(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について図面に沿って詳細に説明する。
図1には、本実施形態におけ
る開口部装置としての上げ下げ窓内蔵ドアの正面図を示している。本実施形態の開口部装
置は、建物開口部に設けられる枠体1内に障子2を開閉自在となるように納め、障子2に
は上障子30と下障子35とを上下に移動自在とした上げ下げ窓4を納めて構成された上
げ下げ窓内蔵ドアである。障子2は、
図1において左側が吊り元側、右側が戸先側となっ
ていて、吊り元側の縦辺を中心に戸先側を室外側に向かって開放できるようになっている
。
【0017】
枠体1は、上下辺を構成する上枠10及び下枠11と、左右の縦辺を構成する吊り元側
縦枠12及び戸先側縦枠13とを、方形状に枠組みして構成される。障子2を構成する框
体3は、上下辺を構成する上框20及び下框21と、左右の縦辺を構成する吊り元側縦框
22及び戸先側縦框23とを、方形状に框組みして構成される。
【0018】
框体3を構成する戸先側縦框23には、室内外面にそれぞれ開閉操作のためのハンドル
5が設けられている。また、ハンドル5の上下には、それぞれロック部6,6が設けられ
ている。
【0019】
図2には開口部装置の縦断面図を、
図3には開口部装置の横断面図を、それぞれ示して
いる。障子2は、上下の軸部8により枠体1に対し回動自在とされると共に、枠体1と障
子2とはドアクローザー7により連結されている。框体3内に納められる上障子30と下
障子35は、それぞれ上框42と下框43及び左右の縦框44,44を方形状に框組みし
てなる框体40内に、複層ガラス板からなるパネル体41を納めて構成されている。
【0020】
框体3の室外側面には網戸9が設けられている。網戸9は、網戸枠60内に網部61を
配置してなり、網戸枠60は上框20と下框21、吊り元側縦框22及び戸先側縦框23
により形成される框体3の開口部分の縁部に取付けられ、網部61は框体3の開口部分全
体を室外側から覆うように設けられる。
【0021】
上枠10は、アルミ製の金属上枠10aの室内側露出部分を覆うように樹脂製の樹脂上
枠10bが一体化されている。金属上枠10aは、障子2の上辺周面と対向する内周面1
0cを有している。内周面10cの室内側には、見付方向内側、すなわち下方に向かって
突出する室内側突部10dが形成されている。室内側突部10dは、金属上枠10a及び
樹脂上枠10bによって形成されている。室内側突部10dは、障子2を構成する上框2
0の室内側面と対向し、先端部には上框20の室内側面に対して当接する気密材10eが
長手方向に沿って設けられている。
【0022】
下枠11は、アルミ製の金属下枠11aの室内側露出面を覆うように樹脂製の樹脂下枠
11bが一体化されている。金属下枠11aは、障子2の下辺周面と対向する内周面11
cを有している。内周面11cの室内側には、見付方向内側、すなわち上方に向かって突
出する室内側突部11dが形成されている。室内側突部11dは、金属下枠11a及び樹
脂下枠11bによって形成されている。
【0023】
室内側突部11dに設けられた樹脂下枠11bの上面は、枠体1の室内側に設けられる
床材と略面一状となる敷居面部11fを構成している。室内側突部11dは、障子2を構
成する下框21の室内側面と対向し、先端部には下框21の室内側面に対して当接する気
密材11eが長手方向に沿って設けられている。
【0024】
吊り元側縦枠12は、アルミ製の金属吊り元側縦枠12aの室内側露出面を覆うように
樹脂製の樹脂吊り元側縦枠12bが一体化され、戸先側縦枠13も、アルミ製の金属戸先
側縦枠13aの室内側露出面を覆うように樹脂製の樹脂戸先側縦枠13bが一体化されて
いる。
【0025】
上框20は、アルミ製の金属上框20aの室内側面を樹脂製の樹脂上框20bが覆って
おり、下框21も、アルミ製の金属下框21aの室内側面を樹脂製の樹脂下框21bが覆
っている。さらには、吊り元側縦框22は、アルミ製の金属吊り元側縦框22aの室内側
面を樹脂製の樹脂吊り元側縦框22bが覆っており、戸先側縦框23も、アルミ製の金属
戸先側縦框23aの室内側面を樹脂製の樹脂戸先側縦框23bが覆っている。
【0026】
上障子30と下障子35は、閉じた状態において面一状となるように配置されている。
この状態から、下障子35は下辺側を中心に上辺側を内倒し自在となっており、内倒し状
態となった下障子35はさらに上方にスライド自在とされている。さらに、下障子35の
スライドに連動して、上障子30が下方にスライドし、上げ下げ窓が開いた状態となる。
【0027】
下障子35の上框42には、該上框42から上障子30の下框43に渡って伸びる樹脂
製の引き手部42aが設けられている。引き手部42aは、下障子35を室内側に倒す動
作及び上下方向にスライドさせる動作を、手で持って行うために設けられる。
【0028】
上障子30と下障子35は、いずれも障子2の框体3を構成する吊り元側縦框22及び
戸先側縦框23の内周面に側部が案内されることで、開閉することができる。
図4には、
戸先側縦框23の内周側から見た側面図を示している。戸先側縦框23の内周面23aに
は、下端部に下障子35を案内する樹脂製のガイド部品50が設けられる。
【0029】
ガイド部品50は、下障子35の下端側部に設けられる案内凸部を案内する斜め案内溝
50aを有している。斜め案内溝50aは、内倒し状となった下障子35を、見込方向に
おいて上障子30と同じ位置から、上障子30の室内側の位置まで案内するように、傾斜
状に形成されている。戸先側縦框23の内周面23aには、長手方向に沿って凹状の縦案
内溝23bが形成されており、ガイド部品50の斜め案内溝50aは、戸先側縦框23の
縦案内溝23bと端部が連続状となっている。斜め案内溝50aによって室内側に案内さ
れた下障子35の案内凸部は、縦案内溝23bによって上下方向にさらに案内される。
【0030】
戸先側縦框23の内周面23aには、さらに滑車部材51が設けられている。滑車部材
51は、滑車部51aによって下障子連結部51bと上障子連結部51cとを支持してな
り、下障子連結部51bには下障子35が、上障子連結部51cには上障子30が、それ
ぞれ連結されて、下障子35の上下動に連動して上障子30も上下動するように構成され
ている。ここでは戸先側縦框23について説明したが、吊り元側縦框22にも同様にガイ
ド部品50や滑車部材51が設けられて、上障子30と下障子35の側部を案内する。
【0031】
図5には、
図2のうち障子2の上框20と上障子30の上框42付近の拡大図を示して
いる。上框20の内周側には、上障子30の上端部を納める凹状部20cが形成されてい
る。凹状部20cは、底壁20dと室内側壁20e及び室外側壁20fによって形成され
ている。このうち室外側壁20fは金属上框20aによって形成され、室内側壁20eは
樹脂上框20bによって形成され、底壁20dは金属上框20aと樹脂上框20bとが重
合して形成されている。樹脂上框20bは、凹状部20cを構成する室内側壁20eより
室内側に中空部20gを有している。
【0032】
凹状部20cを構成する室内側壁20eの先端部には、対向する上障子30の室内側面
に当接するモヘア材20iが保持されている。また、凹状部20cを構成する室外側壁2
0fの先端部には、対向する上障子30の室外側面に当接する気密材20kが保持されて
いる。
【0033】
上框20の凹状部20c内には、金属製の倒れ止め部品24が設けられる。倒れ止め部
品24は、金属上框20aの内周面に対して当接しネジ止め固定される固定面部24aと
、固定面部24aから下方に伸びる対向面部24bとを有している。対向面部24bは、
樹脂上框20bの室外側面に沿って伸びており、閉じた状態の上障子30の室内側面と対
向する。
【0034】
樹脂上框20bは、金属上框20aの内周面に沿って室外側に伸びる被覆面部20hを
有しており、この被覆面部20hにより倒れ止め部品24の固定面部24aを内周側から
覆っている。これによって、倒れ止め部品24の固定面部24aが露出しないようにして
、意匠性を向上させている。
【0035】
図6には、上框20の正面図を示している。この図に示すように、倒れ止め部品24は
短尺状の部材からなり、これが上框20の両端部及び中央部にそれぞれ配置され、固定さ
れる。倒れ止め部品24が配置される位置は、
図1にも表れている。
【0036】
図7には、火災発生時における障子2の上框20と上障子30の上框42付近の拡大図
を示している。火災が発生して開口部装置が高温に晒されると、樹脂からなる樹脂上框2
0bは軟化し、金属上框20aに対する固定強度が低下して、やがて脱落する。このため
、上障子30の室内側面と対向する凹状部20cの室内側壁20eが失われることになる
。
【0037】
上障子30は摺動性を良好にするため、樹脂材の部品によって吊り元側縦框22や戸先
側縦框23に対し見込方向への移動が規制されているが、火災時には樹脂材の部品も失わ
れる。このため、凹状部20cの室内側壁20eが失われることにより、上障子30の見
込方向に対する支持が失われ、室内側に傾倒し脱落する可能性がある。
【0038】
一方で、金属上框20aに固定された倒れ止め部品24は、火災時にもそのまま残り、
対向面部24bが上障子30の室内側面と対向しているので、上障子30が室内側に傾倒
しても脱落することを防止することができる。上障子30の脱落を防止したことで、防火
性能の低下を招くことを防ぐことができる。さらに、倒れ止め部品24を設けることによ
って、金属の型材からなる金属上框20aを室内側まで伸ばす必要がないので、断熱性能
を高くすることができると共に、コスト低減も図ることができる。
【0039】
また、倒れ止め部品24が金属上框20aの複数箇所に固定されていることにより、金
属上框20aの強度を大きくすることができる。火災時には、金属上框20aに反りが発
生しやすくなるが、倒れ止め部品24によって金属上框20aの強度を大きくしているこ
とにより、反りを抑制することもできる。
【0040】
図1に示すように、横框である上框20と下框21は、それぞれ端面が縦框である吊り
元側縦框22と戸先側縦框23の側面に突き当てられて連結されている。
図2に示すよう
に、下障子35の下辺を納めるように形成された下框21の凹状部21cは、凹状部21
cの外周側を構成する外周側部21eよりも見込方向幅が大きくなるように形成されてい
る。また、
図3に示すように、上障子30と下障子35の縦辺を納めるように形成された
戸先側縦框23の凹状部23cは、凹状部23cの外周側を構成する外周側部23eより
も見込方向幅が大きくなるように形成されている。
【0041】
図8には、戸先側縦框23と下框21との連結部分付近を室外側から見た斜視図を示し
ている。この図に示すように、下框21の端部は、凹状部21cの端面21dが外周側部
21eの端面21fよりも下框21の長手方向中央寄りとなるように切り欠かれている。
また、戸先側縦框23の端部も、凹状部23cの側面23dが外周側部23eの側面23
fよりも戸先側縦框23の長手方向中央寄りとなるように切り欠かれている。
【0042】
そして、下框21を構成する凹状部21cの端面21dは、戸先側縦框23を構成する
凹状部23cの側面23dに、下框21を構成する外周側部21eの端面21fは、戸先
側縦框23を構成する外周側部23eの側面23fに、それぞれ突き当てられて連結され
ている。
【0043】
下框21の凹状部21cと戸先側縦框23の凹状部23cの突き当て部分には、スチー
ル製の連結部品25が取付固定される。
図9には、連結部品25の側面図(
図9(a))
と連結部品25の背面図(
図9(b))を示している。連結部品25は、下框21を構成
する凹状部21cの端部室外側面から戸先側縦框23を構成する凹状部23cの端部室外
側面に渡って被覆する被覆面部25aと、被覆面部25aの一辺に設けられる側面部25
bとを有して構成されている。側面部25bは、下框21と戸先側縦框23の突き当て部
分のうち、凹状部21c,23cと外周側部21e,23eとの間の段差部分を被覆する
。
【0044】
連結部品25の被覆面部25aには、背面側に加熱発泡材25cが設けられている。加
熱発泡材25cは、連結部品25を下框21と戸先側縦框23の連結部分に取付けた際に
、下框21の端面21dと戸先側縦框23の側面23dとの突き当て部分に対向するよう
に配置されている。また、連結部品25の側面部25bにも、加熱発泡材25cが配置さ
れている。
【0045】
図8に示すように、連結部品25は下框21と戸先側縦框23に対して室外側から取付
けられて、両方にそれぞれネジ止め固定される。框体3の室外面には、前述のように網戸
枠60が取付固定されるので、この網戸枠60によって連結部品25を室外側から見えな
いように隠すことができる。
【0046】
火災が発生して開口部装置が高温に晒された場合には、下框21と戸先側縦框23の連
結部分において、戸先側縦框23の凹状部23cを形成する室外側面が、めくれるように
変形し、下框21との間に隙間を生じることがある。戸先側縦框23と下框21の間に隙
間が生じると、それらのすぐ室内側に配置されている樹脂製のガイド部品50が、直接、
熱や炎に晒されて発火するおそれがある。
【0047】
これに対し、高温に晒されても変形しにくいスチール製の連結部品25が設けられてい
ることにより、下框21と戸先側縦框23の連結部分を強固に固定し、両者の間に隙間を
生じさせないようにすることができて、開口部装置の防火性能を向上させることができる
。
【0048】
また、連結部品25の背面側に加熱発泡材25cが設けられ、加熱発泡材25cは下框
21の端面21dと戸先側縦框23の側面23dとの突き当て部分に対向して配置されて
いることにより、火災時に下框21の端面21dと戸先側縦框23の側面23dとの間に
仮に隙間が生じたとしても、発泡した加熱発泡材25cによって隙間を塞ぎ、室内側のガ
イド部品50など樹脂部品が直接、熱や炎に晒されないようにすることができるので、開
口部装置の防火性能をより一層高くすることができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の適用はこれらの実施形態には限
られず、その技術的思想の範囲内において様々に適用されうるものである。第1及び第1
の実施形態の開口部装置では、障子が上下のピボットにより枠体に対し回動自在に支持さ
れているが、障子の吊り元側に蝶番を設けて枠体に対し回動自在となるようにしてもよい
。