特許第6240943号(P6240943)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6240943研磨装置およびそれを用いたGaN基板の研磨加工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240943
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】研磨装置およびそれを用いたGaN基板の研磨加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20171127BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20171127BHJP
【FI】
   H01L21/304 621D
   H01L21/304 622W
   B24B37/00 K
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-226429(P2015-226429)
(22)【出願日】2015年11月19日
(65)【公開番号】特開2017-98322(P2017-98322A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2016年11月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】391011102
【氏名又は名称】株式会社岡本工作機械製作所
(72)【発明者】
【氏名】伊東 利洋
(72)【発明者】
【氏名】山本 栄一
(72)【発明者】
【氏名】久保 富美夫
【審査官】 宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−200944(JP,A)
【文献】 特開2006−024910(JP,A)
【文献】 特開2003−318139(JP,A)
【文献】 特開2008−210880(JP,A)
【文献】 特開2015−090945(JP,A)
【文献】 特開2007−160496(JP,A)
【文献】 特開2011−146695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な固定板上に紫外線を透光できるエンジニアプラスチック製研磨材を積層した構造の研磨定盤
この研磨定盤下方に設置されて前記エンジニアプラスチック製研磨材に向かって紫外線を照射する紫外線照射光源
前記研磨定盤上方に設けられてGaN基板を保持する基板ホルダー
前記エンジニアプラスチック製研磨材にアルカリ水素水研磨剤スラリー溶液を供給する研磨剤スラリー溶液供給ノズルと、を設けたことを特徴とする研磨装置。
【請求項2】
面にGaN基板を保持する基板ホルダーを転させつつ下方に移動させて回転している研磨定盤の透明な固定板の上に積層された紫外線を透光できるエンジニアプラスチック製研磨材上面に前記GaN基板を接触させて前記エンジニアプラスチック製研磨材の上面と前記GaN基板の下面との摺擦により研磨加工を開始するとともに、この研磨加工中に前記研磨定盤下方に設置された紫外線照射光源より前記エンジニアプラスチック製研磨材に向けて紫外線を照射し続けるとともに、研磨剤スラリー溶液供給ノズルよりカセイカリおよび水素ガスを純水に溶解させたスラリー溶液に砥粒を分散させたpH10〜13.5のアルカリ水素水研磨剤スラリー溶液を前記エンジニアプラスチック製研磨材上に供給することにより前記エンジニアプラスチック製研磨材の上面と前記GaN基板の下面間に前記アルカリ水素水研磨剤スラリー溶液を流布させることを特徴とする、GaN基板の研磨加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化ガリウム(GaN)基板を0.1nm以下の表面粗さに研磨加工する方法およびそれに用いるCMP研磨装置に関わる。本発明方法によれば、窒化ガリウム基板の研磨速度を格段と向上することが可能である。
【背景技術】
【0002】
結晶配向を有する硬脆性基板(サファイヤ基板、GaN基板、SiC基板など)は、LED、パワー半導体装置、抵抗器センサー等の基板として利用されている。この硬脆性基板は、オリフラが研削加工されたインゴットブロックを切断加工して得られた円盤状基板の反りが6インチ径基板でウエハ反り高さ5〜6mmと大きいので、この硬脆性基板の表裏両面を研削加工して平坦化加工基板とする沢山の加工方法、例えば、基板両面を同時に研磨加工する両面同時研磨方法、または、基板の表面を研削加工した後、基板裏面を研削加工する単葉研削加工方法が提案されている。
【0003】
また、特開2015−187043号公報(特許文献1)は、アモノサーマル法により得られ、窒化物半導体からなる第一の元結晶を準備し、ダイヤモンド研削砥石により1nm以下の表面粗さに研削加工して第二の元結晶を得る。得られた第二の元結晶をプラズマ処理した後に複数接合して第一の下地基板を得る。得られた第一の下地基板上に第一の窒化物半導体(GaN)層を形成する。形成された第一の窒化物半導体層の外周部をダイヤモンド研削砥石により1nm以下の表面粗さに研削、除去し、第一の下地基板から分離して第二の下地基板を得る。複数の第二の下地基板を接合し、第三の下地基板を得、これをダイヤモンド研削砥石により1nm以下の表面粗さに研削加工して第四の下地基板を得る。得られた第四の下地基板上に第二の窒化物半導体層を形成する。形成された第二の窒化物半導体層の外周部を研削、除去し、第四の下地基板から分離して最終基板を得、得られた最終基板を自立基板とする方法を提案する。
【0004】
また、本願発明者らによる特開2015−090945号公報(特許文献2)は、半導体基板の表面をエッチング処理後にCMP処理加工、洗浄処理する半導体基板の再生方法において、次の工程を経ることを特徴とする再生半導体ウエハの製造方法を提案する。
1).使用済みの半導体基板の基盤上構造層表面をカップホイール型研削砥石により研削加工して前記基盤上構造層全層を除去して基盤面を露呈させる研削加工処理後にCMP処理加工、洗浄処理する半導体基板の再生方法において、次の工程を経ることを特徴とする再生半導体ウエハの製造方法。
1).使用済みの半導体基板の基盤上構造層表面に対して、カップホイール型研削砥石をインフィード送りするとともに、研削加工中に研削に供されていない前記カップホイール型研削砥石の刃先に向けて洗浄噴射装置のノズルより圧力3〜20MPaの高圧洗浄液を噴射角度5〜18度で扇型状に噴射する砥石洗浄を行う前記基板上構造層の全層を除去して基盤面を露呈させる研削加工処理工程。
2).前記研削加工処理された半導体基板の前記基盤表面に対して、コロイダル砥粒、塩基性化合物および純水を含むpH9.0以上の研磨剤スラリー組成物を用い、研磨パフを半導体基板表面に摺擦する化学機械研磨加工による第1のCMP研磨加工処理を実行する工程、
3).前記第1のCMP研磨加工処理された半導体基板の基盤表面に対して、カセイカリおよび水素ガスを純水に溶解させたpH12.0以上のアルカリ水素水を用い、研磨パフを半導体基板の基盤表面に摺擦する第2の仕上げCMP研磨加工処理および洗浄処理を実行する工程。
【0005】
さらに、特開平11−297647号公報(特許文献3)は、半導体基板表面の化学的機械研磨方法において、研磨粒子を含む研磨液と過酸化水素水溶液の混合比率が1:1〜10:1の範囲のpH3〜6の研磨剤スラリーを石英ガラス管内に通過させるときに紫外光発生源より波長150nm〜320nmの紫外線を照射して研磨剤スラリーを活性化させた後、直ちに半導体基板表面に供給分散塗布し、研磨パッドで研磨加工することを特徴とする化学的機械研磨液の供給方法を提案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−187043号公報
【特許文献2】特開2015−090945号公報
【特許文献3】特開平11−297647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1のGaN基板の1nmRa以下の表面粗さの研削加工方法は、研削加工工程のみでも3工程必要であり、生産性が低い。
【0008】
前記特許文献2の脆弱性基板の再生方法では、基板がGaN基板やシリコンベア基板のときは、0.1nm以下の表面粗さを得るには研磨定盤の回転数を10〜30rpmで行う必要があり、無潜傷(0.1nmRa以下)の6インチ径GaN基板を得るには約20時間要する。
【0009】
前記特許文献3の半導体基板のCMP研磨方法では、研磨剤スラリー溶液の基盤面供給までの保管管理が難しく、また、研磨剤スラリー溶液の使用量が多大となる。さらに、研磨剤スラリー溶液のpHが3〜6を酸性であり、GaN基板用には利用できない。
【0010】
本願発明は、研磨速度が0.5μm/min以上で無潜傷(0.1nmRa以下)のGaN基板を得るCMP研磨加工方法を提案するもので、特許文献2記載の研磨剤スラリーを用い、また、研磨定盤として透明な固定板(強化ガラス板、エンジニアプラスチック板)上に紫外線を透光できるエンジニアプラスチック製研磨材を積層した構造の研磨定盤を用い、研磨定盤下方より前記エンジニアプラスチック製研磨材に向けて紫外線を高圧水銀灯より照射し、CMP研磨加工中に研磨材表面に供給される研磨剤スラリー溶液を活性化させてGaN基板の研磨速度を高めることを可能とした。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、透明な固定板上に紫外線を透光できるエンジニアプラスチック製研磨材を積層した構造の研磨定盤、この研磨定盤下方に設置されて前記エンジニアプラスチック製研磨材に向かって紫外線を照射する紫外線照射光源、前記研磨定盤上方に設けられてGaN基板を保持する基板ホルダー前記エンジニアプラスチック製研磨材にアルカリ水素水研磨剤スラリー溶液を供給する研磨剤スラリー溶液供給ノズルと、を設けたことを特徴とする研磨装置を提供するものである。
【0012】
請求項2の発明は、下面にGaN基板を保持する基板ホルダーを転させつつ下方に移動させて回転している研磨定盤の透明な固定板の上に積層された紫外線を透光できるエンジニアプラスチック製研磨材上面に前記GaN基盤を接触させて前記エンジニアプラスチック製研磨材の上面と前記GaN基板の下面との摺擦により研磨加工を開始するとともに、この研磨加工中に前記研磨定盤下方に設置された紫外線照射光源より前記エンジニアプラスチック製研磨材に向けて紫外線を照射し続けるとともに、研磨剤スラリー溶液供給ノズルよりカセイカリおよび水素ガスを純水に溶解させたスラリー溶液に砥粒を分散させたpH10〜13.5のアルカリ水素水研磨剤スラリー溶液を前記エンジニアプラスチック製研磨材上に供給することにより前記エンジニアプラスチック製研磨材の上面と前記GaN基板の下面間に前記アルカリ水素水研磨剤スラリー溶液を流布させることを特徴とする、GaN基板の研磨加工方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、0.1nmRa表面粗さのGaN基板(6)を得るに要するCMP研磨加工時間を従来の研磨時間(1時間の研磨速度は10nm程度)の1/30〜1/100に短縮できた。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】研磨装置の断面図である。
図2】アルカリ水素水研磨剤スラリー溶液のpHと、0.1nmRaのGaN基板を得るに要した研磨速度(縦軸)と、研磨定盤の回転数(横軸)と、の相関図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示す本発明の研磨装置(1)は、透明な固定板上に紫外線を透光できるエンジニアプラスチック製研磨材(2a)を積層した構造の研磨定盤(2)、この研磨定盤(2)下方に設置した紫外線照射光源(4)、前記研磨定盤(2)上方に設けた基盤ホルダー(3)前記エンジニアプラスチック製研磨材(2a)にアルカリ水素水研磨剤スラリー溶液を供給する研磨剤スラリー溶液供給ノズル(5)と、を設けた研磨装置(1)である。
【0016】
図1において、研磨定盤の回転軸は、サーボモーター(図示されていない)により5〜200rpmの回転速度で回転される。同様に、基板ホルダー(3)の回転軸もサーボモーター(図示されていない)により10〜200rpmの回転速度で回転される。紫外線照射光源(4)としてオーク製作所製の高圧水銀灯を用い、250nm〜400nm波長の光線を利用した。
【0017】
固定板素材としては、強化ガラス板、PEEK、ポリアセタール、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ポリブチレンフタレート、ポリアラミド等のエンジニアプラスチック製板を用いた。エンジニアプラスチック製研磨材(2a)としては、PEEK、ポリアセタール、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ポリブチレンフタレート、ポリアラミド、ポリイミド等の軟化温度が200以上のエンジニアプラスチック製板が挙げられる。このエンジニアプラスチック製研磨材(2a)表面は凹凸模様(格子溝、渦巻き溝、蜘蛛の巣模様、不織布凹凸模様)を有しているのがアルカリ水素水研磨剤スラリー溶液の浸透、排出を促進させ、研磨速度を高めるので好ましい。
【0018】
カセイカリおよび水素ガスを純水に溶解させたスラリー溶液に砥粒を分散させたpH10〜13.5のアルカリ水素水研磨剤スラリー溶液の酸化還元電位としては−800〜1,200mがGaN基板(6)には好ましい。更に好ましくは、アルカリ水素水研磨剤スラリー溶液のpHは、pH11〜13である。
【0019】
研磨砥粒としては、シリカ、ゼオライト、ジルコニア、アルミナ、ダイヤモンド、セライト等の粒子が基板の種類により選択される。研磨砥粒のアルカリ水素水研磨剤スラリー溶液中の濃度は、10〜30重量%が好ましい。GaN基板(6)には、シリカ粒子が好ましい。
【0020】
図1に示す研磨装置(1)、pHの異なるアルカリ水素水研磨剤スラリー溶液を用い、GaN基板(6)表面厚み500nmを1分間でCMP研磨加工して0.1nmRaの研磨加工GaN基板(6)を得ることを目標にして研磨定盤(2)の回転数を前記pHに応じて変えてGaN基板(6)のCMP研磨加工を行った。なお、使用した紫外線光源波長は、365nmと250〜325nm波長の2つの波長帯を有する光源であった。
【0021】
0.1nmRaの研磨加工GaN基板(6)を得る際のアルカリ水素水研磨剤スラリー溶液のpHと、研磨速度(縦軸)と、研磨定盤(2)の回転数(横軸)と、の相関図を図2に示す。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の研磨装置を用いるGaN基板のCMP研磨方法は、従来技術と比較して非常に短いCMP研磨加工時間で硬脆性基板の平坦化加工方法は、従来技術と比較して極めて高いCMP研磨速度で加工することが可能である。
【符号の説明】
【0023】
1 研磨装置
2 研磨定盤
2a エンジニアプラスチック製研磨材
3 基板ホルダー
4 紫外線照射光源
5 研磨剤スラリー溶液供給ノズル
6 GaN基板
図1
図2