(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240960
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】成膜マスクの製造方法及び成膜マスク
(51)【国際特許分類】
C23C 14/04 20060101AFI20171127BHJP
B23K 26/38 20140101ALI20171127BHJP
H01L 21/302 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
C23C14/04 A
B23K26/38 Z
H01L21/302 201B
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-18651(P2014-18651)
(22)【出願日】2014年2月3日
(65)【公開番号】特開2015-145525(P2015-145525A)
(43)【公開日】2015年8月13日
【審査請求日】2016年12月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】500171707
【氏名又は名称】株式会社ブイ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(72)【発明者】
【氏名】水村 通伸
【審査官】
末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】
特表2005-517810(JP,A)
【文献】
特開2009-68082(JP,A)
【文献】
特開平03-269976(JP,A)
【文献】
特開平10-154322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
C23C 16/00−16/56
B23K 26/38−26/388
H01L 21/302−21/308
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた所定形状の開口パターンを設けた樹脂製のフィルム層と、前記開口パターンが内在し得る大きさの隙間を設けた磁性金属材料層とを積層した構造の成膜マスクの製造方法であって、
前記開口パターンは、前記隙間に対応したフィルム層の部分に両面側からレーザ光を照射し、前記フィルム層を貫通させて形成されることを特徴とする成膜マスクの製造方法。
【請求項2】
前記開口パターンは、前記磁性金属材料層側の開口面積が該磁性金属材料層とは反対側の開口面積よりも広いことを特徴とする請求項1記載の成膜マスクの製造方法。
【請求項3】
前記開口パターンは、前記フィルム層の前記磁性金属材料層とは反対側の面にレーザ光を照射して一定深さの第1の凹部を設けた後、前記フィルム層の前記磁性金属材料層側の面にレーザ光を照射して前記第1の凹部に達する深さの第2の凹部を設けて形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の成膜マスクの製造方法。
【請求項4】
前記開口パターンは、前記フィルム層の前記磁性金属材料層とは反対側の面にレーザ光を照射して前記フィルム層を貫通する貫通孔を設けた後、前記フィルム層の前記磁性金属材料層側の面にレーザ光を照射して一定深さの凹部を設けて形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の成膜マスクの製造方法。
【請求項5】
前記隙間は、前記磁性金属材料層を貫通して設けられたスリットであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の成膜マスクの製造方法。
【請求項6】
前記隙間は、前記磁性金属材料層を成す細長状の複数の島パターンにて、隣接する前記島パターンの間の部分であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の成膜マスクの製造方法。
【請求項7】
予め定められた所定形状の開口パターンを設けた樹脂製のフィルム層と、前記開口パターンが内在し得る大きさの隙間を設けた磁性金属材料層とを積層した構造の成膜マスクであって、
前記開口パターンは、前記隙間に対応したフィルム層の部分に両面側からレーザ光を照射し、前記フィルム層を貫通させて形成されたことを特徴とする成膜マスク。
【請求項8】
前記開口パターンは、前記磁性金属材料層側の開口面積が該磁性金属材料層とは反対側の開口面積よりも広いことを特徴とする請求項7記載の成膜マスク。
【請求項9】
前記開口パターンは、前記フィルム層の前記磁性金属材料層とは反対側の面に形成された一定深さの第1の凹部と、前記フィルム層の前記磁性金属材料層側の面に前記第1の凹部に達する深さで形成された第2の凹部とから成ることを特徴とする請求項7又は8記載の成膜マスク。
【請求項10】
前記開口パターンは、前記フィルム層の前記磁性金属材料層とは反対側の面にレーザ光を照射して前記フィルム層を貫通させて形成された貫通孔と、前記フィルム層の前記磁性金属材料層側の面にレーザ光を照射して形成された一定深さの凹部とから成ることを特徴とする請求項7又は8記載の成膜マスク。
【請求項11】
前記隙間は、前記磁性金属材料層を貫通して設けられたスリットであることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の成膜マスク。
【請求項12】
前記隙間は、前記磁性金属材料層を成す細長状の複数の島パターンにて、隣接する前記島パターンの間の部分であることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の成膜マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口パターンを形成した樹脂製のフィルム層と磁性金属材料層とを積層した構造の成膜マスクの製造方法に関し、特にレーザ加工により開口パターンを形成する際に、開口パターンの縁部にバリの発生を抑制し得る成膜マスクの製造方法及び成膜マスクに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のマスクの製造方法は、パターン化されたマスクを使用して樹脂製フィルムに、例えばKrFエキシマレーザの約248nmの短波長光のビームを照射し、上記樹脂製フィルムをアブレーションして開口パターンを形成するものとなっていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2005−517810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような従来のマスクの製造方法においては、通常、樹脂製フィルムの一方の面側にレーザ光を照射して開口パターンを形成するため、開口パターンの、レーザ光の照射側とは反対側の開口縁部に切り残り(以下「バリ」という)が発生するという問題がある。
【0005】
このようなバリは、成膜の影を形成して成膜される薄膜パターンの縁部の形状乱れを生じさせたり、成膜マスクと被成膜基板との間に隙間を生じさせて成膜材料がマスクの下側に回り込み易くし、薄膜パターンの縁部をぼやけさせてしまったりという問題の発生原因となるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、レーザ加工により開口パターンを形成する際に、開口パターンの縁部にバリの発生を抑制し得る成膜マスクの製造方法及び成膜マスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明による成膜マスクの製造方法は、予め定められた所定形状の開口パターンを設けた樹脂製のフィルム層と、前記開口パターンが内在し得る大きさの隙間を設けた磁性金属材料層とを積層した構造の成膜マスクの製造方法であって、前記開口パターンは、前記隙間に対応したフィルム層の部分に両面側からレーザ光を照射し、前記フィルム層を貫通させて形成されるものである。
【0008】
また、本発明による成膜マスクは、予め定められた所定形状の開口パターンを設けた樹脂製のフィルム層と、前記開口パターンが内在し得る大きさの隙間を設けた磁性金属材料層とを積層した構造の成膜マスクであって、前記開口パターンは、前記隙間に対応したフィルム層の部分に両面側からレーザ光を照射し、前記フィルム層を貫通させたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フィルム層の両面側からレーザ光を照射し、開口パターンを形成するようにしているので、フィルム層の磁性金属材料層とは反対側(被成膜基板との密着面側)の開口パターンの縁部にバリが発生するのを抑制することができる。したがって、開口パターンの上記バリが成膜の影となるのを防止することができると共に、バリの存在によりフィルム層と被成膜基板との間に隙間が生じるのを防止することができる。これにより、形状及び位置精度を含む薄膜パターンの形成精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明による成膜マスクの一実施形態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のO−O線断面矢視図、(c)は(a)のP−P線断面矢視図、(d)は(c)の一部拡大断面図である。
【
図2】本発明による成膜マスクの磁性金属材料層の変形例を示す平面図である。
【
図3】本発明による成膜マスクの製造方法にて開口パターンの形成例を説明する図で、第1の凹部の形成工程を示す断面図であり、(a)はレーザ加工開始を示し、(b)はレーザ加工終了を示し、(c)は第1の凹部の拡大断面図である。
【
図4】本発明による成膜マスクの製造方法にて開口パターンの形成例を説明する図で、第2の凹部の形成工程を示す断面図であり、(a)はレーザ加工開始を示し、(b)はレーザ加工終了を示し、(c)は第2の凹部の拡大断面図である。
【
図5】本発明による成膜マスクの製造方法にて開口パターンの形成の変形例を説明する図で、貫通孔の形成工程を示す断面図であり、(a)はレーザ加工開始を示し、(b)はレーザ加工終了を示し、(c)は貫通孔の拡大断面図である。
【
図6】本発明による成膜マスクの製造方法にて開口パターンの形成の変形例を説明する図で、凹部の形成工程を示す断面図であり、(a)はレーザ加工開始を示し、(b)はレーザ加工終了を示し、(c)は凹部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明による成膜マスクの一実施形態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のO−O線断面矢視図、(c)は(a)のP−P線断面矢視図、(d)は(c)の一部拡大断面図である。この成膜マスクは、被成膜基板上に予め定められた形状の複数の薄膜パターンを形成するためのもので、フィルム層1と、磁性金属材料層2と、フレーム3とを備えて構成されている。
【0012】
上記フィルム層1は、被成膜基板上に薄膜パターンを成膜するためのメインマスクとなるもので、例えば厚みが5μm〜30μm程度の、例えばポリイミドやポリエチレンテレフタレート(PET)等の可視光を透過する樹脂製のフィルムに、
図1(a)に示すように、予め定められた形状の開口パターン4を備えたものである。好ましくは、線膨張係数が被成膜基板(以下、単に「基板」という)としてのガラスの線膨張係数に近似した3×10
−6〜5×10
−6/℃程度のポリイミドが望ましい。
【0013】
詳細には、上記開口パターン4は、
図1(a)に示すように、上記薄膜パターンと同形状を有し、薄膜パターンに対応して縦横マトリクス状に配置して、同図(d)に示すようにフィルム層1の一面1aに形成された、例えば4μm〜5μm程度の深さの第1の凹部5と、フィルム層1の他面1bに第1の凹部5に達する深さで形成された第2の凹部6とから成る。この場合、好ましくは、第2の凹部6の開口面積は、第1の凹部5の開口面積よりも広いことが望ましい。なお、第1の凹部5は、後述するように、フィルム層1を貫通する貫通孔13(
図5参照)であってもよい。
【0014】
上記フィルム層1の他面1b側には、磁性金属材料層2が積層して設けられている。この磁性金属材料層2は、開口パターン4が内在し得る大きさの隙間7を設けた、例えば厚みが10μm〜50μm程度の、例えばニッケル、ニッケル合金、インバー又はインバー合金等の磁性金属材料から成るもので、成膜時に基板の裏面に配設された磁石により吸引されて上記フィルム層1を基板の成膜面に密着させるための機能を果たすものである。
【0015】
この場合、上記隙間7は、
図1(a)〜(c)に示すように、磁性金属材料層2を貫通して設けられたスリットである。又は、
図2に示すように、磁性金属材料層2を成す細長状の複数の島パターン8にて、隣接する上記島パターン8の間の部分であってもよい。磁性金属材料層2が
図2に示すような島パターン8を含む構成の場合には、磁性金属材料層2とフィルム層1との間の線膨張係数の違いに起因してフィルム層1に発生する内部応力が小さくなり、積層後にレーザ加工して形成される開口パターン4の位置ずれを抑制することができる。したがって、磁性金属材料の選択範囲が広がる効果がある。なお、上記島パターン8は、その長軸方向に長さの短い複数の単位島パターンに分割されてもよい。これにより、フィルム層1に発生する内部応力をより小さくすることができる。
図2において、符号9は、上記複数の島パターン8を内包する大きさの開口を有し、フィルム層1の周縁部に積層された、磁性金属材料層2の一部を成す枠状パターンである。
【0016】
上記磁性金属材料層2の上記フィルム層1とは反対側の面2aには、フレーム3が設けられている。このフレーム3は、上記磁性金属材料層2の周縁部を固定して支持するもので、例えばインバー又は鉄−ニッケル合金等から成る磁性金属材料で形成されており、上記磁性金属材料層2の複数の隙間7を内包する大きさの開口10を有する枠状を成している。なお、フレーム3は、磁性金属材料から成るものに限られず、非磁性金属材料又は硬質樹脂から成るものであってもよい。本実施形態においては、フレーム3は磁性金属材料で形成されている。
【0017】
次に、このように構成された成膜マスクの製造方法について説明する。
先ず、例えばニッケル、ニッケル合金、インバー又はインバー合金等からなる厚みが10μm〜50μm程度の磁性金属材料の金属シートを、成膜対象である基板の表面積に合わせて切り出し、該金属シートの一面に例えばポリイミドの樹脂液を塗布し、これを200℃〜300℃程度の温度で乾燥させて厚みが5μm〜30μm程度の可視光を透過するフィルム層1を形成する。
【0018】
次いで、金属シートの他面にレジストを例えばスプレー塗布した後、これを乾燥させてレジストフィルムを形成し、次に、フォトマスクを使用してレジストフィルムを露光した後、現像して、複数列のスリットの形成位置に対応させて細長状の複数の開口を有するレジストマスクを形成する。
【0019】
続いて、上記レジストマスクを使用して金属シートをウェットエッチングし、レジストマスクの開口に対応した部分の金属シートを除去して金属シートを貫通するスリットを設けて磁性金属材料層2を形成した後、レジストマスクを例えば有機溶剤に溶解させて除去する。これにより、フィルム層1と磁性金属材料層2とを積層させたマスク用部材11(
図3参照)が形成される。なお、金属シートをエッチングするためのエッチング液は、使用する金属シートの材料に応じて適宜選択され、公知の技術を適用することができる。
【0020】
また、金属シートをエッチングしてスリットを形成する際に、複数のスリットの形成領域外の予め定められた位置に基板に予め設けられた基板側アライメントマークに対して位置合わせするためのマスク側アライメントマーク12(
図1,2参照)を同時に形成してもよい。この場合、レジストマスクを形成する際に、マスク側アライメントマーク12に対応した位置にアライメントマーク用の開口を設けるとよい。
【0021】
マスク用部材11は上記方法によらず、他の方法で形成してもよい。例えば、フィルムの一面にシード層を例えば無電解めっきにより形成し、その上にフォトレジストを塗布してこれを露光及び現像し、複数列のスリットの形成位置に対応させて複数列の島状樹脂パターンを形成した後、該島状樹脂パターンの外側領域にニッケル、ニッケル合金、インバー又はインバー合金等の磁性金属材料をめっき形成する。そして、島状樹脂パターンを除去した後、該島状樹脂パターンの形成位置のシード層をエッチングして除去することによりマスク用部材11を形成してもよい。
【0022】
これにより、
図1(a)に示すような複数のスリットをその長軸と交差する方向に並設した磁性金属材料層2を備えるマスク用部材11を形成することができる。
【0023】
また、
図2に示すような、枠状パターン9及び該枠状パターン9の内側に複数の島パターン8を設けた磁性金属材料層2を備えるマスク用部材11の形成は、次のようにして行うことができる。例えば、フィルムの一面にシード層を例えば無電解めっきにより形成し、その上にフォトレジストを塗布してこれを露光及び現像し、枠状パターン9及び複数の島パターン8の形成位置の外側を覆う樹脂パターンを形成した後、上記枠状パターン9及び複数の島パターン8の形成位置にニッケル、ニッケル合金、インバー又はインバー合金等の磁性金属材料をめっき形成する。そして、樹脂パターンを除去した後、該樹脂パターンの形成位置のシード層をエッチングして除去する。
【0024】
又は、前述と同様にして、金属シートの一面に樹脂液を塗布してフィルム層1を形成し、金属シートの他面には、レジストを塗布して、これを乾燥させた後、フォトマスクを使用してレジストを露光及び現像し、上記枠状パターン9及び複数の島パターン8の形成位置の外側に開口を有するレジストマスクを形成し、該レジストマスクを使用して上記磁性金属シートをエッチングすることにより、枠状パターン9及び複数の島パターン8を有する磁性金属材料層2を備えるマスク用部材11を形成してもよい。
【0025】
次に、上記マスク用部材11の磁性金属材料層2に対面させて、磁性金属材料から成るフレーム3を配置し、上記マスク用部材11を上記フレーム3上に架張した状態で、マスク用部材11の周縁部にレーザ光を照射して磁性金属材料層2をフレーム3の端面にスポット溶接する。
【0026】
続いて、本発明の特徴である開口パターン形成工程に移る。以下、開口パターン形成工程について
図3,4を参照して説明する。
先ず、
図3(a)に示すように、フィルム層1の磁性金属材料層2とは反対側の面(以下「一面1a」という)に、例えばKrF248nmのエキシマレーザ、又はYAGレーザの第3高調波や第4高調波を使用して、波長が400nm以下のレーザ光Lを照射し、フィルム層1をアブレーションし、同図(c)に示すように一定深さの第1の凹部5を設ける。
【0027】
詳細には、例えば予め形成されたマスク側アライメントマーク12を基準にしてレーザ光をマスク用部材11の面に平行な面内を二次元方向に予め定められた距離だけ移動して、フィルム層1の一面1aにて磁性金属材料層2の隙間7に対応した部分にレーザ光Lを照射し、第1の凹部5を形成する。
【0028】
又は、形成しようとする開口パターン4に対応した位置にレーザ光Lの照射目標となる基準パターンを設けた基準基板上にマスク用部材11を位置決めして載置し、フィルム層1を透過して上記基準パターンを二次元カメラで観察し、該基準パターンの位置座標を検出した後、レーザ光Lの照射目標を上記基準パターンの上記位置座標に設定して、フィルム層1の一面1aにレーザ光Lを照射し、第1の凹部5を形成してもよい。
【0029】
上記いずれの場合も、第1の凹部5に相似形の複数の開口部を設けたシャドウマスクを利用する投射型レーザ加工装置を使用し、フィルム層1の一面1aに上記複数の開口部を縮小投影して、複数の第1の凹部5をまとめて形成するとよい。なお、
図3は、例えば
図1(a)に破線で囲って示す複数の第1の凹部5をまとめて形成する場合を示している。
【0030】
以降、
図3(a)に示すように、レーザ光Lをフィルム層1の一面1a上を矢印で示す二次元方向に予め定められた距離だけステップ移動しながらフィルム層1の一面1aをアブレーションし、同図(b)に示すようにフィルム層1の一面1aに複数の第1の凹部5を縦横マトリクス状に配置して形成する。
【0031】
続いて、マスク用部材11の上下を反転させて、
図4(a)に示すように磁性金属材料層2側からフィルム層1の磁性金属材料層2側の面(以下「他面1b」という)にレーザ光Lを照射し、磁性金属材料層2の隙間7に対応したフィルム層1の部分に上記第1の凹部5に達する第2の凹部6を形成する。これにより、同図(c)に示すように、第1の凹部5と第2の凹部6とが繋がって、フィルム層1を貫通する開口パターン4が形成される。好ましくは、第2の凹部6の開口面積は、第1の凹部5の開口面積よりも広いのが望ましい。
【0032】
この場合、前述と同様に、第2の凹部6に相似形の複数の開口部を設けたシャドウマスクを利用する投射型レーザ加工装置を使用し、フィルム層1の他面1bに上記複数の開口部を縮小投影して、複数の第2の凹部6をまとめて形成するとよい。
【0033】
又は、照射面積が複数の第1の凹部5を内包する領域の面積に相当するレーザ光Lを使用して第2の凹部6を形成してもよい。この場合、磁性金属材料層2がマスクとして機能し、磁性金属材料層2の隙間7に対応したフィルム層1の部分がアブレーションされて第2の凹部6が形成される。
【0034】
以降、
図4(a)に示すように、レーザ光Lをフィルム層1の他面1b上を矢印で示す二次元方向に予め定められた距離だけステップ移動しながらフィルム層1の他面1bをアブレーションし、フィルム層1の他面1bに同図(b)に示すように複数の第2の凹部6を形成する。これにより、
図1又は
図2に示す成膜マスクが形成される。
【0035】
このように、本発明によれば、フィルム層1の両面側からレーザ光Lを照射し、開口パターン4を形成するようにしているので、フィルム層1の一面(基板との密着面)1a側の開口パターン4の縁部にバリが発生するのを抑制することができる。したがって、開口パターン4のバリが成膜の影となるのを防止することができると共に、バリの存在によりフィルム層1と基板との間に隙間が生じるのを防止することができる。これにより、形状及び位置精度を含む薄膜パターンの形成精度を向上することができる。
【0036】
この場合、第1の凹部5を形成した後、該第1の凹部5の開口面積より面積の大きい第2の凹部6を形成すれば、上記バリの発生をより抑制することができる。また、第2の凹部6の開口面積が第1の凹部5のそれよりも大きいため、第2の凹部6の加工位置決め精度は不要とすることができる。
【0037】
次に、上記開口パターン4の形成について他の形成例を説明する。
図5は本発明による成膜マスクの製造方法にて開口パターンの形成の変形例を説明する図で、貫通孔の形成工程を示す断面図であり、(a)はレーザ加工開始を示し、(b)はレーザ加工終了を示し、(c)は貫通孔の拡大断面図である。
図6は本発明による成膜マスクの製造方法にて開口パターンの形成の変形例を説明する図で、凹部の形成工程を示す断面図であり、(a)はレーザ加工開始を示し、(b)はレーザ加工終了を示し、(c)は凹部の拡大断面図である。
先ず、
図5(a)に示すように、フィルム層1の一面1aにレーザ光Lを照射し、フィルム層1をアブレーションし、同図(c)に示すようにフィルム層1を貫通する貫通孔13を設ける。
【0038】
詳細には、前述と同様にして、例えば予め形成されたマスク側アライメントマーク12を基準にしてレーザ光をマスク用部材11の面に平行な面内を二次元方向に予め定められた距離だけ移動して、フィルム層1の一面1aにて磁性金属材料層2の隙間7に対応した部分にレーザ光Lを照射し、薄膜パターンと同形状の貫通孔13を形成する。
【0039】
又は、形成しようとする開口パターン4に対応した位置にレーザ光Lの照射目標となる基準パターンを設けた基準基板上にマスク用部材11を位置決めして載置し、フィルム層1を透過して上記基準パターンを二次元カメラで観察し、該基準パターンの位置座標を検出した後、レーザ光Lの照射目標を上記基準パターンの上記位置座標に設定して、フィルム層1の一面1aにレーザ光Lを照射し、貫通孔13を形成してもよい。
【0040】
以降、
図5(a)に示すように、レーザ光Lをフィルム層1の一面1a上を矢印で示す二次元方向に予め定められた距離だけステップ移動しながらフィルム層1の一面1aをアブレーションし、同図(b)に示すようにフィルム層1の一面1aに複数の貫通孔13を縦横マトリクス状に配置して形成する。
【0041】
続いて、マスク用部材11の上下を反転させて、
図6(a)に示すように磁性金属材料層2側からフィルム層1の他面1bにレーザ光Lを照射し、磁性金属材料層2の隙間7に対応したフィルム層1の部分に、フィルム層1の一面1a側に例えば1μm〜4μm程度の薄い層を残して上記貫通孔13の開口面積よりも広い開口部を有する凹部14を形成する。これにより、フィルム層1には、同図(c)に示すように、貫通孔13と凹部14とで構成された開口パターン4が形成される。
【0042】
以降、
図6(a)に示すように、レーザ光Lをフィルム層1の他面1b上を矢印で示す二次元方向に予め定められた距離だけステップ移動しながらフィルム層1の他面1bをアブレーションし、フィルム層1の他面1bに同図(b)に示すように複数の凹部14を形成する。これにより、
図1又は
図2に示す成膜マスクが形成される。
【0043】
この場合もフィルム層1の両面側からレーザ光Lを照射し、開口パターン4を形成するようにしているので、フィルム層1の一面(基板との密着面)1a側の開口パターン4の縁部にバリが発生するのを抑制することができる。
【0044】
したがって、本発明による成膜マスクは、基板との密着性を向上することができ、例えば有機EL表示用基板の発光層を含む有機EL層の蒸着形成に好適である。
【0045】
以上の説明においては、成膜マスクがフレーム3を備えたものである場合について説明したが、本発明はこれに限られず、フレーム3は無くてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…フィルム層
2…磁性金属材料層
4…開口パターン
5…第1の凹部
6…第2の凹部
7…隙間
8…島パターン
13…貫通孔
14…凹部