(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6241008
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】中性子遮蔽構造及びこれを用いた中性子遮蔽方法
(51)【国際特許分類】
G21F 3/00 20060101AFI20171127BHJP
G21F 1/10 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
G21F3/00 N
G21F1/10
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-133777(P2013-133777)
(22)【出願日】2013年6月26日
(65)【公開番号】特開2015-10826(P2015-10826A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年6月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】510213233
【氏名又は名称】株式会社CICS
(73)【特許権者】
【識別番号】510097747
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立がん研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100118083
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 孝美
(72)【発明者】
【氏名】今堀 良夫
(72)【発明者】
【氏名】藤井 亮
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝
(72)【発明者】
【氏名】伊丹 純
(72)【発明者】
【氏名】阿部 容久
(72)【発明者】
【氏名】布施 雅史
【審査官】
南川 泰裕
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭60−109099(JP,U)
【文献】
特開昭63−124993(JP,A)
【文献】
実開昭59−006799(JP,U)
【文献】
特開昭64−069997(JP,A)
【文献】
特開2010−281647(JP,A)
【文献】
特開2003−139892(JP,A)
【文献】
特開昭58−160898(JP,A)
【文献】
特開平02−044295(JP,A)
【文献】
特開2002−071885(JP,A)
【文献】
特開2001−242288(JP,A)
【文献】
特開平02−264895(JP,A)
【文献】
特開昭52−127597(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0284122(US,A1)
【文献】
韓国登録特許第860333(KR,B1)
【文献】
J. Hong,Laboratory tests on neutron shields for gamma-ray detectors in space,Nuclear Instruments and Methods in Phyics Research A,NL,Elsevier,2000年,Vol.452,pp.192-204
【文献】
Jaewoo Kim,Polymer Nanocomposite Based Multi-Layer Neutron Shields,Transactions of the Korean Nuclear Society ,KR,2010年,pp.417-418
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 1/00−7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性子源から放射された中性子によって、内部で中性子を使用する構造物が放射化されるのを防止する中性子遮蔽構造であって、
前記遮蔽構造は、前記構造物の前記中性子が存在する側の表面上に配置された三層構造であり、
前記三層構造は、
前記構造物の前記中性子が存在する側の表面上に配置された、中性子を吸収する物質が含有されたポリエチレンからなる内層と、
前記内層上に配置された、ポリエチレンからなる中間層と、
前記中間層上に配置された、中性子を吸収する物質が含有されたポリエチレンからなる外層と、から構成されることを特徴とする、中性子遮蔽構造。
【請求項2】
請求項1記載の中性子遮蔽構造において、
前記中性子を吸収する物質は、サマリウム、ホウ素、リチウム、カドミウム及びガドリウムのうちの一つ又は複数から構成されることを特徴とする、中性子遮蔽構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載の中性子遮蔽構造において、
前記内層、前記中間層及び前記外層は、同じ厚さで形成されていることを特徴とする、中性子遮蔽構造。
【請求項4】
請求項1又は2記載の中性子遮蔽構造において、
前記内層、前記中間層及び前記外層は、異なる厚さで形成されていることを特徴とする、中性子遮蔽構造。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちのいずれか一つに記載の中性子遮蔽構造において、
前記外層上には、ガンマ線を遮蔽する物質からなるガンマ線遮蔽層が更に設けられていることを特徴とする、中性子遮蔽構造。
【請求項6】
請求項5記載の中性子遮蔽構造において、
前記ガンマ線を遮蔽する物質は、鉛であることを特徴とする、中性子遮蔽構造。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちのいずれか一つに記載の中性子遮蔽構造において、
前記中性子源は、荷電粒子を高速度に加速する加速器を用いた中性子発生装置であることを特徴とする、中性子遮蔽構造。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちのいずれか一つに記載の中性子遮蔽構造において、
前記構造物は、コンクリートから構成されることを特徴とする、中性子遮蔽構造。
【請求項9】
請求項1乃至8のうちのいずれか一つに記載の中性子遮蔽構造を用いて、中性子源から放射された中性子によって内部で中性子を使用する構造物が放射化されるのを防止することを特徴とする、中性子遮蔽方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ホウ素中性子捕捉療法(boron neutron capture therapy: BNCT)で使用される、加速器を用いた中性子源から放射された中性子によって、内部で中性子を使用する構造物(例えば、中性子が患者に照射される治療室の壁構造、床構造及び天井構造)が放射化されるのを防止するのに適用可能な中性子遮蔽構造及びこれを用いた中性子遮蔽方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、加速器を用いた中性子源によるホウ素中性子捕捉療法(BNCT)が新たながん治療の手法として期待されており、かかるホウ素中性子捕捉療法(BNCT)が確立されることにより、これまで原子炉施設でしか行うことができなかったがん治療を一般の病院などの医療施設で行うことができるようになった。
【0003】
中性子を扱う場合の主な問題点は、中性子が患者に照射される治療室の内壁、例えば、壁構造、床構造及び天井構造が放射化されることである。多くの場合、この放射化は、これらの構造物がエネルギーが低い熱中性子を吸収することによるものである。そして、中性子が使用される治療室内の壁、床構造及び天井構造を構成するコンクリートは、治療が行われるにつれて、徐々に放射化され、治療室内の放射線量が高くなる。
【0004】
そこで、中性子源から放射された中性子によって、中性子が患者に照射される治療室の壁構造が放射化されるのを低減する、中性子遮蔽構造等が知られている(例えば、特許文献1乃至3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−58922号公報
【特許文献2】特開2009−229384号公報
【特許文献3】特開2007−139605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の先行技術による遮蔽構造等は、中性子が患者に照射される治療室の壁構造等が中性子源から放射された中性子によって放射化されるのを低減することは可能であるが、その壁構造等が放射化されるのを完全に防止することはできない。従って、そのような壁構造等の放射化が低減された治療室を別用途として使用する場合には、高コストな除染作業が必要となる。また、医療施設では、患者及び作業従事者の被爆をできる限り軽減化させなければならず、そのためにもこのような放射化を極力抑制しなければならない。
【0007】
本発明は、上述のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、中性子源から放射された中性子が、内部で中性子を使用する構造物まで到達させないように遮蔽して、かかる構造物が中性子源から放射された中性子によって放射化されるのを完全に防止することができると共に、熱中性子化された中性子を、中性子を吸収する物質によって捕獲して、かかる熱中性子化された中性子によるチャンバー内の中性子線量を大幅に抑制させることができる中性子遮蔽構造及びこれを用いた中性子遮蔽方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、中性子源から放射された中性子によって、内部で中性子を使用する構造物が放射化されるのを防止する中性子遮蔽構造であって、
前記遮蔽構造は、前記構造物の前記中性子が存在する側の表面上に配置された三層構造であり、
前記三層構造は、
前記構造物の前記中性子が存在する側の表面上に配置された、中性子を吸収する物質が含有されたポリエチレンからなる内層と、
前記内層上に配置された、ポリエチレンからなる中間層と、
前記中間層上に配置された、中性子を吸収する物質が含有されたポリエチレンからなる外層と、から構成されることを特徴とする、中性子遮蔽構造を提供する。
【0009】
また、前記中性子を吸収する物質は、サマリウム、ホウ素、リチウム、カドミウム及びガドリウムのうちの一つ又は複数から構成される。また、前記中性子を吸収する物質の含有量は適当に変更させることができ、更には内層に含有される中性子を吸収する物質と外層に含有される中性子を吸収する物質とは異なっても良い。
【0010】
また、前記内層、前記中間層及び前記外層は、同じ厚さで形成されることができ、あるいは、異なる厚さで構成されることができる。
【0011】
また、前記外層上には、ガンマ線を遮蔽する物質からなるガンマ線遮蔽層を更に設けることができる。この場合、前記ガンマ線を遮蔽する物質は、鉛にすることができる。
【0012】
また、前記中性子源は、荷電粒子を高速度に加速する加速器を用いた中性子発生装置にすることができる。
【0013】
また、前記構造物は、コンクリートから構成されることができる。
【0014】
また、本発明は、請求項1乃至8のうちのいずれか一つに記載の中性子遮蔽構造を用いて、中性子源から放射された中性子によって内部で中性子を使用する構造物が放射化されるのを防止することを特徴とする、中性子遮蔽方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、中性子源から放射された中性子によって、内部で中性子を使用する構造物が放射化されるのを防止する中性子遮蔽構造であって、
前記遮蔽構造は、前記構造物の前記中性子が存在する側の表面上に配置された三層構造であり、
前記三層構造は、
前記構造物の前記中性子が存在する側の表面上に配置された、中性子を吸収する物質が含有されたポリエチレンからなる内層と、
前記内層上に配置された、ポリエチレンからなる中間層と、
前記中間層上に配置された、中性子を吸収する物質が含有されたポリエチレンからなる外層と、から構成されるため、
中性子源から放射された中性子が、内部で中性子を使用する構造物まで到達させないように遮蔽して、かかる構造物が中性子源から放射された中性子によって放射化されるのを完全に防止することができると共に、熱中性子化された中性子を、中性子を吸収する物質によって捕獲して、かかる熱中性子化された中性子によるチャンバー内の中性子線量を大幅に抑制させることができる。
【0016】
また、三層構造の外層上に、鉛などのガンマ線を遮蔽する物質からなるガンマ線遮蔽層を更に設けることにより、構造物側から反射されたガンマ線の線量を大幅に抑制させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明にかかる中性子遮蔽構造の実施の形態を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本発明にかかる中性子遮蔽構造の中性子を吸収する物質を示す表である。
【
図3】
図3は、本発明にかかる中性子遮蔽構造の実施の形態における中性子減衰特性を示すグラフである。
【
図4】
図4は、一般的なポリエチレンのみで構成された構造における中性子減衰特性を示すグラフである。
【
図5】
図5は、一般的なコンクリートのみで構成された構造における中性子減衰特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明にかかる中性子遮蔽構造を実施するための最良の形態について図面を参照しながら述べる。本発明にかかる中性子遮蔽構造は、中性子源、例えば、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)で使用される、荷電粒子を高速度に加速する加速器を用いた中性子発生装置(図示せず)から放射された中性子によって、内部で中性子を使用する構造物(例えば、中性子が患者に照射される治療室の壁構造、床構造及び天井構造)が放射化されるのを防止するのに適用可能なものである。
【0019】
図1に示されるように、本発明にかかる遮蔽構造1は、内部で中性子を使用する構造物2の中性子が存在する側の内表面(すなわち、中性子が存在するチャンバー内の内壁表面)2a上に配置された三層構造で構成されている。
図1に示される構造物は、コンクリートから構成されているものであるが、これに限定されない。
【0020】
遮蔽構造1の三層構造は、構造物2の中性子が存在する側の表面2a上に直接的に配置された、中性子を吸収する物質が含有されたポリエチレンからなる内層3と、内層3上に配置された、ポリエチレンからなる中間層4と、中間層4上に配置された、中性子を吸収する物質が含有されたポリエチレンからなる外層5と、から構成されている。従って、中性子が存在するチャンバー6を画定する構造物の内壁は、この遮蔽構造1の三層構造によって被覆されている。換言すれば、この遮蔽構造1の三層構造によって、中性子が存在するチャンバー6の室内空間が覆われている。
【0021】
中性子を吸収する物質が含有されたポリエチレンからなる内層3と、中性子を吸収する物質が含有されたポリエチレンからなる外層5とは、同じ構成にすることができ、中性子を吸収する物質は、
図2に示されるように、サマリウム、ホウ素、リチウム、カドミウム及びガドリウムのうちの一つ又は複数から構成され、好ましくは、サマリウムやホウ素である。また、内層3、中間層4及び外層5は、同じ厚さで形成されることができるし、異なる厚さで形成されることができる。
図1に示されるものは、内層3、中間層4及び外層5が実質的にほぼ同じ厚さで形成されている。また、中性子を吸収する物質の含有量は適当に変更させることができ、更には内層3に含有される中性子を吸収する物質と外層5に含有される中性子を吸収する物質とは異なっても良い。
【0022】
中性子を吸収する物質が含有されたポリエチレンからなる内層3は、ポリエチレンによって、チャンバー6内に存在する中性子を減速させると共に、中性子を吸収する物質によって、このポリエチレンによって減速されて熱中性子化された中性子を吸収させる層(中性子高吸収・減速壁)として作用する。
【0023】
内層3上に配置された、ポリエチレンからなる中間層4は、ポリエチレンによって、チャンバー6内に存在する中性子を減速させる層(中性子減速壁)として作用する。
【0024】
中間層4上に配置された、中性子を吸収する物質が含有されたポリエチレンからなる外層5は、ポリエチレンによって、チャンバー6内に存在する中性子を減速させると共に、中性子を吸収する物質によって、このポリエチレンによって減速されて熱中性子化された中性子と、構造物2側から反射された熱中性子化された中性子の双方の熱中性子化された中性子を吸収させる層(中性子高吸収・減速壁)として作用する。
【0025】
かかる三層構造により、構造物2は、中性子源から放射された中性子によって放射化されるのを完全に防止されると共に、熱中性子化された中性子を、中性子を吸収する物質によって捕獲して、かかる熱中性子化された中性子によるチャンバー6内の中性子線量を大幅に抑制させることができる。
【0026】
図3のグラフには、中性子を吸収する物質としてホウ素(ボロン)が含有されたポリエチレンからなる内層3と、ポリエチレンからなる中間層4と、中性子を吸収する物質としてホウ素(ボロン)が含有されたポリエチレンからなる外層5とで構成された三層構造の遮蔽構造1の中性子減衰特性を示している。なお、内層3と、中間層4と、外層5とは、同じ厚さ(深さ)であり、5cmの厚さをそれぞれ有している。
【0027】
また、
図4には、
図3に示す本発明の一実施形態における三層構造の遮蔽構造1の中性子減衰特性と比較するために、三層全てがポリエチレンからなる層で構成された一般的な遮蔽構造を示している。なお、三層全てが同じ厚さ(深さ)であり、5cmの厚さをそれぞれ有している。すなわち、
図4に示す遮蔽構造は、
図3の内層3と中間層4と外層5とに対応する15cmの厚さ(深さ)を有するポリエチレンからなる単層で構成されている。
【0028】
また、
図5には、
図3に示す本発明の一実施形態における三層構造の遮蔽構造1の中性子減衰特性と比較するために、三層全てがコンクリートからなる層で構成された一般的な遮蔽構造を示している。なお、三層全てが同じ厚さ(深さ)であり、5cmの厚さをそれぞれ有している。すなわち、
図5に示す遮蔽構造は、
図3の内層3と中間層4と外層5とに対応する15cmの厚さ(深さ)を有するコンクリートからなる単層で構成されている。
【0029】
図3に示されるように、本発明の一実施形態による三層構造の遮蔽構造1では、構造物2が中性子源から放射された中性子によって放射化されるのが完全に防止されているのがわかる。一方、
図4及び
図5に示す一般的な遮蔽構造では、中性子源から放射された中性子をある程度減衰させることは可能であるが、構造物2の放射化を完全に防止させることができない。
【0030】
図3乃至
図5に示すグラフから理解されるように、本発明の遮蔽構造1は、ポリエチレンからなる層(中間層4)を、ホウ素(ボロン)などの中性子を吸収する物質が含有されたポリエチレンからなる層(内層3及び外層5)で挟んだ三層構造にすることにより、構造物2が中性子源から放射された中性子によって放射化されるのが完全に防止させることが可能となる。さらに、熱中性子化された中性子を、ホウ素(ボロン)などの中性子を吸収する物質によって捕獲するようにしているため、かかる熱中性子化された中性子によるチャンバー6内の中性子線量を大幅に抑制させることができる。
【0031】
また、本発明にかかる遮蔽構造1は、
図1に示されるように、外層5上にガンマ線を遮蔽する物質からなるガンマ線遮蔽層7を更に設けることができる。このガンマ線遮蔽層7により、構造物2側から反射されたガンマ線によるチャンバー6内のガンマ線量を大幅に抑制させることができる。ガンマ線を遮蔽する物質は、例えば、鉛にすることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 中性子遮蔽構造
2 構造物
2a 構造物の中性子が存在する側の内表面
3 内層
4 中間層
5 外層
6 チャンバー
7 ガンマ線遮蔽層