特許第6241003号(P6241003)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6241003
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】車両走行路支持装置
(51)【国際特許分類】
   E01B 25/30 20060101AFI20171127BHJP
   B60L 13/10 20060101ALI20171127BHJP
   B61B 13/08 20060101ALN20171127BHJP
【FI】
   E01B25/30
   B60L13/10 A
   !B61B13/08 B
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-208794(P2014-208794)
(22)【出願日】2014年10月10日
(65)【公開番号】特開2016-79578(P2016-79578A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2016年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】笹川 卓
(72)【発明者】
【氏名】高橋 紀之
(72)【発明者】
【氏名】依田 裕史
【審査官】 亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−271402(JP,A)
【文献】 特開昭49−057506(JP,A)
【文献】 特開昭59−021802(JP,A)
【文献】 特開2009−221747(JP,A)
【文献】 実開昭58−050110(JP,U)
【文献】 特開2005−233367(JP,A)
【文献】 特開昭59−195902(JP,A)
【文献】 特開平05−140901(JP,A)
【文献】 特開2014−173407(JP,A)
【文献】 特開2007−040097(JP,A)
【文献】 特開平11−081238(JP,A)
【文献】 特開2003−184006(JP,A)
【文献】 特開平04−153401(JP,A)
【文献】 特開昭63−171905(JP,A)
【文献】 国際公開第86/005827(WO,A1)
【文献】 特開平02−045255(JP,A)
【文献】 特開平04−062202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 25/30、25/32
E01B 25/28
E01D 1/00−24/00
E01F 1/00
E01F 13/00−15/14
B60L 13/03−13/10
B61B 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行する走行路上に、該走行路の幅方向で相互に間隔をおいて設けられた側壁を有する車両走行路支持装置であって、
前記側壁と前記走行路とは、該走行路の幅方向への所定以上の力の付与によって拘束が解除される連結手段によって互いに連結されており、
前記側壁は、前記車両の走行方向に沿って分割されており、
前記側壁の分割箇所に跨がって配置され、走行方向前後に配置される前記側壁の幅方向への移動を規制する第1の移動規制部材と、
前記走行路上において、相互に間隔をおいて設けられた前記側壁の間に設置され、前記側壁の幅方向への移動を該側壁の内面側から規制する第2の移動規制部材と、
が備えられていることを特徴とする車両走行路支持装置。
【請求項2】
前記第1の移動規制部材は、車両の走行方向前後に配置される前記側壁の各々の間を連結する側壁連結部材からなることを特徴とする請求項1に記載の車両走行路支持装置。
【請求項3】
前記第1の移動規制部材は、車両の走行方向前後に配置される前記側壁の外側で幅方向への移動を規制し、前記分割された側壁の内、前記車両の走行方向前方側の前記側壁に連結された側壁ストッパーからなることを特徴とする請求項1に記載の車両走行路支持装置。
【請求項4】
車両が走行する走行路上に、該走行路の幅方向で相互に間隔をおいて設けられた側壁を有する車両走行路支持装置であって、
前記側壁と前記走行路とは、該走行路の幅方向への所定以上の力の付与によって拘束が解除される連結手段によって互いに連結されており、
前記走行路は、車両走行方向に沿って分割されており、
前記走行路の分割箇所に跨がって配置され、前記走行路の下側で上下方向への移動を規制する上下動ストッパーが設けられるとともに、該上下動ストッパーは、前記分割された走行路の内、前記車両の走行方向前方側の前記走行路に連結されていることを特徴とする車両走行路支持装置。
【請求項5】
さらに、請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の車両走行路支持装置に備えられる、走行方向前後に配置される前記側壁の幅方向への移動を規制する第1の移動規制部材と、前記側壁の幅方向への移動を該側壁の内面側から規制する第2の移動規制部材と、が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の車両走行路支持装置。
【請求項6】
前記側壁の内面側には、超電導磁気浮上式鉄道システムをなすガイド、浮上、あるいは推進用の地上コイルが収容されていることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の車両走行路支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導磁気浮上式鉄道等の車両を走行路内に支持するための車両走行路支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、超電導磁気浮上式鉄道等においては、浮上した車両が走行路上に設置された側壁によってガイドされ、走行路に沿って走行する。このような超電導磁気浮上式鉄道においては、車両と走行路とのギャップが、走行方向に対する幅(左右)方向及び縦(上下)方向ともに100mm程度で確保されており、在来方式の鉄道に比べて大きいことから、地震等の異常時における走行安定性が高く安全であることが知られている(例えば、非特許文献1を参照)。また、近年では、高架橋等の地上構造物の耐震技術も進歩していることから、超電導磁気浮上式鉄道の安全性は極めて高いものとなっている。
【0003】
上述のように、超電導磁気浮上式鉄道は、地震発生時における走行安定性が非常に高いものである一方、近年では、従来の想定を超える規模の地震も発生している。地震等が発生して互いに隣接する地上構造物が不等変位した場合、それぞれの地上構造物の上部に設けられた走行路や、幅方向でのガイドウェイとなる側壁間において、一般に目違いと称される幅方向又は縦方向でのズレが生じることがある。このような目違いが生じた場合、例えば、車両と側壁、あるいは、車両と走行路との接触等が発生する可能性があることから、走行に支障をきたすおそれもある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】涌井一,「超電導磁気浮上式鉄道のガイドウェイ構造」,コンクリート工学,Vol.28,No.12,Dec.1990,P4−13
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、仮に地上構造物の不等変位が発生した場合であっても、車両の運行に支障をきたすような目違いの発生を防止でき、走行安定性及び安全性に優れた車両走行路支持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、まず、本発明は、車両が走行する走行路上に、該走行路の幅方向で相互に間隔をおいて設けられた側壁を有する車両走行路支持装置であって、前記側壁と前記走行路とは、該走行路の幅方向への所定以上の力の付与によって拘束が解除される連結手段によって互いに連結されており、前記側壁は、前記車両の走行方向に沿って分割されており、前記側壁の分割箇所に跨がって配置され、走行方向前後に配置される前記側壁の幅方向への移動を規制する第1の移動規制部材と、前記走行路上において、相互に間隔をおいて設けられた前記側壁の間に設置され、前記側壁の幅方向への移動を該側壁の内面側から規制する第2の移動規制部材と、が備えられていることを特徴とする。
【0007】
このような構成の車両走行路支持装置によれば、まず、車両の走行方向に沿って分割された側壁と走行路とが、上記構成の連結手段で互いに連結されていることにより、例えば、隣接する地上構造物が不等変位して幅方向で所定以上の加重が生じた際に、側壁と走行路との拘束が解除されて滑るように相対変位する。そして、走行路との拘束が解除された側壁は、上記構成の第1の移動規制部材により、走行方向前後に配置される側壁間での幅方向への移動が規制されるとともに、上記構成の第2の移動規制部材により、幅方向における一方向側への変位が規制される。これにより、側壁は幅方向で互いに間隔(軌間)が拡がる方向で移動する一方、側壁の車両の走行方向に対するプラス側の変位、即ち、側壁の幅方向の間隔が狭まって、側壁が軌道内側に飛び出す変位を抑制することができるので、車両と側壁とが接触する等の走行上の不具合が生じることが無い。従って、万が一、走行中に地上構造物の不等変位が発生した場合であっても、十分な走行安定性を確保することが可能となる。
【0008】
また、本発明に係る車両走行路支持装置は、上記構成において、前記第1の移動規制部材が、車両の走行方向前後に配置される前記側壁の各々の間を連結する側壁連結部材からなる構成を採用してもよい。
【0009】
このような構成の車両走行路支持装置によれば、第1の移動規制部が、上記構成の側壁連結部材からなることで、車両の走行方向前後に配置される側壁間での幅方向への移動を確実に規制できるので、車両の走行方向に対するプラス側の変位を効果的に抑制することが可能となる。
【0010】
また、本発明に係る車両走行路支持装置は、上記構成において、前記第1の移動規制部材が、車両の走行方向前後に配置される前記側壁の外側で幅方向への移動を規制し、前記分割された側壁の内、前記車両の走行方向前方側の前記側壁に連結された側壁ストッパーからなる構成を採用してもよい。
【0011】
このような構成の車両走行路支持装置によれば、第1の移動規制部が、上記構成の側壁ストッパーからなることで、上記同様、車両の走行方向前後に配置される側壁間での幅方向への移動を確実に規制できるので、車両の走行方向に対するプラス側の変位を効果的に抑制できる。
【0012】
次に、本発明は、車両が走行する走行路上に、該走行路の幅方向で相互に間隔をおいて設けられた側壁を有する車両走行路支持装置であって、前記側壁と前記走行路とは、該走行路の幅方向への所定以上の力の付与によって拘束が解除される連結手段によって互いに連結されており、前記走行路は、車両走行方向に沿って分割されており、前記走行路の分割箇所に跨がって配置され、前記走行路の下側で上下方向への移動を規制する上下動ストッパーが設けられるとともに、該上下動ストッパーは、前記分割された走行路の内、前記車両の走行方向前方側の前記走行路に連結されていることを特徴とする。
【0013】
このような構成の車両走行路支持装置によれば、上記同様、まず、車両の走行方向に沿って分割された側壁と走行路とが、上記構成の連結手段で互いに連結されていることにより、例えば、隣接する地上構造物が不等変位して幅方向で所定以上の加重が生じた際に、側壁と走行路との拘束が解除されて滑るように相対変位する。そして、側壁との拘束が解除された走行路は、上記構成の上下動ストッパーにより、分割された走行路の内、車両の走行方向前方側の走行路の上下方向への移動が規制される。これにより、走行路の車両の走行方向に対するプラス側の変位、即ち、走行路が軌道内側に飛び出す変位を抑制することができるので、車両と走行路とが接触する等の走行上の不具合が生じることが無い。従って、万が一、走行中に地上構造物の不等変位が発生した場合であっても、十分な走行安定性を確保することが可能となる。
【0014】
また、本発明に係る車両走行路支持装置は、上記構成において、さらに、上記の車両走行路支持装置に備えられる、走行方向前後に配置される前記側壁の幅方向への移動を規制する第1の移動規制部材と、前記側壁の幅方向への移動を該側壁の内面側から規制する第2の移動規制部材と、が設けられていることが好ましい。
【0015】
このような構成の車両走行路支持装置によれば、上記同様、上下動ストッパーにより、走行路が軌道内側に飛び出す変位が抑制され、車両と走行路との接触等の走行上の不具合が生じるのを防止できるとともに、第1の移動規制部材及び第2の移動規制部材により、側壁が軌道内側に飛び出す変位を抑制することができるという両方の作用が得られる。これにより、万が一、走行中に地上構造物の不等変位が発生した場合であっても、車両が走行路や側壁と接触する等の走行上の不具合が生じることが無く、走行安定性及び安全性をより顕著に向上させることが可能となる。
【0016】
また、本発明に係る車両走行路支持装置は、上記構成において、前記側壁の内面側に、超電導磁気浮上式鉄道システムをなすガイド、浮上、あるいは推進用の地上コイルが収容されている構成を採用することができる。
【0017】
このような構成の車両走行路支持装置によれば、超電導磁気浮上式鉄道システムにおける車両走行路支持装置としての十分な機能を備えながら、側壁又は走行路の車両の走行方向に対するプラス側の変位が生じるのを抑制できる。これにより、万が一、走行中に地上構造物の不等変位が発生した場合であっても、車両と側壁とが接触する等の走行上の不具合が生じることが無く、走行安定性及び安全性に優れた超電導磁気浮上式鉄道システムを実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る車両走行路支持装置によれば、上記構成により、側壁又は走行路の車両の走行方向に対するプラス側の変位、即ち、側壁又は走行路が軌道内側に飛び出す変位を抑制することができるので、車両と側壁又は走行路とが接触する等の走行上の不具合が生じることが無い。従って、万が一、走行中に地上構造物の不等変位が発生した場合であっても、十分な走行安定性を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態である車両走行路支持装置を模式的に説明する図であり、車両走行路支持装置を走行路上から平面視した図で、(a)は通常時、(b)は地上構造物である高架橋間で幅方向での目違いが発生した場合を示す概略図である。
図2】本発明の他の実施形態である車両走行路支持装置を模式的に説明する図であり、車両走行路支持装置を走行路上から平面視した図で、(a)は通常時、(b)は地上構造物である高架橋間で幅方向での目違いが発生した場合を示す概略図である。
図3】本発明の他の実施形態である車両走行路支持装置を模式的に説明する図であり、車両走行路支持装置を側面側から見た図で、(a)は通常時、(b),(c)は地上構造物である高架橋間で縦方向での目違いが発生した場合を示す概略図である。
図4】本発明の他の実施形態である車両走行路支持装置を模式的に説明する図であり、車両走行路支持装置を走行路上から平面視した図で、(a)は通常時、(b)は地上構造物である高架橋間で幅方向での目違いが発生した場合を示す概略図である。
図5】本発明の一実施形態である車両走行路支持装置が適用される超電導磁気浮上式鉄道システムを模式的に説明する図であり、地上構造物である高架橋の上部に車両走行路支持装置が備えられ、その上に車両が搭載された状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態である車両走行路支持装置の例を挙げ、その構成及び作用について、図1図5を適宜参照しながら詳述する。
【0021】
[第1の実施形態]
本発明に係る第1の実施形態の車両走行路支持装置1について、図1(a),(b)及び図5を参照しながら以下に詳述する。図1(a),(b)は、本実施形態の車両走行路支持装置1を走行路2上から平面視した図で、(a)は通常時、(b)は地上構造物である高架橋間で幅方向での目違いが発生した場合を示している。
【0022】
図1(a),(b)に示すように、本実施形態の車両走行路支持装置1は、浮上式車両(図5中の符号150を参照)が走行する走行路2上に、この走行路2の幅方向で相互に間隔をおいて設けられた側壁3を有するものである。この車両走行路支持装置1は、側壁3と走行路2とが、この走行路2の幅方向への所定以上の力の付与によって拘束が解除される連結手段4(図5を参照)によって互いに連結されている。そして、車両走行路支持装置1は、側壁3が、車両の走行方向Dに沿って分割されており、側壁3の分割箇所に跨がって配置され、走行方向Dの前後に配置される側壁3の幅方向への移動を規制する側壁連結部材(第1の移動規制部材)5と、走行路2上において、相互に間隔をおいて設けられた側壁3の間に設置され、側壁3の幅方向への移動を側壁3の内面3a側から規制する横ずれストッパー(第2の移動規制部材)6と、が備えられ、概略構成される。
【0023】
本実施形態の車両走行路支持装置1は、例えば、図5に示すような超電導磁気浮上式鉄道システム100に適用することで、磁気浮上した状態で走行する浮上式車両150をガイド可能なもの(ガイドウェイ)であり、浮上式車両150に近接する側壁3の内面3a側に、例えば、補助案内車輪を支持するガイド部31や、浮上・案内コイル(地上コイル)32、推進コイル(地上コイル)33等が収容される。また、浮上式車両150には、側面151側に、超電導磁石152や冷凍システム153等が収容される。
【0024】
走行路2は、図5中に示す浮上式車両150が走行する軌道の路盤となるものであり、図示を省略するが、例えば、高架橋のような鉄筋コンクリートからなる地上構造物の上部に設けられる。走行路2は、図示例のように、車両の走行方向Dに沿って所定の長さで分割された構成とすることができる。
【0025】
側壁3は、図5中に示す浮上式車両150が走行する軌道において幅方向でのガイドウェイとなる、複数の板部材が組み合わせられてなる略箱状のものであり、走行路2上に、幅方向で相互に間隔をおいて平面視略平行状態で設置される。また、側壁3は、図示例のように、車両の走行方向Dに沿って所定の長さで分割されたモジュール構造として構成することができ、走行路2上の所定の位置に、各々の側壁3が、後述の連結手段4を用いて略垂直状に搭載・固定される。
【0026】
側壁3の材質としては、通常時及び異常時の荷重に耐えうる材料からなることが好ましく、例えば、高精度のプレキャストコンクリートを用いることができる。
また、本実施形態で用いられる側壁3には、上述したように、超電導磁気浮上式鉄道システム100を構成する各部材等が収容されている。
【0027】
連結手段4(図5を参照)は、上述のように、側壁3を走行路2上に固定するものであるとともに、側壁3と走行路2とを、走行路2の幅方向への所定以上の力の付与によって拘束が解除されるように、互いに連結するものである。連結手段4は、高架橋等の上部に備えられる走行路2と、その上に設置される側壁3とを剛に連結せず、走行方向Dに対する幅方向で所定以上の加重が生じた際に側壁3と走行路2との拘束が解除されて互いに滑ることで、両者が幅方向(左右方向)で相対変位するように構成される。これにより、上記の側壁3は、隣接する高架橋が幅方向で不等変位した際に、側壁3と走行路2との拘束が解除されて相対変位する。
【0028】
連結手段4としては、上記のような、所定以上の加重が加わった際に走行路2と側壁3との連結を解除できる作用を得るためには、まず、浮上式車両の通常走行時においては走行路2と側壁3とを固定し、所定以上の加重が側壁3に加わった場合にのみ、両者の連結を解除できる構造を採用する必要がある。このような構造としては、例えば、所定以上の揃断応力が加わった際に積極的に破断するようなボルトを用いた構造が挙げられる。あるいは、上記構造としては、例えば、所定以上の力で相対滑りを生じる摩擦力を設定して、側壁3と走行路2との間を保持可能な載置機構等を用いたものも挙げられ、具体的には、側壁3と走行路2との双方の接触面に滑り止め形状等を形成しておくことが考えられる。
【0029】
側壁連結部材(第1の移動規制部材)5は、図1(a),(b)中に示すように、側壁3の分割箇所に跨がって配置される部材である。本実施形態において用いられる側壁連結部材5は、走行方向Dの前後に配置される側壁3の幅方向への移動を規制するものであり、例えば、折れ曲がり自在とされたジョイント構造の部材からなる。図1(b)に示すように、側壁連結部材5は、走行方向Dで前後に配置される側壁3同士を連結した状態で、側壁連結部材5の位置における角折れを許容できる構成とされている。
【0030】
横ずれストッパー(第2の移動規制部材)6は、図1(a),(b)中に示すように、走行路2上において、相互に間隔をおいて設けられた側壁3の間に設置・固定される部材である。本実施形態において用いられる横ずれストッパー6は、側壁3の幅方向への移動を側壁3の内面3a側(軌道内側)から規制するものであり、相対して配置された側壁3の各々の一方向側への変位、即ち、軌道内側に飛び出す方向の移動を制限するものである。
横ずれストッパー6の材質としては、特に限定されないが、側壁3と同様のプレキャストコンクリート等を用いることができる。
【0031】
本実施形態の車両走行路支持装置1によれば、図1(a)に示すように、まず、浮上式車両150(図5を参照)の走行方向Dに沿って分割された側壁3と走行路2とが、連結手段4で互いに連結されていることにより、隣接する高架橋が不等変位して幅方向で所定以上の加重が生じた際、側壁3と走行路2との拘束が解除されて滑るように相対変位(移動)する。この際、浮上式車両の走行方向Dに対する幅方向において、通常、瞬時に左右の両方向で加重が発生する。
【0032】
そして、走行路2との拘束が解除された側壁3は、側壁連結部材5により、走行方向Dにおいて前後に配置される側壁3間での幅方向への移動が規制される。即ち、図1(b)に示すように、走行方向Dで前後に配置される側壁3同士を連結した状態で、側壁連結部材5の位置が角折れする。この際、側壁3は、横ずれストッパー6により、走行方向Dに対する幅方向で、軌道内側に飛び出す方向の移動が規制される。
【0033】
上記の側壁連結部材5及び横ずれストッパー6の作用により、相対して配置される側壁3は離間して軌間が拡がる方向となり、側壁3が軌道内側に飛び出す変位を抑制することができるので、浮上式車両と側壁3との間で接触等が発生するのを防止できる。これにより、車両走行路支持装置1によれば、万が一、走行中に地上構造物の不等変位が発生した場合であっても、浮上式車両に走行上の不具合が発生することがなく、十分な走行安定性を確保しながら安全に走行させることが可能となる。
【0034】
また、本実施形態の車両走行路支持装置1によれば、上述のように、側壁3の内面3a側に、地上コイルをはじめとする各種部材が収容され、超電導磁気浮上式鉄道システムを構成することで、同システムにおける車両走行路支持装置としての十分な機能を備えながら、優れた走行安定性及び安全性を実現することが可能となる。
【0035】
なお、本実施形態の車両走行路支持装置1においては、側壁連結部材5や横ずれストッパー6と、被拘束体である側壁3との間は、必ずしも密着させる必要はなく、一定の遊間を設けることで、ある程度の変位までの目違いは許容できる構成とすることができる。
【0036】
本実施形態の車両走行路支持装置1においては、上記構成により、側壁3が、間隔(軌間)が拡がる方向で変位する。このように、局所的に軌間が拡がる方向で変位することは、超電導磁気浮上式鉄道システムにおいては、特に走行安全上の問題は無い。
【0037】
ここで、本実施形態の車両走行路支持装置1を、図5に示す超電導磁気浮上式鉄道システム100に適用した場合、上述したように、側壁3の内面3a側に、ガイド部31や、浮上・案内コイル32、推進コイル33等が収容される。このような、浮上・案内コイル32や推進コイル33等としては、従来から超電導磁気浮上式鉄道システム向けに提案されているものを何ら制限無く採用することができる。
【0038】
[第2の実施形態]
本発明に係る第2の実施形態の車両走行路支持装置10について、図2(a),(b)及び図5を参照しながら以下に詳述する。図2(a),(b)は、本実施形態の車両走行路支持装置10を走行路2上から平面視した図で、(a)は通常時、(b)は地上構造物である高架橋間で幅方向での目違いが発生した場合を示している。
【0039】
なお、以下の説明においては、上記第1の実施形態で説明した車両走行路支持装置1(図1(a),(b)を参照)と共通する構成については同じ符号を付与して説明するとともに、その詳細な説明を省略することがある。
【0040】
本実施形態の車両走行路支持装置10は、上記の側壁連結部材5に代えて、走行方向Dにおける前後に配置される側壁3の外側で幅方向への移動を規制し、分割された側壁3の内、浮上式車両の走行方向Dにおける前方側の側壁3に連結された側壁ストッパー7(第1の移動規制部材)を備えている点で、第1の実施形態の車両走行路支持装置1とは異なる。
【0041】
側壁ストッパー7は、側壁3の分割箇所に跨がって配置される角棒状の部材であり、図示例では、側壁3の外面3b側にねじ71によって取り付けられている。本実施形態で用いられる側壁ストッパー7は、第1の実施形態で用いられる側壁連結部材5と同様、走行方向Dの前後に配置される側壁3の幅方向への移動を規制するものである。一方、本実施形態の側壁ストッパー7は、上記構成により、走行方向Dにおける前後に配置される側壁3の外側で、幅方向への移動を規制するように設けられている。
側壁ストッパー7の材質としては、特に限定されないが、側壁3と同様のプレキャストコンクリート等を用いることができる。
【0042】
本実施形態の車両走行路支持装置10によれば、図2(a)に示すように、まず、浮上式車両の走行方向Dに沿って分割された側壁3と走行路2とが、連結手段4(図5を参照)で互いに連結されていることにより、隣接する高架橋が不等変位して幅方向で所定以上の加重が生じた際、側壁3と走行路2との拘束が解除されて滑るように相対変位する点で、第1の実施形態の車両走行路支持装置1と同様である。
【0043】
そして、本実施形態においては、走行路2との拘束が解除された側壁3が、側壁ストッパー7により、走行方向Dにおいて前後に配置される側壁3間での幅方向への移動が、側壁3の外側で規制される。即ち、図2(b)に示すように、走行方向Dで前後に配置される側壁3の内、前方側の側壁3に連結された側壁ストッパー7により、後方側の側壁3の幅方向における軌道の外側への移動が規制される。さらに、各々の側壁3は、横ずれストッパー6により、走行方向Dに対する幅方向で、軌道内側に飛び出す方向の移動が規制される。
【0044】
上記の側壁ストッパー7及び横ずれストッパー6の作用により、相対して配置される側壁3が軌道内側に飛び出す変位を抑制することができ、第1の実施形態の場合と同様、浮上式車両と側壁3との間で接触等が発生するのを防止できるので、走行中に地上構造物の不等変位が発生した場合であっても、浮上式車両に走行上の不具合が発生することがなく、十分な走行安定性を確保しながら安全に走行させることが可能となる。
【0045】
[第3の実施形態]
以下、本発明に係る第3の実施形態の車両走行路支持装置20について、図3(a)〜(c)を参照しながら詳述する。図3(a)〜(c)は、本実施形態の車両走行路支持装置20を側面側から見た図で、(a)は通常時、(b),(c)は地上構造物である高架橋間で縦方向での目違いが発生した場合を示している。
【0046】
以下の説明においては、上記第1及び第2の実施形態で説明した車両走行路支持装置1,10(図1及び図2を参照)と共通する構成については同じ符号を付与して説明するとともに、その詳細な説明を省略する。
【0047】
本実施形態の車両走行路支持装置20は、上記各実施形態と同様、浮上式車両(図5中の符号150参照)が走行する走行路22上に、この走行路22の幅方向で相互に間隔をおいて設けられた側壁を有するものである。この車両走行路支持装置20は、側壁3と走行路22とは、この走行路22の幅方向への所定以上の力の付与によって拘束が解除される連結手段4によって互いに連結されている。また、走行路22は、車両の走行方向Dに沿って分割されており、走行路22の分割箇所に跨がって配置され、走行路22の下側で上下方向への移動を規制する上下動ストッパー8が設けられるとともに、この上下動ストッパー8は、分割された走行路22の内、浮上式車両の走行方向Dにおける前方側の走行路22に連結されている。
【0048】
即ち、本実施形態の車両走行路支持装置20は、第1及び第2の実施形態で説明した車両走行路支持装置1,10が、側壁3の横ずれによる目違いを防止するものであるのに対し、走行路22の縦ずれによる目違いを防止するものである。
【0049】
走行路22は、上記各実施形態における走行路2と同様、高架橋のような鉄筋コンクリートからなる地上構造物の上部に設けられる。また、図3(a)に示すように、走行路22は、高架橋の下部構造物110上において固定せずに載置されているとともに、浮上式車両の走行方向Dに沿って所定の長さで分割された構成とされている。
【0050】
上下動ストッパー8は、走行路22の分割箇所に跨がって配置される角棒状の部材であり、図示例では、走行路22の下面22a側にねじ81によって取り付けられている。本実施形態で用いられる上下動ストッパー8は、上述したように、分割された走行路22の内、走行方向Dにおける前方側の走行路22に連結されることで、後方側の走行路22の上下方向の移動を規制するものである。
上下動ストッパー8の材質としては、特に限定されないが、側壁3等と同様のプレキャストコンクリート等を用いることができる。
【0051】
本実施形態の車両走行路支持装置20によれば、詳細な図示を省略するが、第1及び第2の実施形態の車両走行路支持装置1,10と同様、まず、浮上式車両の走行方向Dに沿って分割された側壁3と走行路22とが連結手段4で互いに連結されていることにより、隣接する地上構造物が不等変位して幅方向で所定以上の加重が生じた場合には、側壁3と走行路22との拘束が解除されて滑るように相対変位する。
【0052】
さらに、本実施形態では、図3(b)に示すように、側壁3との拘束が解除された走行路2が、上下動ストッパー8により、分割された走行路22の内、浮上式車両の走行方向Dで前方側の走行路22の上下方向(縦方向)への移動が規制される。これにより、例えば、隣接する下部構造物110が上下方向に不等変位した場合でも、浮上式車両の台車部と近接する走行路22の、走行方向Dに対するプラス側の変位、即ち、走行路22が軌道内側に飛び出す変位を抑制することができるので、浮上式車両と走行路22との接触等、走行上の不具合が生じるのを防止できる。従って、車両走行路支持装置20によれば、万が一、走行中に地上構造物の不等変位が発生した場合であっても、浮上式車両に走行上の不具合が発生することがなく、十分な走行安定性を確保しながら安全に走行させることが可能となる。
【0053】
ここで、隣接する走行路22が上下方向(縦方向)に不等変位する場合、走行方向別(上り又は下り)で、走行安定性に与える影響が異なる。本実施形態においては、図3(b)に示すように、走行方向Dに対してマイナス側の不等変位が生じることは、走行安定上、大きな問題とはならないため、これを許容したうえで、走行方向Dに対してブラス側の不等変位、即ち、走行路22が軌道内側に飛び出すのを抑制するための対策を実施している。即ち、本実施形態においては、浮上式車両の走行方向Dに対して下り側(前方側)の走行路22に、上下方向の相対変位を抑制するための上下動ストッパー8を設けるとともに、走行路22自体は、下部構造物110に対して固定せずに載置した構造としている。これにより、上述したような、走行路22が軌道内側に飛び出す変位を抑制し、浮上式車両と走行路22との接触等の走行上の不具合が生じることがなく、十分な走行安定性及び安全性を確保できる効果が得られる。
【0054】
なお、本実施形態においては、さらに、第1及び第2の実施形態で説明した車両走行路支持装置1,10(図1及び図2を参照)に備えられる、走行方向Dの前後に配置される側壁3の幅方向への移動を規制する側壁連結部材5又は側壁ストッパー7(第1の移動規制部材)と、側壁3の幅方向への移動を側壁3の内面3a側から規制する横ずれストッパー6(第2の移動規制部材)とが設けられた構成を採用することができる。このような構成を採用することで、まず、上記同様、上下動ストッパー8により、走行路22が軌道内側に飛び出す変位が抑制され、さらに、側壁連結部材5又は側壁ストッパー7と横ずれストッパー6により、側壁3が軌道内側に飛び出す変位を抑制することができる。このように、走行路22が軌道内側に飛び出す変位、及び、側壁3が軌道内側に飛び出す変位の両方を抑制する作用が得られることで、万が一、走行中に地上構造物の不等変位が発生した場合であっても、浮上式車両が走行路や側壁と接触する等の走行上の不具合が生じることが無く、走行安定性及び安全性をより向上させることが可能となる。
【0055】
[その他の変形例]
以下、本発明に係る車両走行路支持装置の他の変形例について説明する。
まず、本発明に係る車両走行路支持装置においては、図2(a),(b)に示す車両走行路支持装置10の構成に対し、さらに、図4(a),(b)に示す車両走行路支持装置30のように、側壁3の内面3a側にも側壁ストッパー7を設け、且つ、横ずれストッパー6を軌道の外側(側壁3の外面3b側)にも設けた構成としてもよい。図4(a)に示すように、車両走行路支持装置30は、浮上式車両の走行方向Dで前方側の走行路2上において、相対して設けられた側壁3の各々が、内面3a側及び外面3b側に配置された横ずれストッパー6により、走行路2に剛に固定されている。一方、走行方向Dで後方側の走行路2上に設けられた側壁3の先端部3cは、走行方向Dで前方側の側壁3に固定された2箇所の側壁ストッパー7で狭持されている。
【0056】
なお、図4(a),(b)に示す車両走行路支持装置30においては、側壁3の先端部3cが2箇所の側壁ストッパー7で狭持される構成であることから、進行方向Dで後方側の走行路2においては、前方寄りの横ずれストッパー6が省略さている点で、図2(a),(b)に示す車両走行路支持装置10とは、さらに異なる構成とされている。
【0057】
図4(b)に示すように、車両走行路支持装置30によれば、走行方向Dに対する幅方向で目違いが生じた場合であっても、走行方向Dで後方側の側壁3が、先端部3cが側壁ストッパー7に狭持された状態で、走行方向Dで前方側の側壁3に追随して幅方向に移動するので、目違いの発生を防止することが可能となる。
【0058】
また、本発明に係る車両走行路支持装置を超電導磁気浮上式鉄道システムに適用するにあたり、第1及び第2の実施形態に示した車両走行路における幅方向の目違いを防止するための構造、あるいは、第3の実施形態に示した上下方向の目違いを防止するための構造は、何れも、路線の全区間にわたって採用する必要は無い。例えば、側壁の不等変位が生じ難いトンネル区間等においては、第1及び第2の実施形態に示したような、幅方向での目違いを防止するための構造を省略することも可能であり、上記の車両走行路支持装置に係る構成を、超電導磁気浮上式鉄道の路線において断続的に設けることも可能である。また、調整桁等との併用や使い分けも、本発明に係る車両走行路支持装置において考えられる実施形態の一つである。
【0059】
なお、以上説明した実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。さらに、本発明は上記の実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の車両走行路支持装置によれば、上記構成を採用することで、側壁又は走行路が軌道内側に飛び出す変位を抑制することができるので、車両と側壁又は走行路とが接触する等の走行上の不具合が生じることが無いので、万が一、走行中に地上構造物の不等変位が発生した場合であっても、十分な走行安定性を確保することが可能になることから、産業上の寄与度が高いものである。
【符号の説明】
【0061】
1,10,20,30…車両走行路支持装置
2,22…走行路
3…側壁
3a…内面
3b…外面
3c…先端部
4…連結手段
5…側壁連結部材
6…横ずれストッパー
7…側壁ストッパー
71…ねじ
8…上下動ストッパー
81…ねじ
100…超電導磁気浮上式鉄道システム
31…ガイド部
32…浮上・案内コイル(地上コイル)
33…推進コイル(地上コイル)
110…下部構造物
150…浮上式車両
151…側面
152…超電導磁石
153…冷凍システム
D…走行方向。
図1
図2
図3
図4
図5