(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の層における前記開口部を画定する面は、前記半導体層側から前記第2の層側にわたって前記開口部の外側へと傾斜する、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のMOSFET。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者による実験によれば、GaN系の半導体装置では、リーク電流を低減する観点から、保護膜の電気絶縁材料としてAl
2O
3が効果的であった。しかしながら、Al
2O
3から成る保護膜は、絶縁破壊強度を十分に確保するために厚膜化された場合、ウェットエッチングによる加工時にエッチング不良(レジストマスクの剥離または欠落)を引き起こすという問題があった。
【0006】
そのため、GaN系の半導体装置において、保護膜の電気的特性の向上と加工性の向上とを両立可能な技術が望まれていた。そのほか、半導体装置においては、低コスト化、微細化、製造の容易化、省資源化、使い勝手の向上、耐久性の向上などが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
本発明の一形態は、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。このMOSFETは、
窒化ガリウム(GaN)から主に成るp型半導体層と、
窒化ガリウム(GaN)から主に成り、前記p型半導体層に接合されたn型半導体層と、
電気絶縁性を有し、前記p型半導体層および前記n型半導体層を被覆する保護膜であって、
酸化アルミニウム(Al2O3)から成る第1の層と、
酸化アルミニウム(Al2O3)とは異なる電気絶縁材料から成り、前記第1の層に積層された第2の層と、
前記第1の層および前記第2の層を貫通する開口部と
を含み、前記第1の層が、前記p型半導体層および前記n型半導体層に隣接し、前記p型半導体層と前記n型半導体層とが接合されたpn接合面の端部のうち、前記開口部の外側における端部を被覆する、保護膜と、
電気絶縁性を有し、前記保護膜の前記開口部の内側に設けられ、前記p型半導体層および前記n型半導体層と、前記pn接合面の端部のうち前記第1の層に被覆された端部と対になる端部である、前記開口部の内側における端部と、を被覆するゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜に接合されたゲート電極と
を備え、
前記第1の層と前記第2の層とを合わせた前記保護膜の全体の厚みは、400nm以上である。
また、本発明は、以下の形態として実現することも可能である。
【0008】
(1)本発明の一形態によれば、半導体装置が提供される。この半導体装置は、窒化ガリウム(GaN)から主に成るp型半導体層と;窒化ガリウム(GaN)から主に成り、前記p型半導体層に接合されたn型半導体層と;電気絶縁性を有し、前記p型半導体層および前記n型半導体層を被覆する保護膜であって、酸化アルミニウム(Al
2O
3)から成り、前記p型半導体層および前記n型半導体層に隣接し、前記p型半導体層と前記n型半導体層とが接合されたpn接合面の端部を被覆する第1の層と、酸化アルミニウム(Al
2O
3)とは異なる電気絶縁材料から成り、前記第1の層に積層された第2の層と、前記第1の層および前記第2の層を貫通する開口部とを含む保護膜と;電気絶縁性を有し、前記保護膜の前記開口部の内側に設けられ、前記p型半導体層および前記n型半導体層を被覆するゲート絶縁膜と;前記ゲート絶縁膜に接合されたゲート電極とを備える。この形態によれば、第1の層によって各半導体層の界面におけるリーク電流の低減を図るとともに、第2の層によって絶縁破壊強度を補強することにより第1の層の厚みを抑制することができる。その結果、保護膜の電気的特性の向上と加工性の向上とを両立できる。
【0009】
(2)上述の半導体装置において、前記第2の層を形成する電気絶縁材料は、二酸化ケイ素(SiO
2)と、窒化ケイ素(SiN)と、酸窒化ケイ素(SiON)と、酸化ハフニウム(HfO
2)と、窒化アルミニウム(AlN)と、酸化ジルコニウム(ZrO
2)と、酸窒化ジルコニウム(ZrON)との少なくとも1つであってもよい。この形態によれば、電気絶縁材料が二酸化ケイ素(SiO
2)である場合、保護膜の絶縁破壊強度を効果的に向上できる。また、電気絶縁材料が、二酸化ケイ素(SiO
2)と、窒化ケイ素(SiN)と、酸窒化ケイ素(SiON)との少なくとも1つである場合、第2の層に対するエッチング加工としてウェットエッチングとドライエッチングとを選択できるため、保護膜の加工方法を選択する自由度を向上させることができ、ドライエッチングを選択することによって保護膜の加工性をさらに向上させることができる。また、電気絶縁材料が、酸化ハフニウム(HfO
2)と、窒化アルミニウム(AlN)と、酸化ジルコニウム(ZrO
2)と、酸窒化ジルコニウム(ZrON)との少なくとも1つである場合、電界集中を緩和させる保護膜の機能を効果的に向上できる。
【0010】
(3)上述の半導体装置において、前記第1の層の厚みは、500nm以下であってもよい。この形態によれば、第1の層に対するウェットエッチングによるエッチング不良を効果的に防止できる。
【0011】
(4)上述の半導体層において、前記第1の層と前記第2の層とを合わせた前記保護膜の全体の厚みは、400nm以上であってもよい。この形態によれば、保護膜の電気的特性を十分に確保できる。
【0012】
(5)上述の半導体装置において、前記第1の層における前記開口部を画定する面は、前記半導体層側から前記第2の層側にわたって前記開口部の外側へと傾斜してもよい。この形態によれば、第1の層がこのような面を有する場合、開口部は、ウェットエッチングを用いて第1の層を半導体層から除去した構造であるため、ドライエッチングによって第1の層を除去した構造と比較して、半導体層の損傷を抑制できる。
【0013】
本発明の一形態によれば、半導体装置の製造方法が提供される。この製造方法は、窒化ガリウム(GaN)から主に成るp型半導体層を形成する工程と;窒化ガリウム(GaN)から主に成り、前記p型半導体層に接合されたn型半導体層を、形成する工程と;電気絶縁性を有し、前記p型半導体層および前記n型半導体層を被覆する保護膜を、形成する工程であって、酸化アルミニウム(Al
2O
3)から成る第1の層を、前記p型半導体層および前記n型半導体層の表面であって、前記p型半導体層と前記n型半導体層とが接合されたpn接合面の端部を含む表面に形成する工程と;酸化アルミニウム(Al
2O
3)とは異なる電気絶縁材料から成る第2の層を、前記第1の層に積層する工程と;前記第1の層および前記第2の層を貫通する開口部を形成する工程と、を含む工程と;電気絶縁性を有し、前記p型半導体層および前記n型半導体層を被覆するゲート絶縁膜を、前記保護膜の前記開口部の内側に形成する工程と;前記ゲート絶縁膜に接合されたゲート電極を形成する工程とを備える。この形態によれば、保護膜の電気的特性の向上と加工性の向上とを両立できる。
【0014】
本発明は、半導体装置およびその製造方法以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、上述の半導体装置を備える電気機器、上述の半導体装置を製造する製造装置などの形態で実現することができる。
【発明の効果】
【0015】
本願発明によれば、第1の層によって各半導体層の界面におけるリーク電流の低減を図るとともに、第2の層によって絶縁破壊強度を補強することにより第1の層の膜厚を抑制することができる。その結果、保護膜の電気的特性の向上と加工性の向上とを両立できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
A.第1実施形態
A−1.半導体装置の構成
図1は、第1実施形態における半導体装置10の構成を模式的に示す断面図である。
図1には、相互に直交するXYZ軸が図示されている。
【0018】
図1のXYZ軸のうち、X軸は、
図1の紙面左から紙面右に向かう軸であり、+X軸方向は、紙面右に向かう方向であり、−X軸方向は、紙面左に向かう方向である。
図1のXYZ軸のうち、Y軸は、
図1の紙面手前から紙面奥に向かう軸であり、+Y軸方向は、紙面奥に向かう方向であり、−Y軸方向は、紙面手前に向かう方向である。
図1のXYZ軸のうち、Z軸は、
図1の紙面下から紙面上に向かう軸であり、+Z軸方向は、紙面上に向かう方向であり、−Z軸方向は、紙面下に向かう方向である。
【0019】
半導体装置10は、窒化ガリウム(GaN)を用いて形成されたGaN系の半導体装置である。本実施形態では、半導体装置10は、縦型MOSFETである。半導体装置10は、基板110と、半導体層120と、半導体層130と、半導体層140と、保護膜180と、ソース電極192と、ゲート絶縁膜195と、ゲート電極196と、ドレイン電極198とを備える。半導体装置10には、半導体層140から半導体層130を貫通して半導体層120に至るまで陥没した溝であるトレンチ105が形成されている。
【0020】
半導体装置10の基板110は、X軸およびY軸に沿って広がる板状を成す半導体層である。本実施形態では、基板110は、窒化ガリウム(GaN)から主に成り、ケイ素(Si)をドナーとして含有するn型半導体層である。
【0021】
半導体装置10の半導体層120は、X軸およびY軸に沿って広がる板状を成すn型半導体層である。本実施形態では、半導体層120は、窒化ガリウム(GaN)から主に成り、ケイ素(Si)をドナーとして含有する。半導体層120は、基板110の+Z軸方向側に積層されている。半導体層120は、Y軸およびZ軸に沿った界面122を有する。
【0022】
半導体装置10の半導体層130は、X軸およびY軸に沿って広がるとともにトレンチ105によって分断されたp型半導体層である。本実施形態では、半導体層130は、窒化ガリウム(GaN)から主に成り、マグネシウム(Mg)をアクセプタとして含有する。半導体層130は、半導体層120の+Z軸方向側に積層されている。半導体層130は、X軸およびY軸に沿った界面132を有する。
【0023】
半導体装置10の半導体層140は、X軸およびY軸に沿って広がるとともにトレンチ105によって分断されたn型半導体層である。本実施形態では、半導体層140は、窒化ガリウム(GaN)から主に成り、ケイ素(Si)をドナーとして含有する。半導体層140のキャリア濃度は、基板110および半導体層120の各キャリア濃度よりも高い。半導体層140は、X軸およびY軸に沿うとともに+Z軸方向を向いた界面141と、X軸およびY軸に沿った界面142とを有する。
【0024】
半導体層120と半導体層130との間には、pn接合面160が形成されている。pn接合面160は、半導体層120と半導体層130とが接合された界面である。pn接合面160の端部162は、半導体層120の界面122と半導体層130の界面132との境界を形成する。
【0025】
半導体装置10の保護膜180は、電気絶縁性を有し、半導体層120、半導体層130および半導体層140の各界面を被覆する。本実施形態では、保護膜180は、半導体層120の+Z軸方向側の界面から、半導体層120の界面122、pn接合面160の端部162、半導体層130の界面132、半導体層140の界面142を経て、半導体層140の界面141に至る範囲を被覆する。
【0026】
本実施形態では、半導体装置10に要求される耐電圧は600V(ボルト)であり、半導体層120、半導体層130および半導体層140に印加される最大電圧は600Vである。この仕様に合わせて、保護膜180の絶縁破壊強度が8〜10MV/cm(メガボルト/センチメートル)を満たすように、保護膜180の厚みが設定されている。保護膜180の厚みは、400nm(ナノメートル)以上が好ましい。本実施形態では、保護膜180の厚みは、600nmである。保護膜180の厚みは、例えば、耐電圧3kV(キロボルト)の場合には3μm(マイクロメートル)であってもよく、耐電圧が50kVの場合には50μmであってもよく、耐電圧が500kVの場合には500μmであってもよい。保護膜180は、第1の層181と、第2の層182とを備える。
【0027】
保護膜180における第1の層181は、酸化アルミニウム(Al
2O
3)から成り、半導体層120、半導体層130および140の各界面(例えば、界面122,132,141,142)に隣接し、pn接合面160の端部162を被覆する。保護膜180の加工性を向上させる観点から、第1の層181の厚みは、500nm以下が好ましく、300nm以下がさらに好ましく、100nm以下がいっそう好ましい。本実施形態では、第1の層181の厚みは、100nmである。第1の層181の厚みは、第1の層181の成膜を現実的に制御可能な限界値である1nm程度であってもよい。
【0028】
保護膜180における第2の層182は、酸化アルミニウム(Al
2O
3)とは異なる電気絶縁材料から成り、第1の層181に積層された層である。本実施形態では、第2の層182は、二酸化ケイ素(SiO
2)から成る。本実施形態では、第2の層182の厚みは、500nmである。
【0029】
保護膜180には、第1の層181および第2の層182を貫通する開口部185が形成されている。開口部185は、半導体層140の界面141の上から保護膜180を界面141が露出するまで除去する過程において、少なくとも第1の層181をウェットエッチングによって半導体層140の界面141の上から除去した構造である。
【0030】
半導体装置10のソース電極192は、導電性を有し、半導体層140の界面141にオーミック接合された電極である。ソース電極192は、保護膜180の開口部185の内側に位置する。本実施形態では、ソース電極192は、トレンチ105によって分断された半導体層140の界面141における+X軸方向側と−X軸方向側とにそれぞれ設けられている。本実施形態では、ソース電極192は、チタン(Ti)から成る層にアルミニウム(Al)から成る層を積層した後に焼成によって合金化した電極である。
【0031】
半導体装置10のゲート絶縁膜195は、電気絶縁性を有し、トレンチ105を挟む+X軸方向側のソース電極192と−X軸方向側のソース電極192との間に広がる絶縁膜である。本実施形態では、ゲート絶縁膜195の材質は、二酸化ケイ素(SiO
2)である。他の実施形態では、ゲート絶縁膜195の材質は、他の電気絶縁材料であってもよい。
【0032】
半導体装置10のゲート電極196は、導電性を有し、ゲート絶縁膜195の上に広がる電極である。本実施形態では、ゲート電極196は、アルミニウム(Al)から成る。
【0033】
半導体装置10のドレイン電極198は、導電性を有し、基板110の−Z軸方向側にオーミック接合された電極である。本実施形態では、ドレイン電極198は、チタン(Ti)から成る層にアルミニウム(Al)から成る層を積層した後に焼成によって合金化した電極である。
【0034】
A−2.半導体装置の製造方法
図2は、半導体装置10の製造方法を示す工程図である。半導体装置10を製造する際には、製造者は、エピタキシャル成長によって基板110の上に半導体層120を形成し、続いて、エピタキシャル成長によって半導体層120の上に半導体層130を形成し、さらに、エピタキシャル成長によって半導体層130の上に半導体層140を形成する(工程P110)。本実施形態では、製造者は、有機金属気相成長法(MOCVD)を実現するMOCVD装置を用いたエピタキシャル成長によって、基板110上に半導体層120、半導体層130および半導体層140を形成する。
【0035】
半導体層120、半導体層130および半導体層140を形成した後(工程P110)、製造者は、エッチングを行う(工程P120)。本実施形態では、エッチング(工程P120)において、製造者は、トレンチ105と、半導体層120の界面122と、半導体層130の界面132と、半導体層140の142とを形成する。界面122,132,142は、素子間を電気的に分離するアイソレーションを構成する。他の実施形態では、エッチング(工程P120)において、製造者は、半導体層130に接合する電極を形成するための凹みであるリセスを、必要に応じて形成してもよい。
【0036】
エッチングを行った後(工程P120)、製造者は、半導体層120、半導体層120の+Z軸方向側の界面から、半導体層120の界面122、半導体層130の界面132、半導体層140の界面142を経て、半導体層140の界面141に至る各界面の上に、酸化アルミニウム(Al
2O
3)から成る第1の層181を形成する(工程P152)。本実施形態では、製造者は、ALD法によって第1の層181を形成する。
【0037】
第1の層181を形成した後(工程P152)、製造者は、第1の層181の上に、酸化アルミニウム(Al
2O
3)とは異なる電気絶縁材料から成る第2の層182を形成する(工程P154)。これによって、半導体層120および半導体層130の上に保護膜180が形成される。本実施形態では、製造者は、二酸化ケイ素(SiO
2)から成る第2の層182を形成する。本実施形態では、製造者は、化学気相成長(Chemical Vapor Deposition:CVD)法によって第2の層182を形成する。
【0038】
第2の層182を形成した後(工程P154)、製造者は、第1の層181および第2の層182を含む保護膜180に、ウェットエッチングを用いて開口部185を形成する(工程P156)。本実施形態では、製造者は、ウェットエッチングによって第1の層181と第2の層182とを除去することによって、開口部185を形成する。本実施形態では、開口部185の形成に用いられるエッチング液は、希フッ酸(DHF):バッファードフッ酸(BHF):水=1:4:100の混合比率で作製されたフッ酸系混合液である。本実施形態では、第1の層181および第2の層182に対するウェットエッチングの加工速度は、40〜60nm/分である。
【0039】
図7は、開口部185の詳細構成を示す説明図である。本実施形態では、開口部185は、等方性ウェットエッチングを用いて第1の層181および第2の層182を加工することによって形成される。第1の層181は、開口部185を画定する面181aを有し、第2の層182は、開口部185を画定する面182aを有する。第1の層181における面181aは、等方性ウェットエッチングによって形成されるため、−Z軸方向側から+Z軸方向側にわたって(半導体層140側から第2の層182側にわたって)、開口部185の外側へと傾斜する。第2の層182における面182aは、等方性ウェットエッチングによって形成されるため、−Z軸方向側から+Z軸方向側にわたって開口部185の外側へと傾斜する。
【0040】
図8は、他の実施形態における開口部185の詳細構成を示す説明図である。他の実施形態では、開口部185は、異方性ドライエッチングを用いて第2の層182を加工した後に、等方性ウェットエッチングを用いて第1の層181を加工することによって形成されてもよい。第1の層181は、開口部185を画定する面181bを有し、第2の層182は、開口部185を画定する面182bを有する。第1の層181における面181bは、等方性ウェットエッチングによって形成されるため、−Z軸方向側から+Z軸方向側にわたって(半導体層140側から第2の層182側にわたって)、開口部185の外側へと傾斜する。第2の層182における面182bは、異方性ドライエッチングによって形成されるため、第2の層182の厚さ方向であるZ軸にほぼ平行である。
【0041】
図2の説明に戻り、保護膜180に開口部185を形成した後(工程P156)、製造者は、ソース電極192と、ゲート絶縁膜195と、ゲート電極196と、ドレイン電極198とを形成する(工程P170)。本実施形態では、製造者は、半導体層140の界面141にチタン(Ti)から成る層を蒸着によって形成し、その上にアルミニウム(Al)から成る層を蒸着によってさらに形成し、これらの層を焼成によって合金化することによって、ソース電極192を形成する。本実施形態では、製造者は、ALD(Atomic Layer Deposition)法によって、トレンチ105を挟む+X軸方向側のソース電極192と−X軸方向側のソース電極192との間に広がる範囲に、二酸化ケイ素(SiO
2)から成るゲート絶縁膜195を形成する。本実施形態では、製造者は、ゲート絶縁膜195の上に、アルミニウム(Al)から成るゲート電極196を蒸着によって形成する。本実施形態では、基板110の−Z軸方向側にチタン(Ti)から成る層を蒸着によって形成し、その上にアルミニウム(Al)から成る層を蒸着によってさらに形成し、これらの層を焼成によって合金化することによって、ドレイン電極198を形成する。
【0042】
これらの工程を経て、半導体装置10が完成する。他の実施形態では、製造者は、各種電極を形成する工程(工程P170)における少なくとも一部の工程を、保護膜180を形成する工程(工程P152,P154,P156)に先立って実施してもよい。
【0043】
A−3.半導体装置の評価
図3は、保護膜180の評価結果を示すグラフである。
図3の評価試験では、試験者は、半導体装置として第1の試料と第2の試料とを用意し、各試料に対して逆方向電圧を印加した場合の逆方向電流密度を測定した。第1の試料は、上述の半導体装置10である。第2の試料は、二酸化ケイ素(SiO
2)から成る絶縁膜を保護膜180に代えて備える点を除き、半導体装置10と同様である。第2の試料における絶縁膜は、単層であり、その厚みは、600nmである。
【0044】
図3のグラフは、逆方向電圧に対する各試料の逆方向電流密度を示す片対数グラフである。
図3のグラフでは、横軸は、逆方向電圧を示し、縦軸は、対数目盛を用いて逆方向電流密度を示す。
図3のグラフでは、実線L31は、第1の試料について測定された測定値を表し、破線L32は、第2の試料について測定された測定値を表す。
【0045】
図3の評価結果によれば、逆方向電圧が200V以上の場合、第1の試料は、第2の試料よりも逆方向電流密度を抑制できる。すなわち、第1の試料は、第2の試料よりもリーク電流を抑制できる。
【0046】
A−4.効果
以上説明した第1実施形態によれば、Al
2O
3から成る第1の層181によって半導体層120,130,140の界面122,132,141,142およびpn接合面160の端部162におけるリーク電流の低減を図るとともに、SiO
2から成る第2の層182によって絶縁破壊強度を補強することにより第1の層181の厚みを抑制することができる。その結果、保護膜180の電気的特性の向上と加工性の向上とを両立できる。
【0047】
また、第2の層182の電気絶縁材料がSiO
2であるため、絶縁膜の絶縁破壊強度を効果的に向上できる。また、第2の層182の電気絶縁材料が、SiO
2であるため、第2の層182に対するエッチング加工としてウェットエッチングとドライエッチングとを選択できるため、保護膜180の加工性方法を選択する自由度を向上させることができ、ドライエッチングを選択することによって保護膜180の加工性をさらに向上させることができる。
【0048】
また、第1の層181の厚みが500nm以下であるため、第1の層181に対するウェットエッチングによるエッチング不良を効果的に防止できる。
【0049】
また、開口部185が、ウェットエッチングを用いて第1の層181を半導体層140の界面141から除去した構造であるため、ドライエッチングによって第1の層181を除去するする場合と比較して、半導体層140の損傷を抑制できる。
【0050】
A−5.第1変形例
図4は、第1実施形態の第1変形例における半導体装置12の構成を模式的に示す断面図である。
図4には、
図1と同様にXYZ軸が図示されている。第1実施形態の第1変形例における半導体装置12の構成は、ソース電極192が半導体層140を貫通して半導体層130に至る点を除き、上述の実施形態における半導体装置10と同様である。第1実施形態の第1変形例によれば、上述の実施形態と同様に、保護膜180の電気的特性の向上と加工性の向上とを両立できる。
【0051】
A−6.第2変形例
図5は、第1実施形態の第2変形例における半導体装置14の構成を模式的に示す断面図である。
図5には、
図1と同様にXYZ軸が図示されている。第1実施形態の第2変形例における半導体装置14の構成は、フィールドプレート電極193を備える点を除き、上述の第1変形例における半導体装置12と同様である。半導体装置14のフィールドプレート電極193は、開口部185の内側におけるソース電極192の上から、保護膜180に沿って広がる電極である。これによって、フィールドプレート電極193は、半導体層120、半導体層130および半導体層140との間に保護膜180を挟むフィールドプレート構造を形成する。第1実施形態の第2変形例によれば、上述の実施形態と同様に、保護膜180の電気的特性の向上と加工性の向上とを両立できる。
【0052】
B.第2実施形態
図6は、第2実施形態における半導体装置20の構成を模式的に示す断面図である。
図6には、
図1と同様にXYZ軸が図示されている。
【0053】
半導体装置20は、GaN系の半導体装置である。本実施形態では、半導体装置20は、プレーナ型MOSFETである。半導体装置20は、半導体層210と、半導体層220と、半導体層230と、保護膜280と、ソース電極292と、ゲート絶縁膜295と、ゲート電極296と、ドレイン電極298とを備える。
【0054】
半導体装置20の半導体層210は、X軸およびY軸に沿って広がる板状を成すp型半導体層である。本実施形態では、半導体層210は、窒化ガリウム(GaN)から主に成り、マグネシウム(Mg)をアクセプタとして含有する。半導体層210は、X軸およびY軸に沿うとともに+Z軸方向を向いた界面211を、有する。
【0055】
半導体装置20の半導体層220は、半導体層210の+Z軸方向側における凹状部を埋めるn型半導体層である。本実施形態では、半導体層220は、窒化ガリウム(GaN)から主に成り、ケイ素(Si)をドナーとして含有する。半導体層220は、X軸およびY軸に沿うとともに+Z軸方向を向いた界面221を、有する。
【0056】
半導体装置20の半導体層230は、半導体層220から離れた位置において、半導体層210の+Z軸方向側における凹状部を埋めるn型半導体層である。本実施形態では、半導体層230は、窒化ガリウム(GaN)から主に成り、ケイ素(Si)をドナーとして含有する。半導体層230のキャリア濃度は、半導体層220のキャリア濃度よりも高い。半導体層230は、X軸およびY軸に沿うとともに+Z軸方向を向いた界面231を、有する。
【0057】
半導体層210と半導体層220との間には、pn接合面260が形成されている。pn接合面260は、半導体層210と半導体層220とが接合された界面である。pn接合面260における−X軸方向側の端部262は、pn接合面260における+X軸方向側の端部263とともに、半導体層210の界面211と半導体層220の界面221との境界を形成する。
【0058】
半導体層210と半導体層230との間には、pn接合面270が形成されている。pn接合面270は、半導体層210と半導体層230とが接合された界面である。pn接合面270における−X軸方向側の端部272は、pn接合面270における+X軸方向側の端部273とともに、半導体層210の界面211と半導体層230の界面231との境界を形成する。
【0059】
半導体装置20の保護膜280は、電気絶縁性を有し、半導体層210および半導体層230の各界面を被覆する。保護膜280を形成する方法は、第1実施形態における保護膜180を形成する方法と同様である。
【0060】
本実施形態では、保護膜280は、−X軸方向側では、半導体層210の界面211を、pn接合面260の端部262の手前まで被覆する。本実施形態では、保護膜280は、+X軸方向側では、半導体層210の界面211から、pn接合面270の端部272を経て、半導体層230の界面231に至る範囲を被覆する。
【0061】
保護膜280の厚みは、400nm以上が好ましく、本実施形態では、第1実施形態の保護膜180と同様に設定された600nmである。保護膜280の厚みは、例えば、耐電圧3kVの場合には3μmであってもよく、耐電圧が50kVの場合には50μmであってもよく、耐電圧が500kVの場合には500μmであってもよい。保護膜280は、第1の層281と、第2の層282とを備える。
【0062】
保護膜280における第1の層281は、酸化アルミニウム(Al
2O
3)から成り、半導体層210界面211と、半導体層220の界面221と、半導体層230の界面231とにそれぞれ隣接する。これによって、第1の層281は、pn接合面260の端部262を被覆するとともに、pn接合面270の端部272を被覆する。保護膜280の加工性を向上させる観点から、第1の層281の厚みは、500nm以下が好ましく、300nm以下がさらに好ましく、100nm以下がいっそう好ましい。本実施形態では、第1の層281の厚みは、100nmである。第1の層281厚みは、第1の層281の成膜を現実的に制御可能な限界値である1nm程度であってもよい。
【0063】
保護膜280における第2の層282は、酸化アルミニウム(Al
2O
3)とは異なる電気絶縁材料から成り、第1の層281に積層された層である。本実施形態では、第2の層282は、二酸化ケイ素(SiO
2)から成る。本実施形態では、第2の層282の厚みは、500nmである。
【0064】
保護膜280には、第1の層281および第2の層282を貫通する開口部285が形成されている。開口部285は、半導体層210の界面211と、半導体層220の界面221と、半導体層230の界面231との各界面上から、保護膜280を各界面が露出するまで除去する過程において、少なくとも第1の層281をウェットエッチングによって各界面上から除去した構造である。開口部285を形成する方法は、第1実施形態において保護膜180に開口部185を形成する方法と同様である。
【0065】
半導体装置20のソース電極292は、導電性を有し、半導体層220の界面221から、pn接合面260の端部262を経て、半導体層210の界面211に至る範囲にオーミック接合された電極である。ソース電極292は、保護膜280の開口部285の内側に位置する。本実施形態では、ソース電極292は、チタン(Ti)から成る層にアルミニウム(Al)から成る層を積層した後に焼成によって合金化した電極である。
【0066】
半導体装置20のゲート絶縁膜295は、電気絶縁性を有し、ソース電極292とドレイン電極298との間における半導体層220の界面221から半導体層210界面211を経て半導体層230の界面231に至る範囲に広がる絶縁膜である。本実施形態では、ゲート絶縁膜295の材質は、二酸化ケイ素(SiO
2)である。他の実施形態では、ゲート絶縁膜295の材質は、他の電気絶縁材料であってもよい。
【0067】
半導体装置20のゲート電極296は、導電性を有し、ゲート絶縁膜295の上に広がる電極である。本実施形態では、ゲート電極296は、アルミニウム(Al)から成る。
【0068】
半導体装置20のドレイン電極298は、導電性を有し、半導体層230の界面231にオーミック接合された電極である。ドレイン電極298は、保護膜280の開口部285の内側に位置する。本実施形態では、ドレイン電極298は、チタン(Ti)から成る層にアルミニウム(Al)から成る層を積層した後に焼成によって合金化した電極である。
【0069】
以上説明した第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、保護膜280の電気的特性の向上と加工性の向上とを両立できる。
【0070】
C.他の実施形態
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0071】
上述の実施形態における絶縁膜は、上述の実施形態とは異なる構造を有する半導体装置の絶縁膜に適用されてもよい。
【0072】
上述の実施形態において、保護膜における第1の層は、2つ以上の複数の層から形成されてもよい。第1の層が複数の層から形成される場合、これらの層の厚みの合計は、500nm以下が好ましく、300nm以下がさらに好ましく、100nm以下がいっそう好ましい。
【0073】
上述の実施形態において、保護膜における第2の層の電気絶縁材料は、二酸化ケイ素(SiO
2)と、窒化ケイ素(SiN)と、酸窒化ケイ素(SiON)と、酸化ハフニウム(HfO
2)と、窒化アルミニウム(AlN)と、酸化ジルコニウム(ZrO
2)と、酸窒化ジルコニウム(ZrON)との少なくとも1つであってもよい。第2の層の電気絶縁材料が、SiO
2とSiNとSiONとの少なくとも1つである場合、第2の層に対するエッチング加工としてウェットエッチングとドライエッチングとを選択できるため、絶縁膜の加工方法を選択する自由度を向上させることができ、ドライエッチングを選択することによって保護膜の加工性をさらに向上させることができる。また、第2の層の電気絶縁材料が、HfO
2とAlNとZrO
2とZrONとの少なくとも1つである場合、電界集中を緩和させる絶縁膜の機能を効果的に向上できる。
【0074】
上述の実施形態において、保護膜における第2の層は、2つ以上の複数の層から形成されてもよい。第2の層が複数の層から形成される場合、これらの層の材質は、同一であってもよいし、異なっても良い。
【0075】
上述の実施形態において、保護膜の各層を形成する手法は、ALD法に限らず、スパッタ(
Sputter)法であってもよい。
【0076】
上述の実施形態において、基板の材質は、窒化ガリウム(GaN)に限らず、ケイ素(Si)、サファイア(Al
2O
3)、炭化ケイ素(SiC)などであってもよい。なお、縦型の半導体装置における基板には、電気を通しやすい材質が適用され、横型の半導体装置における基板には、電気を通しにくい材質が適用される。
【0077】
上述の実施形態において、n型半導体層に含まれるドナーは、ケイ素(Si)に限らず、ゲルマニウム(Ge)、酸素(O)などであってもよい。
【0078】
上述の実施形態において、p型半導体層に含まれるアクセプタは、マグネシウム(Mg)に限らず、亜鉛(Zn)、炭素(C)などであってもよい。
【0079】
上述の実施形態において、n型半導体層に接合されるオーミック電極の材質は、チタン(Ti)およびアルミニウム(Al)の合金に限らず、他の金属であってもよい。
【0080】
上述の実施形態において、フィールドプレート電極の材質は、アルミニウム(Al)に限らず、他の金属であってもよい。