特許第6241109号(P6241109)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6241109
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 11/26 20060101AFI20171127BHJP
【FI】
   G01D11/26 C
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-155119(P2013-155119)
(22)【出願日】2013年7月26日
(65)【公開番号】特開2015-25725(P2015-25725A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2016年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】飯田 拓
【審査官】 平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−032404(JP,A)
【文献】 実開平06−053927(JP,U)
【文献】 特開2012−013923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 11/24−11/26
B60K 35/00
G09F 9/00
H05K 5/00−5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネルを収容するケース体と、
前記ケース体の開口側に配設された第1の透視部材と、
前記第1の透視部材の前記表示パネル側に離間されて配設された第2の透視部材とを備えた表示装置において、
前記第2の透視部材は、前記表示パネルの可視範囲外に形成される不可視部と、前記ケース体に設けられた複数個の位置決め部とそれぞれ位置決め可能な複数個の位置決め孔部とを有し、
前記可視範囲外に配設される緩衝部材は、前記第1の透視部材と前記第2の透視部材との間の空間を密閉するように前記位置決め孔部の外側に設けられる本体部と、前記表示装置を正視した際に前記位置決め孔部を迂回する形で取り囲む囲み部とを備えていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記緩衝部材は、前記第1の透視部材の周縁部分に設けられた鍔部の背面側において、前記鍔部と前記第2の透視部材との間に挟持されていることを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車やオートバイ、農建機、水上バイク、船舶等の各種移動体に搭載される表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の表示装置にあっては、例えば下記特許文献1に記載されているものが知られている。この特許文献1に記載の表示装置は、表示器(表示パネル)を収容する樹脂製のケース体と、このケース体の開口側に配設された透光性樹脂材料からなる第1の透視部材と、この第1の透視部材の表示器側に離間されて配設された透光性樹脂材料からなる第2の透視部材と、第1の透視部材の周縁部分において、第1の透視部材と第2の透視部材との間に介在するように設けられるシール部材(緩衝部材)とを備え、このシール部材を第1の透視部材と第2の透視部材との間の空間を埋めるように設置することによって、第1の透視部材の内面の曇りを抑えながら、前記空間が密閉空間として構成されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−32404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の表示装置において、表示器の可視範囲を定めるとともにケース体の内部に収容されている内機部品(例えば表示器駆動用の回路基板等)が第1、第2の透視部材を通じて視認者側から不可視状態となるように、前記可視範囲を除いた領域(つまり可視範囲外)に対応する第2の透視部材の背面箇所に黒色印刷層を設ける場合がある。
【0005】
そして、このように第2の透視部材の背面に黒色印刷層をスクリーン印刷等の手段を用いて印刷形成する場合、黒色印刷層を印刷形成する際の印刷ズレに起因して、表示器の可視範囲と表示器の可視範囲外との境界が位置ズレすることが考えられる。
【0006】
そこで、この位置ズレを最小限に抑制するために、第2の透視部材とケース体とを位置決めする手法がある。例えば第2の透視部材における適宜箇所(例えばシール部材が設置される位置よりも内側に位置する第2の透視部材の所定箇所)に第2の透視部材の表裏を貫通する貫通孔形状からなる位置決め孔部を設けるとともに、この位置決め孔部に対応するケース体箇所に凸部からなる位置決め部を設け、ケース体の位置決め部が第2の透視部材の位置決め孔部に位置決めされることで、第2の透視部材とケース体とを位置決めすることができる。
【0007】
しかしながら、上記のようにケース体の位置決め部と第2の透視部材の位置決め孔部とを利用して、ケース体と第2の透視部材とを位置決めする場合にあっては、寸法公差によって位置決め部と位置決め孔部との間のクリアランスを完全になくす(零にする)ことはできないため、第1の透視部材と第2の透視部材との間の空間に存在している内部空気の一部が前記クリアランスを通って前記空間の外部へと漏れて、前記空間の気密性が低下してしまうという問題点があり、この点で更なる改良の余地が残されていた。
そこで本発明は、前述の課題に対して対処するため、ケース体の位置決め部と第2の透視部材の位置決め孔部とを利用してケース体と第2の透視部材とを位置決めする場合であっても、第1の透視部材と第2の透視部材とで形成される空間の気密性を確保することが可能な表示装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、表示パネルを収容するケース体と、前記ケース体の開口側に配設された第1の透視部材と、前記第1の透視部材の前記表示パネル側に離間されて配設された第2の透視部材とを備えた表示装置において、前記第2の透視部材は、前記表示パネルの可視範囲外に形成される不可視部と、前記ケース体に設けられた複数個の位置決め部とそれぞれ位置決め可能な複数個の位置決め孔部とを有し、前記可視範囲外に配設される緩衝部材は、前記第1の透視部材と前記第2の透視部材との間の空間を密閉するように前記位置決め孔部の外側に設けられる本体部と、前記表示装置を正視した際に前記位置決め孔部を取り囲む囲み部とを備えていることを特徴とする。
【0009】
また本発明は、前記緩衝部材は、前記第1の透視部材の周縁部分に設けられた鍔部の背面側において、前記鍔部と前記第2の透視部材との間に挟持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、初期の目的を達成でき、ケース体の位置決め部と第2の透視部材の位置決め孔部とを利用してケース体と第2の透視部材とを位置決めする場合であっても、第1の透視部材と第2の透視部材とで形成される空間の気密性を確保することが可能な表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態による表示装置の断面図。
図2図1中、A部を示す拡大断面図。
図3】同実施形態による第1の透視部材を取り除いた状態の表示装置の要部正面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1図3に基づいて、本発明を水上バイクのごとき移動体に搭載された表示装置に適用した一実施形態を説明する。
【0013】
図1において、本実施形態による表示装置は、表示パネル10と、この表示パネル10を支持する支持体20と、表示パネル10及び支持体20等を収容するケース体30と、このケース体30の開口側(前面開口側)に配設された第1の透視部材40と、この第1の透視部材40の表示パネル10側に離間されて配設された第2の透視部材50と、この第2の透視部材50の周縁部分を覆う断面略コの字形状の緩衝部材60とを備えている。
【0014】
表示パネル10は、例えば一対のガラス基板間にTN型の液晶分子を封入した周知のTN型液晶表示パネルからなり、表示パネル10の表示エリアに対応するように設けられる可視範囲R1にて所定情報を表示するものである。前記所定情報としては、例えば移動体の速度情報や回転数情報、燃費情報を採用することができる。
【0015】
支持体20は、例えば合成樹脂からなり、断面略凹部形状にて形成され、表示パネル10を載置するための支持部材である。
【0016】
ケース体30は、例えば黒色の遮光性合成樹脂からなり、表示パネル10や支持体20、第2の透視部材50を収容するものである。このケース体30は、底壁部31と側壁部32とを備え、底壁部31とは反対側となる側壁部32の上端側(前記前面開口側)が開口した断面略逆凹部形状にて形成されている。
【0017】
底壁部31は、略平板状に形成され、支持体20及び第2の透視部材50の背後側に位置している。そして、底壁部31の外周縁から第1の透視部材40側に向けて立壁状に延びている側壁部32は、その上端側が略L字状に折れ曲がっており、側壁部32の外側に位置する立壁部33と、この立壁部33と側壁部32とを連結する連結部34とを備えている(図2参照)。
【0018】
立壁部33は、第1の透視部材40に備えられる後述する鍔部の側方を覆うようにその先端側に位置する略枠形状の肉薄部35と、第2の透視部材50(表示パネル10)の板面方向に沿った厚さが肉薄部35の厚さよりも肉厚に形成された肉厚部36とを有しており、この肉厚部36は、緩衝部材60の側方を覆っている。
【0019】
また、連結部34側とは反対側となる側壁部32の内周部には、第2の透視部材50に備えられる後述する位置決め孔部と位置決め可能な円柱状の凸部からなる位置決め部37が設けられている。この位置決め部37は、立壁部33と略平行状態をなすように第1の透視部材40に備えられる後述する鍔部に向けて延び、第2の透視部材50の前方側に飛び出ないように前記位置決め孔部に位置決め固定されるものである。なお、この場合、位置決め部37は、側壁部32の内周部に沿って、複数個(少なくとも2個以上)形成されているものとする。
【0020】
第1の透視部材40は、透光性合成樹脂(例えば無色透明なアクリル樹脂)によって形成され、透視部41と壁部42と鍔部43とが一体形成された構成となっている。
【0021】
透視部41は、表示装置を視認する視認者側が湾曲した凸面となるような形状となっており、壁部42は透視部41の外周縁から下方(第2の透視部材50側)に垂下形成された垂下壁形状となっている。
【0022】
鍔部43は、壁部42の下端側から第2の透視部材50の板面方向に沿って外側に延在するフランジ形状からなり、その外周縁が立壁部33の肉厚部36上に載置される。ところで、本例の場合、肉厚部36とこれに対応するように第1の透視部材40の周縁部分に設けられた鍔部43部分とは、超音波溶着等を用いて互いに固着されている。また、鍔部43の背面側において、緩衝部材60は、その後述する本体部の一部(つまり鍔部43と接触している前記本体部箇所)と、後述する囲み部とが鍔部43と第2の透視部材50との間に挟持されている。
【0023】
なお、壁部42と鍔部43との境界付近及びその近傍を除いた鍔部43部分には、緩衝部材60(つまり前記本体部と前記囲み部の双方)を前記板面方向とは直交する方向に圧縮させるための圧縮リブ(突出部)44が設けられている。
【0024】
第2の透視部材50は、その母材となる透光性合成樹脂(例えば無色透明なアクリル樹脂)からなる平板状の透光性基板51と、この透光性基板51の背面に印刷形成された黒色印刷層からなる不可視部52とを有している。
【0025】
また、この場合、ケース体30に設けられた複数個の位置決め部37に対応する透光性基板51箇所には、複数個の位置決め部37とそれぞれ位置決め(嵌合)可能な円形の貫通孔形状からなる複数個の位置決め孔部53が透光性基板51の表裏を貫通するように開口形成されている。
【0026】
不可視部52は、前記表示エリア(可視範囲R1)以外の領域である表示パネル10の可視範囲外R2に対応する透光性基板51の背面箇所に印刷形成されている。そして、可視範囲外R2に位置している各位置決め部37が、同様に可視範囲外R2に位置している各位置決め孔部53にそれぞれ位置決めされた状態(つまり第2の透視部材50がケース体30に固定された状態)にあっては、不可視部52(前記黒色印刷層)の印刷ズレに伴う可視範囲R1と可視範囲外R2との境界の位置ズレを極力抑制することが可能となる。
【0027】
なお、視認者は、表示パネル10の表示エリアに表示される前記所定情報を可視範囲R1に対応する透光性基板51部分、及び可視範囲R1に対応する透視部41部分を通じて透視可能となっている。また、不可視部52は、透光性基板51の背面ではなく、表示パネル10の可視範囲外R2に対応する透光性基板51の表面箇所に印刷形成してもよい。
【0028】
緩衝部材60は、図3に示すように、第2の透視部材50の周縁全周に巻かれた弾性を有する黒色の防水パッキン(シール部材)からなり、第1の透視部材40と第2の透視部材50との間の空間Sを密閉するように位置決め孔部53(位置決め部37)の外側に設けられる本体部61と、視認者側から表示装置を正視した際に複数個の位置決め孔部53(複数個の位置決め部37)をそれぞれ取り囲むように設けられた略環状の囲み部62とを備え、この場合、本体部61及び複数個の囲み部62は、ともに第2の透視部材50の周縁部分及びその近傍(つまり可視範囲外R2)に配置(配設)されている。
【0029】
本体部61は、緩衝部材60の主要部を構成しており、断面略コの字形状に形成され、鍔部43と透光性基板51との間、第2の透視部材50側面と肉厚部36との間、並びに連結部34と不可視部52との間に存在する空間部分を全て埋めるように、第2の透視部材50の周縁全周に巻かれている。
【0030】
また、囲み部62は、個々の位置決め孔部53を迂回する形で本体部61と一体的に形成されている。なお、この場合、前記超音波溶着によってケース体30と第1の透視部材40とが固着された際に、緩衝部材60(本体部61及び囲み部62)は、鍔部43に設けられた圧縮リブ44によって、圧縮リブ44と接触している本体部61部分、及び囲み部62が圧縮するように構成されている。
【0031】
従って、囲み部62によって位置決め孔部53を迂回しつつ、本体部61が第2の透視部材50の周縁全周に巻かれることによって、寸法公差に伴って位置決め部37と位置決め孔部53との間にクリアランスが存在していたとしても、囲み部62が空間Sに存在している内部空気の一部を位置決め部37と位置決め孔部53との間(つまり前記クリアランス)へと導かないような空気遮断部としての機能を有していることから、従来のように内部空気の一部が前記クリアランスを通って空間Sの外部(例えばケース体30と第2の透視部材50との間の空間領域)へと漏れることがなくなり、第1の透視部材40と第2の透視部材50とで形成される空間Sの気密性を確保することが可能となる。
【0032】
以上のように、本実施形態では、表示パネル10を収容するケース体30と、このケース体30の開口側に配設された第1の透視部材40と、第1の透視部材40の表示パネル10側に離間されて配設された第2の透視部材50とを備えた表示装置において、第2の透視部材50は、表示パネル10の可視範囲外R2に形成される不可視部52と、ケース体30に設けられた複数個の位置決め部37とそれぞれ位置決め可能な複数個の位置決め孔部53とを有し、可視範囲外R2に配設される緩衝部材60は、第1の透視部材40と第2の透視部材50との間の空間Sを密閉するように位置決め孔部53の外側に設けられる本体部61と、表示装置を正視した際に位置決め孔部53を取り囲む囲み部62とを備えているものである。また緩衝部材60は、第1の透視部材40の周縁部分に設けられた鍔部43の背面側において、鍔部43と第2の透視部材50との間に挟持されているものである。
【0033】
従って、寸法公差に伴って位置決め部37と位置決め孔部53との間にクリアランスが存在していたとしても、囲み部62が空間Sに存在している内部空気の一部を位置決め部37と位置決め孔部53との間へと導かないような空気遮断部としての機能を有していることから、従来のように内部空気の一部が前記クリアランスを通って空間Sの外部へと漏れることがなくなり、第1の透視部材40と第2の透視部材50とで形成される空間Sの気密性を確保することが可能な表示装置を提供することができる。
【0034】
また本実施形態では、前記超音波溶着によってケース体30と第1の透視部材40とが固着された際に、緩衝部材60(本体部61及び囲み部62)は、鍔部43に設けられた圧縮リブ44によって、圧縮リブ44と接触している本体部61部分、及び囲み部62が圧縮するように構成されていることにより、第1の透視部材40と第2の透視部材50とで形成される空間Sの気密性をより向上させることができる。
【符号の説明】
【0035】
10 表示パネル
20 支持体
30 ケース体
32 側壁部
33 立壁部
34 連結部
35 肉薄部
36 肉厚部
37 位置決め部
40 第1の透視部材
41 第1の透視部
43 鍔部
44 圧縮リブ(突出部)
50 第2の透視部材
51 第2の透視部
52 不可視部
53 位置決め孔部
60 緩衝部材
61 本体部
62 囲み部
R1 表示エリア(可視範囲)
R2 可視範囲外
S 空間
図1
図2
図3