(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記クロスリーク判定工程によって同一の前記燃料電池セルにおいて前記クロスリークの発生が所定回数以上検知された場合に、警告を出力する警告出力工程、を含むことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1つに記載の燃料電池システムの運転方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術に係る燃料電池劣化診断装置によれば、クロスリークが少量の場合には、燃料ガス圧力の低下度合いが小さく、診断に要する時間が長くなってしまい、迅速な診断が困難であるという問題が生じる。
また、上記従来技術に係る燃料電池システムによれば、例えば、発電によって生成された水がカソード流路などのカソード系内に滞留し、水詰まり(フラッディング)が発生した場合にも、セル電圧が低下することから、クロスリークの発生有無を誤検知してしまう虞がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、クロスリークの発生有無を精度良く検知することが可能な燃料電池システムの運転方法および燃料電池システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明は以下の態様を採用した。
(1)本発明の一態様に係る燃料電池システムの運転方法は、アノード(例えば、実施形態でのアノード11A)の燃料およびカソード(例えば、実施形態でのカソード11B)の酸化剤によって発電する複数の燃料電池セルから成る燃料電池スタック(例えば、実施形態での燃料電池スタック11)と、前記燃料を含む燃料ガスを前記アノードに供給する燃料ガス供給手段(例えば、実施形態での水素タンク21および水素供給弁22)と、前記燃料ガスを前記アノードに供給するために通流させる燃料ガス供給路(例えば、実施形態での燃料ガス供給路55)と、前記アノードから排出される前記燃料ガスを通流させる燃料ガス排出路(例えば、実施形態での燃料ガス排出路56)と、前記酸化剤を含む酸化剤ガスを前記カソードに供給する酸化剤ガス供給手段(例えば、実施形態でのエアーコンプレッサー13)と、前記酸化剤ガスを前記カソードに供給するために通流させる酸化剤ガス供給路(例えば、実施形態での酸化剤ガス供給路51)と、前記カソードから排出される前記酸化剤ガスを通流させる酸化剤ガス排出路(例えば、実施形態での酸化剤ガス排出路52)と、前記酸化剤ガス排出路と前記酸化剤ガス供給路とを接続し、前記カソードから前記酸化剤ガス排出路に排出された前記酸化剤ガスを前記酸化剤ガス供給路に通流させる酸化剤ガス循環路(例えば、実施形態での酸化剤ガス循環路54)と、前記酸化剤ガス循環路に配置された酸化剤ガス循環ポンプ(例えば、実施形態での酸化剤ガス循環ポンプ19)と、前記酸化剤ガス循環路よりも前記酸化剤ガスの通流方向の下流側において、前記酸化剤ガス排出路に設けられた封止出口弁(例えば、実施形態での封止出口弁16)と、を備える燃料電池システムの運転方法であって、前記燃料電池システムの停止を指示する停止信号を受信する信号受信工程と、前記信号受信工程によって前記停止信号が受信された場合に、前記酸化剤ガス循環ポンプを駆動し、前記燃料電池スタックを所定条件で発電させる酸化剤ガス循環ディスチャージ工程と、前記酸化剤ガス循環ディスチャージ工程の実行中に、前記燃料電池セルのセル電圧を検出するセル電圧検出工程と、前記セル電圧検出工程によって検出された前記セル電圧に基づいて、前記アノードと前記カソードとの間に設けられた電解質膜(例えば、実施形態での固体高分子電解質膜11C)を介した前記アノードから前記カソードへの前記燃料ガスの漏れを示すクロスリークの発生有無を判定するクロスリーク判定工程と、を含み、前記酸化剤ガス循環ディスチャージ工程では、前記封止出口弁の遮断状態で前記酸化剤ガス循環ポンプを駆動
し、前記クロスリーク判定工程は、所定時間における前記セル電圧検出工程によって検出された前記セル電圧の低下幅がクロスリーク判定閾値以上である場合に、前記クロスリークが発生したと判定し、前記酸化剤ガス循環ポンプの回転数を把握する酸化剤ガス循環ポンプ回転数把握工程、を含み、前記クロスリーク判定工程は、前記酸化剤ガス循環ポンプ回転数把握工程によって前記酸化剤ガス循環ポンプの回転数を把握し、該回転数が小さいほど前記クロスリーク判定閾値を小さく設定する。
【0007】
(2)上記(1)に記載の燃料電池システムの運転方法では、前記燃料電池システムは、
前記燃料ガス排出路と前記燃料ガス供給路とを接続し、前記アノードから前記燃料ガス排出路に排出された前記燃料ガスを前記燃料ガス供給路に通流させる燃料ガス循環路(例えば、実施形態での燃料ガス循環路57)と、前記燃料ガス循環路に配置された燃料ガス循環ポンプ(例えば、実施形態での水素ポンプ28)と、を備え、前記信号受信工程によって前記停止信号が受信された場合に、前記燃料ガス循環ポンプを駆動する燃料ガス循環ポンプ駆動工程、を含んでもよい。
【0008】
(3)上記(1)または(2)に記載の燃料電池システムの運転方法では、前記クロスリーク判定工程は、前記アノードの圧力を前記カソードの圧力よりも高くしてもよい。
【0009】
(4)上記(1)〜(3)の何れか1つに記載の燃料電池システムの運転方法では、前記酸化剤ガス循環ディスチャージ工程は、電圧制御によってディスチャージ電流を設定してもよい。
【0010】
(5)上記(1)〜(4)の何れか1つに記載の燃料電池システムの運転方法は、前記クロスリーク判定工程によって同一の前記燃料電池セルにおいて前記クロスリークの発生が所定回数以上検知された場合に、警告を出力する警告出力工程、を含んでもよい。
【0014】
(
6)本発明の一態様に係る燃料電池システムの運転方法は、アノード(例えば、実施形態でのアノード11A)の燃料およびカソード(例えば、実施形態でのカソード11B)の酸化剤によって発電する複数の燃料電池セルから成る燃料電池スタック(例えば、実施形態での燃料電池スタック11)と、前記燃料を含む燃料ガスを前記アノードに供給する燃料ガス供給手段(例えば、実施形態での水素タンク21および水素供給弁22)と、前記燃料ガスを前記アノードに供給するために通流させる燃料ガス供給路(例えば、実施形態での燃料ガス供給路55)と、前記アノードから排出される前記燃料ガスを通流させる燃料ガス排出路(例えば、実施形態での燃料ガス排出路56)と、前記酸化剤を含む酸化剤ガスを前記カソードに供給する酸化剤ガス供給手段(例えば、実施形態でのエアーコンプレッサー13)と、前記酸化剤ガスを前記カソードに供給するために通流させる酸化剤ガス供給路(例えば、実施形態での酸化剤ガス供給路51)と、前記カソードから排出される前記酸化剤ガスを通流させる酸化剤ガス排出路(例えば、実施形態での酸化剤ガス排出路52)と、前記酸化剤ガス排出路と前記酸化剤ガス供給路とを接続し、前記カソードから前記酸化剤ガス排出路に排出された前記酸化剤ガスを前記酸化剤ガス供給路に通流させる酸化剤ガス循環路(例えば、実施形態での酸化剤ガス循環路54)と、前記酸化剤ガス循環路に配置された酸化剤ガス循環ポンプ(例えば、実施形態での酸化剤ガス循環ポンプ19)と、前記酸化剤ガス循環路よりも前記酸化剤ガスの通流方向の下流側において、前記酸化剤ガス排出路に設けられた封止出口弁(例えば、実施形態での封止出口弁16)と、を備える燃料電池システムの運転方法であって、前記燃料電池システムの停止を指示する停止信号を受信する信号受信工程と、前記信号受信工程によって前記停止信号が受信された場合に、前記酸化剤ガス循環ポンプを駆動し、前記燃料電池スタックを所定条件で発電させる酸化剤ガス循環ディスチャージ工程と、前記酸化剤ガス循環ディスチャージ工程の実行中に、前記燃料電池システムの前記アノードの圧力を前記カソードの圧力よりも高く設定する圧力調整工程と、前記酸化剤ガス循環ディスチャージ工程の実行中に、前記圧力調整工程の後、前記燃料電池のセル電圧を検出するセル電圧検出工程と、
前記セル電圧検出工程によって検出された前記セル電圧に基づいて、前記アノードと前記カソードとの間に設けられた電解質膜(例えば、実施形態での固体高分子電解質膜11C)を介した前記アノードから前記カソードへの前記燃料ガスの漏れを示すクロスリークの発生有無を判定するクロスリーク判定工程と、を含み、前記酸化剤ガス循環ディスチャージ工程では、前記封止出口弁の遮断状態で前記酸化剤ガス循環ポンプを駆動
し、前記クロスリーク判定工程は、所定時間における前記セル電圧検出工程によって検出された前記セル電圧の低下幅がクロスリーク判定閾値以上である場合に、前記クロスリークが発生したと判定し、前記酸化剤ガス循環ポンプの回転数を把握する酸化剤ガス循環ポンプ回転数把握工程、を含み、前記クロスリーク判定工程は、前記酸化剤ガス循環ポンプ回転数把握工程によって前記酸化剤ガス循環ポンプの回転数を把握し、該回転数が小さいほど前記クロスリーク判定閾値を小さく設定する。
【0015】
(
7)本発明の一態様に係る燃料電池システムは、アノード(例えば、実施形態でのアノード11A)の燃料およびカソード(例えば、実施形態でのカソード11B)の酸化剤によって発電する複数の燃料電池セルから成る燃料電池スタック(例えば、実施形態での燃料電池スタック11)と、前記燃料を含む燃料ガスを前記アノードに供給する燃料ガス供給手段(例えば、実施形態での水素タンク21および水素供給弁22)と、前記燃料ガスを前記アノードに供給するために通流させる燃料ガス供給路(例えば、実施形態での燃料ガス供給路55)と、前記アノードから排出される前記燃料ガスを通流させる燃料ガス排出路(例えば、実施形態での燃料ガス排出路56)と、前記酸化剤を含む酸化剤ガスを前記カソードに供給する酸化剤ガス供給手段(例えば、実施形態でのエアーコンプレッサー13)と、前記酸化剤ガスを前記カソードに供給するために通流させる酸化剤ガス供給路(例えば、実施形態での酸化剤ガス供給路51)と、前記カソードから排出される前記酸化剤ガスを通流させる酸化剤ガス排出路(例えば、実施形態での酸化剤ガス排出路52)と、前記酸化剤ガス排出路と前記酸化剤ガス供給路とを接続し、前記カソードから前記酸化剤ガス排出路に排出された前記酸化剤ガスを前記酸化剤ガス供給路に通流させる酸化剤ガス循環路(例えば、実施形態での酸化剤ガス循環路54)と、前記酸化剤ガス循環路に配置された酸化剤ガス循環ポンプ(例えば、実施形態での酸化剤ガス循環ポンプ19)と、前記酸化剤ガス循環路よりも前記酸化剤ガスの通流方向の下流側において、前記酸化剤ガス排出路に設けられた封止出口弁(例えば、実施形態での封止出口弁16)と、を備える燃料電池システムの運転制御装置であって、前記燃料電池システムの停止を指示する停止信号を受信する信号受信手段(例えば、実施形態での制御装置41)と、前記信号受信手段によって前記停止信号が受信された場合に、前記酸化剤ガス循環ポンプを駆動し、前記燃料電池スタックを所定条件で発電させる酸化剤ガス循環ディスチャージ手段(例えば、実施形態での制御装置41が兼ねる)と、前記酸化剤ガス循環ディスチャージ手段によって前記燃料電池スタックが所定条件で発電実行中に、前記燃料電池セルのセル電圧を検出するセル電圧検出手段(例えば、実施形態での電圧センサ38)と、前記セル電圧検出手段によって検出された前記セル電圧に基づいて、前記アノードと前記カソードとの間に設けられた電解質膜(例えば、実施形態での固体高分子電解質膜11C)を介した前記アノードから前記カソードへの前記燃料ガスの透過を示すクロスリークの発生有無を判定するクロスリーク判定手段(例えば、実施形態での制御装置41が兼ねる)と、を備え、前記酸化剤ガス循環ディスチャージ手段は、前記封止出口弁の遮断状態で前記酸化剤ガス循環ポンプを駆動
し、前記クロスリーク判定手段は、所定時間における前記セル電圧検出手段によって検出された前記セル電圧の低下幅がクロスリーク判定閾値以上である場合に、前記クロスリークが発生したと判定し、前記酸化剤ガス循環ポンプの回転数を把握する酸化剤ガス循環ポンプ回転数把握手段、を含み、前記クロスリーク判定手段は、前記酸化剤ガス循環ポンプ回転数把握手段によって前記酸化剤ガス循環ポンプの回転数を把握し、該回転数が小さいほど前記クロスリーク判定閾値を小さく設定する。
【発明の効果】
【0016】
上記(1)に記載の態様に係る燃料電池システムの運転方法によれば、燃料電池システムの停止時において、酸化剤ガス循環ポンプの駆動によってカソード系内での水の滞留および水詰まり(フラッディング)の発生を解消することができる。これによって、セル電圧に基づくクロスリークの発生有無を判定する際の誤判定を防止し、判定精度を向上させることができる。さらに、燃料電池を所定条件で発電(電気負荷へディスチャージ)させることによってカソードの酸化剤ガスを消費しているので、セル電圧の低下を促進することができ、クロスリークの発生有無を迅速に判定することができる。
また、例えばセル電圧と所定判定閾値とを比較する場合などに比べて、セル電圧の低下幅によってクロスリークの発生有無を判定するので、複数の燃料電池セルにばらつきがある場合であっても、クロスリークの発生有無を精度良く判定することができる。
また、酸化剤ガス循環ポンプの回転数が小さく、酸化剤ガスの流量が小さい場合には、カソード系内での水の滞留および水詰まり(フラッディング)が生じ易いので、クロスリークが発生していないセルのセル電圧が低下する場合がある。これによって、酸化剤ガス循環ポンプの回転数が小さいほどクロスリーク判定閾値を小さく設定することによって、誤判定を抑制することができる。
【0017】
さらに、上記(2)の場合、燃料ガス循環ポンプの駆動によってアノードの面内の燃料ガス濃度を均一化することができ、セル電圧の挙動が複数の燃料電池セル毎にばらつくことを抑制することができ、判定精度向上させることができる。さらに、アノードでのストイキ(アノードに供給される燃料ガスの理論消費量に対する供給量の比率)が不足することを防止することができ、ストイキ不足に起因する電解質膜の劣化を防止することができる。
【0018】
さらに、上記(3)の場合、クロスリークが発生している燃料電池セルにおいて電解質膜を介したアノードからカソードへの燃料ガスの漏れを増大させることができ、セル電圧の低下を促進させることによってクロスリークの発生有無を迅速に判定することができる。
【0019】
さらに、上記(4)の場合、セル電圧によるクロスリークの発生有無の判定を精度良く行なうことができる。例えば、電流制御によれば、正常な燃料電池セルであっても所望のセル電圧を確保することが困難であり、クロスリークの発生有無を精度良く判定することが困難である。
【0020】
さらに、上記(5)の場合、クロスリークの発生有無の判定の信頼性を向上させることができる。
【0024】
上記(
6)に記載の態様に係る燃料電池システムの運転方法によれば、燃料電池システムの停止時において、酸化剤ガス循環ポンプの駆動によってカソード系内での水の滞留および水詰まり(フラッディング)の発生を解消することができる。さらに、燃料電池を所定条件で発電(電気負荷へディスチャージ)させることによってカソードの酸化剤ガスを消費しているので、セル電圧の低下を促進することができる。さらに、アノードの圧力をカソードの圧力よりも高く設定した状態でセル電圧を検出するので、各セルの挙動が明確な状態でセル電圧を検出することができ、セル電圧を精度良く検出することができる。
また、例えばセル電圧と所定判定閾値とを比較する場合などに比べて、セル電圧の低下幅によってクロスリークの発生有無を判定するので、複数の燃料電池セルにばらつきがある場合であっても、クロスリークの発生有無を精度良く判定することができる。
また、酸化剤ガス循環ポンプの回転数が小さく、酸化剤ガスの流量が小さい場合には、カソード系内での水の滞留および水詰まり(フラッディング)が生じ易いので、クロスリークが発生していないセルのセル電圧が低下する場合がある。これによって、酸化剤ガス循環ポンプの回転数が小さいほどクロスリーク判定閾値を小さく設定することによって、誤判定を抑制することができる。
【0025】
上記(
7)に記載の態様に係る燃料電池システムによれば、燃料電池システムの停止時あるいは一時的な停止時などにおいて、酸化剤ガス循環ポンプの駆動によってカソード系内での水の滞留および水詰まり(フラッディング)の発生を解消した状態で、セル電圧に基づくクロスリークの発生有無を判定するので、判定精度を向上させることができる。さらに、燃料電池を所定条件で発電(電気負荷へディスチャージ)させることによってカソードの酸化剤ガスを消費しているので、セル電圧の低下を促進することができ、クロスリークの発生有無を迅速に判定することができる。
また、例えばセル電圧と所定判定閾値とを比較する場合などに比べて、セル電圧の低下幅によってクロスリークの発生有無を判定するので、複数の燃料電池セルにばらつきがある場合であっても、クロスリークの発生有無を精度良く判定することができる。
また、酸化剤ガス循環ポンプの回転数が小さく、酸化剤ガスの流量が小さい場合には、カソード系内での水の滞留および水詰まり(フラッディング)が生じ易いので、クロスリークが発生していないセルのセル電圧が低下する場合がある。これによって、酸化剤ガス循環ポンプの回転数が小さいほどクロスリーク判定閾値を小さく設定することによって、誤判定を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態に係る燃料電池システムの運転方法について添付図面を参照しながら説明する。
【0028】
本実施形態に係る燃料電池システム10は、例えば、走行駆動用のモータMおよびモータMを制御するパワードライブユニットPDUを備える車両1に電源として搭載されている。
なお、車両1は、例えばイグニッションスイッチなどのように、運転者による入力操作に応じて車両1の起動を指示する起動信号または停止を指示する停止信号を出力するスイッチ2を備えている。
また、車両1は、例えば、視覚的伝達装置と聴覚的伝達装置となどから成る報知装置3を備えている。報知装置3の視覚的伝達装置は、例えば車両1のインストゥルメントパネルに配置されたMID(マルチインフォメーションディスプレイ)やメータパネル、車両1と通信可能な情報端末の表示器、適宜の箇所に配置された灯体などにおいて、適宜の情報を表示、または適宜の報知灯を点滅あるいは点灯させる。報知装置3の聴覚的伝達装置は、例えばスピーカなどにおいて、適宜の報知音や音声などを出力する。
【0029】
燃料電池システム10は、
図1に示すように、燃料電池スタック11と、インテイク12と、エアーコンプレッサー13と、封止入口弁15と、封止出口弁16と、圧力制御弁17と、バイパス弁18と、酸化剤ガス循環ポンプ19と、逆止弁20と、水素タンク21と、水素供給弁22と、遮断弁23と、インジェクタ24と、エゼクタ25と、気液分離器27と、水素ポンプ28と、逆止弁29と、パージ弁30と、ドレイン弁31と、希釈器32と、エアフローセンサー33と、温度センサ34と、圧力センサ35と、水素温度センサ36と、水素圧力センサ37と、電圧センサ38と、コンタクタ39と、電圧調整器(FCVCU)40と、制御装置41と、を備えている。
【0030】
燃料電池スタック11は、複数の燃料電池セルが積層された積層体(図示略)と、この積層体を積層方向の両側から挟み込む一対のエンドプレート(図示略)と、を備えている。
燃料電池セルは、膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)と、この膜電極接合体を接合方向の両側から挟み込む一対のセパレータと、を備えている。
膜電極接合体は、アノード触媒およびガス拡散層からなる燃料極(アノード)11Aと、カソード触媒およびガス拡散層からなる酸素極(カソード)11Bと、アノード11Aおよびカソード11Bによって厚さ方向の両側から挟み込まれた陽イオン交換膜などからなる固体高分子電解質膜11Cと、を備えている。
【0031】
燃料電池スタック11のアノード11Aには、燃料として水素を含む燃料ガス(反応ガス)が水素タンク21から供給され、カソード11Bには、酸化剤として酸素を含む酸化剤ガス(反応ガス)である空気がエアーコンプレッサー13から供給される。
アノード11Aに供給された水素は、アノード触媒上で触媒反応によりイオン化され、水素イオンは、適度に加湿された固体高分子電解質膜11Cを介してカソード11Bへと移動する。水素イオンの移動に伴って発生する電子は直流電流として外部回路(電圧調整器40など)に取り出し可能である。
アノード11Aからカソード11Bのカソード触媒上へと移動した水素イオンは、カソード11Bに供給された酸素と、カソード触媒上の電子と反応して、水を生成する。
【0032】
なお、燃料電池スタック11の複数の燃料電池セルには、例えばDHE(Dynamic Hydrogen Electrode)などの参照電極(図示略)が接続されていてもよい。
参照電極は、例えば、水素を参照電位(0V)として、参照電位に対するアノード11Aの電位(アノード電位)を測定して、測定結果の信号を制御装置41に出力可能である。
参照電極は、例えば、複数の燃料電池セルの全てに設けられていてもよいし、複数の燃料電池セルのうちの所定の燃料電池セルにのみ設けられていてもよい。
【0033】
エアーコンプレッサー13は、制御装置41により駆動制御されるモータなどを備え、このモータの駆動力によってインテイク12を介して外部から空気を取り込んで圧縮し、圧縮後の空気をカソード11Bに接続された酸化剤ガス供給路51に排出する。
【0034】
封止入口弁15は、エアーコンプレッサー13と、燃料電池スタック11のカソード11Bに空気を供給可能なカソード供給口11aと、を接続する酸化剤ガス供給路51に設けられ、制御装置41の制御によって酸化剤ガス供給路51を開閉可能であって、カソード11Bを封止可能である。
封止出口弁16は、燃料電池スタック11のカソード11Bから空気などの排出ガス(カソードオフガス)を排出可能なカソード排出口11bと、希釈器32と、を接続する酸化剤ガス排出路52に設けられ、制御装置41の制御によって酸化剤ガス排出路52を開閉可能であって、カソード11Bを封止可能である。
【0035】
圧力制御弁17は、酸化剤ガス排出路52における封止出口弁16と希釈器32との間に設けられ、制御装置41の制御によって酸化剤ガス排出路52を流通するカソードオフガスの圧力を制御する。
【0036】
バイパス弁18は、酸化剤ガス供給路51におけるエアーコンプレッサー13と封止入口弁15との間と、酸化剤ガス排出路52における圧力制御弁17と希釈器32との間と、を接続するバイパス路53に設けられている。
バイパス弁18は、エアーコンプレッサー13から供給された空気を、酸化剤ガス供給路51から分岐してカソード11Bを迂回するバイパス路53を介して、希釈器32に供給可能であり、制御装置41の制御によってバイパス路53を開閉可能である。
【0037】
酸化剤ガス循環ポンプ19は、酸化剤ガス供給路51における封止入口弁15とカソード供給口11aとの間と、酸化剤ガス排出路52におけるカソード排出口11bと封止出口弁16との間と、を接続する酸化剤ガス循環路54に設けられている。
酸化剤ガス循環ポンプ19は、燃料電池スタック11のカソード11Bを通過してカソード排出口11bから酸化剤ガス排出路52に排出されたカソードオフガスの少なくとも一部を酸化剤ガス循環路54に通流させる。そして、酸化剤ガス循環路54を流通したカソードオフガスを、封止入口弁15からカソード供給口11aに向かい酸化剤ガス供給路51を流通する空気(カソードガス)に混合して、カソード11Bに再び供給する。
【0038】
逆止弁20は、酸化剤ガス排出路52から酸化剤ガス供給路51に向かう方向を順方向として、酸化剤ガス循環路54に設けられている。
【0039】
水素タンク21は、圧縮された水素を貯留し、水素を排出可能である。水素タンク21は、内部に配置された電磁遮断弁(インタンク電磁弁)を備え、このインタンク電磁弁(図示略)は、水素タンク21から外部への水素の排出を遮断可能である。
水素供給弁22は、水素タンク21と、燃料電池スタック11のアノード11Aに水素を供給可能なアノード供給口11cと、を接続する燃料ガス供給路55に設けられている。
水素供給弁22は、制御装置41の制御またはエアーコンプレッサー13から排出される空気の圧力による信号圧などに応じた圧力を有する水素を、水素タンク21から燃料ガス供給路55に供給する。
【0040】
遮断弁23は、燃料ガス供給路55において水素供給弁22とアノード供給口11cとの間に設けられ、制御装置41の制御によって燃料ガス供給路55を遮断可能である。
【0041】
インジェクタ24は、燃料ガス供給路55において遮断弁23とアノード供給口11cとの間に設けられ、制御装置41の制御によって目標圧力の水素をアノード供給口11cへ所定の周期で間欠的に供給する。これによって、燃料電池スタック11のカソード11Bとアノード11Aとの間の極間差圧を所定の圧力に保持する。
【0042】
エゼクタ25は、燃料ガス供給路55においてインジェクタ24とアノード供給口11cとの間に設けられている。
エゼクタ25は、燃料電池スタック11のアノード11Aを通過してアノード排出口11dから燃料ガス排出路56に排出された未反応の水素を含む排出ガス(アノードオフガス)の少なくとも一部を、燃料ガス排出路56と燃料ガス供給路55とを接続する燃料ガス循環路57に通流させる。そして、燃料ガス循環路57を流通したアノードオフガスを、インジェクタ24からアノード供給口11cに向かい燃料ガス供給路55を流通する水素に混合して、アノード11Aに再び供給する。
【0043】
気液分離器27は、燃料ガス排出路56においてアノード排出口11dと燃料ガス循環路57との間に設けられている。
気液分離器27は、燃料電池スタック11のアノード11Aを通過してアノード排出口11dから排出されたアノードオフガスに含まれる水分を分離する。そして、分離後のアノードオフガスを燃料ガス排出路56に接続されたガス排出口(図示略)から排出し、分離後の水分を水分排出路59に接続された水分排出口(図示略)から排出する。
【0044】
水素ポンプ(燃料ガス循環ポンプ)28は、燃料ガス排出路56における気液分離器27とパージ弁30との間と、エゼクタ25の副流導入口(図示略)とに接続された燃料ガス循環路57に設けられている。
水素ポンプ28は、燃料電池スタック11のアノード11Aを通過してアノード排出口11dから燃料ガス排出路56に排出されたアノードオフガスの少なくとも一部を、燃料ガス循環路57に通流させる。そして、燃料ガス循環路57を流通したアノードオフガスを、インジェクタ24からアノード供給口11cに向かい燃料ガス供給路55を流通する水素に混合して、アノード11Aに再び供給する。
【0045】
逆止弁29は、燃料ガス排出路56から燃料ガス供給路55に向かう方向を順方向として、燃料ガス循環路57に設けられている。
【0046】
パージ弁30は、燃料ガス排出路56において気液分離器27のガス排出口と希釈器32との間に設けられている。パージ弁30は、制御装置41の制御によって燃料ガス排出路56を開閉可能であって、気液分離器27のガス排出口から排出されたアノードオフガスを制御装置41の制御によって希釈器32に供給可能である。
【0047】
ドレイン弁31は、水分排出路59において気液分離器27の水分排出口と希釈器32との間に設けられている。ドレイン弁31は、制御装置41の制御によって水分排出路59を開閉可能であって、気液分離器27の水分排出口から排出された水分を制御装置41の制御によって希釈器32に供給可能である。
【0048】
希釈器32は、酸化剤ガス排出路52と、燃料ガス排出路56と、水分排出路59と、に接続されている。
希釈器32は、パージ弁30から供給されたアノードオフガスの水素濃度を、バイパス弁18から供給された空気または圧力制御弁17から供給されたカソードオフガスによって希釈する。そして、希釈後の水素濃度が所定濃度以下に低減された排出ガスを外部(例えば、大気中など)に排出する。
【0049】
エアフローセンサー33は、インテイク12の下流側に設けられ、インテイク12を介して外部から取り込まれる空気の流量Gaを検出し、検出結果の信号を制御装置41に出力する。
温度センサ34は、燃料電池スタック11のカソード11Bに供給される空気の温度Taを検出し、検出結果の信号を制御装置41に出力する。
圧力センサ35は、例えば酸化剤ガス供給路51において封止入口弁15よりも上流側かつ酸化剤ガス供給路51と酸化剤ガス循環路54との接続位置よりも下流側に設けられている。圧力センサ35は、燃料電池スタック11のカソード11Bに供給される空気の圧力Paを検出し、検出結果の信号を制御装置41に出力する。
【0050】
水素温度センサ36は、燃料電池スタック11のアノード11Aに供給される燃料ガスの温度Thを検出して、検出結果の信号を制御装置41に出力する。
水素圧力センサ37は、燃料電池スタック11のアノード11Aに供給される燃料ガスの圧力Phを検出し、検出結果の信号を制御装置41に出力する。
電圧センサ38は、燃料電池スタック11を構成する複数の燃料電池セルの各々の正極および負極間の電圧(セル電圧)VFCを検出して、検出結果の信号を制御装置41に出力する。
【0051】
コンタクタ39は、燃料電池スタック11の正極および負極に接続され、制御装置41の制御によって、燃料電池スタック11と電気負荷(例えば、パワードライブユニットPDUなど)との接続と遮断とを切り替える。
電圧調整器(FCVCU)40は、コンタクタ39を介した燃料電池スタック11の正極および負極と、電気負荷との間に配置され、制御装置41の制御によって、燃料電池スタック11から出力される電圧および電流を調整する。
【0052】
制御装置41は、スイッチ2から出力される信号と、各センサ33〜38から出力される検出結果の信号に基づいて、燃料電池システム10の動作を制御する。
【0053】
なお、燃料電池システム10は、例えば、車両1に搭載された走行駆動用のモータMおよび蓄電装置(図示略)などの電気機器に加えて、制御装置41の制御によって燃料電池スタック11に対する接続および遮断が切り替え可能かつ負荷電流が変更可能とされた電気負荷(例えば、ディスチャージ抵抗や電子負荷など)を備えていてもよい。この場合、制御装置41は、燃料電池スタック11の発電時の放電(ディスチャージ)として、電気負荷への放電を制御可能である。
【0054】
本実施形態による燃料電池システム10は上記構成を備えており、次に、この燃料電池システム10の動作(つまり、燃料電池システム10の運転方法)について説明する。
【0055】
制御装置41は、クロスリーク判定工程の実行によって、電圧センサ38によって検出された複数の燃料電池セルの各々のセル電圧VFCに基づいて、クロスリーク(つまり、各燃料電池セルの固体高分子電解質膜11Cを介したアノード11Aからカソード11Bへの燃料ガスの漏れ)の発生有無を判定する。
すなわち、燃料電池スタック11の各燃料電池セルにおいて、アノード11Aおよびカソード11Bの電位は、各アノード触媒およびカソード触媒近傍に存在するガスの種類によって決定される。水素と酸素との組み合わせにおいて、水素リッチであれば、水素のイオン化(H
2→2H
++2e
−)によって、混成電位は0Vとなる。一方、酸素リッチであれば、電気化学反応(O
2+4H
++4e
−→2H
2O)の理論起電力(=1.23V)によって、混成電位は1V程度になる。したがって、カソード11Bの電位の低下に起因して、電圧センサ38によって検出されたセル電圧VFCが低下した場合には、クロスリークの発生によって、固体高分子電解質膜11Cを介したアノード11Aからカソード11Bへの水素ガスの漏れが生じた可能性がある。ただし、エアーコンプレッサー13からカソード11Bに供給される空気の所定の流量制御を継続する燃料電池スタック11の通常の発電時には、クロスリークが発生していたとしても、カソード11Bが酸素リッチに維持されることによって、セル電圧VFCの低下は僅か、あるいは検知困難な程度に小さい虞がある。
これらに対して、制御装置41は、信号受信工程の実行によって、燃料電池システム10の停止を指示する停止信号を受信すると、酸化剤ガス循環ディスチャージ工程を実行する。この酸化剤ガス循環ディスチャージ工程では、封止出口弁16の遮断状態で酸化剤ガス循環ポンプ19を駆動し、燃料電池スタック11を発電させ、燃料電池スタック11から電気負荷へ放電(ディスチャージ)させる。これによって、カソード11Bから排出されたカソードオフガスに残存する酸素を消費するようにして、カソード11Bの酸素濃度を低下させ、クロスリークの発生時におけるセル電圧VFCの低下を促進する。
【0056】
この酸化剤ガス循環ディスチャージ工程の実行時において、例えば
図2(A)に示すようにクロスリークが発生していない正常時の場合には、カソード11Bの酸素濃度の低下によって、各燃料電池セルのセル電圧VFCが揃って低下傾向に変化する。これによって、複数の燃料電池セルのセル電圧VFCの平均値(平均セル電圧)と、複数の燃料電池セルのセル電圧VFCのうちの最低値(最低セル電圧)とは、ほぼ一致した変化を示す。
これに対して、例えば
図2(B)に示すように複数の燃料電池セルの何れかにクロスリークが発生している場合には、クロスリークが発生していない燃料電池セルに比べて、クロスリークが発生している燃料電池セルのセル電圧VFCが、より急激かつ大幅な低下傾向を示す。これによって、クロスリークが発生している燃料電池セルのセル電圧VFCに相当する最低セル電圧は、平均セル電圧に比べて、より低下する。
【0057】
また、制御装置41は、酸化剤ガス循環ディスチャージ工程の実行によって、酸化剤ガス循環ポンプ19を駆動して、カソード系内で酸化剤ガスを循環させることによって、カソード系内での水の滞留および水詰まり(フラッディング)の発生を解消している。
例えば、封止出口弁16の遮断状態で酸化剤ガス循環ポンプ19を駆動せずに、カソード11Bの酸素濃度を低下させるようにしてディスチャージを行なう場合には、複数の燃料電池セルの何れかにおいて、水の滞留および水詰まり(フラッディング)が発生して、セル電圧VFCが低下する場合がある。これによって、各燃料電池セルにおける水の滞留および水詰まり(フラッディング)の発生有無によって、複数の燃料電池セルのセル電圧VFCのばらつきが増大する場合がある。
これに対して、制御装置41は、封止出口弁16の遮断状態で酸化剤ガス循環ポンプ19を駆動して、カソード系内で酸化剤ガスを循環させることによって、各燃料電池セルにおける水の滞留および水詰まり(フラッディング)によるセル電圧VFCの低下を防ぎ、複数の燃料電池セルのセル電圧VFCのばらつきを抑制している。
【0058】
また、制御装置41は、酸化剤ガス循環ディスチャージ工程の実行時に、燃料ガス循環ポンプ駆動工程の実行によって、遮断弁23の遮断状態で水素ポンプ28およびインジェクタ24を駆動することによって、アノード11Aの圧力をカソード11Bの圧力よりも高くする。これによって、クロスリークが発生している燃料電池セルにおいて固体高分子電解質膜11Cを介したアノード11Aからカソード11Bへの燃料ガスの漏れを増大させ、セル電圧VFCの低下を促進させる。
また、制御装置41は、酸化剤ガス循環ディスチャージ工程の実行時に、電圧制御によってディスチャージ電流(燃料電池スタック11から電気負荷への放電電流)を設定する。
【0059】
そして、制御装置41は、酸化剤ガス循環ディスチャージ工程の実行中に、セル電圧検出工程の実行によって、電圧センサ38によって複数の燃料電池セルの各々のセル電圧VFCを検出する。そして、クロスリーク判定工程の実行によって、電圧センサ38によって検出された複数の燃料電池セルの各々のセル電圧VFCに基づいて、所定時間におけるセル電圧VFCの低下幅がクロスリーク判定閾値以上である場合に、クロスリークが発生したと判定する。さらに、同一の燃料電池セルにおいてクロスリークの発生が所定回数以上検知された場合に、警告出力工程の実行によって、報知装置3によって警告を出力する。なお、制御装置41は、酸化剤ガス循環ディスチャージ工程の実行中に、アノード11Aの圧力をカソード11Bの圧力よりも高く設定する圧力調整工程を実行し、この圧力調整工程の後、セル電圧検出工程を実行してもよい。
また、制御装置41は、酸化剤ガス循環ポンプ回転数把握工程の実行によって、酸化剤ガス循環ポンプ19の回転数を把握し、回転数が小さいほどクロスリーク判定閾値を小さく設定する。
【0060】
以下に、燃料電池システム10の運転方法の詳細について説明する。
先ず、
図3に示す時刻t0のように、車両1のイグニッションスイッチがオフ(IGOFF)とされたとき、あるいは車両1のアイドル停止時などにおいて、制御装置41は、信号受信工程によって、燃料電池システム10の停止を指示する停止信号を受信すると、インタンク電磁弁および遮断弁23を開放状態とする。さらに、水素ポンプ28の停止状態でインジェクタ24を目標圧制御によって駆動し、目標圧力の水素をアノード供給口11cへ所定の周期で間欠的に供給する。
さらに、封止入口弁15および封止出口弁16の開放状態かつ酸化剤ガス循環ポンプ19の停止状態でエアーコンプレッサー13を所定の流量制御によって駆動し、燃料電池スタック11の電圧を所定電圧に維持する定電圧(CV)制御を実行する。
【0061】
次に、制御装置41は、時刻t1において、インタンク電磁弁および遮断弁23を開放状態から遮断状態へと切り替え、インジェクタ24に印加する水素の圧力の増大を完了する。
次に、時刻t2において、燃料ガス循環ポンプ駆動工程によって、水素ポンプ28の所定回転数での駆動を開始する。さらに、封止入口弁15および封止出口弁16を開放状態から遮断状態へと切り替え、希釈器32における水素濃度希釈のためにエアーコンプレッサー13を所定回転数で駆動し、酸化剤ガス循環ポンプ19の所定回転数での駆動を開始する。
【0062】
次に、制御装置41は、時刻t2から水素ポンプ28の所定の立ち上がり時間が経過した時刻t3において、酸化剤ガス循環ディスチャージ工程によって、エアーコンプレッサー13から希釈器32に空気を供給して、希釈器32における水素濃度の希釈を開始するとともに、燃料電池スタック11から電気負荷への放電(ディスチャージ)を開始する。さらに、燃料電池スタック11の放電電圧を排気再循環ディスチャージ用の所定電圧に維持する定電圧(CV)制御を実行しつつ、セル電圧検出工程によって、電圧センサ38によって複数の燃料電池セルの各々のセル電圧VFCを検出する。さらに、クロスリーク判定工程によって、電圧センサ38によって検出された複数の燃料電池セルの各々のセル電圧VFCに基づいて、クロスリークの発生有無を検知する。
【0063】
次に、制御装置41は、時刻t3からクロスリークの発生有無の検知を継続する所定時間が経過した時刻t4において、水素ポンプ28の運転を停止し、インジェクタ24の目標圧制御を終了する。さらに、酸化剤ガス循環ポンプ19を停止させ、燃料電池スタック11から電気負荷への放電(ディスチャージ)を停止し、セル電圧VFCに基づくクロスリークの発生有無の検知を終了する。
【0064】
次に、制御装置41は、時刻t3から希釈器32における水素濃度希釈を継続する所定時間が経過した時刻t5において、エアーコンプレッサー13を停止し、希釈器32への空気の供給を停止し、希釈器32における水素濃度希釈を完了する。
【0065】
上述したように、本実施形態による燃料電池システム10および燃料電池システム10の運転方法によれば、酸化剤ガス循環ディスチャージ工程の実行によって、カソード系内での水の滞留および水詰まり(フラッディング)の発生を解消した状態で、カソード11Bの酸素濃度を低下させつつ、燃料電池スタック11から電気負荷へのディスチャージを実行することができる。したがって、酸化剤ガス循環ディスチャージ工程の実行によって、複数の燃料電池セルのセル電圧VFCのばらつきを抑制し、クロスリークによるセル電圧VFCの低下を促進して、セル電圧検出工程およびクロスリーク判定工程の実行によって、クロスリークの発生有無を迅速かつ精度良く判定することができる。
さらに、燃料ガス循環ポンプ駆動工程の実行によって、アノード11Aの面内の水素濃度を均一化することができ、セル電圧VFCの挙動が複数の燃料電池セル毎にばらつくことを抑制することができる。これによって、クロスリーク判定工程によるクロスリークの発生有無の判定精度を向上させることができる。さらに、アノード11Aでのストイキ(アノード11Aに供給される燃料ガスの理論消費量に対する供給量の比率)が不足することを防止することができ、ストイキ不足に起因する固体高分子電解質膜11Cの劣化を防止することができる。
【0066】
さらに、アノード11Aの圧力をカソード11Bの圧力よりも高くすることによって、クロスリークが発生している燃料電池セルにおいて固体高分子電解質膜11Cを介したアノード11Aからカソード11Bへの水素の漏れを増大させることができ、セル電圧VFCの低下を促進させることによってクロスリークの発生有無を迅速に判定することができる。
さらに、酸化剤ガス循環ディスチャージ工程の実行時に、電圧制御によってディスチャージ電流(燃料電池スタック11から電気負荷への放電電流)を設定することによって、セル電圧VFCに基づくクロスリークの発生有無の判定を精度良く行なうことができる。
【0067】
さらに、同一の燃料電池セルにおいてクロスリークの発生が所定回数以上検知された場合に、警告出力工程の実行によって、報知装置3によって警告を出力するので、クロスリークの発生有無の判定の信頼性を向上させることができる。
さらに、セル電圧VFCの低下幅によってクロスリークの発生有無を判定するので、例えばセル電圧VFCと所定判定閾値とを比較する場合などに比べて、複数の燃料電池セルのセル電圧VFCにばらつきがある場合であっても、クロスリークの発生有無を精度良く判定することができる。
さらに、酸化剤ガス循環ポンプ19の回転数が小さいほどクロスリーク判定閾値を小さく設定することによって、カソード系内での水の滞留および水詰まり(フラッディング)に起因する誤判定を抑制することができる。
【0068】
(第1変形例)
なお、上述した実施形態において、制御装置41は、酸化剤ガス循環ディスチャージ工程の実行中に、所定時間におけるセル電圧VFCの低下幅に基づいてクロスリークの発生有無を判定するとしたが、これに限定されず、セル電圧VFCの低下速度の変化に基づいてクロスリークの発生有無を判定してもよい。
この第1変形例において、制御装置41は、先ず、初回の酸化剤ガス循環ディスチャージ工程の実行時に、電圧センサ38によって検出された複数の燃料電池セルの各々のセル電圧VFCに基づいて、各セル電圧VFCの低下速度を検知する。そして、各セル電圧VFCの低下速度を初期情報として記憶する。次に、2回目以降の酸化剤ガス循環ディスチャージ工程の実行時に、セル特性記憶工程の実行によって、電圧センサ38によって検出された複数の燃料電池セルの各々のセル電圧VFCに基づいて、各セル電圧VFCの低下速度を検知する。そして、検知した各セル電圧VFCの低下速度が、記憶している初期情報に比べて、所定速度以上上昇しているか否かに応じて、クロスリークの発生有無を判定する。
この第1変形例によれば、異なるタイミングで検知したセル電圧VFCの低下速度を比較するので、複数の燃料電池セルのセル電圧VFCにばらつきがある場合であっても、各燃料電池セルにおけるクロスリークの発生有無を精度良く判定することができる。
また、上述した実施形態において、制御装置41は、最低セル電圧と平均セル電圧との差に基づいてクロスリークの発生有無を判定してもよい。例えば、最低セル電圧と平均セル電圧との差が所定値以上であればクロスリークが発生していると判定してもよい。
【0069】
(第2変形例)
なお、上述した実施形態において、制御装置41は、例えば
図4に示すように、酸化剤ガス循環ポンプ19の駆動デューティに応じてクロスリーク判定閾値を可変としてもよい。
この第2変形例において、制御装置41は、酸化剤ガス循環ポンプ19の駆動デューティが、所定の正常時の駆動デューティから所定の下限値に向かい低下することに伴い、クロスリーク判定閾値を減少傾向に変化させる。なお、制御装置41は、酸化剤ガス循環ポンプ19の駆動デューティが所定の下限値未満の場合には、クロスリーク判定閾値を不定として、このクロスリーク判定閾値を用いたクロスリーク判定工程の実行を禁止する。
【0070】
この第2変形例によれば、酸化剤ガス循環ポンプ19の異常などによって酸化剤ガスの循環量が所定の正常時よりも低下している場合には、複数の燃料電池セルの積層方向での酸化剤ガスの分配に差が生じる。そして、酸化剤ガスの分配量が少ない燃料電池セルでは、酸素の消費によって酸素濃度が低下することに伴ってセル電圧VFCが低下する。一方、酸化剤ガスの分配量が多い燃料電池セルでは、酸素濃度の低下が抑制され、セル電圧VFCの低下が抑制される。これらによって、ディスチャージに起因する複数の燃料電池セルのセル電圧VFC(あるいはセル電圧VFCの低下幅)のばらつきが増大する。
これに対して、酸化剤ガス循環ポンプ19の駆動デューティの低下に伴い、クロスリーク判定閾値を増大させることによって、ディスチャージに起因するセル電圧VFCの低下と、クロスリークに起因するセル電圧VFCの低下とを、明確に判別することができる。そして、セル電圧VFCの低下幅のばらつきに起因する誤判定(つまり、ディスチャージに起因するセル電圧VFCの低下を、クロスリークに起因するセル電圧VFCの低下であると、誤って判定すること)を抑制することができる。
【0071】
なお、この第2変形例において、例えば、セル電圧VFCが所定判定閾値以下であるか否かの判定に応じてクロスリークの発生有無を判定する場合には、酸化剤ガス循環ポンプ19駆動デューティの低下に伴い、セル電圧VFCに対する所定判定閾値を低下させればよい。
また、制御装置41は、セル電圧VFCの低下幅に基づいてクロスリークの発生有無を判定してもよい。制御装置41は、例えば
図5に示すように、クロスリークの発生有無を判定するためのセル電圧VFCの低下幅に対する閾値(電圧低下幅)を、酸化剤ガス循環ポンプ19の駆動デューティに応じて可変としてもよい。この場合、制御装置41は、酸化剤ガス循環ポンプ19の駆動デューティが、所定の正常時の駆動デューティから所定の下限値に向かい低下することに伴い、セル電圧VFCの低下幅に対する閾値(電圧低下幅)を増大傾向に変化させる。そして、セル電圧VFCの低下幅が、閾値(電圧低下幅)以上であればクロスリークが発生していると判定する。
【0072】
以上、説明した本実施形態は、本発明を実施するうえでの一例を示すものであり、本発明が前記した実施形態に限定して解釈されるものではないことは言うまでもない。