特許第6240973号(P6240973)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240973
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】壁構造の縦目地部分の止水構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/684 20060101AFI20171127BHJP
   E04B 2/94 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   E04B1/684 A
   E04B2/94
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-265042(P2013-265042)
(22)【出願日】2013年12月24日
(65)【公開番号】特開2015-121036(P2015-121036A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2015年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】399117730
【氏名又は名称】住友金属鉱山シポレックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】山下 泰介
【審査官】 津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−311100(JP,A)
【文献】 特開2001−167933(JP,A)
【文献】 特開昭63−086491(JP,A)
【文献】 実開昭64−041505(JP,U)
【文献】 特開2003−147935(JP,A)
【文献】 特開2001−011958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/684
E04B 1/682
E04B 2/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の壁パネルを水平方向に連接してなる壁構造において前記壁パネルの間に鉛直方向に形成される縦目地部分の止水構造であって、
前記縦目地部分には、その内部側から表面側に向かって、弾性材料からなる折り畳み式のガスケットと、シーリング材と、が、この順序で挿入されていて、
前記ガスケットは、長手方向の中心線に沿って折り畳まれた状態で、且つ、折り畳み線の山側を前記壁パネルの内部方向に向けた状態で、前記縦目地部分に圧入されていて、
前記壁パネルの天面側の小口面である横目地部分には、T字型スペーサーが、その脚部が前記ガスケットの折り畳み後のギャップ部分に挿入される態様で積層されていて、
前記横目地部分には、更に、前記T字型スペーサーを覆って、横目地部分用シーリング材が積層されていて、
前記T字型スペーサーの水平プレート部の天面には、前記横目地部分用シーリング材との接着性を向上させるための天面側接着層が形成されていて、前記水平プレート部は前記天面側接着層を介して、前記横目地部分用シーリング材と密着しており、
前記T字型スペーサーの水平プレート部の底面には、前記ガスケットとの接着性を向上させるための底面側接着層が形成されている止水構造。
【請求項2】
前記壁パネルが軽量気泡コンクリートパネルである請求項1に記載の止水構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の止水構造を含んでなる壁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁構造の止水構造に関する。更に詳しくは、軽量気泡コンクリートパネル(ALCパネル)等の壁パネルを水平方向に複数連接してなる壁構造において個々の壁パネル間に鉛直方向に形成される縦目地部分の止水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ALCパネルは、軽量で耐火性、耐熱性、施工性及び経済性に優れている。このため、建材用パネルとして、建造物の外壁材、間仕切材、床材、屋根材等として広く使用されている。特に近年では、低層の工場や倉庫・店舗等の他、その軽量性と施工性面での優位性から、超高層の建造物の外壁等での使用例も増えている。
【0003】
複数のALCパネルを連接して外壁等を構成する場合には、個々の壁パネル間に形成される所謂目地部分の防水性を高める処理が必須である。目地部分の防水処理の手段としては、弾性材料からなるガスケットを挿入することによる止水構造(特許文献1参照)、や、スケットとシーリング材の選択又は組合せによる止水構造(特許文献2、3参照)等が、目地部分の防水手段として建設現場等で実施されている。尚、従来の上記止水構造の形成においては、止水構造を構成するガスケットとしては、主に環状のガスケットが、目地幅に応じて、径の違うものが都度選定されて用いられている。
【0004】
ここで、複数のALCパネルを水平方向に連接してなる壁構造については、水平方向に形成される所謂横目地部分については、上記の各公知技術によって、十分な防水効果を得ることが比較的容易に実現できる。例えば、必要に応じて、シーリング材を二重に施工する等、横目地部分は、施工に関する構造上の制約が比較的少ないからである。その一方で、個々の壁パネルの間に鉛直方向に形成される縦目地部分に関しては、構造上の制約により、必ずしも十分に好ましい態様の防水処理を行うことができない場合があった。例えば、縦目地部分に、上記横目地部分と同様の二重シーリングの施工が求められた場合であっても、ALCパネル間の目地幅のサイズ上の制約から二重のシーリングができない場合等がその具体例である。
【0005】
このような縦目地部分の防水処理については、必然的に主にガスケットによる止水構造に高い防水性能が求められることとなる。しかしながら、縦目地部分の幅には、通常、数mm程度のバラツキがあることが多く、一方ガスケットは通常一定サイズである。よって、全ての縦目地内へ、ガスケットの弾力性が有効に発揮される態様、即ち、適当な圧力が内壁にかかった状態でガスケットが縦目地内部で安定的に配置され、その効力が安定的に発揮される状態で、しかも効率よく挿入することは極めて困難であった。
【0006】
このように、ALCパネルを水平方向に連接してなる壁構造において、特に縦目地部分の防水性を高めるための止水構造については、防水性能と施工性において、更なる改善が強く求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−235789号公報
【特許文献2】特開2000−320030号公報
【特許文献3】特開2004−300741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記状況に鑑みてなされたものであって、複数の壁パネルを水平方向に連接してなる壁構造の縦目地部分の構造に適用可能な構造であって、施工が容易で、且つ、優れた防水性を有する止水構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、複数の壁パネルを水平方向に連接してなる壁構造における縦目地部分の止水構造について、弾性材料からなる独自形状の折り畳み式のガスケットと、シーリング材と、を適切に組合せた止水構造とすることによって、施工が容易で、且つ、防水性に優れる止水構造とすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0010】
(1) 複数の壁パネルを水平方向に連接してなる壁構造において前記壁パネルの間に鉛直方向に形成される縦目地部分の止水構造であって、前記縦目地部分には、その内部側から表面側に向かって、弾性材料からなる折り畳み式のガスケットと、シーリング材と、が、この順序で挿入されていて、前記ガスケットは、長手方向の中心線に沿って折り畳まれた状態で、且つ、折り畳み線の山側を前記壁パネルの内部方向に向けた状態で、前記縦目地部分に圧入されている止水構造。
【0011】
(1)の発明によれば、弾性材料からなる折り畳み式のガスケットは、二つに折り曲げて目地に挿入することができるものであるため、従来公知の環状ガスケットと異なり、カワスキ等を用いて、目地幅にかかわらず、好ましい位置に、容易、且つ、正確に挿入することができる。又、当該ガスケットは、弾性材料を二つに折り曲げた構造であるため、その復元力により壁構造の縦目地の内壁に十分な圧力をかける状態で圧接される。これにより、簡易な構造でありながら、十分な防水性能を発揮することができる。
【0012】
(2) 前記ガスケットは、折り畳まれた状態における外周面に、該ガスケットの長手方向に沿う凹部と凸部からなる波板状の凹凸面が形成されている(1)に記載の止水構造。
【0013】
(2)の発明によれば、(1)に記載の壁構造において、折り畳まれた状態におけるガスケットの外周面に凹凸面が形成されていることによって、縦目地部分への挿入後、所望の位置での安定性も向上する。又、本発明の止水構造に、万が一水が浸入した場合にも、壁構造との圧接面にガスケットの凹凸面の凹部が空間を形成するため、この空間から進入した水を排出することができる。即ち、(2)の発明によれば、(1)の発明の奏する施工性と防水性能の向上効果を、更に優れたものとすることができる。
【0014】
(3) 前記ガスケットの前記シーリング材と当接する面には、離型層が形成されている(1)又は(2)に記載の止水構造。
【0015】
(3)の発明によれば、従来公知の環状形状等のガスケットの場合には、シーリング材が目地の挙動に追従できる3面接着(実質的には両サイドパネル面との2面接着)とするために、バックアップ材等の絶縁材を、壁パネル正面から見て奥の面(底面)との間に設置する必要があったが、ガスケットに上記離型層を形成することによって、バックアップ材等の充填が不要となり、経済性と施工性に優れた止水構造とすることができる。
【0016】
(4) 前記壁パネルの天面側の小口面である横目地部分には、T字型スペーサーが、その脚部が前記ガスケットの折り畳み後のギャップ部分に挿入される態様で積層されていて、前記横目地部分には、更に、前記T字型スペーサーを覆って、横目地部分用シーリング材が積層されていて、前記T字型スペーサーの水平プレート部の天面には、前記横目地部分用シーリング材との接着性を向上させるための天面側接着層が形成されていて、前記水平プレート部は前記天面側接着層を介して、前記横目地部分用のシーリング材と密着しており、前記T字型スペーサーの水平プレート部の底面には、前記ガスケットとの接着性を向上させるための底面側接着層が形成されている(1)から(3)のいずれかに記載の止水構造。
【0017】
(4)の発明によれば、本発明独自のT字型スペーサー、即ち、その天面と底面にそれぞれの面が当接する部材との接着性を向上させた接着層を形成したことを特徴とするT字型スペーサーを、ガスケットと横目字部分用シーリング材のとの間に配置することとした。これにより、ガスケットと横目地部分用シーリング材とが、T字型スペーサーを介して強固に一体化される。よって、例えば、地震等により、壁パネルが変位を吸収するための稼働、具体例としては、各縦目地部が本来の鉛直方向から、いずれかの斜め方向に微動する態様で稼働した場合等において、ガスケットと横目地部分用シーリング材との間の破断によって漏水が起こる事を防止できる。よって、(1)から(3)の止水構造の防水性能、耐久性を更に高めることができる。
【0018】
(5) 前記壁パネルが軽量気泡コンクリートパネルである(1)から(4)のいずれかに記載の止水構造。
【0019】
(5)の発明によれば、一般的にALCパネルを用いた壁構造で不可避である微小な製造誤差、又は施工誤差にかかわらず、規格化された同一サイズのガスケットを用いることができる。よって、壁構造の施工性が大きく向上する。
【0020】
(6) (1)から(5)のいずれかに記載の止水構造を含んでなる壁構造。
【0021】
(6)の発明によれば、施工が容易で、縦目地部分の防水性と耐久性に優れた壁構造を提供することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、複数の壁パネルを水平方向に連接してなる壁構造の縦目地部分の構造に好ましく適用可能な構造であって、施工が容易で、且つ、優れた防水性を有する止水構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の止水構造を用いた壁構造の主たる部分の正面図である。
図2図1のA−A線における断面図である。
図3】本発明の止水構造の構成の説明に供する正面図である。
図4】本発明の止水構造を構成する折り畳み式のガスケットの斜視図である。
図5】本発明の止水構造を構成する折り畳み式のガスケットの断面形状を示す平面図である。
図6】本発明の止水構造を構成する折り畳み式のガスケットの圧入態様の説明に供する図である。
図7】本発明の止水構造に好ましく用いることができるT字型スペーサーの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の「複数の壁パネルを水平方向に連接してなる壁構造において前記壁パネルの間に鉛直方向に形成される縦目地部分の止水構造壁」(以下、単に「止水構造」とも言う)、止水構造を構成する折り畳み式のガスケット、及び、止水構造に好ましく用いることができるT字型スペーサーの好ましい実施形態について説明する。尚、以下においては、壁構造を形成する複数の壁パネルを、軽量で施工性に優れる軽量気泡コンクリートパネル(ALCパネル)10とする実施形態について説明するが、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0025】
<止水構造>
本発明の止水構造1とは、ALCパネル10を水平方向に複数連接してなる壁構造100において、個々のALCパネル10間に鉛直方向に形成される所謂縦目地部分に当該部分からの水分の進入を防ぐために形成される止水構造である。本発明の止水構造1は、図1及び図2に示す通り、弾性材料からなる折り畳み式のガスケット12とシーリング材11とが縦目地部分の壁内部側から順次挿入されて構成されている。又、図1及び図2に示す通り、止水構造1に、T字型スペーサー13を更に配置することにより、これを介することによって、横目地部分の防水に寄与する横目地部分用シーリング材14と、ガスケット12との接着性を高めて、止水構造1の防水性能を更に顕著に向上させることができる。尚、マンション等のベランダ側のALCパネルによる壁構造の場合には、縦目地部分の目地幅は、一般的に8〜13mm程度であるが、このような縦目地部分における防水手段として、止水構造1は、特に好ましく用いることができる。
【0026】
<ガスケット>
図1図3に示す通り、ガスケット12は、止水構造1において、縦目地部分に圧入されて、シーリング材11等とともに止水構造1を構成する。又、ガスケット12は、図2に示す通り、シーリング材11よりも縦目地部分の奥側、即ち、ALCパネル10内部の中心寄りの位置に、長手方向の中心線に沿って折り畳まれた状態で、且つ、折り畳み線の山側をALCパネル10の内部方向に向けた状態で圧入されて止水構造1を構成する。
【0027】
又、ガスケット12は、例えば、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDMゴム)、オプレンゴム、塩ビ性の軟質プラスチック等、弾性を有する材料(本明細所において、「弾性材料」と言う)を、本願特有の形状に形成したものである。
【0028】
又、図4及び図5に示す通り、ガスケット12には、折り畳みの際に、折り畳み線となる中央部分に折り畳みを容易にするためのスリット122が形成されている。これにより、ガスケット12を、長手方向の折り畳み線に沿って容易に折り畳むことができる。そして、図6(a)〜(c)に示す通り、折り畳まれた状態でカワスキ等を用いて目地幅に応じて真っ直ぐ挿入することができる。挿入された状態において、ガスケット12は、その弾性によって、ALCパネル10の側に反発する機構が備わっている。これにより、従来広く用いられている環状型等のガスケットと比較して目地幅の誤差に対する許容幅も広くなっている。
【0029】
又、図4及び図5に示す通り、ガスケット12には、折り畳まれた状態における外周面に、ガスケット12の長手方向に沿う凹部と凸部121とからなる波板状の凹凸面が形成されている。これにより、縦目地部分への挿入後、上記の反発機構によるALCパネルへの圧着力が向上し、所望の位置での安定性が向上する。又、止水構造1に、万が一水が浸入した場合にも、壁構造100と止水構造1との圧接面にガスケットの凹凸面の凹部が水分を排出可能な空間を形成するため、この空間から、止水構造に進入した水を排出することができる。
【0030】
一方、従来広く用いられている環状等のガスケットは、シーリング材11との接着を回避できる特定の材料に素材を限定しない限り、バックアップ材等絶縁材を設置する必要があった。しかし、本発明のガスケット12は、シーリング材11と絶縁させるための処理が予め小口に施すことによって、バックアップ材の充填は不要とすることができる。
【0031】
又、上述の通り、環状ガスケットによる二次防水は目地幅の管理が非常に難しい。一般的に環状ガスケットは、目地幅に対して30〜40%程度圧縮して挿入して、その反発力で止水する構造となっているが、ALCパネルは製造誤差、又は施工誤差が有る。そのような幅に応じてガスケットの径を変えながら施工することは著しい施工性の低下をもたらす。又、環状ガスケットは、目地に挿入する時の摩擦等で捩れて差し込まれる事があるが、そのような状態ではガスケットの反発力が部分的に変わってくる事もあり、所定の性能が発揮できないケースもある。よって、目地幅に対して均等に反発力が発揮できるように真っ直ぐ挿入できるガスケットもパネルを建て込んだ後に挿入するタイプのガスケットには必須条件である。本発明のガスケット12は、従来公知の環状ガスケットのように目地幅に応じて径の違うものを選定する必要もなく、取り合いに施工されたシーリングの材質によってシーリングの材質を変更する必要のない二次防水構造を提供するものである。
【0032】
<シーリング材>
図1図3に示す通り、シーリング材11は、止水構造1において、縦目地部分に成形されて、ガスケット12等とともに止水構造1を構成する。又、シーリング材11は、ガスケット12よりも縦目地部分の外側、即ち、ALCパネル10内部の表面寄りの位置に形成されて止水構造1を構成する。止水構造1は、特に壁構造100の構造的制約から、シーリング材を二重に形成できないことが多い縦目地部分においても、シーリング材とガスケットの最適な組合せにより、防水性を顕著に向上させることができることを特長とする構造である。尚、シーリング材11を形成する材料としては、二液タイプのウレタン系のシーリング材等、従来公知のものを適宜用いることができる。
【0033】
<T字型スペーサー>
図7に示す通り、T字型スペーサー13は、水平プレート部131と脚部132を有する形態であればよく、材料樹脂をそのような形状に一体成形したものや、或いは金属プレートを折曲げ形成したものを適宜用いることができる。
【0034】
図1及び図3に示す通り、T字型スペーサー13は、止水構造1において、脚部132をガスケット12の折り畳み後のギャップ部分に挿入する態様でガスケット12の天面側に積層される態様で用いられる。又、図1及び図3に示す通り、横目地部分には、T字型スペーサー13の水平プレート部131を覆って、横目地部分用シーリング材14を積層する。このような構成とすることにより、止水構造1の防水性を顕著に向上させることができる。
【0035】
ここで、ガスケット12は、上記の通り、優れた特性を有する一方で、シーリング材11と直接接着する場合には、所望の接着性が得られない場合もある。ガスケット12において長さ方向に対して切断した面には気泡の発生による微細凹凸が生じている場合が多いからである。しかし、シーリング材11とガスケット12との間にT字型スペーサー13を介在させることによって、そのような場合であっても、ガスケット12の接着性に係る欠点を解消して、これらを極めて強固に一体化することができる。
【0036】
図7に示す通り、T字型スペーサー13の水平プレート部131の天面には、天面側接着層133が形成されている。天面側接着層133は、T字型スペーサー13の水平プレート部131の天面と横目地部分用シーリング材14との接着性を向上させるために形成される接着層である。又、T字型スペーサー13の水平プレート部131の底面には、底面側接着層134が形成されている。底面側接着層134は、T字型スペーサー13の水平プレート部131の底面とガスケット12との接着性を向上させるために形成される接着層である。
【0037】
天面側接着層133を形成する接着剤は、T字型スペーサー13と、横目地部分用シーリング材14との接着性を向上させうるものであればよいが、横目地部分用シーリング材14の材料成分と同一の樹脂成分を含んでなる接着剤を好ましく用いることができる。例えば、横目地部分用シーリング材14がウレタン系の材料からなる場合には、ウレタン系の接着剤を、又、横目地部分用シーリング材14がシリコン系の材料からなる場合には、シリコン系の接着剤を、それぞれ、上記接着剤として、好ましく用いることができる。又、天面側接着層133は、必ずしも上記接着剤によって別途の層として天面上に形成されることが必須ではなく、例えば、T字型スペーサー13自体を横目地部分用シーリング材と同質の材料で形成することによって密着性を高めたものであっても、その場合は天面自体が天面側接着層133としての機能を奏しうるものである限り、そのようなT字型スペーサーも、当然に本発明の止水構造を構成するT字型スペーサーに含まれる。
【0038】
底面側接着層134を形成する接着剤は、T字型スペーサー13とガスケット12との接着性を向上させうるものであればよい。但し、底面側接着層134は、ガスケットを形成する弾性材料を含む広範囲の様々な材質に対して優れた付着性を発揮するブチルテープを底面側に貼着することにより形成した層であることが好ましい。
【0039】
以上の通り、T字型スペーサー13の水平プレート部131は、天面側接着層133を介して、横目地部分用シーリング材14と強固に一体化させることができ、又、底面側接着層134を介して、ガスケット12と強固に一体化させることができる。
【0040】
<本発明の止水構造を含む壁構造>
止水構造1を含んで構成される壁構造100は、折畳み式のガスケット12を用いることによって、縦目地部分の防水性能について優れた性能を有する構造となる。又、壁構造100は、横目地部分用シーリング材14と、ガスケット12とが取り合う位置に、独自の形状及び構成からなるT字型スペーサー13を配置することにより、ガスケット12と、横目地部分用シーリング材14とが、T字型スペーサー13を介して強固に一体化される。これにより、そのような壁構造100は、極めて優れた防水性能と耐久性を有するものとなる。
【符号の説明】
【0041】
1 止水構造
11 シーリング材
12 ガスケット
121 凸部
122 スリット
13 T字型スペーサー
131 水平プレート部
132 脚部
133 天面側接着層
134 底面側接着層
14 横目地部分用シーリング材
10 軽量気泡コンクリート(ALC)パネル
100 壁構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7