【実施例】
【0015】
図1は、本発明の浮体型風車係留装置の構造を2次元化して示す模式側面図である。本来は立体的なものであるが説明を明確にするために2次元化して平面的な状態としている。
図1において、水上に浮かぶ基部1の上部にはポール2が設けられその上部に風車装置3が設けられている。図においてはアップウインド型のものとされているがこの形式に限定するものではない。4は基部1から水平方向に植設された浮体腕部材であり、該浮体腕部材4の先端には結合部材5が設けられている。結合部材5は特別に浮力を有するものではないが、体積に応じて多少の浮力を有していても良い。6は海底に設置する重錘腕部材であり、7は結合部材5と対応する位置に設けた重錘結合部材であり、8は重錘中心部である。9は結合部材5と重錘結合部材7とを結ぶメイン係留索であり、10は結合部材5と重錘中心部8を結ぶサブ係留索である。尚、
図1においてはサブ係留索10は結合部材5と重錘中心部8を結んでいるが、逆に基部1の下部と重錘結合部材7とを結んでも理論的にはほぼ同様の効果を得ることができるものである。Wは風によって風車装置3が受ける力、Lは潮流によって係留装置全体が受ける力、Hは波の高さである。
[作用]
【0016】
上記実施形態に示す本発明の浮体型風車係留装置の作用について説明する。
図1において、風車装置3に風が当たりWの力が加わると係留装置は水平の力Wと風車装置3の結合部材
7とメイン係留索9及びサブ係留索10との結合部からの高さによるモーメントを受ける。水平方向の力Wは左右のサブ係留索10の張力の差によって支えられ、モーメントは左右のメイン係留索9の張力の差によって支えることができるので係留装置は流されたり傾いたりすることはない。但し、メイン係留索9には基部1の浮力によって充分な初期張力が加えられていることが条件であり、その条件を満たす為には重錘結合部材7及び重錘中心部8の重量は上記初期張力及び上記モーメントによって浮き上がらないだけの充分な重量が必要となる。
【0017】
また、潮流による流体抵抗によって係留装置に加わる力LはWと同様に係留装置を横に押し流そうとするがWのようなモーメントを生じることはない。従って、Lによる押し流し力は左右のサブ係留索10の張力の差によって支えられる。この場合多少の横移動が許されるならばサブ係留索10に初期張力を加えておく必要はない。
【0018】
尚、波による揺れに関しては水上に浮かぶ基部1の喫水の変化は左右の揺れモーメントとはならず左右のメイン係留索9に分散された張力変化として加わるため重錘結合部材7が単独でこれを支える必要はない。特にサブ係留索9が重錘中心部8に結合されている為に重錘全体の重量が該張力変化を支える
こととなり、その分重錘の重量が小さくて済むこととなる。
【0019】
図1及び上記の説明においては、2次元化した形であるが、実際には基部1から水平方向に放射線状に植設された浮体腕部材4は該基部1の周辺に複数個あり、該浮体腕部材4の先端には夫々結合部材5が設けられている。重錘腕部材6も結合部材5と対応する海底位置に複数個設けられ、重錘中心部8から放射線状に設けられた形となっている。したがって図
1における紙面に直角な方向においても同様の機能が得られるものである。
【0020】
図2は、従来のテンドン式浮体型風車係留装置の構造を2次元化して示す模式側面図である。
図2において、水面上にある基部11の上部にはポール12が設けられその上部に風車装置13が設けられている。14は基部1から水平方向に植設された腕部材であり、該腕部材14の先端にはフロート部材15が設けられている。フロート部材15は体積に応じて充分な浮力を有するものである。
16はフロート部材15と対応する位置に設けた重錘結合部材である。
18は結合部材15と重錘結合部材
16とを結ぶ係留索である。尚、Wは風によって風車装置13が受ける力、Lは潮流によって係留装置全体が受ける力、Hは波の高さである。
【0021】
図2の場合、風車装置13に風が当たりWの力が加わると係留装置は水平の力Wと風車装置13の結合部材
16と係留索
18との結合部からの高さによるモーメントを受ける。
水平の力Wは係留装置全体が横移動することで生じる幾何学的な水面からの距離変化dによって生じるフロート部材15の浮力の増加があり、該浮力の増加と係留索
18の傾きによって生じる横方向の力のバランスによって支えられる。従って、Wによる横方向の移動は折込済みであり、これをなくすることは出来ない。また、モーメントに関しては左右の係留索
18の張力変化によって支えることができる。
【0022】
また、潮流による流体抵抗によって係留装置に加わる力Lは風による力Wと同様に係留装置全体が横移動することで生じる幾何学的な水面からの距離変化dによって生じるフロート部材15の浮力の増加があり、該浮力の増加と係留索
18の傾きによって生じる横方向の力のバランスによって支えられる。従って、Wによる横方向の移動は折込済みであり、これをなくすることは出来ない。
【0023】
尚、波による揺れに関してはフロート部材15の喫水の変化が直接係留索
18の張力変化として加わるため大きな波があった場合、重錘結合部材
16が単独でこれを支えて浮き上がらないだけの重量を備えていることが必要となる。
【0024】
図3は、本発明の浮体型風車係留装置の他の実施例の構造を2次元化して示す模式側面図である。
図3において水上に浮かぶ基部1と海底に設置する重錘腕部材6との間に中間フレーム31が設けられその外周部32にはメイン係留索9が貫通するごとく固定され、中央部33にはサブ係留索10が貫通するごとく固定されてその先が重錘結合部材7に固定されている。
図3に示す実施例の場合水深が
図1の場合の2倍になった状態に適すものである。
サブ係留索10の傾斜角が
図1に示す実施例と同様なので風によって受ける力W及び潮流によって受ける力Lによるサブ係留索10の作用によってフロートの位置移動は制限され、
図2に示す実施例の場合のように水深に比例してフロートの位置移動
が大きくなるようなことはない。更に基部1が風車のトルクなどによって回転方向にねじれるのを防ぐ場合には
図1、
図3においては2次元的なものとして説明したので省略されているが、円周上に配置された結合部材5と同様に円周上に配置された重錘結合部材7とにおいて、お互いに隣接するもの同士を
斜めに結合する係留索を追加することで防止できることを付記するものである。