特許第6241034号(P6241034)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6241034-凸版印刷版用感光性樹脂積層体 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6241034
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】凸版印刷版用感光性樹脂積層体
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/11 20060101AFI20171127BHJP
   G03F 7/00 20060101ALI20171127BHJP
   G03F 7/095 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   G03F7/11
   G03F7/00 502
   G03F7/095
【請求項の数】4
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-549199(P2012-549199)
(86)(22)【出願日】2012年10月26日
(86)【国際出願番号】JP2012077708
(87)【国際公開番号】WO2013062082
(87)【国際公開日】20130502
【審査請求日】2015年10月6日
(31)【優先権主張番号】特願2011-237297(P2011-237297)
(32)【優先日】2011年10月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本井 慶一
(72)【発明者】
【氏名】八和田 雪美
【審査官】 本田 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−244302(JP,A)
【文献】 特開2011−154251(JP,A)
【文献】 特表2009−541786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00 − 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、接着層と、感光性樹脂層と、感熱性を有するマスク層とを備える凸版印刷版用の感光性樹脂積層体であって、
感光性樹脂層を形成する感光性樹脂がポリウレアウレタン骨格またはポリウレタン骨格であり、
接着層と感光性樹脂層との間に、ポリウレアウレタン骨格またはポリウレタン骨格の樹脂で形成され、感光性樹脂層に対し接着性を有し、かつ、光硬化後の感光性樹脂層のショアーD硬さよりも5°以上低いショアーD硬さを有する中間層を備え、
感光性樹脂層の厚みが350〜700μmの範囲内である、感光性樹脂積層体。
【請求項2】
支持体と接着層と感光性樹脂層と感熱性を有するマスク層の全厚みが500〜1000μmの範囲内である、請求項1に記載の感光性樹脂積層体。
【請求項3】
光硬化後の感光性樹脂層のショアーD硬さが45〜75°の範囲内である、請求項1または2に記載の感光性樹脂積層体。
【請求項4】
感光性樹脂層を形成する感光性樹脂および中間層を形成する樹脂が共にポリウレアウレタン骨格である、請求項1〜3のいずれかに記載の感光性樹脂積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータ製版技術により凸版印刷版を製造するために使用される感光性樹脂積層体に関するものであり、より詳しくは、製版時と印刷時に優れた微細な独立点や画像の再現性に優れた凸版印刷版用感光性樹脂積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、凸版印刷版を得る方法としては、接着層を設けた支持体上に感光性樹脂層を設けた感光性樹脂積層体(印刷用原版)を用い、ネガまたはポジフィルムを使ったフォトリソグラフィーの技術によって感光性樹脂層に凹凸を形成したレリーフ層を形成する方法が一般的であった。
【0003】
近年、凸版印刷の分野において、デジタル画像形成技術として知られるコンピュータ製版技術(Computer to Plate:CTP技術)が極めて一般的なものになってきている。CTP技術においては、コンピュータ上で処理された情報を印刷版上に直接出力してレリーフとなる凹凸パターンを得る。このようなCTP技術により、ネガフィルムの製造工程が不要となり、コストとネガ作成に必要な時間を削減できる。
【0004】
たとえば特表平7−506201号公報(特許文献1)には、(a)支持体、(b)エラストマー性バインダと、1種類以上のモノマーと非赤外化学線に感受性を有する開始剤とを含んでなる光重合可能層であって、化学線に対する露光前に現像溶液に溶解性、膨潤性または分散性である層、(c)化学線に対する露光前に光重合可能層のための現像溶液に溶解性、膨潤性、分散性またはリフト可能な1種類以上のバリア層、および(d)化学線に実質的に不透明な赤外線感光性材料の1つ以上の層であって、赤外レーザ光に露光した際にバリア層の表面から融除し得る材料、とを具備するフレキソ印刷板を調製するために使用される感光性印刷材料が開示されている。この特許文献1に開示された発明では、感光性樹脂層上に化学線に対して不透明な感赤外線層(感熱マスク層)を設け、赤外線レーザーでこの感赤外線層を蒸発させることにより画像マスクを形成するものであり、広く使用されている。
【0005】
近年、凸版印刷用レリーフ版に用いられる感光性樹脂組成物に対するユーザーの要求が、短い露光時間で微細なパターンを再現する方向へ進んでおり、最小独立点の保持は直径200μmから、100μmへと変化してきている。また、パネル用途の印刷などに使用する場合において、細線幅についても30μm幅の線から、さらに細かな15μm幅が要求されるようになっている。それらの要求に対応する従来技術としては、支持体上に100μm以上の全面光硬化された感光性樹脂層上に200μm以上の感光樹脂層を設ける感光性樹脂積層体(たとえば、特開昭58−85435号公報(特許文献2)を参照)や支持体上に軟質樹脂のクッション層を設けて画像再現性を改善した感光性樹脂積層体(たとえば、特開昭54−85803号公報(特許文献3)を参照)やCTP技術により画像再現性を改善した感光性凸版印刷用原版(たとえば、特開2010−26036号公報(特許文献4)を参照)などが挙げられる。
【0006】
しかしながら、上述の特許文献2〜4に開示されたいずれの技術でも、製版において短い露光時間で微細な点を再現し、かつ印刷時にも太りの少ないシャープな印刷物を得られる感光性樹脂積層体を得ることはできなかった。
【0007】
一方、特開2002−244302号公報(特許文献5)には、少なくとも支持体、接着層、感光性樹脂層を有する感光性樹脂積層体において、上記接着層と感光性樹脂層との間に中間層を有し、該中間層の光硬化後の反発弾性率が15%以上であり、かつ中間層のショアーD硬さが感光性樹脂層よりも5°以上低いことを特徴とする感光性樹脂積層体が開示されている。特許文献5に記載された感光性樹脂積層体によれば、製版時と印刷時における微細な画像の再現性を改善することができるが、中間層と感光性樹脂層との界面の接着強度が弱く、印刷時に層間剥離を生じるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表平7−506201号公報
【特許文献2】特開昭58−85435号公報
【特許文献3】特開昭54−85803号公報
【特許文献4】特開2010−26036号公報
【特許文献5】特開2002−244302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、製版時および印刷時における微細な独立点や画像の再現性に優れた凸版印刷版用感光性樹脂積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、製版において短い露光時間で微細な独立点や画像を再現し、かつ印刷時にも太りの少ないシャープな印刷物を得るために、鋭意検討した結果、遂に本発明を完成するに到った。即ち、本発明は、以下のとおりである。
【0011】
本発明の凸版印刷版用感光性樹脂積層体は、支持体と、接着層と、感光性樹脂層と、感熱性を有するマスク層とを備える凸版印刷版用の感光性樹脂積層体であって、感光性樹脂層を形成する感光性樹脂がポリウレアウレタン骨格またはポリウレタン骨格であり、接着層と感光性樹脂層との間に、ポリウレアウレタン骨格またはポリウレタン骨格の樹脂で形成され、感光性樹脂層に対し接着性を有し、かつ、光硬化後の感光性樹脂層のショアーD硬さよりも5°以上低いショアーD硬さを有する中間層を備え、感光性樹脂層の厚みが350〜700μmの範囲内であることを特徴とする。
【0012】
本発明の凸版印刷版用感光性樹脂積層体は、支持体と接着層と感光性樹脂層と感熱性を有するマスク層の全厚みが500〜1000μmの範囲内であることが好ましい。
【0013】
本発明の凸版印刷版用感光性樹脂積層体において、光硬化後の感光性樹脂層のショアーD硬さは45〜75°の範囲内であることが好ましい。
【0014】
本発明の凸版印刷版用感光性樹脂積層体において、感光性樹脂層を形成する感光性樹脂および中間層を形成する樹脂が共にポリウレアウレタン骨格であることが好ましい
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、製版時および印刷時における微細な独立点の再現性に優れた凸版印刷版用の感光性樹脂積層体を提供することができ、産業界に寄与すること大である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の好ましい一例の凸版印刷版用感光性樹脂積層体1を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の好ましい一例の凸版印刷版用の感光性樹脂積層体1を模式的に示す図である。本発明の感光性樹脂積層体1は、図1に模式的に示すように、支持体2と、接着層3と、中間層4と、感光性樹脂層5と、マスク層6とがこの順に積層された基本構造を備える。
【0018】
〔A〕支持体
本発明の感光性樹脂積層体1に用いられる支持体2は、可撓性であるが、寸法安定性に優れた材料が好ましい。このような支持体2としては、たとえば鋼、アルミニウム、銅、ニッケルなどの金属製支持体、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルムなどの熱可塑性樹脂製支持体などが好適な例として挙げられる。これらの中でも、寸法安定性に優れ、充分に高い粘弾性を有するポリエチレンテレフタレートフイルムを支持体2として用いることが特に好ましい。
【0019】
支持体2の厚みは、特に制限されるものではないが、機械的特性、形状安定性あるいは印刷版製版時の取り扱い性などの観点から50〜350μmの範囲内であることが好ましく、100〜250μmの範囲内であることがより好ましい。支持体2の厚みが50μm未満である場合には、印刷版の寸法安定性が損なわれたり、解版時に支持体が破損するという傾向にあり、また、支持体2の厚みが350μmを超える場合には、円筒シリンダーへの貼付時に印刷版がシリンダーに沿い難いという傾向にあるためである。
【0020】
〔B〕接着層
本発明の感光性樹脂積層体1に用いられる接着層3は、公知の適宜の接着剤を用いて形成される。接着層3の形成に用いる接着剤の種類は特に制限されるものではなく、たとえば、可溶なポリエステルを多価イソシアネートで硬化させたポリエステルウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤などが好適な例として挙げられる。中でも、ポリエステルウレタン系接着剤は感光性樹脂との接着性に優れるために好ましく、ポリエステルウレタン系接着剤の中でも特にポリエステルとイソシアヌレート型多価イソシアネートからなる接着剤がより望ましい。
【0021】
接着層3の形成に用いる接着剤には、本発明の目的を阻害しない範囲で、添加物を含んでいてもよい。添加物としては、たとえば、可塑剤、染料、紫外線吸収剤、ハレーション防止剤、界面活性剤、光重合性ビニルモノマーなどが挙げられる。
【0022】
本発明における接着層3の厚みについては特に制限されないが、1〜50μmの範囲内であることが好ましく、5〜30μmの範囲内であることがより好ましい。接着層3の厚みが1μm未満である場合には、ハレーション防止機能が不足するという傾向にあるためであり、また、接着層3の厚みが50μmを超える場合には、生産加工性が低下するという傾向にあるためである。
【0023】
〔C〕中間層
本発明の感光性樹脂積層体1に用いられる中間層4は、後述する感光性樹脂層5と同骨格の樹脂で形成され、感光性樹脂層5に対し接着性を有するものである。中間層4が感光性樹脂層5と同骨格の樹脂で形成されていることで、中間層4と感光性樹脂層5との界面における接着強度を向上させることができ、微細な画像の保持性が良くなるばかりでなく、印刷時に小径シリンダーに装着した場合に生じる中間層4と感光性樹脂層5との界面の剥がれを防止することが可能となる。
【0024】
中間層4を形成する感光性樹脂層5と同骨格の樹脂としては、たとえば、ポリエーテルアミド(特開昭55−79437号公報など)、ポリエーテルエステルアミド(特開昭58−117537号公報など)、三級窒素含有ポリアミド(特開昭50−7605号公報など)、アンモニウム塩型三級窒素原子含有ポリアミド(特開昭53−36555号公報など)、アミド結合を1つ以上有するアミド化合物と有機ジイソシアネート化合物との付加重合体(特開昭58−140737号公報など)、アミド結合を有しないジアミンと有機ジイソシアネート化合物との付加重合体(特開平4−97154号公報など)などが挙げられ、感光性樹脂層5を形成する樹脂に応じて同骨格のものを選択する。これらの中でも、感光性樹脂層5と、中間層4をアミド結合を有しないジアミンと有機ジイソシアネート化合物との付加重合体で形成することで、印刷版の反発弾性が高まり、微細な画像の印刷性がより向上するという効果が奏され、特に好ましい。
【0025】
ここで「同骨格の樹脂」とは、構成する化学結合の一つ以上が同一という意味であり、この好ましい化学結合としては、高分子化合物を分類する化学結合の中でも、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、エーテル結合などが挙げられる。同骨格の樹脂としては、たとえば、中間層4を形成する樹脂、感光性樹脂層5を形成する樹脂が共に下記構造式(1)に示すようなポリウレアウレタン骨格である場合(後述する実施例1〜6の場合)、中間層4を形成する樹脂、感光性樹脂層5を形成する樹脂が共に下記構造式(2)に示すようなポリアミド骨格である場合(後述する参考例1、2の場合)、中間層4を形成する樹脂、感光性樹脂層5を形成する樹脂が共にポリエーテルアミド骨格である場合(後述する参考例3の場合)などが例示される。
【0026】
【化1】
【0027】
上記構造式(1)中、Rは炭素数が2〜10の炭化水素基、脂肪族環又は芳香族環であり、Rは炭素数が2〜10の炭化水素基、脂肪族環又は芳香族環であり、Rはエチレン、プロピレン又はテトラメチレンを示す。
【0028】
【化2】
【0029】
上記構造式(2)中、Rは炭素数が4〜10の炭化水素基であり、Rは炭素数が2〜10の炭化水素基、脂肪族環又は芳香族環であり、Rは炭素数が4〜10の炭化水素基を示す。
【0030】
また、同骨格の樹脂は、上述のように同一の骨格であることが好ましいが、上述のように構成する化学結合の一つ以上が同一であればよく、必ずしも同一の骨格でなくともよく、後述する実施例のように、中間層4を形成する樹脂がポリウレタン骨格であり、感光性樹脂層5を形成する樹脂がポリウレアウレタン骨格である場合も包含される。
【0031】
また本発明における中間層4は、光硬化後の感光性樹脂層5のショアーD硬さよりも5°以上低いショアーD硬さを有する。中間層4がこのようなショアーD硬さを有することで、中間層4の低硬度化と高反発弾性によるクッション効果は印圧による感光性樹脂層5の変形を小さくし、印刷時の微細な点の再現性を改善することができるという効果が奏される。このような効果をより顕著なものとする観点からは、中間層4のショアーD硬さは、光硬化後の感光性樹脂層5のショアーD硬さよりも10°以上低いことが好ましく、20°以上低いことがより好ましい。中間層のショアーD硬さと光硬化後の感光性樹脂層5のショアーD硬さとの差が5°未満である場合には、ベタ部の印刷性にカスレが生じてしまうため好ましくない。なお、中間層4および感光性樹脂層5のショアーD硬さは、JIS K6253の規定に準拠し、たとえばショアー式デュロメーター(ショアーDタイプ)(西独ツビック社製)を用いて25℃で測定された値を指す。本発明において、中間層4は、光硬化後の感光性樹脂層5のショアーD硬さよりも5°以上低いショアーD硬さを有していればよいが、ベタ部の印刷適応性を広くするため、すなわち被印刷物の素材適応性や、印圧ならびに印刷速度の適応性を広くするためには、中間層4のショアーD硬さは、10°以上であることが好ましく、20°以上であることがより好ましい。なお、中間層4の形成時に、例えば、選ばれた感光性樹脂層と同骨格の樹脂を、光重合性モノマーの架橋度で制御することで、所望のショアーD硬さを有する中間層4を得ることができる。光重合性モノマーの架橋度は、光重合性モノマー中導入する架橋基の数で変更することができる。例えば、架橋基の数は多価アルコール中の水酸基にアクリル酸又はメタアクリル酸をエステル結合などで導入する数を制御すれば良い。
【0032】
本発明における中間層4は、反発弾性率が15%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、30%以上であることが特に好ましい。このように中間層4の反発弾性率が15%以上であり、かつ、上述のようにショアーD硬さを感光性樹脂層5のショアーD硬さよりも5°以上低くすることで、中間層4をクッションのように作用させることができ、印圧による感光性樹脂層5の変形を小さくし、印刷時の微細な点の再現性を改善することができるという効果が奏される。中間層4の反発弾性率が15%未満であると、中間層4のクッション効果が不十分であり、好ましくない。なお、中間層4の反発弾性率は、25℃、70%RHの条件で、直径10mm(重さ:4.16)の鋼球製ボールを20cmの高さより落下させ、跳ね返る高さ(a)を読み取り、(a/20)×100%表示として測定された値を指す。本発明において、中間層4の反発弾性率は高ければ高いほどよい。
【0033】
また、本発明における中間層4は、印刷後の耐洗い油性が要求される場合には、耐洗い油性として、中間層4のノルマルヘキサンに対する溶剤吸収重量増加率が15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることが特に好ましい。なお、中間層4の溶剤吸収量増加率は、露光後のサンプル厚みが500μmで2cm×5cmのサンプルを作り、5時間ノルマルへキサンに浸漬した後、表面に付着したノルマルへキサンを取り除き、重量を測定した後、
溶剤吸収重量増加率(%)=(浸漬後の重量÷浸漬前の重量)×100
の計算式で算出された値を指す。なお、本発明において、中間層4の溶剤吸収量増加率は、低ければ低いほどよい。
【0034】
本発明における中間層4は、クッション効果および強度の観点から、厚みが50μm以上であることが好ましく、80μm以上であることがより好ましい。中間層4の厚みが50μm未満である場合には、クッション効果に乏しいという傾向にあるためである。また、全厚みの薄い印刷版の場合には、支持体上の中間層にインキが付着しないよう、中間層4の厚みは200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましい。
【0035】
中間層4の形成にあたっては、上述のような感光性樹脂層5と同骨格の樹脂に、公知の可溶性ポリマー、光重合性不飽和基含有ポリマー、光開始重合剤などを適宜配合した感光性樹脂組成物を好適に用い得る。接着層3上に中間層4を設ける方法としては、公知の方法を採用することができ、たとえば、上述の感光性樹脂組成物の溶液をキャスト法で接着層上に設けた後、ポリエステルなどで酸素を遮断した状態で紫外線を照射して光硬化させて、中間層4とする方法が採用され得る。
【0036】
〔D〕感光性樹脂層
本発明の感光性樹脂積層体1において、中間層4上に積層される感光性樹脂層5は、感光性樹脂を光硬化させて形成させたものであり、その厚みが350〜700μmの範囲内である。感光性樹脂層5の厚みが350μm未満である場合には、中間層4にインキが付着して印刷物の非画像部に汚れ(地汚れ)が生じてしまう。また感光性樹脂層5の厚みが700μmを超えると、製版時の微細点の再現性が低下してしまう。特に輪転シールラベル印刷に用いられる印刷版の全厚みとして800μmや950μmが多いことから、感光性樹脂層5の厚みは、450〜700μmの範囲内であることが好ましく、490〜650μmの範囲内であることがより好ましい。
【0037】
感光性樹脂層5の光硬化後の硬度としては、ショアーD硬さで45〜75°の範囲内であることが好ましく、50〜70°の範囲内であることがより好ましく、50〜65°の範囲内であることが特に好ましい。感光性樹脂層5のショアーD硬さが45°未満である場合には、印刷時の変形によって太りが生じるため好ましくなく、また、75°を超える場合には、インキの乗り不良が発生し、また、ベタ部の印刷性にカスレが生じるため好ましくない。なお、感光性樹脂層5の形成時に、画像パターンを形成させる、最適範囲の光硬化時間で照射することで、光硬化後に所望のショアーD硬さを有する感光性樹脂層5を得ることができる。
【0038】
感光性樹脂層5の形成には、感光性樹脂の材料となる合成高分子化合物、光重合性不飽和化合物および光重合開始剤の必須成分と、可塑剤、熱重合防止剤、染料、顔料、紫外線吸収剤、香料、酸化防止剤などの任意の添加剤とを含む組成物が好適に用いられる。
【0039】
合成高分子化合物としては、従来公知の可溶性合成高分子化合物を使用でき、たとえばポリエーテルアミド(たとえば特開昭55−79437号公報など)、ポリエーテルエステルアミド(たとえば特開昭58−117537号公報など)、三級窒素含有ポリアミド(たとえば特開昭50−7605号公報など)、アンモニウム塩型三級窒素原子含有ポリアミド(たとえば特開昭53−36555号公報など)、アミド結合を1つ以上有するアミド化合物と有機ジイソシアネート化合物との付加重合体(たとえば特開昭58−140737号公報など)、アミド結合を有しないジアミンと有機ジイソシアネート化合物との付加重合体(例えば特開平4−97154号公報など)などが挙げられる。その中でもアミド結合を有しないジアミンと有機ジイソシアネート化合物との付加重合体が好ましい。光重合性または光架橋性モノマーとしては、多価アルコールのアクリレート、多価アルコールのエポキシアクリレート、N−メチロールアクリルアミドなどが、光重合開始剤としては、ベンジルジメチルケタール、ベンゾインジメチルエーテルなどが挙げられる。
【0040】
〔E〕マスク層
本発明の感光性樹脂積層体1において、感光性樹脂層5上に形成される感熱性を有するマスク層6は、たとえば、赤外線レーザを吸収し熱に変換する機能と紫外線を遮断する機能とを有する材料であるカーボンブラックと、その分散バインダとから好適に構成される。また、マスク層6は、これら以外の任意成分として、顔料分散剤、フィラー、界面活性剤、塗布助剤などを本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。このようなマスク層6の形成材料は、いずれも公知のものを適宜組み合わせたものであり、その具体例は、実施例にて後述する。
【0041】
マスク層6は、紫外線に関して2.0以上の光学濃度であることが好ましく、さらに好ましくは2.0〜3.0の光学濃度であり、特に好ましくは、2.2〜2.5の光学濃度である。マスク層の紫外線に対する光学濃度が2.0未満である場合には、紫外線を遮光する機能が不充分で非画像部が感光するという虞があるためである。なお、マスク層6の紫外線に対する光学濃度は、たとえば白黒透過濃度計DM−520(大日本スクリーン製造製)にて測定された値を指す。
【0042】
マスク層6の厚みは、特に制限されないが、0.5〜2.5μmの範囲内であることが好ましく、1.0〜2.0μmの範囲内であることがより好ましい。マスク層6の厚みが0.5μm以上であることで、高い塗工技術を必要とせず、一定以上の光学濃度を得ることができる。また、マスク層6の厚みが2.5μm以下であることで、マスク層6の蒸発に高いエネルギーを必要とせず、コスト的に有利である。
【0043】
本発明の感光性樹脂積層体1においては、マスク層6上に、剥離可能な可撓性カバーフィルム7を設けて印刷用原版を保護することが好ましい。好適な剥離可能な可撓性カバーフィルム7としては、たとえばポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルムを挙げることができる。しかしながら、このような可撓性カバーフィルム(保護フィルム)7は絶対に必要というものではない。
【0044】
本発明の感光性樹脂積層体1は、支持体と接着層と感光性樹脂層と感熱性を有するマスク層の全厚みについて特に制限されるものではないが、500〜1000μmの範囲内であることが好ましく、700〜950μmの範囲内であることがより好ましい。感光性樹脂積層体1の全厚みが500μm未満である場合には、印刷時の版のフロアー部にインキが付着するという虞があるためであり、また、1000μmを超える場合には、コスト的に不利となるという虞があるためである。
【0045】
本発明の感光性樹脂積層体1は、たとえば、熱プレス、注型、溶融押出し、溶液キャストなどの公知の任意の方法を利用することで、所望の厚さのシート状物に形成することができる。
【0046】
本発明の感光性樹脂積層体1を凸版印刷用原版として、次のようにして印刷版を好適に製造することができる。まず、可撓性カバーフィルム7が存在する場合には、まず可撓性カバーフィルム7を感光性樹脂積層体1から除去する。その後、マスク層6をIRレーザにより画像様に照射して、感光性樹脂層5上にマスクを形成する。好適なIRレーザの例としては、ND/YAGレーザ(たとえば、波長1064nm)またはダイオードレーザ(たとえば、波長830nm)を挙げることができる。コンピュータ製版技術に好適なレーザシステムは、市販されており、たとえばCDI Spark(エスコグラフィックス社)を使用することができる。このレーザシステムは、印刷用原版を保持する回転円筒ドラム、IRレーザの照射装置、レイアウトコンピュータを含み、画像情報は、レイアウトコンピュータからレーザ装置に直接移される。
【0047】
画像情報を感熱性を有するマスク層6に書き込んだ後、マスク層6を介して紫外線を感光性樹脂積層体に全面照射する。これは版をレーザシリンダに取り付けた状態で行うことも可能であるが、版をレーザ装置から除去し、慣用の平板な照射ユニットで照射する方が規格外の版サイズに対応可能な点で有利であり一般的である。紫外線としては、150〜500nm、特に300〜400nmの波長を有する紫外線を好適に使用することができる。その光源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ジルコニウムランプ、カーボンアーク灯、紫外線用蛍光灯などを使用することができる。
【0048】
露光後、適当な溶剤、好ましくは、水、特に中性水を用いて非露光部分を溶解除去することによって、短時間で速やかに現像がなされ、印刷版(レリーフ版)が得られる。現像方式としては、スプレー式現像装置、ブラシ式現像装置などを用いることが好ましい。
【実施例】
【0049】
次に本発明を実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0050】
成型し、光硬化した後の感光性樹脂積層体(凸版印刷用原版)のショアーD硬さ、ノルマルヘキサンに対する溶剤吸収重量増加率、反発弾性率、露光時間および現像時間は以下の方法により測定した。なお、測定用サンプルは250μmのポリエステル支持体上に3mmの感光性樹脂層を設けて感光性樹脂層の表面に125μmのポリエステルフィルムを積層した感光性樹脂積層体を使って、感光性樹脂積層体の表面から25W/mのケミカルランプを用いて感光性樹脂の表面より高さ5cmの距離から10分間露光し、光硬化させた。このサンプルを20℃、相対湿度65%の条件で24時間保存してサンプルを調整した。
【0051】
(1)ショアーD硬さ
ショアー式デュロメーター(ショアーDタイプ)(西独ツビック社製)を用いて25℃で測定した。
【0052】
(2)溶剤吸収重量増加率
露光後のサンプル厚みが500μmで2cm×5cmのサンプルを作り、5時間ノルマルへキサンに浸漬した後、表面に付着したノルマルへキサンを取り除き、重量を測定した。溶剤吸収重量増加率は、
溶剤吸収重量増加率(%)=(浸漬後の重量÷浸漬前の重量)×100
の計算式で算出した。
【0053】
(3)反発弾性率
直径10mm(重さ:4.16)の鋼球製ボールを20cmの高さより落下させ、跳ね返る高さ(a)を読み取り、(a/20)×100%表示とした。測定は、25℃、70%RHの条件で行った。
【0054】
<実施例1>
まず、支持体2としての厚み188μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、ポリウレタン系接着剤で20μmの接着層3を設けた。ポリウレタン系接着剤はポリエステル系樹脂(バイロンRV−300、東洋紡績(株)製)80重量部をトルエン/メチルエチルケトン=80/20(重量比)の混合溶剤1940重量部に80℃で加熱溶解し、冷却後、イソシアヌレート型多価イソシアネートとしてヘキサメチレンジイソシアネートとトルエンジイソシアネートを原料とするイソシアヌレート型多価イソシアネート(デスモジュールHL、住友バイエルウレタン(株)製)20重量部、硬化触媒としてトリエチレンジアミン0.06重量部を添加し、10分間攪拌して調製したものを用いた。このようにして得られたポリウレタン系接着剤を膜厚みが20μmとなるように、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布して100℃で3分間乾燥キュアーし、接着層3を設けた。
【0055】
次に、接着層3上に、ショアーD硬さが30°で反発弾性率が30%の光硬化した感光性樹脂組成物で形成した中間層4を設けた。まず、2−メチルペンタメチレンジアミン(MPDA)2.9重量部、1,4−ビスアミノプロピルピペラジン(BAPP)6.0重量部、ポリエチレングリコールヘキサメチレンジイソシアネート反応物(HE−600)45.5重量部およびアジピン酸1.7重量部をメタノール100重量部と撹拌翼付き加熱溶解釜に入れ、充分な窒素置換を行った後に密閉にして徐々に65℃まで加熱撹拌した。約2時間撹拌してから、1,4−ナフトキノン0.015重量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1重量部を添加してさらに30分間撹拌溶解させた。その後、グリシジルメタクリレート(GMA)2.5重量部、水18重量部、亜硫酸アンモニウム0.3重量部、シュウ酸0.1重量部、アジピン酸0.8重量部、光開始剤としてベンジルジメチルケタール1.0重量部、ジグリシジルエーテルジアクリレート(架橋剤エポキシエステル400EA、共栄社化学(株)製)11.4重量部と架橋剤ライトアクリレート(HOA−MPE、共栄社化学(株)製)11.4重量部をさらに添加して30分間撹拌溶解させた。次いで、徐々に昇温してメタノールと水を留出させて、釜内の温度が110℃となるまで濃縮した。この段階で流動性のある粘稠な感光性樹脂組成物(中間層形成用の感光性樹脂組成物)を得た。
【0056】
次いで、このようにして得られた光硬化後の感光性樹脂組成物の膜厚みが100μmとなるように支持体2に形成した接着層3上に塗布し、70℃で乾燥した後に、さらに125μmのポリエステルフィルムを重ね合わせて照度が10mw/mのケミカルランプを使って60秒間露光して光硬化させて、全厚みが310μmの、支持体2上に接着層3および中間層4を設けた積層体を得た。
【0057】
形成した中間層4の反発弾性率を測定したところ、30%であった。また、この中間層4のノルマルヘキサンに対する溶剤吸収重量増加率は7.3%であり、インキの洗い油に対する耐性が充分であることを確認した。
【0058】
次に、中間層4上に、以下のように調製した感光性樹脂組成物(感光性樹脂層形成用の感光性樹脂組成物)を流延し、感光性樹脂層5を形成した。まず、2−メチルペンタメチレンジアミン(MPDA)2.9重量部、1,4−ビスアミノプロピルピペラジン(BAPP)6.8重量部、ポリエチレングリコールヘキサメチレンジイソシアネート反応物(HE−600)45.4重量部およびアジピン酸1.7重量部をメタノール100重量部と撹拌翼付き加熱溶解釜に入れ、充分な窒素置換を行った後に密閉にして徐々に65℃まで加熱撹拌した。約2時間撹拌してから、1,4−ナフトキノン0.03重量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1重量部を添加してさらに30分間撹拌溶解させた。その後、グリシジルメタクリレート(GMA)2.5重量部、水12重量部、亜硫酸アンモニウム0.3重量部、シュウ酸0.1重量部、アジピン酸0.7重量部、光開始剤としてベンジルジメチルケタール1.0重量部、グリセリンジメタクリレート(架橋剤ライトエステルG101P、共栄社化学(株)製)20.0重量部とエポキシエステル(40EM、共栄社化学(株)製)13.5重量部をさらに添加して30分間撹拌溶解させた。次いで、徐々に昇温してメタノールと水を留出させて、釜内の温度が110℃となるまで濃縮した。この段階で流動性のある粘稠な感光性樹脂組成物(感光性樹脂層形成用の感光性樹脂組成物)を得た。この感光性樹脂組成物の紫外線露光後のショアーD硬さは55°、反発弾性率は30%であった。このような感光性樹脂組成物を用いて、中間層4上に、厚み640μmの感光性樹脂層5を形成した。
【0059】
次に、感光性樹脂層5上に、感熱性を有するマスク層6を形成した。まず、分散バインダーとして、ブチラール樹脂、第三級アミノ基含有ポリアミド、エーテル基含有ポリアミド、極性基不含有ポリアミドおよびポリビニルアルコールを準備した。ブチラール樹脂としては、BM−5(積水化学工業(株)製)を用いた。また第三級アミノ基含有ポリアミドおよびエーテル基含有ポリアミドとしては、以下のようにして合成したものを使用した。極性基不含有ポリアミドとしては、マクロメルト6900(ヘンケル社製)を使用した。ポリビニルアルコールとしては、GH23(日本合成化学(株)製)を使用した。
【0060】
(第三級アミノ基含有ポリアミドの合成)
ε−カプロラクタム50重量部、N,N’−ジ(γ−アミノプロピル)ピペラジンアジペート40重量部、3−ビスアミノメチルシクロヘキサンアジペート10重量部と水100重量部をオートクレーブ中に仕込み、窒素置換後、密閉して徐々に加熱した。内圧が10kg/mに達した時点から、その圧力を保持できなくなるまで水を留出させ、約2時間で常圧に戻し、その後1時間常圧で反応させた。最高重合反応温度は255℃であった。これにより、融点137℃、比粘度1.96の第三級アミノ基含有ポリアミドを得た。
【0061】
(エーテル基含有ポリアミドの合成)
数平均分子量600のポリエチレングリコールの両末端にアクリロニトリルを付加し、これを水素還元して得たα,ω−ジアミノポリオキシエチレンとジアジピン酸との等モル塩:60重量部、ε−カプロラクタム:20重量部およびヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との等モル塩:20重量部を溶融重合して、相対粘度(ポリマー1gを水クロラール100mlに溶解し、25℃で測定した粘度)が2.50のエーテル基含有ポリアミドを得た。
【0062】
(マスク層塗工液の調製)
分散バインダーとして、ブチラール樹脂27重量部、第三級アミノ基含有ポリアミド39重量部を溶媒に溶解させ、そこにカーボンブラック34重量部を分散させて分散液を調製し、マスク層塗工液とした。
【0063】
(マスク層の作成)
両面に離型処理を施したPETフィルム支持体(E5000、東洋紡績(株)製、厚さ100μm)に、マスク層塗工液を、層厚が1.5μmになるように適宜選択したバーコーターを用いて塗工し、120℃×5分乾燥してマスク層6を作成した。
【0064】
前記PETフィルム支持体上にマスク層を形成した構造物を、マスク層側が感光性樹脂層と接するようにラミネータを用いて感光性樹脂層5上に積層し、全厚みが951.5μmであり、感光性樹脂層5の厚みが640μmの凸版印刷用の感光性樹脂積層体1を得た。得られた感光性樹脂積層体1を30℃で保管下、板状に固化した。その24時間後、この感光性樹脂積層体を103℃で3分間加熱して、7日間以上保管した後、凸版印刷用原版(生版)を得た。
【0065】
得られた凸版印刷用原版の微細な独立点の再現性を評価した結果、100μmの独立点を再現する露光時間は4分間であり、感度が高く且つ優れた独立点の再現性を有する凸版印刷用レリーフであった。そのとき得られたレリーフについて、細線再現性のうちレリーフ再現性を評価したところ、細線は10μm幅の細線が再現した。また細線再現性のうち、印刷太り有無を目視にて評価したところ、印刷太りはなかった。さらに、印圧を200μmとなるように調整し、ライン速度20m/分の条件でベタ部の印刷性を評価した結果、カスレはなかった。また、目視にて非画像部インキ汚れは観察されなかった。中間層4と感光性樹脂層5との界面における印刷中の剥がれについても全く見られなかった。さらに、以下の手順で、円筒状成形時の感光性樹脂層の剥がれの有無を評価した。まず、印刷時のシリンダーに版を貼り付ける様態に、版をアウトカールの向きに、直径4cmの円筒状に丸めて、固定した。これを60℃の熱風乾燥機中で30分間加熱し、くせ付けした。その後乾燥機から出し、室温で約30分間放置した。その後、丸めたものを解くと円筒状に巻きくせがついている。このときに中間層と感光性樹脂層の間で歪が生じ、その界面で剥がれが生じると問題であるため、このような評価も行なった。結果、円筒状成形時に感光性樹脂層の剥がれは観察されなかった。
【0066】
参考例1
ε−カプロラクタム52.5重量部、N,N’−ビス(γ−アミノプロピル)ピペラジンアジペート40.0重量部、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンアジペート7.5重量部および水100重量部を、反応器に入れ、充分な窒素置換を行った後に密閉して徐々に加熱した。内圧が10kg/cmに達した時点から、反応器内の水を徐々に留出させて1時間で常圧に戻し、その後1.0時間常圧で反応させた。最高重合温度は220℃であった。得られた重合体は、融点140℃、比粘度2.00の透明淡黄色のポリアミドを得た。
【0067】
得られたポリアミドを50.0重量部、N−エチルトルエンスルホン酸アミド5.0重量部、1,4−ナフトキノン0.03重量部、メタノール50.0重量部および水10重量部を、攪拌付き加熱解釜中で60℃、2時間混合してポリマーを完全に溶解してから、トリメチロールプロパントリグリシジルエステルのアクリル酸付加物38.1重量部、グリシジルメタクリレート2.5重量部、メタクリル酸2.9重量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1重量部、亜硫酸アンモニウム0.3重量部、シュウ酸0.1重量部およびベンジルジメチルケタール1.0重量部を添加して30分間溶解した。次いで、徐々に昇温してメタノールと水を留出させて、釜内の温度が110℃となるまで濃縮した。この段階で流動性のある粘稠な感光性樹脂組成物(後述する感光性樹脂層形成用の感光性樹脂組成物)を得た。この感光性樹脂組成物の紫外線露光後のショアーD硬さは55°、反発弾性率は18%であった。
【0068】
次に188μmのポリエステルフィルムである支持体2上に実施例1と同様に形成した接着層3を介してショアーD硬さが27°で反発弾性率が21%の光硬化した中間層4を設けた。中間層4は、上記の感光性樹脂組成物に用いたポリアミド55.0重量部、N−エチルトルエンスルホン酸アミド5.0重量部、1,4−ナフトキノン0.03重量部、メタノール50.0重量部および水10重量部を、攪拌付き加熱溶解釜中で60℃、2時間混合してポリマーを完全に溶解した後、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物32.9重量部、メタクリル酸3.1重量部、グリシジルメタクリレート2.5重量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1重量部、亜硫酸アンモニウム0.3重量部、シュウ酸0.1重量部およびベンジルジメチルケタール1.0重量部を添加して、感光性樹脂組成物(中間層形成用の感光性樹脂組成物)を得た。次いで、このようにして得られた光硬後の感光性樹脂組成物の膜厚みが100μmとなるように、支持体2上に形成した接着層3上に塗布して70℃で乾燥した後に、さらに125μmのポリエステルフィルムを重ね合わせて照度が10mw/mのケミカルランプを使って60秒間露光して光硬化させた100μmの中間層4を形成した。また、この中間層4のノルマルヘキサンに対する溶剤吸収重量増加率は7.3%であり、インキの洗い油に対する耐性が充分であることを確認した。
【0069】
このようにして形成された中間層4上に、上述した感光性樹脂層形成用の感光性樹脂組成物を流延し、実施例1と同様にして、厚み640μmの感光性樹脂層5形成した。さらに、実施例1と同様にして、感光性樹脂層5上にマスク層6を形成し、全厚みが951.5μmの感光性樹脂積層体1を得た。
【0070】
直径100μmの独立点を再現する露光時間を、得られた感光性樹脂積層体を凸版印刷用原版として微細な独立点の再現性を評価した結果、100μmの独立点を再現する露光時間は6分間であり、感度が高く且つ優れた独立点の再現性を有する凸版印刷用原版であった。そのとき得られたレリーフについて、細線再現性のうちレリーフ再現性を評価したところ、細線は15μm幅の細線が再現した。次に、実施例1と同様に、細線再現性のうち印刷太りの有無を評価したところ、印刷太りはなかった。さらに、実施例1と同様にベタ部の印刷性を評価した結果、カスレはなかった。また、目視にて非画像部インキ汚れは観察されなかった。中間層4と感光性樹脂層5との界面における印刷時の剥がれについても全く見られなかった。さらに、実施例1と同様にして円筒状成形時の感光性樹脂層の剥がれの有無を評価した結果、感光性樹脂層5の剥がれは観察されなかった。
【0071】
参考例2
感光性樹脂層5を次のように変更した以外は、参考例1と同様にして感光性樹脂積層体1を得た。参考例1で感光性樹脂層形成用の感光性樹脂組成物に用いたポリアミドを50.0重量部、N−エチルトルエンスルホン酸アミド5.0重量部、1,4−ナフトキノン0.03重量部、メタノール50.0重量部および水10重量部を、攪拌付き加熱解釜中で60℃、2時間混合してポリマーを完全に溶解してから、トリメチロールプロパントリグリシジルエステルのアクリル酸付加物とメタクリル酸付加物(アクリル酸50モル%含有)35.4重量部、グリシジルメタクリレート2.0重量部、メタクリル酸3.1重量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1重量部、亜硫酸アンモニウム0.3重量部、シュウ酸0.1重量部およびベンジルジメチルケタール1.0重量部を添加して30分間溶解した。次いで、徐々に昇温してメタノールと水を留出させて、釜内の温度が110℃となるまで濃縮した。この段階で流動性のある粘稠な感光性樹脂層形成用の感光性樹脂組成物を得た。この感光性樹脂組成物の紫外線露光後のショアーD硬さは67°、反発弾性率は15%であった。このような感光性樹脂組成物を用いて、実施例1、参考例1と同じ厚みである640μmの感光性樹脂層5を形成した。
【0072】
直径100μmの独立点を再現する露光時間を、実施例1と同等の方法で得られた全厚み951.5μmの感光性樹脂積層体を凸版印刷用原版として微細な独立点の再現性を評価した結果、100μmの独立点を再現する露光時間は6分間であり、感度が高く且つ優れた独立点の再現性を有する凸版印刷用原版であった。そのとき得られたレリーフについて、細線再現性のうちレリーフ再現性を評価したところ、細線は15μm幅の細線が再現した。次に、実施例1と同様に、細線再現性のうち印刷太りの有無を評価したところ、印刷太りはなかった。さらに、実施例1と同様にベタ部の印刷性を評価した結果、カスレはなかった。また、目視にて非画像部インキ汚れは観察されなかった。中間層4と感光性樹脂層5との界面における印刷中の剥がれについても全く見られなかった。さらに、実施例1と同様にして円筒状成形時の感光性樹脂層の剥がれの有無を評価した結果、感光性樹脂層5の剥がれは観察されなかった。
【0073】
<実施例2>
感光性樹脂層5の厚みを490μmとした以外は実施例1と同様にして、全厚みが801.5μmの感光性樹脂積層体1を得た。このようにして得た感光性樹脂積層体1を凸版印刷用原版として、実施例1と同様にして、微細な独立点の再現性を評価した結果、直径100μmの独立点を再現する露光時間は4分間であり、感度が高く且つ優れた独立点の再現性を有する凸版印刷用原版であった。そのとき得られたレリーフについて、細線再現性のうちレリーフ再現性を評価したところ、10μm幅の細線が再現した。次に、実施例1と同様に、細線再現性のうち印刷太りの有無を評価したところ、印刷太りはなかった。さらに、実施例1と同様にベタ部の印刷性を評価した結果、カスレはなかった。また、目視にて非画像部インキ汚れは観察されなかった。中間層4と感光性樹脂層5との界面における印刷中の剥がれについても全く見られなかった。さらに、実施例1と同様にして円筒状成形時の感光性樹脂層の剥がれの有無を評価した結果、感光性樹脂層5の剥がれは観察されなかった。
【0074】
<実施例
感光性樹脂層5を次のように変更した以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂積層体1を得た。2−メチルペンタメチレンジアミン(MPDA)2.9重量部、1,4−ビスアミノプロピルピペラジン(BAPP)6.8重量部、ポリエチレングリコールヘキサメチレンジイソシアネート反応物(HE−600)45.4重量部およびアジピン酸1.7重量部をメタノール100重量部と撹拌翼付き加熱溶解釜に入れ、充分な窒素置換を行った後に密閉にして徐々に65℃まで加熱撹拌した。約2時間撹拌してから、1,4−ナフトキノン0.03重量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1重量部を添加してさらに30分間撹拌溶解させた。その後、グリシジルメタクリレート(GMA)2.5重量部、水12重量部、亜硫酸アンモニウム0.3重量部、シュウ酸0.1重量部、アジピン酸0.7重量部、光開始剤としてベンジルジメチルケタール1.0重量部、グリセリンジメタクリレート(架橋剤ライトエステルG101P、共栄社化学株式会社製)20.0重量部とエポキシエステル200EA 13.5重量部をさらに添加して30分間撹拌溶解させた。次いで、徐々に昇温してメタノールと水を留出させて、釜内の温度が110℃となるまで濃縮した。この段階で流動性のある粘稠な感光性樹脂組成物を得た。この感光性樹脂組成物の紫外線露光後のショアーD硬さは47°、反発弾性率は30%であった。このような感光性樹脂組成物を用いて、実施例1、参考例1と同じ厚みである640μmの感光性樹脂層5を形成した。
【0075】
直径100μmの独立点を再現する露光時間を、実施例1と同等の方法で得られた全厚み951.5μmの感光性樹脂積層体を凸版印刷用原版として微細な独立点の再現性を評価した結果、100μmの独立点を再現する露光時間は4分間であり、感度が高く且つ優れた独立点の再現性を有する凸版印刷用原版であった。そのとき得られたレリーフについて、細線再現性のうちレリーフ再現性を評価したところ、細線は10μm幅の細線が再現した。次に、実施例1と同様に、細線再現性のうち印刷太りの有無を評価したところ、印刷太りはなかった。さらに、実施例1と同様にベタ部の印刷性を評価した結果、カスレはなかった。また、目視にて非画像部インキ汚れは観察されなかった。中間層4と感光性樹脂層5との界面における印刷中の剥がれについても全く見られなかった。さらに、実施例1と同様にして円筒状成形時の感光性樹脂層の剥がれの有無を評価した結果、感光性樹脂層5の剥がれは観察されなかった。
【0076】
<実施例4>
ジグリシジルエーテルジアクリレートのみについて、架橋剤エポキシエステル400EA(共栄社化学株式会社製)を架橋剤エポキシエステル200EA(共栄社化学株式会社製)に変更したこと以外は実施例1と同様にしてショアーD硬さが40°、厚みが100μmの中間層4を形成し、それ以外は実施例1と同様にして全厚み951.5μmの感光性樹脂積層体1を得た。
【0077】
直径100μmの独立点を再現する露光時間を、得られた感光性樹脂積層体1を凸版印刷用原版として微細な独立点の再現性を評価した結果、100μmの独立点を再現する露光時間は4分間であり、感度が高く且つ優れた独立点の再現性を有する凸版印刷用原版であった。そのとき得られたレリーフについて、細線再現性のうちレリーフ再現性を評価したところ、細線は10μm幅の細線が再現した。次に、実施例1と同様に、細線再現性のうち印刷太りの有無を評価したところ、印刷太りはなかった。さらに、実施例1と同様にベタ部の印刷性を評価した結果、カスレはなかった。また、目視にて非画像部インキ汚れは観察されなかった。中間層4と感光性樹脂層5との界面における印刷中の剥がれについても全く見られなかった。さらに、実施例1と同様にして円筒状成形時の感光性樹脂層の剥がれの有無を評価した結果、感光性樹脂層5の剥がれは観察されなかった。
【0078】
<実施例
中間層4を次のように変更した以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂積層体1を得た。2−メチルペンタメチレンジアミン(MPDA)2.9重量部、1,4−ビスアミノプロピルピペラジン(BAPP)6.8重量部、ポリエチレングリコールヘキサメチレンジイソシアネート反応物(HE−600)45.4重量部およびアジピン酸1.7重量部をメタノール100重量部と撹拌翼付き加熱溶解釜に入れ、充分な窒素置換を行った後に密閉にして徐々に65℃まで加熱撹拌した。約2時間撹拌してから、1,4−ナフトキノン0.03重量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1重量部を添加してさらに30分間撹拌溶解させた。その後、グリシジルメタクリレート(GMA)2.5重量部、水12重量部、亜硫酸アンモニウム0.3重量部、シュウ酸0.1重量部、アジピン酸0.7重量部、光開始剤としてベンジルジメチルケタール1.0重量部、グリセリンジメタクリレート(架橋剤ライトエステルG101P、共栄社化学株式会社製)17.0重量部とエポキシエステル40EM(共栄社化学株式会社製)16.5重量部をさらに添加して30分間撹拌溶解させた。次いで、徐々に昇温してメタノールと水を留出させて、釜内の温度が110℃となるまで濃縮した。この段階で流動性のある粘稠な感光性樹脂組成物を得た。この感光性樹脂組成物の紫外線露光後のショアーD硬さは、48°、反発弾性率は27%であった。
【0079】
直径100μmの独立点を再現する露光時間を、得られた全厚み951.5μmの感光性樹脂積層体1を凸版印刷用原版として微細な独立点の再現性を評価した結果、100μmの独立点を再現する露光時間は4分間であり、感度が高く且つ優れた独立点の再現性を有する凸版印刷用原版であった。そのとき得られたレリーフについて、細線再現性のうちレリーフ再現性を評価したところ、細線は10μm幅の細線が再現した。次に、実施例1と同様に、細線再現性のうち印刷太りの有無を評価したところ、印刷太りはなかった。さらに、実施例1と同様にベタ部の印刷性を評価した結果、カスレはなかった。また、目視にて非画像部インキ汚れは観察されなかった。中間層4と感光性樹脂層5との界面における印刷中の剥がれについても全く見られなかった。さらに、実施例1と同様にして円筒状成形時の感光性樹脂層の剥がれの有無を評価した結果、感光性樹脂層5の剥がれは観察されなかった。
【0080】
<実施例6>
感光性樹脂層5の厚みを380μmとし、全厚みを691.5μmとしたこと以外は実施例1と同様にして感光性樹脂積層体1を得た。
【0081】
直径100μmの独立点を再現する露光時間を、得られた感光性樹脂積層体1を凸版印刷用原版として微細な独立点の再現性を評価した結果、100μmの独立点を再現する露光時間は3分間であり、感度が高く且つ優れた独立点の再現性を有する凸版印刷用原版であった。そのとき得られたレリーフについて、細線再現性のうちレリーフ再現性を評価したところ、細線は10μm幅の細線が再現した。次に、実施例1と同様に、細線再現性のうち印刷太りの有無を評価したところ、印刷太りはなかった。さらに、実施例1と同様にベタ部の印刷性を評価した結果、カスレはなかった。また、目視にて非画像部インキ汚れは観察されなかった。中間層4と感光性樹脂層5との界面における印刷中の剥がれについても全く見られなかった。さらに、実施例1と同様にして円筒状成形時の感光性樹脂層の剥がれの有無を評価した結果、感光性樹脂層5の剥がれは観察されなかった。
【0082】
参考例3
中間層4、感光性樹脂層5をそれぞれ次のように変更した以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂積層体1を得た。中間層4については、合成高分子化合物として用いたポリウレアウレタンをポリエーテルアミドに変更した。ポリエーテルアミドは、数平均分子量600のポリエチレングリコールの両末端にアクリロニトリルを付加し、これを水素還元して得たα,ω−ジアミノポリオキシエチレンとジアジピン酸との等モル塩:60重量部、ε−カプロラクタム:20重量部およびヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との等モル塩:20重量部を溶融重合して、相対粘度(ポリマー1gを水クロラール100mlに溶解し、25℃で測定した粘度)が2.50のエーテル基含有するポリエーテルアミドを得た。得られたポリエーテルアミド60重量部をメタノール中で60℃で1時間撹拌して溶解した後に、1,4−ナフトキノン0.015重量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1重量部を添加してさらに30分間撹拌溶解させた。その後、グリシジルメタクリレート(GMA)2.5重量部、水18重量部、亜硫酸アンモニウム0.3重量部、光開始剤としてベンジルジメチルケタール1.0重量部、ジグリシジルエーテルジアクリレート(架橋剤エポキシエステル400EA、共栄社化学株式会社製)18.1重量部と架橋剤ライトアクリレートHOA−MPE(共栄社化学株式会社製)18.0重量部をさらに添加して30分間撹拌溶解させた。次いで、徐々に昇温してメタノールと水を留出させて、釜内の温度が110℃となるまで濃縮した。この段階で流動性のある粘稠な感光性樹脂組成物を得た。ついでこのようにして得られた光硬後の感光性樹脂組成物の膜厚みが100μmとなるように厚さ188μmのポリエステルフィルム上に塗布して70℃で乾燥した後に、さらに125μmのポリエステルフィルムを重ね合わせて照度が10mw/mのケミカルランプを使って60秒間露光して光硬化させた310μmの中間層を設けた支持体を得た。形成された中間層4のショアーD硬さは35°であった。
【0083】
また、感光性樹脂層5については、合成高分子化合物として用いたポリウレアウレタンをポリエーテルアミドに変更して感光性樹脂層を製造した。感光性樹脂組成物は数平均分子量600のポリエチレングリコールの両末端にアクリロニトリルを付加し、これを水素還元して得たα,ω−ジアミノポリオキシエチレンとジアジピン酸との等モル塩:60重量部、ε−カプロラクタム:20重量部およびヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との等モル塩:20重量部を溶融重合して得たポリエーテルアミド60重量部をメタノール中で60℃で1時間撹拌して溶解した後に、1,4−ナフトキノン0.015重量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1重量部を添加してさらに30分間撹拌溶解させた。その後、グリシジルメタクリレート(GMA)2.5重量部、水12重量部、亜硫酸アンモニウム0.3重量部、シュウ酸0.1重量部、光開始剤としてベンジルジメチルケタール1.0重量部、グリセリンジメタクリレート(架橋剤ライトエステルG101P、共栄社化学株式会社製)20.0重量部とエポキシエステル40EM13.5重量部をさらに添加して30分間撹拌溶解させた。次いで、徐々に昇温してメタノールと水を留出させて、釜内の温度が110℃となるまで濃縮した。この段階で流動性のある粘稠な感光性樹脂組成物を得た。この感光性樹脂組成物の紫外線露光後のショアーD硬さは58°、反発弾性率は30%であった。
【0084】
直径100μmの独立点を再現する露光時間を、得られた全厚み951.5μmの感光性樹脂積層体1を凸版印刷用原版として微細な独立点の再現性を評価した結果、100μmの独立点を再現する露光時間は6分間であり、感度が高く且つ優れた独立点の再現性を有する凸版印刷用原版であった。そのとき得られたレリーフについて、細線再現性のうちレリーフ再現性を評価したところ、細線は15μm幅の細線が再現した。次に、実施例1と同様に、細線再現性のうち印刷太りの有無を評価したところ、印刷太りはなかった。さらに、実施例1と同様にベタ部の印刷性を評価した結果、カスレはなかった。また、目視にて非画像部インキ汚れは観察されなかった。中間層4と感光性樹脂層5との界面における印刷中の剥がれについても全く見られなかった。さらに、実施例1と同様にして円筒状成形時の感光性樹脂層の剥がれの有無を評価した結果、感光性樹脂層5の剥がれは観察されなかった。
【0085】
<実施例
中間層4を次のように変更した以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂積層体1を得た。合成高分子化合物として用いたポリウレアウレタンをポリウレタンに変更して中間層4を製造した。数平均分子量600のポリウレタンを50重量部、1,5−ブタンジオール10重量部およびヘキサメチレンジイソシアネート32.7重量部を混合し、150℃で重合してエーテル結合を含むポリウレタンを得た。得られたポリウレタン60重量部をメタノール中で60℃で1時間撹拌して溶解した後に、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1重量部を添加してさらに30分間撹拌溶解させた。その後、グリシジルメタクリレート(GMA)2.5重量部、水18重量部、亜硫酸アンモニウム0.3重量部、光開始剤としてベンジルジメチルケタール1.0重量部、ジグリシジルエーテルジアクリレート(架橋剤エポキシエステル400EA、共栄社化学株式会社製)23.1重量部と架橋剤ライトアクリレートHOA−MPE(共栄社化学株式会社製)13.0重量部をさらに添加して30分間撹拌溶解させた。次いで、徐々に昇温してメタノールと水を留出させて、釜内の温度が110℃となるまで濃縮した。この段階で流動性のある粘稠な感光性樹脂組成物を得た。次いでこのようにして得られた光硬後の感光性樹脂組成物の膜厚みが100μmとなるように厚さ188μmのポリエステルフィルム上に塗布して70℃で乾燥した後に、さらに125μmのポリエステルフィルムを重ね合わせて照度が10mw/mのケミカルランプを使って60秒間露光して光硬化させた310μmの中間層4を設けた支持体を得た。形成された中間層4のショアーD硬さは27°であった。
【0086】
直径100μmの独立点を再現する露光時間を、得られた全厚み951.5μmの感光性樹脂積層体1を凸版印刷用原版として微細な独立点の再現性を評価した結果、100μmの独立点を再現する露光時間は4分間であり、感度が高く且つ優れた独立点の再現性を有する凸版印刷用原版であった。そのとき得られたレリーフについて、細線再現性のうちレリーフ再現性を評価したところ、細線は10μm幅の細線が再現した。次に、実施例1と同様に、細線再現性のうち印刷太りの有無を評価したところ、印刷太りはなかった。さらに、実施例1と同様にベタ部の印刷性を評価した結果、カスレはなかった。また、目視にて非画像部インキ汚れは観察されなかった。中間層4と感光性樹脂層5との界面における印刷中の剥がれについても全く見られなかった。さらに、実施例1と同様にして円筒状成形時の感光性樹脂層の剥がれの有無を評価した結果、感光性樹脂層5の剥がれが観察された。
【0087】
<比較例1>
中間層を設けず、厚み680μmの感光性樹脂層を形成したこと以外は実施例1と同様にして、全厚みが891.5μmとなるように感光性樹脂積層体を作製した。このようにして得た感光性樹脂積層体を凸版印刷用原版として、実施例1と同様にして、微細な独立点の再現性を評価した結果、直径100μmの独立点を再現する露光時間は12分間であり、感度が低く独立点の再現性が満足いかない凸版印刷用原版であった。そのとき得られたレリーフについて、細線再現性のうちレリーフ再現性を評価したところ、20μm幅の線が再現した。次に、実施例1と同様に、細線再現性のうち印刷太りの有無を評価したところ、印刷太りが観察された。さらに、実施例1と同様にベタ部の印刷性を評価した結果、カスレはなかった。また、目視にて非画像部インキ汚れは観察されなかった。中間層と感光性樹脂層との界面における印刷中の剥がれについても全く見られなかった。さらに、実施例1と同様にして円筒状成形時の感光性樹脂層の剥がれの有無を評価した結果、感光性樹脂層の剥がれは観察されなかった。
【0088】
<比較例2>
実施例1と同様の感光性樹脂層形成用の感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂層を形成したこと以外は参考例1と同様にして、感光性樹脂積層体を作製した。このようにして得た感光性樹脂積層体を凸版印刷用原版として、実施例1と同様にして、微細な独立点の再現性を評価した結果、直径100μmの独立点を再現する露光時間は4分間であり、感度の高い凸版印刷用原版であった。そのとき得られたレリーフについて、細線再現性のうちレリーフ再現性を評価したところ、10μm幅の線が再現した。次に、実施例1と同様に、細線再現性のうち印刷太りの有無を評価したところ、印刷太りはなかった。さらに、実施例1と同様にベタ部の印刷性を評価した結果、カスレはなかった。また、目視にて非画像部インキ汚れは観察されなかった。中間層と感光性樹脂層との界面における印刷中の剥がれが観察され、また、実施例1と同様にして円筒状成形時の感光性樹脂層の剥がれの有無を評価した結果、感光性樹脂層の剥がれが観察された。
【0089】
<比較例3>
中間層の厚みを250μm、感光性樹脂層の厚みを240μmに変更した以外は実施例1と同様にして、全厚みが701.5μmの感光性樹脂積層体を作製した。このようにして得た感光性樹脂積層体を凸版印刷用原版として、実施例1と同様にして、微細な独立点の再現性を評価した結果、直径100μmの独立点を再現する露光時間は4分間であり、感度の高い凸版印刷用原版であった。そのとき得られたレリーフについて、細線再現性のうちレリーフ再現性を評価したところ、10μm幅の線が再現した。次に、実施例1と同様に、細線再現性のうち印刷太りの有無を評価したところ、印刷太りはなかった。さらに、実施例1と同様にベタ部の印刷性を評価した結果、カスレはなかった。得られた印刷物は、凸版印刷用レリーフのフロアー部(底部)にインキが付着し、印刷物の非画像部にインキ汚れが生じ、満足いく印刷品位のものが得られなかった。中間層と感光性樹脂層との界面における印刷中の剥がれについても全く見られなかった。さらに、実施例1と同様にして円筒状成形時の感光性樹脂層の剥がれの有無を評価した結果、感光性樹脂層の剥がれは観察されなかった。
【0090】
<比較例4>
中間層形成用の感光性樹脂組成物を、ショアーD硬さ55°の感光性樹脂層形成用の感光性樹脂組成物に変更した以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂積層体を作製した。このようにして得た感光性樹脂積層体を凸版印刷用原版として、実施例1と同様にして、微細な独立点の再現性を評価した結果、直径100μmの独立点を再現する露光時間は4分間であり、感度の高い凸版印刷用原版であった。そのとき得られたレリーフについて、細線再現性のうちレリーフ再現性を評価したところ、10μm幅の線が再現した。得られた印刷物は、中間層のクッション機能が発現せず、印圧によるレリーフ層の変形により、微細な画像に太りが生じ、ベタ部にはカスレが生じており、満足いく印刷品位のものが得られなかった。なお、目視にて非画像部インキ汚れは観察されなかった。中間層と感光性樹脂層との界面における印刷中の剥がれについても全く見られなかった。さらに、実施例1と同様にして円筒状成形時の感光性樹脂層の剥がれの有無を評価した結果、感光性樹脂層の剥がれは観察されなかった。
【0091】
<比較例5>
感光性樹脂層形成用の感光性樹脂組成物において、グリセリンジメタクリレート(架橋剤ライトエステルG101P、共栄社化学株式会社製)とエポキシエステル40EM(共栄社化学株式会社製)との比率のみを変更し、G101Pを15.0重量部とエポキシエステル40EM 18.5重量部を配合したこと以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂積層体を得た。感光性樹脂組成物の紫外線露光後のショアーD硬さは40°、反発弾性率は28%であった。
【0092】
直径100μmの独立点を再現する露光時間を、得られた感光性樹脂積層体を凸版印刷用原版として微細な独立点の再現性を評価した結果、100μmの独立点を再現する露光時間は4分間であり、感度が高く且つ優れた独立点の再現性を有する凸版印刷用原版であった。そのとき得られたレリーフについて、細線再現性のうちレリーフ再現性を評価したところ、細線は10μm幅の細線が再現した。次に、実施例1と同様に、細線再現性のうち印刷太りの有無を評価したところ、印刷太りが観察された。さらに、実施例1と同様にベタ部の印刷性を評価した結果、カスレはなかった。また、目視にて非画像部インキ汚れは観察されなかった。中間層と感光性樹脂層との界面における印刷中の剥がれについても全く見られなかった。さらに、実施例1と同様にして円筒状成形時の感光性樹脂層の剥がれの有無を評価した結果、感光性樹脂層の剥がれは観察されなかった。
【0093】
<比較例6>
感光性樹脂層を次のように変更した以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂積層体1を得た。感光性樹脂層形成用の感光性樹脂組成物を、グリセリンジメタクリレート(架橋剤ライトエステルG101P、共栄社化学株式会社製)とエポキシエステル40EM(共栄社化学株式会社製)との比率のみを変更し、G101Pを29.5重量部とエポキシエステル40EMを4.0重量部を配合した。この感光性樹脂組成物の紫外線露光後のショアーD硬さは78°、反発弾性率は28%であった。
【0094】
直径100μmの独立点を再現する露光時間を、得られた感光性樹脂積層体を凸版印刷用原版として微細な独立点の再現性を評価した結果、100μmの独立点を再現する露光時間は4分間であり、感度が高く且つ優れた独立点の再現性を有する凸版印刷用原版であった。そのとき得られたレリーフについて、細線再現性のうちレリーフ再現性を評価したところ、細線は10μm幅の細線が再現した。次に、実施例1と同様に、細線再現性のうち印刷太りの有無を評価したところ、印刷太りが観察された。さらに、実施例1と同様にベタ部の印刷性を評価した結果、カスレが生じていた。また、目視にて非画像部インキ汚れは観察されなかった。中間層と感光性樹脂層との界面における印刷中の剥がれについても全く見られなかった。さらに、実施例1と同様にして円筒状成形時の感光性樹脂層の剥がれの有無を評価した結果、感光性樹脂層の剥がれは観察されなかった。
【0095】
<比較例7>
感光性樹脂層の厚みを740μmとしたこと以外は実施例1と同様にして、全厚み1051.5μmの感光性樹脂積層体を作製した。直径100μmの独立点を再現する露光時間を、得られた感光性樹脂積層体を凸版印刷用原版として微細な独立点の再現性を評価した結果、100μmの独立点を再現する露光時間は6分間であり、感度が高く且つ優れた独立点の再現性を有する凸版印刷用原版であった。そのとき得られたレリーフについて、細線再現性のうちレリーフ再現性を評価したところ、細線は30μm幅の細線が再現した。次に、実施例1と同様に、細線再現性のうち印刷太りの有無を評価したところ、印刷太りはなかった。さらに、実施例1と同様にベタ部の印刷性を評価した結果、カスレはなかった。なお、目視にて非画像部インキ汚れは観察されなかった。中間層と感光性樹脂層との界面における印刷中の剥がれについても全く見られなかった。さらに、実施例1と同様にして円筒状成形時の感光性樹脂層の剥がれの有無を評価した結果、感光性樹脂層の剥がれは観察されなかった。
【0096】
実施例1〜参考例1〜3、比較例1〜7の構成および結果を以下に示す。
【0097】
【表1】
【符号の説明】
【0098】
1 凸版印刷版用感光性樹脂積層体、2 支持体、3 接着層、4 中間層、5 感光性樹脂層、6 マスク層、7 可撓性カバーフィルム。
図1