのデータを単純平均して平均値を求めたものである。
【0063】
重量演算部9は、ここで得られた単純平均値もしくは除去平均値を計量値として定義して、さらに動的補正係数演算処理を行って最終的な物品2の計量値を出力する。
【0064】
重量演算部9によって動的補正係数演算処理(S40)がなされた後は、最大値モード時と同じ手順で行われる。
【0065】
次に、図4から図8の信号図を参照して、本発明の計量装置による物品2と後続の物品2bで起こりうる計量の状態について説明する。
【0066】
(a)は搬入センサ7から出力される信号で、L(Low)は物品の検出が無い時、H(High)は物品を検出した時を示す。
【0067】
(b)は信号処理部8から出力され、重量演算部9が受け取る物品の重量値の信号である。Waは記憶部10に記憶された所定の重量値で、タイマ1を起動させるトリガとなるものである。Wは記憶部10に記憶され、良否判定をする際に用いられる良否基準範囲の最小値である。WHは記憶部10に記憶され、良否判定をする際に用いられる良否基準範囲の最大値である。
従って各物品の計量値がWとWHの範囲内にあれば良品と判定部12にて判定され、範囲外であれば不良品と判定部12にて判定される。
また図6から図8においては、物品2と後続の物品2bのそれぞれの重量が理想的に得られた際の仮想信号を破線で表記している。
【0068】
(c)はタイマ1(T1)の動作を示すもので、L(Low)の状態ではタイマ1は作動していない状態、H(High)の状態はタイマ1が作動している状態を示している。
【0069】
(d)はタイマ2(T2)の動作を示すものでタイマ1同様に、L(Low)の状態ではタイマ2は作動していない状態、H(High)の状態はタイマ2が作動している状態を示している。
【0070】
(e)は判定部12が出力する状態を示し、OKの時は物品の計量結果が良否判定基準範囲内であることから良品を示し、NGの時は物品の計量結果が良否判定基準範囲外、もしくはタイマ1が途中で強制終了し計量不能出力がなされたことを示す。
【0071】
図4は、計量される物品が計量コンベア3に2個乗りをしないように所定の間隔をもって搬送される際の状態を示している。物品2は搬入センサ7により計量コンベア3への搬入が検出され、直ちに荷重センサ6で計量し、信号処理部8で処理された計量値がWaを超えた時点で、タイマ1が開始となる。その後所定の時間を経てタイマ1が終了して直ちにタイマ2が開始される。タイマ2が作動して計量値の取得が行われ、タイマ2が終了と同時に物品2の計量値が演算処理されることで確定され、これをもって判定部12にて良否判定が行われ、良品と判定されたためOKが判定結果表示部13に表示される。
【0072】
その後、後続の物品2bは搬入センサ7にて検出され、物品2と同様に計量が行われる。後続の物品2bは計量値がWHを超えたため、判定部12にて不良品と判定されNGが判定結果表示部13に表示される。
すなわちタイマ2が終了後、間隔が充分あって、一度物品の計量値がWaを下回った後に、後続の物品2bの検出が搬入センサ7により行われるケースである。
【0073】
図5は、図4よりも物品2と後続の物品2bの間隔が若干狭い場合を示している。先行の物品2の計量は図4の場合と同じであるため省略する。物品2は判定部12にて良否判定が行われ、良品と判定されたためOKが判定結果表示部13に表示される。
【0074】
その後、荷重センサ6による計量コンベア3の計量値がWa以下には下がる前に、後続の物品2bは搬入センサ7にて検出される。従って後続の物品2bの初期の計量値はWaより大きいため、タイマ1は直ちに開始される。タイマ1が所定の時間を経て終了し、直ちにタイマ2が開始して計量が行われる。この例では後続の物品2bは計量値がWHを超えたため、判定部12にて不良品と判定されNGが判定結果表示部13に表示される。
【0075】
図6は、図5よりもさらに物品2と後続の物品2bの間隔が狭い場合を示している。すなわち物品2におけるタイマ2の作動中に、後続の物品2bが搬入センサ7により検出された場合である。物品2の計量におけるタイマ2の起動までは前述の図4図5と同じである。タイマ2が起動しタイマ2の作動期間中に、搬入センサ7が後続の物品2bを検出した場合は、これと同時にタイマ2は終了となる。物品2の計量は途中で終わったタイマ2の期間で得られたデータに基づき、重量演算部9にて演算され、物品2の計量値が定められる。物品2は判定部12にて良否判定が行われ、良品と判定されたためOKが判定結果表示部13に表示される。
【0076】
一方搬入センサ7が後続の物品2bを検出した瞬間から後続の物品2bの計量に係るタイマ1が作動し始め、タイマ1の終了後にタイマ2が作動して、後続の物品2bの計量が行われる。後続の物品2bは判定部12にて良否判定が行われ、良品と判定されたためOKが判定結果表示部13に表示される。
【0077】
もしまたタイマ2の作動中にさらなる後続の物品が来た場合も同じように処理がなされる。
【0078】
図7図6よりもさらに物品2と後続の物品2bの間隔が狭い場合を示している。すなわちタイマ1の起動後、タイマ1の作動中に後続の物品2bの検出が搬入センサ7によりなされた場合である。本発明では搬入センサ7の出力信号がHからLへ移る状態は検出しておらず、もっぱらLからHへの移行のエッジを検出する。この場合、物品2の搬入の信号は一度Lになって切れるが、これを重量演算部9ではなんら扱うことはなく、後続の物品2bの搬入信号の立ち上がりエッジ信号を検出して、その瞬間タイマ1を終了させて、計量不能という信号を出力してNGが判定結果表示部13に表示される。計量する期間すなわちタイマ2の作動前にタイマ1が途中終了するので、計量期間が無いことになり、誤った計量を行うことを防止することが出来る。
【0079】
図8図7よりもさらに物品2と後続の物品2bの間隔が狭い場合を示している。この場合は物品2と後続の物品2bが途切れること無く搬送されており、1個なのか複数個なのかも判別は出来ない。すなわちタイマ1の作動期間中に後続の物品2bの搬入信号のエッジが無く連続して搬入センサ7のH信号が出力されている。従って図7のようにタイマ1を終わらせる手段がないため、所定のタイマ1の時間経過後、タイマ2により計量が行われる。しかしながら、実際には計量コンベア3には物品が複数個乗っていることから、その分大きな計量値が得られる。従って、判定結果は不良となりNGが判定結果表示部13に表示される。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上のように、本発明に係る計量装置は、搬入センサ7の立ち上がりエッジ信号と所定の重量値の検出によるタイマ起動に基づいて計量を実施することで、物品毎に物品マスタデータを作成することなく、また計量コンベアへの2個乗りが発生しても計量ミスをすること無く、しかも搬送速度を落とすことなしに、物品の重量計測をすることができるという効果を有し、肉、魚、食品、医薬品などの物品を計量して良否を判定する計量装置として有用である。
【符号の説明】
【0081】
1 計量装置
2 物品
2b 後続の物品
3 計量コンベア
4 搬入コンベア
5 搬出コンベア
6 荷重センサ
7 搬入センサ
8 信号処理部
9 重量演算部
10 記憶部
11 設定部
12 判定部
13 判定結果表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9